(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0009】
超砥粒ホイールは、ヤング率が300GPa以上の硬質基板と、硬質基板の外周に設けられた超砥粒層とを備え、超砥粒ホイールの回転軸を含み回転軸に平行な面で超砥粒層を切断したときに現れる超砥粒層の断面形状は線対称であり、断面の工作物に作用する領域において、超砥粒ホイールの外径が最大の第一部分と、第一部分より超砥粒ホイールの外径が小さい第二部分とが設けられ、第一部分が対称軸上に存在する。
【0010】
本発明者は、工作物の切断面に欠けが生じるメカニズムについて調べた。超砥粒層の外周面(ラジアル面)が工作物に接触したときに、工作物から横方向(回転軸方向)の力が超砥粒層に加わることがある。硬質基板のヤング率が小さいと硬質基板が撓み、硬質基板が撓んだまま加工が進むため、ワ―クに欠けが生じることが少ないと考えられる。しかしながら、硬質基板のヤング率が300GPa以上であれば、硬質基板が撓みにくい。硬質基板が撓みにくい場合には、超砥粒層が工作物と接触した場合に超砥粒層に回転軸方向の力が加わると硬質基板が反発して超砥粒層が工作物を横方向へ押す力が強くなる。その結果、切断面に欠けが生じやすくなる。超砥粒ホイールの回転軸を含み回転軸に平行な面で超砥粒層を切断したときに現れる超砥粒層の断面形状は線対称であり、超砥粒ホイールの外径の最も大きい部分が対称軸上に存在するため、超砥粒ホイールの外径の最も大きい部分がまず工作物に接触する。そのため、超砥粒層に工作物から横方向の力が加わることを防止できる。その結果、硬質基板のヤング率が300GPa以上であったとしても工作物の切断面に欠けが生じることを抑制できる。
【0011】
超砥粒ホイールの外径はφ50−200mm、超砥粒層の厚み0.2mm以上で、超砥粒層は、ダイヤモンドおよびCBNの少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0012】
硬質基板は、超硬合金またはサーメットのいずれかで構成されてもよい。この場合、硬質基板のヤング率が300GPa以上となる。
【0013】
超砥粒層の断面形状において第一部分の厚みtは、超砥粒層の厚みTの70%以下であってもよい。
【0014】
硬質基板が超砥粒層に埋め込まれており、硬質基板が埋め込まれていない超砥粒層の部分の径方向長さXに対して、硬質基板が埋め込まれている超砥粒層の部分の径方向長さDはXの5%−40%であってもよい。より好ましくは5%−35%、最も好ましくは8%−35%である。
【0015】
マルチ超砥粒ホイールは、上記のいずれかの複数の超砥粒ホイールと、複数の超砥粒ホイールの間に設けられるスペーサとを備え、スペーサの比重は、硬質基板の比重より小さい。
【0016】
スペーサの外周コーナー部丸みは、R0.05mm以下であってもよい。スペーサの外周コーナー部丸みが小さいほどスペーサーと硬質基板との間に切り屑が入らない。
【0017】
硬質基板においてスペーサと接触する面の表面粗さ(Rz JIS B 0601−2001)が5μm以下であり、スペーサにおいて硬質基板と接触する面の表面粗さ(Rz JIS B 0601−2001)が5μm以下であってもよい。硬質基板およびスペーサの表面粗さが小さいとスペーサと硬質基板との間に隙間が生じないため、スペーサと硬質基板との間に切り屑が入らない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に従った超砥粒ホイールを備えたマルチ超砥粒ホイールの断面図である。
図2は、
図1中のIIで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。
【0019】
超硬合金製の硬質基板11を有する切断ホイールとしての超砥粒ホイール10の外径はφ50−200mmであってもよい。円盤状の硬質基板11の外周に、環状の超砥粒層12が設けられている。超砥粒層12の回転軸方向の厚みは0.2mm以上であってもよい。硬質基板11の回転軸方向の厚みは0.15mm以上であってもよい。超砥粒層12の先端にR形状が設けられている。
【0020】
超砥粒層12は、超砥粒、超砥粒を保持するボンド(フェノール樹脂)、およびフィラー(銅、緑色炭化ケイ素(GC)、アルミナ)により構成されている。超砥粒の粒度は、各種の粒度を用いることができる。超砥粒を保持するボンド材としては、レジンボンドのみならず、メタルボンド、ロウ材、ニッケルなどを用いてもよい。
【0021】
硬質基板11の材質は超硬合金である。硬質基板11は、平均粒径が1μm未満のWCと、15質量%のCoとを含む。硬質基板11の表面粗さ(Rz JIS B 0601−2001)は3μmである。
【0022】
各々の超砥粒ホイール10の間にはスペーサ20が設けられる。スペーサ20の材質は、たとえば鋼S45C、またはSUSである。スペーサ20の表面粗さ(Rz JIS B 0601−2001)は、たとえば3μmである。スペーサ20の角21はほぼピン角である。角21のRは0.05mm以下である。角21のRが小さいと、角21と硬質基板11との間に切り屑が入り込みにくい。さらに、スペーサ20と硬質基板11との接触面積が大きくなり、隣り合う超砥粒ホイール10同士が一体的に回転する。
【0023】
工作物の材質は、たとえば磁性材料、セラミックス、ガラス、フェライト等の各種材料である。
【0024】
各々の超砥粒ホイール10には貫通孔が設けられている。その貫通孔にホイールフランジ30が挿入される。ホイールフランジ30にはエンドプレート40が取り付けられる。エンドプレート40はナット50により超砥粒ホイール10へ近づく方向に押される。
【0025】
超砥粒ホイール10の硬質基板11の軸方向厚みは、超砥粒層12の軸方向厚みよりも小さい。露出した部分の硬質基板11の厚みはほぼ一定である。超砥粒ホイール10およびマルチ超砥粒ホイール1は、溝入れ加工および、切断加工に適している。
【0026】
超砥粒層12は中心線12aを中心として線対称形状である。第一部分としての先端部120は中心線12a上に位置している。先端部120から外側に向かって第二部分としての傾斜面121が延びている。超砥粒層12に接合される硬質基板11の表面粗さは粗い方が好ましい。硬質基板11の表面粗さが粗くなることで超砥粒層12と硬質基板11との接合面積が増加する。その結果、接合強度が向上する。
【0027】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2に従った超砥粒ホイールの超砥粒層の断面図である。
図3で示すように、実施の形態2に従った超砥粒ホイールの超砥粒層12において、第一部分としての先端部122が平坦形状である点で、実施の形態1に従った超砥粒ホイールと異なる。
【0028】
(実施の形態3)
図4は、実施の形態3に従った超砥粒ホイールの超砥粒層の断面図である。
図4で示すように、実施の形態3に従った超砥粒ホイールの超砥粒層12において、平坦な第一部分としての先端部122の幅が実施の形態2の超砥粒層12の幅よりも広い。先端部122の厚みはtであり、超砥粒層12の厚みはTである。傾斜面121が中心線12aに対してなす角度はθである。
【0029】
(実施の形態4)
図5は、実施の形態4に従った超砥粒ホイールの超砥粒層の断面図である。
図5で示すように、実施の形態4に従った超砥粒ホイールの超砥粒層12において、第一部分としての先端部122はR形状である点で、実施の形態2および3に従った超砥粒ホイールと異なる。超砥粒層12の外周面が第二部分としての曲面部123で形成されている。
【0030】
(実施の形態5)
図6は、実施の形態5に従った超砥粒ホイールの超砥粒層の断面図である。
図6で示すように、実施の形態5に従った超砥粒ホイールの超砥粒層12では、傾斜面121と曲面部123が組み合わされて外周面が構成されている点で、実施の形態4に従った超砥粒ホイールと異なる。超砥粒層12において中心線12aから遠い部分に第二部分としての傾斜面121が設けられている。中心線12aから近い部分に曲面部123が設けられる。先端部122は平坦である。
【0031】
(実施の形態6)
図7は、実施の形態6に従った超砥粒ホイールの超砥粒層の断面図である。
図7で示すように、実施の形態6に従った超砥粒ホイールの超砥粒層12では、実施の形態6に従った超砥粒ホイールの超砥粒層12と比較して、先端部122の幅が狭くなっている。
【0032】
(実施の形態7)
図8は、実施の形態7に従った超砥粒ホイールの超砥粒層の断面図である。
図8で示すように、実施の形態7に従った超砥粒ホイールの超砥粒層12では、傾斜面121と曲面部123との組み合わせにおいて超砥粒層12のラジアル面が形成されている。第二部分としての傾斜面121は断面において直線形状である。傾斜面121に連続的に曲面部123が連なる。曲面部123と傾斜面121との境界部分において、傾きが連続的に変化してもよい。
【0033】
(実施の形態8)
図9は、実施の形態8に従った超砥粒ホイールの超砥粒層の断面図である。
図9で示すように、実施の形態8に従った超砥粒ホイールの超砥粒層12では、傾斜面121と曲面部123との組み合わせにおいて超砥粒層12のラジアル面が形成されており、傾斜面121と曲面部123との境界部分において傾きが不連続に変化する。
【0034】
(実施の形態9)
図10は、実施の形態9に従った超砥粒ホイールの超砥粒層の断面図である。
図10で示すように、実施の形態9に従った超砥粒ホイールの超砥粒層12では、第一部分としての先端部122が断面において直線状であり、その先端部122に第二部分としての曲面部123が連続して設けられている。先端部122と曲面部123との境界部分において、表面の傾きが不連続に変化している。
【0035】
(比較例)
図11は、比較例に従った超砥粒ホイールの超砥粒層の断面図である。比較例に従った超砥粒ホイールの超砥粒層12では超砥粒層の厚み方向に沿って、超砥粒層12の厚み方向の一方端から他方端まで平坦な先端部122が延びている。
【0036】
(実施の形態10)
図12は、実施の形態1に従った超砥粒ホイールを備えた実施の形態10に従ったマルチ超砥粒ホイールの断面図である。実施の形態1のマルチ超砥粒ホイールでは、片持ち構造であったのに対して、実施の形態10のマルチ超砥粒ホイール1は両持ち構造である。シャフト31が複数の超砥粒ホイール10を貫通するように設けられている。シャフト31の両側にベアリング(図示せず)が設けられる。
【0037】
(実施例)
(試料番号1−8)
質量比率でWCが90%、Coが10%である超硬合金を直径94mm、穴径30mm、厚み0.3mmを有するように加工して硬質基板とした。この硬質基板を金型にセットした。結合材としてのフェノール樹脂粉末と、平均粒径100μmのダイヤモンド砥粒とを、ダイヤモンドの体積比率が25%(ダイヤモンド砥粒25%、フェノール樹脂75%)になるように混合した。硬質基板がセットされた金型に混合物を充填した後、硬質基板および混合物を加圧し、温度180℃で2時間、加熱硬化させて、冷却後に金型から抜き出した。硬質基板の外周面には超砥粒層が形成された。
【0038】
次の工程では、平面研削盤を使って超砥粒層の両側面をツルーイング・ドレッシングした。その結果、硬質基板の側面と超砥粒層の側面との逃げは、
図13で示すように片側側面において、0.05mm、となった。さらに、次の工程では、プロファイル研削盤を用いて、超砥粒層の先端形状を
図13のように加工して試料番号1−7を作成した。試料番号1−7の外径は100mm、超砥粒層の厚みTは0.4mm、先端部のtは0−0.36mm、rは0.2mmとした。試料番号8は試料番号1−7と同じ外径および組成であり、t=Tであり、
図11の形状である。
【0039】
次に、実験により上記試料の評価を行った。試料をスライシングマシンに取り付けて、
図14で示すように工作物100を構成するガラスを超砥粒層12で切断加工した。加工条件は、試料である超砥粒ホイールの回転数は毎分3500回、送り速度は毎分100mm、切り込み深さは2mm、水溶性研削液を供給して切断加工した。
【0040】
図15で示す加工後の工作物100の切断面102におけるチッピングの大きさにより、効果を確認した。チッピングの大きさの測定には測定顕微鏡(オリンパス製等)を用いた。測定方法は、
図16で示すように工作物100の下面101の長さLが3mmの範囲を3か所任意に選択し、それぞれのチッピングの最大値をそれぞれ測定して、その平均値をチッピングの大きさとした。チッピングの大きさは工作物100の下面101から最大のチッピングの終端までの距離hである。結果を表1に示す。
【0042】
「チッピング評価」の欄において、試料番号7のチッピングの測定値を基準値とし、チッピングが基準値の1.2倍以下の試料を評価Aとし、基準値の1.2倍を超え1.5倍以下の試料を評価Bとし、基準値の1.5倍を超え2倍以下の試料を評価Cとし、基準値の2倍を超える試料を評価Dとした。t/Tが0.7以下であれば優れたチッピング特性を示すことが分かる。
【0043】
(試料番号11−18)
質量比率でWCが90%、Coが10%である超硬合金を直径119mm、穴径30mm、厚み0.4mmを有するように加工して硬質基板とした。この硬質基板を金型にセットした。結合材としてのフェノール樹脂粉末と、平均粒径120μmのダイヤモンド砥粒とを、ダイヤモンドの体積比率が20%(ダイヤモンド砥粒20%、フェノール樹脂80%)になるように混合した。硬質基板がセットされた金型に混合物を充填した後、硬質基板および混合物を加圧し、温度180℃で2時間、加熱硬化させて、冷却後に金型から抜き出した。硬質基板の外周面には超砥粒層が形成された。
【0044】
次の工程では、平面研削盤を使って超砥粒層の両側面をツルーイング・ドレッシングした。その結果、硬質基板の側面と超砥粒層の側面との逃げは、
図17で示すように片側側面において、0.05mm、となった。さらに、次の工程では、プロファイル研削盤を用いて、超砥粒層の先端形状を
図17のように加工して試料番号11−17を作成した。試料番号11−17の外径は125mm、超砥粒層の厚みTは0.5mm、先端部のtは0−0.45mm、とした。試料番号18は試料番号11−17と同じ外径および組成であり、t=Tであり、
図11の形状である。
【0045】
次に、実験により上記試料の評価を行った。試料をスライシングマシンに取り付けて、
図14で示すように工作物100を構成するガラスを超砥粒層12で切断加工した。加工条件は、試料である超砥粒ホイールの回転数は毎分3200回、送り速度は毎分120mm、切り込み深さは3mm、水溶性研削液を供給して切断加工した。
【0046】
図15で示す加工後の工作物100の切断面102におけるチッピングの大きさにより、効果を確認した。チッピングの大きさの測定には測定顕微鏡(オリンパス製等)を用いた。測定方法は、
図16で示すように工作物100の下面101の長さLが3mmの範囲を3か所任意に選択し、それぞれのチッピングの最大値をそれぞれ測定して、その平均値をチッピングの大きさとした。チッピングの大きさは工作物100の下面101から最大のチッピングの終端までの距離hである。結果を表2に示す。
【0048】
「チッピング評価」の欄において、試料番号17のチッピングの測定値を基準値とし、チッピングの測定値が基準値の1.2倍以下の試料を評価Aとし、基準値の1.2倍を超え1.5倍以下の試料を評価Bとし、基準値の1.5倍を超え2倍以下の試料を評価Cとし、基準値の2倍を超える試料を評価Dとした。t/Tが0.7以下であれば優れたチッピング特性を示すことが分かる。
【0049】
(試料番号21−28)
質量比率でWCが90%、Coが10%である超硬合金を直径144mm、穴径40mm、厚み0.4mmを有するように加工して硬質基板とした。この硬質基板を金型にセットした。結合材としてのブロンズ系のメタルボンド(銅90質量%−錫10質量%)と、平均粒径160μmのダイヤモンド砥粒とを、ダイヤモンドの体積比率が25%(ダイヤモンド砥粒25%、メタルボンド75%)になるように混合した。硬質基板がセットされた金型に混合物を充填した後、硬質基板および混合物を加圧し、温度700℃で1時間、炉で焼結して、冷却後に金型から抜き出した。硬質基板の外周面には超砥粒層が形成された。
【0050】
次の工程では、平面研削盤を使って超砥粒層の両側面をツルーイング・ドレッシングした。その結果、硬質基板の側面と超砥粒層の側面との逃げは、片側側面において、
図18で示すように0.05mm、となった。さらに、次の工程では、プロファイル研削盤を用いて、超砥粒層の先端形状を
図18のように加工して試料番号21−27を作成した。試料番号21−27の外径は150mm、超砥粒層の厚みTは0.5mm、先端部のtは0−0.45mm、rは0.25mmとした。試料番号28は試料番号21−27と同じ外径および組成であり、t=Tであり、
図11の形状である。
【0051】
次に、実験により上記試料の評価を行った。試料をスライシングマシンに取り付けて、
図14で示すように工作物100を構成するガラスを超砥粒層12で切断加工した。加工条件は、試料である超砥粒ホイールの回転数は毎分3500回、送り速度は毎分130mm、切り込み深さは2mm、水溶性研削液を供給して切断加工した。
【0052】
図15で示す加工後の工作物100の切断面102におけるチッピングの大きさにより、効果を確認した。チッピングの大きさの測定には測定顕微鏡(オリンパス製等)を用いた。測定方法は、
図16で示すように工作物100の下面101の長さLが3mmの範囲を3か所任意に選択し、それぞれのチッピングの最大値をそれぞれ測定して、その平均値をチッピングの大きさとした。チッピングの大きさは工作物100の下面101から最大のチッピングの終端までの距離hである。結果を表3に示す。
【0054】
「チッピング評価」の欄において、試料番号37のチッピングの測定値を基準値とし、基準値の1.2倍以下の試料を評価Aとし、基準値の1.2倍を超え1.5倍以下の試料を評価Bとし、基準値の1.5倍を超え2倍以下の試料を評価Cとし、基準値の2倍を超える試料を評価Dとした。
【0055】
(試料番号31−37)
質量比率でWCが85%、Coが15%である超硬合金を直径100mm、穴径30mm、厚み0.4mmを有するように加工して硬質基板とした。この硬質基板に平均粒径50μmのダイヤモンド砥粒をニッケルめっきで固定した。硬質基板の側面と超砥粒層の側面との逃げは、片側側面において、
図19で示すように0.05mm、とした。なお、硬質基板はダイヤモンド砥粒の平均粒径の大きさ分を、完成寸法から補正して小さく加工しておいた。
【0056】
次の工程では、平面研削盤を使って超砥粒層の両側面をツルーイング・ドレッシングした。その結果、硬質基板の側面と超砥粒層の側面との逃げは、片側側面において、
図19で示すように0.05mm、となった。さらに、次の工程では、プロファイル研削盤を用いて、超砥粒層の先端形状を
図19のようにツルーイング・ドレッシングして試料番号31−36を作成した。試料番号31−36の外径は100mm、超砥粒層の厚みTは0.5mm、先端部のtは0−0.4mm、とした。試料番号37は試料番号31−36と同じ外径および組成であり、t=Tであり、
図11の形状である。
【0057】
次に、実験により上記試料の評価を行った。試料をスライシングマシンに取り付けて、工作物100としてのアルミナ系セラミックスを、
図14で示すように超砥粒層12で切断加工した。加工条件は、試料である超砥粒ホイールの回転数は毎分3500回、送り速度は毎分50mm、切り込み深さは2mm、水溶性研削液を供給して切断加工した。
【0058】
図15で示す加工後の工作物100の切断面102におけるチッピングの大きさにより、効果を確認した。チッピングの大きさの測定には測定顕微鏡(オリンパス製等)を用いた。測定方法は、
図16で示すように工作物100の下面101の長さLが3mmの範囲を3か所任意に選択し、それぞれのチッピングの最大値をそれぞれ測定して、その平均値をチッピングの大きさとした。チッピングの大きさは工作物100の下面101から最大のチッピングの終端までの距離hである。結果を表4に示す。
【0060】
「チッピング評価」の欄において、試料番号36のチッピングの測定値を基準値とし、基準値の1.2倍以下の試料を評価Aとし、基準値の1.2倍を超え1.5倍以下の試料を評価Bとし、基準値の1.5倍を超え2倍以下の試料を評価Cとし、基準値の2倍を超える試料を評価Dとした。
【0061】
図20は、硬質基板の外周面と超砥粒層の内周面との係合形状を示す断面図である。硬質基板11が超砥粒層12に埋め込まれており、硬質基板11が埋め込まれていない超砥粒層12の部分の径方向長さXに対して、硬質基板が埋め込まれている超砥粒層の部分の径方向長さDがどの程度が好ましいかを調べた。DはXの5%以上であれば、超砥粒層12と硬質基板11との接合強度がきわめて高いことが確認できた。Xが40%以下であれば、加工に作用する超砥粒層12の割合が大きくなり低コスト化できることが分かった。なお、超砥粒層12に埋め込まれる。
【0062】
また、
図21から
図23で示すような硬質基板11の先端11aに超砥粒層12を係合させてもよいことが分かった。
【0063】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】超砥粒ホイール10は、ヤング率が300GPa以上の硬質基板11と、硬質基板11の外周に設けられた超砥粒層12とを備え、超砥粒ホイール10の回転軸を含み回転軸に平行な面で超砥粒層12を切断したときに現れる超砥粒層12の断面形状は線対称であり、超砥粒ホイール10の外径の最も大きい部分が対称軸上に存在する。