(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305688
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッド
(51)【国際特許分類】
A62C 31/03 20060101AFI20180326BHJP
B05B 1/02 20060101ALI20180326BHJP
B05B 1/14 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
A62C31/03
B05B1/02
B05B1/14 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-86449(P2013-86449)
(22)【出願日】2013年4月17日
(62)【分割の表示】特願2012-63472(P2012-63472)の分割
【原出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-192960(P2013-192960A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年3月20日
【審判番号】不服2017-1422(P2017-1422/J1)
【審判請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168676
【氏名又は名称】株式会社コーアツ
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】藪下 真大
(72)【発明者】
【氏名】井上 康史
【合議体】
【審判長】
冨岡 和人
【審判官】
松下 聡
【審判官】
八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−125673(JP,A)
【文献】
特開2011−255152(JP,A)
【文献】
実開昭49−96527(JP,U)
【文献】
実開昭48−105923(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C31/03
B05B1/02
B05B1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤ガスを使用するガス系消火設備において消火対象区画に消火剤ガスを放出するために設置される消音手段を備えた噴射ヘッドであって、前記消音手段が、オリフィスの出口部に配設した気体が流通可能な多孔性材料からなるブロック形状の消音部材で構成し、該消音部材の大気に開放される一方側の端面が、該端面の中心部に当接するボルトを介して、噴射ヘッド本体に支持されることによって、前記端面がボルトが当接する中心部を除いて大気に環状に開放されてなることを特徴とするガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素、二酸化炭素、フッ素化合物等の消火剤ガスを使用するガス系消火設備において、消火対象区画に消火剤ガスを放出するために天井や壁面等に設置される噴射ヘッドに関し、特に、消火剤ガスが放出される際に発生する騒音を低減できるようにしたガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒素、二酸化炭素、フッ素化合物等の消火剤ガスを使用するガス系消火設備において、消火の際にガス系消火設備が作動すると、約1分間以内(フッ素化合物の消火剤ガスの場合は10秒)で消火対象区画の消火剤ガス濃度が消火濃度に達するように、消火剤ガスが放出される。
【0003】
このとき、消火剤ガスは、消火対象区画に消火剤ガスを放出するために天井や壁面等に設置される噴射ヘッドから放出されるが、ガス系消火設備用噴射ヘッドは、
図9(a)に示すような、消火剤ガスが供給される配管40に接続された噴射ヘッド10Aの出口部にオリフィス20を備え、オリフィス20から消火剤ガスを直接消火対象区画に放出するようにしたものや、
図9(b)に示すような、消火剤ガスが供給される配管40に接続された噴射ヘッド10Bの出口部にオリフィス20及び円錐形状のデフレクタ(偏向部材)50を備え、オリフィス20から放出された消火剤ガスをデフレクタ(偏向部材)50により偏向させて消火対象区画に放出するようにしたもの、さらには、
図9(c)に示すような、噴射ヘッド10Cの出口部にオリフィス(図示省略)及び円錐筒形状のホーン(拡散部材)60を備え、オリフィスから放出された消火剤ガスをホーン(拡散部材)60により拡散させて消火対象区画に放出するようにしたもの等が従来から汎用されてきた。
【0004】
このように、上記従来のガス系消火設備用噴射ヘッド10A、10B、10Cは、消火対象区画に通常複数個設置される各々の噴射ヘッドから同じ量の消火剤ガスが放出されるようにするために、噴射ヘッドから放出される消火剤ガスの流量をオリフィス20によって制限するようにしているが、このため、噴射ヘッドから消火剤ガスが放出される際に、高レベルの騒音(具体的には、120db以上の騒音)が発生することが知られていた。
【0005】
ところで、ガス系消火設備の作動時には、消火対象区画内に人が存在しないことが前提となっているため、噴射ヘッドから消火剤ガスが放出される際に発生する騒音(振動)に対しては、従来全く問題視されず、何の対策も取られていなかった。
【0006】
しかしながら、最近になって、ガス系消火設備の作動時に消火対象区画内に逃げ遅れた人がいた場合の対処、また、噴射ヘッドから消火剤ガスが放出される際に発生する騒音が周囲にいる人に悪影響を及ぼすおそれがあること、さらには、騒音(振動)が情報通信機器等の精密機器の故障の要因になるなどの知見に基づき、消火剤ガスが放出される際に発生する騒音を低減するための技術が提案されてきた(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−115255号公報
【特許文献2】特開2011−125673号公報
【特許文献3】特開2011−255152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、噴射ヘッドから消火剤ガスが放出される際に発生する騒音(「振動」を含み、以下、単に、「騒音」という。)に起因する問題に対処するための上記技術のうち、特許文献1に記載の技術は、消火設備を起動すべき場合に、消火設備の起動タイミングと、消火設備起動に伴うICT装置の動作不良発生防止のための回避措置タイミングとを連動させるもので、騒音の低減を目的とするものではなかった。
一方、特許文献2及び3に記載の技術は、騒音の低減を目的とするものではあるが、騒音の低減率を高めるためには、噴射ヘッドを大型化する必要があり、設置場所の制約やコスト上昇の問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来のガス系消火設備用噴射ヘッドの問題点に鑑み、小型の噴射ヘッドによって、騒音の低減率を高めることができるようにしたガス系消火設備用噴射ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッドは、消火剤ガスを使用するガス系消火設備において消火対象区画に消火剤ガスを放出するために設置される消音手段を備えた噴射ヘッドであって、前記消音手段が、オリフィスの出口部に配設した気体が流通可能な多孔性材料からなるブロック形状の消音部材で構成し、該消音部材の大気に開放される一方側の端面が、該端面の中心部に当接するボルトを介して、噴射ヘッド本体に支持
されることによって、
前記端面がボルトが当接する中心部を除いて大気に環状に開放されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッドによれば、消音手段が、オリフィスの出口部に配設した気体が流通可能な多孔性材料からなるブロック形状の消音部材で構成し、該消音部材の大気に開放される一方側の端面が、該端面の中心部に当接するボルトを介して、噴射ヘッド本体に支持
されることによって、
前記端面がボルトが当接する中心部を除いて大気に環状に開放されてなることにより、消音部材を噴射ヘッド本体に強固に拘束、支持することができることから、消火剤ガスの流通抵抗が大きく、単位容積当たりの消音性能の高い消音部材を使用することが可能となり、騒音の低減率を高めることができる。これにより、噴射ヘッドを小型化することが可能になり、設置場所の制約やコスト上昇の問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッドの一実施例を示す斜め下から見た斜視図である。
【
図9】従来のガス系消火設備用噴射ヘッドを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッドの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1〜
図8に、本発明のガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッドの一実施例を示す。
【0015】
このガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッド1は、消火剤ガスを使用するガス系消火設備において消火対象区画に消火剤ガスを放出するために設置される噴射ヘッドであり、消火剤ガスが供給される配管(図示省略)に接続される噴射ヘッド本体2と、この噴射ヘッド本体2の内部空間に形成した段部21に着脱可能に配設した複数のオリフィス31を形成したオリフィス板3と、オリフィス31の出口部に配設した気体が流通可能な多孔性材料からなるブロック形状の消音部材4と、消音部材4の大気に開放される一方側の端面の周縁部に当接して消音部材4を噴射ヘッド本体2に支持するリング部材5と、消音部材4の大気に開放される一方側の端面の中心部に当接して消音部材4を噴射ヘッド本体2に支持するボルト6とで構成されている。
【0016】
この場合において、複数のオリフィス31を形成したオリフィス板3を、噴射ヘッド本体2の内部空間に形成した段部21に、例えば、段部21及びオリフィス板3の周面に形成したねじを介して、着脱可能に配設するようにしている。
これにより、複数種類のオリフィス31を形成したオリフィス板3を設置場所等の条件に応じて選択することができる。
なお、オリフィス板3を省略し、噴射ヘッド本体2に同様のオリフィスを直接形成するようにすることもできる(図示省略)。
【0017】
また、オリフィス31は、オリフィス31の小径部31a側を消音部材4に面するようにすることが好ましい。
これにより、消音部材4の中心部から周辺部に向けて消火剤ガスを均一に流通させることによって、消火剤ガスの放出部位で発生する騒音を均一にできることと相俟って、騒音の低減率を一層高めることができる。
【0018】
多孔性材料からなるブロック形状の消音部材4は、一体構造のもので構成するほか、本実施例に示すように、上流側部材41及び下流側部材42からなる分割構造のもので構成することができる。
【0019】
消音部材4を構成する多孔性材料は、形状保持性能の高い無機材料(金属、金属の酸化物、金属の水酸化物等)からなる焼結体を好適に用いることができる。
【0020】
消音部材4を構成する多孔性材料の空隙の孔径は、全体を均質な材料で構成するほか、気体が流通する方向に変化させた材料、より具体的には、気体が流通する方向に小さくした材料で構成することができ、例えば、本実施例においては、上流側部材41の空隙の孔径よりも、下流側部材42の空隙の孔径が小さくなるような材料で構成することができる。
このように、消音部材4を構成する多孔性材料の空隙の孔径を、気体が流通する方向に小さくすることにより、消音部材4の各部位から消火剤ガスを均一に放出することによって、消火剤ガスの放出部位で発生する騒音を均一にできることと相俟って、騒音の低減率を一層高めることができる。
【0021】
そして、消音部材4は、一体構造、分割構造のいずれの場合も、消音部材4の他方側(大気に開放される側の反対側)の端面が噴射ヘッド本体2(本実施例においては、オリフィス板3を含む。)に接して配設されるとともに、消音部材4の一方側(大気に開放される側)の端面が、この端面の周縁部に当接するリング部材5及び端面の中心部に当接するボルト6を介して、噴射ヘッド本体2に支持されるようにしている。
この場合、リング部材5は、噴射ヘッド本体2及びリング部材5の周面に形成したねじを介して、噴射ヘッド本体2に着脱可能に配設するようにしている。
そして、消音部材4を構成する下流側部材42を、上流側部材41より大径に形成するとともに、この下流側部材42の外周縁部を、噴射ヘッド本体2の端面とリング部材5の縁部とで挟持するようにして固定することにより、消音部材4(下流側部材42)の大気に開放される消火剤ガスの放出面積を一層大きく取ることができ、騒音の低減率を高めることができる。
また、ボルト6は、オリフィス板3に螺着するようにしている。
【0022】
これにより、消音部材4を噴射ヘッド本体2に強固に拘束、支持することができることから、消火剤ガスの流通抵抗が大きく、単位容積当たりの消音性能の高い消音部材4を使用することが可能となり、騒音の低減率を高めることができ、これによって、噴射ヘッド1を小型化することが可能になり、設置場所の制約やコスト上昇の問題を解消することができる。
【0023】
以上、本発明のガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッドについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッドは、小型の噴射ヘッドによって、騒音の低減率を高めることができることから、窒素、二酸化炭素、フッ素化合物等の消火剤ガスを使用するガス系消火設備の用途に広く用いることができ、適用対象も、新設のガス系消火設備に限定されず、噴射ヘッドを交換するだけで、既設のガス系消火設備にも適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 噴射ヘッド
2 噴射ヘッド本体
21 段部
3 オリフィス板
31 オリフィス
4 消音部材
41 上流側部材
42 下流側部材
5 リング部材
6 ボルト