【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例に係るLEDを使用した歯科用照明器について、
図1乃至
図13を参照して詳細に説明する。
【0034】
最初に、本実施例1の歯科用照明器1を含む歯科用ユニット51について説明する。
【0035】
前記歯科用ユニット51は、
図1、
図2に示すように、患者M用の油圧式前折れタイプのチェア52と、このチェア52と一体のスピットン部53及び前面フード4付きの歯科用照明器1を支持する歯科用照明器支持部54とを有している。
【0036】
前記チェア52は、ユニットベース61上に昇降駆動されるチェア台62を配置し、チェア台62にシート63を取り付け、更に背板64、枕(ヘッドレスト)65及びフットレスト66を取り付けて構成している。
【0037】
前記歯科用照明器1は、チェアマウントタイプに構成している。
【0038】
即ち、歯科用照明器支持部54の上端からポール70を垂直上方に立設し、ポール70の上端に4個の第1乃至第4アーム71、72、73、74を順に取り付け、さらに第4アーム74に歯科用照明器1を回動可能に支持する回動支持具75を取り付けて構成している。
【0039】
前記ポール70の近傍には、取り付け具55を用いて患者画像等を表示する画像モニタ56を配置している。
【0040】
また、歯科用照明器1の外周部には、手をかざすことでこの歯科用照明器1を点灯又は消灯させる光センサ7を取り付けている。また、歯科用照明器1は、移動操作用の取っ手8、止めネジ9を備えている。
【0041】
前記チェア52には、図示していないが、背板64の角度を認識する背板角度認識センサ、チェア台62の昇降位置を認識する昇降認識センサ、枕65の高さ、角度を認識する高さ認識センサ、角度認識センサが組み込まれている。
【0042】
前記背板角度認識センサは、チェア台62内の寝起用油圧シリンダの近傍に、昇降認識センサはチェア台62内の昇降用油圧シリンダー近傍に、枕65の高さ認識センサは前記背板64内に、枕65の角度認識センサはこの枕65の傾倒機構部(関節)に各々組み込まれている。
【0043】
前記ポール70、第1乃至第4アーム71、72、73、74の連結部分及び第4アーム74と回動支持具75との連結部分には、各々アクチュエータを用いた特定の方向に回動する関節部81、82、83、84’84を設けている。
【0044】
さらに、歯科用照明器1を支持する回動支持具75には、アクチュエータ駆動により回転を行うための回転軸を備えている。
【0045】
前記歯科用照明器1の外観を
図3に拡大して示す。
【0046】
次に、前記歯科用照明器1の具体的構成について、
図4乃至
図8を参照して詳述する。
前記歯科用照明器1は、
図6、
図7等に示すように、放物面状(放射線曲面と波状曲線の組み合わせを考慮したもの)の反射面2aを有するとともに、前記反射面2aの中央部(最深部)を後方に貫くように装着受筒部3を設けた反射板(コールドミラー)2と、この反射板2の装着受筒部3に着脱可能に装着されるLED(Light Emitting Diode)支持ユニット11とを有している。
【0047】
前記反射板2の反射面2aには、例えばアルミニューム又は銀等の金属蒸着による反射膜2bのコーティングを施している。
【0048】
また、前記反射板2の前面には、LED光が透過可能な材質により形成した放物面状を呈する前面フード4を着脱可能に配置している。
【0049】
前記LED支持ユニット11は、一面に平坦なLED取付面15を有するとともに、他面に外形を略円柱状とした放熱部(放熱フィン)30を固定した円板状の取付基部13、及び、この取付基部13の外周部から一面側上方に突設した一対の取付片14、14を具備する熱伝導率の高いアルミニューム、銅等を素材とするLED取付部材12と、表面実装型のLED(例えば、一般照明用白色パワーLED)18を基板(基台)17(パッケージヒートシンク部)に配置し、前記LED取付面15に密接固定されるLEDモジュール16と、LED光通過用の任意形状のスリット20を備え、前記LEDモジュール16を覆う状態でLED取付部材12のLED取付面15に固着される熱伝導率の高いアルミニューム、銅等を素材とするスリット板19と、前記LED取付部材12における一対の取付片14、14の突出端側がねじ止め固定されるとともに前記反射板2の装着受筒部3に着脱可能に装着される角筒体23及びこの角筒体23と一体の円筒体24を連設した装着筒体部22と、を有している。
【0050】
尚、前記LED取付部材12における取付片14としては、一対(2個)構造に限定されるものではなく、取付基部13の外周部から一面側上方に3個、4個、6個等さらに多数の取付片14を突設し、これらを角筒体23にねじ止め固定する構造とすることも可能である。
【0051】
前記LEDモジュール16としては、詳細は後述するが、RGBタイプのLEDモジュール、銭形LEDモジュール(シャープ(株):GW6TGCBG4FD)、又は、演色性の異なるLEDモジュール等を使用する。
【0052】
前記スリット板19の裏面側には、
図6に示すように、前記LEDモジュール16が収納できる凹部21を例えば座ぐりにより形成している。また、前記スリット板19は、熱伝導率の高い例えばアルミニューム、銅等で製作している。
【0053】
ここで、前記LED支持ユニット11の具体的構造及びLED支持ユニット11の反射板2に対する取り付け構造について
図6乃至
図8を参照して説明する。
【0054】
前記放熱部30を固定したLED取付部材12の取付基部13には、前記LEDモジュール16を取り付けるための2個のビス孔13a、13aと、前記スリット板19を取り付けるための2個のビス孔13b、13bとが設けられている。
【0055】
まず、前記LED取付面15に対して前記LEDモジュール16を密接させ、基板17の外周部に対角配置に設けた2個の凹部17a、17aの部分から2個のビス25を用いてLED取付面15の対応する2個のビス孔13a、13aに前記各ビス25をねじ込み、前記LEDモジュール16をLED取付面15に密接固定する。
【0056】
次に、前記スリット板19によりLEDモジュール16を覆うようにしてこのスリット板19に対角配置に設けた2個のビス挿通孔19a、19aに2個のビス26を挿入し、LED取付面15に設けたスリット板19用の2個のビス孔13b、13bに前記2個のビス26をねじ込み、前記スリット板19をLED取付面15に固着する。
【0057】
前記スリット板19に設けられた他の2つの孔19b、19bは、前記LEDモジュール16を取り付けたときに使用したビス25のビス頭を逃がす(収容する)ためのものである。
【0058】
次に、前記LED取付部材12の一対の取付片14、14を前記装着筒体部22に取り付ける。
【0059】
すなわち、LED取付部材12の一対の取付片14、14の突出端側に設けた取付孔14aに各々2本のビス27を挿通し、
【0060】
さらに2本のビス27を、
図8に示すように、前記装着筒体部22を構成する角筒体23の両サイドに開けられたビス孔にねじ込むことにより、前記LED取付部材12と装着筒体部22とを一体化する。
【0061】
そして、前記装着筒体部22の円筒体24を前記反射板2の装着受筒部3に装着し、かつ、反射板2の外面側に
図8に示す取付部材31を配置して、側面からホーローセットで締め付けることによって、LED支持ユニット11と前記反射板2とを一体化する。
【0062】
また、前記取付部材31に設けた筒体部32を、前記回動支持具75に連結することで、歯科用照明器1を回動可能に支持するように構成している。
【0063】
前記LED支持ユニット11のLEDモジュール16に対する給電系は、LEDモジュール16に接続した配線材を前記取付片14、14の内面側に設けた溝を這わせ、装着筒体部22の穴を通して外部に導出し、電源部に接続することで構成するが、これらについては図示省略する。
【0064】
本実施例に係る歯科用照明器1によれば、前記スリット板19のスリット20を通過したLED18からのLED光は、前記スリット20により光束が制限された状態で前記反射板2の反射膜2bでコーティングされた反射面2aに照射され、反射されて前記スリット20の形状に対応した形状の照射パターンを形成し、さらに、歯科用照明器1の前面フード4を透過して対象物(例えば歯科診療における診療室内、患者Mの口腔内等)に照射されこれらを照明する。
【0065】
従来例のようにハロゲンラン球を使用した場合は、ハロゲンランプからの光をコールドミラーで集光するため、ほとんどの光束が熱量になり、コールドミラーは熱を裏面から逃がすための特殊な多層膜のコーティングを使用した構造が必要となるが、本実施例の場合においては、もともとLEDモジュール16におけるLED18の消費電力は、ハロゲンランプに比較して小さく、熱になる赤外線成分の波長が少ないため効率的に光を集光して所望の照射パターンを得ることが可能となる。
【0066】
この場合、工場出荷時に所望の照射パターンを選択できるようにするためには、前記スリット20の形状の異なる、或いはスリット20の穴サイズの異なるスリット板19のなかから、工場出荷仕様(予めユーザ希望の仕様にする)に合わせて取り付ける。
【0067】
また、ユーザサイドで交換する場合は、LEDモジュール16、放熱部30等が組込まれた状態の装着筒体部22ごと交換する。この際には、反射板2を挟むナット(図示せず)の取り外し及び締め付けによる交換となる。
【0068】
本実施例に係る歯科用照明器1によれば、前記スリット板19のスリット20の形状を変化させることで照射パターンの形状を変えることができるが、例えばその形状がワイド形状であれば、オペレーティングライトを使用して歯の治療を行う際に、患者の頭(口腔)を左右上下に移動した状態でも照射野の範囲で治療を行うことが可能となる。このように患者の頭を動かしながらの治療を得意とする歯科医師もいる。
【0069】
また、歯科治療にはデンタルミラーを使って治療を行う(歯科用語でミラーテクニックという)治療が得意のドクターもいる。
【0070】
このような場合、照射パターンをワイドにする必要はなく必要最小限の照射パターンの形状にすることで、術者が眩しくないようにすることができ、さらに、患者に与える熱量も抑えることが可能となる。
【0071】
次に、本実施例に係る歯科用照明器1の放熱作用について説明すると、前記LED取付部材12、スリット板19を各々熱伝導率の高いアルミニューム、銅等により形成しているので、前記LEDモジュール16の裏面とLED取付部材12のLED取付面15、及び、スリット板19の裏面の座ぐっていない面とLED取付面15が、各々密着して固定されているため、LEDモジュール16の裏面からの熱はLED取付面15を経て放熱部30に伝わり放散し、また、LEDモジュール16の表面からの熱のうちスリット板19のスリット20を抜けない光の熱は、スリット板19によって熱伝導しLED取付面15を経由して放熱部30に伝わり放散する。
【0072】
これにより、別途冷却ファン等を配置しなくても歯科用照明器1における前記LEDモジュール16から放散される熱の放熱効果を高めることができ、この点からも前記歯科用照明器1を安価な構造とすることができる。
【0073】
次に、本実施例に係る歯科用照明器1におけるLEDモジュール16として、RGBタイプのLEDモジュールを使用した場合について説明する。
【0074】
RGBタイプのLEDモジュールは、フルカラーLEDモジュールとも称され、赤色・緑色・青色を発光する3つのLEDが一つのパッケージに封印されたもので、3つのLEDの明るさを変えることで無限の色を表示できる。
【0075】
例えば、2色以上の光が重なると別の色になり、明るい赤色・緑色・青色の3つの光が重なると白色になり、さらに、赤色・緑色・青色の3色を同じだけ暗くすると、中心の白は灰色に変わって行く。
【0076】
さらに、前記LEDモジュール16として、例えば銭形LED(シャープ(株):GW6TGCBG4FD)を使用することもできる。
【0077】
これは、RGBタイプではないが、調色機能を持つ照明用LEDモジュールであり、1枚のセラミック基板上に青色のLEDチップを高密度で実装し、暖色系の蛍光体と寒色系の蛍光体が縞状になるように配置し、暖色系と寒色系の2色の光を混色させることで、調光機能を実現したものである。
【0078】
このような色温度変更可能なLEDモジュール16を使用し、歯科用照明器1を実際に使用する際にLEDモジュール16の色温度を適切に設定する(色温度の低い暖色系から色温度の高い寒色系の間で適切に設定する)ことで、前記反射板2の反射面2aを高価な多層膜コーティングが不要な単層膜構造とすることができる。
【0079】
また、本実施例に係る歯科用照明器1におけるLEDモジュール16として演色性の異なるものを使用する場合としては、例えばシチズン電子、CL−L234A(演色性85)、L−233(演色性90)等のようなグレードの異なるもののなかから選定したLEDモジュール16を使用する例を挙げることができる。
【0080】
このように、LEDモジュールのグレードを変えることで、対象物の演色性を変えることが可能となる。
【0081】
ここに、演色性とは、太陽光と比較して物を見たときに、色の見え方を表現する用語であり、例えば、太陽光に似た色の見え方をする照明ランプを「演色性の良い(高い)ランプ」と称している。
【0082】
尚、前記反射板2の反射面2aに、屈折率が異なる物質、例えばチタン、シリカ等の組み合わせで、多層膜(例えば15層)コーティングを施した構造とすることもできる。
【0083】
この場合には、多層膜を構成する薄膜の干渉効果によってより効率よく目に見える可視光線を反射し、熱線と呼ばれる赤外線を透過させることが可能となり、これにより、熱を持たない光だけを前記反射板2の反射面2aで反射し、対象物に照射することができ、対象物の温度上昇をより抑えることが可能となる。
【0084】
次に、本実施例に係る歯科用照明器1の特徴的要素である青色光減衰部材について、
図5、
図7、
図9及び
図10を参照して説明する。
【0085】
本実施例に係る歯科用照明器1においては、前記スリット板19における所定の照射パターンを形成するためのスリット20の位置に、可視光波長域の光の内、青色波長域の光の透過率を減じる青色光減衰部材である青色光減衰フィルター41を前記スリット20の形状に対応した形状に構成して配置している。
【0086】
前記スリット20の形状は、患者が眩しくないように口腔領域のみに照射する照射パターン(照射視野)を形成するように、例えば横長の長方形形状を採用し、これに対応して、青色光減衰フィルター41の形状も横長の長方形形状としている。
【0087】
前記青色光減衰フィルター41は、透明なガラス板又は透明な合成樹脂板等の基体42の表面に青色波長域の光を吸収する又は青色波長域の光の透過を制限するするコーティング膜43を施す構成としている。
【0088】
前記コーティング膜43の材質としては、青色波長域を吸収する化合物、例えば黄色染料、橙色染料、緑色染料などやこれら混合物を用いる例を挙げることができる。
【0089】
また、前記コーティング膜43としては、例えば、青色光の吸収能を有する染料であるカヤロンポリエステルイエローAL染料(日本化薬(株)製)、青色光吸収剤であるカヤセットイエローA−G(ディスパーズイエロー54)(日本化薬(株)製)、クロムとクロム酸化物との混合物の蒸着層等を用いる例を挙げることができる。
【0090】
この場合、本実施例に係る歯科用照明器1においては、LED光の光束が広がらない位置で青色光減衰フィルター41を配置する構成としていることから、青色光減衰フィルター41としてはコーティング膜43のコーティング面積が小さくて済み、安価な構成とすることができる。
【0091】
前記コーティング膜43に替えて、
図10に示すように、基体42の表面に上述したような各種材料を用いて形成した青色光減衰フィルム44を貼付した構成の青色光減衰フィルター41Aを採用することもできる。
【0092】
尚、上述した青色光減衰フィルム44としては、固体発光性色素を透明プラスチックフィルムに組み入れて作製した波長変換フィルムを用いることも可能である。
【0093】
前記青色光減衰フィルター41、青色光減衰フィルム44は、
図11に示すように、例えば400〜500nm、好ましくは少なくとも455nm±20nmの範囲の青色波長域の光の透過率を減衰するフィルタリング特性を有するものとしている。
【0094】
このように本実施例に係る歯科用照明器1によれば、前記スリット20の位置に、可視光波長域の光の内、青色波長域の光の透過率を減じるコーティング膜43を設けた青色光減衰部材である青色光減衰フィルター41を配置し、又は、青色光減衰フィルム44を貼付した構成の青色光減衰フィルター41Aを配置したものであるから、対象物(例えば歯科診療における診療室内、患者Mの口腔内等)に照射されるLED光は、青色波長域のLED光成分が減衰された状態で当該対象物に照射されることになり、これにより、歯科医師等の視界のチラツキ、かすみ、眼精疲労による視力低下等を防止することができる好適な照明環境を現出することができる。
【0095】
また、歯科治療において歯牙にコンポジットレジン充填する作業を行う際に、コンポジットレジンを硬化させるための光照射器を使用する前に、歯科用照明器1から照射される455nm近辺の光によって、当該コンポジットレジンが硬化してしまうという不都合も解消することができる。
【0096】
次に、本実施例に係る歯科用照明器1の特徴的要素である青色光減衰部材の他例について、
図12を参照して説明する。
【0097】
この場合には、前記スリット20の位置の青色光減衰フィルター41又は41Aを省略するとともに、前記反射板2自体をガラス等の基体の表面に反射膜2bをコーティングにより製膜し、さらに、反射膜2bの外面に青色光減衰膜2cをコーティングにより製膜して、この青色光減衰膜2cの膜面を反射面2aとしたものである。
【0098】
前記反射膜2bは、アルミニューム(Al)が使用されるが、銀(Ag)、クロム(Cr)等の金属であってもよい。また、その上にチタン(Ti)やシリカ(SiO2)により多層薄膜を2層から4層形成した構成としてもよい。
【0099】
この場合、多層薄膜は真空蒸着或いはイオンプレーティング等の薄膜技術によって付着させるものである。
【0100】
前記青色光減衰膜2cとしては、例えば400〜500nm、好ましくは少なくとも455nm±20nmの範囲の青色波長域の光の透過率を減衰するフィルタリング特性を有するものを用いる。
【0101】
前記青色光減衰膜2cは、前記反射膜2bの外面に、例えば青色光吸収剤と透明性ポリマーとを含むコーティング剤を塗布することにより形成する。
【0102】
前記青色吸収剤としては、青色波長域を吸収する化合物、例えば黄色染料、橙色染料、緑色染料などやこれら混合物が挙げられる。
【0103】
また、透明性ポリマーとしては例えばポリアクリル系ポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0104】
さらに、青色光の吸収能を有する染料であるカヤロンポリエステルイエローAL染料(日本化薬(株)製)、青色光吸収剤であるカヤセットイエローA−G(ディスパーズイエロー54)(日本化薬(株)製)を用いたり、さらに金属系コーティング膜としてクロムとクロム酸化物との混合物の蒸着層等を用いる例を挙げることができる。
【0105】
このように、前記反射板2に対して、青色光減衰膜2cをコーティングにより製膜して、この青色光減衰膜2cの膜面を反射面2aとした構成によっても、既述した場合と同様、対象物(例えば歯科診療における診療室内、患者Mの口腔内等)に照射されるLED光は、青色波長域のLED光成分が減衰された状態で当該対象物に照射されることになり、これにより、歯科医師等の視界のチラツキ、かすみ、眼精疲労による視力低下等を防止することができる好適な照明環境を現出することができる。
【0106】
また、歯科治療において歯牙にコンポジットレジン充填する作業を行う際に、コンポジットレジンを硬化させるための光照射器を使用する前に、歯科用照明器1から照射される455nm近辺の光によって、当該コンポジットレジンが硬化してしまうという不都合も解消することができる。
【0107】
尚、
図12に示す例の場合においても、前記青色光減衰膜2cをコーティング処理により形成する場合の他、この青色光減衰膜2cと同様な材料を用い、同様な機能を有するように形成した青色光減衰フィルムを前記反射膜2bに貼付した構成とすることもでき、この場合も、前記青色光減衰膜2cの場合と同様な作用、効果を発揮させることができる。
【0108】
次に、本実施例に係る歯科用照明器1の特徴的要素である青色光減衰部材の他例について、
図13を参照して説明する。
【0109】
前記スリット20の位置の青色光減衰フィルター41又は41A又は前記前記反射板2の反射膜2bを無くした構成とするとともに、
図13に示すように、前記前面フード4の外面に青色光減衰部材である青色光減衰膜4aを直接コーティングして形成したものである。
【0110】
青色光減衰膜4aとしては、例えば400〜500nm、好ましくは少なくとも455nm±20nmの範囲の青色波長域の光の透過率を減衰するフィルタリング特性を有するものを用いる。
【0111】
前記青色光減衰膜4aは、前記前面フード4の外面に、例えば青色光吸収剤と透明性ポリマーとを含むコーティング剤を塗布することにより形成する。
【0112】
前記青色吸収剤としては、既述した場合と同様、青色波長域を吸収する化合物、例えば黄色染料、橙色染料、緑色染料などやこれら混合物が挙げられる。
【0113】
また、透明性ポリマーとしては例えばポリアクリル系ポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0114】
さらに、青色光の吸収能を有する染料であるカヤロンポリエステルイエローAL染料(日本化薬(株)製)、青色光吸収剤であるカヤセットイエローA−G(ディスパーズイエロー54)(日本化薬(株)製)を用いたり、さらに金属系コーティング膜としてクロムとクロム酸化物との混合物の蒸着層等を用いる例を挙げることができる。
【0115】
このように、前記前面フード4の外面に青色光減衰膜4aを設けた構成によっても、既述した場合と同様、対象物(例えば歯科診療における診療室内、患者Mの口腔内等)に照射されるLED光は、青色波長域のLED光成分が減衰された状態で当該対象物に照射されることになり、これにより、歯科医師等の視界のチラツキ、かすみ、眼精疲労による視力低下等を防止することができる好適な照明環境を現出することができる。
【0116】
また、歯科治療において歯牙にコンポジットレジン充填する作業を行う際に、コンポジットレジンを硬化させるための光照射器を使用する前に、歯科用照明器1から照射される455nm近辺の光によって、当該コンポジットレジンが硬化してしまうという不都合も解消することができる。
【0117】
尚、
図13に示す例の場合においても、前記青色光減衰膜4aをコーティング処理により形成する場合の他、この青色光減衰膜4aと同様な材料を用い、同様な機能を有するように形成した青色光減衰フィルムを前記前面フード4の外面に貼付した構成とすることもでき、この場合も、前記青色光減衰膜2cの場合と同様な作用、効果を発揮させることができる。
【0118】
また、
図13に示す例の場合において、前記青色光減衰膜4aを前記前面フード4の内面に設ける構成とすることも可能である。
【0119】
以上説明した本実施例に係る歯科用照明器1においては、前記スリット20、反射板2、前面フード4に、個別的に青色光減衰部材を配置する場合について説明したが、スリット20、反射板2の双方、前記スリット20、前面フード4の双方、前記反射板2、前面フード4の双方に設けたり、又は、前記スリット20、反射板2、前面フード4の三者に設ける構成としても実施可能である。
【0120】
次に、
図14乃至
図16を参照して、光源であるハロゲンランプ(TN29)、LED(TN46)について、照度計を用いた測定を基に、これらの光源から70cmの距離にある位置の正確な分光放射強度の値を求める手段について説明する。
【0121】
すなわち、光源から70cm離れた地点の分光放射強度を測定及び演算により正確に求めることを目的とする。
【0122】
図14は、TN29(ハロゲンランプ)に関して、照度計が8860lx、7130lx、3430lxを示した時の各波長(400〜515nm)ごとの分光放射照度(μW/cm
2・nm)の測定データ、及び、TN46(LED)に関して照度計が8940lx、4780lx、3440lxを示した時の各波長(400〜515nm)ごとの分光放射照度(μW/cm
2・nm)の測定データを示している。
【0123】
また、TN29(ハロゲンランプ)に関して、照度計が8860lx、7130lx、3430lxを示したときの単位平方メートル当たりの各分光放射照度(W/m
2)を求めた。この分光放射照度(W/m
2)の測定値は8860lxで3.14(W/m
2)、7130lxで2.42(W/m
2)、3430lxで0.93(W/m
2)であった。
【0124】
同様に、TN46(LED)に関して、照度計が8860lx、7130lx、3430lxを示したときの単位平方メートル当たりの各分光放射照度(W/m
2)を求めた。この分光放射照度(W/m
2)の測定値は、8940lxで4.33(W/m
2)、4780lxで2.34(W/m
2)、3440lxで1.70(W/m
2)であった。
【0125】
次に、TN29(ハロゲンランプ)、TN46(LED)について、上記各照度(lx)、各分光放射照度(W/m
2)の値を用い、
図15に示すように、横軸の値をx(照度)とし、縦軸の値をy(分光放射照度)として一次関数のグラフを作成する。
【0126】
図15に示す一次関数のグラフは、y=ax+b(aは傾き、bは切片)で表すことができ、この一次関数の式から、光源から70cm離れた地点の正確なy(分光放射照度)を求めることができる。
【0127】
この場合、前記傾きa、切片bの値は、
図15に示すグラフから容易に求めることができる。
【0128】
すなわち、
図15、
図16に示すように、TN29(ハロゲンランプ)については、x=8000lxのとき分光放射照度の値は2.78(W/m
2)、TN46(LED)についてはx=8000lxのとき分光放射照度の値は3.88(W/m
2)と求めることができる。
【0129】
逆に、分光放射照度の値が3(W/m
2)のときの正確な照度は、
図16に示すように、x=(y−b)/aの演算により、TN29(ハロゲンランプ)については、8524(lx)、TN46(LED)については6160(lx)と求めることができる。