特許第6305722号(P6305722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6305722レーザーマーキング性に優れたポリカーボネート樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305722
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】レーザーマーキング性に優れたポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20180326BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20180326BHJP
   C08K 5/52 20060101ALI20180326BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20180326BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08K3/22
   C08K5/52
   B23K26/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-221737(P2013-221737)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2015-83621(P2015-83621A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 圭哉
【審査官】 海老原 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−194757(JP,A)
【文献】 特開2010−095396(JP,A)
【文献】 特開2009−012276(JP,A)
【文献】 特開2011−084666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08K 3/00− 5/59
B23K 26/00− 26/70
C08J 5/00− 5/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、下記一般式1で表されるビスマス系金属酸化物(B)0.01〜2重量部、および下記一般式2で表されるリン系酸化防止剤(C)0.05〜0.1重量部を含有することを特徴とするレーザーマーキング性に優れたポリカーボネート樹脂組成物
一般式1
Bi(1−x)
(一般式1中、Mは、ガドリウムおよびネオジムから選択される少なくとも1つの金属、xおよびyはそれぞれ0.001<x<0.5、1<y<2.5の関係を有する値である。)
一般式2
【化1】
(一般式2において、R1、R2は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。)
【請求項2】
前記ビスマス系金属酸化物(B)の平均粒子径が、10μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーマーキング性に優れたポリカーボネート樹脂組成物に関する。更に詳しくは、ポリカーボネート樹脂が本来備える透明性、耐熱性、熱安定性等を保持したまま、レーザー光の照射で文字や記号等のマークが目視ではっきり認識出来る程度にコントラスト良くマーキング可能なレーザーマーキング性に優れたポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触式ICカード等のプラスチックカード表面に、文字、バーコード、画像等を記載する方法として、エンボス打刻や印刷に代わって、レーザービームを照射してマーキングする手法が採られるようになってきた。例えばYAGレーザー等を用いてカードに情報を書き込むことにより、摩耗や経時変化で記入した情報が消失することを防ぐことができる。そのため、現在多くの産業において、従来のインクシステムがレーザーマーキングシステムに移行しつつある。
【0003】
レーザーマーキングにはCO2レーザー、Nd:YAGレーザー等が使用されるが、精細な印字を可能にするため、主にはNd:YAGレーザーが主に使用されている。
しかしながら、Nd:YAGレーザーにより樹脂成形材料へレーザーマーキングを施した場合、ほとんど全ての主要な樹脂成形材料において、視認性や精細度において十分な品質のマーキングが得られず、全く印字できない樹脂も少なくない。
そのため、主要な樹脂成形材料にレーザーマーキングの視認性を改善させることのできる添加剤が求められ、これまで幾つかのレーザーマーキング剤が提案されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、粒径10〜70nmの錫及びアンチモンの混合酸化物の粒子をレーザーマーキング用添加剤として成形材料に添加することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、雲母薄片やSiO2フレーク等の薄片状基質に、アンチモン、砒素、ビスマス、銅、ガリウム、ゲルマニウムまたはそれらの酸化物をドープした酸化錫を被覆した顔料をレーザーマーキング用の添加剤として含む熱可塑性プラスチック等が開示されている。
【0006】
特許文献3には、銅とモリブデンからなる複合酸化物を樹脂に添加した樹脂成形品にレーザーマーキングを施した場合、黒色度の高い変色が見いだされことが開示されている。しかしながら、これらの複合酸化物を樹脂に添加すると樹脂が黄変してしまうという問題を抱えていた。
【0007】
他方、レーザーマークを施すカード用の従来材料として、印刷適性、エンボス適性、ラミネート適性等の観点からポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)組成物が用いられてきた。しかしながら、PVC樹脂組成物にレーザーを照射すると加熱部から塩素ガスが発生する場合があり、また、廃棄時も特別に分別回収することが必要となるなど、煩雑な課題も多かった。そのため、PVC樹脂に代わる好適な樹脂材料として、耐熱性の高いポリカーボネート樹脂が注目されつつある。
【0008】
【特許文献1】特表2007―512215号公報
【特許文献2】特表平10―500149号公報
【特許文献3】特開2005−75674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を改善し、ポリカーボネート組成物が本来有する透明性、耐熱性、熱安定性等の特性を保持しつつ、レーザー光の照射で文字や記号等のマークが目視ではっきり認識出来る程度にコントラスト良くマーキング可能なレーザーマーキング性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意研究を行った結果、ポリカーボネート樹脂に、特定のビスマス系金属酸化物およびリン系酸化防止剤を併用添加することにより、驚くべきことに、透明性とマーキング前後の熱安定性(色相)に優れ、かつ文字や記号等のマークのコントラスト等の視認性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、下記一般式1で表されるビスマス系金属酸化物(B)0.01〜2重量部、および下記一般式2で表されるリン系酸化防止剤(C)0.05〜0.1重量部を含有することを特徴とするレーザーマーキング性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供するものである。
一般式1
Bi(1−x)
(一般式1中、Mは、ガドリウムおよびネオジムから選択される少なくとも1つの金属、xおよびyはそれぞれ0.001<x<0.5、1<y<2.5の関係を有する値である。)
一般式2
【化1】
(一般式2において、R1、R2は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明のレーザーマーキング性に優れたポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が本来備える、透明性、熱安定性等の特性を保持しつつ、レーザー照射により文字、記号及び画像等のマークが目視ではっきり認識できる程度にコントラスト良く視認性の高い鮮明な黒色マーキングができ極めて有用である。これらの樹脂組成物は、主にクレジットカード、銀行カード、交通カード、政府職員ID、パスポート、社員証、医療保険カード、住民票カード、運転免許証、車輌登録証等、多種多様なカード等のセキュリティー向上のためレーザーにより文字、記号及び画像等がより鮮明である樹脂シートとして好適に適用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本発明において、「マーキング」とは、文字、図柄、記号等を形成することを意味し、本発明に従うレーザーマーキングとは、通常、YAGレーザーなどによるレーザー光照射部がレーザー非照射部に対して相対的に明度の低い黒色または黒色様の色調を帯びることにより視認可能となるマーキングをいう。
【0014】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造された直鎖状ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0015】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。しかしながら、ハロゲンで置換されていないジヒドロキシジアリール化合物を使用することが環境面から好ましい。
【0016】
これらは、単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0017】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000〜100000、より好ましくは15000〜40000、さらに好ましくは、17000〜28000の範囲である。
【0018】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0019】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0020】
本発明にて使用されるビスマス(Bi)系金属酸化物粒子(B)は、下記一般式1で表わされる化合物からなるものが挙げられる。
一般式1
Bi(1−x)
(式中、Mはガドリウムおよびネオジムから選択される少なくとも1つの金属、xおよびyはそれぞれ0.001<x<0.5、1<y<2.5の関係を有する値である。)で表される。
【0021】
また、本発明に使用されるビスマス系金属酸化物は、樹脂への分散性を保持するため、粒子の形態が好ましく、その粒子径が小さい程、より高精細なマーキングを可能にする。
その粒子径は、平均粒子径D50が好ましくは10μm以下、1μm以下がより好ましい。
本発明に使用されるビスマス系金属酸化物は、三酸化ビスマスおよび三酸化ガドリウムを原料とするものや、三酸化ビスマスおよび三酸化ネオジムを原料とするものから製造された化合物が好適である。
このビスマス系金属酸化物は、市販品として容易に入手可能であり、市販品としては、例えば、東罐マテリアル・テクノロジー社製42−920Aなどが挙げられる。
【0022】
ビスマス系金属酸化物(B)の配合量としては、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.003〜3重量部である。配合量が0.003重量部未満であると十分なレーザーマーキング効果が得られにくくなるため好ましくない。一方、3重量部を超えると得られる樹脂組成物からなるシートや成形体の外観が損なわれるため好ましくない。より好ましくは、0.005〜2重量部の範囲である。
【0023】
本発明にて使用されるリン系酸化防止剤(C)としては、下記一般式2および一般式3で表わされる化合物からなるもの挙げられる。
一般式2
【0024】
【化1】
(一般式2において、R5、R6は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。)。
一般式3
【0025】
【化2】
(一般式3において、R7は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、cは0〜3の整数を示す。)
【0026】
一般式2の化合物としては3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンなどがあり、アデカ社製アデカスタブPEP−36が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
一般式3の化合物としては住友化学社製スミライザーP−168が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
【0027】
リン系酸化防止剤(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.01〜0.2重量部である。配合量が0.01重量部未満であると十分な酸化防止効果が得られず熱安定性(色相)に劣り、これにより生地部と文字などのマーク部分とのコントラスト性が小さくなるため好ましくない。一方、0.2重量部を超えると成形加工中の滞留時に熱安定性が不十分となり、黄変するために好ましくない。より好ましくは、0.05〜0.10重量部である。
【0028】
本発明のレーザーマーキング性に優れたポリカーボネート樹脂組成物には、所望によっては公知の各種添加剤、ポリマー材料などを添加することができる。例えば、長期間、光に暴露された際の樹脂成形品の変色を抑制するために、ヒンダードアミン系の耐光安定剤を、さらに、鮮やかな色調を得るために、ベンゾオキサゾール系の蛍光増白剤およびこれらを併用して添加してもよい。
【0029】
また、難燃性が必要とされる場合、公知の各種難燃剤、例えば、テトラブロモビスフェノールAオリゴマーなどの臭素系難燃剤、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのモノリン酸エステル類、ビスフェノールAジホスフェート、レゾルシンジホスフェート、テトラキシレニルレゾルシンジホスフェートなどオリゴマータイプの縮合リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウムおよび赤燐などのリン系難燃剤、各種シリコーン系難燃剤、あるいは難燃性をより高めるために、芳香族スルホン酸の金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩があげられ、好適には、4−メチル−N−(4−メチルフェニル)スルフォニル−ベンゼンスルフォンアミドのカリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3−3′−ジスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩等などの有機金属塩なども添加することができる。これらの難燃剤の中でも、リン系難燃剤は、難燃性を向上させるばかりでなく、流動性をも向上させることができることから好適に用いることができる。
【0030】
さらに、上記以外の公知の添加剤、例えば、滑剤[パラフィンワックス、n−ブチルステアレート、合成蜜蝋、天然蜜蝋、グリセリンモノエステル、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、ペンタエリスリトールテトラステアレート等]、着色剤[例えば酸化チタン、カーボンブラック、染料]、充填剤[炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、ガラス球、ガラスフレーク、カーボン繊維、タルク、マイカ、各種ウィスカー類等]、流動性改良剤、展着剤[エポキシ化大豆油、流動パラフィン等]、さらには他の熱可塑性樹脂や各種耐衝撃改良剤(ポリブタジエン、ポリアクリル酸エステル、エチレン・プロピレン系ゴム等のゴムに、メタアクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル等の化合物をグラフト重合してなるゴム強化樹脂等が例示される。)を必要に応じて添加することができる。
【0031】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂の実施の形態および順序には何ら制限はない。例えば、ポリカーボネート樹脂(A)、ビスマス系金属酸化物(B)、リン系酸化防止剤(C)を任意の配合量で計量し、タンブラー、リボブレンダー、高速ミキサー等により一括混合した後、混合物を通常の単軸押出機または2軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット化させる方法、あるいは、個々の成分を一部または全てを別々に計量し、複数の供給装置から押出機内へ投入し、溶融混合する方法、さらには、ポリカーボネート樹脂成分(A)、ビスマス系金属酸化物(B)、リン系酸化防止剤(C)を高濃度に配合し、一旦溶融混合してペレット化し、マスターバッチとした後、当該マスターバッチとポリカーボネート樹脂を所望の比率により混合することもできる。そして、これらの成分を溶融混合する際の、押出機へ投入する位置、押出温度、スクリュウ回転数、供給量など、状況に応じて任意の条件が選択され、ペレット化することができる。
【0032】
本発明によるレーザーマーキング用樹脂組成物から成形されたシート成形品等に対し、その所望位置にレーザー光線を照射するだけで、容易に鮮明な黒色のマーキングが行われる。所望の形状のマーキングを行うには例えばレーザー光線を適当なスポットにして対象物の表面を走査する方法、レーザー光線をマスクすることによって所望形状のレーザー光とし、これを対象物の表面に照射する方法などが挙げられる。使用されるレーザーの種類としては特に限定はなく、炭酸ガスレーザー、ルビーレーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザーなどがいずれも可能である。特にYAGレーザーが好ましい。YAGレーザーは、波長が1.06μmであり、樹脂自身によってそのエネルギーが吸収されることが殆どないため樹脂の燃焼・気化が起こり難い。特に好ましいくはスキャン式のNd:YAGレーザー等がある。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例中の「部」や「%」は特に断りのない限り重量基準に基づく。
【0034】
使用した配合成分の詳細は、以下のとおりである。
ポリカーボネート樹脂(A):
ビスフェノールAとホスゲンとから合成されたポリカーボネート樹脂
(粘度平均分子量:23000、)
(住化スタイロンポリカーボネート製カリバー200−3、以下、PCと略記)
ビスマス系金属酸化物(B):
三酸化ビスマスと三酸化ネオジムから合成された金属酸化物粒子
(Bi−Nd、粒径1.0μm)
(東罐マテリアル・テクノロジー社製42―920A、以下、RMと略記)
リン系酸化防止剤(C):
3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン
(ADEKA社製リン系酸化防止剤PEP−36、以下AOと略記)
【0035】
表1、表2に示す配合成分及び配合比率に基づき得られた各種樹脂組成物のペレットを120℃で4時間乾燥した後に、射出成形機(日本製綱社製J100E2−P)にて、溶融温度300℃の条件下、評価用のカラーチップ(平板試験片)(サイズ:60mm×60mm×2mm)を作成した。
【0036】
以下、本発明における各種評価項目及び測定方法について説明する。
1.発色性評価(黒色マーキング性)
得られたカラーチップにYAGレーザー(オムロン社製レーザーフロントSL475K)を照射し、送りスピード1200mm/秒、入力電流13.0A、Q−sw周波数5kHzの条件で、サンプル文字をレーザーマーキングした。黒色のサンプル文字が目視ではっきり認識出来る場合を、良好(◎)、目視で認識できる場合を(○)、目視で認識性に劣る場合を不良(×)とした。
【0037】
2.色相評価
得られたカラーチップの色相を、村上色彩研究所社製スペクトロフォトメーターCMS35SPを用い、D65光源、視野角10度の条件で測定した。マーキング後の黄色度が7.0以下である場合を色相が良好であるとした。結果を表1及び表2に示す。
【0038】
3.印字鮮明性(コントラスト)
得られたカラーチップのマーキング箇所の印字鮮明性(コントラスト)を判定した。判定基準は以下の通りである。
印字鮮明性は、目視で判定し、生地部の色とマーキング文字色のコントラストがとても良好「◎」、生地部の色とマーキング文字色のコントラストが良好「○」、生地部の色とマーキング文字色のコントラストが不良「×」と評価した。
結果を表1及び表2に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
実施例1〜4に示すように、本発明の構成要件を満足するものについては、要求性能を満たしていた。
一方、比較例1〜4に示すように、本発明の構成要件を満足しないものについては、それぞれ次のとおり欠点を有していた。
比較例1は、酸化防止剤(AO)の配合量が規定量よりも少ない場合であり、色相に劣っていた。
比較例2は、酸化防止剤(AO)の配合量が規定量よりも多い場合であり、色相に劣っていた。
比較例3は、レーザーマーキング剤(RM)の配合量が規定量よりも少ない場合であり、文字の発色性に劣っていた。
比較例4は、レーザーマーキング剤(RM)の配合量が規定量よりも多い場合であり、印字鮮明性に劣っていた。