(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる液面検知装置及び自動分析装置を説明する。本実施形態に係る液面検知装置は、容器内の液面を検知するための装置である。本実施形態に係る液面検知装置は、自動分析装置に組み込まれているものとする。しかしながら、本実施形態に係る液面検知装置を組み込む装置は、自動分析装置に限定されず、如何なる装置に組み込まれても良い。また、液面検知装置は、単体の装置として設けられても良い。
【0011】
図1は、本実施形態に係る自動分析装置の概略的な構造を示す図である。
図1に示すように、自動分析装置の筐体には、反応ディスク11、サンプルディスク13、第1試薬庫15、第2試薬庫17、サンプルアーム19―1、サンプルプローブ21―1、第1試薬アーム19―2、第1試薬プローブ21―2、第2試薬アーム19―3、第2試薬プローブ21―3、撹拌機構23、測光機構25、及び洗浄機構27等が搭載されている。
【0012】
反応ディスク11は、環状に配列された複数の反応管31を保持する。反応ディスク11は、既定の時間間隔で回転と停止とを交互に繰り返す。反応管31は、例えば、ガラスにより形成されている。サンプルディスク13は、反応ディスク11の近傍に配置されている。サンプルディスク13は、検体が収容された検体容器33を保持する。サンプルディスク13は、分注対象の検体が収容された検体容器33が検体吸引位置に配置されるように回転する。第1試薬庫15は、検体の測定項目に選択的に反応する第1試薬が収容された複数の第1試薬ボトル35を保持する。第1試薬庫15は、分注対象の第1試薬が収容された第1試薬ボトル35が第1試薬吸引位置に配置されるように回転する。第2試薬庫17は、反応ディスク11の近傍に配置される。第2試薬庫17は、第1試薬に対応する第2試薬が収容された複数の第2試薬ボトル37を保持する。第2試薬庫17は、分注対象の第2試薬が収容された第2試薬ボトル37が第2試薬吸引位置に配置されるように回転する。
【0013】
反応ディスク11とサンプルディスク13との間にはサンプルアーム19―1が配置される。サンプルアーム19―1の先端には、サンプルプローブ21―1が取り付けられている。サンプルアーム19―1は、サンプルプローブ21―1を上下動可能に支持している。また、サンプルアーム19―1は、円弧状の回転軌跡に沿って回転可能にサンプルプローブ21―1を支持している。サンプルプローブ21―1の回転軌跡は、サンプルディスク13上の検体吸引位置や反応ディスク11上の検体吐出位置を通過する。サンプルプローブ21―1は、サンプルディスク13上の検体吸引位置に配置されている検体容器33から検体をポンプ(図示せず)を利用して吸引し、反応ディスク11上の検体吐出位置に配置されている反応管31に検体をポンプ(図示せず)を利用して吐出する。
【0014】
また、サンプルアーム19−1には液面検知装置22−1が設けられている。液面検知装置22−1は、超音波を送受波することにより、検体吸引位置に配置された検体容器33に収容された検体の液面を検知する。なお、液面検知装置22−1は、必ずしもサンプルアーム19−1に設けられている必要はない。液面検知装置22−1は、サンプルアーム19−1とは別体に設けられても良い。
【0015】
反応ディスク11の外周近傍には第1試薬アーム19―2が配置される。第1試薬アーム19―2の先端には第1試薬プローブ21―2が取り付けられている。第1試薬アーム19―2は、第1試薬プローブ21―2を上下動可能に支持する。また、第1試薬アーム19―2は、円弧状の回転軌跡に沿って回転可能に第1試薬プローブ21―2を支持している。第1試薬プローブ21―2の回転軌跡は、第1試薬庫15上の第1試薬吸引位置と反応ディスク11上の第1試薬吐出位置とを通る。第1試薬プローブ21―2は、第1試薬庫15上の第1試薬吸引位置に配置されている第1試薬ボトル35から第1試薬をポンプ(図示せず)を利用して吸引し、反応ディスク11上の第1試薬吐出位置に配置されている反応管31に第1試薬をポンプ(図示せず)を利用して吐出する。
【0016】
また、第1試薬アーム19−2には液面検知装置22−2が設けられている。液面検知センサ22−2は、超音波を送受波することにより、第1試薬吸引位置に配置された第1試薬ボトル35に収容された第1試薬の液面を検知する。なお、液面検知装置22−2は、必ずしも第1試薬装置19−2に設けられている必要はない。液面検知装置22−2は、第1試薬アーム19−2とは別体に設けられても良い。
【0017】
反応ディスク11の外周近傍には第2試薬アーム19―3が配置される。第2試薬アーム19―3の先端には第2試薬プローブ21―3が取り付けられている。第2試薬アーム19―3は、第2試薬プローブ21―3を上下動可能に支持する。また、第2試薬アーム19―3は、円弧状の回動軌跡に沿って回転可能に第2試薬プローブ21―3を支持している。第2試薬プローブ21―3の回転軌跡は、第2試薬庫17上の第2試薬吸引位置と反応ディスク11上の第2試薬吐出位置とを通る。第2試薬プローブ21―3は、第2試薬庫17上の第2試薬吸引位置に配置されている第2試薬ボトル37から第2試薬をポンプ(図示せず)を利用して吸引し、反応ディスク11上の第2試薬吐出位置に配置されている反応管31に第2試薬をポンプ(図示せず)を利用して吐出する。
【0018】
また、第2試薬アーム19−3には液面検知装置22−3が設けられている。液面検知装置22−3は、超音波を送受波することにより、第2試薬吸引位置に配置された第2試薬ボトル37に収容された第1試薬の液面を検知する。なお、液面検知装置22−3は、必ずしも第2試薬アーム19−3に設けられている必要はない。液面検知装置22−3は、第2試薬アーム19−3とは別体に設けられても良い。
【0019】
反応ディスク11の外周近傍には撹拌機構23が配置される。撹拌機構23は撹拌子23sを装備している。撹拌機構23は、撹拌子23sを上下動可能に支持する。撹拌機構23は撹拌子23sにより、反応ディスク11上の撹拌位置に配置された反応管31内の検体と第1試薬との混合液、または、検体と第1試薬と第2試薬との混合液を攪拌する。以下、これら混合液を反応液と呼ぶことにする。
【0020】
図1に示すように、筐体内部の反応ディスク11近傍には測光機構25が設けられている。具体的には、測光機構25は、光源部210と光検出部220とを有している。光源部210は、反応ディスク11内の測光位置に向けて光を照射する。光源部210にはハロゲンランプや発光ダイオードが用いられる。光検出部220は、光源部210から照射され反応管31及び反応液を透過した光を検出する。光検出部220は、検出された光の強度に応じた出力値を有する出力信号を生成する。出力信号は吸光度や測定項目の計測値等の計算に用いられる。
【0021】
反応ディスク11の外周には洗浄機構27が設けられている。洗浄機構27は、洗浄ノズルと乾燥ノズルとを搭載している。洗浄機構27は、反応ディスク11の洗浄位置にある反応管31を洗浄ノズルで洗浄し、乾燥ノズルで乾燥する。
【0022】
以下、本実施形態に係る自動分析装置に装備された液面検知装置22−1、22−2、22−3について詳細に説明する。本実施形態に係る液面検知装置22−1、22−2、22−3の構成及び動作は略同一である。従って、以下の説明において液面検知装置22−1、22−2、22−3として検体容器33に収容された検体の液面を検知するための液面検知装置22−1を例に挙げて説明する。なお、以下の説明において液面検知装置22−1、22−2、22−3を特に区別せず、単に液面検知装置22と表記する。また、サンプルプローブ21−1、第1試薬プローブ21−2、及び第2試薬プローブ21−3を特に区別せず、分注プローブ21と表記し、サンプルアーム19−1、第1試薬アーム19−2、及び第2試薬アーム19−3を特に区別せず、分注アーム19と表記する。
【0023】
ここで、従来例に係る液面検知装置の問題点について詳細に説明する。
図13は、従来例に係る液面検知装置の液面検知センサを模式的に示す図である。
図13に示すように、従来例に係る液面検知センサは、複数の超音波振動子100を有している。複数の超音波振動子100の送受波面101を囲うように筒状のガイド300が設けられる。超音波振動子100から発生された超音波は、ガイド300の内側を伝播し、液面検知位置に配置された検体容器200に向けて照射される。検体容器200に収容された液面202等により反射された超音波は、ガイド300の内側を伝播し、超音波振動子100により受波される。
【0024】
超音波振動子100から送波された超音波は、中心軸付近では直進するが、超音波振動子100から離れるにつれて拡散する。しかし、ガイド300を設けることにより、ガイド300の無い場合よりも超音波の指向性を高めることができる。従ってガイド300を設けない場合よりも、ガイド300を設ける方が、より液面検知センサから離れた液面202を精確に検知することができる。さらに検体容器200もその形態がガイドの役割を果たし、液面より上の検体容器200の部分が、ガイド300と同様の超音波集束効果を発揮する。このようにして液面202に到達した超音波は、液面202で反射し、超音波振動子100により受波される。
【0025】
検体容器200は概ね細径である。従って、検体の特性と検体容器200の壁面の表面の状態とにより、
図14に示すように検体容器200に含まれる検体の液面203がメニスカスを形成する、すなわち、凹面形状を有する場合がある。この場合、液面203により反射して超音波振動子100により受波される超音波は、直進波W1と多重反射波W2との合成波を形成する。なお、直進波W1は、超音波振動子100から直接的にメニスカス形状を有する液面203に到達し、液面203から直接的に超音波振動子100に到達した超音波である。また、多重反射波W2は、液面203により反射し、当該液面203より上方の検体容器200の壁面部分とガイド300の内壁とで繰り返し反射しながら超音波振動子100に到達する超音波である。直進波W1と多重反射波W2との合成波は、超音波振動子100により受波される。
【0026】
図15は、従来例に係る液面検知装置に関し、周波数400kHz及び直径10mmを有する超音波振動子で検体容器の液面を検知したときの受信信号のオシロスコープ画像の一例を示す図である。
図15のオシロスコープ画像の横軸は時間に規定され、縦軸は反射波の受信信号の電圧(受波電圧)に規定される。
図15において、ガイドはステンレスパイプであり、長さは50mm、内径は10mmである。液面までの距離は、時刻Aから時刻Bまでの時間差に音速の1/2を乗じることにより算出可能である。時刻Aは超音波の送信時刻であり、時刻Bは反射波の受信開始時刻である。受信電圧の波形は、液面の周辺からの反射波も反映しており、
図15においては、実際の液面位置よりも近距離の位置にも受波電圧、すなわち、ノイズが確認される。
【0027】
また、特許文献3にも記載されているように、液面検知装置によって検体容器内の液面を検知する場合、特定の液面高さからの反射波の受信強度が減少し、反射波の検知が困難となる現象が発生する場合がある。特許文献3においては、検体容器の上端からの反射の影響のためと述べられている。
【0028】
本願発明者達は、液面検知センサでテストを行い、特許文献3と同様に反射波の受信信号の強度の減少を確認した。この現象を考察することにより、本願発明者達は、特許文献3に示された以外の当該強度の減少の理由を見出した。すなわち、検体が細径を有する検体容器に収容されたことで液面がメニスカス形状を形成し、液面上部の検体容器の内壁とガイドの内壁とにおいて超音波が多重反射する。そのために、液面が特定の高さにある場合、超音波振動子の送受波面において直進波と多重反射波とが弱めあう干渉を起こし、反射波の受信信号の強度が減少する。換言すれば、直進波と多重反射波とが超音波振動子の送受波面において互いに逆位相になる液面の高さの場合、反射波の受信信号の強度が低下してしまう。従って、この高さに液面がある場合、当該液面の検知精度が悪化してしまう。
【0029】
本実施形態に係る液面検知装置22は、ガイドの内壁の先端部分に限定して吸音体を設けることにより、直進波と多重反射波との逆位相に起因する反射波の受信強度の劣化し、液面の検知精度を向上することを実現する。
【0030】
図2は、本実施形態に係る液面検知装置22と分注プローブ19とを概略的に示す模式図である。液面検知装置22は、液面検知センサ51を有する。液面検知センサ51は、例えば、サンプルディスク13に設定された検体吸引位置P1に設けられる。すなわち、検体吸引位置P1は液面検知位置を兼ねるものとする。
【0031】
図2に示すように、液面検知センサ51は、基台53を有している。基台53には1又は複数の超音波振動子55が支持されている。本実施形態では基台53に複数の超音波振動子55が設けられていることとする。超音波振動子55は、超音波を送受波する。超音波振動子55は、送信専用の振動子と受信専用の振動子とを有するタイプでも良いし、送受信用の振動子を有するタイプでも良い。超音波振動子55としては、電極に挟まれた圧電セラミックを含む圧電振動子でも良いし、半導体基板に形成されたMUT(Micromachining Ultrasound Transducer:静電容量型トランスデューサ)素子でも良い。超音波振動子55の表面は超音波の送受波面を形成する。
【0032】
基台53には超音波振動子55の送受波面を囲うようにガイド57が取り付けられている。ガイド57は、超音波振動子55の送受波面を囲み一方向に延在する。ガイド57は、中空形状を有している。ガイド57は、超音波振動子55から検体容器33に収容された検体への超音波、又は検体容器33に収容された検体から超音波振動子55への超音波の指向性を高めるために設けられる。換言すれば、ガイド57は、超音波振動子55からの超音波、又は超音波振動子55への超音波の伝播経路を空間的に制限するための構造物である。例えば、ガイド57は筒形状を有している。ガイド57は、例えば、超音波の反射率の高い金属等により構成される。
【0033】
ガイド57の内壁には、吸音部材により形成された吸音体59が設けられている。吸音体59は、ガイド57の内壁のうちの先端部に限定して設けられている。先端部とは、ガイド57の中心軸に沿って超音波振動子55とは反対側の部分を指すものとする。換言すれば、先端部とは、ガイド57の開口側の部分である。吸音体59の詳細については後述する。
【0034】
検体吸引位置P1には、液面検知センサ51とは別に分注プローブ21が設けられる。分注プローブ21は、分注ポンプ61にパイプ等の流路63を介して接続されている。分注プローブ21は、分注ポンプ61により発生される吸引力により、検体吸引位置P1に設けられた検体容器33内の検体を吸引し、分注ポンプ61により発生される吐出力により、反応ディスク11に設定された検体吐出位置に配置された反応管31に検体を吐出する。
【0035】
なお、上記の説明において、検体吸引位置P1に液面検知装置22が設けられるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。液面検知装置22は、検体容器33内の検体の液面を検知可能であれば、検体吸引位置P1ではなく如何なる位置に設けられても良い。
【0036】
図3は、本実施形態に係る自動分析装置の液面検知に係る機能ブロックを示す図である。
図3に示すように、本実施形態に係る自動分析装置は、制御部71を中枢として、液面検知装置22、分注プローブ21、分注アーム19、アーム駆動部73、ポンプ61、及びポンプ駆動部75を有している。液面検知装置22は、液面検知センサ51、送信部81、受信部83、及び液面高さ計測部85を有している。
【0037】
上記の通り、分注プローブ21は、分注アーム19に所定の回転軌道に沿って回転可能に支持されている。また、分注プローブ21は、分注アーム19を昇降可能に支持されている。分注アーム19は、アーム駆動部73に接続されている。アーム駆動部73は、例えば、分注アーム19に設けられたモータ等により実現される。アーム駆動部73は、制御部71による制御に従って駆動して分注プローブ21を回転軌道に沿って回転させたり、下降又は上昇させる。
【0038】
また、分注プローブ21は、流路を介して分注ポンプ61に接続されている。分注ポンプ61は、ポンプ駆動部75に接続されている。ポンプ駆動部75は、例えば、分注アーム19に設けられたモータにより接続される。ポンプ駆動部75は、制御部71による制御に従って駆動してポンプを作動し、分注プローブ21に検体を吸引させたり、吐出させたりする。
【0039】
液面検知センサ51には送信部81と受信部83とが接続されている。送信部81は、制御部71による制御に従って、液面検知センサ51に含まれる超音波振動子55に駆動信号を供給して当該超音波振動子55から超音波を送波する。発生された超音波は、ガイド57の内側を伝播して検体容器33に向けて照射される。検体容器33内の液面等により反射された超音波は、ガイド57の内側を伝播して超音波振動子55に受波される。受信部83は、制御部71による制御に従って、超音波振動子55により受波された超音波の強度に応じた電気信号(受信信号)を発生する。発生された受信信号は、液面高さ計測部85に供給される。液面高さ計測部85は、超音波振動子55により送波されてから超音波振動子55により受波されるまでの時間と、超音波の伝播速度とに基づいて、超音波振動子55から検体容器33に含まれる検体の液面までの距離(以下、液面高さ情報と呼ぶ)を算出する。液面高さ情報は制御部71に供給される。
【0040】
制御部71は、アーム駆動部73とポンプ駆動部75とを同期的に制御し、検体吸引位置P1に分注プローブ21を配置し、検体吸引位置P1に配置された検体容器33に含まれる検体から所定量の検体を吸引する。この際、制御部71は、液面高さ計測部85からの液面高さ情報に応じてアーム駆動部73を制御する。具体的には、制御部71は、分注プローブ21の先端の下降距離を液面高さ情報に対して繰り返し比較し、分注プローブ21の先端の現在の高さに応じて分注プローブ21の下降速度を制御する。例えば、制御部71は、分注プローブ21の先端が液面に到達する直前までは比較的高速で分注プローブ21を下降させ、分注プローブ21の先端が液面に到達してから所定の距離までは比較的低速で下降させ、当該所定の距離に到達したことを契機として分注プローブ21を停止させる。同様に、制御部71は、アーム駆動部73とポンプ駆動部75とを同期的に制御し、検体吐出位置に分注プローブ21を配置し、検体吐出位置に配置された反応管31に検体を吐出する。
【0041】
次に、本実施形態に係る液面検知センサ51の構造及び効果について詳細に説明する。
【0042】
図4は、本実施形態に係る液面検知センサ51の縦断面図である。
図4に示すように、本実施形態に係る液面検知センサ51は、ガイド57を有している。ガイド57は、機械的に安定性の高い部材、例えば、金属やプラスチックにより形成される。検体容器33内の液面の高さに依らずに液面を検知可能なように、ガイド57の長さL1と内径R1とが設定される。ここで、長さL1は、超音波振動子55の送受波面からガイド57の先端までの、ガイド57の延在方向に沿う長さにより規定され、内径R1は、ガイド57の内壁の直径により規定される。ガイド57の延在方向は、例えばガイド57が円筒形状を有している場合、回転対称軸である中心軸A0に沿う方向である。
【0043】
ガイド57の内壁には吸音体59が設けられる。吸音体59は、例えば、糊等の接着剤によりガイド57に接着されても良いし、ガイド57に嵌め込まれても良い。吸音体59の材料としては、音波が反射しにくい多孔質部材が良い。ただし、本実施形態に係る吸音体の材料としては、多孔質部材に限定されず、発泡素材や本来は吸音を目的としない、例えば、紙等の吸水素材や吸油素材であっても良い。
【0044】
図4に示すように、吸音体59は、ガイド57の内壁の先端部に限定して設けられる。ここで、ガイド57は、超音波振動子55に近い側の端部と遠い側の端部とを有するが、先端部はガイド57の超音波振動子55から遠い側の端部である。すなわち、ガイド57の延在方向に関する一端部には超音波振動子55が設けられており、他端部の内側には吸音体59が設けられている。吸音体59をガイド57の内壁の先端部に限定して設けることによる効果は以下の通りである。吸音体59により反射された超音波は、吸音体59により超音波が吸収又は透過されるため、ガイド57の内壁により直接的に反射された場合に比して強度が減少する。ガイド57の内壁の全面に吸音体59を設けた場合、ガイド57の内側で反射する全ての超音波の強度が減衰してしまうため、直進波以外の超音波の強度が著しく減少してしまう。そのため、液面からの反射波の受信信号の強度が著しく減少し、ひいては、液面の検知精度が劣化してしまう。本実施形態のように、ガイド57の内壁の先端部に限定して吸音体59を設けた場合、ガイド57の内側で反射する超音波のうちの多重反射する超音波を支配的に減衰させることができる。換言すれば、受信信号のうちの直進波の成分を多重反射の成分に比して強調させることが可能となる。従って、液面の検知精度の向上が実現する。また、ガイド57の先端の開口部近傍においては、ガイド57から放出される超音波による急激な圧力変動が生じる。この急激な圧力変動を軽減するため、ガイド57の内壁の先端部に吸音体59が設けられると良い。
【0045】
具体的には、ガイド57の内径方向に沿う吸音体59の厚みT2は、ガイド57の内径R1の10%以下に設定されると良い。ここで、内径方向とは、ガイド57が円筒状である場合には、内壁の一点からガイド57の回転中心となる中心軸に向かう方向である。また、延在方向(中心軸A0)に関する吸音体59の長さL2は、ガイド57の長さL1の90%以下に設定されると良い。換言すれば、ガイド57の延在方向に関する吸音体59の長さは、ガイド57の延在方向において、超音波振動子55の送受波面からガイド57の先端までの長さの90%以下である。より好ましくは、50%以下である。また、吸音体59は、ガイドに比して透過又は吸収しやすい材料で形成されると良い。換言すれば、吸音材はガイドに比して反射しにくい材料で形成されると良い。また、超音波の指向性を確保するため、ガイド57の内壁において超音波が反射されると良い。そのため、吸音体59の音響インピーダンスとガイド57の音響インピーダンスとが異なるように吸音体59の音響インピーダンスが選択・形成されると良い。具体的には、吸音体59の音響インピーダンスは、吸音体59の材料として使用可能な樹脂材の音響インピーダンスの値を包含可能な5×10
6kg/m
2s以下に設計されると良い。
【0046】
図5は、検査容器の内径が15mmの場合における、本実施形態に係る液面検知センサと従来例に係る液面検知センサとの各々の、液面高さ毎の電圧のグラフを示す図である。
図6は、検査容器の内径が11mmの場合における、本実施形態に係る液面検知センサと従来例に係る液面検知センサとの各々の、液面高さ毎の電圧のグラフを示す図である。
図5及び
図6において、液面検知センサの先端から検体容器の開口までの距離は15mmに設定された。検体容器は、ガラス製の長さ100mmの試験管である。従来例に係る液面検知センサのガイドには吸音体が設けられておらず、本実施形態に係る液面検知センサのガイドの先端部には吸音体が設けられている。吸音体としてはクリーンルーム用清拭紙で、ガイドの先端から10mmの範囲に設けられた。吸音体は厚み0.1〜0.3mmであった。ガイドはステンレス製であり、厚み1mm、内径10mm、長さ50mmであった。このように、本実施形態に係る吸音体の厚みは、ガイドの内径の10%以下に設定され、延在方向に関する吸音体の長さは、ガイドの長さの90%以下に設定されている。試験管内に検体を少しずつ滴下しながら本実施形態に係る液面検知センサと従来例に係る液面検知センサとの受信信号の電圧値が記録された。試験管内の検体の液面はメニスカス形状を有していた。液面が試験管の底面から75mm近傍の高さにある場合において、従来例に係る液面検知センサの受信信号の強度が、
図5及び
図6に示すように、大きく低下した。しかしながら、本実施形態に係る液面検知センサにおいては、液面高さによらず受信信号の電圧値が略均一であった。
【0047】
図7は、液面の高さが試験管の底面から75mmの場合における、本実施形態に係る液面検知センサと従来例に係る液面検知センサとのオシロスコープ画像を示す図である。
図7の(a)は、従来例に係る液面検知センサにより受波された反射波の受信信号のオシロスコープ画像を示し、
図7の(b)は、本実施形態に係る液面検知センサにより受波された反射波の受信信号のオシロスコープ画像を示す。
図7のオシロスコープ画像の横軸は時間に規定され、縦軸は反射波の受信信号の電圧に規定される。
図7に示すように、従来例に係る液面検知センサの受信信号の時刻Bにおける電圧値は、他の時刻における電圧値(ノイズ)に近く、閾値により他の時刻における電圧値から識別しづらい。一方、本実施形態に係る液面検知センサの受信信号の時刻Bにおける電圧値は、他の時刻における電圧値に比して高く、閾値により他の時刻における電圧値から容易に識別できる。
【0048】
従って、本実施形態に係る液面検知装置のように、ガイド57の内壁の先端部に限定して吸音体59を設けることにより、直進波と多重反射波との逆位相での重なりによる特定の液面高さからの反射波の受信信号の急激な低下を低減することが可能となる。
【0049】
なお、吸音体59は、ガイド57の内壁の先端部の全域に亘って設けられる必要はない。すなわち、吸音体59は、ガイド57の内壁の先端部の一部に設けられれば良い。また、吸音体59は一個の物体であっても良いし、複数の物体であっても良い。この場合、複数の吸音体59は、ガイド57の内壁の先端部に限定して設けられる。また、吸音体59は、ガイド57の内壁において不規則に設けられると良い。例えば、吸音体59が不規則な形状に形成されると良い。あるいは、複数の吸音体59がガイド57の先端から異なる距離に設けられると良い。また、複数の吸音体59が延在方向(中心軸R0)に沿って不定間隔あるいは延在方向(中心軸R0)回りに不定間隔に設けられたり、大きさや形状が異なるように形成されても良い。例えば、
図8に示すように、吸音体59−1と吸音体59−2とは別個の物体であり、吸音体59−1と吸音体59−2とは、ガイド57の先端から異なる距離に設けられている。吸音体59の形状は、
図8に示すような、ガイド57の縦断面において突起形状であっても良いし、波形状であっても良い。また、吸音体59に穴が形成されても良い。吸音体59が規則的に設けられた場合、特定の液面高さからの反射波の受信信号が他の液面高さからの反射波の受信信号に比して強まってしまう場合がある。吸音体59を不規則に設けることにより、直進波と多重反射波との位相のばらつきを増大させることができ、直進波と多重反射波との逆位相での重なりに起因する、特定の液面高さからの反射波の受信信号の急激な低下をより低減することが可能となる。
【0050】
なお、直進波と多重反射波との位相のばらつきを増大させるために、ガイド57に空隙が設けられても良い。例えば、
図9に示すように、パンチングメタルのように、ガイド57に複数の孔91が設けられると良い。ガイド47の内側を伝播する超音波は、複数の孔91からを介して外部に放出される。複数の孔91は、
図9に示すように、規則的に設けられても良いし、不規則的に設けられても良い。例えば、複数の孔91の大きさ及び形状をばらつかせることにより不規則性を高めても良いし、複数の孔91の間隔をばらつかせることにより不規則性を高めても良い。複数の孔91が不規則に設けられる場合、直進波と多重反射波との位相のばらつきを増大させることができ、直進波と多重反射波との逆位相での重なりに起因する、特定の液面高さからの反射波の受信信号の急激な低下をより低減することが可能となる。
【0051】
図10、
図11、
図12に示すように、ガイド57が間隙92を空けて複数に分離されても良い。例えば、
図10、
図11、
図12に示すように、ガイド57は、間隙92を空けてガイド部分57−1とガイド部分57−2とに分離されている。間隙92は、
図10に示すように、水平に設けられても良いし、
図11に示すように、非水平に設けられても良い。非水平に間隙92が設けられる場合、直進波と多重反射波との位相のばらつきを増大させることができ、直進波と多重反射波との逆位相での重なりに起因する、特定の液面高さからの反射波の受信信号の急激な低下をより低減することが可能となる。また、間隙92は、直線形状に限定されず、
図12に示すように、ジグザグ形状等の非直線形状を有しても良い。間隙92は、螺旋形状であっても波形状等のその他の非直線形状であっても良い。なお間隙92の幅(ガイド57の延在方向(中心軸)に沿うガイド部分57−1とガイド部分57−2との間隔)は、ガイド47の内側を伝播する超音波を間隙92を介して外部に放出しやすくするため、超音波振動子55から送波される超音波の波長よりも長い方が好ましい。
【0052】
上記の通り、本実施形態に係る液面検知装置は、超音波振動子53は、超音波を送受波する。ガイド57は、超音波振動子53からの超音波又は超音波振動子53への超音波の指向性を高めるための、中空形状を有する構造体である。吸音体59は、ガイド57の内壁のうちのガイド57の先端部に限定して設けられる。
【0053】
この構成により、ガイド57の内壁の先端部に限定して吸音体59を設けた場合、ガイド57の内側で反射する超音波のうちの多重反射する超音波を支配的に減衰させることができる。換言すれば、受信信号のうちの直進波の成分を多重反射の成分に比して強調させることが可能となる。
【0054】
かくして、本実施形態によれば、超音波を用いて容器内の液面を検知する液面検知装置及び自動分析装置において、液面の検知の精度を向上することが可能となる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。