特許第6305809号(P6305809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 美和ロック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6305809-錠ケースの構造 図000002
  • 特許6305809-錠ケースの構造 図000003
  • 特許6305809-錠ケースの構造 図000004
  • 特許6305809-錠ケースの構造 図000005
  • 特許6305809-錠ケースの構造 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305809
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】錠ケースの構造
(51)【国際特許分類】
   E05B 9/08 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
   E05B9/08 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-72469(P2014-72469)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-194018(P2015-194018A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝則
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−332672(JP,A)
【文献】 特開2002−256733(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0017087(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 9/00−9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の木口に前板部と後板部が平行となり、前記扉の表裏面に一対の側板部が平行となって前記扉の内方に固定される錠ケースと、
少なくとも一方の前記側板部を前記前板部から前記後板部に渡ってケース外側からケース内側に向け凹ませて形成した溝状凹部と、
操作部材の外筒部において軸線方向一端側となる後端部で直径方向両端側に突出する一対の凸部と、
前記溝状凹部に形成され、前記外筒部の前記各凸部を進入させるために溝状凹部内壁の両側を切り欠いた一対の凸部進入切欠と、
前記溝状凹部内壁のケース内側となる溝状凹部内壁背面と、
前記溝状凹部内壁背面の延長上で前記前板部に穿設されるピン挿入穴と、
前記凸部進入切欠に挿入される前記凸部に穿設され、前記ピン挿入穴に挿入されて前記溝状凹部内壁背面に沿うピンが貫通するピン貫通固定穴と、
を具備することを特徴とする錠ケースの構造。
【請求項2】
請求項1記載の錠ケースの構造であって、
前記溝状凹部内壁を切り起こして形成され、前記溝状凹部内壁背面とで前記ピンを挟むピンガイド片が具備されることを特徴とする錠ケースの構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の錠ケースの構造であって、
一対の前記溝状凹部内壁背面のそれぞれに沿って挿入された一対の前記ピンの先端部を相互に離反方向に撓める乗り上げ段部が、前記ケース内側における前記後板部側に設けられることを特徴とする錠ケースの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠装置などの錠ケースの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、錠装置などの錠箱に対する操作部材の取付け構造は、ケース身とは別個に成型された任意形状の位置決め案内片を、ケース身の幅広側壁に形成した縦方向係合孔に予め係合させ、この位置決め案内片がケース身の幅広側壁から外れないような係合状態にした上で、挿入固定ピンをケース身の前壁の小孔から位置決め案内片に形成した上下のガイド小孔およびシリンダーユニットの外筒の係合部に突き刺していた(特許文献1参照)。ところが、従来の錠箱に対する操作部材の取付け構造は、組立部品点数が多いために、錠箱に対する操作部材の取付け作業に時間がかかる問題点や、錠箱自体がコスト高になるという問題点を有していた。そこで、同文献には、錠箱に操作部材を短時間で取付けることができ、錠箱のコストが低減できる操作部材の取付け構造が開示されている。
【0003】
この操作部材の取付け構造は、錠箱と、この錠箱の幅広側壁に固定的に装着される少なくとも1個の操作部材と、この操作部材を錠箱に固定的に装着するための複数本の細長状挿入固定ピンとから成る。錠箱の幅広側壁は、縦断面上、ケース身の内側に小突起状にそれぞれ上下に対向的に張り出し形成された複数個の小突起部を有する。これらの小突起部の外側湾曲面は、合計2本の挿入固定ピンの通過をそれぞれ許容する案内通路を構成する。これにより、錠箱に操作部材を短時間で取り付けることを可能とし、また錠箱のコストを低減することが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−256733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の操作部材の取付け構造は、平板状の幅広側壁に、幅広側壁の内壁面から突出するようにプレスで成形された2個の固定ピン用位置決め案内部や、嵌合孔、ダルマ用受け孔が形成されるため、切欠損失が大きくなり、側板部の強度が低下しやすかった。また、ピンと操作部材とに間隙が存在すると、固定後の操作部材にがたつきが生じた。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、少ない部品数で、且つ製造が容易であり、しかも、高い強度が得られる錠ケースの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の錠ケース11の構造は、扉15の木口39に前板部と後板部43が平行となり、前記扉15の表裏面45に一対の側板部47,49が平行となって前記扉15の内方に固定される錠ケース11と、
少なくとも一方の前記側板部を前記前板部から前記後板部43に渡ってケース外側からケース内側に向け凹ませて形成した溝状凹部17と、
操作部材の外筒部57において軸線方向一端側となる後端部59で直径方向両端側に突出する一対の凸部19と、
前記溝状凹部17に形成され、前記外筒部57の前記各凸部19を進入させるために溝状凹部内壁69の両側を切り欠いた一対の凸部進入切欠21と、
前記溝状凹部内壁69のケース内側となる溝状凹部内壁背面23と、
前記溝状凹部内壁背面23の延長上で前記前板部に穿設されるピン挿入穴25と、
前記凸部進入切欠21に挿入される前記凸部19に穿設され、前記ピン挿入穴25に挿入されて前記溝状凹部内壁背面23に沿うピン71が貫通するピン貫通固定穴27と、
を具備することを特徴とする。
【0008】
この錠ケース11の構造では、錠ケース11の一対の側板部47,49に、前板部から後板部43に渡ってケース外側からケース内側に向け凹む溝状凹部17が形成される。このため、錠ケース11は、折り曲げや歪みに対する剛性が高まる。
外筒部57は、凸部進入切欠21に進入させた凸部19に、溝状凹部内壁背面23に沿わして挿入したピン71が貫通する。凸部19のピン貫通固定穴27を貫通したピン71は、ケース内側より、溝状凹部内壁背面23および側板部ケース内側面によって強固に支持される。これにより、操作部材は、錠ケース11からの高い引き抜き強度が得られる。
また、一対のピン71は、ケース内側で溝状凹部内壁背面23に沿って凸部19のピン貫通固定穴27に通される。一対のピン71は、ケース内側で、溝状凹部17と平行となってこの溝状凹部17を挟む補強材として働く。これにより、錠ケース11は、溝状凹部17とピン71とが一体の構造体となって、側板部47,49の強度がさらに高められることになる。
しかも、錠ケース11は、溝状凹部17、凸部進入切欠21がプレス加工によって形成される。このため、錠ケース11は、操作部材を固定するために、ピン以外の別部材を必要とせず、溶接等、作業工数を増大させずに形成できる。
【0009】
本発明の請求項2記載の錠ケース11の構造は、請求項1記載の錠ケース11の構造であって、
前記溝状凹部内壁69を切り起こして形成され、前記溝状凹部内壁背面23とで前記ピン71を挟むピンガイド片29と、
【0010】
この錠ケース11の構造では、溝状凹部内壁背面23に沿わして挿入したピン71が、ピンガイド片29と溝状凹部内壁背面23とに挟まれ、そして、凸部19のピン貫通固定穴27を貫通する。ピン71は、ケース内側にて溝状凹部内壁背面23および側板部ケース内側面によって支持され、操作部材が取り付けられる。錠ケース11は、ピンガイド片29もプレス加工によって形成でき、錠ケース11は、操作部材を固定するために、ピン以外の別部材を必要とせず、溶接等、作業工数を増大させずに形成できる。
【0011】
本発明の請求項3記載の錠ケース11の構造は、請求項1または2記載の錠ケース11の構造であって、
一対の前記溝状凹部内壁背面23のそれぞれに沿って挿入された一対の前記ピン71の先端部77を相互に離反方向に撓める乗り上げ段部75が、前記ケース内側における前記後板部43側に設けられることを特徴とする。
【0012】
この錠ケース11の構造では、一対のピン挿入穴25のそれぞれから挿入されたピン71は、凸部19のピン貫通固定穴27を貫通した後、後板部43側に設けられる乗り上げ段部75に当たる。乗り上げ段部75に当たった一対のピン71は、さらに挿入されると、先端が乗り上げ段部75に乗り上げ、先端同士が互いに離れる方向に撓められ、拡開される。これにより、ピン71とピン貫通固定穴27との間に遊びがなくなり、接触状態となって凸部19ががたつき無くピン71に固定される。また、乗り上げ段部75に乗り上げたピン71は、弾性復元力によって生じる摩擦力で、軸線に沿う方向の移動やがたつきが規制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る請求項1記載の錠ケースの構造によれば、少ない部品数で操作部材を錠ケースに固定することができ、且つ製造が容易であり、しかも、高い強度が得られる。
【0014】
本発明に係る請求項2記載の錠ケースの構造によれば、ピンガイド片と溝状凹部内壁背面とに挟まれてピンを支持することができる。また、このピンガイド片もプレス加工によって形成することができる。
【0015】
本発明に係る請求項3記載の錠ケースの構造によれば、真直なピンをピン貫通固定穴を貫通後に撓ませることによって操作部材をがたつきなく錠ケースに固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る錠ケースの構造を備えた錠装置の斜視図である。
図2図1に示した錠ケースの分解斜視図である。
図3図1に示した錠装置の側断面図である。
図4図3のA−A線断面図である。
図5図3のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る錠ケース11の構造を備えた錠装置13の斜視図、図2図1に示した錠ケース11の分解斜視図、図3図1に示した錠装置13の側断面図、図4図3のA−A線断面図、図5図3のB−B線断面図である。
本実施形態に係る錠ケース11の構造は、扉15(図5参照)に固定される錠装置13に用いて好適となる。錠ケース11の構造は、錠ケース11と、溝状凹部17と、凸部19と、凸部進入切欠21と、溝状凹部内壁背面23と、ピン挿入穴25と、ピン貫通固定穴27と、ピンガイド片29と、を有する。
【0018】
錠装置13は、錠ケース11内に、デッドボルト31が摺動自在に内設される。デッドボルト31は、フロント裏板33およびフロント板35の進退開口穴37を介して、木口39(図5参照)から進退する。デッドボルト31は、ガイド軸が突設され、錠ケース11側に形成された長穴にて摺動自在に支持される。デッドボルト31は、進退方向に直交する断面形状が、開口を下向きとするコ字形状に形成される。デッドボルト内にはカマデッドボルト41が設けられ、カマデッドボルト41は錠ケース11に固定された支軸にて回動自在となる。カマデッドボルト41には曲溝が形成され、曲溝はデッドボルト31に固定された連動ピンを兼ねるガイド軸に係合する。これにより、カマデッドボルト41は、デッドボルト31の進出に従動し、進退開口穴37から円弧を描いて突出して、不図示のストライク板の背面に係止する。
【0019】
錠ケース11は、扉15の木口39に前板部としてのフロント裏板33と後板部43(図2参照)が平行となり、扉15の表裏面45に一対の側板部である第1側板部47と第2側板部49が平行となって扉15の内方に固定される。第1側板部47と第2側板部49は、双方に折り曲げ形成された固定片51を、フロント裏板33にビス(図示略)によって共締めされることで、フロント裏板33と一体に固定される。
【0020】
それぞれの第1側板部47,第2側板部49には、溝状凹部17が形成される。溝状凹部17は、少なくとも一方の側板部をフロント裏板33から後板部43に渡ってケース外側からケース内側に向け凹ませて形成される。本実施形態において、溝状凹部17は、図4に示すように、第1側板部47と第2側板部49の双方に形成される。
【0021】
錠ケース11には、操作部材が固定される。操作部材は、シリンダ錠53、サムターン55である。本実施形態において、第1側板部47にはシリンダ錠53が固定され、第2側板部49にはサムターン55が固定される。シリンダ錠53およびサムターン55には、凸部19が形成される。凸部19は、操作部材(シリンダ錠53,サムターン55)の外筒部57において、軸線方向一端側となる後端部59で直径方向両端側に突出して一対のものが形成される。
【0022】
第1側板部47および第2側板部49の溝状凹部17には、溝状凹部17の溝底をさらに凹ませた円形状の後端部座面61が形成される。後端部座面61には、同心円状に錠機構連結穴63が穿設される。シリンダ錠53,サムターン55は、後端部59が後端部座面61に当接状態で配置される。後端部座面61に配置されたシリンダ錠53,サムターン55は、錠機構連結穴63に配置される錠機構連結部材65が連動連結される。錠機構連結部材65は、例えば、錠ケース11に内蔵される錠機構部を構成するダルマ穴67である。
【0023】
溝状凹部17には、後端部座面61を挟んで上下に一対の凸部進入切欠21が形成される。凸部進入切欠21は、外筒部57の後端部59の一対の凸部19を進入させるために、溝状凹部内壁69の両側を切り欠いて形成される。つまり、シリンダ錠53,サムターン55の後端部59は、凸部19を凸部進入切欠21に進入させることで、後端部座面61に当接可能となり、上下の凸部19が、側板部47,49の内面側に位置するようになる。
【0024】
第1側板部47,第2側板部49をケース内側に凹ませて形成される溝状凹部17は、ケース内側に突条状となって突出している。溝状凹部17は、ケース外側から見ると溝の内側に、一対の溝状凹部内壁69を有する。この溝状凹部内壁69は、ケース内側から見ると、上記した突条状の溝状凹部内壁背面23(図2参照)となっている。
【0025】
フロント裏板33には、ピン挿入穴25が穿設される。本実施形態では、第1側板部用に2つ、第2側板部用に2つの合計4つのピン挿入穴25が穿設される。ピン挿入穴25は、溝状凹部内壁背面23の延長上で穿設される。これらピン挿入穴25には、それぞれピン71が挿入される。ピン71の挿入されたピン挿入穴25は、フロント裏板33の表面側に重ねられて木口39に固定されるフロント板35によって覆われる。なお、ピン71のピン挿入穴25内に位置する後端には、引き抜き時に、治具を引っ掛けるための小さな引っ掛け片79が形成されている。
【0026】
シリンダ錠53,サムターン55の外筒部57の後端部59に、それぞれ一対設けられた凸部19には、ピン貫通固定穴27が穿設される。シリンダ錠53,サムターン55は、凸部19を凸部進入切欠21に進入させて、後端部59が、溝状凹部17の後端部座面61に配置される。それぞれの凸部19のピン貫通固定穴27は、ケース内側に位置し、このケース内側において、溝状凹部17の延在方向に穿設されるようになっている。フロント裏板33のピン挿入穴25から挿入されるピン71は、溝状凹部内壁背面23に沿って奥側に挿入される。溝状凹部内壁背面23に沿って挿入されたピン71は、凸部進入切欠21からケース内側に突出している凸部19のピン貫通固定穴27を貫通する。これにより、シリンダ錠53とサムターン55は、ケース内側に位置する凸部19が、ピン71によって貫通され、錠ケース11から離脱が規制される。
【0027】
第1側板部47,第2側板部49のそれぞれの溝状凹部内壁背面23には、ピンガイド片29が上下対となって設けられ、両側板部47,49で上下左右となり合計4つのピンガイド片29が設けられる。ピンガイド片29は、溝状凹部内壁69を切り起こして形成され、ケース内側において、溝状凹部内壁背面23とで略L字状の板部材を組み合わせてピン71を囲むような略四角形の挿通角穴73(図4参照)を形成する。
【0028】
また、本実施形態に係る錠ケース11の構造は、後板部43に、乗り上げ段部75が形成される。この乗り上げ段部75は、後板部43において、フロント裏板33に向かって略矩形に突出して形成される折曲部81の上下面に形成され、各溝状凹部内壁背面23に連続するように配置形成される。上下一対の乗り上げ段部75は、一対の溝状凹部内壁背面23の間隔幅よりも広幅に形成されて、図3に示すように略階段状の面を形成し、図4に示すように挿通角穴73を狭めるような形成面となる。そして、この乗り上げ段部75は、一対の溝状凹部内壁背面23のそれぞれに沿ってフロント裏板33側から挿入された一対のピン71の先端部77を、相互に離反方向(図3の上下方向)に撓める。
【0029】
次に、上記の構成を有する錠ケース11の構造の作用を説明する。
本実施形態に係る錠ケース11の構造では、錠ケース11の一対の第1側板部47,第2側板部49に、フロント裏板33から後板部43に渡って、ケース外側からケース内側に向け凹む溝状凹部17が形成される。このため、錠ケース11は、折り曲げや歪みに対しての剛性が高まる。
【0030】
外筒部57は、凸部進入切欠21に進入させた凸部19に、溝状凹部内壁背面23に沿わして挿入したピン71が貫通する。凸部19のピン貫通固定穴27を貫通したピン71は、ケース内側より、溝状凹部内壁背面23および側板部ケース内側面によって強固に支持される。これにより、シリンダ錠53およびサムターン55は、錠ケース11からの高い引き抜き強度が得られる。
【0031】
また、一対のピン71は、ケース内側で溝状凹部内壁背面23に沿って凸部19のピン貫通固定穴27に通される。一対のピン71は、ケース内側で、溝状凹部17と平行となってこの溝状凹部17を挟む補強材として働く。これにより、錠ケース11は、溝状凹部17とピン71とが一体の構造体となって、第1側板部47,第2側板部49の強度がさらに高められることになる。
【0032】
しかも、錠ケース11は、溝状凹部17,凸部進入切欠21,ピンガイド片29がプレス加工によって1枚の板材から形成される。このため、錠ケース11は、シリンダ錠53、サムターン55を固定するために、ピン以外の別部材を必要とせず、溶接等、作業工数を増大させずに形成できる。
【0033】
また、この錠ケース11の構造では、一対のピン挿入穴25のそれぞれから挿入されたピン71は、凸部19のピン貫通固定穴27を貫通した後、後板部43に突設される乗り上げ段部75に当たる。乗り上げ段部75に当たった一対のピン71は、さらに挿入されると、先端が乗り上げ段部75に乗り上げ、一対のピン71の各先端同士が互いに離れる方向に撓められ、拡開される。これにより、ピン71とピン貫通固定穴27との間に遊びがなくなり、接触状態となって凸部19ががたつき無くピン71に固定される。また、乗り上げ段部75に乗り上げたピン71は、弾性復元力によって生じる摩擦力で、軸線に沿う方向の移動やがたつきが規制される。その結果、シリンダ錠53,サムターン55をがたつきなく錠ケース11に確り固定できる。
【0034】
従って、本実施形態に係る錠ケース11の構造によれば、少ない部品数で、且つ製造が容易であり、しかも、高い強度を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
11…錠ケース
15…扉
17…溝状凹部
19…凸部
21…凸部進入切欠
23…溝状凹部内壁背面
25…ピン挿入穴
27…ピン貫通固定穴
29…ピンガイド片
33…前板部(フロント裏板)
39…木口
43…後板部
45…表裏面
47…側板部(第1側板部)
49…側板部(第2側板部)
53…操作部材(シリンダ錠)
55…操作部材(サムターン)
57…外筒部
59…後端部
69…溝状凹部内壁
71…ピン
75…乗り上げ段部
77…先端部
図1
図2
図3
図4
図5