(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305854
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】壁紙を原料とするリサイクルプラスチック材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20180326BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20180326BHJP
B29B 17/00 20060101ALI20180326BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20180326BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20180326BHJP
E04F 13/07 20060101ALN20180326BHJP
【FI】
B29B17/02ZAB
B29B17/04
B29B17/00
B09B5/00 R
B09B3/00 Z
!E04F13/07 B
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-141046(P2014-141046)
(22)【出願日】2014年7月9日
(65)【公開番号】特開2016-16595(P2016-16595A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】514174648
【氏名又は名称】平野 二十四
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】平野 二十四
【審査官】
中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭53−037387(JP,B1)
【文献】
特開昭52−030881(JP,A)
【文献】
特開2007−223123(JP,A)
【文献】
特開2005−288952(JP,A)
【文献】
特開2001−219426(JP,A)
【文献】
特開昭53−088885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B17/00−17/04、
C08J11/00−11/28、
D06N1/00−7/06、
E04F13/02−13/26、
B09B1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地となる紙の表面に熱可塑性プラスチックを主原料とした化粧面を形成させた壁紙を加工手段によって細かく裁断あるいは粉砕して粉粒体を製造する第1の工程と、
前記第1の工程で製造された前記粉粒体を分別手段によって前記化粧面を主体とするプラスチック分別部と、同プラスチック分別部以外とに分別する第2の工程と、
前記第2の工程で得られた前記プラスチック分別部を混練手段によって加熱下で混練して脱水及び脱気をする第3の工程と、
前記第3の工程で脱水及び脱気をした前記プラスチック分別部を冷却してリサイクルプラスチック材料を得る第4の工程と、を有することを特徴とする壁紙を原料とするリサイクルプラスチック材料の製造方法。
【請求項2】
前記分別手段は前記プラスチック分別部とそれ以外の部分を比重によって分別することを特徴とする請求項1に記載の壁紙を原料とするリサイクルプラスチック材料の製造方法。
【請求項3】
前記分別手段は前記第1の工程で製造された前記粉粒体をさらに細かく裁断あるいは粉砕するための第2の加工手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の壁紙を原料とするリサイクルプラスチック材料の製造方法。
【請求項4】
前記混練手段は対向配置された一対の互いに逆方向に回転するローラー間に溶融した前記プラスチック分別部を加圧しながら複数回数通過させることで実現されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の壁紙を原料とするリサイクルプラスチック材料の製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程の前に前記プラスチック分別部を加熱手段によって前もって加熱して溶融させておくことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の壁紙を原料とするリサイクルプラスチック材料の製造方法。
【請求項6】
前記第4の工程で冷却したリサイクルプラスチック材料を第3の加工手段によって細かく加工する第6の工程を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の壁紙を原料とするリサイクルプラスチック材料の製造方法。
【請求項7】
前記第2の工程で分別した前記プラスチック分別部に熱可塑性プラスチックを加えて前記第3の工程で混練するようにしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の壁紙を原料とするリサイクルプラスチック材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内装に使用する壁紙を原料としたリサイクルプラスチック材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から建築物の内装の壁や床の仕上げ材として下地となる紙の表面に例えば塩化ビニルのような熱可塑性プラスチックからなる化粧面を形成させた壁紙が使用されている。このような壁紙の一例として特許文献1を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3096987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような壁紙は、例えば、建築物を解体する際には不燃ゴミの一種となるべきであるが、大量の不要な壁紙をプラスチック部分のみを回収してリサイクルできるようにすれば資源の無駄がなく環境上も焼却しなくてよいため非常に有利である。また、実際にはこのような使用済みの壁紙だけではなくメーカーで注文を受けて製造したあるロットの壁紙が余ってしまったり、保存しておいた壁紙が変色したり、異なるロットで製造したところ以前のロットと色合いが違って見えるので使えなくなってしまったり等様々な理由で大量に不要な壁紙が生まれることとなるため、リサイクルできるようにすることは望ましい。
しかし、壁紙は下地となる紙とプラスチックからなる化粧面がしっかりと接着されており容易に剥がれないため、これを破砕装置で細かく裁断あるいは粉砕して粉粒体とし、プラスチック側とそれ以外に分別し、プラスチック分別部をリサイクルすることが考えられる。しかし、このような手法では例えば重量やふるいにかける等して分別してみても、なお細かく裁断された紙由来の繊維がプラスチック分別部側にも残ってしまい、完全にプラスチック部分のみを取り出すことはできない。しかも、紙は吸湿性があるため、このような紙の繊維の残ったリサイクル材料を使用してプラスチック製品を成形した場合には紙に含まれる水分が蒸発しあるいは加熱された繊維中の空気等によってプラスチック製品に気泡が発生するいわゆる「鬆(す)」が入ってしまう可能性があった。そのため、このような壁紙由来の繊維の残ったリサイクル材料を使用してプラスチック製品を成形しても「鬆」の入らないようなリサイクルプラスチック材料を製造する方法が求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、壁紙を細かく裁断あるいは粉砕した繊維の残ったリサイクル材料を使用してプラスチック製品を成形しても「鬆」が入りにくい壁紙を原料とするリサイクルプラスチック材料を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、手段1では、下地となる紙の表面に熱可塑性プラスチックを主原料とした化粧面を形成させた壁紙を加工手段によって細かく裁断あるいは粉砕して粉粒体を製造する第1の工程と、前記第1の工程で製造された前記粉粒体を分別手段によって前記化粧面を主体とするプラスチック分別部と、同プラスチック分別部以外とに分別する第2の工程と、前記第2の工程で得られた前記プラスチック分別部を混練手段によって加熱下で混練して脱水及び脱気をする第3の工程と、前記第3の工程で脱水及び脱気をした前記プラスチック分別部を冷却してリサイクルプラスチック材料を得る第4の工程と、を有するようにしたことをその要旨とする。
【0006】
このような構成においては、加工手段によって粉粒体とされた壁紙を原料とするリサイクル材料を分別手段によってまずプラスチック分別部を分別し、これを混練手段によって加熱下で混練して脱水及び脱気した後に冷却してリサイクルプラスチック材料を得るようにしたため、このリサイクルプラスチック材料を原料として製品を成形しても「鬆」が入ることがない。
ここに「熱可塑性プラスチック」とは例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル等であって、必ずしもある一種類の熱可塑性プラスチックだけを材料として使用しなくてもよく、混合されていてもよい。
ここに「粉粒体」とは壁紙を細かく裁断あるいは粉砕した結果、下地となる紙は概ね繊維質に分断され(以下、残紙とする)、化粧面が不定形の例えば1〜5mm程度の大きさをメインとする薄片状の粒体と、それ以下の概ね数μm〜数百μmの大きさの粉体に分断された形状となったものをいう。下地となる紙や化粧面の厚さは様々であるが一般に下地となる紙では数十μm〜数百μm程度であり、化粧面では一般に数百μm〜数mm程度である。但し、これ以外の厚みの壁紙を排除するものではない。
「プラスチック分別部」は化粧面由来のプラスチックの粉粒体を主体とするものの、完全に化粧面由来のプラスチックの粉粒体のみではなく残紙がかなり混入している状態である。「プラスチック分別部」は明確にプラスチック分別部以外とに分別できるものではない。この残紙の混入は防止できないため、従来ではこの残紙が原因で「鬆」が入ることとなっていた。製品に「鬆」が入る場合としては原料として使用したリサイクルプラスチック材料に「鬆」が入るだけではなく、このようなリサイクルプラスチック材料からの気泡が他のプラスチック材料に移動して、例えば透明なプラスチック材料にその気泡が目視されるようなことも含まれる。
【0007】
プラスチック分別部をプラスチック分別部以外とに分別するためには分別手段は、例えば比重によって分別することがよい。プラスチック分別部は残紙よりも重いため、例えば水平ベクトルを与えた場合にはプラスチック分別部は残紙よりも遠くに飛びにくいため分別することができる。例えば回転ドラムのような回転体の上に粉粒体を投入した場合に回転体の回転とともに落下する粉粒体を比重によって分別することがよい。また、残紙は軽いため吸引して吸引されにくいプラスチック分別部と分別するようにしてもよい。また、これらを組み合わせてもよい。回転体の回転途中に残紙を吸引することを目的として例えば吸引手段を配置することがよい。
また、分別手段において粉粒体をさらに細かく裁断あるいは粉砕するための第2の加工手段を備えることがよい。例えば、回転体の外周に刃体を形成するようにすれば実現可能である。
【0008】
プラスチック分別部を混練手段によって加熱下で混練する前段階でプラスチック分別部を加熱手段によって前もって加熱して溶融させる工程を設けてもよい。その方が第3の工程における混練が速やかにかつ、効率的に行うことができるからである。このための加熱手段としては、例えば、密閉式のインターナルミキサー(バンバリータイプ)や加圧ニーダ−、スクリュー式混合機等を使用することができる。
プラスチック分別部を混練手段によって加熱下で混練する場合には、脱水及び脱気を促すために密閉状態ではなく非密閉状態で行うことがよりよい。また、脱水及び脱気の効率を向上させるため周囲の作業環境としては筐体内で覆わずに開放状態で混練作業が行われるようにしてもよい。そのため例えばオープンロール方式で行うことがよい。オープンロール方式は一対の互いに逆方向に回転するローラー間に溶融材料を通過させる方式である。ローラー間の隙間や回転数、回転時間は適宜設定する。オープンロール方式で行う場合には何度も繰り返しロール間に溶融したプラスチック分別部を通過させて混練することが残紙の分散のためによい。オープンロール方式以外でも押し出し機で混練することも可能である。
前記第2の工程で分別した前記プラスチック分別部に熱可塑性プラスチックを加えて前記第3の工程で混練してもよい。これは分別が十分でない場合やより高品質の材料を得るために有効である。加える熱可塑性プラスチックは混練しやすいように細かな形状であることがよい。
このように混練して脱水及び脱気を行ったリサイクルプラスチック材料は冷却した後で第3の加工手段によって細かく加工することが、その後のリサイクルプラスチック材料を使用してプラスチック製品を成形する場合の取り扱いによい。細かく加工するとは例えば加工手段としての粉砕機で粉砕(破砕)して細かくしたり、例えば押し出し機で押し出し加工手段としてのペレタイザーでペレタイズしたりすることが挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、壁紙を細かく裁断あるいは粉砕した繊維の残ったリサイクル材料であってもこれを使用してプラスチック製品を成形した場合に「鬆」の入りにくいリサイクルプラスチック材料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態の破砕工程を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のリサイクルプラスチック材料の製造方法の具体的な実施の形態を図面に基づいて説明する。
<破砕工程>
図1に示すように、原料である不要となった下地となる紙の表面に凹凸のある塩化ビニル製の化粧面を形成させた壁紙1を加工手段としての破砕機2に投入する。投入はバッチ方式でも連続式でも可能である。壁紙1は未使用で不要となったロット分や廃棄物となるべき使用済みのものでも構わない。プラスチックの色に応じて同種の壁紙1を同じロットとする。破砕機2のホッパ3に投入された壁紙1は回転切れ刃4と固定刃5の間で破砕されて粉粒体6として一旦回収される。粉粒体6は残紙と化粧面由来の不定形の粒状あるいは紛状の物体から構成される。
【0012】
<分別工程>
図2に示すように、粉粒体6を分別手段としての分離器7に投入する。投入はバッチ方式でも連続式でも可能である。分離器7は内部に外周に刃体としての櫛刃8を備えた回転ドラム9を有しており、回転ドラム9の周方向に沿った周囲には3つの通路10〜12が設けられている。分離器7内部は第2及び第3の通路11、12を介して図示しない吸引装置から吸引されて負圧状態とされている。
ホッパ13から投入された粉粒体6は回転ドラム9の回転によってその外周を回転ドラム9とともに周回し、まず、最も上流に配置される第1の通路10に化粧面由来の比重の大きい不定形の粒状あるいは紛状の物体を主体としたプラスチック分別部13が落下することとなる。プラスチック分別部13には残紙も含まれるが基本的に化粧面由来の部分がほとんどである。また、第1の通路10に隣接した第1の通路10の下流にある第2の通路11にはプラスチック分別部13に分別された部分よりも比重の小さな化粧面由来の部分と比較的大きな繊維となる残紙が落下する。第2の通路11に落下する分別部を中間分別部14とする。多くの化粧面由来の部分は第1の通路10に落下してプラスチック分別部13となるため、第2の通路11に移行して中間分別部14となる化粧面由来の部分は比較的少ない。中間分別部14は回収して再度分離器7に投入する。
また更に下流の比較的高い位置に配置された第3の通路12にはほとんど残紙が吸引され化粧面由来の部分はわずかである。第3の通路11に吸引される分別部を残紙分別部15とする。残紙分別部15はリサイクルプラスチックとしてはまったく再利用できない分別部である。ここでは、第1の通路10に落下したプラスチック分別部13を回収して第3の工程に移行させる。プラスチック分別部13は概ね粒状の外観でわずかに残紙が含まれるような外観を呈している。回転ドラム9は櫛刃8を備えているため、粉粒体6は分別と同時に更に細分化されることとなる。
【0013】
<溶融工程>
プラスチック分別部13を加熱手段としてのインターナルミキサーでバッチ方式で溶融させ、ペースト状の流動体とする。
<混練工程>
図3に示すように、インターナルミキサーから取り出したペースト状のプラスチック分別部13を混練手段としてのオープンロール装置17を使用して混練する。オープンロール装置17は水平に一定の距離に配置された一対のロール18、19から構成されている。両ロール18、19は互いに内方向(つまり下方に引き込む方向)に回転する。一方のロール18内部には図示しないヒーターが内蔵されておりロール18を加熱する。このオープンロール装置17のロール18、19の間にペースト状のプラスチック分別部13を投入すると、ロール18、19間に挟まれて加熱されながら練られる(混練される)こととなる。ペースト状のプラスチック分別部13は加熱されている側のロール18に巻き付くため、作業者は適宜新たなペースト状のプラスチック分別部13を追加したり、部分的にカットしてカット部分を再度ロール18、19の間に投入するようにする等してロール18、19間を通過する際の密度を高めたりしながら繰り返し混練作業を行っていく。そして、十分加熱と混練が行われたと判断すると適宜切り出しを行う。切り出しは回転するロール18にナイフ様のジグを当接させて必要な量のペースト状のプラスチック分別部13をロール18から離間させることで行われる。すべてのロール18に巻き付いているプラスチック分別部13を切り出しても、部分的に十分混練されている部分から切り出しながら併せて新たなペースト状のプラスチック分別部13を投入するようにしてもよい。
<冷却及びペレット加工工程>
適宜カットしたペースト状のプラスチック分別部13を放置して冷却した後に
図1で示したものと同じ破砕機2に投入して数mm〜数cmレベルの大きさのペレットの製品とする。
【0014】
このように構成することで上記実施の形態では、分別工程で十分に残紙を分別できずにプラスチック分別部13が残ってしまっても、混練工程で加熱しながら開放環境下で繰り返し混練作業を行うことで残紙内の水分や空気が放出され、かつ残紙もプラスチック部分に均一に分散することとなり、加熱して使用するリサイクルプラスチック材料として良好な材料を得ることができる。
【0015】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記の破砕機2、分離器7、インターナルミキサー16、オープンロール装置17等の構成は一例であって他の構成で実現するようにしてもよい。
・対象となる壁紙1は上記以外のプラスチックを使用したものでもよい。
・上記実施の形態では溶融工程でプラスチック分別部13を溶融させてから混練工程を実行したが、混練工程で加熱することで溶融と合わせて混練を行うようにしてもよい。例えば、オープンロール装置17ではなく、筐体内にプラスチック分別部13を投入して混練工程を実行する場合であれば可能である。
・上記では1台のオープンロール装置17を使用してペースト状のプラスチック分別部13を繰り返しロール18、19の間で練るようにしていたが、複数台数のオープンロール装置17を直列的に配置して混練を行うようにしてもよい。
・分別工程においては上記のような比重によって分別する分離器7以外の手段でプラスチック分別部13を得るようにしてもよい。また、比重によって分別する場合でも上記以外の構造の分離器を使用してもよい。また、分離器7の回転ドラム9は櫛刃8を備えていなくともよい。
・混練工程においてプラスチック分別部13に他のプラスチックを加えて(細かな例えばペレット状が好ましい)プラスチックの含有量を増やすようにしてもよい。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で変更して実施することは自由である。
【符号の説明】
【0016】
1…壁紙、2…加工手段としての破砕機、6…粉粒体、7…分別手段としての分離器、13…プラスチック分別部、17…混練手段としてのオープンロール装置。