特許第6305874号(P6305874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305874
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】セメント質硬化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/04 20060101AFI20180326BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20180326BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C04B28/04ZAB
   C04B40/02
   C04B22/08 A
   C04B22/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-173548(P2014-173548)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-47788(P2016-47788A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137970
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 康央
(72)【発明者】
【氏名】安藝 朋子
(72)【発明者】
【氏名】久保田 修
(72)【発明者】
【氏名】平尾 宙
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−105902(JP,A)
【文献】 特開2006−182583(JP,A)
【文献】 特開2003−212617(JP,A)
【文献】 特開2008−308364(JP,A)
【文献】 特開2009−035451(JP,A)
【文献】 国際公開第03/016234(WO,A1)
【文献】 特開2005−112650(JP,A)
【文献】 特開2014−094874(JP,A)
【文献】 特開2014−101261(JP,A)
【文献】 特開2014−001122(JP,A)
【文献】 特開2010−235410(JP,A)
【文献】 特開平10−194798(JP,A)
【文献】 特開2016−153357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 − 32/02
C04B 40/00 − 40/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)CS100質量部に対して、CASを38質量部含有し、かつ、CAの含有量が0質量部、CAFの含有量が15質量部である焼成物のブレーン比表面積2,500〜10,000cm/gの粉砕物25〜45質量%と、ポルトランドセメント55〜75質量%を含む粉末状セメント組成物と、(B)水と、(C)骨材、の各材料を含むセメント混練物の5〜50℃の低温炭酸化養生体であるセメント質硬化体を製造するための方法であって、
上記(A)〜(C)の各材料を混練して、上記セメント混練物を調製するセメント混練物調製工程と、
上記セメント混練物を型枠内に打設する打設丁程と、
上記型枠内の上記セメント混練物が硬化した後に、上記セメント混練物の硬化体を上記型枠から脱型する脱型工程と、
上記型枠から脱型した上記セメント混練物の硬化体を5〜50℃の炭酸化養生をして、上記セメント質硬化体を得る炭酸化養生工程、を含むことを特徴とするセメント質硬化体の製造方法。
【請求項2】
上記(C)骨材の配合量(細骨材と粗骨材を併用する場合はその合計量)は、粉末状セメント組成物100質量部に対して200〜700質量部、粗骨材を用いる揚合、細骨材率5〜60%である請求項1に記載のセメント質硬化体の製造方法。
【請求項3】
上記脱型工程と、上記炭酸化養生工程の問に、上記セメント混練物の硬化体の圧縮強さを高めるための高強度化養生工程(気中養生、湿空養生、水中養生、及び蒸気養生のいずれかの一以上)、を含む請求項1又は請求項2に記載のセメント質硬化体の製造方法。
【請求項4】
上記炭酸化養生工程の開始時における上記セメント混練物の硬化体の圧縮強さが、15N/mm以上である請求項1乃至請求項3に記載のセメント質硬化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント質硬化体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球温暖化の抑制のため、二酸化炭素の排出量の低減が重要な課題になっている。セメント質硬化体の製造における、二酸化炭素の排出量を低減する方法として、セメント質硬化体の養生過程において二酸化炭素を吸収させることにより、セメント質硬化体を得るまでに排出される二酸化炭索の総量を低減する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、粉体成分として、γ−CS (記号γ)、製鋼スラグ粉末(記号B)の1種または2種と、ポルトランドセメント(記号C)を含有し、上記γ、B、Cの合計含有量に占めるγ、Bの合計が25〜95質量%であり、水セメント比W/Cが80〜250%である配合のコンクリート混練物を硬化させたプレキャストコンクリートであって、硬化過程で炭酸化養生を経ることにより、表面から深さ20mm以上の部位(ただし肉厚が20mm未満の部分は肉厚全体)に炭酸化領域を形成してなるCO吸収プレキャストコンクリートが記載されている。
該プレキャストコンクリートは、炭酸化養生による二酸化炭素の吸収を利用することで、コンクリート製品を製造する際に排出される二酸化炭素の総量(ト−タル量)を大幅に低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−168436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の実施例では、炭酸化養生を60℃の温度条件下で行っている。しかし、本発明者らが実験を行ったところ、炭酸化養生を20℃の温度条件下で行った場合、γ−CSを含むセメント質硬化体では、二酸化炭素の排出量の低減効果は小さいことがわかった。また、特許文献1には、γ−CSは炭酸化により顕著な強度増進効果を発揮することが確認されたと記載されているが、本発明者らが、特許文献1に記載されているγ−CSを含むセメント質硬化体について実験を行ったところ、このような強度増進効果は、室温(20℃程度)での養生を行ったものについては、認められなかった。
また、γ−CSの原料としては、産業廃棄物である副生水酸化カルシウムや、石灰石が挙げられる。しかし、副生水酸化カルシウムは、一般的に入手が困難であるという問題があった。また、石灰石を原料としてγ−CSを製造する場合、その製造過程において、二酸化炭索が排出されることから、二酸化炭素の排出量の低減効果が小さくなるという問題があった。
そこで本発明は、ポルトランドセメント以外の粉末材料(特に、ポルトランドセメントに比べて、粉末の製造時の二酸化炭素の排出量が少ないもの)を含むものの、例えば、60℃等の高温ではなく、常温(20℃程度)で養生を行った場合であっても、養生過程において多量の二酸化炭素を吸収することにより、排出される二酸化炭素の総量を大幅に低減することができ、かつ、粉末材料の全量がポルトランドセメントからなる場合を基準としたときに、圧縮強さの低下の割合が小さいセメント質硬化体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の粉末状セメント組成物(特定の鉱物成分を含む焼成物の粉砕物と、ポルトランドセメントを含むもの)と水と骨材を含むセメント混練物の硬化体を、炭酸化してなるセメント質硬化体によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1](A)CS100質量部に対して、CASを10〜200質量部含有し、かつ、CAの含有量が20質量部以下である焼成物の粉砕物(記号α)と、ポルトランドセメントを含む粉末状セメント組成物と、(B)水と、(C)骨材、の各材料を含むセメント混練物の硬化体を、炭酸化してなることを特徴とするセメント質硬化体。
[2]上記(A)粉末状セメント組成物中、上記焼成物の粉砕物の割合が10〜60質量%であり上記ポルトランドセメントの剖合が40〜90質量%である前記[1]に記載のセメント質硬化体。
[3]前記[1]又は[2]に記載のセメント質硬化体を製造するための方法であって、上記(A)〜(C)の各材料を混練して、上記セメント混練物を調製するセメント混練物調製工程と、上記セメント混練物を型枠内に打設する打設工程と、上記型枠内の上記セメント混練物が硬化した後に、上記セメント混練物の硬化体を上記型枠から脱型する脱型工程と、上記型枠から脱型した上記セメント混練物の硬化体を炭酸化養生して、上記セメント質硬化体を得る炭酸化養生工程、を含むことを特徴とするセメント質硬化体の製造方法。
[4]上記脱型工程と、上記炭酸化養生工程の間に、上記セメント混練物の硬化体の圧縮強さを高めるための高強度化養生工程、を含む前記[3]に記載のセメント質硬化体の製造万法。
[5]上記炭酸化養生工程の開始時における上記セメント混練物の硬化体の圧縮強さが、15N/mm以上である前記[3]又は[4]に記載のセメント質硬化体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のセメント質硬化体によれば、例えば、60℃等の高温ではなく、20℃程度で養生を行った場合であっても、養生過程において多量の二酸化炭素を吸収することにより、二酸化炭素の排出量を大幅に低減することができる。
また、本発明のセメント質硬化体は、ポルトランドセメント以外の粉末材料(特に、ポルトランドセメントに比べて、粉末の製造時の二酸化炭素の排出量が少ないもの)を含むものの、例えば、60℃等の高温ではなく、20℃程度で養生を行った場合であっても、粉末材料の全量がポルトランドセメントからなる場合を基準としたときに、圧縮強さの低下の割合が小さいものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のセメント質硬化体は、(A)CS100質量部に対して、CASを10〜200質量部含有し、かつ、CAの含有量が20質量部以下である焼成物の粉砕物(α)と、ポルトランドセメントを含む粉末状セメント組成物と、(B)水と、(C)骨材、の各材料を含むセメント混練物の硬化体を、炭酸化してなるものである。
ここで、「炭酸化」とは、セメント質硬化体中のアルカリ性の成分が、二酸化炭素と反応して、該アルカリ性の成分のpHを低下させることをいう。
以下、本発明を詳しく説明する。
【0008】
[(A)粉末状セメント組成物]
上記粉末状セメント組成物は、CS100質量部に対して、CASを10〜200質量部含有し、かつ、CAの含有量が20質量部以下である焼成物の粉砕物(α)とポルトランドセメントを含む。
【0009】
上記粉砕物(α)は、CASの一部、好ましくはCAS質量の70質量%以下がCAFで置換されても良い。また、上記粉砕物(α)は、ムライト、アノーサイト、非晶質相、SiO、クリストバライトやウォラストナイト等を含有してもよい。
【0010】
上記粉砕物(α)のブレーン比表面積は、好ましくは2,500〜10,000cm/g、より好ましくは3,000〜9,000cm/gである。該ブレーン比表面積が2,500cm/g以上であれば、二酸化炭素の排出量の低減効果が大きくなる。また、得られるセメント質硬化体の圧縮強さが大きくなる。該ブレーン比表面積が10,000cm/g以下であれば、粉砕する手間がかからず、製造のコストを低くすることができる。
【0011】
上記粉末状セメント組成物中、上記粉砕物(α)の割合は、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは15〜55質量%、特に好ましくは20〜50質量%である。該割合が10質量%以上であれば、二酸化炭素の排出量の低減効果が大きくなる。また、得られるセメント質硬化体の圧縮強さが大きくなる。該割合が60質量%以下であれば、脱型の時期が早くなり、セメント質硬化体からなる製品の生産効率が向上する。
【0012】
本発明で用いられるポルトランドセメントは、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントを使用することができる。中でも、強度発現性やコストの観点から、普通ポルトランドセメントまたは早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0013】
上記粉末状セメント組成物中、上記ポルトランドセメントの割合は、好ましくは40〜90質量%、より好ましくは45〜85質量%、特に好ましくは50〜80質量%である。該割合が40質量%以上であれば、脱型の時期が早くなり、セメント質硬化体からなる製品の生産効率が向上する。該割合が90質量%以下であれば、二酸化炭素の排出量の低減効果が大きくなる。また、得られるセメント質硬化体の圧縮強さが大きくなる。
【0014】
[(B)水]
上記セメント混練物において、粉末状セメント組成物100質量%に対する水の配合比(以下、「水/粉末状セメント組成物の質量比」ともいう。)は、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは40〜70質量%である。該比が30質量%以上であれば、二酸化炭素の排出量の低減効果が大きくなる。また、セメント混練物のワーカビリティが向上する。該比が100質量%以下であれば、セメント質硬化体の圧縮強さが大きくなる。
【0015】
[(C)骨材]
本発明で用いられる骨材としては、細骨材のみ、または、細骨材と粗骨材の組み合わせが挙げられる。
細骨材としては、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂またはこれらの混合物等を使用することができる。粗骨材としては、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石またはこれらの混合物等を使用することができる。
骨材の配合量(細骨材と粗骨材を併用する場合はその合計量)は、粉末状セメント組成物100質量部に対して、好ましくは200〜700質量部、より好ましくは200〜600質量部である。該配合量が前記範囲内であれば、セメント質硬化体の圧縮強さが大きくなり、また、セメント質硬化体の収縮率が小さくなる。
また、粗骨材を用いる揚合、細骨材率は、好ましくは5〜60%である。細骨材率が前記範囲内であれば、セメント混練物のワーカビリティや成形のし易さが向上する。
【0016】
[その他の材料]
また、上記セメント混練物には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要に応じて他の材料を配合してもよい。必要に応じて配合される他の材料としては、減水剤、消泡剤、収縮低減剤等の各種添加剤や、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末等の各種混和材が挙げられる。
【0017】
[セメント質硬化体の製造方法]
本発明のセメント質硬化体の製造方法は、上述の粉末状セメント組成物と、水と、骨材の各材料を混練して、セメント混練物を調製するセメント混練物調製工程と、上記セメント混練物を型枠内に打設する打設工程と、上記型枠内の上記セメント混練物が硬化した後に、上記セメント混練物の硬化体を上記型枠から脱型する脱型工程と、上記型枠から脱型した上記セメント混練物の硬化体を炭酸化養生して、セメント質硬化体を得る炭酸化養生工程、を含む。
【0018】
上記セメント混練物調製工程において、各材料を混練する方法は、特に限定されるものではない。また、混練に用いる装置も特に限定されるものではなく、オムニミキサ、パン型ミキサ、二軸練りミキサ、傾胴ミキサ等の慣用のミキサを使用することができる。
【0019】
上記打設工程において、上記セメント混練物は所望の型枠内に打設される。打設方法としては、特に限定されるものではなく、流し込み成形等の慣用の方法を使用することができる。
上記セメント混練物を型枠内に打設した後、脱型するまでの養生方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、気中養生、湿空養生、水中養生、及び蒸気養生等の一般的な養生方法を採用することができる。
【0020】
上記炭酸化養生工程における二酸化炭素ガスの濃度は、好ましくは1体積%以上、より好ましくは3体積%以上、特に好ましくは5体積%以上である。該濃度が1体積%以上であれば、炭酸化養生工程における二酸化炭素の吸収量を大きくすることができる。
二酸化炭素ガスの濃度の上限は、特に限定されるものではなく、二酸化炭素ガスの濃度が高いほど、二酸化炭素の吸収量を増加させることができるが、養生設備等のコストを低くする観点から、好ましくは90体積%以下、より好ましくは70体積%以下、特に好ましくは50体積%以下である。
【0021】
また、上記炭酸化養生工程における温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは5〜100℃、より好ましくは10〜50℃、特に好ましくは15〜35℃である。
炭酸化養生における温度が、上記数値範囲内であれば、セメント質硬化体からなる製品の生産性が向上し、セメント質硬化体の圧縮強さが大きくなる。
また、本発明のセメント質硬化体は、比較的低温(例えば、5〜30℃)で炭酸化養生を行った場合であっても、二酸化炭素の排出量の低減効果が大きいものである。
また、上記炭酸化養生工程における相対湿度は、特に限定されるものではないが、好ましくは30〜90%、より好ましくは40〜80%である。該相対湿度が、上記数値範囲内であれば、セメント質硬化体からなる製品の生産性が向上し、セメント質硬化体の圧縮強さが大きくなる。
【0022】
上記炭酸化養生工程は、脱型工程において、セメント混練物の硬化体を型枠から脱型した直後から行ってもよいが、セメント質硬化体の圧縮強さを高める観点から、上記脱型工程と上記炭酸化養生工程の間に、高強度化養生工程を設けてもよい。
高強度化養生工程において、型枠から脱型したセメント混練物の硬化体を、その圧縮強さが、好ましくは15N/mm以上、より好ましくは20N/mm以上、特に好ましくは30N/mm以上となるまで養生することで、炭酸化養生後のセメント質硬化体の圧縮強さを高めることができる。
上記高強度化養生工程における養生方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、気中養生、湿空養生、水中養生、及び蒸気養生等の一般的な養生方法を採用することができる。なお、高強度化養生工程における「養生」には、炭酸化養生は含まれないものとする。
【0023】
なお、本発明においては、上記製造方法によって得られたセメント質硬化体は、上記焼成物の粉砕物に代えて、上記粉末状セメント組成物に含まれるポルトランドセメントと同じポルトランドセメントを用いた場合に比べて、セメント質硬化体の製造に際して排出される二酸化炭素の量が15%以上(より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上)低減され、かつ、セメント質硬化体の圧縮強さの低下の割合が50%以下(より好ましくは40%以下)であるものが好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
使用材料は、以下に示すとおりである。
(1)α:CS100質量部に対して、CASを38質量部、CAF15質量部含有し、かつ、CAの含有量が0質量部である焼成物の粉砕物で、ブレーン比表面積6,000cm/gのもの
なお、焼成物の原料としては、石灰石、石炭灰、建設発生土、珪石及び粘土を使用した。焼成は、小型ロータリーキルンを用いて1350℃で行った。
(2)γ−CS粉末:試薬である炭酸カルシウム粉末と試薬である二酸化珪素粉末を、電気炉で焼成したもの (ブレーン比表面積;6,000cm/g:γ−CS (γ−2CaO・SiO)の含有率が95質量%以上のもの)
(3)普通ポルトランドセメント(OPC):太平洋セメント社製
(4)細骨材:「JlS R 5201 (セメントの物理試験方法)」の標準砂
(5)水:上水道水
【0025】
[実験例1]
上記普通ポルトランドセメントと上記細骨材を1:3の質量比で、ホバートミキサに投入後、空練りして、これらの混合物を得た。得られた混合物と水を、水/粉末状セメント組成物の質量比が50質量%となるように混合して、モルタルを調製した。得られたモルタルを、4×4×16cmの型枠内に充填した後、温度20℃の条件下で24時間湿空養生を行い、次いで、脱型を行った。その後、脱型したモルタル硬化体を、材齢28日までは温度20℃の条件下で水中養生を行い、材齢56日までは、温度20℃、相対湿度60℃の条件下で、促進中性化槽内において炭酸化養生を行った。炭酸化養生における二酸化炭素ガスの濃度は5体積%であった。
【0026】
水中養生後の供試体、及び、炭酸化養生後の供試体を用いて、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠して、モルタルの圧縮強さを測定した。それぞれの結果を表1に示す。
また、供試体1本あたりの、二酸化炭素吸収量を、熱重量分析(TG)から算出した。また、供試体の材料の組成から算出される二酸化炭素排出量から、二酸化炭素吸収量を減じることで、排出される二酸化炭素の総量を算出した。それぞれの結果を表2に示す。
さらに、炭酸化養生後の4×4×16cmの供試体から、モルタルカッターを用いて、4×4×4cmの立方供試体を3個切り出した。切断は4×4×16cmの供試休の端面より略20mmの部分から開始して、供試体の長手方向に垂直な方向に切断面を有するようにして行った。切断の結果、得られた供試体の両端部分の部材については使用せずに処分した。
該立方供試体の切断面にフェノールフタレインを塗布した。その結果、切断面の中央部分が、略正方形状に変色した。このことから、切断面の中央部分は中性化されていないことがわかった。
【0027】
[実験例2]
普通ポルトランドセメントの代わりに、上記普通ポルトランドセメントとαを用いた以外は、実験例1と同様にして、供試体を得た。
得られた供試体について、実験例1と同様にして、モルタルの圧縮強さ、二酸化炭素排出量、及び二酸化炭素吸収量等を測定または算出し、得られた結果から、排出される二酸化炭素の総量、圧縮強さの低減率、及び排出される二酸化炭素の総量の低減率を算出した。それぞれの結果を表1〜2に示す。
なお、圧縮強さの低減率(単位:%)は。下記式(1)によって算出されるものである。
(実験例1の炭酸化養生後の圧縮強さ−供試体の炭酸化養生後の圧縮強さ)/実験例1の炭酸化養生後の圧縮強さ)×100 (1)
また、排出される二酸化炭素の総量の低減率(単位:%)は、下記式(2)によって算出されるものである。
(実験例1の排出される二酸化炭素の総量−供試体の排出される二酸化炭素の総量)/実験例1の排出される二酸化炭素の総量)×100 (2)
【0028】
また、実験例1と同様にして、4×4×4cmの立方供試体を3個切り出して、フェノールフタレインを塗布したところ、切断面の中央部分が略円形状に変色した。変色部分の面積は、実験例1における変色部分の面積よりも小さかったことから、切断面の中央部分は、中性化されていないものの、実験例1と比べて、中性化が進んでいることがわかった。
【0029】
[実験例3]
αの代わりに、上記γ−CS粉末を用いる以外は実験例2と同様にして、モルタルの圧縮強さ等の測定、及び排出される二酸化炭素の総量等の算出を行った。それぞれの結果を表1〜2に示す。
また、実験例1と同様にして、4×4×4cmの立方供試体を3個切り出して、フェノールフタレインを塗布したところ、切断面の中央部分が略正方形状に変色した。また、変色部分の面積は、実験例1における変色部分の面積よりも若干大きいものであった。このことから、切断面の中央部分は、中性化されておらず、かつ、実験例1と比べて、若干中性化が進んでいないことがわかった。
【0030】
[実験例4]
αを45質量%に増量して用いる以外は実験例2と同様にして、モルタルの圧縮強さ等の測定、及び排出される二酸化炭素の総量等の算出を行った。それぞれの結果を表1〜2に示す。
また、実験例1と同様にして、4×4×4cmの立方供試体を3個切り出して、フェノールフタレインを塗布したところ、切断面に変色が見られなかった。このことから、供試体の中央部分にまで中性化が進んでいることがわかった。
【0031】
[実験例5]
αの代わりに、上記γ−CS粉末を用いる以外は実験例4と同様にして、モルタルの圧縮強さ等の測定、及び排出される二酸化炭素の総量等の算出を行った。それぞれの結果を表1〜2に示す。
また、実験例1と同様にして、4×4×4cmの立方供試体を3個切り出して、フェノールフタレインを塗布したところ、切断面の中央部分が、略正方形状に変色した。また、変色部分の面積は、実験例1における変色部分の両積よりも大きいものであった。このことから、切断面の中央部分は、中性化されておらず、かつ、実験例1と比べて、中性化が進んでいないことがわかった。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1〜2より、実験例2のセメント質硬化体の圧縮強さの低減率は、実験例3のセメント質硬化体の圧縮強さの低減率よりも小さいことがわかる。同様に実験例4の圧縮強さの低減率は、実験例5の低減率よりも小さいことがわかる。
また、実験例2のセメント質硬化体の排出される二酸化炭索の総量の低減率は、実験例3のセメント質硬化体の排出される二酸化炭素の総量の低減率より大きいことがわかる。同様に実験例4の二酸化炭索の総量の低減率は、実験例5の低減率よりも大きいことがわかる。