特許第6305893号(P6305893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305893
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/30 20060101AFI20180326BHJP
   B60N 2/38 20060101ALI20180326BHJP
   B60N 2/75 20180101ALI20180326BHJP
【FI】
   B60N2/30
   B60N2/38
   B60N2/46
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-201044(P2014-201044)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-68804(P2016-68804A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中尾 耕太
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 由美
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 孝史
(72)【発明者】
【氏名】北口 尋亮
(72)【発明者】
【氏名】立石 昂大
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−093140(JP,U)
【文献】 特開2010−030364(JP,A)
【文献】 実公昭36−012006(JP,Y1)
【文献】 米国特許第01591153(US,A)
【文献】 特開2011−116318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
A47C 7/00 − 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に配置された運転用の運転座席と、
前記運転座席の後方に配置され、座部、背当て部、及び、前記背当て部を使用状態にある前記座部の後方に位置する使用状態と前記使用状態よりも前方に位置する格納状態とに姿勢変更可能に車体に支持するリンク部材とを有する後部座席と、
車体後部に配備された荷台とを備え、
前記リンク部材の第1端が車体側に揺動自在に支持され、
前記リンク部材の第2端が前記背当て部側に揺動自在に支持され、
前記リンク部材が前記使用状態にある前記背当て部及び座部の車体幅方向における外側方に位置して肘掛け部として機能する作業車。
【請求項2】
前記リンク部材の前記第1端が前記使用状態にある前記座部の下方において、車体側に揺動自在に支持され、
側面視において、前記リンク部材が前記第1端側から上方に立ち上がる第1部分と、前記第1部分の端部から前記背当て部側に向けて後方に向かうほど上方に位置するように傾斜して延びる第2部分とを有し、前記第2部分が肘掛け部として機能する請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記格納状態において、前記リンク部材が、側面視で、前記第1部分が機体側から前方に延びるとともに第2部分が第1部分の前端部から上方に延びた姿勢となり、
前記荷台は、前端側が後搭乗部空間よりも後方に位置した第1状態と、前記前端側が前記後搭乗部空間に入り込んだ第2状態とに切換え自在に構成してあり、前記第2状態の荷台の前端部が前記リンク部材の前記第一部分と前記第二部分とにより形成された凹部に入り込む請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
側面視で、前記格納状態にある前記リンク部材の第1端側の揺動軸芯よりも前記第2状態にある前記荷台の前端部が前方に位置する請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
車体前部に配置された運転用の運転座席と、
前記運転座席の後方に配置され、座部、背当て部、及び、前記背当て部を使用状態にある前記座部の後方に位置する使用状態と前記使用状態よりも前方に位置する格納状態とに姿勢変更可能に車体に支持するリンク部材とを有する後部座席と、
車体後部に配備された荷台とを備え、
前記リンク部材が前記使用状態にある前記背当て部及び前記座部の車体幅方向における外側方に位置して肘掛け部として機能し、
前記座部が前記使用状態と格納状態とに姿勢変更可能であり、前記座部は前記格納状態において、座面を前方に向けた状態で前記背当て部の下方に位置する作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車体前部に配置された運転用の運転座席と、前記運転座席の後方に配置された後部座席と、車体後部に配備された荷台とを備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
このような作業車としては、例えば、特許文献1に開示された作業車が知られている。この作業車は、後部座席が使用状態にある二列シート仕様と、後部座席が使用状態よりも前方の格納状態にある一列シート仕様とに仕様変更が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−116318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような作業車において、好適な後部座席の姿勢変更構造が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の作業車は、車体前部に配置された運転用の運転座席と、前記運転座席の後方に配置され、座部、背当て部、及び、前記背当て部を使用状態にある前記座部の後方に位置する使用状態と前記使用状態よりも前方に位置する格納状態とに姿勢変更可能に車体に支持するリンク部材とを有する後部座席と、車体後部に配備された荷台とを備え、前記リンク部材の第1端が車体側に揺動自在に支持され、前記リンク部材の第2端が前記背当て部側に揺動自在に支持され、前記リンク部材が前記使用状態にある前記背当て部及び座部の車体幅方向における外側方に位置して肘掛け部として機能する。
【0006】
上記構成により、後部座席の外側方に位置するリンク部材を肘掛け部として利用することができる。このように、背当て部の姿勢を変更するためのリンク部材を肘掛け部としても利用することにより、別途に肘掛け部を設ける必要が無く、好適な後部座席の姿勢変更構造を得ることができる。
【0007】
上記構成において、前記リンク部材の前記第1端が前記使用状態にある前記座部の下方において、車体側に揺動自在に支持され、側面視において、前記リンク部材が前記第1端側から上方に立ち上がる第1部分と、前記第1部分の端部から前記背当て部側に向けて後方に向かうほど上方に位置するように傾斜して延びる第2部分とを有し、前記第2部分が肘掛け部として機能すると好適である。
【0008】
上記構成により、第1部分の端部から前記背当て部側に向けて後方に向かうほど上方に位置するように傾斜して延びる第2部分が後部座席の側方に位置することとなり、当該第2部分が肘掛け部として好適に機能する。
【0009】
上記構成において、前記格納状態において、前記リンク部材が、側面視で、前記第1部分が機体側から前方に延びるとともに第2部分が第1部分の前端部から上方に延びた姿勢となり、前記荷台は、前端側が前記後搭乗部空間よりも後方に位置した第1状態と、前記前端側が前記後搭乗部空間に入り込んだ第2状態とに切換え自在に構成してあり、前記第2状態の荷台の前端部が前記リンク部材の前記第一部分と前記第二部分とにより形成された凹部に入り込むと好適である。また、上記構成において、側面視で、前記格納状態にある前記リンク部材の第1端側の揺動軸芯よりも前記第2状態にある前記荷台の前端部が前方に位置すると好適である。
【0010】
上記構成により、例え、荷台の幅方向端部がリンク部材よりも車幅方向における外側に位置する場合であっても、荷台の前端部を第一部分と第二部分とにより形成された凹部に入り込ませることによって、荷台を前方に位置させることができる。この結果、荷台の容量を大きくするために荷台の幅を大きくした場合であっても、荷台を前方に位置させて車体の全長を短くすることができる。
【0011】
また、別の本発明の作業車は、車体前部に配置された運転用の運転座席と、前記運転座席の後方に配置され、座部、背当て部、及び、前記背当て部を使用状態にある前記座部の後方に位置する使用状態と前記使用状態よりも前方に位置する格納状態とに姿勢変更可能に車体に支持するリンク部材とを有する後部座席と、車体後部に配備された荷台とを備え、前記リンク部材が前記使用状態にある前記背当て部及び前記座部の車体幅方向における外側方に位置して肘掛け部として機能し、前記座部が前記使用状態と格納状態とに姿勢変更可能であり、前記座部は前記格納状態において、座面を前方に向けた状態で前記背当て部の下方に位置する。
【0012】
上記構成により、格納姿勢において、座部及び背当て部をコンパクトに格納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】荷台を第1状態に切換えた状態での作業車の全体を示す側面図である。
図2】荷台を第2状態に切換えた状態での作業車の全体を示す側面図である。
図3】荷台を第1状態に切換えた状態での作業車の全体を示す平面図である。
図4】後部座席の姿勢変更を示す側面図である。
図5】ロプスを示す斜視図である。
図6】第1状態での荷台を示す斜視図である。
図7】第2状態での荷台を示す斜視図である。
図8】荷台の切換え要領を示す説明図である。
図9】荷台の切換え要領を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1,3に示すように、本発明の一実施例に係る作業車は、車体フレーム1の下部に左右一対の前車輪2,2、及び左右一対の後車輪3,3が装備された走行車体を備えている。走行車体の前端部に、左右一対の前照灯4が備えられた前カバー5を設けてある。走行車体のうちの前カバー5よりも後方の部位に、ロプス6が備えられた搭乗部7を設けてある。走行車体の後部に荷台8を配備してある。
【0015】
走行車体は、前車輪2と後車輪3との間の部位に設けられたエンジン9を備え、エンジン9が出力する駆動力を走行ミッション10に入力して変速し、変速した後の駆動力によって前車輪2及び後車輪3を駆動するように、4輪駆動型に構成してある。
【0016】
搭乗部7について説明する。
搭乗部7は、ロプス6を備える他、搭乗部7のうちの前側部分に配備され、かつ居住用の前搭乗部空間13aがロプス6によって形成された前搭乗部13(「運転用搭乗部」に相当)と、前搭乗部13の後方に配備され、かつ居住用の後搭乗部空間14aがロプス6によって形成された後搭乗部14と、前搭乗部空間13a及び後搭乗部空間14aを後方の荷物搭載空間と仕切る仕切り部材15とを備えている。
【0017】
前搭乗部空間13aの左領域に運転座席16を設け、運転座席16の前方に左右一対の前車輪2,2を操向操作するステアリングホィール17を設け、前搭乗部13を運転用の搭乗部に構成してある。
【0018】
前搭乗部13は、前搭乗部空間13aの右領域に設けられた前部座席18を備え、二人乗りが可能になっている。運転座席16と前部座席18とは、運転座席用と前部座席用とに別々に作製された座部及び背当て部を備え、別々の座席になっている。運転座席16及び前部座席18は、レールにより、前後にスライド自在に構成されている。
【0019】
後搭乗部14には、後部座席19を設けてある。後部座席19は、二人掛けが可能な横長座席に構成してあり、後搭乗部14は、二人乗りが可能になっている。
【0020】
後部座席19は、図4に二点鎖線で示す使用状態と、図4に実線で示す格納状態とに切換え自在に構成してある。後部座席19は、具体的には、次の如く構成してある。
【0021】
後部座席19は、横長の座部19aと、横長の背当て部19bとを備えている。
座部19aは、前端側に設けた取付部材20を介し、後部座席支持部材21に設けた支持部22に支持してある。座部19aは、取付部材20と支持部22を連結する連結軸の軸芯まわりに前後方向に揺動操作できるようになっている。座部19aは、前後方向に揺動操作することにより、後部座席支持部材21の天板上に設定した使用位置と、運転座席16及び前部座席18の背面側に設定した格納位置とに切り換わる。座部19aは、使用位置と格納位置とに切り換えることにより、後部座席支持部材21の天板部に設けてある点検開口を開閉するように構成してある。後部座席支持部材21は、エンジン9を収容しており、エンジンボンネットの機能を備えている。つまり、座部19aは、後部座席支持部材21の内部やエンジン9を点検や修理するための点検開口の蓋体の機能を備えている。
【0022】
背当て部19bは、後部座席19の両横側に振り分け配置した左右一対のリンク部材23,23の上端部に連結してある。左右一対のリンク部材23,23それぞれの下端部(「第1端」に相当)は、座部19aの下方において後部座席支持部材21に回転するように支持されている。左右一対のリンク部材23,23それぞれの上端部(「第2端」に相当)は、背当て部19bの背面側に設けた連結部材25に回転するように連結してある。左右一対のリンク部材23,23は、背当て部19bが使用姿勢にある場合に、後方から前方に向かうほど下方に位置するように傾斜して配置されており、肘掛け部として機能する。つまり、使用姿勢において、側面視において、リンク部材23,23が第1端側から上方に立ち上がる部分(「第1部分」に相当)と、第1部分の端部から背当て部側に向けて後方に向かうほど上方に位置するように傾斜して延びる部分(「第2部分」に相当)とを有し、第2部分が肘掛け部として機能する。仕切り部材15の下端側は、背当て部19bの背面側に設けた連結部材25に連結してある。仕切り部材15は、例えば、車体横向きの枠体と車体上下向きの枠体とを連結することによって作製された仕切りフレームと、仕切りフレームに張設された網状部材とを備えている。
【0023】
つまり、背当て部19bを前後方向に移動操作すると、リンク部材23が後部座席支持部材21に対する連結点を揺動支点にして前後揺動する。また、仕切り部材15が連結部材25とともに後搭乗部空間14aを前後移動する。背当て部19bが格納位置にある場合、リンク部材23,23が、側面視で、第1部分が機体側から前方に延びるとともに第2部分が第1部分の前端部から上方に延びた姿勢となる。このように、背当て部19bは、座部19aの使用位置の上方に設定した使用位置と、座部19aの格納位置の上方に設定した格納位置とにわたって移動する。
【0024】
図1,4に示すように、後部座席19は、座部19a及び背当て部19bを使用位置に位置変更し、使用位置に図示しないロック手段によって固定することにより、後搭乗部空間14aのうちの後寄りの座席用部位に保持されて、使用状態になる。後部座席19を使用状態にすることにより、作業車は、前搭乗部13及び後搭乗部14への搭乗が可能な二列座席仕様になる。後部座席19を使用状態に切換える操作により、仕切り部材15を後搭乗部14の後端部に設定した二列座席仕様のための後仕切り位置、すなわち、後搭乗部空間14aを後方の荷物搭載空間と仕切るための後仕切り位置に移動操作できる。
【0025】
図2,4に示すように、後部座席19は、座部19a及び背当て部19bを格納位置に位置変更し、格納位置に図示しないロック手段によって固定することにより、後搭乗部空間14aのうちの座席用部位よりも前方の部位に保持されて、格納状態になる。後部座席19を格納状態に切り換えることにより、作業車は、前搭乗部13と後搭乗部14のうちの前搭乗部13だけに搭乗が可能な一列座席仕様になる。後部座席19を格納状態に切換える操作により、仕切り部材15を後搭乗部空間14aのうちの前寄り部位に設定した一列座席仕様のための前仕切り位置、すなわち、前搭乗部空間13aを後方の荷物搭載空間と仕切るための前仕切り位置に移動操作できる。
【0026】
なお、図1,2,3,4に示すように後部座席19のためのシートベルト100が設けられている。シートベルト100は、機体側の部材に設けられている。このため、後部座席19の姿勢変更時に後部座席19とともに移動することはない(図2を参照)。本実施例では、図3に示すように、車体外側部分にシートベルト本体100aが設けられ、機体内側部分にシートベルトを係止する係止部100bが設けられている。シートベルト本体100aは、例えばリール部等に格納されている。なお、後部座席19についてもレール部材等により、前後に摺動可能に構成してもよい。また、図示はしないが、運転座席16と前部座席18のためにも同様のシートベルトが設けられる。これらのシートベルトも機体側の部材に設けられている。
【0027】
荷台8について説明する。
図1に示すように、荷台8は、後端側に配置した車体横向きのダンプ支点軸30を介して車体に上下揺動するように支持してある。荷台8は、荷台8の下面側と車体フレーム1とにわたって装着してある昇降シリンダ31により、車体上に水平又はほぼ水平に位置した積載姿勢と、前端側が車体から上方に高く上昇したダンプ姿勢とにわたって昇降操作できるようになっている。
【0028】
図2,7に示すように、荷台8は、昇降シリンダ31が下面側に連結された底板部34を有した荷台本体33と、前記底板部34の前端側に後端側が連結された拡張底板部41を有した拡張荷台部40とを備えている。
【0029】
荷台本体33は、底板部34を備える他、底板部34の後端部に連結された後側板部35と、底板部34の両横端部に連結された横側板部36とを備えている。
【0030】
拡張荷台部40は、拡張底板部41を備える他、拡張底板部41の前端側に軸芯42a〔図8(B)参照〕まわりに起伏揺動するように連結された前側板部42と、荷台本体33の左右の横側板部36それぞれの前端側に軸芯43a〔図8(A)参照〕まわりに荷台横方向に揺動するように連結された拡張横側板部43とを備えている。拡張底板部41を、荷台本体33の底板部34に対して軸芯41a〔図8(C)参照〕まわりに起伏揺動するように構成し、拡張荷台部40を、図1,6に示す折りたたみ状態と、図2,7に示す伸展状態とに切換え可能に構成してある。
【0031】
図8は、荷台8の切換え要領を示す説明図である。図8(A)に示す拡張荷台部40は、伸展状態の拡張荷台部である。図8(D)に示す拡張荷台部40は、折りたたみ状態の拡張荷台部である。図8(B)に示すように、左右の拡張横側板部43を、荷台内側に向けて揺動操作して、底板部34の前端縁に沿った折りたたみ姿勢にする。なお、左右の拡張横側板部43の揺動は、張横側板部43が横側板部36に対して直角又は略直角となった位置で、図示しない規制部材により、規制される。次に、図8(C)に示すように、前側板部42を、拡張底板部41の上面側に向けて倒伏揺動操作して、拡張底板部41の上面に重なった折りたたみ姿勢にする。次に、図8(D)に示すように、拡張底板部41を、折りたたみ姿勢の拡張横側板部43に向けて起立揺動操作して、拡張横側板部43の外面に重なった折りたたみ姿勢にすれば、拡張荷台部40を折りたたみ状態に切り換えられる。
【0032】
荷台8は、拡張荷台部40を折りたたみ状態に切り換えることにより、拡張荷台部40の折りたたみのために、前後長さが短縮した第1状態に切り換わる。拡張荷台部40の折りたたみ状態として、左右の拡張横側板部43が拡張底板部41よりも荷台内側に位置した折りたたみ状態を採用してあるので、左右の拡張横側板部43が拡張底板部41よりも荷台外側に位置した折りたたみ状態を採用するのに比べ、第1状態での荷台8の前後長さを、拡張横側板部43の板厚によって決まる分、より短くできる。
【0033】
なお、この実施例では、図8に示すように、荷台8は、折りたたみ状態において、拡張底板部41と左右の横側板部36とを固定する左右のロック機構37を備える。また、左右の拡張横側板部43のそれぞれの上端側には規制部材44が設けられている。この規制部材44により、前側板部42が軸芯42a廻りに上方に回動することが規制される。つまり、前側板部42が軸芯42a廻りに上方に回動しようとした際に、規制部材44が前側板部42に接当することにより前側板部42の姿勢が維持される。この構成により、拡張底板部41と左右の横側板部36との間にロック機構37を設けておけば、前側板部42の姿勢を維持するために複雑なロック機構を設けることなく、簡単な構成で、前側板部42の姿勢を維持できる。なお、図9に示すように、規制部材44は前側板部42の上端側に設けてもよい。この場合、図9(D)に示すように、第1状態において規制部材44が拡張底板部41と拡張横側板部43とにより挟み込まれることにより、前側板部42の姿勢が維持される。
【0034】
図1,3に示すように、荷台8は、第1状態に切り換えると、前後長さの短縮のために、前端側が後搭乗部空間14aよりも後方に位置した状態になり、作業車を二列座席仕様にできる。
【0035】
図8(C)に示すように、拡張底板部41を、前方に倒伏揺動操作して、底板部34と面一又はほぼ面一に並んだ伸展姿勢にする。次に、図8(B)に示すように、前側板部42を、起立揺動操作して、拡張底板部41の前端部から立ち上がった伸展姿勢にする。次に、図8(A)に示すように、左右の拡張横側板部43を、荷台外側に向けて揺動操作して、横側板部36と面一又はほぼ面一に並んだ伸展姿勢にすれば、拡張荷台部40を伸展状態に切り換えられる。
【0036】
荷台8は、拡張荷台部40を伸展状態に切り換えることにより、拡張荷台部40の伸展のために、前後長さが伸長した第2状態に切り換わる。
【0037】
図2に示すように、荷台8は、第2状態に切り換えると、前後長さの伸長のために、前端側が後搭乗部空間14a(つまり、上面視で後述する後張出しフレーム部に重複する位置)に入り込んだ状態になる。このとき、後部座席19を格納状態に切換えておき、かつ仕切り部材15を一列座席仕様のための前仕切り位置に移動させておき、荷台8の前端側が後搭乗部空間14bに入り込むことを可能にする。荷台8の前端側は、後搭乗部空間14aのうち、後部座席19を格納状態に切換えて空いた座席用部位(使用状態の後部座席19が存在する部位)に入り込む。背当て部19bが格納位置にある場合、リンク部材23,23が、側面視で、第1部分が機体側から前方に延びるとともに第2部分が第1部分の前端部から上方に延びた姿勢となっている。そして、荷台8は、前端部がリンク部材の23,23の第一部分と前記第二部分とにより形成された凹部に入り込む。また、荷台8の前端部は、リンク部材の23,23の座席支持部21側の回転軸芯よりも前方に位置する。このように、荷台8の幅がリンク部材の23,23の幅よりも広い(図3を参照)場合であっても荷台8を前方に位置させることにより、車体の全長を短くすることができる。
【0038】
ロプス6について説明する。
図1,3,5に示すように、ロプス6は、前搭乗部空間13a及び後搭乗部空間14aの上方に車体前後方向に位置する上フレーム50と、前搭乗部空間13aの前端部の車体両横外側に振り分けて配置された左右一対の車体上下向きの前支柱51,51と、前搭乗部13と後搭乗部14との間の車体両横外側に振り分けて配置された左右一対の車体上下向きの後支柱52,52とを備え、車体側面視で第1状態及び第2状態の荷台8と重ならない構造になっている。また、上フレーム50が後支柱52と同じ高さレベルにおいて後支柱52よりも後方に張り出している。
【0039】
前支柱51及び後支柱52、及び、補強支柱55について詳述する。
左右一対の前支柱51,51の上端側が上フレーム50の前端側の両横端部に各別に連結され、左右一対の前支柱51,51の下端側が車体フレーム1に備えられた左右一対の車体上下向きの前支持フレーム1F,1Fの上端側に各別に連結されており、左右一対の前支柱51,51は、上フレーム50の前端側を支持し、かつロプス6の前端側を車体フレーム1に支持している。
【0040】
左右一対の後支柱52,52の上端側が上フレーム50の中間部の両横端部に各別に連結されており、左右一対の後支柱52,52の下端側が車体フレーム1に備えられた左右一対の車体上下向きの後支持フレーム1R,1Rの上端側に各別に連結されており、左右一対の後支柱52,52は、上フレーム50の中間部を支持し、かつロプス6の後端側を車体フレーム1に支持している。
【0041】
車体左右側それぞれの前支持フレーム1Fと後支持フレーム1Rとは、前後両端側が車体上下向きになり、中間部が車体前後向きになるように曲げ成形された一つのフレーム部材によって構成してある。
【0042】
図2に示すように、左右の後支柱52は、第2状態での荷台8の前端よりも前方に位置している。図1に示すように、左右の後支柱52は、使用状態での後部座席19よりも前方に位置し、後部座席19と後支柱52との間を通り易くしている。
【0043】
図1,5に示すように、左右の後支柱52それぞれにおいて、後支柱52の下端側と、上フレーム50のうちの後支柱52に対する連結箇所よりも後方の部位とにわたり、補強フレーム53を連結してある。左右の補強フレーム53の下端部どうしを、横向き連結フレーム54によって連結してある。
【0044】
また、図1,2,4に示すように、補強支柱55は、後支柱52と略同じ前後方向位置において、下端側が車体フレーム1側に支持されている。補強支柱55は、下端側から上方に向かうにしたがって後に位置するように傾斜して延びるとともに、上端側の所定領域が後述する後中連結フレーム66に沿って延びるとともに、当該後中連結フレーム66に連結されている。この実施例では、後中連結フレーム66は、車体幅方向における中央部に1本設けられている。
【0045】
上フレーム50について詳述する。
図3,5に示すように、上フレーム50は、左右一対の前後向きのメインフレーム60,60と、左右のメインフレーム60の前端部を連結する横向きの前連結フレーム61と、左右のメインフレーム60,60の後端部を連結する横向きの後連結フレーム62(「第1連結フレーム部」に相当)と、左右のメインフレーム60,60の前後方向での中間部を連結する横向きの中連結フレーム63(「第2連結フレーム部」に相当)とを備えている。
【0046】
中連結フレーム63の左端寄りの部位と、左のメインフレーム60の前フレーム部60Fとを、斜め姿勢の左連結フレーム64(「第3連結フレーム」に相当)によって連結してある。中連結フレーム63の右端寄りの部位と、右のメインフレーム60の前フレーム部60Fとを、斜め姿勢の右連結フレーム65(「第3連結フレーム」に相当)によって連結してある。中連結フレーム63と後連結フレーム62との中間部どうしを、前後向きの後中連結フレーム66(「第4連結フレーム部」に相当)によって連結してある。なお、中連結フレーム63で左右一対の前フレーム部60F同士を連結し、左連結フレーム64及び右連結フレーム65で中連結フレーム63と左右一対の後フレーム部60Rとを連結してもよい。
【0047】
左右のメインフレーム60は、メインフレーム60のうちの後支柱連結箇所よりも前側の部分を構成する前フレーム部60Fと、メインフレーム60のうちの後支柱連結箇所よりも後側の部分を構成する後フレーム部60Rとを連結部材67によって連結することによって構成してある。なお、前フレーム部60Fと後フレーム部60Rとは、一体のフレーム材で構成してもよい。
【0048】
ロプス6の左右側それぞれにおける前支柱51と、後支柱52と、メインフレーム60のうちの前フレーム部60Fとを、前端側が前支柱51になり、後端側が後支柱52になり、中間部がメインフレーム60の前側の前フレーム部60Fになるように曲げ成形した一つのフレーム材によって構成してある。なお、前支柱51と、後支柱52と、メインフレーム60のうちの前フレーム部60Fとは、複数のフレーム材を連結して構成してもよい。左右のメインフレーム60の後フレーム部60Rと、後連結フレーム62とを、両端側がメインフレーム60の後フレーム部60Rになり、中間部が後連結フレーム62になるように曲げ成形した一つのフレーム材によって構成してある。なお、左右のメインフレーム60の後フレーム部60Rと、後連結フレーム62とは、複数のフレーム材を連結して構成してもよい。
【0049】
このように、後フレーム部60R及び後連結フレーム62が、後支柱52よりも後方において後支柱の上端の高さレベルを後方に延びる。つまり、本実施例において、後フレーム部60R及び後連結フレーム62は、後方張出しフレーム部を構成する。また、補強支柱55は、下端側が車体フレーム1側に支持され、上端側が後中連結フレーム66に連結されている。これにより、後方張出しフレーム部が、後中連結フレーム66により支持される。
【0050】
〔別実施形態〕
【0051】
(1)上記した実施例では、荷台8の第1状態と第2状態との切換えを可能にするのに、折りたたみ構造の拡張荷台部40を採用した例を示したが、荷台本体33に前後方向にスライドするように支持され、荷台本体33から前方への突出長さの調節ができる拡張荷台部を採用して実施してもよい。
【0052】
(2)上記した実施例では、荷台8の前後長さを変更することによって荷台8を第1状態と第2状態とに切り換えるように構成した例を示したが、荷台8の前後長さを変更せず、荷台8の全体を車体に対して前後にスライドさせることによって荷台8を第1状態と第2状態とに切り換えるように構成して実施してもよい。また、荷台8は必ずしも第1状態と第2状態とに切り換え可能に構成しなくてもよい。
【0053】
(3)上記した実施例では、後部座席19の座部19a及び背当て部19bを格納状態に切換えて空いた座席用部位に荷台8の前端側が入り込むよう構成した例を示したが、後部座部19aを使用状態にしたままで、背当て部19bのみを格納状態にして、後搭乗部空間14aに荷台8の前端側が入り込むように構成して実施してもよい。
【0054】
(4)上記した実施例では、後部座席19を使用状態と格納状態とに切り換える操作によって仕切り部材15を前後移動させるよう構成した例を示したが、後部座席19を使用状態と格納状態とに切り換える操作と、仕切り部材15を前後移動させる操作とを別々に行なうように構成して実施してもよい。この場合、例えば、レール部材やリンク部材を介して、仕切り部材15をロプスや車体フレームに支持することができる。また、使用状態用の仕切り部材15の取り付け箇所と格納状態用の仕切り部材15の取り付け箇所とを別途に設けて、仕切り部材15の取り付け箇所を変更してもよい。
【0055】
(5)上記した実施例で示すロプス6のフレーム構造は一例であり、後張出しフレーム部を備える構造であれば、例えば、補強フレーム53、補強支柱55、後連結フレーム62、中連結フレーム63、左連結フレーム64、連結フレーム65、及び、後中連結フレーム66の一部又はすべてを備えないフレーム構造や、上記以外のフレーム部を備えるフレーム構造など種々のフレーム構造を採用し得る。また、補強フレーム53の後方に延出する部分により後張出しフレーム部を構成する等、後フレーム部60R及び後連結フレーム62以外で後張出しフレーム部を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、種々の作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
8 荷台
16 運転座席
19 後部座席
19a 座部
19b 背当て部
23 リンク部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9