特許第6305943号(P6305943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305943
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】開弁圧検査装置及び開弁圧検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/00 20060101AFI20180326BHJP
   H01M 2/12 20060101ALI20180326BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20180326BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   G01M13/00
   H01M2/12 102
   H01M10/04 Z
   H01M10/48 301
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-10843(P2015-10843)
(22)【出願日】2015年1月23日
(65)【公開番号】特開2016-136454(P2016-136454A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2017年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛之
(72)【発明者】
【氏名】小林 勝
(72)【発明者】
【氏名】海野 公則
【審査官】 本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−312680(JP,A)
【文献】 特開昭64−030159(JP,A)
【文献】 特開平04−043554(JP,A)
【文献】 特開2004−319208(JP,A)
【文献】 特開2012−146567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40;13/00
H01M 2/12;10/04;10/48
F16K 39/00−51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材からなる弁体を用いた通気制御弁の開弁圧検査装置であって、
前記通気制御弁の開弁圧を計測する開弁圧計測部と、
前記開弁圧を計測した開弁圧計測時における前記弁体の温度を計測する温度計測部と、
前記弁体を圧縮した圧縮時から前記開弁圧計測時までの経過時間を算出する経過時間算出部と、
予め作成した弁体の温度毎における前記圧縮時から前記開弁圧計測時までの経過時間と開弁圧との関係に基づいて、前記温度計測部が計測した前記弁体の温度と前記経過時間算出部が算出した経過時間とに対して、前記開弁圧計測部が計測した開弁圧が適正であるか否かを検査する検査部と、を備える
ことを特徴とする開弁圧検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の開弁圧検査装置において、
前記通気制御弁は、電池に設けられ、当該電池の内圧が所定値に達したときに開く
ことを特徴とする開弁圧検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の開弁圧検査装置において、
前記通気制御弁は、電池の蓋部に設けられ、
前記弁体は、前記蓋部を構成するベースとカバーとの間に圧縮した状態で設置され、前記ベースとカバーとによって圧縮したときを、前記弁体を圧縮した前記圧縮時とする
ことを特徴とする開弁圧検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の開弁圧検査装置において、
前記温度計測部は、前記弁体の温度として、前記弁体を収容する前記蓋部の温度を計測する
ことを特徴とする開弁圧検査装置。
【請求項5】
弾性部材からなる弁体を用いた通気制御弁の開弁圧検査方法であって、
前記通気制御弁の開弁圧を計測し、開弁圧を計測した開弁圧計測時における前記弁体の温度を計測する計測工程と、
前記弁体を圧縮した圧縮時から前記開弁圧計測時までの経過時間を算出する経過時間算出工程と、
予め作成した弁体の温度毎における前記圧縮時から前記開弁圧計測時までの経過時間と開弁圧との関係に基づいて、前記計測工程において計測した前記弁体の温度と前記経過時間算出工程において算出した経過時間とに対して、前記計測工程において計測した開弁圧が適正であるか否かを検査する検査工程と、を備える
ことを特徴とする開弁圧検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気制御弁の開弁圧検査装置及び開弁圧検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電槽がケース内に収容された電池モジュールには、電槽内で発生したガスを外部に放出する安全弁(通気制御弁)機構が設けられている。この種の安全弁機構としては、ゴム弁等の弾性部材からなる弁体が蓋部に複数備えられているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。安全弁は、電槽の内圧が所定値に達したときに開く。
【0003】
ところで、電池モジュールの組み立て前には、安全弁が開弁する圧力である開弁圧が適正であるか否かの安全弁の検査が行われる。従来における安全弁の検査では、蓋部の弁座に弁体を設置すると弁体の反発力が経時変化するため、弁体の反発力が安定するまで一定温度で一定時間放置するエージングを行ってから安全弁の検査を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−178909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の安全弁の検査では、蓋部に弁体を組み付けてから一定温度で長時間放置するためのエージング室等の施設が必要である。このため、弁体を圧縮してから安全弁(通気制御弁)の検査が完了するまでの時間を短縮することで、エージング室等の施設を削減することが望まれている。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、弁体を圧縮してから通気制御弁の検査を完了するまでの時間を短縮することのできる開弁圧検査装置及び開弁圧検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について説明する。
従来の開弁圧検査装置では、一定温度環境下で、弁体の反発力が安定するまで保管しており、保管時間を保管温度に応じて決めていた。しかし、本発明者らは、開弁圧と保管時間(経過時間)との関係が保管温度ではなく、開弁圧計測時の弁体の温度に依存することを見出した。
【0008】
上記課題を解決する開弁圧検査装置は、弾性部材からなる弁体を用いた通気制御弁の開弁圧検査装置であって、前記通気制御弁の開弁圧を計測する開弁圧計測部と、前記開弁圧を計測した開弁圧計測時における前記弁体の温度を計測する温度計測部と、前記弁体を圧縮した圧縮時から前記開弁圧計測時までの経過時間を算出する経過時間算出部と、予め作成した弁体の温度毎における前記圧縮時から前記開弁圧計測時までの経過時間と開弁圧との関係に基づいて、前記温度計測部が計測した前記弁体の温度と前記経過時間算出部が算出した経過時間とに対して、前記開弁圧計測部が計測した開弁圧が適正であるか否かを検査する検査部と、を備えることをその要旨としている。
【0009】
上記課題を解決する開弁圧検査方法は、弾性部材からなる弁体を用いた通気制御弁の開弁圧検査方法であって、前記通気制御弁の開弁圧を計測し、開弁圧を計測した開弁圧計測時における前記弁体の温度を計測する計測工程と、前記弁体を圧縮した圧縮時から前記開弁圧計測時までの経過時間を算出する経過時間算出工程と、予め作成した弁体の温度毎における前記圧縮時から前記開弁圧計測時までの経過時間と開弁圧との関係に基づいて、前記計測工程において計測した前記弁体の温度と前記経過時間算出工程において算出した経過時間とに対して、前記計測工程において計測した開弁圧が適正であるか否かを検査する検査工程と、を備えることを要旨としている。
【0010】
上記構成及び方法では、弁体が圧縮された時から開弁圧を計測した時までの経過時間と開弁圧との関係が弁体の温度毎に予め作成してあるので、弁体を圧縮した後に一定温度で長時間放置することなく、圧縮からの経過時間と、弁体の温度とによって開弁圧を検査することができる。よって、弁体を圧縮してから通気制御弁の検査を完了するまでの時間を短縮することができるようになる。
【0011】
上記開弁圧検査装置について、前記通気制御弁は、電池に設けられ、当該電池の内圧が所定値に達したときに開くことが好ましい。
上記構成では、通気制御弁が電池に設けられるので、電池を組み立てて開弁圧を検査するまでに掛かる時間を短縮することができる。
【0012】
上記開弁圧検査装置について、前記通気制御弁は、電池の蓋部に設けられ、前記弁体は、前記蓋部を構成するベースとカバーとの間に圧縮した状態で設置され、前記ベースとカバーとによって圧縮したときを、前記弁体を圧縮した前記圧縮時とすることが好ましい。
【0013】
上記構成では、通気制御弁が電池の蓋部に設けられるので、電池の蓋部を組み立てて開弁圧を検査するまでに掛かる時間を短縮することができる。また、弁体がベースとカバーとによって圧縮されたときを圧縮時として経過時間を算出することができる。
【0014】
上記開弁圧検査装置について、前記温度計測部は、前記弁体の温度として、前記弁体を収容する前記蓋部の温度を計測することが好ましい。
弁体は、圧縮された状態で蓋部に収容されているので、弁体の温度を直接計測するには、蓋部から弁体を露出させる必要があり、容易ではない。そこで、上記構成では、弁体を収容している蓋部の温度を弁体の温度として計測する。このため、温度計測を電池の蓋部の外側から行うことができ、弁体の温度を容易に計測することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、弁体を圧縮してから通気制御弁の検査を完了するまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】検査が適用される電池モジュールの安全弁機構の概略構成を示す斜視図。
図2】安全弁機構の断面図。
図3】開弁圧検査装置の一実施形態における時刻記録工程を示す図。
図4】同実施形態における開弁圧検査装置の概略構成を示す図。
図5】同実施形態における開弁圧検査の構成を示すフローチャート。
図6】同実施形態における温度毎における経過時間と開弁圧との関係を示す図。
図7】同実施形態における開弁圧検査に用いる経過時間と開弁圧の規格範囲との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1図7を参照して、開弁圧検査装置及び開弁圧検査方法の一実施形態について説明する。本実施形態では、当該開弁圧検査装置及び検査方法が適用される、6つの通気制御弁としての安全弁を有する安全弁機構に例示して説明する。
【0018】
まず、検査が行われる電池としての電池モジュールの構成について説明する。
図1に示すように、電池モジュール10は、内部に6つの電槽12を有するケース本体13と、ケース本体13の上部開口を封止する安全弁機構としての蓋部15とを備えている。電槽12内には、図示しない極板群が電解液とともに収容されている。極板群は、正極活物質を含む複数の正極板と、負極活物質を含む複数の負極板とがセパレータを介して積層されたものである(いずれも図示略)。また、電槽12内には、上記正極板が接合される集電板、及び上記負極板が接合される集電板が収容されている(いずれも図示略)。
【0019】
また、蓋部15は、ベース16と、ベース16に形成された弁体収容部に挿入される弁体17と、弁体17を収容したベース16を封止するカバー18とを備えている。
図2に示すように、ベース16の上面には、凹部20が形成されている。この凹部20の底面には、6つの弁体収容部21が形成されており、弁体収容部21の底面は、弁体17が配置される弁座22となっている。弁体17は、弾性を有する弾性部材からなり、ベース16とカバー18との間に介在する。また、弁座22には、電槽12に連通する連通孔23が形成されている。これらの弁体17及び弁座22は、安全弁11を構成する。弁体17の底面が弁座22に当接することによって、安全弁11は閉じられ、弁体17の底面が弁座22から離間することによって安全弁11は開かれる。
【0020】
また、カバー18は、平面視において矩形状に形成されている。カバー18の長手方向における縁部には、下方に突出した突出部24が設けられている。カバー18の突出部24の先端が、ベース16の凹部20の底面に当接することによって、カバー18の上面とベース16の上面とは同じ高さとなるとともに、カバー18とベース16との間には、中空のガス集合部25が形成されている。このガス集合部25は、各弁体収容部21に連通している。
【0021】
さらにカバー18には、上面から突出する円筒状の排出部26が設けられている。排出部26には、ガス集合部25と連通するガス排出口27が設けられている。このガス排出口27を介してガス集合部25が外部に連通されることで、ガス集合部25の圧力は、大気圧とされる。
【0022】
弁体17は、電槽12の内圧が大きくなり、所定値に達すると、カバー18側に押圧されて圧縮され、その底面が弁座22から離間する。これにより、安全弁11は開弁された状態となり、連通孔23とガス集合部25とが連通される。
【0023】
電槽12から安全弁11を介してガス集合部25に排出されたガスは、ガス排出口27から外部へ放出される。電槽12の内圧と大気圧との差が小さくなると、弁体17が圧縮された分伸張し、その底面が弁座22に当接することにより、連通孔23が閉じられ、安全弁11は閉弁される。
【0024】
次に図3図7を参照して、安全弁の開弁圧検査装置及び開弁圧検査方法について説明する。この開弁圧の検査は、弁体17を弁座22に設置して、弁体17が圧縮されたときに開始される。
【0025】
図3に示すように、安全弁の開弁圧検査装置は、弁体17が弁座22に設置されて、弁体17を収容したベース16をカバー18が封止することで、弁体17が圧縮されると、圧縮した時刻である圧縮時刻を記録する圧縮時刻記録工程を行う(ステップS1)。
【0026】
図4に示すように、開弁圧検査装置は、弁体17の圧縮時刻を印字する印字機40を備えている。印字機40は、蓋部15の組立工程に設置されている。蓋部15の組立工程では、弁体17がベース16の弁体収容部21に挿入されて、カバー18がベース16に取り付けられることで蓋部15が組み立てられる。印字機40は、組立工程において弁体17が圧縮されると、カバー18がベース16に取り付けられた時刻を圧縮時刻として、この圧縮時刻を含む圧縮時刻情報を蓋部15の上面に印字する。例えば、印字機40は、圧縮時刻を表す1次元コード又は2次元コードをインクジェットによってベース16の上面に印字する。なお、ベース16の上面ではなくカバー18の上面に印字してもよい。
【0027】
次に図3に示すように、開弁圧検査装置は、温度及び開弁圧を計測する計測工程を行う(ステップS2)。本実施形態の開弁圧検査方法では、一定温度で一定時間放置するエージングを行う必要がないので、エージング室に保管することなく組み付けの後、続けて開弁圧の検査を行うことができる。なお、開弁圧検査を行う室内の温度や温度変化は開弁圧を計測した時の温度に比べ開弁圧への影響が小さいものの、開弁圧検査を行う室内の温度変化は15℃以内、より好ましくは10℃以内の温度範囲(例えば25±5℃)に抑えることが好ましい。
【0028】
図5に示すように、開弁圧検査装置は、蓋部15に設けられた安全弁11の開弁圧を計測する開弁圧計測装置30を備えている。開弁圧計測装置30は、ガス供給部31と、ガス供給部31及び安全弁11を接続するガス供給路32と、ガス供給路32に設けられる流量計33と、圧力計34とを備えている。なお、開弁圧計測装置30が開弁圧計測部として機能する。
【0029】
ガス供給部31は、ガス供給路32に空気や窒素等のガスを圧送する電動アクチュエータや、電空レギュレータから構成され、図示しないガスタンク等のガス供給源からのガス供給圧を調整する。本実施形態では、ガス供給部31は、空気を供給するものとする。また、圧力計34は、安全弁11よりも上流側の1次圧力を検出する。流量計33は、ガス供給路32のうち、圧力計34よりも安全弁11に近い位置に設けられる。即ち、安全弁11から流量計33までの流路長は、安全弁11から圧力計34までの流路長よりも短くなっている。
【0030】
また、開弁圧計測装置30は、流量計33及び圧力計34からデータを収集して、安全弁11の開弁圧を検出する制御装置35を備えている。具体的には、流量計33がある閾値となったときに安全弁11が開弁したと判断し、そのときの圧力計34の値を開弁圧とする。制御装置35は、流量計33から入力した電気信号に基づく流量を、時刻とともに記憶部35aに記憶する。また制御装置35は、圧力計34から入力した電気信号に基づく圧力を、時刻とともに記憶部35aに記憶する。すなわち、流量及び圧力は、時刻によって互いに関連付けられている。
【0031】
ところで、安全弁11に対する検査では、全ての安全弁11を検査対象とすることもあれば、全個数よりも少ない複数の安全弁11を検査対象とすることもある。複数の安全弁11を検査対象とするときには、複数の開弁圧計測装置30を各安全弁11に取り付けるか、1つの開弁圧計測装置30を順に安全弁11に取り付けて行う。
【0032】
また、開弁圧検査装置は、開弁圧を計測したときの弁体17の温度を計測する温度計測部37を備えている。温度計測部37は、開弁圧を計測している間は温度を随時計測し、計測した温度を計測した時刻とともに制御装置35に出力する。温度計測部37は、開弁圧を計測した安全弁11の弁体17の温度を測るために、検査対象の弁体17と接触している蓋部15のカバー18の温度を計測する。特に、検査対象の弁体17の近傍を計測することが望ましい。温度計測部37は、例えば放射温度計を用いて、計測対象から放射される赤外線や可視光線の強度を測定することで、検査対象の温度を非接触にて計測する。
【0033】
制御装置35は、安全弁11が開弁されたときの圧力である開弁圧と、開弁圧が計測された時刻と、開弁圧が計測されたときの温度とを記憶部35aに記憶しておく。
続いて図3に示すように、開弁圧検査装置は、温度及び開弁圧を計測する計測工程と合わせて、弁体17が圧縮されてから開弁圧が計測されたときまでの経過時間を算出する経過時間算出工程を行う(ステップS3)。開弁圧検査装置は、蓋部15に印字された圧縮時刻と、開弁圧を計測した開弁圧計測時刻とが得られれば、経過時間を算出することができる。
【0034】
図5に示すように、開弁圧検査装置は、蓋部15に印字された圧縮時刻情報を読み取るリーダー39を備えている。リーダー39は、蓋部15に印字されたバーコードを読み取り、読み取った圧縮時刻情報を制御装置35に出力する。制御装置35は、入力された圧縮時刻情報から圧縮時刻を取得し、記憶部35aに記憶された開弁圧計測時刻を読み出し、圧縮時刻から開弁圧計測時刻までの経過時間を算出する。なお、制御装置35が経過時間算出部として機能する。
【0035】
次に図3に示すように、開弁圧検査装置は、計測された開弁圧が規格範囲以内であるか否かによって検査する検査工程を行う(ステップS4)。ここで、図6に示すように、経過時間に対する開弁圧の関係は、弁体17の温度(T1,T2,T3)毎に異なり、温度が低いほど開弁圧も低くなっている(T1<T2<T3)。そこで、図7に示すように、弁体17の温度毎に経過時間に対する開弁圧の規格範囲、規格下限から規格上限に含まれる範囲を設定する。図7では、ある1つの温度における経過時間に対する開弁圧の変化の態様を示している。なお、規格範囲を設定するときの圧縮時と、開弁圧を計測するときの圧縮時とは、同じタイミングである。例えば、圧縮時のタイミングは、弁体17が弁体収容部21に挿入されて、カバー18がベース16に取り付けられ始めることで弁体17の圧縮が開始されたときや、カバー18がベース16に完全取り付けられて弁体17の圧縮完了したとき等がある。
【0036】
開弁圧検査装置の制御装置35は、計測された開弁圧がこの規格範囲以内であれば開弁圧が適正であると判定し、計測された開弁圧が規格範囲外であれば開弁圧が異常であると判定する。ここで、制御装置35が検査部として機能する。
【0037】
なお、図6及び図7に示されるように、弁体17を圧縮した直後は、時間の経過に対する開弁圧の変化量が大きいので、4時間経過した以降に開弁圧の検査を行うことが望ましい。このように4時間経過した以降にすれば、時間の経過に対する開弁圧の変化が小さくなっているので、計測した開弁圧の変化が規格範囲の変化と少しずれただけで規格範囲から外れてしまい誤判定するような状況を避けることができる。
【0038】
上記のように、計測した弁体17の温度における経過時間に対する開弁圧を検査することで、弁体17の反発力が安定するまで一定温度で長時間保管することなく、開弁圧の判定が可能となるので、弁体17を圧縮してから安全弁の検査が完了するまでの時間を短縮することができる。また、一定温度による保管の必要がなくなるため、エージング室を廃止することが可能であり、エージング室に掛かる消費電力を削減することもできるようになる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)弁体17が圧縮された時から開弁圧を計測した時までの経過時間と開弁圧との関係が弁体17の温度毎に予め作成してあるので、弁体17を圧縮した後に一定温度で長時間放置することなく、圧縮からの経過時間と、弁体17の温度とによって開弁圧を検査することができる。よって、弁体17を圧縮してから安全弁11の検査を完了するまでの時間を短縮することができるようになる。
【0040】
(2)安全弁11が電池モジュール10の蓋部15に設けられるので、電池モジュール10の蓋部15を組み立てて開弁圧を検査するまでに掛かる時間を短縮することができる。
【0041】
(3)弁体17を収容している蓋部15の温度を弁体17の温度として計測する。このため、温度計測を電池モジュール10の蓋部15の外側から行うことができ、弁体17の温度を容易に計測することができる。
【0042】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもができる。
・上記実施形態では、印字機40がインクによって圧縮時刻情報を印字したが、レーザ等によって圧縮時刻情報を焼き付けてもよい。
【0043】
・上記実施形態では、圧縮時刻情報としてバーコードを用いたが、圧縮時刻そのものを印字又は焼き付けてカメラ等で読み取ってもよい。
・上記実施形態では、圧縮時刻情報を電池モジュール10の蓋部15に印字したが、各電池モジュール10に対応する圧縮時刻情報を、ネットワーク等を介してサーバ等のデータベースに記憶してもよい。この場合、各電池モジュール10に対応する圧縮時刻情報を検査部である制御装置35がデータベースから読み出して検査する。
【0044】
・上記実施形態では、蓋部15の温度を計測することで弁体17の温度として間接的に計測したが、弁体17自体の温度を直接的に計測してもよい。例えば、蓋部15のベース16の下面側の弁座22の連通孔23を介して弁体17の温度を計測する。
【0045】
・上記実施形態では、放射温度計を用いることで温度を非接触で計測したが、接触して温度を計測してもよい。
・上記構成において、流量計33が設けられる位置は、必ずしも圧力計34が設けられる位置よりも安全弁11に近い位置でなくてもよい。例えば、流量及び圧力の両方を測定可能な測定装置が設けられる場合には、流量計及び圧力計の位置は、ほぼ同一となる。また、流量計33は、圧力計34よりも安全弁11に対して遠い位置に設けられていてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、実際に弁体17を弁体収容部21に挿入し、ベース16とカバー18とによる圧縮時を基準として開弁圧の検査を行ったが、実際に弁体17を蓋部15に組み付けず、その他の装置により弁体17を圧縮して開弁圧を検査してもよい。
【0047】
・上記実施形態では、安全弁11は、電槽12側からの圧力によって弁体17が圧縮されることによって開弁する構成としたが、弁体17や弁座22の構成は変更してもよい。例えば、弁体17は、連通孔23に貫挿され、ガス集合部25側に配置される弁体部と電槽側に配置される係合部とを備える構成であってもよい。電槽12の内圧が所定の圧力以上となると、弁体17がガス集合部25側に押されて、弁体部が弁座から離れ、圧力導入溝を通じて電槽12及びガス集合部25が連通する。
【0048】
・上記実施形態では、電池モジュール10を6個の電池セルから構成したが、6個以外の複数個の電池セルから構成してもよい。また電池モジュール10の安全弁機構(蓋部15)の構成は、上述した構成に限らず、安全弁11の個数を変更してもよいし、ベース16及びカバー18の構成を変更してもよい。例えば、安全弁11は、複数の電槽12に対して1つ設けられていてもよい。また、ガス排出口27は、複数設けられていてもよい。
【0049】
・上記実施形態では、電池として電池モジュール10に開弁圧検査装置を適用したが、電池として単電池に開弁圧検査装置を適用してもよい。また、電池以外の装置における、圧力差に応じて連通孔の開放面積を変化させる通気制御弁に開弁圧検査装置を適用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…電池モジュール、11…安全弁、12…電槽、13…ケース本体、15…蓋部、16…ベース、17…弁体、18…カバー、20…凹部、21…弁体収容部、22…弁座、23…連通孔、24…突出部、25…ガス集合部、26…排出部、27…ガス排出口、30…開弁圧計測装置、31…ガス供給部、32…ガス供給路、33…流量計、34…圧力計、35…制御装置、37…温度計測部、39…リーダー、40…印字機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7