特許第6305956号(P6305956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305956
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】回転弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20180326BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20180326BHJP
   F16K 1/54 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   F16K37/00 D
   F16K37/00 J
   G05D7/06 Z
   F16K1/54 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-71286(P2015-71286)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191417(P2016-191417A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2017年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大橋 智文
(72)【発明者】
【氏名】染谷 秀明
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−245096(JP,A)
【文献】 特開2014−170529(JP,A)
【文献】 特開2013−181877(JP,A)
【文献】 特開2015−28392(JP,A)
【文献】 特開昭59−225411(JP,A)
【文献】 特開2003−271245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
F16K 1/00−1/54
G05D 7/00−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流路の開閉量を調節する弁体と、
前記弁体に結合された弁軸と、
前記弁軸を回転させる駆動部と、
前記弁軸の回転位置から前記弁体の実開度を検出する弁開度検出器と、
前記弁開度検出器によって検出される前記弁体の実開度を弁開度実測値とし、この弁開度実測値が弁開度設定値に一致するように前記駆動部による前記弁軸の回転量を制御する弁開度制御部と、
前記弁開度設定値を前記弁軸のねじれ量を考慮した補正値で補正する弁開度設定値補正部と
を備えることを特徴とする回転弁。
【請求項2】
請求項1に記載された回転弁において、
前記弁体の1次側の流体の圧力と2次側の流体の圧力との差圧を弁体の前後差圧として検出する差圧検出部を備え、
前記弁開度設定値補正部は、
前記弁開度検出器によって検出された弁体の実開度と前記差圧検出部によって検出された弁体の前後差圧とに基づいて前記弁軸のねじれ量を考慮した補正値を求め、この求めた補正値で前記弁開度設定値を補正する
ことを特徴とする回転弁。
【請求項3】
請求項2に記載された回転弁において、
前記弁体の開度と前記弁体の前後差圧との組み合わせに対応した弁開度補正値を示す補正テーブルを備え、
前記弁開度設定値補正部は、
前記弁開度検出器によって検出された弁体の実開度と前記差圧検出部によって検出された弁体の前後差圧とに対応する弁開度補正値を前記補正テーブルから取得し、この取得した弁開度補正値を前記弁軸のねじれ量を考慮した補正値とする
ことを特徴とする回転弁。
【請求項4】
請求項2に記載された回転弁において、
前記弁体の開度と前記弁体の前後差圧との組み合わせに対応した第1の弁開度補正値を示す第1の補正テーブルと、
前記弁体の開度と前記弁体の前後差圧との組み合わせに対応した第2の弁開度補正値を示す第2の補正テーブルとを備え、
前記弁開度設定値補正部は、
前記弁開度設定値が減少する方向に変更された場合には、前記弁開度検出器によって検出された弁体の実開度と前記差圧検出部によって検出された弁体の前後差圧とに対応する第1の弁開度補正値を前記第1の補正テーブルから取得し、
前記弁開度設定値が増大する方向に変更された場合には、前記弁開度検出器によって検出された弁体の実開度と前記差圧検出部によって検出された弁体の前後差圧とに対応する第2の弁開度補正値を前記第2の補正テーブルから取得し、
この取得した弁開度補正値を前記弁軸のねじれ量を考慮した補正値とする
ことを特徴とする回転弁。
【請求項5】
請求項4に記載された回転弁において、
前記第1の補正テーブルに設定されている第1の弁開度補正値の各々は負の値であり、
前記第2の補正テーブルに設定されている第2の弁開度補正値の各々は正の値である
ことを特徴とする回転弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弁体に結合された弁軸を回転させて流路を流れる流体の流量を調節する回転弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空調機への冷温水の流量を制御する空調制御システムがある(例えば、特許文献1,2参照)。この空調制御システムでは、空調機への冷温水の供給通路に流量制御バルブを設置し、この流量制御バルブ内の弁体を駆動して、冷温水が流れる流路の開閉量を調節するようにしている。
【0003】
通常、流量制御バルブは、空調制御装置から設定開度(弁開度設定値)を入力する一方、弁開度検出器によって検出される弁体の実開度を弁開度実測値とし、この弁開度実測値が弁開度設定値に一致するように弁体の駆動を制御する。
【0004】
例えば、特許文献3に示された流量制御バルブでは、弁体に結合された弁軸を回転させるモータと、弁軸の回転位置から弁体の実開度を検出する弁開度検出器とを設け、弁開度検出器によって検出される弁体の実開度を弁開度実測値とし、この弁開度実測値が弁開度設定値に一致するようにモータによる弁軸の回転量を制御するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−211191号公報
【特許文献2】特開平06−272935号公報
【特許文献3】特開2009−245096号公報
【特許文献4】特開2009−115271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に示されているような弁体に結合された弁軸を回転させるタイプの流量制御バルブ(回転弁)では、流れる流体の圧力により弁軸にねじれが生じる。すなわち、前後差圧(流体の圧力)が発生すると、弁体に圧力がかかり、弁軸を支えている軸受との間に摩擦力が生じる。その摩擦力によって弁軸にトルクが生じ、トルクに応じたねじれが発生する。
【0007】
弁軸にねじれが生じると、弁軸の回転位置から検出される弁体の実開度(弁開度実測値)と弁体の実際の開度(弁開度実値)との間に誤差が発生する。このため、弁体の実際の開度(弁開度実値)と所望の開度(弁開度設定値)との間に誤差が発生し、開度制御の精度が低下してしまう。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高精度な開度制御を実現することが可能な回転弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために本発明は、流体が流れる流路の開閉量を調節する弁体と、弁体に結合された弁軸と、弁軸を回転させる駆動部と、弁軸の回転位置から弁体の実開度を検出する弁開度検出器と、弁開度検出器によって検出される弁体の実開度を弁開度実測値とし、この弁開度実測値が弁開度設定値に一致するように駆動部による弁軸の回転量を制御する弁開度制御部と、弁開度設定値を弁軸のねじれ量を考慮した補正値で補正する弁開度設定値補正部とを備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、弁開度設定値が弁軸のねじれ量を考慮した補正値で補正され、この補正された弁開度設定値に弁開度実測値が一致するように弁軸の回転量が制御される。弁軸のねじれ量は、弁体の開度とねじれ量との関係や弁体の前後差圧とねじれ量との関係から知ることが可能である。また、弁体の開度と弁体の前後差圧との組み合わせとねじれ量との関係から知ることも可能である。
【0011】
本発明では、このような関係から知ることが可能な弁軸のねじれ量に着目し、このねじれ量を考慮した補正値で弁開度設定値を補正し、この補正された弁開度設定値に弁開度実測値が一致するように弁軸の回転量を制御することによって、実際の開度(弁開度実値)と所望の開度(弁開度設定値)との間に発生する誤差を無くすようにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、弁軸のねじれ量を考慮した補正値で弁開度設定値を補正するようにしたので、実際の開度(弁開度実値)と所望の開度(弁開度設定値)との間に発生する誤差を無くすようにして、高精度な開度制御を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る回転弁を用いた空調制御システムの一例を示す計装図である。
図2】この空調制御システムに用いられている流量制御バルブ(回転弁)の一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す図である。
図3】この流量制御弁バルブで用いる補正テーブルを例示する図である。
図4】この流量制御弁バルブにおいて補正値が0であると仮定した場合に弁体の実際の開度(弁開度実値)θprと所望の開度(弁開度設定値)θspとの間に生じる誤差δを説明する図である。
図5】この流量制御弁バルブにおいて弁体の実際の開度(弁開度実値)θprと所望の開度(弁開度設定値)θspとの間に生じる誤差δが無くなる様子を説明する図である。
図6】実施の形態2の流量制御弁バルブの要部を示す図である。
図7】実施の形態2の流量制御弁バルブで用いる補正テーブルを例示する図である。
図8】実施の形態2の流量制御弁バルブにおいて閉方向および開方向に開度を変更する場合の図4に対応する図である。
図9】弁体の開度とねじれ量との関係を示す図である。
図10】弁体の前後差圧とねじれ量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はこの発明に係る回転弁を用いた空調制御システムの一例を示す計装図である。
【0015】
図1において、1は冷温水を生成する熱源機、2は熱源機1が生成する冷温水を搬送するポンプ、3は複数の熱源機1からの冷温水を混合する往ヘッダ、4は往水管路、5は往ヘッダ3から往水管路4を介して送られてくる冷温水の供給を受ける空調機、6は還水管路、7は空調機5において熱交換され還水管路6を介して送られてくる冷温水が戻される還ヘッダ、8は往ヘッダ3から空調機5に供給される冷温水の流量を制御する流量制御バルブ(回転弁)、9は空調機5から送り出される給気の温度を計測する給気温度センサ、10は空調制御装置、11は空調機5のコイル、12は送風機である。
【0016】
この空調制御システムにおいて、ポンプ2より圧送され熱源機1により熱量が付加された冷温水は、往ヘッダ3において混合され、往水管路4を介して空調機5へ供給され、空調機5を通過して還水管路6により還水として還ヘッダ7へ至り、再びポンプ2によって圧送され、以上の経路を循環する。例えば、冷房運転の場合、熱源機1では冷水が生成され、この冷水が循環する。暖房運転の場合、熱源機1では温水が生成され、この温水が循環する。
【0017】
空調機5は、制御対象エリアから空調制御システムに戻る空気(還気)と外気との混合気を、冷温水が通過するコイル11によって冷却または加熱し、この冷却または加熱された空気を給気として送風機12を介して制御対象エリアに送り込む。空調機5は、冷房運転と暖房運転で共通のコイル11を用いるシングルタイプの空調機であり、この空調機5へ循環させる冷温水の還水管路6に本発明に係る回転弁が流量制御バルブ8として設けられている。
【0018】
〔実施の形態1〕
図2はこの空調制御システムに用いられている流量制御弁バルブ8の要部を示す図である。流量制御弁バルブ8は、空調機5を通過した冷温水が流入する流路を形成する管路13と、この管路13を流れる流体の流量(流路の開閉量)を調節する弁体14と、この弁体14に結合された弁軸15と、この弁軸15を回転させるモータ16と、このモータ16の駆動軸16−1に連結された弁軸15の回転位置(駆動軸16−1付近の回転位置)から弁体14の実開度θpvを検出する弁開度検出器17と、管路13内の弁体14の1次側の流体の圧力を1次圧力P1として検出する1次側圧力センサ18と、管路13内の弁体14の2次側の流体の圧力を2次圧力P2として検出する2次側圧力センサ19と、処理部20とを備えている。
【0019】
処理部20は、弁開度制御部20Aと、差圧検出部20Bと、弁開度設定値補正部20Cと、補正テーブル記憶部20Dとを備えている。弁開度設定値補正部20Cは、設定値補正部20C1と、補正値取得部20C2とを備えている。
【0020】
差圧検出部20Bは、1次側圧力センサ18からの流体の1次圧力P1と、2次側圧力センサ19からの流体の2次圧力P2とを入力とし、1次圧力P1と2次圧力P2との差圧を弁体14の前後差圧ΔPとして検出する。なお、1次側圧力センサ18及び2次側圧力センサ19の代わりに差圧センサを設けて差圧ΔPを差圧センサによって直接検出することも可能である。
【0021】
補正テーブル記憶部20Dには、弁体14の開度と弁体14の前後差圧との組み合わせに対応した弁開度補正値αを示す補正テーブルTA(図3参照)が記憶されている。この補正テーブルTAにおいて、弁開度補正値αは、実験によって求められた値であり、弁体14の開度と弁体14の前後差圧とに対応する弁軸15のねじれ量を開度〔%FS〕で表した値である。
【0022】
なお、補正テーブルTAにおいて、弁軸15のねじれ量を示す弁開度補正値αは、他にも角度〔゜〕、動作時間〔s〕、動作量〔mm〕、制御信号量〔VやA〕などで表した値としてもよい。この実施の形態では、弁軸15のねじれ量を%FS(フルスケールに対する割合)で表した開度値とする。
【0023】
また、本実施の形態において、処理部20は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現される。
【0024】
以下、処理部20における弁開度制御部20Aおよび弁開度設定値補正部20Cの機能を交えながら、この流量制御弁バルブ8における特徴的な処理動作について説明する。
【0025】
なお、この例では、制御対象エリアの温度を設定温度に保つべく、0〜100%の値をとる設定開度(弁開度設定値)θspが空調制御装置10より流量制御弁バルブ8へ与えられるものとする。
【0026】
流量制御弁バルブ8において、空調制御装置10からの弁開度設定値θspは、弁開度設定値補正部20Cを通してθsp’とされ、弁開度制御部20Aへ送られる。ここでは、説明を分かり易くするために、最初は弁開度設定値補正部20Cでの補正値αを0と仮定し、弁開度設定値θspがそのままθsp’として弁開度制御部20Aへ送られるものとする。
【0027】
弁開度制御部20Aは、弁開度検出器17からの実開度θpvを弁開度実測値とし、この弁開度実測値θpvが弁開度設定値θsp’(=θsp)に一致するように、モータ16に指令を送る。これにより、弁軸15が回転し、弁開度実測値θpvが弁開度設定値θsp’(=θsp)に一致する(図4参照)。
【0028】
しかし、この流量制御弁バルブ8では、流れる流体の圧力により弁軸15にねじれが生じる。このため、弁開度検出器17が弁軸15の回転位置から検出する弁体14の実開度(弁開度実測値)θpvと弁体14の実際の開度(弁開度実値)θprとの間に誤差δが発生する。このため、弁体14の実開度(弁開度実測値)θpvが所望の開度(弁開度設定値)θspに一致したとしても、弁体14の実際の開度(弁開度実値)θprと所望の開度(弁開度設定値)θspとの間には誤差δが生じる。
【0029】
しかし、本実施の形態では、弁開度制御部20Aの前段に弁開度設定値補正部20Cが設けられており、この弁開度設定値補正部20Cでの弁開度設定値θspの補正によって、弁体14の実際の開度(弁開度実値)θprと所望の開度(弁開度設定値)θspとの間に生じる誤差δが無くなるものとなる。以下、この弁開度設定値補正部20Cでの弁開度設定値θspの補正について説明する。
【0030】
弁開度設定値補正部20Cにおいて、補正値取得部20C2は、入力される弁開度検出器17によって検出された弁体14の実開度θpvと差圧検出部20Bによって検出された弁体14の前後差圧ΔPとに対応する弁開度補正値αを補正テーブルTAから取得し、この取得した弁開度設定値αを弁軸15のねじれ量を考慮した補正値αとして設定値補正部20C1に送る。
【0031】
設定値補正部20C1は、補正値取得部20C2から送られてきた弁軸15のねじれ量を考慮した補正値αで空調制御装置10からの弁開度設定値θspを補正し、この補正した弁開度設定値θspを弁開度設定値θsp’として弁開度制御部20Aへ送る。この例では、弁開度設定値θspに弁軸15のねじれ量を考慮した補正値αを加算し、この補正値αを加算した弁開度設定値θspを補正された弁開度設定値θsp’(θsp’=θsp+α)とする。
【0032】
弁開度制御部20Aは、弁開度検出器17からの実開度θpvを弁開度実測値とし、この弁開度実測値θpvが補正された弁開度設定値θsp’(=θsp+α)に一致するようにモータ16に指令を送る。
【0033】
これにより、弁軸15が回転し、弁開度実測値θpvが弁開度設定値θsp’(=θsp+α)に一致する(図5(a)参照)。この場合、弁体14も弁軸15の回転に伴って、弁軸15のねじれ量を考慮した補正値α分だけ回転する(図5(b)参照)。これにより、弁体14の実際の開度(弁開度実値)θprと所望の開度(弁開度設定値)θspとの間に生じる誤差δが無くなるものとなる。
【0034】
例えば、図4に示した状態において、弁体14の実開度θpvが50%(θsp=50%)、弁体14の前後差圧ΔPが300kPaである場合、補正値取得部20C1では補正テーブルTAから弁開度補正値αとして0.1%FSが取得され、設定値補正部20C1で補正された弁開度設定値θsp’はθsp’=θsp+α=50%+0.1%=50.1%となる。その結果、弁体14の実開度θpvが50.1%となるまで、弁開度制御部20Aがモータ16を駆動し、弁軸15を回転させる。これにより、弁体14の実際の開度(弁開度実値)θprが所望の開度(弁開度設定値)θsp=50%に一致するものとなる。
【0035】
このように、本実施の形態によれば、弁軸15のねじれ量を考慮した補正値で弁開度設定値θspを補正することにより、実際の開度(弁開度実値)θprと所望の開度(弁開度設定値)θspとの間に発生する誤差δを無くすようにして、高精度な開度制御を実現することができるようになる。
【0036】
なお、補正テーブルTAに設定する弁開度補正値αを開度〔%FS〕ではなく、角度〔゜〕、動作時間〔s〕、動作量〔mm〕、制御信号量〔VやA〕などの他の値として表した場合でも、同様にして弁開度設定値θspを補正することによって、弁体14の実際の開度(弁開度実値)θprと所望の開度(弁開度設定値)θspとの間に生じる誤差δを無くすようにすることが可能である。
【0037】
また、特許文献3や特許文献4などに示されているような上下流の圧力センサを配置した流量制御バルブに本発明を適用すれば、専用のセンサや検出用の回路を持つ必要がなくなり、ハードウェアによるコストアップが無く、開度制御の高精度化が実現できる。
【0038】
〔実施の形態2〕
図2に示した例(実施の形態1)では、補正テーブル記憶部20Dに記憶させる補正テーブルを1つとしているが、図6に実施の形態2として示すように、弁開度設定値θspの変更方向を考慮し、閉方向変更用の補正テーブル(第1の補正テーブル)TA1(図7(a)参照)と開方向変更用の補正テーブル(第2の補正テーブル)TA2(図7(b)参照)の2つの補正テーブルを補正テーブル記憶部20Dに記憶させるようにしてもよい。
【0039】
この場合、閉方向変更用の補正テーブルTA1には、弁体14の開度と弁体14の前後差圧との組み合わせに対応した第1の弁開度補正値α1を設定するものとし、この第1の弁開度補正値α1の各々を負の値(マイナス値)とする。また、開方向変更用の補正テーブルTA2には、弁体14の開度と弁体14の前後差圧との組み合わせに対応した第2の弁開度補正値α2を設定するものとし、この第2の弁開度補正値α2の各々を正の値(プラス値)とする。
【0040】
また、補正値取得部20C2において、弁開度設定値θspの変更方向を判断するようにし、弁開度設定値θspが減少する方向(閉方向)に変更された場合には、弁開度検出器17によって検出された弁体14の実開度θpvと差圧検出部20Bによって検出された弁体14の前後差圧ΔPとに対応する第1の弁開度補正値α1を閉方向変更用の補正テーブル(第1の補正テーブル)TA1から取得するようにする。また、弁開度設定値θspが増大する方向(開方向)に変更された場合には、弁開度検出器に16よって検出された弁体の実開度θpvと差圧検出部20Bによって検出された弁体14の前後差圧ΔPとに対応する第2の弁開度補正値α2を開方向変更用の補正テーブル(第2の補正テーブル)TA2から取得するようにする。そして、取得した第1の弁開度設定値α1あるいは第2の弁開度設定値α2を弁開度設定値αとして設定値補正部20C1に送るようにする。
【0041】
なお、閉方向変更用の補正テーブルTA1における第1の弁開度補正値α1の各々をマイナス値とし、開方向変更用の補正テーブルTA2における第2の弁開度補正値α2の各々をプラス値とするのは、次のような理由による。
【0042】
図8(a)に開度設定値θspを例えば60%から50%へ変更する場合の図4に対応する図を示す。この場合、弁体14の実際の開度(弁開度実値)θprと所望の開度(弁開度設定値)θspとの間に誤差δが生じ、この誤差δを無くすためには弁開度設定値θsp=50%を減少させる必要がある。このため、第1の弁開度補正値α1をマイナス値として、弁開度設定値θspを減少させるようにする。
【0043】
図8(b)に開度設定値θspを例えば40%から50%へ変更する場合の図4に対応する図を示す。この場合、弁体14の実際の開度(弁開度実値)θprと所望の開度(弁開度設定値)θspとの間に誤差δが生じ、この誤差δを無くすためには弁開度設定値θsp=50%を増大させる必要がある。このため、第2の弁開度補正値α2をプラス値として、弁開度設定値θspを増大させるようにする。
【0044】
なお、実施の形態1(図2に示した例)において、弁開度設定値θspの変更方向を考慮するものとした場合、設定値補正部20C1において弁開度設定値θspの変更方向を判断するようにし、弁開度設定値θspが減少する方向に変更された場合には、弁開度設定値θspに補正値αをマイナス値として加えるようにし、弁開度設定値θspが増大する方向に変更された場合には、弁開度設定値θspに補正値αをプラス値として加えるようにすればよい。
【0045】
また、上述した実施の形態では、弁軸15のねじれ量を考慮した補正値を弁体14の実開度θpvと弁体14の前後差圧ΔPとに対応する値としたが、必ずしも弁体14の実開度θpvと弁体14の前後差圧ΔPとに対応する値としなくてもよい。
【0046】
例えば、弁軸15のねじれ量は、弁体14の開度とねじれ量との関係(図9参照)や弁体14の前後差圧とねじれ量との関係(図10参照)から知ることも可能である。このような関係を利用し、弁体14の実開度θpvに対応する値として弁軸15のねじれ量を考慮した補正値を定めるようにしたり、弁体14の前後差圧ΔPに対応する値として弁軸15のねじれ量を考慮した補正値を定めるようにしたりしてもよい。
【0047】
また、上述した実施の形態では、弁軸15のねじれ量を考慮した補正値をテーブルから取得する(テーブル方式)ようにしたが、式を定めて計算によって求める(算術方式)ようにしたりしてもよい。
【0048】
また、上述した実施の形態では、空調制御システムにおける使用例として説明したが、工業分野への応用が可能である。特に、プロセス制御の流量制御システムに適用可能である。また、流体も冷水・温水に限らず、気体など様々な流体に応用が可能である。
【0049】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0050】
8…流量制御バルブ(回転弁)、13…管路、14…弁体、15…弁軸、16…モータ、17…弁開度検出器、18…1次側圧力センサ 、19…2次側圧力センサ、20…処理部、20A…弁開度制御部、20B…差圧検出部、20C…弁開度設定値補正部、20C1…設定値補正部、20C2…補正値取得部、20D…補正テーブル記憶部、TA…補正テーブル、TA1…閉方向変更用の補正テーブル(第1の補正テーブル)、TA2…開方向変更用の補正テーブル(第2の補正テーブル)。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10