(54)【発明の名称】IL−22に結合する抗体およびIL−22Rに結合する抗体を含む、サイトカインシグナリングに関連する疾患および障害の処置のための組成物および方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(I.定義)
「IL−22ポリペプチド」または「IL−22」との用語は、多様なインターロイキン−22ポリペプチド(当該分野では「インターロイキン−22リガンド」または「IL−22L」とも称される)をいう。この用語は天然配列IL−22ポリペプチドおよびその改変体(これらはさらにここで定義する)を包含する。ここに記載のIL−22ポリペプチドは、多様な供給源(例えば、ヒト組織、または他の供給源)から単離しても、組換え法または合成法により調製してもよい。天然のIL−22は、任意の種に由来するもの(例えば、マウス(「mIL−22」)またはヒト(「hIL−22」))であってよい。
【0014】
「IL−22Rポリペプチド」または「IL−22R」との用語は、インターロイキン−22レセプターヘテロダイマーまたはインターロイキン−20レセプターヘテロダイマーのポリペプチド成分をいう。この用語は、天然配列IL−22Rポリペプチドおよびその改変体(これらはさらにここで定義する)を包含する。ここに記載のIL−22Rポリペプチドは、多様な供給源(例えば、ヒト組織、または他の供給源)から単離しても、または組換え法または合成法により調製してもよい。天然のIL−22Rはいずれの種に由来するもの(例えば、マウス(「mIL−22R」)またはヒト(「hIL−22R」))であってよい。天然配列IL−22Rポリペプチドは、当該分野では、「IR−22R1」または「IL22RA」とも呼ばれる。
【0015】
「天然配列IL−22ポリペプチド」または「天然配列IL−22Rポリペプチド」は、天然由来の対応するIL−22またはIL−22Rポリペプチドと同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドをいう。そのような天然配列IL−22ポリペプチドまたは天然配列IL−22Rポリペプチドは、天然から単離することができるか、あるいは組換え手段または合成手段により産生することもできる。この用語は、特定のIL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドの天然の切断型または分泌型(例えば、関連シグナルペプチドを欠くIL−22)、該ポリペプチドの天然の改変体型(例えば、選択的スプライシングされた形)および天然の対立遺伝子改変体を含む。本発明の多様な実施形態において、ここで開示される天然配列IL−22ポリペプチドまたは天然配列IL−22Rポリペプチドは、成熟または全長の天然配列ポリペプチドである。
図2および
図3は、典型的な全長ヒトIL−22および全長ヒトIL−22Rをそれぞれ示す。
図2に示されるポリペプチドをコードする核酸を、
図1に示す。開始コドンと終止コドンは、図において下線付きの太字で示されている。添付の図面に開示されるIL−22ポリペプチド配列およびIL−22Rポリペプチド配列は、ここではアミノ酸位置1と指定されるメチオニン残基から始まることが示されているが、図のアミノ酸位置1の上流または下流のいずれかに位置する他のメチオニン残基をIL−22またはIL−22Rポリペプチドの開始アミノ酸残基として用いてもよいことが、考えられ、かつ可能である。
【0016】
「IL−22改変体」、「IL−22R改変体」、「IL−22改変体ポリペプチド」または「IL−22R改変体ポリペプチド」は、全長天然配列IL−22ポリペプチド配列または全長天然配列IL−22Rポリペプチド配列に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する上で定義されたような活性型IL−22ポリペプチドまたは活性型IL−22Rポリペプチドを意味する。通常、IL−22ポリペプチド改変体またはIL−22Rポリペプチド改変体は、全長または成熟の天然配列IL−22ポリペプチド配列またはIL−22Rポリペプチド配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約82%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約83%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約84%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約86%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約87%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約88%のアミノ酸配列同一性、あるいは少な
くとも約89%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約91%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約92%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約93%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約94%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約96%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0017】
ここで同定されたIL−22ポリペプチド配列またはIL22Rポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸同一性」は、最大の%配列同一性を達成するように配列をアラインメントし、そして必要な場合、ギャップを導入し、かついかなる保存的置換も配列同一性の部分として考慮しなかったときに、特定のIL−22ポリペプチド配列またはIL−22Rポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。%アミノ酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、当業者の技術範囲内である種々の方法(例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用すること)によって達成され得る。当業者は、比較されるべき配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定し得る。アミノ酸配列の比較のために、所定のアミノ酸配列Aの、所定のアミノ酸配列Bとの、またはそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所定のアミノ酸配列Bと、またはそれに対して、ある程度の%アミノ酸配列同一性を持つか、または含む所定のアミノ酸配列Aということもできる)は、以下の通りに算出される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは、配列アラインメントプログラムのAおよびBのアラインメントによって完全に一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、Yは、Bのアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。この方法を使用した%アミノ酸配列同一性の算出の例として、表2および3は、「IL−22またはIL−22R」と表示されるアミノ酸配列に対する「比較タンパク質」と表示されるアミノ酸配列の%アミノ酸配列同一性を算出する方法を示し、ここで「IL−22またはIL−22R」は、目的のIL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドのアミノ酸配列を示し、「比較タンパク質」は、目的の「IL−22またはIL−22R」ポリペプチドが比較されるべきポリペプチドのアミノ酸配列を示し、そして「X」、「Y」および「Z」は、それぞれ、異なるアミノ酸残基を示す。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
用語「IL−19」とは、特に示されない限り、霊長類(例えば、ヒトおよびサル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物供給源由来の任意の天然IL−19をいう。その用語は、「全長」の、プロセシングされていないIL−19および細胞におけるプロセシングから生じる任意の形態のIL−19を包含する。その用語はまた、IL−19の天然に存在する改変体(例えば、スプライス改変体、対立遺伝子改変体、および他のアイソフォーム)を包含する。その用語はまた、IL−19の少なくとも1つの生物学的活性を維持する、天然IL−19のフラグメントまたは改変体を包含する。
【0020】
用語「IL−20」とは、特に示されない限り、霊長類(例えば、ヒトおよびサル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物供給源由来の任意の天然IL−20をいう。その用語は、「全長」の、プロセシングされていないIL−20および細胞におけるプロセシングから生じる任意の形態のIL−20を包含する。その用語はまた、IL−20の天然に存在する改変体(例えば、スプライス改変体、対立遺伝子改変体、および他のアイソフォーム)を包含する。その用語はまた、IL−20の少なくとも1つの生物学的活性を維持する、天然IL−20のフラグメントまたは改変体を包含する。
【0021】
用語「IL−24」とは、特に示されない限り、霊長類(例えば、ヒトおよびサル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物供給源由来の任意の天然IL−24をいう。その用語は、「全長」の、プロセシングされていないIL−24および細胞におけるプロセシングから生じる任意の形態のIL−24を包含する。その用語はまた、IL−24の天然に存在する改変体(例えば、スプライス改変体、対立遺伝子改変体、および他のアイソフォーム)を包含する。その用語はまた、IL−24の少なくとも1つの生物学的活性を維持する、天然IL−24のフラグメントまたは改変体を包含する。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語「IL−22BP」または「IL−22結合タンパク質」とは、特に示されない限り、霊長類(例えば、ヒトおよびサル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物供給源由来の任意の天然IL−22BPをいう。その用語は、「全長」の、プロセシングされていないIL−22BPおよび細胞におけるプロセシングから生じる任意の形態のIL−22BPを包含する。その用語はまた、IL−22BPの天然に存在する改変体(例えば、スプライス改変体、対立遺伝子改変体、および他のアイソフォーム)を包含する。その用語はまた、IL−22BPの少なくとも1つの生物学的活性を維持する、天然IL−22BPのフラグメントまたは改変体を包含する。天然IL−22BPはまた、当該分野において「IL−22RA2」と称される。
【0023】
用語IL−20Raとは、IL−19レセプターヘテロダイマーまたはIL−20レセプターヘテロダイマーのポリペプチド成分をいう。その用語は、特に示されない限り、霊長類(例えば、ヒトおよびサル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物供給源由来の任意の天然IL−20Raを包含する。その用
語は、「全長」の、プロセシングされていないIL−20Raおよび細胞におけるプロセシングから生じる任意の形態のIL−20Raを包含する。その用語はまた、IL−20Raの天然に存在する改変体(例えば、スプライス改変体、対立遺伝子改変体、および他のアイソフォーム)を包含する。その用語はまた、IL−20Raの少なくとも1つの生物学的活性を維持する、天然IL−20Raのフラグメントまたは改変体を包含する。天然IL−20Raはまた、当該分野において「IL−20R1」と称される。
【0024】
用語IL−20Rbとは、IL−19レセプターヘテロダイマーまたはIL−20レセプターヘテロダイマーのポリペプチド成分をいう。その用語は、特に示されない限り、霊長類(例えば、ヒトおよびサル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物供給源由来の任意の天然IL−20Rbを包含する。その用語は、「全長」の、プロセシングされていないIL−20Rbおよび細胞におけるプロセシングから生じる任意の形態のIL−20Rbを包含する。その用語はまた、IL−20Rbの天然に存在する改変体(例えば、スプライス改変体、対立遺伝子改変体、および他のアイソフォーム)を包含する。その用語はまた、IL−20Rbの少なくとも1つの生物学的活性を維持する、天然IL−20Rbのフラグメントまたは改変体を包含する。天然IL−20Rbはまた、当該分野において「IL−20R2」と称される。
【0025】
用語「IL−10R2」とは、IL−22レセプターヘテロダイマーまたはIL−20レセプターヘテロダイマーのポリペプチド成分をいう。その用語は、特に示されない限り、霊長類(例えば、ヒトおよびサル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物供給源由来の任意の天然IL−10R2を包含する。その用語は、「全長」の、プロセシングされていないIL−10R2および細胞におけるプロセシングから生じる任意の形態のIL−10R2を包含する。その用語はまた、IL−10R2の天然に存在する改変体(例えば、スプライス改変体、対立遺伝子改変体、および他のアイソフォーム)を包含する。その用語はまた、IL−10R2の少なくとも1つの生物学的活性を維持する、天然IL−10R2のフラグメントまたは改変体を包含する。天然IL−10R2はまた、当該分野において「IL−10Rb」と称される。
【0026】
ここに開示の多様なポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび抗体等の「単離」生物学的分子は、その自然環境の少なくとも1つの成分から同定され、分離され、そして/または回収された生物学的分子をいう。
【0027】
IL−22またはIL−22Rに関連する「活性のある」または「活性」とは、天然IL−22または天然IL−22Rの生物学的および/または免疫学的活性をいい、ここで、「生物学的」活性は、天然IL−22または天然IL−22Rが有する抗原エピトープに対して抗体の産生を誘発する能力以外の天然IL−22または天然IL22Rの生物学的機能をいう。「免疫学的」活性は、天然IL−22または天然IL−22Rが有する抗原エピトープに対して抗体の産生を誘発する能力をいう。
【0028】
「アンタゴニスト」との用語は最も広い意味で用いられ、天然IL−22ポリペプチドまたは天然IL−22Rポリペプチド等のポリペプチドの生物学的活性を部分的または完全に遮断し、阻害し、または中和する任意の分子を含む。さらに、該ポリペプチドをコードするmRNAの転写または翻訳を完全または部分的に阻害する分子も「アンタゴニスト」に包含される。適当なアンタゴニストとしては、例えば、アンタゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体フラグメント;天然ポリペプチドのフラグメントまたはアミノ酸配列改変体;ペプチド;アンチセンスオリゴヌクレオチド;小有機分子;およびポリペプチドアンタゴニストまたはアンタゴニスト抗体をコードする核酸が挙げられる。アンタゴニスト(「an」antagonist)は単一のアンタゴニストまたは2つ以上の異なるアンタゴニストの組合せを含む。
【0029】
「アゴニスト」との用語は最も広い意味で用いられ、天然IL−22ポリペプチドまたは天然IL−22Rポリペプチド等のポリペプチドの生物学的活性を部分的または完全に模倣する任意の分子を含む。さらに、該ポリペプチドをコードするmRNAの転写または翻訳を完全または部分的に刺激する分子も「アゴニスト」に包含される。適当なアゴニストとしては、例えば、アゴニスト抗体またはアゴニスト抗体フラグメント;天然ポリペプチド;天然ポリペプチドのフラグメントまたはアミノ酸配列改変体;ペプチド;アンチセンスオリゴヌクレオチド;小有機分子;およびポリペプチドアゴニストまたは抗体をコードする核酸が挙げられる。アゴニスト(「an」agonist)は単一のアゴニストまたは2つ以上の異なるアゴニストの組合せを含む。
【0030】
「緩和」とは、治療上の処置と、予防対策または再発防止(preventative
measure)との両方をいい、ここで対象は、標的とされる病理学的な状態または障害を予防または低減(緩和)するものである。処置を必要とする対象は、障害を既に有するか、障害に罹患し易いか、または障害を予防すべき対象を含む。
【0031】
「慢性」投与とは、長期間にわたって最初の治療効果を維持するための、急性の様式とは反対の連続的な様式における薬剤の投与をいう。「間欠」投与は、中断することなく連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処置である。
【0032】
処置目的のための「哺乳類」とは、哺乳類に分類される任意の動物をいい、その動物としては、ヒト、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)、およびサル;家庭および農業用動物;ならびに動物園、スポーツ用、実験室用またはペットの動物(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなど)が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記哺乳類は、ヒト、げっ歯類、またはサルから選択される。
【0033】
1型以上のさらなる治療剤に「組み合わされる」投与としては、同時(併用)投与および任意の順序での連続投与が挙げられる。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「キャリア」は、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤を含み、それらは、使用される投薬量および濃度においてそれらに曝される細胞または哺乳類に対して非毒性である。多くの場合、生理学的に受容可能なキャリアは、水性のpH緩衝化溶液である。生理学的に受容可能なキャリアの例は、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;ならびに/あるいはTWEEN
TM、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS
TMなどの非イオン性界面活性剤を含む。
【0035】
「抗体」(Ab)および「免疫グロブリン」(Ig)は、類似の構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体は、特定の抗原に対して結合特異性を有する一方で、免疫グロブリンは、抗体と、抗原特異性を一般的に欠く他の抗体様分子とを含む。後者の型のポリペプチドは、例えば、リンパ系により低い量で産生され、そして骨髄腫により高い量で産生される。
【0036】
「抗体」および「免疫グロブリン」との用語は、最も広い意味で互換的に用いられ、モノクローナル抗体(例えば、全長またはインタクトなモノクローナル抗体)、ポリクロー
ナル抗体、一価抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を示す限り二重特異性抗体)を含み、さらに(ここでさらに詳しく説明する)特定の抗体フラグメントを含めてもよい。抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体および/または親和性成熟抗体であり得る。
【0037】
特定の抗原に特異的に結合する抗体は、抗体が抗原を標的とする診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分な親和性をもって抗原に結合することのできる抗体をいう。好ましくは、非標的ポリペプチドに対するそのような抗体の結合程度は、例えば、放射性免疫アッセイ(RIA)によって測定される標的抗原に対する抗体の結合の約10%未満である。一定の実施形態において、標的抗原に結合する抗体は、≦lμM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。
【0038】
抗体の「可変部」または「可変領域」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端領域をいう。重鎖の可変領域は「VH」とも称され得る。軽鎖の可変領域は「VL」とも称され得る。これらの領域は、一般的に、抗体のほとんどの可変部であり、抗原結合部位を含む。
【0039】
「可変」との用語は、可変領域の一定の部分は抗体間で配列が広範囲にわたって異なり、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性に用いられているという事実をいう。しかし、可変性は抗体の可変領域に均一に分布しているわけではない。それは、軽鎖および重鎖の両方の可変領域における相補性決定領域(CDR)または超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変領域のさらに高く保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変領域は、それぞれ、β−シート構造を連結し、ある場合では該構造の一部を形成するループを形成する、3つのCDRにより連結されたβ−シート立体配置を主に採用する4つのFR領域を含む。各鎖中のCDRは、FR領域により非常に接近してまとめられて、他の鎖からのCDRとともに抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第15版,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991)を参照)。定常領域は、抗体の抗原に対する結合に直接関与しないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与等の多様なエフェクター機能を示す。
【0040】
脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常領域のアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの1つに帰属させることができる。
【0041】
重鎖の定常領域のアミノ酸配列に依存して、抗体(免疫グロブリン)は異なるクラスに帰属させることができる。IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMという免疫グロブリンの5つの主要なクラスが存在し、これらの幾つかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1およびIgA
2に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造と三次元立体配置は、周知であり、例えば、Abbasら、Cellular and Mol.Immunology,第4版(2000)に一般的に説明されている。抗体は、抗体と、1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合または非共有結合により形成されたより大きな融合分子の一部であってよい。
【0042】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」および「全抗体」との用語は、ここでは互換可能に用いられ、以下に定義する抗体フラグメントではなく、実質的にインタクトな形にある抗体をいう。これらの用語は、特に、Fc領域を含む重鎖を有する抗体をいう。
【0043】
「抗体フラグメント」はインタクトな抗体の一部分のみを含み、該部分は、インタクトな抗体に存在する場合に該部分に通常関連する少なくとも一つの機能か、ほとんどかまたは全ての機能を保持する。一実施形態において、抗体フラグメントは、インタクトな抗体の抗原結合部位を含むので、抗原に結合する能力を保持する。別の実施形態において、抗体フラグメント(例えば、Fc領域を含むもの)は、FcRn結合、抗体半減期調節、ADCC機能および補体結合等の、インタクトな抗体に存在する場合のFc領域に通常関連する生物学的機能の少なくとも一つを保持する。一実施形態において、抗体フラグメントは、インタクトな抗体と実質的に類似するインビボ半減期を有する一価抗体である。例えば、そのような抗体フラグメントは、インビボ安定性をフラグメントに付与することのできるFc配列に連結された結合アームを抗原上に含有してよい。
【0044】
抗体のパパイン消化は、「Fab」フラグメントと呼ばれる、単一の抗原結合部位を有する2つの同一抗原フラグメントと、容易に結晶化する能力を反映する名前を有する残留「Fc」フラグメントとを産生する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原に交差結合できるF(ab’)
2フラグメントを生じる。
【0045】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。一実施形態において、二本鎖Fv種は、堅固な非共有結合をした1つの重鎖可変領域と1つの軽鎖可変領域とのダイマーからなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変領域および1つの軽鎖可変領域は、軽鎖と重鎖とが二本鎖Fv種と同じ「ダイマー」構造で結合できるように柔軟なペプチドリンカーにより共有結合させることができる。この立体配置において、各可変領域の3つのCDRは相互作用してVH−VLダイマーの表面上の抗原結合部位を規定する。集合的に、6つのCDRは、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変領域(すなわち、抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)は、完全な結合部位よりも低い親和性で、抗原を認識および結合する能力を有する。
【0046】
Fabフラグメントは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、さらに軽鎖の定常領域と重鎖の第一定常領域(CH1)とを含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端での2〜3個の残基の付加によってFabフラグメントとは異なっている。Fab’−SHは、定常領域のシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’のここでの名称である。F(ab’)
2抗体フラグメントは、元々は、それらの間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として産生された。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも、公知である。
【0047】
「一本鎖Fv」抗体フラグメントまたは「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVH領域とVL領域とを含み、ここで、これらの領域は、一本鎖ペプチド鎖に存在する。一般的に、scFvポリペプチドは、さらに、VH領域とVL領域との間に、抗原結合のために望ましい構造をscFvに形成させることのできるポリペプチドリンカーを含む。scFvの概説に関しては、Pluckthun,The Pharmacology of
Monoclonal Antibodies,第113巻,RosenburgおよびMoore編,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。
【0048】
「ダイアボディ(diabody)」との用語は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体フラグメントをいい、該フラグメントは同一のポリペプチド鎖内で軽鎖可変領域(VL)に結合させた重鎖可変領域(VH)を含む(VH−VL)。同鎖上の二つの領域間で対形成を可能とするには短すぎるリンカーを用いることにより、該領域を別の鎖の相補領域に対形成させて、2つの抗原結合部位を形成させる。ダイアボディは、二価であっても、二重特異性であってもよい。ダイアボディは、例えば、EP 404,097;WO93/1161;Hudsonら(2003)Nat.Med.9:129−134;およ
びHollingerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)にさらに詳しく説明されている。トリアボディ(triabody)およびテトラボディ(tetrabody)は、Hudsonら(2003)Nat.Med.9:129−134にも説明されている。
【0049】
ここで用いられる「モノクローナル抗体」との用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体をいい、すなわち、該集団を構成する個々の抗体は、ありうる変異、例えば、少量存在しうる天然の変異以外は同一である。したがって、修飾語の「モノクローナル」は、抗体の特徴を、別個の抗体の混合物ではないものとして示す。一定の実施形態において、そのようなモノクローナル抗体としては、典型的に、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体が挙げられ、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含む方法により得られた。例えば、この選択方法は、ハイブリドーマクローン、ファージクローンまたは組換えDNAクローンのプール等の複数のクローンからの独特のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列はさらに変更されて、例えば、標的に対する親和性を向上させ、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその生産を向上させ、その免疫原性をインビボで低減させ、多重特異性抗体を産生すること等ができること、および変更された標的結合配列を含む抗体は本発明のモノクローナル抗体でもあることが、理解されよう。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらが典型的に他の免疫グロブリンにより汚染されていない点で有利である。
【0050】
修飾語の「モノクローナル」は、抗体の特徴を、抗体の実質的に同種の集団から得られたものとして示し、任意の特定の方法による抗体の生産を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ方法(例えば、Kohlerら,Nature,256:495(1975);Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版.1988);Hammerlingら:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981)を参照)、組換えDNA方法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら,Nature,352:624−628(1991);Marksら,J.Mol.Biol.222:581−597(1992);Sidhuら,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004);Leeら,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004);およびLeeら,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)を参照)、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部またはすべてを有する動物においてヒト抗体およびヒト様抗体を産生するための技術(例えば、WO98/24893;WO96/34096;WO96/33735;WO91/10741;Jakobovitsら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovitsら,Nature 362:255−258(1993);Bruggemannら,Year in
Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号;Marksら,Bio.Technology 10:779−783(1992);Lonbergら,Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−81
3(1994);Fishwildら,Nature Biotechnol.14:845−851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)ならびにLonbergおよびHuszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)を参照)を含む多様な技術により作製され得る。
【0051】
ここでのモノクローナル抗体としては、具体的に、所望の生物学的活性を示す限り、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体、あるいは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である一方で、該鎖の残りは別の種に由来する抗体、あるいは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である、「キメラ」抗体、ならびにそのような抗体のフラグメントが挙げられる(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984))。
【0052】
「ヒト化」型の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。一実施形態において、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域の残基が、所望の特異性、親和性および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域の残基により置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体やドナー抗体に見られない残基を含んでもよい。これらの改変は抗体性能をさらに洗練するために行われ得る。一般的に、ヒト化抗体は、通常、少なくとも1つ、典型的には2つの可変領域の実質的にすべてを含んでよく、ここで、すべてまたは実質的にすべての超可変ループが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、すべてまたは実質的にすべてのFRは、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部(典型的に、ヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部)を含むだろう。さらなる詳細については、Jonesら,Nature 321:522−525(1986);Riechmannら,Nature 332:323−329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。さらに、VaswaniおよびHamilton,Ann.Allergy,Asthma&Immunol.1:105−115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035−1038(1995);HurleおよびGross,Curr.Op.Biotech.5:428−433(1994)の総論とそこで挙げられた引用文献も参照されたい。
【0053】
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生された抗体に対応するアミノ酸配列を有し、そして/またはここで開示されるヒト抗体を作製するための技術のいずれかを用いて作製される。ヒト抗体のこの定義は、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を排除する。
【0054】
重鎖の定常領域のアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは異なるクラスに帰属させることができる。IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの免疫グロブリンの5つの主要なクラスが存在し、これらの幾つかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2に分けることができる。
【0055】
「親和性成熟」抗体は、変更を有さない親抗体と比較して抗原に対する抗体の親和性における改善をもたらすその1つ以上のHVR中の1つ以上の変更、を有する抗体である。一実施形態において、親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルか、またはさらにピ
コモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当該分野で公知の手順により産生され得る。Marksら、Bio/Technology 10:779−783(1992)は、VHおよびVLの領域シャフリング(domain shuffling)による親和性成熟を記載する。HVR残基および/またはフレームワーク残基のランダム変異導入法は、Barbasら、Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809−3813(1994);Schierら Gene 169:147−155(1995);Yeltonら、J.Immunol.155:1994−2004(1995);Jacksonら,J.Immunol.154(7):3310−9(1995);およびHawkinsら,J.Mol Biol.226:889−896(1992)により記載されている。
【0056】
「遮断」抗体、「中和」抗体、または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害または低減する抗体である。そのような抗体は、抗原の生物学的活性を実質的または完全に阻害し得る。
【0057】
ここで用いられる「アゴニスト抗体」は、目的のポリペプチドの生物学的活性を部分的または完全に模倣する抗体である。
【0058】
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列改変体Fc領域)に起因する生物学的活性をいい、抗体アイソタイプにより変化する。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞毒性;Fcレセプター結合;抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)の下方制御;およびB細胞活性化が挙げられる。
【0059】
「結合親和性」とは、一般的に、ある分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用を合計した強さをいう。特に断らない限り、ここで用いられるように、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体および抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性をいう。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般的に解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、ここで記載する方法を含む、当該分野で公知の一般的な法により測定することができる。低親和性抗体は、一般的に、抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は、一般的に、抗原に速く結合し、より長く結合したままでいる傾向がある。結合親和性を測定する多様な方法が、当該分野で公知であり、その何れかの方法を本発明の目的のために使用することができる。具体的な実施形態を以下に示す。
【0060】
一実施形態において、本発明による「Kd」または「Kd値」は、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を以下のアッセイに記載のように用いて実施される放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)により測定される。Fabの抗体に対する溶液結合親和性は、Fabを、未標識抗原の滴定系列の存在下で、最小濃度の(
125I)標識抗原に対して平衡化させ、次に、結合した抗原を抗Fab抗体被覆プレートにより捕捉することにより測定する(Chenら,(1999)J.Mol.Biol.293:865−881)。上記アッセイのための条件を確立するために、マイクロタイタープレート(Dynex)に、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)を一晩被覆し、続いて、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンで2〜5時間室温(およそ23℃)にわたってブロックする。(例えば、Prestaら,(1997)Cancer Res.57:4593−4599における抗VEGF抗体のFab−12の評価と一致して)非吸着プレート(Nunc#269620)にて、100pMまたは26pMの[
125I]抗原を、目的のFabの系列希釈物に混合する。次に、目的のFabを一晩インキュべートする;しかし、このインキュベーションは、平衡に達することを確実にするために長時間(例えば、約65時間)継続し
てよい。その後、混合物を室温での(例えば、1時間にわたる)インキュベーションのために捕捉プレートに移す。次に、この溶液を除去し、プレートを、PBS中の0.1% Tween−20で8回洗浄する。プレートが乾燥したときに、150μl/ウェルのシンチラント(scintillant)(MicroScint−20;Packard)を添加し、そのプレートを、Topcountガンマカウンター(Packard)を用いて10分間にわたってカウントする。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を競合的結合アッセイに使用するために選択する。
【0061】
別の実施形態に従えば、KdまたはKd値は、25℃にて固定化抗原CM5チップを約10反応単位(RU)で用いるBIAcore(登録商標)−2000またはBIAcore(登録商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いる表面プラズモン共鳴アッセイにより測定する。簡単に説明すれば、供給業者の説明書にしたがって、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,BIAcore Inc.)をN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)により活性化する。抗原を、およそ10反応単位(RU)の結合したタンパク質を達成するために5μl/分の流速での注入前に10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(約0.2μM)まで希釈する。抗原の注入後、1Mエタノールアミンを注入して未反応基をブロックする。反応速度測定のために、Fabの2倍系列希釈(0.78nM〜500nM)を、0.05% Tween20(PBST)を有するPBS中、25℃でおよそ25μl/分の流速で注入する。結合速度(k
on)および解離速度(k
off)を、単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIAcore Evaluation Software version 3.2)を用い、結合センサーグラム(sensorgram)と解離センサーグラムとを同時に適合することにより計算する。平衡解離定数(Kd)は、k
off/k
onの比として計算する。例えば、Chen,Y.ら,(1999)J.Mol.Biol.293:865−881を参照されたい。オンレート(on−rate)が、上記の表面プラズモン共鳴アッセイにより10
6M
−1s
−1を超える場合、オンレートは、ストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)または攪拌キュベット(stirred cuvette)を備えた8000シリーズSLM−Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計で測定される漸増濃度の抗原の存在下で、PBS(pH7.2)中の20nM抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm,16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いることにより決定することができる。
【0062】
本発明による「オンレート」、「結合の速度」、「結合速度」または「k
on」も、BIAcore(登録商標)−2000またはBIAcore(登録商標)−3000システム(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いて上記のように決定することができる。
【0063】
「単離」抗体とは、その自然環境の成分から同定、ならびに分離、および/または回収されたものをいう。その天然環境の夾雑成分は、抗体に関する診断用途または治療用途を妨害するする物質であり、それらとしては、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を挙げることができる。好ましい実施形態において、抗体は、(1)ローリー法による測定で抗体の95重量%を超えるまで、そして最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップ(spinning cup)シークエネーターの使用により、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クマーシーブルー、または好ましくは銀染色を用いた還元条件または非還元条件下でのSDS−PAGEによる均一性まで精製されるだろう。単離抗体としては、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので組換え細胞内に位
置する抗体が挙げられる。しかし、通常は、単離抗体は少なくとも1つの精製工程により調製されるだろう。
【0064】
「標識」との用語は、ここで用いられる場合、「標識された」分子を産生するように分子(核酸、ポリペプチドまたは抗体等)に直接的または間接的に結合させる検出可能な化合物または組成物をいう。標識はそれ自体で検出可能(例えば放射性同位体標識または蛍光標識)であっても、または酵素標識の場合、基質化合物または組成物の化学的変化を触媒して、検出可能な生成物をもたらすものであってもよい。
【0065】
「固相」は、分子(核酸、ポリペプチドまたは抗体等)が結合する非水性マトリックスを意味する。ここに包含される固相の例としては、ガラス(例えば、制御細孔ガラス(controlled pore glass))、多糖類(例えば、アガロース)、ポリアクリルアミド類、ポリスチレン、ポリビニルアルコールおよびシリコーン類から部分的または完全に形成された固相が挙げられる。一定の実施形態において、文脈に依存して、固相は、アッセイプレートのウェルを含んでもよく、他の実施形態では、精製カラム(例えば、アフィニティークロマトグラフィーカラム)である。この用語は、米国特許第4,275,149号に記載されたような分離した粒子の不連続固相も含む。
【0066】
「リポソーム」は、多様な型の脂質、リン脂質、および/または哺乳動物への薬物(核酸、ポリペプチド、抗体、アゴニストまたはアンタゴニスト等)の輸送に有用な界面活性剤からなる小さい小胞である。リポソームの成分は、一般に、生物学的膜の脂質配列に類似する二重層構造体で配置される。
【0067】
「小分子」または「小有機分子」は、ここでは約500ダルトン未満の分子量を有する有機分子と定義される。
【0068】
標的ポリペプチドに結合する「オリゴペプチド」は、該オリゴペプチドが、ポリペプチドを標的とする診断剤および/または治療剤として有用であるように十分な親和性をもって標的ポリペプチドに結合することができるオリゴペプチドである。一定の実施形態において、無関係の非標的ポリペプチドに対するオリゴペプチドの結合の程度は、例えば、表面プラズモン共鳴アッセイにより測定される標的ポリペプチドに対するそのオリゴペプチドの結合の約10%未満である。一定の実施形態において、オリゴペプチドは標的ポリペプチドに対して、≦lμM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦0.1nMの解離定数(Kd)で結合する。
【0069】
標的ポリペプチドに結合する「有機分子」は、該有機分子が、ポリペプチドを標的とする診断剤および/または治療剤として有用であるように十分な親和性をもって標的ポリペプチドに結合することの可能な、ここで定義されるオリゴペプチドまたは抗体以外の有機分子である。一定の実施形態において、無関係の非標的ポリペプチドに対する有機分子の結合の程度は、例えば、表面プラズモン共鳴アッセイにより測定される標的ポリペプチドに対するその有機分子の結合の約10%未満である。一定の実施形態において、有機分子は標的ポリペプチドに対して、≦lμM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦0.1nMの解離定数(Kd)で結合する。
【0070】
「生物学的系」は、共通のシグナル伝達経路を共有する哺乳動物細胞を含むインビトロ系、エキソビボ系またはインビボ系である。
【0071】
「免疫関連疾患」との用語は、哺乳類の免疫系の成分が哺乳類の病的状態を引き起こすか、媒介するか、もしくはそれに寄与する疾患を意味する。免疫応答の刺激または介入が疾患の進行に対して改善効果を有する疾患も含まれる。炎症性疾患、非免疫媒介炎症性疾
患、感染症、免疫不全疾患および新形成がこの用語に含まれる。
【0072】
「T細胞媒介疾患」との用語は、T細胞が哺乳類の病的状態を直接的または間接的に媒介するか、もしくはそれに寄与する疾患を意味する。T細胞媒介疾患は、細胞媒介効果、リンホカイン媒介効果等に関連し、そしてB細胞が例えばT細胞により分泌されるリンホカインにより刺激される場合にB細胞に関連する効果とも関連するだろう。
【0073】
「乾癬」との用語は、肘、膝、頭皮または胴上の取り囲まれて、目立たず、集密的で、赤みがかり、銀色の鱗屑を伴った大きい丘疹(macropapule)の皮疹により特徴付けられる状態と定義される。
【0074】
ここで用いられる「腫瘍」との用語は、悪性または良性にかかわらず、すべての腫瘍性細胞の成長および増殖、ならびにすべての前癌性および癌性の細胞および組織をいう。「癌」、「癌性の」、「細胞増殖障害」、「増殖障害」および「腫瘍」は、ここで言及される場合、相互に排他的ではない。
【0075】
「腫瘍進行」との用語は、腫瘍の成長および/または増殖をいう。
【0076】
「癌」および「癌性の」との用語は、典型的には制御されていない細胞成長/増殖により特徴付けられる哺乳類の生理学的状態をいうか、述べるものである。癌の例としては、癌腫、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のさらに特定の例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頚癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、直腸癌、胃癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝蔵癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)、白血病および他のリンパ増殖性障害、ならびに種々の型の頭頸部癌が挙げられる。
【0077】
「自己免疫障害」または「自己免疫」とは、体液性免疫応答または細胞媒介免疫応答が身体自体の組織に対して開始される任意の状態をいう。「IL−23媒介自己免疫障害」は、IL−23活性により維持されるか、悪化することにより引き起こされる任意の自己免疫障害である。
【0078】
「炎症」とは、典型的には痛み、膨潤および赤みを引き起こす損傷または感染の部位での白血球の蓄積および血管の拡大をいう。
【0079】
「慢性炎症」とは、炎症の原因が持続し、除くことが困難または不可能である炎症をいう。
【0080】
「自己免疫炎症」とは、自己免疫障害に関連する炎症をいう。
【0081】
「関節炎の炎症」とは、関節炎に関連する炎症をいう。
【0082】
「炎症性腸疾患」または「IBD」は胃腸管の炎症により特徴付けられる慢性疾患をいう。IBDは、大腸および/または直腸を冒す潰瘍性大腸炎、および全消化器系を冒すが、小腸(回腸)をさらに一般的に冒し、おそらく大腸も冒すクローン病を包含する。
【0083】
「関節炎」とは、関節の炎症をいい、そしてそれらとしては、変形性関節症、痛風、感染に関連する関節炎、ライター症候群関節炎、および自己免疫障害に関連する関節炎(例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎、狼瘡に関連する関節炎、脊椎関節症、および強皮症
に関連する関節炎)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
「有効量」との用語は、特別な明示された目的の達成をもたらす分子(例えば、核酸、ポリペプチド、アゴニストまたはアンタゴニスト)の濃度または量である。「有効量」は経験的に決定してよい。「治療有効量」は、明示された治療効果を達成するのに有効である分子の濃度または量である。この量は経験的に決定してよい。
【0085】
ここで用いられる「細胞毒性因子」は、細胞の機能を阻害または妨害し、そして/あるいは細胞の破壊をもたらす物質をいう。その用語は、放射性同位体(例えば、I
131、I
125、Y
90およびRe
186)、化学療法剤、および毒素(例えば、細菌起源、真菌起源、植物起源または動物起源の酵素的に活性な毒素、あるいはそのフラグメント)を含むことが意図される。
【0086】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例としては、アドリアマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara−C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン(cytoxin)、タキソイド(例えば、パクリタキセル(タキソール、Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、NJ)、およびドセタキセル(タキソテール(Taxotere)、Rhone−Poulenc
Rorer、Antony、France))、タキソテール、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノルビシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラミシン(米国特許第4,675,187号を参照のこと)、メルファランおよび他の関連するナイトロジェンマスタードが挙げられる。腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用するホルモン剤(例えば、タモキシフェンおよびオナプリストン(onapristone))も、この定義に含まれる。
【0087】
「増殖抑制因子」とは、ここで用いられる場合、細胞の増殖、特に、ここで同定されるいずれかの遺伝子を過剰発現する癌細胞の増殖をインビトロまたはインビボで阻害する化合物または組成物をいう。したがって、増殖抑制因子は、そのような遺伝子を過剰発現するS期にある細胞の比率を有意に低減するものである。増殖抑制因子の例としては、G1期停止およびM期停止を誘発する物質等、(S期以外の場所での)細胞周期進行を遮断する物質が挙げられる。古典的なM期ブロッカーとしては、ビンカ類(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキソール、およびトポIIインヒビター(例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシドおよびブレオマイシン)が挙げられる。G1を停止するこれら物質、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5−フルオロウラシルおよびara−C等のDNAアルキル化剤はS期停止まで波及する。さらなる情報は、Murakamiら(WB Saunders:Philadelphia,1995)による「Cell
cycle regulation,oncogens,and antineoplastic drugs」と題されるThe Molecular Basis of Cancer,MendelsohnおよびIsrael編、第1章、特に13ページに見ることができる。
【0088】
「サイトカイン」との用語は、別の細胞集団に対して細胞間介在物質として作用する1つの細胞集団により放出されるタンパク質の総称である。そのようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカインおよび伝統的なポリペプチドホルモンである。成長ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;レラキシン;プロレ
ラキシン;糖タンパク質ホルモン(例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH));肝細胞増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子−αおよび腫瘍壊死因子−β;ミュラー阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−βなどの神経増殖因子;血小板増殖因子;TGF−αおよびTGF−βなどのトランスホーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子−Iおよびインスリン様増殖因子−II;エリスロポエチン(EPO);骨形成誘導因子(osteoinductive factor);インターフェロン−α、インターフェロン−β、およびインターフェロン−γなどのインターフェロン;マクロファージ−CSF(M−CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF);ならびに顆粒球−CSF(G−CSF);IL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−11、IL−12などのインターロイキン(IL);TNF−αまたはTNF−βなどの腫瘍壊死因子;ならびにLIFおよびkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が、上記サイトカインの間に含まれる。ここで用いられるサイトカインとの用語は、天然の供給源または組換え細胞培養に由来するタンパク質、および天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0089】
ここで用いられる「炎症細胞」との用語は、単核細胞、好酸球、マクロファージおよび多形核好中球(PMN)等の炎症応答を増強する細胞を示す。
【0090】
(II.本発明の組成物および方法)
(A.IL−22ポリヌクレオチドおよびIL−22ポリペプチドまたはIL−22ポリヌクレオチドおよびIL−22Rポリペプチド)
本発明は、単離されたIL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドと、これらのポリペプチドをコードする単離されたヌクレオチド配列を提供する。IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドは、天然の全長または成熟のIL−22ポリペプチドまたはIL−22RポリペプチドならびにIL−22改変体またはIL−22R改変体を包含する。IL−22改変体またはIL−22R改変体は、適当なヌクレオチド変化をIL−22またはIL−22RのDNAに導入すること、および/または所望のIL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドを合成することにより調製することができる。アミノ酸の変更が、グリコシル化部位の数や位置を変更するか、または膜固定特性を変える等によってIL−22またはIL−22Rの翻訳後プロセシングを変更し得ることを、当業者は理解するだろう。
【0091】
ここに記載の天然IL−22または天然IL−22Rの変異、あるいはIL−22またはIL−22Rの多様な領域の変異は、例えば、米国特許第5,364,934号に記載される保存的突然変異および非保存的突然変異のいずれかの技術と指針を用いて行なうことができる。変異は、天然配列IL−22または天然配列IL−22Rと比較してIL−22またはIL−22Rのアミノ酸配列の変化をもたらすIL−22またはIL−22Rをコードする1つ以上のコドンの置換、欠失または挿入であってよい。必要に応じて、変異は、IL−22またはIL−22Rの1つ以上の領域で少なくとも1つのアミノ酸を別のアミノ酸に置換することによる。所望の活性に悪影響を与えることなくどのアミノ酸残基を挿入、置換または欠失してよいかを決定する指針は、IL−22またはIL−22Rの配列を、相同的な公知のタンパク質分子と比較し、高い相同性のある領域でなされるアミノ酸配列変化の数を最小とすることによって見いだしてよい。アミノ酸置換は、1個のアミノ酸を、同様の構造および/または化学的特性を有する別のアミノ酸で置換する結果(例えば、セリンによるロイシンの置換、すなわち、保存的アミノ酸置換)であり得る。挿入または欠失は、必要に応じて、約1個〜5個の範囲のアミノ酸であり得る。許容される変異は、上記配列においてアミノ酸の挿入、欠失または置換を系統的に行い、そして全
長または成熟の天然配列によって示される活性について得られた改変体を試験することによって決定され得る。
【0092】
特定の実施形態において、目的の保存的置換を、表6に好ましい置換の表題で示す。そのような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、さらに実質的な変化(表6における命名された例示的置換、すなわちアミノ酸クラスに関して以下でさらに詳しく説明する置換)を導入し、その産物をスクリーニングする。
【0093】
【化3】
IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドの機能または免疫学的同一性における実質的な改変は、(a)例えば、シートまたはヘリックスのコンホメーションのような、置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、あるいは(c)側鎖のかさ高さ(bulk)を維持することに対する効果において著しく異なる置換を選択することによって達成される。天然に存在する残基は、一般的な側鎖の特性に基づいて群へと分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gin、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響を与える残基:gly、pro;および
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0094】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーの別のクラスへの交換を伴うだろう。そのような置換残基は、保存置換部位に導入されるか、またはより好ましくは残りの(非保存)部位に導入してよい。
【0095】
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)変異誘発、アラニンスキャンニングおよびPCR変異誘発等、当該分野で公知の方法を用いて引き起こすことができる。部位特異的変異誘発[Carterら,Nucl.Acids Res.,13:4331(1986);Zollerら,Nucl.Acids Res.,10:6487(198
7)]、カセット式変異誘発[Wellsら,Gene,34:315(1985)]、制限選択変異誘発[Wellsら,Philos.Trans.R.Soc.London SerA,317:415(1986)]または他の技術をクローニングされたDNAに対して実施して、IL−22改変体DNAまたはIL−22R改変体DNAを産生することができる。
【0096】
IL−22ポリペプチドフラグメントまたはIL−22Rポリペプチドフラグメントもここで提供される。そのようなフラグメントは、N末端またはC末端で切断していてもよく、全長天然タンパク質と比較して、例えば内部残基を欠いてもよい。一定のフラグメントは、IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドの所望の生物学的活性にとって必須ではないアミノ酸残基を欠く。したがって、一定の実施形態において、IL−22またはIL−22Rのフラグメントは、生物学的に活性である。一定の実施形態において、全長IL−22のフラグメントは、N末端シグナルペプチド配列を欠く。一定の実施形態において、全長IL−22Rのフラグメントは、膜結合ではない可溶型のIL−22R、例えば膜貫通領域を欠くIL−22Rの形にある。例えば、可溶型のヒトIL−22Rは配列番号3のおよそアミノ酸229〜251からの膜貫通領域のすべてまたは実質的な部分を欠いてもよい。
【0097】
IL−22またはIL−22Rの共有結合改変は本発明の範囲内に含まれる。共有結合改変の1つの型は、IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドの標的アミノ酸残基を、IL−22またはIL−22Rの選択された側鎖あるいはN末端残基またはC末端残基に反応することのできる有機誘導体化剤に反応させること含む。二官能性薬剤による誘導体化は、例えば、抗IL−22抗体または抗IL−22R抗体を精製するための方法において使用するための水不溶性支持マトリックスまたは表面にIL−22またはIL−22Rを架橋するために有用であり、そしてその逆もまた同様である。一般に用いられる架橋剤としては、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、4−アジドサリチル酸とのエステル)、ホモ二官能性イミドエステル(例えば、3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含む)、ビス−N−マレイミド−1,8−オクタン等の二官能性マレイミドおよびメチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオンイミデート等の薬剤が挙げられる。
【0098】
他の改変としては、グルタミニル残基とアスパラギニル残基のそれぞれのグルタミル残基とアスパルチル残基への脱アミド化、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリル残基またはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニンおよびヒスチジンの側鎖のα−アミノ基のメチル化[T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,pp.79−86(1983)]、N末端アミンのアセチル化ならびにC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0099】
本発明の範囲内に含まれるIL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドの別の型の共有結合改変は、ポリペプチドの天然のグリコシル化パターンの変更を含む。「天然のグリコシル化パターンの変更」とは、ここでの目的のために、天然配列IL−22または天然配列IL−22Rに見られる1つ以上の炭水化物部分を(内在するグリコシル化部位を除去するか、化学的および/または酵素的手段によってグリコシル化を削除するかのいずれかにより)削除すること、および/あるいは天然配列IL−22または天然配列IL−22Rには存在しない1つ以上のグリコシル部位を付加することを意味する。さらに、この語句は、存在する多様な炭水化物部分の性質および比率の変化を伴う、天然タンパク質のグリコシル化の定性的な変化を含む。
【0100】
本発明のIL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドは、IL−22またはIL−22Rを別の異種ポリペプチドまたは異種アミノ酸配列に融合させたキメラ分子を形成するように改変してもよい。一実施形態において、キメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドと、IL−22またはIL−22Rとの融合体からなる。エピトープタグは、一般的に、IL−22またはIL−22Rのアミノ末端またはカルボキシル末端に配置される。IL−22またはIL−22Rのそのようなエピトープタグ化形態の存在は、そのタグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。さらに、エピトープタグを提供することにより、抗タグ抗体、またはエピトープタグに結合する別の型の親和性マトリックスを用いる親和性精製によりIL−22またはIL−22Rを容易に精製することができる。多様なタグポリペプチドおよびそれらの各抗体は当該分野で周知である。例えば、ポリ−ヒスチジン(poly−his)タグまたはポリ−ヒスチジン−グリシン(poly−his−gly)タグ;flu
HAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5[Fieldら,Mol.Cell.Biol.,8:2159−2165(1988)];c−mycタグおよびそれに対する8F9抗体、3C7抗体、6E10抗体、G4抗体、B7抗体および9E10抗体[Evanら,Molecular and Cellular Biology,5:3610−3616(1985)];ならびに単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体[Paborskyら,Protein Engineering,3(6):547−553(1990)]が挙げられる。他のタグポリペプチドとしては、Flag−ペプチド[Hoppら,BioTechnology,6:1204−1210(1988)];KT3エピトープペプチド[Martinら,Science,255:192−194(1992)];α−チューブリンエピトープペプチド[Skinnerら,J.Biol.Chem.,266:15163−15166(1991)];およびT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz−Freyermuthら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6393−6397(1990)]が挙げられる。
【0101】
別の実施形態において、キメラ分子は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定の領域と、IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドの融合体からなってよい。二価型のキメラ分子(「イムノアドヘシン」ともいう)に関して、そのような融合体はIgG分子のFc領域に対するものであってよい。Ig融合体は、好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の代わりにIL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドの可溶型の置換を含む。特に好ましい実施形態において、免疫グロブリン融合体は、IgG1分子のヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域、またはヒンジ領域、CH1領域、CH2領域およびCH3領域を含む。免疫グロブリン融合体の生産に関しては、1995年6月27日に特許された米国特許第5,428,130号を参照されたい。
【0102】
(1.IL−22またはIL−22Rの調製)
IL−22またはIL−22Rは、慣用の組換え法により、例えば、IL−22をコードする
図1に示される核酸により例示されるように、IL−22またはIL−22Rをコードする核酸を含むベクターで形質転換または形質導入された細胞を培養して調製してよい。そのようなベクターを含む宿主細胞も提供される。一例として、宿主細胞はCHO細胞、E.coliまたは酵母であってよい。ここに記載の任意のポリペプチドを産生するための方法がさらに提供され、該方法は、所望のポリペプチドの発現に適する条件下で宿主細胞を培養し、所望のポリペプチドを細胞培養物から回収することを包含する。
【0103】
別の実施形態において、本発明は、ここに記載の任意のポリペプチドを異種ポリペプチドまたは異種アミノ酸配列に融合させてなるキメラ分子を提供する。そのようなキメラ分
子の例は、エピトープタグ配列または免疫グロブリンのFc領域に融合させたここに記載の任意のポリペプチドを含む。
【0104】
当然ながら、当該分野で周知の代替法を用いてIL−22またはIL−22Rを調製してよいことが意図される。例えば、IL−22配列またはIL−22R配列、あるいはその一部は固相技術を用いる直接ペプチド合成により産生され得る[例えば、Stewartら,Solid−Phase Peptide Synthesis,W.H.Freeman Co.,San Francisco,CA(1969);Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85:2149−2154(1963)を参照]。インビトロタンパク質合成は、手動技術を用いるか、または自動化により実施してよい。自動化合成は、例えば、Applied Biosystemsペプチド合成機(Foster City,CA)を、製造業者の説明書を用いて達成してよい。IL−22またはIL−22Rの種々の部分を別々に化学合成して、化学的方法または酵素的方法を用いて組み合わせて全長IL−22または全長IL−22Rを産生し得る。
【0105】
組換え発現されたIL−22またはIL−22Rは、培養培地または宿主細胞の溶解物から回収してよい。以下の手順は、適当な精製手順の例示である:イオン交換カラムによる分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはカチオン交換樹脂(DEAE等)によるクロマトグラフィー;等電点電気泳動;SDS−PAGE;硫安沈殿;例えばSephadex G−75Aを用いるゲルろ過;IgG等の夾雑物の除去のためのプロテインAセファロースカラム;およびIL−22またはIL−22Rのエピトープタグ化形態に結合する金属キレートカラム。タンパク質精製の多様な方法を用いてよく、そのような方法は、当該分野では公知であり、例えば、Deutscher,Methods in
Enzymology,182(1990);Scopes,Protein Purification:Principles and Practice,Springer−Verlag,New York(1982)に記載されている。選択される精製工程は、例えば、使用される産生方法の性質および産生される特定のIL−22またはIL−22Rに依存するだろう。
【0106】
(2.遺伝子発現の検出)
IL−22またはIL−22Rをコードする遺伝子の発現は、当該分野における多様な方法、例えば、IL−22またはIL−22RをコードするmRNAの発現を検出することにより検出することができる。ここで用いられる「検出すること」との用語は、定量的検出または定性的検出を含む。IL−22遺伝子発現またはIL−22R遺伝子発現を検出することにより、例えば、IL−22遺伝子またはIL−22R遺伝子を発現する組織を同定することができる。遺伝子発現は、当業者に公知の一定の方法、例えば、ノーザンブロッティング(Thomas,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:5201−5205[1980]);定量的PCR;またはここで提供される配列に基づく適当に標識されたプローブを用いるインサイチュハイブリダイゼーションを用いて測定してよい。あるいは、遺伝子発現は、組織切片の免疫組織化学染色、および細胞培養物または体液のアッセイ等の免疫学的方法により測定して、遺伝子産物の発現を直接定量してよい。免疫組織化学染色および/または試料流体のアッセイに有用な抗体は、ここで提供される任意の抗体を含む。都合のよいことに、抗体は、IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドの天然配列に対してか;IL−22ポリペプチド配列またはIL−22Rポリペプチド配列のフラグメントを含む合成ペプチドに対してか;あるいはIL−22ポリペプチドもしくはIL−22Rポリペプチドまたはそのフラグメント(合成ペプチドを含む)に融合させた外来性配列に対して調製してよい。
【0107】
(B.抗体)
上記または下記のポリペプチドのいずれかに結合する抗体が、提供される。一実施形態
において、IL−19、IL−20、IL−22、IL−24、IL−20Ra、IL−20Rb、IL−10R2またはIL−22Rポリペプチドに結合する単離された抗体が提供される。例示的な抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体およびヘテロ結合体化抗体が挙げられる。抗体は、抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab’−SH、Fv、scFvまたは(Fab’)2フラグメントであってよい。一実施形態において、IL−22またはIL−22Rに結合する単離された抗体が、提供される。そのような一実施形態において、抗体は、IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドの活性を部分的または完全に遮断する(すなわち、「遮断」抗体)。
【0108】
IL−22とIL−22Rに結合する例示モノクローナル抗体が、ここで提供され、それらを、実施例においてさらに説明する。これらの抗体としては、3F11.3(「3F11」)、11H4.4(「11H4」)および8E11.9(「8E11」)と呼ばれる抗IL−22抗体、ならびに7E9.10.8(「7E9」)、8A12.32(「8A12」)、8H11.32.28(「8H11」)および12H5と呼ばれる抗IL−22R抗体が挙げられる。一実施形態において、これらの抗体のいずれかを産生するハイブリドーマが、提供される。一実施形態において、IL−22への結合に関して、3F11.3、11H4.4または8E11.9と競合するモノクローナル抗体が提供される。別の実施形態において、3F11.3、11H4.4または8E11.9と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体が、提供される。別の実施形態において、IL−22Rへの結合に関して、7E9、8A12、8H11または12H5と競合するモノクローナル抗体が、提供される。一実施形態において、7E9、8A12、8H11または12H5と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体が、提供される。抗体の多様な実施形態が以下に提供される。
【0109】
(1.ポリクローナル抗体)
抗体は、ポリクローナル抗体を含んでよい。ポリクローナル抗体を調製する方法は、当業者に公知である。ポリクローナル抗体は、例えば、免疫化剤(immunizing agent)および所望される場合、アジュバントの一回以上の注射により哺乳類中で惹起させることができる。典型的には、免疫化剤および/またはアジュバントは複数回の皮下注射または腹腔内注射により哺乳類に注射される。免疫化剤は、目的のポリペプチドまたはその融合タンパク質を含んでよい。免疫される哺乳類において免疫原性があることが公知であるタンパク質に免疫化剤を結合体化させることは、有用であろう。そのような免疫原性タンパク質の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリンおよび大豆トリプシンインヒビターが挙げられるが、これらに限定されない。使用してよいアジュバントの例としては、フロイント完全アジュバントおよびMPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコルノミコレート(dicorynomycolate))が挙げられる。免疫プロトコルは、過度の実験なしに当業者により選択され得る。
【0110】
(2.モノクローナル抗体)
あるいは、抗体は、モノクローナル抗体であってよい。モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein,Nature,256:495(1975)に記載されたようなハイブリドーマ法を用いて調製してよい。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスターまたは他の適当な宿主動物は、典型的に、免疫化剤で免疫して、該免疫化剤に対して特異的に結合する抗体を産生または産生することのできるリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫されてよい。
【0111】
免疫化剤は、典型的に、目的のポリペプチドまたはその融合タンパク質を含む。一般的に、ヒト起源の細胞が所望される場合、いずれかの末梢血リンパ球(「PBL」)が、用
いられ、非ヒト哺乳動物供給源が所望される場合、脾臓細胞またはリンパ節細胞が用いられる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いて不死化細胞株に融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding,Monoclonal
Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−103]。不死化細胞株は、通常、形質転換哺乳動物細胞、特にげっ歯類、ウシおよびヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウス骨髄腫細胞株が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、未融合の不死化細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を好ましくは含有する適当な培養培地で培養してよい。例えば、親細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマの培養培地は、典型的に、HGPRT欠損細胞の成長を阻止する物質であるヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(「HAT培地」)を含むだろう。
【0112】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞により安定的な高いレベルの抗体発現を支持し、HAT培地等の培地に対して感受性がある細胞株である。さらに好ましい不死化細胞株は、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego、CaliforniaおよびAmerican Type Culture Collection、Manassas、Virginiaから得ることのできるマウス骨髄腫株である。さらに、ヒト骨髄腫細胞株およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている[Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987)pp.51−63]。
【0113】
次に、ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、目的のポリペプチドに結合するモノクローナル抗体の存在に関してアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法によるか、またはラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)等のインビトロ結合アッセイにより決定する。そのような技術およびアッセイは、当該分野で公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、MunsonおよびPollard(Anal.Biochem.,107:220(1980))のスキャッチャード分析により決定することができる。
【0114】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈手順によりサブクローニングし、標準的な方法[上記のGoding]により成長させてよい。この目的のための適当な培養培地としては、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地およびRPMI−1640培地が挙げられる。あるいは、ハイブリドーマ細胞をインビボで哺乳動物の腹水として成長させてよい。
【0115】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA−セファロース、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製手順により培養培地または腹水から単離または精製してよい。
【0116】
モノクローナル抗体は、コンビナトリアルライブラリーを用いて作製し、所望の活性を有する抗体をスクリーニングすることができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作り、該ライブラリーを、所望の結合特性を有する抗体についてスクリーニングするための多様な方法が、当該分野で公知である。そのような方法は、Hoogenboomら(2001)(Methods in Molecular Biology 17
8:1−37(O’Brienら編,Human Press,Totowa,NJ)に一般的に記載されており、一定の実施形態では、Leeら(2004)(J.Mol.Biol.340:1073−1093)に記載されている。
【0117】
原理的には、合成抗体クローンは、ファージコートタンパク質に融合させた抗体可変領域(Fv)の多様なフラグメントを提示するファージを含むファージライブラリーをスクリーニングすることにより選択される。そのようなファージライブラリーは、所望の抗原に対するアフィニティークロマトグラフィーにより選択される。所望の抗原に結合することのできるFvフラグメントを発現するクローンは、抗原に吸着するので、ライブラリー中の非結合クローンから分離される。次に結合クローンは抗原から溶出され、抗原吸着/溶出のさらなるサイクルによりさらに濃縮することができる。本発明の任意の抗体も、目的のファージクローンを選択するために適当な抗原スクリーニング手順を設計した後、目的のファージクローンからのFv配列、および適当な定常領域(Fc)配列を用いて全長抗体クローンを構築することにより得られる(Kabatら,Sequences of
Proteins of Immunological Interest,第5版,NIH Publication 91−3242,Bethesda MD(1991),第1巻〜第3巻)。
【0118】
モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されたような組換えDNA法により産生することもできる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することのできるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)容易に単離され、配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦単離されると、DNAは発現ベクターに配置され、次に、これを、免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞に移入して、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成してもよい。DNAは、例えば、相同マウス配列の代わりに、ヒト重鎖およびヒト軽鎖の定常領域のコード配列を配置することにより改変してもよいし[米国特許第4,816,567号;Morrisonら(上記)]、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列のすべてまたは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することにより改変してもよい。そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常領域の代わりとなるか、または本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変領域の代わりとなって、キメラ二価抗体を形成しうる。
【0119】
(3.一価抗体)
一価抗体も、提供される。一価抗体を調製するための方法は、当該分野で周知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリン軽鎖および改変重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、一般的に、重鎖の架橋を妨げるために、Fc領域内の任意の点で切断する。あるいは、関連システイン残基を、架橋を妨げるために、別のアミノ酸残基で置換するか、または欠失させる。
【0120】
インビトロ方法も、一価抗体を調製するために適切である。抗体を消化してそのフラグメント、特にFabフラグメントを産生することは、当該分野で公知の慣用的な技術を用いて達成することができる。
【0121】
(4.抗体フラグメント)
抗体フラグメントも、提供される。抗体フラグメントは、酵素消化等の伝統的手段によるか、または組換え技術により産生してよい。ある状況では、全抗体よりも抗体フラグメントを用いることの利点が存在する。フラグメントのより小さいサイズは、迅速なクリアランスを可能とし、固形腫瘍への改善された接近をもたらすだろう。一定の抗体フラグメ
ントの概説に関しては、Hudsonら(2003)Nat.Med.9:129−134を参照されたい。
【0122】
抗体フラグメントの産生のために多様な技術が開発されてきた。伝統的に、これらのフラグメントはインタクトな抗体のタンパク質消化により得られた(例えば、Morimotoら,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992);およびBrennanら,Science,229:81(1985)を参照)。しかし、これらのフラグメントは現在では組換え宿主細胞により直接産生することができる。Fab抗体フラグメント、Fv抗体フラグメントおよびFcFv抗体フラグメントは、すべて、E.coliで発現され、E.coliから分泌されるので、大量のこれらのフラグメントの容易な産生が可能となっている。抗体フラグメントは、上で考察された抗体ファージライブラリーから単離することができる。あるいは、Fab’−SHフラグメントをE.coliから直接回収し、化学結合させて、F(ab’)
2フラグメントを形成することができる(Carterら,Bio/Technology 10:163−167(1992))。別のアプローチによれば、F(ab’)
2フラグメントは組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。再利用(salvage)レセプター結合エピトープ残基を含有する、インビボ半減期が高められたFabフラグメントおよびF(ab’)
2フラグメントは、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体フラグメントの産生のための他の技術は、当業者に明らかであろう。一定の実施形態において、抗体は、一本鎖Fvフラグメント(scFv)である。WO93/16185、米国特許第5,571,894号および同第5,587,458号を参照されたい。FvおよびscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有する唯一の種である;したがって、それらはインビボ使用中に低減した非特異的結合に適するであろう。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかでエフェクタータンパク質の融合を生じるように構築してよい。上記のAntibody Engineering編、Borrebaeckを参照されたい。抗体フラグメントは、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されているように「直鎖抗体」であってもよい。そのような直鎖抗体は、単一特異性であっても、二重特異性であってもよい。
【0123】
(5.ヒト化抗体)
ヒト化抗体も、提供される。非ヒト抗体をヒト化する多様な方法が、当該分野で公知である。例えば、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば「移入」残基と呼ばれ、これら残基は、典型的に、「移入」可変領域から採取られる。ヒト化は、本質的には、Winterおよび共同研究者(Jonesら(1986)Nature 321:522−525;Riechmannら(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyenら(1988)Science 239:1534−1536)にしたがって、超可変領域配列を、ヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施することができる。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変領域の実質的に一部が非ヒト種に由来するその対応配列に置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際に、ヒト化抗体は、典型的に、いくつかの超可変領域残基および恐らくいくつかのFR残基がげっ歯類抗体の類似の部位からの残基により置換されているヒト抗体である。
【0124】
重鎖であれ、軽鎖であれ、ヒト化抗体を産生するために使用されるヒト可変領域の選択は、抗原性を低減するために重要でありうる。いわゆる「最良適合(best−fit)」法によれば、げっ歯類抗体の可変領域の配列を、公知のヒト可変領域配列の完全ライブラリーに対してスクリーニングする。げっ歯類の配列に最も近いヒト配列は、次に、ヒト化抗体のヒトフレームワークとして受容される(Simsら(1993)J.Immun
ol.151:2296;Chothiaら(1987)J.Mol.Biol.196:901)。別の方法は、重鎖または軽鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体の共通配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同一のフレームワークを、幾つかの異なるヒト化抗体に用いてもよい(Carterら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285;Prestaら(1993)J.Immunol.,151:2623)。
【0125】
さらに、抗体は、抗原に対する高い親和性および他の望ましい生物学的特徴を保持しながらヒト化することが、一般的に望ましい。この目標を達成するために、一つの方法によれば、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを用いて親配列と多様な概念的ヒト化産物の分析プロセスによりヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは、当業者には一般的に入手可能であり、親しまれている。選択された候補免疫グロブリン配列の予想される三次元配座構造を図示し、表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列を機能させる際の残基の可能性のある役割、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を与える残基の分析が可能となる。このようにして、FR残基をレシピエント配列および移入配列から選択し、組合せることで、標的抗原に対する増強した親和性等の所望の抗体特性を達成することができる。一般的に、超可変領域残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接かつ最も実質的に関与する。
【0126】
(6.ヒト抗体)
ヒト抗体も提供される。ヒト抗体は、ヒト由来ディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変領域配列を、上記のように公知のヒト定常領域配列に組み合わせることにより構築することができる。あるいは、本発明のヒトモノクローナル抗体はハイブリドーマ法により作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が、例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら,Monoclonal
Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New
York,1987);およびBoernerら,J.Immunol,147:86(1991)に記載されている。
【0127】
内因性免疫グロブリン産生の非存在下で完全な範囲のヒト抗体を免疫化の際に産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を、産生することが現在では可能である。例えば、キメラ生殖細胞系列変異体マウスでの抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。そのような生殖細胞系列変異体マウスにおけるヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子アレイの導入は、抗原チャレンジの際にヒト抗体の産生をもたらすだろう。例えば、Jakobovitsら,Proc.Natl.Acad.Sci USA,90:2551(1993);Jakobovitsら,Nature,362:255(1993);Bruggermannら,Year in Immunol,7:33(1993)を参照されたい。
【0128】
ヒト抗体が出発非ヒト抗体と類似の親和性および特異性を有する場合、遺伝子シャフリングを用いて、非ヒト(例えば、げっ歯類)の抗体を得ることもできる。「エピトープインプリンティング(epitope imprinting)」とも呼ばれるこの方法によれば、ここで記載されるようにファージディスプレイ技術により得られる非ヒト抗体フラグメントの重鎖または軽鎖のいずれかの可変領域を、ヒトV領域遺伝子のレパートリーによって置き換えて、非ヒト鎖/ヒト鎖のscFvキメラまたはFabキメラの集団を産生する。抗原による選択は、非ヒト鎖/ヒト鎖のキメラscFvまたはキメラFabの単
離をもたらし、ここでヒト鎖は、一次ファージディスプレイクローンにおける対応する非ヒト鎖の除去の際に破壊される抗原結合部位を回復する(すなわち、エピトープは、ヒト鎖パートナーの選択を支配する(インプリントする))。残っている非ヒト鎖を置き換えるためにこのプロセスを繰り返す場合、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日に公開されたPCT WO93/06213を参照)。CDRグラフティングによる非ヒト抗体の伝統的なヒト化とは異なり、この技術は、非ヒト起源のFR残基またはCDR残基を持たない完全なヒト抗体を提供する。
【0129】
(7.二重特異性抗体)
二重特異性抗体も提供される。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。一定の実施形態において、二重特異性抗体は、ヒト抗体、またはヒト化抗体である。一定の実施形態において、結合特異性の一方は、目的のポリペプチドに対するものであり、他方は、他の抗原に対するものである。一定の実施形態において、二重特異性抗体は、目的のポリペプチドの二つの異なるエピトープに結合するだろう。二重特異性抗体を用いて、細胞毒性因子を、細胞表面ポリペプチド等の目的のポリペプチドを発現する細胞に局在化させてもよい。これらの抗体は、TAT226結合アームと、細胞毒性因子(例えば、サポリン、抗インターフェロンα、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセートまたは放射性同位体ハプテン)に結合するアームとを有する。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体フラグメント(例えば、F(ab’)
2二重特異性抗体)として調製することができる。
【0130】
二重特異性抗体を産生するための方法は、当該分野で公知である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づき、ここで、2つの重鎖は、異なる特異性を有する(MilsteinおよびCuello,Nature,305:537(1983))。免疫グロブリン重鎖と免疫グロブリン軽鎖との任意組み合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ(quadroma))は、10型の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生し、このうち、わずかに一つのみが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行なわれる正しい分子の精製はかなり面倒であり、生成物の収率は低い。類似の手順が、1993年5月13日に公表されたWO93/08829、およびTrauneckerら,EMBO J.,10:3655(1991)に開示されている。
【0131】
異なるアプローチにしたがうと、所望の結合特性を有する抗体可変領域(抗体−抗原結合部位)を、免疫グロブリン定常領域配列に融合させる。この融合は、例えば、ヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常領域に対して行なう。一定の実施形態において、軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)は、融合体の少なくとも一つに存在する。免疫グロブリン重鎖融合体をコードするDNA、および所望される場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。これは、構築に使用される等しくない比率の3本のポリペプチド鎖が最適な収率を提供する場合、実施形態における3本のポリペプチドフラグメントの相互の比率を調節する大きな柔軟性を提供する。しかし、少なくとも2つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらし、この比率が特に重要でない場合、2本または3本全てのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0132】
この方法の一実施形態において、二重特異性抗体は、一方のアーム内の第1結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアーム内の(第2結合特異性を提供する)ハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対とからなる。この非対称構造は、二重特異性分子のわずかに半分のみにおける免疫グロブリン軽鎖の存在が分離の容易な方法を提供するので、望ましくない免疫グロブリン鎖の組合せからの所望の二重特異性化合物の分
離を容易にする。このアプローチは、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体の産生のさらなる詳細については、例えば、Sureshら,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照されたい。
【0133】
別のアプローチによれば、抗体分子の対の間の界面を、組換え細胞培養物から回収されるヘテロダイマーの比率を最大化するように設計することができる。この界面は、抗体定常領域のC
H3領域の少なくとも一部を含む。この方法において、第1抗体分子の界面からの1つ以上の小さいアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)によって置換する。大きな側鎖と同一または類似の大きさの代償性「空洞」を、大きなアミノ酸側鎖を小さい側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)により置換することにより第2抗体分子の界面上に産生する。これは、ホモダイマー等の他の望ましくない最終生成物を上回ってヘテロダイマーの収率を高める機構を提供する。
【0134】
二重特異性抗体として、架橋した抗体または「ヘテロ結合体化」抗体が挙げられる。例えば、ヘテロ結合体中の抗体の一方をアビジンに結合させ、他方をビオチンに結合させる。そのような抗体は、例えば、望まれない細胞を免疫系細胞の標的とさせること(米国特許第4,676,980号)およびHIV感染を処置すること(WO91/00360、WO92/00373およびEP03089)のために提案されている。ヘテロ結合体化抗体は、任意の簡便な架橋方法を用いて作ってもよい。適当な架橋剤は周知であり、多くの架橋技術とともに、米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0135】
抗体フラグメントから二重特異性抗体を産生するための技術も、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製することができる。Brennanら(Science,229:81(1985))は、インタクトな抗体をタンパク分解的に切断して、F(ab’)
2フラグメントを産生する操作を記載している。これらのフラグメントは、ジチオール錯化剤(complexing agent)である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、隣接ジオールを安定させ、分子間ジスルフィド形成を妨げる。産生されたFab’フラグメントは、次にチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。Fab’−TNB誘導体の一方は、次にメルカプトエチルアミンによる還元によりFab’−チオールに再変換され、等モル量の他方のFab’−TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体を形成する。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として用いることができる。
【0136】
最近の進歩は、E.coliからのFab’−SHフラグメントの直接の回収を容易にし、これらのフラグメントは、化学的にカップリングさせて二重特異性抗体を形成できる。Shalabyら(J.Exp.Med.,175:217−225(1992))は、完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)
2分子の産生を記載する。各Fab’フラグメントは、E.coliから別々に分泌され、統制されたインビトロの化学的カップリングに供されて二重特異性抗体を形成する。このように形成された二重特異性抗体は、HER2レセプターを過剰発現する細胞および正常なヒトT細胞に結合することができ、ヒト乳房腫瘤標的に対してヒト細胞傷害性リンパ球の溶解作用を誘発することができた。
【0137】
二重特異性抗体フラグメントを直接的に作製し、組換え細胞培養物から単離する多様な技術がまた、記載されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを用いて産生されている(Kostelnyら,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992))。Fosタンパク質およびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドは、2つの異なる抗体のFab’部分に遺伝子融合により連結された。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、次に再酸化させて抗体ヘテロダイマーを形成した。この方法は、抗体ホモダイマーの産生のためにも利用することができる
。Hollingerら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993))により記載された「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体フラグメントを作製するための代替機構を提供している。これらのフラグメントは、重鎖可変領域(VH)を軽鎖可変領域(VL)に、それらの同一鎖上の2つの領域の間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーによって連結させて構成される。したがって、一方のフラグメントのVH領域およびVL領域を、別のフラグメントの相補VL領域および相補VH領域に対形成させることにより、2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)ダイマーを使用することによって二重特異性抗体フラグメントを産生するための別のストラテジーも、報告されている。Gruberら,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい。
【0138】
2より大きい結合価を有する抗体が、意図される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tuttら、J.Immunol.147:60(1991))。
【0139】
(8.多価抗体)
多価抗体も提供される。多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により二価抗体よりも速く内部に取り入れられる(および/または分解される)。本発明の抗体は、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により容易に産生することができる、3つ以上の抗原結合部位を有する(IgMクラス以外の)多価抗体(例えば、四価抗体)であることができる。多価抗体は、ダイマー化領域と3つ以上の抗原結合部位を含むことができる。一定の実施形態において、ダイマー化領域は、Fc領域またはヒンジ領域を含む(またはそれらから成る)。このシナリオでは、抗体はFc領域、およびFc領域に対してアミノ末端となる3つ以上の抗原結合部位を含むだろう。一定の実施形態において、多価抗体は、3〜約8つの抗原結合部位を含む(またはそれらからなる)。そのような一実施形態において、多価抗体は、4つの抗原結合部位を含む(またはそれらからなる)。多価抗体は、少なくとも1本のポリペプチド鎖(例えば、2本のポリペプチド鎖)を含み、ここで、ポリペプチド鎖は2つ以上の可変領域を含む。例えば、ポリペプチド鎖は、VD1−(X1)n−VD2−(X2)n−Fc(式中、VD1は第1可変領域であり、VD2は第2可変領域であり、FcはFc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1とX2はアミノ酸またはポリペプチドを表し、nは0または1である。)を含んでよい。例えば、ポリペプチド鎖は、VH−CH1−柔軟なリンカー−VH−CH1−Fc領域鎖、またはVH−CH1−VH−CH1−Fc領域鎖を含んでよい。ここでの多価抗体は、少なくとも2つ(例えば、4つ)の軽鎖可変領域ポリペプチドをさらに含んでよい。ここでの多価抗体は、例えば、約2〜約8つの軽鎖可変領域ポリペプチドを含んでよい。ここで意図される軽鎖可変領域ポリペプチドは、軽鎖可変領域を含み、必要に応じて、CL領域をさらに含む。
【0140】
(9.単一ドメイン抗体)
単一ドメイン抗体も提供される。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変領域のすべてまたは一部、あるいは軽鎖可変領域のすべてまたは一部を含む単一ポリペプチド鎖である。一定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒトの単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516
B1号を参照)。一実施形態において、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変領域のすべてまたは一部からなる。
【0141】
(10.抗体改変体)
一部の実施形態において、ここに記載の抗体のアミノ酸配列改変が意図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的性質を向上することが望ましいだろう。抗体のアミノ酸配列改変体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適当な変化を導入することにより調製するか、またはペプチド合成により調製してよい。そのような改変は、
例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失および/または挿入および/または置換を含む。欠失、挿入および置換の組合せを行なって最終構築物に到達してもよいが、但し最終構築物は、所望の特性を有する。アミノ酸の変更は、該配列が作製される時点で対象抗体アミノ酸配列に導入してよい。
【0142】
変異誘発のために好ましい位置である抗体の一定の残基または領域の同定のための有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989)(Science,244:1081−1085)に記載されたように「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。ここで、残基または標的残基の集団が同定され(例えば、arg、asp、his、lysおよびglu等の荷電残基)、これらを中性アミノ酸または負電荷アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)に置換して、抗原とアミノ酸との相互作用に影響を与える。置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置は、次に、さらなる改変体または別の改変体を、置換部位においてか、またはその部位に関して導入することにより洗練させる。したがって、アミノ酸配列変異を導入する部位は前もって定められる一方で、突然変異自体の性質は、前もって定める必要はない。例えば、所与の部位での変異の性能を分析するために、alaスキャンニングまたはランダム変異導入法を標的コドンまたは標的領域で行なって、発現した免疫グロブリンを所望の活性についてスクリーニングする。
【0143】
アミノ酸配列挿入物は、長さが1残基から、100以上の残基を含むポリペプチドの範囲のアミノおよび/またはカルボキシル末端融合体、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入改変体は、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPTに関して)またはポリペプチドに対する抗体のN末端またはC末端への融合体を含む。
【0144】
一定の実施形態において、本発明の抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少するように変更される。ポリペプチドのグリコシル化は、典型的に、N結合またはO結合される。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合をいう。トリペプチド配列:アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン(式中、Xはプロリン以外のアミノ酸である。)は、アスパラギン側鎖に対する炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を形成する。O結合グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸(最も一般的には、セリンまたはスレオニン)に対してN−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロース等の1つの糖が結合することをいうが、5−ヒドロキプロリンまたは5−ヒドロキシリジンを用いてもよい。
【0145】
抗体に対するグリコシル化部位の付加もしくは欠失は、(N結合グリコシル部位に関して)1つ以上の上記トリペプチド配列が形成されるか、または除去されるように、アミノ酸配列を変化させることによって都合よく成し遂げられる。この変化は、(O結合グリコシル化部位に関して)元の抗体の配列に対して1つ以上のセリン残基またはスレオニン残基の付加、欠失または置換により行なってもよい。
【0146】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物を変化させてよい。例えば、抗体のFc領域に結合したフコースを欠く成熟炭水化物構造を有する抗体は、米国特許出願第2003/0157108号(Presta,L.)に記載されている。米国特許出願第2004/0093621号(協和発酵工業株式会社)も参照されたい。抗体のFc領域に結合した炭水化物中に二分するN−アセチルグルコサミン(GIcNAc)を有する抗体は、WO2003/011878(Jean−Mairetら)および米国特許第6,602,684号(Umanaら)で参照されている。抗体のFc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体は、WO1997/30087(
Patelら)に報告されている。抗体のFc領域に結合した変更された炭水化物を有する抗体に関しては、さらにWO1998/58964(Raju,S.)およびWO1999/22764(Raju,S.)を参照されたい。改変グルコシル化を有する抗原結合分子に関しては、さらに米国特許出願第2005/0123546号(Umanaら)を参照されたい。
【0147】
一定の実施形態において、グリコシル化改変体は、Fc領域に結合した炭水化物構造がフコースを欠くFc領域を含む。そのような改変体は、改善されたADCC機能を有する。必要に応じて、Fc領域は、ADCCをさらに改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位および/または334位(残基のEuナンバリング)に置換を有する。「脱フコシル化」抗体または「フコース欠損」抗体に関連する刊行物の例としては、US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;Okazakiら、J.Mol.Biol.336:1239−1249(2004);Yamane−Ohnukiら、Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱グルコシル化抗体を産生する細胞株の例としては、タンパク質フコシル化を欠損するLec13CHO細胞(Ripkaら、Arch.Biochem.Biophys.249:533−545(1986);米国特許出願第2003/0157108A1号(Presta,L);およびWO2004/056312A1(Adamsら、特に実施例11)およびノックアウト細胞株、例えば、アルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(Yamane−Ohnukiら、Biotech.Bioeng.87:614(2004))が挙げられる。
【0148】
別の型の改変体は、アミノ酸置換改変体である。これらの改変体は、異なる残基により置換された抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。置換変異誘発のために目的の部位としては、超過変領域が挙げられるが、FRの変更も意図される。保存的置換は、表6に「好適な置換」の表題で示す。そのような置換が所望の生物学的活性の変化をもたらす場合、表6の「例示的置換」と示すさらに実質的な変化、またはアミノ酸クラスに関してさらに詳しく上記したような変化を導入してよく、得られた抗体を所望の結合性質についてスクリーニングする。
【0149】
1つの型の置換改変体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超過変領域残基を置換することをともなう。一般的に、さらなる開発のために選択されて得られる改変体は、それらが生じる親抗体と比較して改変された(例えば、改善された)生物学的性質を有するだろう。そのような置換改変体を産生するための便利な方法は、ファージディスプレイを用いる親和性成熟をともなう。簡潔に説明すれば、いつかの超可変領域部位(例えば、6〜7個の部位)を変異させて、すべての可能なアミノ酸置換を各部位に生じさせる。このように産生した抗体は、各粒子内にパッケージしたファージコートタンパク質(例えば、M13の遺伝子III産物)の少なくとも一部に対する融合体として繊維状ファージ粒子から提示される。次に、ファージディスプレイ改変体を、それらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。改変のための候補超可変領域部位を同定するために、スキャニング変異誘発(例えば、アラニンスキャニング)を実施して、抗原結合に顕著に寄与する超過変領域残基を同定することができる。あるいは、またはさらに、抗体と抗原との間の接触点を同定するために抗原−抗体複合体の結晶構造を分析することは有利であろう。そのような接触残基および隣接残基は、ここで詳しく述べられる技術を含む、当該分野で公知の技術による置換の候補である。そのような
改変体が一旦産生されたら、改変体のパネルを、ここに記載の技術を含む、当該分野で公知の技術を用いるスクリーニングに供して、1つ以上の関連アッセイにおいて優れた性質を有する抗体を、さらなる開発のために選択してよい。
【0150】
抗体のアミノ酸配列改変体をコードする核酸分子は、当該分野で公知の多様な方法により調製される。これらの方法としては、天然供給源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列改変体の場合)あるいは抗体の先に調製した改変体または非改変体のオリゴヌクレオチド媒介(または部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発およびカセット変異誘発による調製が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
本発明の抗体のFc領域において1つ以上のアミノ酸改変を導入することにより、Fc領域改変体を産生することは、望ましいものであろう。Fc領域改変体は、ヒンジシステインを含む1つ以上のアミノ酸の位置にアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のFc領域)を含んでよい。
【0152】
この説明および当該分野の教示にしたがって、一部の実施形態において、本発明の抗体は、例えば、Fc領域において、野生型の対応物抗体と比較して、1つ以上の変化を含んでよいことが意図される。これらの抗体は、野生型対応物と比較して治療上の有用性に必要とされる同じ特徴を実質的にそれでもなお維持するだろう。例えば、WO99/51642に記載されるように、変化した(すなわち、改善または減少した)C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらす一定の変更を、Fc領域においてなしうることが考えられる。Fc領域改変体の他の例に関しては、さらに、Duncan&Winter Nature 322:738−40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびWO94/29351を参照されたい。WO00/42072(Presta)およびWO2004/056312(Lowman)は、FcRに対する改善または減少した結合を有する抗体改変体を記載する。これらの特許公報の内容は、参考により具体的にここに援用される。さらに、Shieldsら,J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)を参照されたい。増大した半減期と、母系IgGの胎児への移入を担う新生児Fcレセプター(FcRn)(Guyerら,J.Immunol.117:587(1976)およびKimら,J.Immunol.24:249(1994))に対する改善された結合とを有する抗体は、US2005/0014934A1(Hintonら)に記載されている。これらの抗体は、FcRnに対するFc領域の結合を改善させる1つ以上の置換を有するFc領域を含む。変化したFc領域アミノ酸配列と増加または減少したClq結合能力とを有するポリペプチド改変体は、米国特許第6,194,551B1号およびWO99/51642に記載されている。これらの特許公報の内容は、参考として具体的にここに援用される。Idusogieら,J.Immunol.164:4178−4184(2000)も参照されたい。
【0153】
一態様において、本発明は、Fc領域を含むFcポリペプチドの界面において改変を有する抗体を提供し、該改変はヘテロダイマー化を、容易および/または促進する。これらの改変は、隆起を第1Fcポリペプチドに導入し、空洞を第2Fcポリペプチドに導入することからなり、該隆起は、第1Fcポリペプチドと第2Fcポリペプチドとの複合体形成を促進するように該空洞中に位置することが可能である。これらの改変を有する抗体を産生する方法は、例えば、米国特許第5,731,168号に記載されているように当該分野で公知である。
【0154】
(11.抗体誘導体)
抗体は、さらに改変されて、当該分野で公知でありかつ容易に利用可能なさらなる非タ
ンパク質性部分を含むことができる。好ましくは、抗体の誘導体化に適する部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)およびデキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロプレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して製造の利点を有するだろう。ポリマーは、いかなる分子量を有してもよく、分枝状であっても、非分枝状であってもよい。抗体に結合させるポリマーの数は、変動し得、1つより多いポリマーを結合させる場合、それらは同じかまたは異なる分子であってよい。一般的に、誘導体化のために用いられるポリマーの数および/または型は、検討に基づいて決定することができ、その検討は、抗体誘導体が定められた条件下での治療等に使用されるかどうかにかかわらず、改善させる抗体の特定の性質または機能を含むが、これらに限定されない。
【0155】
別の実施形態において、放射線に曝すことで選択的に加熱してよい非タンパク質部分と抗体との複合体が、提供される。一実施形態において、非タンパク質部分はカーボンナノチューブである(Kamら,Proc.Natl.Acad.Sci.102:11600−11605(2005))。上記放射線は、任意の波長であり、その波長としては、通常の細胞を損傷しない波長であって、抗体−非タンパク質性部分の近位にある細胞が殺される温度まで非タンパク質部分を加熱する波長が挙げられるが、これに限定されない。
【0156】
一定の実施形態において、抗体は、標識されてもよいし、そして/または固体支持体に固定化されてもよい。さらなる態様において、抗体は、抗イディオタイプ抗体である。
【0157】
(12.へテロ結合体化抗体)
ヘテロ結合体化抗体も提供される。ヘテロ結合体化抗体は、共有結合した2つの抗体からなる。そのような抗体は、例えば、免疫系細胞を望まれない細胞へと標的させるため[米国特許第4,676,980号]、およびHIV感染の処置のために[WO91/00360;WO92/200373;EP03089]提案されている。例えば架橋剤ともなう方法を含む合成タンパク質化学において公知の方法を用いて抗体をインビトロで調製してよいことが、意図される。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を用いるか、またはチオエーテル結合を形成することにより構築してよい。この目的に適する試薬の例としては、イミノチオレートとメチル−4−メルカプトブチリミデートおよび例えば米国特許第4,676,980号に開示されたものが挙げられる。
【0158】
(13.細胞傷害抗体)
細胞傷害抗体も提供される。一定の実施形態において、細胞傷害抗体は、エフェクター機能をもたらし、そして/または細胞死を誘発する下記に示すような抗IL22抗体である。一定の実施形態において、細胞障害抗IL−22R抗体は、IL−22Rの細胞外領域に結合する。
【0159】
(14.エフェクター機能エンジニアリング)
例えば、癌等の疾患の処置において抗体の有効性を増強するように、エフェクター機能に関して抗体を改変することは望ましいであろう。例えば、システイン残基をFc領域に導入することにより、この領域の鎖間ジスルフィド結合形成を可能とすることができるだ
ろう。こうして産生したホモダイマー抗体は、内部移行能力を改善させて、そして/または補体媒介細胞殺滅および抗体依存性細胞傷害(ADCC)を高めているだろう。Caronら,J.Exp Med.,176:1191−1195(1992)およびShopes,J.Immunol.,148:2918−2922(1992)を参照されたい。増強した抗腫瘍活性を有するホモダイマー抗体は、Wolffら、Cancer Research,53:2560−2565(1993)に記載されているように、ヘテロ二官能性架橋剤を用いて調製してもよい。あるいは、二重Fc領域を有し、それにより補体溶解能力およびADCC能力を増強する抗体を設計することができる。Stevensonら,Anti−Cancer Drug Design,3:219−230(1989)を参照されたい。
【0160】
(15.ベクター、宿主細胞および組換え法)
抗体の組換え産生のために、一実施形態において、それをコードする核酸を単離し、さらなるクローニング(DNAの増幅)のためまたは発現のために複製可能なベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することのできるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)、容易に単離され、その配列決定がなされる。多くのベクターが、利用可能である。ベクターの選択は、部分的に、使用される宿主細胞に依存する。一般的に、宿主細胞は、原核生物起源または真核生物(一般的には哺乳動物)起源である。IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE等の任意のアイソタイプの定常領域をこの目的に使用することができ、そのような定常領域はヒトまたは他の種から得ることができることが理解されるだろう。
【0161】
a)原核宿主細胞を用いる抗体の産生:
(1)ベクターの構築
抗体のポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な組換え技術を用いて得ることができる。望ましいポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞等の抗体産生細胞から単離され、配列決定されるだろう。あるいは、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成機またはPCR技術を用いて合成することができる。ポリペプチドをコードする配列が一旦得られたら、これらを、原核生物宿主中で異種ポリヌクレオチドを複製および発現することのできる組換えベクターに挿入する。当該分野で利用可能でありかつ公知の多くのベクターが、本発明の目的に使用することができる。適当なベクターの選択は、主に、ベクターに挿入される核酸の大きさおよび該ベクターで形質転換される特定の宿主細胞に依存するだろう。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅または発現、あるいはその両方)およびそれが存在する特定の宿主細胞との適合性に依存して、多様な成分を含む。ベクター成分としては、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入物および転写終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
一般的に、宿主細胞に適合性のある種に由来するレプリコンと制御配列とを含むプラスミドベクターは、これらの宿主と組み合わせて用いてよい。ベクターは、通常、複製部位、ならびに形質転換細胞において表現型選択を提供することのできるマーキング配列を保有する。例えば、E.coliは、典型的にはE.coli種に由来するプラスミドであるpBR322を用いて形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)耐性およびテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を有するので、形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体、あるいは他の細菌プラスミドまたはバクテリオファージは、内因性タンパク質の発現のために細菌生物によって利用可能なプロモーターを含んでも、そうしたプロモーターを含むように改変されてもよい。特定の抗体の発現のために用いられるpBR322誘導体の例は、Carterらの米国特許第5,648,237号に詳細に記載されている。
【0163】
さらに、宿主微生物と適合性のあるレプリコンと制御配列とを含むファージベクターは、これらの宿主と組み合わせて形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、λGEM.TM.−11等のバクテリオファージを、E.coli LE392等の感受性宿主細胞を形質転換するために使用できる組換えベクターの作製において利用してよい。
【0164】
本発明の発現ベクターは、ポリペプチド成分の各々をコードする2つ以上のプロモーター−シストロン対を含んでよい。プロモーターは、発現を調節するシストロンの上流(5’)に位置する非翻訳制御配列である。原核生物プロモーターは、典型的には、誘導性と構成性の2つのクラスに分類される。誘導性プロモーターは、培養条件の変化、例えば、栄養素の存在または非存在あるいは温度の変化に応答してその制御下にあるシストロンの転写のレベルの増大を開始するプロモーターである。
【0165】
可能性のある多様な宿主細胞により認識される多数のプロモーターが、周知である。選択されたプロモーターは、制限酵素消化により供給源DNAからプロモーターを取り出し、単離されたプロモーター配列を本発明のベクターに挿入することにより、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに作動可能に連結することができる。標的遺伝子の増幅および/または発現を指揮するために、天然のプロモーター配列と多くの異種プロモーターとの両方を用いることができる。一部の実施形態において、異種プロモーターが利用される。なぜならばそれらの異種プロモーターが、天然の標的ポリペプチドプロモーターと比較して発現される標的遺伝子の高い転写および高い収率を一般的に可能にするからである。
【0166】
原核生物宿主において使用するために適するプロモーターとしては、PhoAプロモーター、β−ガラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系およびハイブリッドプロモーター(例えばtacプロモーターまたはtrcプロモーター)が挙げられる。しかし、細菌中で機能的な他のプロモーター(例えば、他の公知の細菌プロモーターまたはファージプロモーター)も同様に適する。それらのヌクレオチド配列は公開されているので、熟練研究者は、必要とされる制限部位を提供するリンカーまたはアダプターを用いて、標的の軽鎖および重鎖をコードするシストロン(Siebenlistら、(1980)Cell 20:269)にそれらを作動可能に連結することができる。
【0167】
本発明の一態様において、組換えベクター内の各シストロンは、発現ポリペプチドの膜を横断する移行を指揮する分泌シグナル配列成分を含む。一般的に、シグナル配列は、ベクターの一成分であり得るか、またはそのシグナル配列は、ベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であり得る。本発明の目的のために選択されるシグナル配列は、宿主細胞により認識されプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)配列である。異種ポリペプチドに固有のシグナル配列を認識せず、処理しない原核宿主細胞のために、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ippまたは耐熱性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpAおよびMBPからなる群から選択される原核生物シグナル配列により置換される。本発明の一実施形態において、発現系の両シストロンに使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはそれらの改変体である。
【0168】
別の態様において、本発明による免疫グロブリンの産生は宿主細胞の細胞質で起こりうるので、各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。この点において、免疫グロブリンの軽鎖と重鎖は、発現し、折り畳まれ、組み合されて、機能的な免疫グロブリンを細胞質内に形成する。ある種の宿主株(例えば、E.coli trxB株)は、
ジスルフィド結合形成に有利な細胞質条件を提供することにより、発現タンパク質サブユニットの適切な折り畳みと構築を可能とする(ProbaおよびPluckthun Gene,159:203(1995))。
【0169】
本発明の抗体はまた、分泌され適切に組み立てられた本発明の抗体の収率を最大化するために、発現されるポリペプチド成分の量的な比が調節され得る発現系を用いて産生され得る。そのような調節は、少なくとも部分的に、ポリペプチド成分についての翻訳強度を同時に調節することにより達成される。
【0170】
翻訳強度を調節するための一つの技術は、Simmonsらの米国特許第5,840,523号に開示されている。それは、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)の改変体を利用する。所与のTIRのために、一連のアミノ酸配列改変体または核酸配列改変体を、さまざまな翻訳強度で産生することにより、特定の鎖の望ましい発現量のためにこの因子を調節する便利な手段が提供できる。TIR改変体は、アミノ酸配列を変えることのできるコドン変化をもたらす従来の変異誘発技術により産生することができる。一定の実施形態において、ヌクレオチド配列の変化はサイレントである。TIRの変化として、例えば、シグナル配列の変化とともにシャイン・ダルガルノ配列の数またはスペーシングの変化が挙げられる。変異体シグナル配列を産生するための一つの方法は、シグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(すなわち、この変化はサイレントである)コード配列の初めに「コドンバンク(codon bank)」を産生することである。これは、各コドンの第3ヌクレオチド位置を変えることにより達成することができる;さらに、ロイシン、セリンおよびアルギニン等の一部のアミノ酸は、該バンクを産生するのに複雑性を加えうる複数の第1位置および第2位置を有する。この変異誘発の方法は、Yansuraら(1992)METHODS:A Companion to Methods in Enzymol.4:151−158に詳細に説明されている。
【0171】
一実施形態において、1つのセットのベクターが、そこでの各シストロンに対してさまざまなTIR強度により産生される。この制限されたセットは、さまざまなTIR強度の組合せにおいて各鎖の発現量ならびに所望の抗体産物の収率の比較を提供する。TIR強度は、Simmonsらの米国特許第5,840,523号に詳細に記載されているように、レポーター遺伝子の発現レベルを定量することにより決定することができる。翻訳強度の比較に基づき、所望の個々のTIRを選択して、本発明の発現ベクター構築物中に組み合わせる。
【0172】
本発明の抗体を発現するのに適切な原核宿主細胞として、グラム陰性生物またはグラム陽性生物等の古細菌および真正細菌が挙げられる。有用な細菌の例としては、エシュリキア属(例えば、E.coli)、桿菌属(例えば、B.subtilis)、腸内細菌、シュードモナス種(例えば、緑膿菌)、ネズミチフス菌、霊菌、クレブシエラ属、プロテウス属、赤痢菌属、根粒菌、ビトレオシラまたは嫌気性細菌群が挙げられる。一実施形態において、グラム陰性菌が使用される。一実施形態において、E.coli細胞が、本発明での宿主として用いられる。E.coli株の例としては、W3110株(Bachmann,CellularおよびMolecular Biology,第2巻(Washington,D.C.:American Society for Microbiology,1987),pp.1190−1219;ATCC Deposit No.27,325)およびそれらの派生物、例えば、遺伝子型W3110 ΔfhuA(ΔtonA)ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc−fepE)degP41 kanRを有する33D3株(米国特許第5,639,635号)が挙げられる。他の株およびそれらの派生物、例えば、E.coli 294(ATCC31,446)、E.coli B,E.coliλ 1776(ATCC 31,537)およびE.coli RV308(ATCC 31,608)も適している。これらの例
は、限定的と言うよりも例示的なものである。定められた遺伝子型を有する上記細菌のいずれかの派生物を構築するための方法は、当該分野で公知であり、例えば、Bassら(Proteins,8:309−314(1990))に記載されている。細菌の細胞におけるレプリコンの複製可能性を考慮しながら、適切な細菌を選択することが一般的に必要である。pBR322、pBR325、pACYC177またはpKN410等の周知のプラスミドを用いてレプリコンを提供する場合、例えば、E.coli、セラチアまたはサルモネラ種を宿主として適切に使用することができる。典型的には、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌するものでなくてはならず、さらなるプロテアーゼインヒビターは細胞培養物に取り込まれることが望ましいであろう。
【0173】
(2)抗体産生
宿主細胞を上記発現ベクターにより形質転換し、次にプロモーターを誘発するか、形質転換体を選択するか、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために必要に応じて改変した従来の栄養培地で培養する。
【0174】
形質転換は、DNAが染色体外要素としてか、または染色体組み込み体によるかのいずれかで複製可能であるようにDNAを原核宿主に導入することを意味する。使用される宿主細胞に依存して、形質転換は、そのような細胞に適当な標準的な技術を用いてなされる。塩化カルシウムを使用するカルシウム処理が、実質的な細胞壁障壁を含む細菌細胞に一般的に用いられる。形質転換の別の方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを使用する。使用されるさらに別の技術は、電気穿孔法である。
【0175】
本発明のポリペプチドを産生するために使用される原核生物細胞は、選択された宿主細胞の培養に適する当該分野で公知の培地で成育させる。適当な培地の例としては、必要な栄養素を補給したルリア培地(LB)が挙げられる。一部実施形態において、培地は、発現ベクターを含む原核生物細胞の選択的な成長を可能とするように、発現ベクターの構築に基づいて選択された選択物質をさらに含む。例えば、アンピシリンが、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の成長培地に加えられる。
【0176】
炭素、窒素および無機リン酸供給源以外に必要な補充物が、単独で、または複合窒素供給源等の別の補充物または培地との混合物として、適当な濃度で含めてもよい。必要に応じて、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリスリトールおよびジチオスレイトールからなる群から選択される1種以上の還元剤を含んでよい。
【0177】
原核宿主細胞を適当な温度で培養する。一定の実施形態において、E.coliの成長のためには、成長温度は、約20℃〜約39℃の範囲;約25℃〜約37℃の範囲;または約30℃である。培地のpHは、主として宿主生物に依存して、約5〜約9の範囲のpHである。一定の実施形態において、E.coliに関しては、pHは約6.8〜約7.4の範囲にあるか、または約7.0である。
【0178】
誘導性プロモーターを本発明の発現ベクターに使用する場合、タンパク質の発現はプロモーターの活性化に適する条件下で誘導される。本発明の一態様において、PhoAプロモーターが、ポリペプチドの転写制御に使用される。したがって、形質転換宿主細胞は、誘導のためにリン酸制限培地で培養する。一定の実施形態において、リン酸制限培地は、C.R.A.P.培地である(例えば、Simmonsら,J.Immunol.Methods(2002),263:133−147を参照)。多様な他の誘発物質を、使用されるベクター構築物にしたがい、当該分野で公知であるように用いてよい。
【0179】
一実施形態において、本発明の発現ポリペプチドは、宿主細胞のペリプラスム中に分泌
され、そこから回収される。典型的には、タンパク質の回収は、一般に、浸透圧衝撃、超音波処理または溶解等の手段による微生物の破壊をともなう。細胞が一旦破壊されると、細胞破片または全細胞を遠心分離またはろ過により除去してよい。タンパク質は、例えば、アフィニティー樹脂クロマトグラフィーによりさらに精製してよい。あるいは、タンパク質は、培養培地へと輸送されて、そこで単離され得る。細胞は、培養物およびろ過された培養上清から除去され、そして産生されたタンパク質のさらなる精製のために濃縮してよい。発現ポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびウエスタンブロットアッセイ等の一般的に公知である方法を用いてさらに単離し、同定することができる。
【0180】
本発明の一態様において、抗体の産生は、発酵法により大量に行われる。多様な大規模流加発酵手順が、組換えタンパク質の産生に利用することができる。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの容量、および一定の実施形態においては、約1,000〜100,000リットルの容量を有する。これらの発酵槽は、酸素および栄養素(特に、グルコース(好ましい炭素/エネルギー供給源))を分配させるために攪拌インペラーを使用する。小規模発酵は、一般的には、容積がおよそ100リットル以下である発酵槽での発酵をいい、約1リットル〜約100リットルの範囲でありうる。
【0181】
発酵プロセスにおいて、典型的には、細胞を、その細胞が初期の安定相にある段階において適当な条件下で望ましい密度(例えば約180〜220のOD550)まで増殖させた後に、タンパク質発現の誘発を開始する。多様な誘導物質を、使用されたベクター構築物にしたがって、当該分野で公知でありかつ上記したように使用してよい。細胞を誘導前に短時間増殖させてもよい。細胞は通常約12〜50時間誘導されるが、これよりも長いか短い誘導時間を使用してもよい。
【0182】
本発明のポリペプチドの産生収率および品質を改善させるために、多様な発酵条件に変更を加えることができる。例えば、分泌された抗体ポリペプチドの適切な組立てや折り畳みを改善させるために、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbDおよび/またはDsbG)またはFkpA(シャペロン活性のあるペプチジルプロリルシス,トランス−イソメラーゼ)等のシャペロンタンパク質を過剰発現するさらなるベクターを用いて、宿主原核生物細胞を同時形質転換することができる。シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞中で産生した異種タンパク質の適切な折り畳みと可溶性を容易に達成することが示されている。Chenら(1999)J.Biol.Chem.274:19601−19605;Georgiou等の米国特許第6,083,715;Georgiou等の米国特許第6,027,888;Bothmann and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17100−17105;Ramm and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17106−17113;Arieら(200I)Mol.Microbiol.39:199−210。
【0183】
発現した異種タンパク質(特に、タンパク質分解感受性であるタンパク質)のタンパク質分解を最小化するために、タンパク質分解酵素を欠く一定の宿主株を本発明に用いることができる。例えば、宿主細胞株を改変して、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVIおよびこれらの組合せ等の公知の細菌プロテアーゼをコードする遺伝子に遺伝変異を生じさせてよい。いくつかのE.coliプロテアーゼ欠損株が利用可能で、例えば、上記のJoIyら(1998);Georgiouらの米国特許第5,264,365号;Georgiouらの米国特許第5,508,192号;Haraら,Microbial Drug Resistance,2:63−72(1996)に記載されている。
【0184】
一実施形態において、1つ以上のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換されたタンパク質分解酵素欠損E.coli株が本発明の発現系の宿主細胞として用いられる。
【0185】
(3)抗体精製
一実施形態において、ここで産生された抗体をさらに精製して、さらなるアッセイおよび使用のために実質的に均一な調製物を得る。当該分野で公知の標準的なタンパク質精製方法が使用できる。免疫親和性カラムまたはイオン交換カラムによる分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ、またはDEAE等の陽イオン交換樹脂によるクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS−PAGE、硫安沈殿、および例えばSephadex G−75を用いるゲルろ過という手順が適当な精製手順の例示例である。
【0186】
一態様において、固相に固定化したプロテインAが、本発明の抗体産物の免疫親和性精製に用いられる。プロテインAは、抗体のFc領域に高親和性で結合するStaphylococcus aureasに由来する41kDの細胞壁タンパク質である(Lindmarkら(1983)J.Immunol.Meth.62:1−13)。プロテインAが固定化された固相は、ガラスまたはシリカの表面を含むカラム、または制御細孔ガラスカラムまたはケイ酸カラムであってよい。一部の適用において、カラムをグリセロール等の試薬で被覆することは、恐らく夾雑物の非特異的な付着を妨げるだろう。
【0187】
精製の第1工程として、上記のように細胞培養物から得られる調製物を、プロテインA固定化固相にアプライし、目的の抗体をプロテインAに特異的に結合させることができる。次に、その固相を洗浄すれば、固相に非特異的に結合した夾雑物が除去されるだろう。最後に、目的の抗体を固相からの溶出により回収する。
【0188】
b)真核宿主細胞を用いる抗体の産生:
真核宿主細胞に使用されるベクターは、一般的に、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーターおよび転写終結配列の1つ以上の非限定成分を含む。
【0189】
(1)シグナル配列成分
真核宿主細胞に使用されるベクターは、目的の成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に、特異的切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドを含んでもよい。選択された異種シグナル配列は、宿主細胞により認識およびプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)配列である。哺乳動物細胞発現において、哺乳動物シグナル配列ならびにウイルス分泌リーダー(例えば、単純ヘルペスgDシグナル)を利用することができる。そのような前駆体領域のDNAを、抗体をコードするDNAにリーディングフレーム内で連結する。
【0190】
(2)複製起点
一般的に、複製起点成分は、哺乳類の発現ベクターには必要とされない。例えば、SV40起点は、単に初期プロモーターを含むとの理由から通常用いられるだろう。
【0191】
(3)遺伝子成分の選択
発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含むだろう。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素(例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートまたはテトラサイクリン)に対する耐性を付与するか、(b)適切であれば栄養要求欠損を補うか、または(c)複合培地からは利用できない非常に重要な栄養素を供給する,タンパク質をコードする。
【0192】
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止する医薬を利用する。異種遺伝子によりうまく形質転換された細胞は、薬剤耐性を生じるタンパク質を産生するので、選択レジメンに耐える。そのような優性選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸およびハイグロマイシンを使用する。
【0193】
哺乳類細胞の適切な選択マーカーの別の例は、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインIおよびメタロチオネインII、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等の、抗体核酸を取り込むのに適格な細胞の同定を可能とするマーカーである。
【0194】
例えば、一部の実施形態において、DHFR選択遺伝子により形質転換された細胞は、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキセート(Mtx)を含む培養培地ですべての形質転換体を培養することによって、最初に同定される。一部の実施形態において、野生型DHFRが使用される場合、適切な宿主細胞は、DHFR活性を欠くチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL−9096)である。
【0195】
あるいは、抗体をコードするDNA、野生型DHFRタンパク質をコードするDNAおよび他の選択マーカー(例えばアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH))をコードするDNAで形質転換または同時形質転換された宿主細胞(特に内因性DHFRを含む野生型宿主)は、アミノグリコシド抗生物質(例えば、カナマイシン、ネオマイシンまたはG418)等の選択マーカーに関する選択物質を含む培地中での細胞成長により選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
【0196】
(4)プロモーター成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは、通常、宿主生物により認識されるプロモーターを含み、目的のポリペプチド(例えば、抗体)をコードする核酸に作動可能に連結される。真核生物についてのプロモーター配列は、公知である。例えば、事実上すべての真核生物遺伝子は、転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置するATが豊富な領域を有する。多くの遺伝子の転写の開始から70〜80塩基上流に見られる別の配列は、CNCAAT領域(ここで、Nはいずれのヌクレオチドであってもよい)である。ほとんどの真核生物遺伝子の3’末端には、コード配列の3’末端へのポリAテールの付加のためのシグナルであってよいAATAAA配列が存在する。一定の実施形態において、これらの配列のいずれか、またはすべてを、真核生物発現ベクターに適切に挿入してよい。
【0197】
例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびシミアンウイルス40(SV40)等のウイルスのゲノムから得られるプロモーター、または異種哺乳動物プロモーター(例えばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター)、熱ショックプロモーターによって、哺乳動物宿主細胞中のベクターからの転写が制御されるが、但しそのようなプロモーターは、宿主細胞系に適合性である。
【0198】
SV40ウイルスの初期プロモーターと後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点も含むSV40制限フラグメントとして都合よく得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限フラグメントとして得るのが都合がよい。ウシパピローマウイルスをベクターとして使用する哺乳動物宿主においてDNAを発現するシステムは、米国特許第4,419,446号に開示されている。このシステムの改変は、米国特許第4,601,978号に記載されている。さらに、単純ヘルペスウイルスに由来するチミジンキナーゼプロモーターの制御下にあるマウス細胞におけるヒト
βインターフェロンcDNAの発現を記載するReyesら(Nature 297:598−601(1982))も参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウイルスの末端反復配列を、プロモーターとして使用することができる。
【0199】
(5)エンハンサー要素成分
本発明の抗体をコードするDNAの高等真核生物による転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することによりしばしば高められる。哺乳類遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α‐胎児タンパク質およびインスリン)に由来する多くのエンハンサー配列が現在公知である。しかし、典型的に、真核細胞ウイルスに由来するエンハンサーが、利用されるだろう。例としては、複製起点の後ろ側のSV40エンハンサー(100〜270塩基対)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後ろ側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。さらに、真核プロモーターの活性化のエンハンサー要素を記載するYaniv,Nature 297:17−18(1982)を参照されたい。エンハンサーは、抗体ポリペプチドをコードする配列に対して、5’または3’の位置でベクターにつなぎ合わせてよいが、一般的にはプロモーターに対して5’部位に位置される。
【0200】
(6)転写終結成分
真核宿主細胞に使用される発現ベクターは、転写の終止およびmRNAの安定化のために必要な配列を含んでもよい。そのような配列は、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの、5’および必要に応じて、3’非翻訳領域から一般的に得ることができる。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分においてポリアデニル化フラグメントとして転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026およびそこに開示された発現ベクターを参照されたい。
【0201】
(7)宿主細胞の選択および形質転換
本明細書においてベクター中のDNAをクローニングまたは発現させるための適当な宿主細胞としては、脊椎動物宿主細胞を含むここに記載する高等真核生物細胞が挙げられる。培養物(組織培養物)中の脊椎動物細胞の増殖は、慣用的な手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例としては、SV40により形質転換させたサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(293細胞、または懸濁培養液での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Grahamら,J.Gen Virol.36:59(1977));仔ハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaubら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスのセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76,ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA,ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562,ATCC CCL 51);TRI細胞(Matherら,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒトヘパトーマ系(HepG2)が挙げられる。
【0202】
宿主細胞は、抗体産生のために上記の発現ベクターまたはクローニングベクターにより形質転換され、そしてその祝細胞は、プロモーターを誘導するか、形質転換体を選択するか、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために、必要に応じて改変された従
来の栄養培地で培養される。
【0203】
(8)宿主細胞の培養
本発明の抗体を産生するために使用される宿主細胞は、多様な培地で培養してよい。HamのF10(Sigma)、最小必須培地(MEM;Sigma)、RPMI−1640(Sigma)およびダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Sigma)等の市販の培地は、宿主細胞の培養に適する。さらに、Hamら,Meth.Enz.58:44(1979),Barnesら,Anal.Biochem.102:255(1980),米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号または同第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または米国特許Re.30,985号に記載のいずれかの培地を宿主細胞用の培養培地として用いてよい。これらの培地のいずれも必要に応じてホルモンおよび/または他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリンまたは上皮細胞増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムおよびリン酸塩)、緩衝液(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN(登録商標)薬物)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)、およびグルコースまたは同等のエネルギー供給源を補充してよい。別の他の補充物は、当業者に公知である適当な濃度で含まれてもよい。温度、pH等の培養条件は、発現のために選択された宿主細胞に既に用いられている条件であり、当業者には明らかであろう。
【0204】
(9)抗体の精製
組換え技術を用いる場合、抗体は細胞内に産生されるか、または培地に直接分泌されうる。抗体が細胞内に産生される場合、第1工程として、特定の破片は、宿主細胞または溶解フラグメントのいずれが例えば遠心分離または限外ろ過により除去され得る。抗体が培地に分泌される場合、そのような発現系由来の上清を、まず、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMilliporeのPellicon限界ろ過ユニットを用いて濃縮してよい。PMSF等のプロテアーゼインヒビターを前述の工程のいずれかに含めてタンパク質分解を阻害してもよいし、抗生物質を含めて外来性汚染菌の増殖を妨げてもよい。
【0205】
細胞から調製される抗体は、例えば、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析およびアフィニティークロマトグラフィー(アフィニティークロマトグラフィーは便利な技術である)を用いて精製することができる。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFc領域の種とアイソタイプに依存する。プロテインAは、γ1、γ2またはγ4の重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmarkら,J.Immunol.Methods 62:1−13(1983))。プロテインGはすべてのマウスアイソタイプおよびヒトγ3に関して推薦される(Gussら,EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドを結合するマトリックスは、アガロースであってよいが、他のマトリックスを利用することもできる。制御細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリックスはアガロースにより達成可能である以上に速い流速と短い処理時間を可能とする。抗体がCH3領域を含む場合、Bakerbond ABX(登録商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,NJ)は精製に有用である。イオン交換カラムによる分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカによるクロマトグラフィー、(ポリアスパラギン酸カラム等の)アニオンまたはカチオン交換樹脂によるヘパリンSEPHAROSE(登録商標)クロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS−PAGEおよび硫安沈殿等のタンパク質精製のための他の技術も、回収する抗体に依存して利用することができる。
【0206】
予備の精製工程後に、目的の抗体と夾雑物とを含む混合物を、例えば、約2.5〜4.5の間のpHの溶出緩衝液を用いて、好ましくは低い塩濃度(例えば、約0〜0.25Mの塩)で実施される低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーによる精製にさらに供してよい。
【0207】
一般的に、上記の方法と調和しかつ/または目的の特定の抗体に対して当業者により適切と見なされる、研究、試験および臨床的用途に使用される抗体を調製するための多様な方法は、当該分野でよく確立している。
【0208】
(C.免疫結合体)
免疫結合体または「抗体−薬物結合体」は、癌の処置において細胞毒性因子の局所的な送達のために有用である。Syrigosら、(1999)Anticancer Research 19:605−614;Niculescu−Duvazら、(1997)Adv.Drug Deliv.Rev.26:151−172;米国特許第4,975,278号を参照されたい。免疫結合体は、腫瘍への薬物部分の標的性の送達を可能とするが、結合体化されていない細胞毒性因子の全身投与は、正常細胞ならびに除去しようとする腫瘍細胞に対して許容できないレベルの毒性をもたらすだろう。Baldwinら(1986年3月15日)Lancet pp.603−05;Thorpe(1985)「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」,Monoclonal Antibodies,’84:Biological and Clinical Applications(A.Pincheraら編)pp.475−506を参照されたい。
【0209】
一態様において、免疫結合体は、ここに提供されるようなIL−19、IL−20、IL−22、IL−24、IL22R、IL−20Ra、IL−20RbまたはIL−10R2に結合する抗体と、化学療法剤、増殖抑制因子、毒素(例えば、細菌起源、真菌起源、植物起源または動物起源の酵素的に活性な毒素またはそれらのフラグメント)または放射性同位体(例えば、放射性結合体)等の細胞毒性因子とを含む。
【0210】
そのような免疫結合体の産生に有用な化学療法剤は上述したとおりである。使用することのできる酵素的に活性な毒素またはそれらのフラグメントとしては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデッシン(modeccin)A鎖、アルファ−サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、momordica charantiaインヒビター、クルシン、クロチン、sapaonaria officnalisインヒビター、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセン類が挙げられる。多様な放射性核種は放射性複合化抗体の産生に利用することができる。例えば、
212Bi、
131I、
131In、
90Yおよび
186Reが挙げられる。
【0211】
抗体と細胞毒性因子との結合体は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCl)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6−ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)等の多様な二官能性タンパク
質結合剤を用いて作製してよい。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら,Science,238:1098(1987)に記載されたように調製することができる。炭素−14−標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、ラジオヌクレオチド(radionucleotide)を抗体に結合体化させる例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。
【0212】
抗体と、1つ以上の小分子毒素(例えば、カリチェアミシン(calicheamicin)、メイタンシノイド(maytansinoid)、トリコテン(trichothene)およびCC1065ならびに毒性活性を有するこれら毒素の誘導体)との結合体もここで意図される。
【0213】
(1.メイタンシン(maytansine)およびメイタンシノイド)
一実施形態において、免疫結合体は、抗体を1つ以上のメイタンシノイド分子に結合させてなる。メイタンシノイドは、チュブリン重合を阻害することにより作用する分裂抑制因子である。メイタンシンは、東アフリカ低木Maytenus serrataから始めて単離された(米国特許第3,896,111号)。続いて、一定の微生物が、メイタンシノールやC−3メイタンシノールエステル等のメイタンシノイドを産生することも発見された(米国特許第4,151,042号)。合成メイタンシノールとその誘導体と類似体は、例えば、米国特許第4,137,230号、同第4,248,870号、同第4,256,746号、同第4,260,608号、同第4,265,814号、同第4,294,757号、同第4,307,016号、同第4,308,268号、同第4,308,269号、同第4,309,428号、同第4,313,946号、同第4,315,929号、同第4,317,821号、同第4,322,348号、同第4,331,598号、同第4,361,650号、同第4,364,866号、同第4,424,219号、同第4,450,254号、同第4,362,663号および同第4,371,533号(これらの開示は、参考としてここに明確に援用される)に開示されている。
【0214】
それらの治療指数を改善させる試みにおいて、メイタンシンとメイタンシノイドは、腫瘍細胞の表面上の抗原に結合する抗体に結合体化された。メイタンシノイドを含有する免疫結合体およびそれらの治療的用途は、例えば、米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号および欧州特許EP0 425 235 B1(これらの開示は参考としてここに明確に援用される)に開示されている。Liuら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623(1996))は、DM1と命名されたメイタンシノイドをヒト直腸結腸癌に対するモノクローナル抗体C242に連結させてなる免疫結合体を記述した。結合体は、培養された大腸癌細胞に対して高く細胞毒性があることがわかり、インビボ腫瘍増殖アッセイで抗腫瘍活性を示した。Chariら(Cancer Research 52:127−131(1992))は、ヒト大腸癌細胞株上の抗原に結合するマウス抗体A7、またはHER−2/neu癌遺伝子に結合する別のマウスモノクローナル抗体TA.1に対して、メイタンシノイドがジスルフィドリンカーにより結合している免疫結合体を記載した。1細胞あたり3×10
5個のHER−2表面抗原を発現するヒト乳癌細胞株SK−BR−3を用いてTA.1−メイタンシノイド結合体の細胞毒性をインビトロで調べた。この薬物結合体は、遊離のメイタンシノイド薬物に類似する細胞毒性の程度を達成し、この細胞毒性度は、1抗体分子あたりメイタンシノイド分子の数を増やすことによって高めることができた。A7−メイタンシノイド結合体は、マウスにおいて低い全身細胞毒性を示した。
【0215】
抗体−メイタンシノイド結合体を、抗体またはメイタンシノイド分子のいずれの生物学的活性を顕著に低下させることなく抗体をメイタンシノイド分子に化学連結させることにより調製する。1抗体分子あたりに結合体化させた平均3〜4個のメイタンシノイド分子は、抗体の機能または溶解度に否定的に影響を与えることなく標的細胞の細胞毒性を増強
する効能を示しているが、1抗体あたりの毒素の1分子でさえむき出しの抗体の使用した場合よりも細胞毒性を増強することが期待されよう。メイタンシノイドは、当該分野でよく知られており、公知の技術を用いて合成するか、または自然の材料から単離することができる。適当なメイタンシノイドは、例えば米国特許第5,208,020号または上記の他の特許および非特許文献に開示されている。好ましいメイタンシノイドは、メイタンシノール(maytansinol)および多様なメイタンシノールエステルのように、メイタンシノール分子の芳香環または他の位置で改変されたメイタンシノール類似体である。
【0216】
抗体−メイタンシノイド結合体を産生するために当該分野で公知の多くの連結基、例えば、米国特許第5,208,020号または欧州特許0 425 235Bl号およびChariら(Cancer Research 52:127−131(1992))に開示されたものが存在する。連結基としては、上記の特許に開示されたジスルフィド基、チオエーテル基、酸に不安定な基、光に対して不安定な基、ペプチダーゼに対して不安定な基またはエステラーゼに対して不安定な基が挙げられるが、ジスルフィド基およびチオエーテル基が好ましい。
【0217】
抗体とメイタンシノイドとの結合体は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCl)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6−ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)等の多様な二官能性タンパク質結合剤を用いて作製され得る。N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(Carlssonら,Biochem.J.173:723−737[1978])およびN−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)を含む一定のカップリング剤は、ジスルフィド結合を提供する。
【0218】
リンカーは、結合の型に依存して、多様な位置でメイタンシノイド分子に結合させてよい。例えば、エステル結合は、従来のカップリング技術を用いてヒドロキシル基と反応させることで形成してよい。この反応は、ヒドロキシル基を有するC−3位、ヒドロキシメチルで改変されたC−14位、ヒドロキシル基で改変されたC−15位およびヒドロキシル基を有するC−20位で起こるだろう。好ましい実施形態において、結合は、メイタンシノイドまたはメイタンシノイド類似体のC−3位に形成される。
【0219】
(2.アウリスタチン(auristatin)類およびドラスタチン(dolastatin)類)
一部の実施形態において、免疫結合体は、抗体を、ドラスタチンまたはドラスタチンペプチドの類似体または誘導体(例えばアウリスタチン)に結合させてなる(米国特許第5635483号、米国特許第5780588号)。ドラスタチンおよびアウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解、ならびに核および細胞の分裂に干渉する(Woykeら(2001)Antimicrob.Agents and Chemother.45(12):3580−3584)し、そして抗癌活性(米国特許第5663149号)および抗真菌活性(Pettitら(1998)Antimicrob.Agents Chemother.42:2961−2965)を有することが示されている。ドラスタチン薬物部分またはアウリスタチン薬物部分は、ペプチド薬物部分のN(アミノ)末端ま
たはC(カルボキシル)末端を経て抗体に結合させてよい(WO02/088172)。
【0220】
例示的なアウリスタチンの実施形態は、「Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands」,米国特許出願公告第2005−0238649Al号(これらの開示は、参考としてその全体がここに明確に援用される)に開示されるように、N末端結合モノメチルアウリスタチン薬物部分であるDEとDFを含む。
【0221】
典型的には、ペプチドベースの薬物部分は、2つ以上のアミノ酸および/またはペプチドフラグメントの間にペプチド結合を形成することにより調製することができる。そのようなペプチド結合は、例えば、液相合成法にしたがって調製することができる(ペプチド化学の分野で周知であるE.SchroederおよびK.Luebke,「The Peptides」,第1巻,pp 76−136,1965,Academic Pressを参照)。アウリスタチン/ドラスタチン薬物部分は、US5635483;US5780588;Pettitら(1989)J.Am.Chem.Soc.111:5463−5465;Pettitら(1998)Anti−Cancer Drug Design 13:243−277;Pettit,G.R.ら、Synthesis,1996,719−725;およびPettitら(1996)J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 5:859−863の方法にしたがって調製してよい。さらに、Doronina(2003)Nat.Biotechnol.21(7):778−784;米国特許出願公告第2005−0238649A1号(これらの開示は参考としてその全体がここに明確に援用される)(リンカー、およびリンカーに結合させたMMAEやMMAF等のモノメチルバリン化合物の調製方法を開示している)を参照されたい。
【0222】
(3.カリチュアミシン)
目的とする別の免疫結合体は、抗体を1つ以上のカリチュアミシン分子に結合させてなる。抗生物質のカリチュアミシンファミリーは、ピコモル以下の濃度で二本鎖DNA切断物を産生することができる。カリチュアミシンファミリーの結合体の調製に関しては、米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号および同第5,877,296号(すべてAmerican Cyanamid Companyの特許)を参照されたい。使用してよいカリチュアミシンの構造的類似体として、γ
1I、α
2I、α
3I,N−アセチル−γ
1I、PSAGおよびθ
I1が挙げられるが、これらに限定されない(Hinmanら,Cancer Research 53:3336−3342(1993),Lodeら,Cancer
Research 58:2925−2928(1998)およびAmerican Cyanamidの上記米国特許)。抗体を結合体化させることのできる別の抗腫瘍薬物は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリチュアミシンおよびQFAの両方は、細胞内作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。したがって、抗体媒介内部移行によるこれらの物質の細胞取り込みは、それらの細胞毒性効果を大きく増強する。
【0223】
(4.他の細胞毒性因子)
抗体に結合体化させることのできる他の抗腫瘍薬剤としては、BCNU、ストレプトゾイシン(streptozoicin)、ビンクリスチンおよび5−フルオロウラシル(米国特許第5,053,394号および米国特許第5,770,710号に記載のLL−E33288複合体としてまとめて知られる物質のファミリー)ならびにエスペラミシン(esperamicin)類(米国特許第5,877,296号)が挙げられる。
【0224】
使用することのできる酵素的に活性な毒素およびそのフラグメントとしては、ジフテリ
アA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、α−サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、momordica charantiaインヒビター、クルシン、クロチン、sapaonaria officnalisインヒビター、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセン類が挙げられる。例えば、1993年10月28日公開のWO93/21232号を参照されたい。
【0225】
別の態様において、免疫結合体は、抗体と、核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼまたはデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)等のDNAエンドヌクレアーゼ)とを含んでよい。
【0226】
腫瘍の選択的破壊のために、免疫結合体は、抗FGFR2抗体と放射性の高い原子とを含んでよい。多様な放射性同位体が、放射性結合体化抗FGFR2抗体の産生に利用することができる。例としては、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212およびLuの放射性同位体が挙げられる。結合体を診断に用いる場合、それは、シンチグラフ検査用の放射性原子、例えば、tc
99mまたはI
123、または核磁気共鳴(NMR)法(磁気共鳴画像法(MRI)としても知られる)用のスピン標識、例えばここでもヨウ素−123、またはヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン、または鉄を含んでよい。
【0227】
放射標識または他の標識は、公知の方法により取り込んでよい。例えば、ペプチドを生合成してもよいし、水素の代わりに例えばフッ素−19を含む適当なアミノ酸前駆体を用いる化学的アミノ酸合成により合成してよい。tc
99mまたはI
123、Re
186、Re
188およびIn
111等の標識は、システイン残基を経てペプチドに結合させることができる。イットリウム−90は、リジン残基を経て結合させることができる。IODOGEN法(Frakerら(1978)Biochem.Biophys.Res.Commun.80:49−57)を用いてヨウ素−123を取り込むことができる。「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal,CRC Press 1989)は、他の方法を詳細に説明する。
【0228】
(D.アンタゴニストおよびアゴニスト)
IL−22のアンタゴニストも提供される。そのようなアンタゴニストは、IL−22に直接作用するもの(例えば、抗IL−22抗体)およびIL−22活性に間接的に影響するもの(例えば、抗IL−22R抗体)を包含する。そのようなアンタゴニストは、例えば、1)炎症性障害および自己免疫障害の処置、ならびに2)IL−23シグナル伝達またはIL−22シグナル伝達に有用である。特定の一実施形態において、IL−22またはIL−22Rのアンタゴニストを含む組成物は、哺乳類の乾癬組織の量を低減するのに有用である。別の特定の実施形態において、IL−22またはIL−22Rのアンタゴニストを含む組成物は、腫瘍細胞増殖を、部分的または完全に阻害するのに有用である。
【0229】
一態様において、IL−22のアンタゴニストは、抗IL−22抗体または抗IL−22R抗体である。一定の実施形態において、抗IL−22抗体は、IL−22とそのレセプターとの相互作用を完全または部分的に遮断する遮断抗体である。一定の実施形態において、抗IL−22R抗体は、IL−22RとIL−22との相互作用を完全または部分的に遮断する遮断抗体である。一定の実施形態において、抗IL−22R抗体は、IL−22Rの細胞外リガンド結合領域に結合する。例えば、抗IL−22R抗体は、アミノ酸
約18〜228に由来する配列番号3に見られるヒトIL−22Rの細胞外リガンド結合領域に結合するだろう。
【0230】
別の態様において、IL−22のアンタゴニストは、IL−22またはIL−22Rに結合するオリゴペプチドである。一実施形態において、オリゴペプチドは、IL−22Rの細胞外リガンド結合領域に結合する。オリゴペプチドは、公知のオリゴペプチド合成法を用いて化学合成しても、組換え技術を用いて調製し、そして精製してもよい。そのようなオリゴペプチドは長さが、通常少なくとも約5アミノ酸であるか、あるいは長さが少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100アミノ酸である。そのようなオリゴペプチドは、過度の実験なしに、周知の技術を用いて同定してよい。この点において、ポリペプチド標的に特異的に結合することができるオリゴペプチドに関して、オリゴペプチドライブラリーをスクリーニングするための技術は、当該分野で周知であることに注意されたい(例えば、米国特許第5,556,762号、同第5,750,373号、同第4,708,871号、同第4,833,092号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,571,689号、同第5,663,143号;PCT公開WO84/03506およびWO84/03564;Geysenら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81:3998−4002(1984);Geysenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:178−182(1985);Geysenら,Synthetic Peptides as Antigens,130−149(1986);Geysenら,J.Immunol.Meth.,102:259−274(1987);Schoofsら,J.Immunol.,140:611−616(1988),Cwirla,S.E.ら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6378;Lowman,H.B.ら(1991)Biochemistry,30:10832;Clackson,T.ら(1991)Nature,352:624;Marks,J.D.ら(1991),J.Mol.Biol.,222:581;Kang,A.S.ら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8363およびSmith,G.P.(1991)Current Opin.Biotechnol.,2:668を参照)。一定の実施形態において、オリゴペプチドを、細胞毒性因子に結合してよい。
【0231】
さらに別の態様において、IL−22のアンタゴニストは、ここに記載されたようなオリゴペプチドまたは抗体以外の、IL−22またはIL−22Rに結合する有機分子である。有機分子は、例えば、小分子であってよい。一実施形態において、有機分子は、IL−22Rの細胞外領域に結合する。IL−22またはIL−22Rに結合する有機分子は、公知の方法を用いて同定し、化学合成してよい(例えば、PCT公開第WO00/00823およびWO00/39585を参照)。そのような有機分子は、通常、大きさが約2000ダルトン未満、もしくは大きさが約1500、750、500、250または200ダルトン未満であり、IL−22またはIL−22Rに結合することができるそのような有機分子は、過度の実験なしに、周知の技術を用いて同定できる。この点において、ポリペプチド標的に結合することのできる分子に関して、有機分子ライブラリーをスクリーニングするための技術は、当該分野で周知であることに注意されたい(例えば、PCT公開第WO00/00823およびWO00/39585を参照)。一定の実施形態において、有機分子を細胞毒性因子に結合体化させてよい。
【0232】
さらに別の態様において、IL−22アンタゴニストは、可溶性IL−22レセプター、例えば、膜に結合していないIL−22Rの形態にある。そのような可溶型のIL−22Rは、IL−22への結合に関して膜結合IL−22Rと競合するだろう。一定の実施形態において、可溶型のIL−22Rは、IL−22Rの細胞外領域のすべてまたはリガンド結合部分、例えば、配列番号3のアミノ酸18〜228を含むポリペプチドのすべてまたはリガンド結合部分を含んでよい。一定の実施形態において、可溶型のIL−22Rは、膜貫通領域を欠く。例えば、可溶型のヒトIL−22Rは、配列番号3の約229〜251アミノ酸に由来する膜貫通領域のすべてまたは実質的な部分を欠いてよい。
【0233】
IL−22の天然に存在する可溶性レセプターが報告されている。Dumoutier
L.ら,「Cloning and characterization of IL−22 binding protein,a natural antagonist
of IL−10−related T cell−derived inducible factor/IL−22」,J.Immunol.166:7090−7095(2001);およびXu W.ら,「A soluble class II cytokine receptor,IL−22RA2,is a naturally occurring IL−22 antagonist」,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98:9511−9516(2001)を参照されたい。該レセプターは、当該分野では「IL−22BP」または「IL−22RA2」などいろいろの名前で呼ばれている。ヒトIL−22BPの配列を
図4に示す。ここで使用される「IL−22BP」または「IL−22結合タンパク質」は、他に特に断らなければ、霊長類(例えば、ヒトおよびサル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)等の哺乳動物を含む脊椎動物供給源に由来する天然のIL−22BPをいう。
【0234】
さらに別の態様において、IL−22のアンタゴニストは、IL−22遺伝子またはIL−22R遺伝子の発現を減少させるアンチセンス核酸(すなわち、IL−22遺伝子またはIL−22R遺伝子の転写および/あるいはIL−22 mRNAまたはIL−22R mRNAの翻訳を減少させる核酸)である。一定の実施形態において、アンチセンス核酸は、IL−22またはIL−22Rをコードする核酸(DNAまたはRNA)に結合する。一定の実施形態において、アンチセンス核酸は、長さが約10〜30ヌクレオチド(これらの終点間のすべてのポイントを含む)である。一定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、改変された糖ホスホジエステル骨格(またはホスホロチオエート結合およびWO91/06629に記載されているような結合等の他の糖結合)を含み、そのような改変された糖ホスホジエステル骨格は、内因性ヌクレアーゼに耐性がある。一実施形態において、アンチセンス核酸は、IL−22またはIL−22RをコードするmRNAの分解および/あるいは転写または翻訳の低減をもたらすオリゴデオキシリボヌクレオチドである。一定の実施形態において、アンチセンス核酸は、標的核酸の発現を「RNA干渉」(「RNAi」)により低減するRNAである。RNAiの総説については、例えば、Novinaら(2004)Nature 430:161−164を参照されたい。そのようなRNAは、例えば、低分子干渉RNA(siRNA)およびミクロRNAから得られる。siRNAは、長さが約18〜26ヌクレオチドの二本鎖オリゴリボヌクレオチドとして合成してよい(同文献)。
【0235】
さらに別の態様において、IL−22のアゴニストが提供される。例示的なアゴニストとしては、天然IL−22または天然IL−22R;天然ポリペプチドの少なくとも一つの活性を保持するIL−22またはIL−22Rのフラグメント、改変体または改変型;IL−22Rに結合し、これを活性化することのできる薬剤;およびIL−22またはIL−22Rの過剰発現あるいはIL−22またはIL−22Rをコードする核酸の過剰発現を誘導する因子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0236】
(E.薬学的処方物)
本発明は薬学的処方物を提供する。一実施形態において、薬学的処方物は、1)活性因子、例えば、任意の上に記載されるポリペプチド、抗体、アゴニストまたはアンタゴニスト、および2)薬学的に受容可能なキャリアを含む。さらなる実施形態において、薬学的処方物は、さらに少なくとも1つのさらなる治療剤を含む。
【0237】
薬学的処方物は、保存のために、所望の純度を有する因子を、任意の薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版,Osol,A.編[1980])に、凍結乾燥処方物または水溶液の形態で混合することにより調製される。受容可能なキャリア、賦形剤または安定剤は、使用される投薬量および濃度ではレシピエントに非毒性であり、薬学的処方物は、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノールアルコール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖類、二糖類および他の炭水化物;キレート剤(例えばEDTA);糖(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール);塩形成対オン(例えば、ナトリウム);金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);および/または非イオン性界面活性剤(例えば、TWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG))を含む。
【0238】
さらに、リポフェクションまたはリポソームは、薬剤を細胞に送達するために用いることができる。薬剤が抗体フラグメントの場合、標的タンパク質に特異的に結合する最小の阻害フラグメントが、好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子を設計することができる。そのようなペプチドは、化学的に合成でき、そして/または組換えDNA技術により産生することができる(例えば、Marascoら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,7889−7893[1993]を参照)。ここで開示される抗体は、免疫リポソームとして処方してもよい。抗体を含むリポソームは、当該分野で公知の方法、例えば、Epsteinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688(1985);Hwangら,Proc.Natl Acad.Sci.USA,77:4030(1980);ならびに米国特許第4,485,045号および米国特許第4,544,545号に記載の方法により調製する。上昇した循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEGで誘導体化したホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法により産生することができる。リポソームを、定められた細孔サイズのフィルターで押し出すことにより所望の直径を有するリポソームを得る。本発明の抗体のFab’フラグメントは、ジスルフィド交換反応により、Martinら(J.Biol.Chem.,257:286−288(1982))に記載されるようにリポソームに結合体化させることができる。化学療法剤(ドキソルビシン等)は、必要に応じて、リポソーム中に含有させる。Gabizonら,J.National Cancer Inst.,81(19):1484(1989)を参照されたい。
【0239】
コロイド薬物送達系(colloidal drug delivery system)(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマイクロエマルジョンにおいて、例えば、コアセルベーション技術、または界面重合により調製されたマイクロカプセル(例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)に、薬剤を封入してもよい。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0240】
薬剤の徐放性調製物を調製してよい。徐放性調製物の適切な例としては、薬剤を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、該マトリックスは、造形品の形態(例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態)にある。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(例えば、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注射可能なマイクロスフェア))およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸等のポリマーは、100日間を超えて分子の放出を可能とする一方で、一定のハイドロゲルは、タンパク質をそれよりも短い時間放出する。カプセル化抗体は、身体において長時間にわたって留まる場合、それらは、37℃での水分への曝露の結果として変質または結合して、生物学的活性の損失および免疫原性の起こりうる変化をもたらすだろう。安定化のための合理的なストラテジーは、関与する機構に依存して考案できる。例えば、凝集機構がチオール−ジスルフィド交換による分子間S−S結合形成であることが見出される場合、安定化は、スルフヒドリル残基を改変し、酸性溶液から凍結乾燥し、含水量を制御し、適当な添加剤を使用し、特定のポリマーマトリックス組成物を開発することにより達成されるだろう。
【0241】
ここでの薬学的処方物は、処置される特定の徴候のために必要に応じて1種より多くの活性化合物を含んでもよい。例えば、一態様において、1種より多くの活性化合物を含む薬学的処方物は、1)IL−22の少なくとも1つのアンタゴニスト(例えば、IL−22に結合する抗体および/またはIL−22Rに結合する抗体);および2)IL−19、IL−20、IL−24、IL20Ra、IL−20RbまたはIL−10R2(ここで、任意の数の2)で挙げられた抗体はいかなる組合せで選択してよい)に結合する少なくとも1つの抗体を含む。別の態様において、薬学的処方物は、補完的な活性を有する2種以上の活性化合物を含む。例えば、一態様において、薬学的処方物は、1)IL−22の少なくとも1つのアンタゴニスト(例えば、IL−22に結合する抗体および/またはIL−22Rに結合する抗体);および2)TNF−αまたはIL−12のアンタゴニストを含んでよい。さらに別の態様において、2種以上の活性化合物を含む薬学的処方物は細胞毒性因子または増殖抑制因子を含んでよい。
【0242】
(F.処置の方法)
任意の上記の組成物または薬学的処方物を用いる治療方法が、提供される。そのような方法は、他に指示がない限り、インビトロ治療方法、エキソビボ治療方法およびインビボ治療方法を含む。多様な態様において、IL−23媒介シグナル伝達経路を刺激または阻害する方法が、提供される。Th
IL−17細胞機能を刺激または阻害する方法が、提供される。炎症性障害および/または自己免疫障害を処置する方法も、提供される。IL−23シグナル伝達またはIL−22シグナル伝達に関連する疾患を処置する方法が、さらに提供される。Th
IL−17媒介障害を処置する方法も、提供される。本発明のこれらの態様や他の態様を、以下に提供する。
【0243】
一態様において、生物学的系においてIL−23媒介シグナル伝達経路を刺激する方法が提供され、本方法は、IL−22アゴニストを生物学的系に提供することを包含する。生物学的系としては、例えば、インビトロ細胞培養系中、またはインビボでの生物中の哺乳動物細胞を含む。乾癬のモデルとなる例示的な生物学的系が実施例に提供され、再生ヒト表皮(RHE)(実施例14)または動物モデル(実施例16)を含む。一実施例において、IL−22アゴニストは、IL−22である。別の態様において、生物学的系においてIL−23媒介シグナル伝達経路を阻害する方法が提供され、本方法は、IL−22アンタゴニストを生物学的系に提供することからなる。一実施形態において、IL−22のアンタゴニストは、抗体(例えば、中和抗IL−22抗体および/または中和抗IL−22R抗体)である。
【0244】
別の態様において、Th
IL−17細胞融合を刺激する方法が提供され、本方法は、Th
IL−17細胞をIL−22アゴニストに曝すことを包含する。一実施形態において、IL−22はIL−22である。別の態様において、Th
IL−17細胞機能を阻害する方法が提供され、本方法は、Th
IL−17細胞をIL−22アンタゴニストに曝すことを包含する。一実施形態において、IL−22アンタゴニストは抗体、例えば、中和抗IL−22抗体および/または中和抗IL−22R抗体である。例示的Th
IL−17細胞機能としては、細胞性免疫(遅延型過敏)の刺激;骨髄細胞等の先天性免疫細胞(例えば、単球および好中球)の免疫部位への補充;および免疫細胞の組織への侵入の刺激が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、Th
IL−17細胞機能はIL−23により媒介される。
【0245】
さらに別の態様において、炎症を処置する方法が提供され、本方法は、そのような処置を必要とする哺乳動物に、IL−22のアンタゴニストを含む有効量の薬学的処方物を投与することを包含する。一実施形態において、IL−22のアンタゴニストは抗体、例えば、中和抗IL−22抗体および/または中和抗IL−22R抗体である。炎症としては、自己免疫炎症(自己免疫障害に関連する炎症)、慢性炎症、皮膚の炎症、関節炎(関節リウマチに関連する炎症等)および全身炎症反応が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、炎症はIL−23により媒介される。
【0246】
さらに別の態様において、自己免疫障害を処置する方法が提供され、本方法は、そのような処置を必要とする哺乳動物に、IL−22のアンタゴニストを含む有効量の薬学的処方物を投与することを包含する。一実施形態において、IL−22のアンタゴニストは抗体、例えば、中和抗IL−22抗体および/または中和抗IL−22R抗体である。自己免疫障害としては、結合組織病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、炎症性関節炎(例えば、関節リウマチ)、自己免疫肺炎症、ギランバレー症候群、自己免疫甲状腺炎、インスリン依存性糖尿病、ブドウ膜炎、重症筋無力症、移植片対宿主病、自己免疫炎症性眼疾患、乾癬、自己免疫に関連する関節炎(例えば、関節リウマチ)、脳の自己免疫炎症、および炎症性腸疾患が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、自己免疫障害はIL−23媒介自己免疫障害である。
【0247】
特定の態様において、乾癬および/または乾癬症状により特徴付けられる疾患を処置する方法が提供される。乾癬は、免疫系のT細胞が皮膚のタンパク質を認識し、タンパク質が見つかる領域を攻撃し、新しい皮膚細胞の急激すぎる成長と、有痛性の上昇したうろこ状の病変を引き起こす自己免疫病である。これらの病変は、ケラチノサイトの過剰増殖と、乾癬性病変の表皮における活性化T細胞の蓄積とにより特徴付けられる。疾患の初期の分子的原因は知られていないが、遺伝連鎖は少なくとも7つの乾癬感受性遺伝子座に位置づけられる(6p21.3上のPsor1、17q上のPsor2、4q上のPsor3、1 cent−q21上のPsor4、3q21上のPsor5、19pl3上のPs
or6および1p上のPsor7)。これらの遺伝子座の一部は、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎および炎症性腸疾患(IBD)等の他の自己免疫/炎症性障害に関連する。乾癬の処置の現在の方法はIL−12またはTNF−αアンタゴニストの投与をともなう。例えば、Nickoloffら(2004)J.Clin.Invest.113:1664−1675;Bowcockら(2005)Nat.Rev.Immunol.5:699−711;Kauffmanら(2004)J.Invest.Dermatol.123:1037−1044を参照されたい。しかし、これらに提供されるデータは、明確なIL−23/IL−22シグナル伝達経路を乾癬の発病に結びつける。したがって、このシグナル伝達経路を調節する治療は、乾癬処置の代替法を提供するか、または乾癬処置の別のアプローチを補うだろう。
【0248】
一実施形態において、乾癬を処置する方法は、IL−22アンタゴニストを含む有効量の薬学的処方物を患者に投与することを包含する。一実施形態において、IL−22のアンタゴニストは、抗体、例えば、中和抗IL−22抗体および/または中和抗IL−22R抗体である。多様な実施形態において、本方法は、さらに、(同一の薬学的処方物または別個の薬学的処方物中の)少なくとも1つのさらなる治療剤を投与することからなる。そのような一実施形態において、さらなる治療剤は、IL−19、IL−20およびIL−24から選択されるサイトカインの少なくとも1つのアンタゴニストである。そのようなアンタゴニストとしては、IL−19、IL−20、IL−24、IL−20Ra、IL−20RbまたはIL−10R2に結合する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。かなり多数のそのような抗体はどの組合せで選択してもよい。別の実施形態において、さらなる治療剤は乾癬の処置に有効であることが公知である薬剤である。幾つかのそのような治療剤は、例えば、Nickoloffら(2004)J.Clin.Invest.113:1664−1675;Bowcockら(2005)Nat.Rev.Immunol.5:699−711;およびKauffmanら(2004)J.Invest.Dermatol.123:1037−1044に記載されている。そのような薬剤としては、T細胞を標的とする治療剤、例えば、エファリツマブおよび/またはアレファセプト;IL−12のアンタゴニスト、例えば、IL−12またはそのレセプターに結合する遮断抗体;およびTNF−αのアンタゴニスト、例えば、TNF−αまたはそのレセプターに結合する遮断抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0249】
さらに別の態様において、腫瘍進行を阻害する方法が提供され、本方法は、IL−22アンタゴニストを含む有効量の薬学的処方物を患者に投与することを包含する。一実施形態において、IL−22のアンタゴニストは、抗体、例えば、中和抗IL−22抗体および/または中和抗IL−22R抗体である。一実施形態において、腫瘍進行はIL−23媒介である。
【0250】
本発明の組成物(例えば、ポリペプチド、抗体、アンタゴニスト、アゴニストおよび前記のいずれかを含む薬学的処方物)を哺乳類、好ましくはヒトに、公知の方法に従って(例えば、ボーラスとしての静脈内投与により、または一定期間にわたる連続注入により、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、経口、局所的または吸入(鼻腔内、肺内)経路によって投与される。ポリペプチドおよび抗体の静脈内または吸入投与が望ましい。
【0251】
一定の実施形態において、抗癌剤の投与は本発明の組成物の投与に組み合わせてよい。例えば、本発明の組成物により処置しようとする患者は抗癌剤(化学療法剤)または放射線療法を受けてもよい。そのような化学療法剤の調製と投薬スケジュールは製造業者の説明書によるか、または熟練した専門家により経験的な決定にしたがって使用してよい。調製とそのような化学療法の投薬スケジュールはChemotherapy Service編,M.C.Perry,Williams&Wilkins,Baltimore,
MD(1992)にも説明されている。化学療法剤の投与は、組成物の投与前でも投与後でもよいし、組成物の投与と同時でもよい。さらに、タモキシフェン等の抗エストロゲン化合物やオナプリストン等の抗プロゲストロン(EP616812を参照)をそのような分子について公知である投薬量で投与してよい。
【0252】
他の免疫疾患関連または腫瘍関連抗原に対する抗体、例えば、CD20、CD11a、CD18、ErbB2、EGFR、ErbB3、ErbB4または血管内皮増殖因子(VEGF)に結合する抗体を投与することも望ましいだろう。あるいは、またはさらに、ここに開示された同一または2つ以上の異なる抗原に結合する2つ以上の抗体を患者に投与してよい。一定の実施形態において、1つ以上のサイトカインを患者に投与することも有利であろう。一定の実施形態において、本発明の組成物は成長阻害剤とともに投与される。例えば、成長阻害剤は、組成物の投与前、投与後、または同時に投与してよい。成長阻害剤の適する投薬量は現在使用されている量であり、成長阻害剤と組成物の組合せ作用(相乗作用)のために低減してもよい。
【0253】
免疫疾患の処置または重症度の低減するために、本発明の組成物の適当な投薬量は、上記のように、処置すべき疾患の型、薬剤が治療目的または予防目的のために投与されるかどうかにかかわらず疾患の重症度および過程、薬歴、患者の病歴および化合物に対する応答、および主治医の自由裁量に基づくだろう。化合物は患者に対して一度、または一連の処置にわたって適切に投与される。
【0254】
例えば、疾患の型と重症度に基づいて、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば、0.1〜20mg/kg)のポリペプチドまたは抗体は、例えば、一回以上の別々の投与によるか、または連続的な注入によるかにかかわらず、患者に投与される最初の候補投薬量である。典型的な1日投薬量は、上記の要因に依存して、約1μg/kg〜100mg/kgまたはそれ以上の範囲にあってよい。数日以上にわたる繰返し投与のために、状態に依存して、処置は病徴の所望の抑制が起こるまで持続される。しかし、他の投与レジメンが有用なこともある。この治療の進展は、従来の技術およびアッセイにより容易にモニターされる。
【0255】
(G.診断方法と検出方法)
一態様において、哺乳動物における乾癬の診断方法が提供され、本方法は、IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルを、哺乳類から得られた組織細胞の試料中において検出することからなり、コントロール試料(例えば、同じ細胞型の公知である正常組織細胞の試料)と比較して試験試料の高い発現レベルは、試験試料が得られた哺乳類における乾癬の存在を示す。検出は定性的でも定量的でもよい。一実施形態において、試験試料は血液または血清を含む。一実施形態において、IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルの検出は、(a)抗IL−22抗体または抗IL−22R抗体を、哺乳類から得られた試料試験に接触させ、(b)抗体と、試験試料中のIL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドとの複合体の形成を検出することを包含する。抗体は、検出可能な標識に連結してよい。複合体の形成は、例えば、光学顕微鏡、フローサイトメトリー、または当該分野で公知の他の技術によりモニターすることができる。試験試料は乾癬を有することが疑われる個体から得てよい。
【0256】
一実施形態において、IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルの検出は、該遺伝子のmRNA転写レベルを検出することを包含する。mRNA転写のレベルは当業者に公知の多様な方法により定量的または定性的に検出してよい。mRNA転写のレベルは直接的に検出してもよいし、mRNA転写から生じたcDNAのレベルを検出することにより間接的に検出してもよい。mRNA転写のレ
ベルを検出する例示的方法としては、リアルタイム定量的RT−PCRおよびハイブリダイゼーションに基づくアッセイ(マイクロアレイに基づくアッセイおよびフィルターに基づくアッセイ、例えばノーザンブロット)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0257】
別の実施形態において、本発明は、抗IL−22抗体または抗IL−22R抗体を適当なパッケージングに含む診断キットに関する。キットは、好ましくは、IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドを検出するために抗体を用いるための説明書を含む。一態様において、診断キットは乾癬用の診断キットである。
【0258】
(H.アッセイ)
(1.細胞に基づくアッセイと動物モデル)
細胞に基づくアッセイおよび免疫疾患の動物モデルは、本発明の一定の実施形態を実施するのに有用である。以下の実施例に提供される一定の細胞株アッセイが、例えば、IL−22アンタゴニストまたはIL−22アゴニストの効力を試験するために有用である。
【0259】
インビボ動物モデルは、本発明の一定の実施形態を実施するのに有用である。例示的動物モデルは下記の実施例にも記載されている。そのようなモデルのインビボ性質は、ヒト患者での応答の予測を可能とする。免疫関連疾患の動物モデルとしては、非組換え動物および組換え(トランスジェニック)動物の両方が挙げられる。非組換え動物モデルとしては、例えば、げっ歯類、例えば、マウスモデルが挙げられる。そのようなモデルは、標準的な技術、例えば、皮下注射、尾静脈注射、脾臓移植、腹腔内移植、腎被膜下での移植等により、細胞を同種マウスに導入することにより産生することができる。
【0260】
移植片対宿主病モデルは、MHC抗原および小移植抗原に対するT細胞の反応性を評価する手段を提供する。免疫担当細胞を免疫抑制患者または免疫寛容患者に移植する場合に移植片対宿主病が生じる。ドナー細胞は宿主抗原を認識し、応答する。この応答は、生命を危うくする重篤な炎症から軽症の下痢および体重減少にわたりうる。移植片対宿主病を評価する適切な手順は、上記のCurrent Protocols in Immunology、unit 4.3に記載されている。
【0261】
皮膚同種移植の拒絶反応の動物モデルは、インビボ組織破壊を媒介するT細胞の能力および移植片拒絶におけるそれらの役割の尺度を調べる手段である。最も一般的で、認められたモデルはマウスの尾皮膚移植片を使用する。皮膚同種移植拒絶反応は、抗体によってではなく、T細胞、ヘルパーT細胞およびキラー−エフェクターT細胞により媒介されることが繰返し実験により示された(Auchincloss,H.Jr.およびSachs,D.H.,Fundamental Immunology,第2版,W.E.Paul編,Raven Press,NY,1989,889−992)。適当な手順は、上記のCurrent Protocols in Immunology、unit 4.4に詳細に説明されている。本発明の化合物を調べるために使用することのできる他の移植片拒絶モデルは、Tanabe,M.ら,Transplantation(1994)58:23およびTinubu,S.A.et al,J.Immunol.(1994)4330−4338に記載されている同種心臓移植モデルである。
【0262】
接触過敏症は、細胞媒介免疫機能(遅延型過敏)の単純なインビボアッセイである。この手順において、外因性ハプテンに対する皮膚曝露は遅延型過敏反応を起し、これを測定し、定量する。接触感受性は、初期感作相とそれに続く誘導相をともなう。誘導相は、Tリンパ球が以前に接触した抗原に遭遇する場合に起こる。膨潤と炎症が起こるのでヒトのアレルギー性接触皮膚炎の優れたモデルとなる。適当な手順は、Current Protocols in Immunology編.J.E.Cologan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.ShevachおよびW.St
rober,John Wiley & Sons,Inc.,1994,unit 4.2に詳細に記載されている。さらに、Grabbe,S.およびSchwarz,T,Immun.Today 19(1):37−44(1998)を参照されたい。
【0263】
さらに、本発明の組成物は、乾癬様疾患の動物モデルにより調べることができる。例えば、本発明の組成物は、マウスが乾癬に似た病理組織学的皮膚病変を示すSchon,M.P.ら(Nat.Med.(1997)3:183)により記載されたscid/scidマウスモデルで調べることができる。別のモデルは、Nickoloff,B.J.ら,Am.J.Path.(1995)146:580により記載されたように調製されたヒト皮膚/scidマウスキメラである。別の適当なモデルは、ヒト前乾癬皮膚がAGR129マウスにグラフティングされ、乾癬皮膚病変の発達を導くBoymanら,J Exp Med.(2004)199(5):731−6に記載されている。
【0264】
ここで同定されたポリペプチドをコードする内因性遺伝子と、遺伝子が改変されたDNA分子との相同的組換えの結果として、該ポリペプチドをコードする欠損/改変遺伝子を有するノックアウト動物を産生することができる。例えば、特定のポリペプチドをコードするcDNAを用いて、確立した技術にしたがって、ポリペプチドをコードするゲノムDNAをクローニングすることができる。特定のポリペプチドをコードするゲノムDNAの一部は、欠失させてもよいし、組込みをモニターするために用いることのできる選択マーカーをコードする遺伝子等の別の遺伝子によって置換してもよい。典型的には、数キロベースの(3’末端と5’末端の両方の)不変のフランキングDNAがベクターに含められる[例えば、相同的組換えベクターの説明に関して、ThomasおよびCapecchi,Cell,51:503(1987)を参照されたい]。ベクターは、(例えば、電気穿孔法により)胚性幹細胞に導入し、導入されたDNAが内因性DNAと相同的に組換えられた細胞が選択される[例えば、Liら,Cell,69:915(1992)を参照]。次に、選択された細胞を動物(例えば、マウスまたはラット)の胚盤胞に注入して、凝集キメラを形成する[例えば、Bradley,Teratocarcinomas
and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach,E.J.Robertson編(IRL,Oxford,1987),pp.113−152を参照]。次に、キメラ胚を適当な偽妊娠のメス里親動物(foster animal)に移植し、胚を経過させて「ノックアウト」動物を産生する。相同的に組換えられたDNAをそれらの生殖細胞に持つ子孫は標準的な技術により同定することができ、これを用いて、動物のすべての細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を作り出すことができる。ノックアウト動物は、例えば、一定の病的状態に対する防御能力およびポリペプチドの非存在による病的状態の発達について特徴付けることができる。
【0265】
(2.薬物候補物質のスクリーニングアッセイ)
薬物候補物質のスクリーニングアッセイは、ここで同定されたポリペプチドまたはその生物学的に活性なフラグメントに結合する化合物、またはそれと複合体を形成する化合物、そうでなければポリペプチドと他の細胞タンパク質との相互作用を妨害する化合物を同定するように設計する。そのようなスクリーニングアッセイは、化学ライブラリーの高処理スクリーニングに適合するアッセイを含み、小分子薬物候補物を同定するために特に適当なものとされている。意図される小分子としては、ペプチド、好ましくは可溶性ペプチド、(ポリ)ペプチド−免疫グロブリン融合体および特に、抗体を含む合成の有機/無機化合物が挙げられ、その抗体としては、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体および抗体フラグメント、一本鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、ならびにそのような抗体あるいはフラグメントのキメラまたはヒト化されたもの、ならびにヒト抗体および抗体フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。アッセイは、多様なフォーマット、例えば、当該分野でよく特徴付けられているタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、免疫アッセイおよび細胞に基づくアッセイで実施することが
できる。すべてのアッセイは、試験化合物を、ここで同定されたポリペプチドと、ポリペプチドが試験化合物に相互作用するのに十分な条件および時間において接触させる点で共通する。
【0266】
結合アッセイでは、相互作用は結合であり、形成される複合体は単離でき、または反応混合物中で検出できる。特定の実施形態において、ポリペプチドまたは試験化合物は、固相、例えば、マイクロタイタープレートに、共有結合または非共有結合により固定化する。非共有結合は、一般的に、固相表面をポリペプチドまたは試験化合物の溶液で被覆し、乾燥することにより達成される。あるいは、固定化抗体(例えば、固定化されるポリペプチドに対して特異的なモノクローナル抗体)を用いて、ポリペプチドを固相表面に固定化することができる。このアッセイは、検出可能な標識により標識してよい非固定化成分を、固定化成分、例えば、固定化成分を含む被覆表面に加えることにより実施される。反応が完全な場合、非反応成分は例えば洗浄により除去され、固相表面に固定化された複合体が検出される。非固定化成分が検出可能な標識を最初から保有する場合、表面に固定化された標識の検出は複合体化が起こったことを示す。非固定成分が標識を最初から保有しない場合、複合体化は、例えば、固定化複合体に特異的に結合する標識抗体を用いることにより検出することができる。
【0267】
試験化合物は、ここで同定される特定のポリペプチドと相互作用するが、結合しない場合、該タンパク質との相互作用は、タンパク質−タンパク質相互作用を検出する周知の方法により検定することができる。そのような検定として、架橋、共免疫沈降、およびグラジエントまたはクロマトグラフィーカラムによる共精製等の伝統的な方法が挙げられる。さらに、タンパク質−タンパク質相互作用は、ChevrayおよびNathans,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,5789−5793(1991)に開示されたように、Fieldsと共同研究者[FieldsおよびSong,Nature(London)340,245−246(1989);Chienら,Proc.Natl.Acad.Scl.USA 88,9578−9582(1991)]により記載された酵母系遺伝子系を用いることによりモニターすることができる。酵母GAL4等の多くの転写活性化因子は、2つの物理的に別個のモジュラードメインからなり、このうちの1つがDNA結合ドメインとして作用し、他の1つが転写活性化ドメインとして機能する。前記刊行物に記載される酵母発現系(一般的に「ツーハイブリッド系」と称される)はこの性質を利用したもので、2つのハイブリッドタンパク質を使用し、このうちの1つにおいて標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合し、別の1つにおいて候補活性化タンパク質が活性化ドメインに融合する。GAL4活性化プロモーター制御下にあるGAL1−lacZレポーター遺伝子の発現は、タンパク質−タンパク質相互作用によるGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーはβ−ガラクトシダーゼの発色性基質により検出される。ツーハイブリッド技術を用いる2つの特定タンパク質間のタンパク質−タンパク質相互作用を同定する完全なキット(MATCHMAKER(登録商標))はClontechから市販されている。このシステムを拡張して、特定のタンパク質相互作用に関与するタンパク質ドメインを地図で表し、これらの相互作用に重要なアミノ酸残基を特定することができる。
【0268】
ここで同定されたポリペプチドの相互作用を妨害する化合物および他の細胞内成分または細胞外成分を同定するために、ポリペプチドと成分とを、ポリペプチドと成分との相互作用を可能とする条件下に含む反応混合物を調製してよい。相互作用を阻害する試験化合物の能力を調べるために、反応混合物を試験化合物の非存在下または存在下で調製する。試験化合物の存在下でポリペプチドと当該成分との相互作用が減少する場合、試験化合物は、ポリペプチドと当該成分との相互作用を阻害するといわれる。
【0269】
一定の実施形態において、IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドの
アゴニストまたはアンタゴニストを同定するための方法は、IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドを候補アゴニスト分子または候補アンタゴニスト分子に接触させ、IL−22ポリペプチドまたはIL−22Rポリペプチドに一般的に関連する1つ以上の生物学的活性の検出可能な変化を測定することを包含する。そのような活性として、以下の実施例に記載する活性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0270】
(3.抗体結合アッセイ)
抗体結合アッセイは、競合的結合アッセイ、直接サンドイッチアッセイまたは間接サンドイッチアッセイ、および免疫沈降アッセイ等の公知のアッセイ方法で実施してよい(Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158(CRC Press,Inc.,1987))。
【0271】
競合的結合アッセイは、限定量の抗体への結合に対して試験試料分析物と競合する標識標準の能力に依存する。試験試料中の標的タンパク質の量は、抗体に結合する標準の量に反比例する。結合する標準の量の決定を容易にするために、抗体は、好ましくは、競合の前後で不溶化されて、抗体に結合する標準および分析物が、結合していない標準および分析物から都合よく分離され得る。
【0272】
サンドイッチアッセイは、2つの抗体を利用し、各抗体は、検出されるタンパク質の異なる免疫原性部分またはエピトープに結合することができる。サンドイッチアッセイにおいて、試験試料分析物は、固体支持体に固定化された第1抗体に結合し、その後に第2抗体が分析物に結合するので、3者からなる不溶性複合体が形成される。例えば、米国特許第4,376,110号を参照されたい。第2抗体自体は検出可能な部分で標識してもよいし(直接サンドイッチアッセイ)または検出可能な部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を用いて測定してもよい(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、1つのタイプのサンドイッチアッセイは、ELISAアッセイであり、この場合、検出可能な部分は酵素である。
【0273】
免疫組織化学を用いて、抗体が結合する抗原の細胞部位を決定してよい。免疫組織化学のために、組織試料は新鮮なものであるか、凍結されているものでよく、パラフィンで包埋して、例えば、ホルマリン等の保存剤で固定してよい。
【0274】
別の態様において、上記疾患の診断または処置に有用な組成物を含む製造品が、提供される。製造品は容器と説明書を含む。適当な容器として、例えば、ビン、バイアル、シリンジおよび試験管が挙げられる。容器は、ガラスやプラスチック等の多様な材料から形成されてよい。容器は、疾患を診断または処置するのに有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有してよい(例えば、容器は静脈注射用溶液のバッグであるか、皮下注射用針により孔を開けることのできるストッパーを有するバイアルであってよい)。組成物中の有効成分は、通常、本発明のポリペプチド、抗体、アゴニストまたはアンタゴニストである。容器上の説明書または容器に付随した説明書は、組成物が選択された疾患を診断または治療するために使用されることを示す。製造品は、さらに、リン酸緩衝塩溶液、リンガー溶液およびデキストロース溶液等の薬学的に受容可能な緩衝液を含む第2容器を含んでよい。さらに、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、ニードル、シリンジ、および使用説明書を有する包装挿入物等、商業的視点およびユーザーの視点から望まれる他の材料を含んでもよい。
【0275】
一実施形態において、本発明は、
(a)IL−22またはIL−22Rのアゴニストまたはアンタゴニストを含む組成物;
(b)該組成物を含む容器;および
(c)免疫関連疾患または癌の処置における該アンタゴニストの使用を説明する該容器に添付されたラベル、または該容器に含まれる包装内容物;
を含む製造品を提供する。組成物はアンタゴニストの有効量を構成してもよい。
【0276】
下記の実施例は、例示的な目的のみのためだけに提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定するものではない。
【0277】
本明細書に挙げられたすべての特許および参考文献は、参照することによりそれら全体がここに援用される。
【実施例】
【0278】
(III.実施例)
他に指示がない限り、実施例に示される市販の試薬は製造業者の説明書にしたがって使用した。下記の実施例および本明細書全体にわたってATCCアクセッションに番号より同定された細胞供給源は、アメリカ培養細胞株統保存機関(マナッサス、VA)からのものである。
【0279】
(実施例1)
抗IL−22および抗IL−22R抗体の生成。
【0280】
この実施例は、IL−22またはIL−22Rに特異的に結合するモノクローナル抗体の調製を示す。モノクローナル抗体を産生するために用いられる技術は当該分野で公知の技術に基づくものであり、例えば、上記のGodingに記載されている。使用される免疫原は全長精製ヒトIL−22(hIL−22)または全長精製ヒトIL−22R(hIL−22R)であった。簡単に説明すれば、マウスを、アジュバントに懸濁させた約1〜100マイクログラムのhIL−22免疫原またはhIL−22R免疫原で免疫した。次に、免疫マウスを10〜12日後にアジュバントに懸濁させたさらなる免疫原で追加免疫した。血清試料は、抗IL−22抗体またはIL−22R抗体を、検出するELISAアッセイによる検査のためにマウスから定期的に得た。
【0281】
適当な抗体力価が検出された後、抗体について「陽性である」動物を、屠殺し、脾臓細胞を収集した。次に、脾臓細胞を、マウス骨髄腫細胞株に(35%ポリエチレングリコールを用いて)融合した。融合体は、ハイブリドーマ細胞を生じ、これら細胞を、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン)を含む培地でクローニングし、培養した。ハイブリドーマ細胞は、IL−22またはIL−22Rに対する反応性に関してELISAでスクリーニングした。(
図5を参照)。これらのハイブリドーマにより産生された抗体およびそれらの各性質の表が
図5に見られる。
【0282】
(実施例2:IL−22シグナル伝達は抗IL−22抗体により遮断される)
STAT3活性化は、IL−22レセプター活性化と細胞内シグナル伝達の特徴である。ヒトIL−22に対して産生された抗体を、IL−22誘導性のSTAT3活性化の能力に関して調べた。ヒトIL−22レセプターへテロダイマー(hIL−22R/hIL−10R2)を発現する293T細胞を、0.2×10
6/ウェルで24ウェルプレートに蒔いた。Lipofectamine 2000(登録商標)(Invitrogen)を用いて、STAT3ルシフェラーゼレポーター(TK−SIE−SRE−S)を細胞に形質移入した。したがって、STAT3が活性化される場合、細胞は、ルシフェリンの添加により検出できる酵素活性を有するルシフェラーゼを産生するだろう。ルシフェラーゼ活性の減少は、STAT3が阻止されていることを意味する。翌日、0.5nMのhIL−22(R&D Systems)を、20μg/mlの抗体とともに各ウェルに添加
した。16時間後、細胞を溶解し、試料をルミノメーターで読んだ。
図6に示すデータは、相対的STAT3活性化の尺度であるウミシイタケ内部標準に対するルシフェラーゼ活性である。
図6に示されるように、抗体3Fl1.3、抗体11H4.4および抗体8E11.9は顕著な遮断活性を有した。
【0283】
(実施例3:抗IL−22抗体の用量対応答)
ヒトIL−22に対して産生された抗体の用量範囲を、STAT3活性化アッセイでヒトIL−22を遮断する能力に関して調べた。hIL−22R/hIL−10R2を発現する293細胞を、0.2×10
6/ウェルで24ウェルプレートに蒔いた。Lipofectamine 2000(登録商標)(Invitrogen)を用いて、STAT3ルシフェラーゼレポーター(TK−SIE−SRE−S)を細胞に形質移入した。翌日、0.5nMのhIL−22(R&D Systems)を、さまざまな濃度の抗IL−22抗体3F11、8E11または11H4とともに各ウェルに添加した。抗体の濃度範囲は、40μg/mlから始め、2倍希釈により、最終濃度は0.012μg/mlとした。16時間後、細胞を溶解し、試料をルミノメーターで読んだ。
図7に示すように、これら3種の抗体は、STAT3活性化の遮断に関して同じような用量/応答曲線を示す。
【0284】
(実施例4:抗IL−22抗体の用量対応答)
ヒトIL−22に対して産生された抗体の用量範囲を、STAT3活性化アッセイでマウスIL−22(mIL−22)を遮断する能力に関して調べた。mIL−22R/mIL−10Rbを発現する293細胞を、0.2×10
6/ウェルで24ウェルプレートに蒔いた。Lipofectamine 2000(登録商標)(Invitrogen)を用いて、STAT3ルシフェラーゼレポーター(TK−SIE−SRE−S)を細胞に形質移入した。翌日、0.5nMのmIL−22(ポリヒスチジン標識)を、さまざまな濃度の3F11、8E11または11H4抗体とともに各ウェルに添加した。抗体の濃度範囲は40μg/mlから始め、2倍希釈により、0.012μg/mlまでとした。16時間後、細胞を溶解し、試料をルミノメーターで読んだ。
図8に示されるように、抗IL−22抗体はマウスIL−22と架橋し、類似ではあるが、強い用量/応答曲線を示した。これは、抗IL−22抗体がマウス実験に使用できることを示す。
【0285】
(実施例5:抗IL−22のヒトIL−22に対する親和性)
図9は、抗IL−22のヒトIL−22に対する親和性を示す。この親和性は、BIACore分析により決定した。N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)結合化学により多様な量の抗IL−22 IgGをCM5チップに固定化した(11H4 IgGに関して845RU(リファレンスユニット(reference unit))、8E11 IgGに関して1933RUおよび3F11 IgGに関して7914RU)。0.5〜250nMの範囲を含むIL−22の二倍連続希釈物を調製した。抗原試料を、IgG固定化表面上に流速20μl/分で6分間注入し、結合した複合体を10分間解離させた。抗原の各注入後、IgG表面を10mMのGly(pH1.5)で再生させた。陰性コントロールフローセルとして、無関係のIgG(3A5 RF移植片)を、バックグランド応答を差し引くために固定化した。0.05%のTween20を含み、0.01%NaN
3を有するPBSである流れる緩衝液をすべての試料希釈物に用い、結合実験を25℃で行なった。データを、1:1結合モデルによる全体的適合により分析した。これらの結果は、抗IL−22抗体がヒトIL−22に対して非常に良好な親和性を有することを示す。
【0286】
(実施例6:抗IL−22抗体は細胞中のIL−22を検出する)
細胞内IL−22を検出する能力に関してIL−22に対する抗体を調べた。IL−22の細胞内FACS染色のために、hIL−22−GFP、mIL−22−GFP、mI
L20−GFP、およびGFPのみを発現する細胞である293細胞株を使用した。調べられた抗体は、抗ヒトIL−22抗体である3F11、8E11および17F6である。マウス抗gp120をアイソタイプコントロールとして用いた。使用した二次抗体は、Jackson labsからの抗マウスIgG−PEであった。細胞をブレフェルジンAとともに2時間インキュベートし、PBSで洗浄し、次に2%パラホルムアルデヒドに一晩4℃で固定する。次に、細胞をPBSで洗浄し、5mlの0.2% Tween−20で30分間、37℃でインキュベートした。抗体染色は30分間、4℃で実施し、次にTween−20溶液で洗浄した。細胞をFACS緩衝液に再懸濁させ、FACScanで分析した。
図10はFACS結果を示す。FACS結果に示されるように、抗体3F11と抗体8E11は、細胞染色パターンの変化を引き起こして、これらの抗体がマウスおよびヒトの両方の細胞内IL−22に結合することを示す。
【0287】
抗IL−22抗体3F11をさらなる細胞染色実験で用いた。3F11抗体を、フィコエリトリンフルオロフォアであるAlexa 647に結合させた。Alexa 647に結合させたマウスIgG2aをアイソタイプコントロール(Caltag)として用いた。hIL−22−GFPおよびGFPのみを発現する293細胞株を、3F11抗体結合に関して評価した。293細胞を2%パラフォルムアミドで30分間固定し、次にPBS/2% FCSで2回洗浄した。細胞を0.5%サポニンに15分間再懸濁した。正常なマウス血清をさらに15分間加え、次に、抗体を0.5μg/百万個の細胞にて30分間にわたって添加した。細胞を洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁し、FACScanで分析した。
図11は、左下パネルにおいて細胞の右上四分円への移動を示す。この結果は、結合体化3F11抗体が、細胞内IL−22に結合していることを示す。
【0288】
(実施例7:Th1T細胞におけるIL−22の発現)
CD4+ T細胞が胸腺から成熟し、末梢リンパ系に入る場合、それら細胞は一般的にそれらのT細胞レセプター(TCR)に特異的な抗原に遭遇する前ではそれらのもとのままの表現型を維持する[Sprentら,Annu Rev Immunol.(2002);20:551−79]。抗原提示細胞(APC)により提示される特定の抗原に対するTCRの結合は、T細胞活性化を引き起こす。環境およびサイトカイン刺激に依存して、CD4+ T細胞は、Th1表現型またはTh2表現型に分化することができ、エフェクター細胞または免疫記憶細胞となることができる[Sprentら,Annu Rev Immunol.(2002);20:551−79およびMurphyら,Nat
Rev Immunol.(2002)Dec;2(12):933−44]。このプロセスは、一次活性化として公知である。一次活性化を受けると、CD4+ T細胞は、エフェクター細胞または免疫記憶細胞となり、それらの表現型をTh1またはTh2として維持する。これらの細胞が、抗原に再び遭遇すると、それら細胞は二次活性化を受けるが、今回は、抗原に対する応答が一次活性化よりも速くなり、一次活性化により決定されるエフェクターサイトカインの産生をもたらす[Sprentら,Annu Rev Immunol.(2002);20:551−79およびMurphyら,Annu Rev Immunol.2000;18:451−94]。研究により、CD4+ T細胞の一次活性化および二次活性化中において、一定の遺伝子の発現は、可変性であることがわかった[Roggeら,Nature Genetics.25,96−101(2000)およびOuyangら,Proc Natl Acad Sci USA.(1999)Mar 30;96(7):3888−93]。
【0289】
一次活性化条件のために、ナイーブT細胞を、OvaおよびAPCにより活性化してよい。この状態の細胞から単離されたRNAは、どの遺伝子が一次活性化中に差次的に調節されるかの情報、およびどのサイトカインがTh1とTh2発達中の遺伝子発現に影響するかに関する情報を提供することができる。一次活性化後、CD4+ T細胞を培養物中に維持してよい。先の活性化およびサイトカイン処理が、これらの細胞にインプリントさ
れているので、それらの細胞は、エフェクター細胞または免疫記憶細胞となる。この期間中、APCまたは抗原は存在しないので、CD4+ T細胞は休止期に入る。この休止期はナイーブ細胞 対 免疫記憶細胞の違いに関する情報および、休止免疫記憶Th2細胞に対する休止免疫記憶Th1細胞に関する情報を提供する。次に、休止免疫記憶Th1細胞 対 休止免疫記憶Th2細胞は、抗CD3/CD28抗体による二次活性化またはIL12/IL18サイトカインによる刺激を受ける。これらの条件は、活性化されたナイーブT細胞 対 活性化免疫記憶T細胞の違いに関する情報および、活性化Th1細胞 対 活性化免疫記憶Th2細胞の違いに関する情報を提供する。
【0290】
図12に示される実験に関して、DO11.10マウスから脾細胞を単離し、Th1条件:[IL−12(1ng/ml)、IFN−γおよびIL−4(1μ/ml)];Th0条件:[(抗IL−12、抗IFN−γおよび抗−IL4)];またはTh2条件:[(抗IL−12(0.5μg/ml)、抗IFN−γおよびIL−4(5ng/ml])のいずれかにおいて、OVAにより活性化させた。RNAを48時間後に回収した(一次刺激)。細胞の残りを7日目まで培養物中に維持し、次に、OVAと照射Balb/c脾細胞により再刺激した(二次刺激)。Th1条件からの細胞の一部をさらにIL−12およびIL−18のみにより刺激した。48時間後、RNAを回収した。これらのRNA試料中のIL−22、IFN−γおよびIL−4の発現を、5’ヌクレアーゼ(TaqMan(登録商標))分析により分析した。その発現は、最初にハウスキーピング遺伝子HPRTプローブに対して標準化し、次に脾細胞からの発現量と比較した倍増率としてグラフ化した。結果が
図12に示され、そのデータはIL−22が、二次刺激の際にTh1細胞に高度に発現することを示している。したがって、抗IL−22治療は、Th1細胞を血液から除去することが望ましい場合のTh1媒介障害の処置のためか、またはIL−22が関与すると疑われる場合のTh1媒介疾患の診断として、これらの細胞を標的とするのに有用であろう。
【0291】
(実施例8:IL−22はγδT細胞により産生される)
γδ T細胞中でのIL−22の発現を分析するために、細胞をマウス脾臓から分離し、γδ T細胞をMACS選別により分離した。GL4は、γδ T細胞(Becton−Dickenson)を特異的に活性化する抗γδ TCR抗体である。Qiagen
MINI RNA単離キットを用いて、5’ヌクレアーゼ(TaqMan(登録商標))分析のためにRNAを細胞から単離した。Master Mix one−step RT−PCRMaster Mix Reagent(Applied Biosystems;4309169)を用いて、ハウスキーピング遺伝子RPL10およびSPF31を標準化のために用いた。全脾細胞を用いてIL−22の発現の相対量を決定した。
図13は、IL−22が、GL4抗体により刺激されたγδ T細胞中で高度に発現することを示す。
【0292】
(実施例9:IL−22は活性化ヒトT細胞により産生される)
核酸マイクロアレイは、病変組織中で、それらの正常組織と比較して、異なった形で発現される遺伝子を同定するために有用である。核酸マイクロアレイを用いて、試験組織試料とコントロール組織試料からの試験mRNA試料およびコントロールmRNA試料を、逆転写し、標識して、cDNAプローブを産生する。次に、cDNAプローブを、固体支持体に固定化した核酸のアレイに対してハイブリダイズさせる。このアレイは、アレイの各メンバーの配列および位置が、知られるように形成する。例えば、一定の病状で発現することが公知である遺伝子の選択物を固体支持体上に整列させてよい。標識プローブの特定のアレイメンバーとのハイブリダイゼーションは、プローブが得られた試料が該遺伝子を発現することを示す。試験(この場合、活性化CD4+ T細胞)試料からのプローブのハイブリダイゼーションシグナルがコントロール(この場合、非刺激CD4+ T細胞)試料からのプローブのハイブリダイゼーションシグナルよりも高い場合、試験組織で過
剰発現した遺伝子または複数の遺伝子が同定される。この結果の意味は、試験組織中に過剰発現したタンパク質が病状の存在の診断マーカーとしてのみならず、病状の処置の治療標的としても有用であるということである。
【0293】
核酸のハイブリダイゼーションの方法およびマイクロアレイ技術の方法は、当該分野で周知である。例えば、ハイブリダイゼーション用の核酸およびプローブ、スライドの具体的な調製およびハイブリダイゼーション条件はすべて、2001年3月30日に出願されたPCT特許出願第PCT/US01/10482(参考としてここに援用される)に詳細に記載されている。
【0294】
この実験では、CD4+ T細胞を単離するために用いられる抗CD8抗体、抗CD16抗体、抗CD19抗体、抗CD36抗体および抗CD56抗体を使用するStem Cell Technologies社(Vancouver BC)のRossetteSep(登録商標)プロトコルを用いて、CD4+ T細胞を単一のドナーから精製した。単離されたCD4+ T細胞は、ICAM−1または抗CD28抗体とともに抗CD3抗体(増殖を刺激しない濃度で使用)により活性化した。24時間目または72時間目に細胞を回収し、RNAを抽出し、Affimax(Affymetrix Inc.,Santa Clara,CA)マイクロアレイチップを用いて分析した。非刺激(休止)細胞を精製直後に回収し、同じ分析に供した。発現が、活性化細胞 対 休止細胞における2時点のいずれかで上方制御された遺伝子を比較した。
【0295】
この実験の結果を
図14に示す。マイクロアレイ結果は、実施例7のデータを支持し、補完する。Th1T細胞は、IL−4またはIL−5を産生するTh2細胞とは対照的に、刺激された場合に大量のIL−22を産生する。この結果は、サイトカイン特性に基づくTh1関連免疫疾患およびTh2関連免疫疾患の分離を可能とするだろう。IL−22およびIFN−γを発現するTh1細胞は、Th2細胞集団に影響を与えることなく、これらのサイトカインに向けられた治療によって処置され得る。
【0296】
(実施例10:Th1細胞は細胞内IL−22を発現する)
T細胞中のIL−22発現をFACSにより決定するために、細胞内染色をマウスTh1/Th2細胞を用いて実施した。一次脾細胞をTh1またはTh2に二極化させた。FACS染色のために、96ウェルプレートに1ウェルあたり100万個の細胞を蒔き、PMA/イオノマイシンで2時間処理し、次にブレフェルジンAでさらに2時間処理した。使用された抗体は、抗ヒトIL−22(抗体3F11.1)およびコントロールとして抗gpl20であった。抗マウスIFN−γ−FITCおよび抗マウスIL−4−PEは、BD Bioscience(San Diego CA)から得られた。PE結合体化ヤギ抗マウスIgG(これもBD Bioscience製)を二次抗体として使用した。細胞を2%パラフォルムアルデヒドで30分間固定し、次にPBS/2%FCSで2回洗浄した。細胞を0.5%サポニンに15分間再懸濁し、次に、抗体を0.5μg/百万個の細胞にて30分間にわたって添加した。次に、細胞を二回洗浄し、二次抗体を0.5%サポニン中15分間加えた。最後に、細胞を洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁し、FACScanで分析した。
図15は、上パネル中で、Th1細胞がTh2細胞から分化できることを示す。Th1細胞は、IFN−γに関して陽性であり、IL4に関して陰性であり、IL−22に関して陽性である。Th2細胞は、主にIFN−γに関して陰性であり、IL4に関して陽性であり、IL−22に関して陰性である。
【0297】
(実施例11:抗IL−22レセプター(IL−22R)の産生)
抗IL−22R抗体の結合を調べるために、hIL−22Rを発現する293細胞およびGFPを発現する細胞を使用した。百万個の細胞を、異なる抗hIL−22R抗体により、0.3μg/百万個の細胞の濃度で染色した。調べられた抗体は、7E9、8A12
、8H11および12H5であった。第2抗体は、希釈係数1:200で使用された結合体化ヤギ抗マウスPE(Jackson labs)であった。細胞を洗浄し、FACS緩衝液(0.5%BSA/PBS)で染色した。試験抗体による染色は、15分間にわたって4℃にて実施し、次に細胞を洗浄し、第2抗体をさらに15分間にわたって4℃にて加えた。細胞を、FACScanによる分析前に2回洗浄した。結果を
図16に示す。ピークが重複しない各グラフに関して、左のピークはコントロールに対応し、右のピークは試験抗体に対応する。
図16は、調べられた4種の抗IL−22R抗体のすべてが、形質導入293細胞上のIL−22Rへの結合に関して陽性であったことを示す。抗体7E9、8A12、8H11および12H5は、バックグランドが非常に低くて良好な結合を示す。
【0298】
(実施例12:IL−22R遮断抗体)
抗IL−22R抗体の遮断活性を調べるために、(実施例2に記載された)ルシフェラーゼレポーター構築物を使用した。抗体が遮断活性を有する場合、STAT3は活性化されることはなく、ルシフェラーゼ応答は低いであろう。hIL−22R/hIL10Rbを発現する細胞を、24ウェルプレートに0.2×10
6/ウェルで蒔き、ルシフェラーゼリポーターであるTK−SIE−SRE−S(0.8μg/ウェル)とRL−TK−Luc(0.16μg/ウェル)とを、細胞に形質移入した。翌日、hIL−22をウェルに0.5nMで添加し、各抗体を、20μg/mlで添加した。調べられた抗IL−22R抗体は、7E9、8A12、8H11および12H5であった。使用されたコントロール抗体は、GP120および11H4(実施例2で遮断活性を有することが示された抗hIL−22抗体)であった。16時間後、細胞を溶解し、試料をルミノメーターで読んでルシフェラーゼ活性を検出した。
図17は、調べられた4種のすべての抗体がIL−22R−IL−22相互作用を遮断したことを示す。
【0299】
(実施例13:IL−22Rは一次ケラチノサイト上に発現する)
ケラチノサイトは、乾癬の間に過剰増殖する細胞集団である。ケラチノサイトを標的とする治療は、乾癬の緩和に有用である。一次ヒトケラチノサイト上のIL−22Rの発現は、FACS分析により決定された。正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)ドナーロット0526(継代#2)は、Cascade Biologiesから得られ、80%コンフルエンスまで増殖させ、1試料あたり300〜600K細胞で染色した。抗IL−22R血清を、1:50の希釈で用いて、そして予め採血した血清を、1:50の希釈でコントロールとして用いた。IL10R2染色のために、R&Dからの抗体(クローン#90220、マウスIgG1)を、マウスIgG1−PEアイソタイプコントロール(BD Pharmingen#33815X)とともに1試料あたり0.3μgで使用した。抗IL−22R血清用の第2抗体は、ラット抗マウスIgG1−PE(BD Pharmingen #550083)であり、1試料あたり0.1μgで使用した。
図18は、IL−22RおよびIL10R2がNHEK上に発現することを示す。したがって、IL−22RまたはIL−22の遮断は、ケラチノサイト増殖に関連する疾患、例えば、乾癬を緩和するのに有用であることを証明するものだろう。
【0300】
(実施例14:IL−22の表皮培養に対する効果)
再生ヒト表皮(RHE)は、サイトカインの皮膚に対する効果のモデルとして用いることができる。RHEおよび培養培地は、MatTek社(Ashland,MA)から得た。RHEを一晩(20〜22時間)、37℃、5% CO
2にて0.9ml培地と平衡化させて、実験開始前の出荷から回復させ、次に、37℃、5% CO
2における5ml培地との気液界面にて培養した。RHEに対するIL−22の効果は、3種の異なる条件で検定した。IL−22(1.2nM)または上皮細胞成長因子(EGF、R&D Systems)(1nM)を培地に添加した。コントロールは、未処理の培地からなった。RHEは、2日毎に培地を交換し、新しいEGFまたはIL−22を添加して、4日間培
養した。RHEを回収し、10%中性緩衝性ホルマリン(NBF)に一晩固定し、切片化し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。
図19は、IL−22処理が表皮の肥厚を引き起こすことを示す。これは、IL−22が過形成を引き起こすか、または表皮を産生する細胞の増殖を引き起こすことを示す。
【0301】
これらの切片をケラチノサイト増殖のマーカーであるサイトケラチン16(K16)について染色する場合、IL−22で処理されたRHEは、K16について有意に高い染色を示した。K16は、乾癬および創傷治癒等における増殖皮膚細胞中にのみ発現する(Freedbergら,Soc.Invest.Derm.116:633−640(2001)に概説されている)。
図20は、ナイーブRHEおよびEGF処理RHEに比較したIL−22処理RHEにおけるK16染色を示す。IL−22処理RHEは組織全体にわたるK16を示したが、ナイーブ切片とEGF処理切片では染色が局在化している。
【0302】
IL−22によるRHEの処理は、乾癬で高度に発現する遺伝子であるプソリアシン(psoriasin)も誘導する。プソリアシン(S100A7)は、最初に、正常な皮膚ではなく、乾癬で発現するタンパク質として発見された(Madsen P.ら,J.Invest.Derm.97:701−712(1991))。プソリアシンは、活性化され、培養された悪性ケラチノサイト、および悪性乳房上皮細胞に発現する(Watsonら,Int.J.of Biochem.and Cell Bio.30:567−571(1998))。現在のデータは、プソリアシン炎症性皮膚病、走化性、および乳癌進行に関する役割を支持する。プソリアシンと皮膚の乾癬状過形成との関連は、ケラチノサイト分化における役割を支持する。プソリアシンは走化性があり、乾癬の特徴である表皮の好中球とCD4+ Tリンパ球浸潤を刺激する。
図21は、RHEのIL−22による処理が高いレベルのプソリアシン発現を誘導することを示す。この結果から、IL−22およびIL−22Rが、乾癬で果たす役割が確認される。
【0303】
IL−22経路の乾癬に対する誘導効果は、IL−22またはIL−22Rに対する抗体により遮断することができる。20μg/mlの濃度で投与された抗IL−22抗体8E11はプソラシン(psorasin)発現を検出不能なレベルまで低減した(
図23を参照)。20μg/mlの濃度で使用される場合、抗IL−22R抗体(7E9)も、
図23に示されるようにプソライシン(psoraisin)発現を有意に低減した。
【0304】
抗IL−22抗体および抗IL−22R抗体をアッセイして、それら抗体が、RHEをIL−22で処理するときに観察される表皮肥厚を低減できるかどうかを決定した。20μg/mlの濃度で投与された抗IL−22抗体(8E11)は、表皮肥厚の有意な減少を示した(
図24を参照)。IL−22で処理されたRHEは、80〜90μmの厚みに達し、抗IL−22(8E11)による処理は、RHEの厚みを50〜60μmまで低減させる(
図25)。抗IL−22R抗体(7E9)も、皮膚肥厚を低減した。20μg/mlの濃度で用いられる場合、抗IL−22R抗体は、RHE厚みを80〜90μmから55〜60μmまで低減させた(
図25)。このデータは、抗IL−22抗体または抗IL−22R抗体が、上皮増殖や肥厚等の乾癬に関連する症状を緩和できることを示す。
【0305】
(実施例15:IL−22により誘導された遺伝子のマイクロアレイ分析)
どの遺伝子がIL−22により誘導されたのかを決定するために、単一のドナーに由来する正常ヒト上皮ケラチノサイト(NHEK)を蒔き、70%コンフルエンスの時点で、20ng/mlのIL−22で24時間処理した。培地および補助成分(EpiLife(登録商標)+HKGS)は、Cascade Biologies(登録商標)(Portland,OR)から得た。細胞を洗浄し、溶解した。全RNAを、Qiagen RNeasyミニキットを用いてNHEK細胞から精製した。このRNAをマイクロアレイ分析に供し、遺伝子発現の量を定量した(マイクロアレイ分析の説明については上記の
実施例9を参照されたい)。
【0306】
プソリアシンはIL−22による刺激で81倍誘導される。SPR−2Gは、11倍上方制御される(
図22を参照)。これらの結果は、IL−22経路が乾癬に結びつけられることを示す。したがって、IL−22またはIL−22Rに対するアンタゴニスト抗体およびアンタゴニスト抗体が乾癬を緩和するのに有用である。
【0307】
(実施例16:IL−23は乾癬の特徴をインビボで誘導する)
マウスモデルを用いて、乾癬性皮膚特徴を誘導するIL−12またはIL−23の能力を比較した。C57B1/6マウスの耳に全量20μlのPBS中の500ngの組換えIL−12または組換えIL−23を皮下注射した。コントロールマウスには20μlのPBSのみを注射した。マウスは、16日間わたり2日毎に1回注射した。各実験グループは5匹のマウスからなった。耳の厚みは、カリパス(Mitutoyo America社)を用いて、注射前、および注射後の複数の時点で測定し、平均±標準偏差として報告する。この実験および引き続く実験のために、統計的有意性を、Prismソフトウェア(GraphPad)を用いる一元または二元の分散分析(ANOVA)により計算した。すべての0.05以下のp値は有意とみなされた。マウスの耳は、ヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色を用いる慣用的な組織学的分析のために集めた。
【0308】
図26Aに示されるように、IL−12注射およびIL−23注射の両方が、最初の注射後の早くも一週間で耳の厚みの有意な増加を誘導した。IL−12を受けたマウスに関しては、pは0.001未満であった(PBSコントロールに対してそれぞれ12日目、14日目および16日目)。IL−23を受けたマウスに関しては、pは0.001未満であった(PBSコントロールに対してそれぞれ8日目、12日目、14日目および16日目)。組織学的分析は、IL−12およびIL−23が注射された耳は両者とも、PBS処置コントロールグループと比較して顕著な炎症性細胞浸潤と表皮肥厚(表皮肥厚)とを発達させた;しかし、これらの2グループ間には幾つかの明らかな組織学的な違いが存在した。第1に、PBSコントロールグループ(
図26B、
図26C)と比較して、IL−12は、顕著で主に単核皮膚炎症細胞浸潤(
図26D、
図26E)を有する軽度から中程度の表皮肥厚を誘導した一方で、IL−23は、好中球(矢印)と好酸球の両方を含む多くの多形核白血球の混合皮膚炎症細胞浸潤(
図26F、G)を有する顕著な表皮肥厚を誘導した。表皮過形成と多形核白血球の存在は、ヒト乾癬の組織学的特徴であり、乾癬のマウスモデルの非常に一般的な組織学的所見である。P.C.van de Kerkhofら,Dermatologica 174:224(1987)およびP.R.Manganら,Nature(2006)441:235を参照されたい。
【0309】
(実施例17:IL−22はインビボでIL−23の下流で作用する)
IL−12またはIL−23の下流で潜在的に作用するサイトカインを同定するために、リアルタイムPCRを用いて、IL−12またはIL−23を注入した耳皮膚試料からのパネルのサイトカインの発現を調べた。耳皮膚注射と組織学的分析は前記実施例に記載のように実施した。実験の8日目に、RNAを個々のマウスの耳から単離し、リアルタイムPCRを実施して、IFN−γ、IL−17およびIL−22をコードするmRNAのレベルを定量した。具体的には、RNeasyミニキット(Qiagen,Valencia,CA)を製造者の説明書にしたがって使用してRNAを単離した。リアルタイムRT−PCRは、TaqMan(登録商標)One−Step RT−PCRMaster
Mix試薬(Applied Biosystems)を用いて、プライマーおよびプローブを備えるABI7500リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて実施した。反応は二つ組で行い、試料は、コントロールハウスキーピング遺伝子RPL−19により規準化し、ΔΔCt法にしたがって報告した。
【0310】
図27Aに示すように、IL−12は最初の注射の8日後に耳におけるIFN−γ発現の有意な増加を誘導した。IL−23は、IL−17産生を誘導し、PBS処理コントロールグループと比較してIFN−γ産生を阻害した(
図27A)。興味深いことに、IL−22も、IL−12の注射後ではなく、IL−23注射後に有意に上方制御された(
図27A)。これらのデータは、IL−23とIL−22との関連性を示唆した。
【0311】
サイトカインは耳に浸潤したリンパ球により産生されことを確認するために、リンパ球を、処置した耳から溶出させて、サイトカイン産生を、活性化の際にELISAにより測定した。リアルタイムRT−PCRデータに一致して、IL−23を注射した耳からの細胞はIL−22およびIL−17を優勢に産生したが、IL−12を注射した耳からの細胞は、大量のIFN−γを分泌した(
図28)。
【0312】
(実施例18:IL−22は皮膚炎症と表皮過形成をインビボで誘導する)
IL−22が、IL−23のように、乾癬性皮膚の特徴をインビボで誘導するかどうかを決定するために、上記の実施例16に記載のように、マウスの耳にIL−22またはPBSのみを皮下注射した。
図27Bに示されるように、IL−22は、PBS処置群と比較して耳の厚みの有意な増加を誘導した。IL−10ファミリーからの別のサイトカインであるIL−20は耳の厚みに非常に穏やかで局所化された増加だけを誘導した。この所見は、IL−20の表皮トランスジェニック過剰発現が顕著な表皮過形成を誘導した以前の報告(IL−20は表皮機能ならびに乾癬に潜在的に関与することを示唆する結果を示す報告)とは対照的であった。Blumbergら,Cell 104:9(2001)を参照されたい。組織学的分析は、IL−22で処理されたマウス耳が、
図26Fおよび
図26Gに示されるIL−23処理グループの耳に類似の組織学的所見を有し、多くの好中球(矢印)と一部の好酸球を含む顕著な表皮肥厚および混合皮膚炎症細胞浸潤(
図27G、H)を示した。対照的に、IL−20で処理された耳は、PBS処理群(
図27C、F)と比較して唯一の中程度で非常に局所的な混合炎症を有する唯一の軽度から中程度の局所的な表皮肥厚(
図27D、E)を有した。これらのデータはIL−22が、IL−23誘導性の皮膚炎症と表皮肥厚に必須であることを示唆した。
【0313】
(実施例19:抗IL−22遮断抗体はIL−23誘導性の表皮肥厚を有意に低減した)
IL−23は、IL−22を通じて作用して乾癬性皮膚特徴を誘導することを確かめるために、IL−23誘導性の皮膚炎症および表皮肥厚に対する抗IL−22モノクローナル抗体8E11の影響を調べた。注射を14日間にわたって実施した以外は、上記のように(実施例16)IL−23またはPBSを、マウスの耳に皮下注射した。さらに、マウスに、8E11、またはIgG1アイソタイプのコントロールモノクローナル抗体を、1マウスあたり200μgの濃度で、2日毎に1回の頻度で14日間皮下注射した。14日目に、マウスの耳をH&E染色を用いる組織学的分析のために集めた。
【0314】
図29Aに示されるように、8E11(「抗IL−22mAb」)は、コントロールIgG1抗体による処置に比べてIL−23誘導性の上皮性表皮肥厚を有意に低減した(
*p<0.001)。(さらに、
図29DおよびE(抗IL−22mAb)をBおよびC(コントロールIgG1)と比較されたい)。さらに、抗IL−22mAbで処置されたマウスも、皮膚炎症の中程度の減少を示した。しかし、抗IL−22mAbで処置されたマウスは、BPSで処理された耳皮膚と比較して、中程度の炎症性細胞浸潤を依然として示した。(
図29DとE(抗IL−22mAb)と、
図29FおよびG(PBS)と比較されたい。)
(実施例20:IL−23誘導性の表皮肥厚はIL−22欠損マウスにおいて有意に低減した)
IL−23は、IL−22を通じて作用して乾癬性皮膚特徴を誘導することをさらに確かめるために、野生種マウスおよびIL−22欠損マウスの両者に対するIL−23の効果を調べた。IL−22欠損マウス(すなわち、ホモ欠損IL−22ノックアウトマウス、「IL−22
−/−マウス」と称される)を、
図30Aに示される計画にしたがって標的遺伝子の破壊により産生した。IL−22をコードする配列のエキソン1〜4(閉ボックス)を、loxP部位に隣接するネオマイシン耐性カセットにより置換した。コンディショナルな対立遺伝子を保有するヘテロ欠損マウスを、プロタミン1(Prm)プロモーターが、Creリコンビナーゼを駆動する形質転換系統と交配した。コンディショナルな対立遺伝子は、複合ヘテロ欠損雄(すなわち、コンディショナルな対立遺伝子とPrmCre導入遺伝子に関してヘテロ欠損)の精子形成中に切除された。複合ヘテロ欠損雄を野生種雌に交配し、得られた子を、切除された対立遺伝子とPrmCre導入遺伝子の損失についてスクリーニングした。子を、C57Bl/6バックグランドに少なくとも6世代戻し交配した。マウスの遺伝子種は、
図30Bに示されたプライマーを用いるPCRにより確認した。
【0315】
IL−22発現は、野生種マウスおよびIL−22
−/−マウスからのTh細胞におけるmRNAレベルおよびタンパク質レベルで調べた。IL−22mRNA発現は、RT−PCRを用いて、野生種(「+/+」)およびIL−22
−/−(「−/−」)マウスからのTh1、Th2およびTh
IL−17細胞中で調べられ(
図30C)、IL−22mRNAは、IL−22
−/−マウスには検出されないことを確認した。IL−22、IL−17、IFN−γおよびIL−4の発現は、ELISAを用いて、野生種(「WT」)マウスおよびIL−22
−/−(「KO」)マウスからのTh1、Th2およびTh
IL−17細胞で調べた。結果は、各グラフの上部に示されるようにIL−22、IL−17、IFN−γおよびIL−4のそれぞれについて
図30Dに示され、黒棒と白棒がWTマウスとKOマウスでの発現レベルをそれぞれ示している。さらに、IL−22
−/−マウスからのCD4T細胞は、すべてのTヘルパーサブセットに分化するように活性化することができ、野生種CD4T細胞と比較して正常な量のIL−17、IFN−γおよびIL−4を産生することができた。しかし、予想されたように、IL−22
−/−CD4T細胞にはIL−22が欠けていた。IL−22
−/−マウスは正常に発達することが観察され、野生種マウスに比べて、調べられたすべての主要なリンパ器官で類似のリンパ球組成と発達を有した(データは示さず)。
【0316】
上記のように(実施例16)、IL−22
−/−マウスおよび野生種の同腹子の耳にIL−23またはPBSを皮下注射した。16日目に、マウスの耳を日常的な組織学的分析により分析した。
図31AおよびBに示されるように、IL−23は、コントロールグループと比較して、IL−22
−/−マウスで有意に小さい耳の厚みと表皮厚みを誘起した。(IL−22
−/−マウスは、この図面および
図32において、「KO」または「IL−22KO」と称され、野生種マウスはこの図面および
図32において、「WT」または「IL−22WT」と称される)。組織学的染色により、上皮性表皮肥厚および皮膚炎症の両方が、IL−23処理の野生種の同腹子(それぞれ
図31CおよびD)と比較して、IL−22
−/−マウス(それぞれ
図31EおよびF)において有意に減少した。これらの結果とは対照的に、IL−22欠損は、IL−12誘導性の耳の皮膚炎症に対して何の影響も有さなかった(
図32)。したがって、IL−22は、IL−12によるものではなく、IL−23により誘導された皮膚炎症および上皮性表皮肥厚に対して重要な役割を果たすことをデータは示している。
【0317】
(実施例21:IL−23は多様なIL−23活性化リンパ球からのIL−22産生を誘導する)
IL−22を誘導するIL−23の能力をさらに調べるために、多様なリンパ球集団を単離し、インビトロで
図33に示される条件下で刺激した。ELISAを実施して、培養
上清中のIL−22を検出し、
図33Aに平均±標準偏差として報告する。さらに、IL−22以外のIL−10ファミリーサイトカインを誘導するIL−23の能力を調べた。DO11.10TCRトランスジェニックマウスからの脾細胞を、示されたTヘルパー細胞極性化条件下で4日間、0.3μMのOVAペプチドにより刺激し、次に2日間静止し、プレート結合抗CD3(10μg/ml)および可溶性抗CD28(5μg/ml)でさらに2日間再刺激した。リアルタイムRT−PCRを、細胞から単離されたRNAに対して示された条件下に実施して、マウスIL−19、IL−20およびIL−24のmRNA発現を定量した。正常なマウスの脾細胞からのRNAもコントロールとして含めた。
図33Bに示すように、IL23は、調べられた他のIL−10ファミリーサイトカインのいずれの発現も誘導しなかった。
【0318】
(実施例22:IL−22はTh
IL−17系統からの新しいエフェクターサイトカインである)
最近、IL−23は、新しいIL−17産生エフェクターCD4+ T細胞系列(Th
IL−17)の発達に結びつけられている(L.E.Harrington.,Nat.Immunol.6:1123(2005);H.Park.,Nat.Immunol.6:1133(2005))。IL−23は、APCと抗原の存在下で、ナイーブCD4+ T細胞からのTh
IL−17系列細胞を誘導することができるが、抗CD3/抗CD28により活性化された精製ナイーブT細胞に適用された場合にIL−17産生を開始することはできない(L.E.Harringtonら,Nat.Immunol.6:1123(2005);M.Veldhoenら,Immunity 24:179(2006))。さらにTGF−βおよびIL−6は、Th
IL−17サブセット分化の新規因子であることが示唆された(M.Veldhoenら,Immunity 24:179(2006))。
【0319】
実験を行なって、IL−22は、標準TCR刺激下にIL−23により誘導された更なるエフェクターT細胞サイトカインであるうるのかどうかを調べた。DO11.10TCRトランスジェニックマウスからのCD4+ T細胞を、既に記載されたようにTh1極性化(IL−12および抗IL−4)、Th2極性化(IL−4、抗IL−12および抗IFN−γ)、Th
IL−17極性化(IL−23、抗IFN−γおよび抗IL−4)またはTh0(抗IL12/23p40、抗IFN−γおよび抗IL−4)条件下で4日間、0.3μMのOVAペプチドにより活性化した(L.E.Harringtonら,Nat Immunol 6:1123(2005))。RNAをこの細胞から抽出し、リアルタイムPCRを実施して、多様なマウスサイトカインをコードするmRNAの発現を検出した(
図34Aのグラフ上に示す)。さらに、ELISAを培養上清について行なって、多様なサイトカインの発現をタンパク質レベルで検出した。
図34Aに示されるように、IL−17はIL−23により誘導されたが、IFN−γおよびIL−4はTh1細胞とTh2細胞によってそれぞれ産生された。IL−22は、IL−17を産生するTh
IL−17細胞から、mRNAとタンパク質の両レベルで産生された。
【0320】
IL−22は十分に関係付けられたTh
IL−17系列からの新しいエフェクターサイトカインであるかどうかを決定するために、上記のような極性T細胞を2日間静止し、次に、IL−23の存在下または非存在下でプレート結合抗CD3(10μg/ml)および抗CD28(5μl/ml)により2日間再刺激した。ELISAを実施して、
図34Bのグラフ上に示されたマウスサイトカインの発現を検出した。IL−17は、IL−23の非存在下でも、Th
IL−17サブセットから特異的に産生され、IL−23は、IL−17産生を増強したことを結果は示した。IL−23は、関係付けられたTh1細胞およびTh2細胞からのIL−17産生を促進することはできなかった。IL−22は、IL−17と同一の発現パターンを示し、IL−22は、この新しいTh
IL−17サブセットにより発現する真のエフェクターサイトカインであることを示した。
【0321】
IL−23レセプターは、活性化/記憶T細胞上に発現することが既に報告された(C.Parhamら,J Immunol 168:5699(2002))。上記実験は、IL−23が記憶T細胞に作用してIL−22を産生する可能性を排除しなかった。これにさらにじっくりと取り組むために、上記の研究を、DO11.10TCRトランスジェニックマウスから単離されたナイーブのCD4+ T細胞を用いて繰り返した。具体的には、Rag2
−/−.DO11.10TCRトランスジェニックマウスからのCD4+
T細胞を、OVAペプチドをパルスしたBALB/c脾臓フィーダー細胞(照射後、T細胞欠乏)により、
図35Aに示されたようにTh1極性化条件(IL−12および抗IL−4)、Th2極性化条件(IL−4、抗IL−12および抗IFN−γ)、Th
IL−17極性化(IL−23、抗IFN−γおよび抗IL−4)または他の条件下で72時間刺激した。該図面に示されるように、Th
IL−17細胞は最大レベルのIL−22を産生したが、Th1も検出可能な量のIL−22を分泌した。さらに、IFN−γまたはIL−4のいずれかの添加はIL−17産生を完全に消失させた;しかし、これらの2種のサイトカインのみがIL−22産生を中程度に阻害した(
図35A)。これらのデータは、IL−22発現に対するIL−17の誘導のために潜在的に異なる経路を示唆する。しかし、完全に確立されたTh
IL−17細胞は示された二次条件での48時間の再刺激でIL−17およびIL−22の両方を産生した(
図35B)。IL−23は、IFN−γまたはIL−4のいずれかにより遮断されなかった方法でこれらのサイトカインの量をさらに増やした(
図35B)。これらのデータから、このTh
IL−17系列の安定性が確認される。
【0322】
IL−17およびIL−22が、活性化中に同じ細胞により産生されるかどうかをさらに調べるために、Th
IL−17細胞をPMAおよびイオノマイシンにより刺激し、IL−22またはIL−17に対する抗体を細胞内染色のために使用した。
図35Cに示されるように、IL−17産生細胞は主にTh
IL−17軸から観察された(左パネル)。IL−22産生細胞は、Th
IL−17系列からも優勢に検出された(右パネル)。IL−22およびIL−17の両方の共染色は、Th
IL−17系列からの実質的な部分の細胞がIL−22およびIL−17を同時に産生することを明らかにし、IL−22およびIL−17が同じ細胞から産生されることを示した。
【0323】
上記のように、最近の研究は、IL−23が、精製されたナイーブのCD4T細胞からの新規なIL−17産生を誘導できなかったので、APCからの他の因子はナイーブのCD4+ T細胞からのIL−17産生T細胞の分化の主な推進力であることを示唆している(M.Veldhoenら,Immunity 24:179(2006))。ナイーブのCD4T細胞からのIL−17の産生に必須な因子の2つがTGF−βおよびIL−6と同定された(同文献)。これらの因子がマウスにおけるIL−22産生にも必須であるかどうかを決定するために、精製されたナイーブCD4T細胞(>98%)をプレート結合抗CD3(10μg/ml)および可溶性抗CD28(5μg/ml)で刺激した。既報のデータに一致して、IL−23よりはむしろTGF−βおよびIL−6が、IL−17産生を誘導した(
図36A、右パネル)。驚くべきことに、IL−17の誘導とは対照的に、IL−22は、依然としてIL−23の存在下においてのみ誘導され、TGF−βおよびIL−6によっては誘導されなかった(
図36A、左パネル)。これらのデータは、IL−17およびIL−22の転写は異なって調節されうることを示唆する。しかし、既に報告されたように、TGF−βおよびIL−6は、IL−23なしに、長期にIL−17を産生するT細胞系列を確立することはできなかった(
図36B)。したがって、これらのデータはIL−23が、IL−22を産生するT細胞サブセットを駆動する主要因子の1つであることを示す。
【0324】
次に、本発明者らは、類似のIL−22産生T細胞系列がヒトCD4T細胞から確立し
うるかどうかを調べた。本発明者らは、IL−23が、Th
IL−17極性化条件に抗CD3/抗CD28で刺激された精製されたナイーブヒトCD4+ T細胞からのIL−22分泌を誘導しうることを発見した(
図36C、左パネル)。これらの細胞は、外因性のIL−23を再び添加することのない再刺激でIL−22を産生することができ(
図36C、右パネル)、安定なT細胞系列の形成を示した。これらの細胞は、上記のマウス研究と類似の条件下で培養されたが、本発明者らは、上記アッセイ制限を超えてIL−17産生を検出することはできなかった(データは示さず)。
【0325】
結論として、データは、IL−23が、マウスとヒトのナイーブCD4T細胞からIL−22産生T細胞サブセットを誘導できることを初めて確証する。IL−17のこの系列による産生は他の環境因子に依存する。標準的な抗原およびAPCの刺激条件下で、IL−23は、IL−22およびIL−17の両方を産生するT細胞サブセットの駆動力となる。さらに、ナイーブT細胞が抗CD3および抗CD28により活性化された場合に、IL−23はさらにIL−22産生を刺激した。ナイーブのT細胞から一過性のIL−17産生(ただし、長期の系列コミットメントではない)を誘導することができるTGF−βおよびIL−6はIL−22産生を推進することはできなかった。
【0326】
(実施例23:IL−19、IL−20およびIL−24は表皮肥厚も誘導する)
IL−22は、乾癬性皮膚で高度発現を示すIL−19、IL−20およびIL−24等のサイトカインのファミリーに属する。これらのサイトカインを調べて、それらがIL−22のように表皮過形成および表皮肥厚を誘導することができるかどうかも決定した。RHEを4日間培養し、20ng/mlのIL−19、IL20、IL−22またはIL−24または6ng/mlのEGFにより処理した。処理されたRHEをH&Eで染色した。結果を
図37Aに示す。すべてのサイトカインは、双頭矢印の増加した長さにより示されるように、可変有核表皮の表皮肥厚を誘導した。前の観察(上記)と一致して、IL−22は低顆粒症を誘導するか、または顆粒細胞層(矢じり)の減少、ならびに低角質層(アスタリスク)のガラス質化を誘導した。さらに、IL−20は、7日間培養したRHEに不全角化を誘導した(データは示さず)。低顆粒症と不全角化は、乾癬のしばしば観察される組織学的特徴である。IL−19、IL−22およびIL−24は、顆粒細胞層または角質層のいずれかにも明らかな効果をほとんど示すことなく上皮性表皮肥厚のみを誘導した。EGFは、低顆粒症を有する上皮性表皮肥厚および顆粒層内のケラチノサイトの緻密化(矢印)とを誘導した。IL−19、IL20、IL−22またはIL−24により誘導された表皮肥厚は独立した実験で定量化され、
図38にグラフで示す。IL−22が最大の効果を有した。乾癬に関与すると考えられる炎症性サイトカインTNF−α、IFN−γおよびIL−1βは、このRHE系ではケラチノサイトの増殖を誘導しなかった(データは示さず)。したがって、これらのサイトカインは乾癬において二次的な役割を果たすか、またはIL−19、IL−20、IL−22および/またはIL−24とは独立した経路に関与するのであろう。
【0327】
免疫組織化学を用いて、表皮過形成のマーカーであるサイトケラチン16(CK16)を検出した。IL−24、IL−22およびEGFは、非角化表皮全体にわたってCK16発現を誘導したが、IL−19およびIL−20は、丘陵帯(basal zone)でCK16発現を誘導するだけだった(
図37B)。
【0328】
免疫組織化学を用いて、乾癬等の一定の過剰増殖性および炎症性皮膚状態で上方制御される幾つかのS100ファミリータンパク質の1つであるプソリアシン(S100A7)を検出した。IL−19、IL−20、IL−22およびIL−24はすべて基底上表皮でS100A7発現を誘導したが、このうちIL−22とIL−24が最大の効果を有した(
図37C)。S100A7染色はケラチノサイトの核および細胞質で観察され、一部のタンパク質は細胞外にも現れている。
図37BとCに示される結果を定量し、
図37E
とFにグラフに示す。
【0329】
さらに、免疫組織化学を用いて、STAT3のトランス活性化形であるpY(705)−STAT3を検出した。活性化STAT3は乾癬病巣皮膚で増加することが示された。IL−19、IL−20、IL−22およびIL−24のすべてが、すべての生存細胞層に見られるRHEケラチノサイトにおいて、その核局在化により示される持続性STAT3活性化を誘導した(
図37D)。
【0330】
(実施例24:IL−20およびIL−22のレセプターに対する遮断抗体はプソリアシン発現を低減する)
IL−19およびIL−20の両方が、IL20RaおよびIL20Rbのレセプターへテロダイマーを通じて信号を送る。IL−22は、IL−22RおよびIL10R2のヘテロダイマーを通じて信号を送る。RHEから単離されるか、または正常ヒト表皮ケラチノサイト(提供新生児包皮由来のNHEK)の初代培養物から単離されたケラチノサイト上のこれらのレセプター成分の細胞表面発現を流動細胞計測法により調べた。下記モノクローナル抗体:(本研究の目的のためにマウスに産生された)抗IL20Ra;(本研究の目的のためにマウスに産生された)抗IL20Rb;(上記の)抗IL−22R抗体7E9;および(PEに結合させた)抗IL−10R2 FAB874P(R&D Systems,Minneapolis,MN)をフローサイトメトリーに使用した。結果を
図39に示す。各抗体が結合するレセプター成分を各グラフの右上に示す(IL−22Rは「IL−22R1」と名付けられている)。IL−20RbおよびIL10R2は、コンフルエンス、継代数、および培地中のカルシウム量にかかわらずNHEKの表面に一貫して発現した(
図39A)。対照的に、NHEK上のIL−20RaおよびIL−22R1の両方の細胞表面発現は、ドナーによって変わり、一貫して比較的低いが、検出可能なレベルにあった(
図39Aおよびデータは示さず)。単層NHEKでの発現レベルと比較して、IL−20RaおよびIL−22Rは、RHEから単離されたケラチノサイト上で非常に高いレベルで発現する(
図39B)。この違いの理由は知られていない。しかし、それでも、分析されたレセプター成分のすべてはヒトケラチノサイト上に発現することは明らかである。免疫細胞(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞および単球)上のこれらのレセプター成分の発現は検出されなかった(データは示さず)。したがって、これらのレセプター成分のリガンドは、免疫系とケラチノサイト異常との関連性を提供するものであろう。
【0331】
上記抗体が、前記実施例に記載されたように、IL−19、IL−20およびIL−22処理の効果を遮断することができるかどうかを調べるために、20マイクログラム/mlの抗IL20Ra、抗IL20Rbまたは抗IL−22Rを、20ng/mlのIL−19、IL−20またはIL−22を加える1時間前にRHE培養培地に添加した。次に、培地を二日目に変えて(サイトカインと抗体とを含む4.5mlの新鮮な培地)、RHEを4日間培養した。次に、RHEをプソリアシン(S100A7)に関して免疫組織化学により染色した。結果を
図40に示す。IL−19、IL−20およびIL−22で処理されたRHEを第1列、第2列および第3列にそれぞれ示す。抗IL20Ra(αIL−20Ra)、抗IL20Rb(αIL−20Rb)または抗IL−22R(αIL−22Rl)で前処理されたRHEを第3カラム、第4カラムおよび第5カラムにそれぞれ示す。抗体コントロールおよびアイソタイプコントロール抗体は、第1カラムと第2カラムには示されない。
【0332】
抗IL20Raまたは抗IL20RbのいずれもプソリアシンのIL−19誘導性の発現を効率的に遮断したことを結果は示す。同様に、抗IL−22Rは、プソリアシンのIL−22誘導性の発現を効率的に遮断した。抗IL−20Rbは、プソリアシンのIL−20誘導性の発現を効率的に遮断したが、抗IL−20Raはそうではなかった。同様に
、抗IL−22RはプソリアシンのIL−20誘導性の発現を遮断することができなかった。
【0333】
プソリアシンのIL−20誘導性の発現に対する抗IL−22Rと抗IL−20Raの効果をさらに調べるために、RHEを、IL−20による処理前にこれらの抗体により単独または組み合わせて前処理した。結果を
図41に示す。上記のように、抗IL−22Rまたは抗IL−20Raのいずれも単独ではプソリアシンのIL−20誘導性の発現を遮断できなかった(第2カラム、両パネル)。しかし、抗IL20Raおよび抗IL−22Rの両方の組合せは、プソリアシンのIL−20誘導性の発現を有効に遮断し、IL−20RaおよびIL−22RがヒトケラチノサイトにおいてIL−20シグナル伝達に相補的役割を有することを示唆した(左下のパネル)。
【0334】
(実施例25:IL−19、IL−20、IL−22およびIL−24は類似する遺伝子発現特性を誘導する)
IL−19、IL−20、IL−22およびIL−24により誘導される遺伝子を同定するために、RHEを、20ng/mlのL−19、IL−20、IL−22またはIL−24により4日間処理した。RNAを調製し、cDNAを、54,675種のプローブセットを含むAffymetrix U133 Plus Gene Chips(Affymetrix,Santa Clara,CA)にハイブリダイズさせた。これらのデータを、発現が少なくとも2倍増加した遺伝子について分析した。IL−20、IL−22およびIL−24は類似の遺伝子発現特性を示した。IL−20、IL−22およびIL−24により共通して誘導される上位20遺伝子のうち、7種は、乾癬に関連することが既に報告された遺伝子であった。これらの遺伝子は、プソリアシン(S100A7)、S100A12、SCCA2、SERPINB4、CCL20、CD36およびStat3である。
【0335】
IL−20、IL−22およびIL−24により誘導される遺伝子が乾癬で上方調節を示すかどうかを調べるために、上記のマイクロアレイ分析を乾癬性皮膚の以前のマイクロアレイ研究(Zhouら(2003)Physiol.Genomics 13:69−78)と比較した。当該研究は異なるマイクロアレイチップを用いて実施されたので、当該研究と本研究との間で共通する参照配列のみを比較した。乾癬性皮膚で上方制御された468種の参照配列のうち、356種の配列が、IL−20、IL−22およびIL−24により誘導され、それらのうち188種の配列が有意であった(p<0.05)。まとめると、上記研究は、IL−20、IL−22およびIL−24により誘導される遺伝子と、乾癬性皮膚で上方制御される遺伝子との間に実質的な重複部分を明らかにする。
【0336】
(実施例26:材料の寄託)
下記のハイブリドーマ細胞株をAmerican Type Culture Collection(ATCC)(10801 University Blvd、Manassas、VA20110−2209、USA)に寄託した:
【0337】
【化4】
寄託は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約の規定およびとそれに従う規則(ブダペスト条約)に基づいて行なった。これは、寄託日から30年間生存培養物の維持を保証する。細胞株は、ブダペスト条約の条件にしたがってATCCにより利用可能とされ、(a)培養物を利用する機会は、特許出願の係属中、長官により37CFR§1.14および35USC§122に基づく資格を与えられた者に可能となること、(b)このように寄託された培養物の公共への利用可能性に対するすべての制限は、特許付与と同時に取り消しできないように解消することを保証するジェネンテック社とATCCとの合意に制約される。
【0338】
本出願の出願者は、寄託培養物が、適当な条件での培養中に死滅または失われるか、破壊された場合に、それを、通知されれば即座に同じ培養物の生存サンプルに置き換えることに同意している。寄託された細胞株の利用可能性は、特許法にしたがって政府の支配下に付与された権利に違反して本発明を実施することを認可するものと解釈されるべきものではない。
【0339】
前述の明細書は、当業者が本発明を実施可能とするのに十分であるとみなされる。寄託された具体物は、本発明の一定の態様の単一の例示を意図するものであり、機能的に等価な構築物のいずれも本発明の範囲にあるので、本発明は寄託された材料により範囲が限定されるものではない。ここでの材料の寄託は、ここに含まれる記載された説明が、最良の態様等、本発明の態様を実施するには不十分であるとの了承を構成するものでなく、また、請求の範囲を、寄託物が表す特定の例示に限定すると解釈されるべきものでもない。実際、ここに示され、説明された変更修正に添加して、本発明の多様な変更修正が、前記の説明から当業者に明らかとなるであろうし、添付の請求の範囲に入るものである。