(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305971
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】遠心ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/42 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
F04D29/42 K
F04D29/42 J
F04D29/42 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-231590(P2015-231590)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2017-96225(P2017-96225A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】奈良 精久
(72)【発明者】
【氏名】藤本 征也
【審査官】
岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−138844(JP,A)
【文献】
特開平11−107981(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3157100(JP,U)
【文献】
特開2012−61334(JP,A)
【文献】
特開2013−47483(JP,A)
【文献】
特開2013−24208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のケーシングと第2のケーシングの間にインペラが配置された構造を有する遠心ファンであって、
前記第1のケーシングの外周には、径方向外側に向かって突出し、前記第2のケーシングとの結合に利用される円筒状の部分を有したフランジ部が設けられ、
前記円筒状の部分と前記第1のケーシングの間には、軸方向に立設し径方向に延在する径方向リブが形成され、
前記フランジ部の側壁と前記第1のケーシングの側壁との間には、周方向に延在する周方向リブが形成されていることを特徴とする遠心ファン。
【請求項2】
前記円筒状の部分は、前記第2のケーシングの方向に延在し、
前記円筒状の部分によって前記第1のケーシングと第2のケーシングの間の隙間の寸法が決定され、
前記隙間に前記インペラが回転可能な状態で保持されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心ファン。
【請求項3】
前記円筒状の部分に前記第1のケーシングと前記第2のケーシングとを結合する締結部材が固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の遠心ファン。
【請求項4】
前記第1のケーシングは、
軸方向に立設し径方向に延在するリブと軸方向に立設し周方向に延在するリブとが格子状に設けられた補強構造を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の遠心ファン。
【請求項5】
前記周方向リブは、軸方向において、前記フランジ部の側壁の略中央に位置していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の遠心ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
家電機器、OA機器、産業機器の冷却、換気、空調、車両用の空調、送風などに広く用いられている送風機として、遠心ファンが知られている。従来の遠心ファンとして、ケーシングが上ケーシングと下ケーシングとからなり、上ケーシングと下ケーシングの間にインペラを収納し、インペラの回転に伴って吸い込み口から吸入した空気を上ケーシングと下ケーシングの間の側面に形成された吹き出し口から外方に向けて排出する遠心ファンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、特許文献1に記載の遠心ファン100で、四角形のケーシング120が上ケーシング121と下ケーシング122からなり、上ケーシング121と下ケーシング122の間にインペラ130を収納している。インペラ130は環状のシュラウド131を備えている。インペラ130の高速回転により、吸込み口110から吸い込まれた空気は、羽根135の間を通過してインペラ130の外周から外方に吹き出され、上ケーシング121と下ケーシング122の間の側面に形成された吹出し口111から外方に向けて排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−207600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠心ファンはそのコスト低減の要望が求められている。特許文献1に記載された遠心ファンのケーシングを構成する上ケーシング121は樹脂で形成されているが、遠心ファンのコスト低減において、樹脂材料の低減を図る必要がある。
【0006】
本発明は、樹脂材料の削減を図ることで、コストを低減した遠心ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、第1のケーシングと第2のケーシングの間にインペラが配置された構造を有する遠心ファンであって、前記第1のケーシングの外周には、径方向外側に向かって突出し、前記第2のケーシングとの結合に利用される円筒状の部分を有したフランジ部が設けられ、前記円筒状の部分と前記第1のケーシングの間には、軸方向に立設し径方向に延在する径方向リブが形成され、前記フランジ部の側壁と前記第1のケーシングの側壁との間には、周方向に延在する周方向リブが形成されていることを特徴とする遠心ファンである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記円筒状の部分は、前記第2のケーシングの方向に延在し、前記円筒状の部分によって前記第1のケーシングと第2のケーシングの間の隙間の寸法が決定され、前記隙間に前記インペラが回転可能な状態で保持されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記円筒状の部分に前記第1のケーシングと前記第2のケーシングとを結合する締結部材が固定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記第1のケーシングは、軸方向に立設し径方向に延在するリブと軸方向に立設し周方向に延在するリブとが格子状に設けられた補強構造を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記周方向リブは、軸方向において、前記フランジ部の側壁の略中央に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、樹脂材料が削減され、コストを低減した遠心ファンが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)遠心ファンの基本構造について
図1には、実施形態の遠心ファン1の断面図が示されている。
図2には、遠心ファン1の分解斜視図が示されている。
図3には、
図1の一部を拡大した断面図が示されている。遠心ファン1の基本構造は、特許文献1に記載された構造と略同じである。遠心ファン1は、ケーシング2を備えている。ケーシング2は、上ケーシング3と下ケーシング4から構成されている。上ケーシング3と下ケーシング4の間にインペラ8が回転可能状態で収納されている。インペラ8の回転に伴って吸い込み口35から吸入した空気が羽根10の間を通過して上ケーシング3と下ケーシング4の間に介装された支柱7を除いた側面に形成された吹き出し口36からケーシング2の外方に向けて排出される。
【0015】
インペラ8は、モータ21によって駆動され回転する。モータ21はアウターロータ型のブラシレスDCモータであり、モータベース5に形成した凹部5aの底面に装着されている。モータ21は、ステータ22を備えている。ステータ22は、軸受保持部26の外側に固定されている。ステータ22は、ステータコア23を備えている。ステータコア23は、電磁鋼板等の磁性材料で構成される薄板状のコアを所定枚数、積層した構造を有している。コアは、環状ヨークから径外方に延在する複数のティース(
図3では6個のティースを有している)を有している。
【0016】
ステータコア23の軸方向両側には、樹脂製の上インシュレータ24aと下インシュレータ24bからなるインシュレータ24が装着されている。インシュレータ24を介してステータコア23のティース(極歯)には、コイル25が巻回されている。軸受保持部26をステータコア23の中央に形成された開口に嵌合させることで、軸受保持部26の外側にステータ22が配設されている。
【0017】
モータ21の下インシュレータ24bには回路基板30が装着されている。回路基板30は凹部5aの中に収納されている。軸受保持部26の内側には軸受27、28が装着され、軸受237と28は、シャフト16を回転可能に支持している。ロータ15は、シャフト16と、シャフト16に装着されたボス17部と、ボス部17に装着されたカップ状態のロータヨーク18と、ロータヨーク18の内側に固着された環状のマグネット19と、から構成されている。ロータヨーク18はボス部17にカシメ固着されている。
【0018】
インペラ8は、環状のシュラウド9と複数の羽根10と円板状の主板11から構成されている。羽根10と主板11は樹脂の射出成型で一体に成形されている。羽根10は、主板11から軸方向に立設し、回転方向に対して後向きに湾曲傾斜した形状を有し、回転方向に対して後向き羽根(いわゆる、ターボ型)を構成している。羽根10は全て同じ形状である。羽根10と環状のシュラウド9との結合は例えば超音波溶着によって接合されている。環状のシュラウド9の上面は2箇所の段部を有し、各段部は平面で、各段部の間は傾斜面を形成し、環状のシュラウド9の軸方向上端には環状の突起部9aが形成されている。この上段部の平面によって羽根10と環状のシュラウド9とを超音波溶着で結合する際、強固な溶着が得られるようになっている。環状のシュラウド9の軸方向上端に形成された環状の突起部9aの頂部は上ケーシング3の下面に形成された環状の凹部(溝)3fの中に位置し、上ケーシング3で覆われている。
【0019】
インペラ8の主板11は、内周側と外周側との間に傾斜面11aを有している。つまり、インペラ8の内周側は軸方向上方に位置し、インペラ8の外周側は軸方向下方に位置し、この内周側と外周側との間に傾斜面11aを有している。インペラ8とロータ15は、以下のようにして結合されている。まず、環状のフランジ20がロータヨーク18の外周面に、例えば抵抗溶接にて溶着されている。他方で、主板10の内周側の下面には一体成形にて形成したピン(図示省略)が設けられ、このピンをフランジ20に形成した貫通穴に嵌合させ、ピンの先端を熱で潰して熱カシメすることで両者が結合され、ロータ15にインペラ8が装着されている。
【0020】
図4には、上ケーシング3の上面図が示され、
図5には、上ケーシングの側面図が示されている。上ケーシング3は軸方向の長さの短い円筒状の形状を有し、外周部には径外方に延在するフランジ部41が4箇所、形成されている。フランジ部41の軸方向両端面にはそれぞれ軸方向に突出する円筒状の突出部が形成され、下側の円筒状の突出部は支柱7となっている。上側の円筒状の突出部は、突出部41cとなっている。突出部41cの外周からは上ケーシング3の側壁に向けて径方向に延在する径方向リブ41bが立設して形成されている。また、フランジ部41の側壁(径方向に延在する壁面)の両側からは、上ケーシング3の側壁3cに向けて周方向に延在する周方向リブ41aがそれぞれ形成されている。径方向リブ41b及び周方向リブ41aによってフランジ部41は、上ケーシング3に対して歪みや捻じれが生じないように補強されている。
【0021】
上ケーシング3の上面側で、吸込み口35の外側には複数の凹部3a(肉盗み部分)が形成されており、その間には吸込み口35の中心から放射状に均等の角度でリブ3dが形成されており、また半径方向にも同心状に環状のリブ3eが複数列で形成されている。この上ケーシング3の上面に形成されたリブ3d、3eは格子状に形成され上ケーシング3を補強している。
【0022】
上ケーシング3、フランジ部41、上側の円筒状の突出部41c、下側の円筒状の突出部(支柱7)、径方向リブ41b及び周方向リブ41a、上ケーシング3の上面のリブ3d、3eは樹脂の射出成型で一体に成形されている。また、上ケーシング3の外径はインペラ8(環状のシュラウド9)の外径より大径に設定されている。
【0023】
上ケーシング3の環状の突起部3bの下面(インペラの環状のシュラウド9に対向する面)には環状の凹部(溝)3fが形成されており、環状のシュラウド9の軸方向上端に形成された環状の突起部9aの頂部は、上記環状の凹部(溝)3fの中に位置し、周囲に隙間を有した状態で上ケーシング3によって覆われている。ここで、環状シュラウド9の突起部9aの側面と上ケーシング3との間に形成された隙間でラビリンスシール構造が構成されている。このラビリンスシール構造によってインペラ8の外周から吹き出された空気の一部が吸込み口35に逆流することが防止されている。
【0024】
上ケーシング3と下ケーシング4の結合は、上ケーシング3と下ケーシング4の間に支柱7を介装し、支柱7をねじ等の締結部材で締結することで行われている。具体的には、上ケーシング3と下ケーシング4の位置を合わせた後に、貫通孔5dと6dを介して支柱7に形成した下穴にタッピンねじ40をねじ込ませ締め付けることで、上ケーシング3と下ケーシング4が結合されている。なお、締結手段はこれに限定されない。例えば、下ケーシング4側からねじ(またはボルト)を貫通孔に挿通し、上ケーシング3側からナットで固定する構成であってもよい。
【0025】
下ケーシング4は、金属製(例えば、鉄板)のモータベース5と、樹脂製のベースプレート6とから構成されており、両者を重ね合わせて下ケーシング4が形成されている。モータ8は、モータベース5に形成した凹部5aの底面に装着されている。ベースプレート6の外周端の4箇所に下方に延在する側部6aが形成されており、この側部6aの内側がモータベース5の4辺の外周に当接し、位置決めが行われている。
【0026】
回路基板30にはモータ21を駆動制御するための部品や制御ICなどの電子部品31が実装されている。このため、限られた空間で回路基板30に実装された電子部品31とインペラ8との接触を防止するために、主板11には傾斜面11aが形成されており、この傾斜面11aの位置に電子部品31の一部が収容されている。この構造により、電子部品31とインペラ8との接触が防止できると共に、軸方向の薄型化が図られている。
【0027】
(2)実施形態の特徴について
遠心ファン1は、上ケーシング3と下ケーシング4の間にインペラ8が配置された構造を有する遠心ファン1であって、上ケーシング3の外周には、径方向外側に向かって突出し、下ケーシング4との結合に利用される円筒状の部分である支柱7を有したフランジ部41が設けられ、支柱7と上ケーシングの間には、軸方向に立設し径方向に延在する径方向リブ41bが形成され、フランジ部41の側壁と上ケーシングの側壁3cとの間には、周方向に延在する周方向リブ41aが形成されている。
【0028】
径方向リブ41bと周方向リブ41aによって、上ケーシング3に対するフランジ部41の一体強度を高く確保でき、上ケーシング3に対してフランジ部41が傾いたり歪んだりすることを防止した構造が得られる。
【0029】
周方向リブ41aは、上ケーシング3のフランジ部41の側壁の両側から上ケーシング3の側壁3cに向けてそれぞれ形成されている。この周方向リブ41aは、軸方向において、フランジ部41の側壁の略中央に位置するように形成されている。この構造によれば、周方向リブ41aによってフランジ部41の周方向における補強が行われる。
【0030】
図4に示すように、周方向リブ41aは、吸込み口35の中心と突出部41cの中心を結ぶ線に対して、それぞれ周方向にθ=45°未満の範囲に位置されている。θの値は、それぞれ周方向にθ=30°未満の範囲に位置することが好ましく、補強強度を確保できる範囲で狭い範囲に形成する方が、支柱7を締結した際、フランジ部41の変形、ひいては上ケーシング3の変形を防止する効果が得られる。
【0031】
支柱7は、下ケーシング4の方向に延在し、支柱7によって上ケーシング3と下ケーシング4の間の隙間の寸法が決定され、この隙間にインペラ8が回転可能な状態で保持されている。また、支柱7の部分に締結部材(例えばタッピングねじ40)がねじ込まれ固定されることで上ケーシング3と下ケーシング4とが結合している。また、上ケーシング3は、軸方向に立設し径方向に延在するリブ3dと軸方向に立設し周方向に延在するリブ3eとが格子状に設けられた補強構造を有する。
【0032】
以上の構造によれば、樹脂の使用量を削減しつつ、フランジ部41の上ケーシング3に対する一体性を高くでき、上ケーシング3の構造を強固なものとできる。すなわち、上ケーシング3が必要とする樹脂の量を抑えつつ、フランジ部41や上ケーシング3の変形が生じ難い構造が得られる。このため、インペラ8が上ケーシング3に接触することが防止でき、接触による異常音や、接触による負荷の増加によってインペラ8を回転させるためのモータ21の駆動電流の増加が防止される。