(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記傾斜dEn/dSOE又はdSOE/dEnは、前記4値の所定の集合に含まれる関連値における前記測定された温度(T1)、前記測定された電力(P1)及び前記第1のエネルギ状態SOE1の少なくとも1つの概算によって求められる請求項1記載の方法。
前記第2のエネルギ状態SOE2は、充電フェーズにおける所定の期間に前記電気化学蓄電池に供給される電力の正の値、又は放電フェーズにおける所定の期間に前記電気化学蓄電池から出力され又は前記電気化学蓄電池から取り出される電力の負の値に関連するエネルギ量をP.dtとして、式SOE2≒SOE1+P.dt*dSOE/dEnを適用することによって求められる請求項1乃至3いずれか1項記載の方法。
電力(P)と、温度(T)と、エネルギ状態(SOE)と、残留エネルギ(En)とを含む電気化学蓄電池の動作点又は電力(P)と、温度(T)と、エネルギ状態(SOE)と、前記電気化学蓄電池のエネルギ状態SOEに基づく前記電気化学蓄電池の残留エネルギEnの傾斜dEn/dSOE又はdSOE/dEnとを含む前記電気化学蓄電池の動作点に関連する第1の4値の集合を処理する方法において、
前記第1の4値の集合に基づいて、補間によって、第2の4値の集合を生成するステップ(E1)であって、
a.温度(T)の補間、特に線形補間を行い(E1−1)、
b.電力(P)及びエネルギ状態(SOE)の補間、特に3次スプライン補間を行う(E1−2)ステップ(E1)と、
電力(P)と、温度(T)と、エネルギ状態(SOE)と、少なくとも前記第2の4値の集合に基づく前記電気化学蓄電池のエネルギ状態SOEの関数としての前記電気化学蓄電池の残留エネルギEnの傾斜(dEn/dSOE,dSOE/dEn)とを含む前記電気化学蓄電池の動作点に関連する第3の4値の集合を構成するステップ(E2)とを有する方法。
前記第1の4値の集合に基づいて温度の補間を行い(E1−1)、続いて、前記温度の補間(E1−1)によって得られた中間集合に基づいて電力及びエネルギ状態の補間を行う(E1−2)請求項13乃至15いずれか1項記載の方法。
【背景技術】
【0004】
従来の蓄電池状態インジケータは、蓄電池に蓄積されている電荷の量の評価に基づいている。蓄電池から取り出される及び/又は蓄電池に供給される電流の強度の測定値を積分することによって、「充電状態(State Of Charge:SOC)」インジケータを作成することができる。
【0005】
換言すれば、以下の公式が適用される。
【0006】
【数1】
【0007】
ここで、Qは、時刻tにおいてバッテリに蓄積されている電荷の量をクーロンで表し、Q0は、バッテリに蓄積された初期の電荷の量をクーロンで表し、Qmaxは、バッテリの最大の(フル充電時の)電荷の量をクーロンで表し、SOCは、充電状態をパーセンテージで表している。
【0008】
この従来の充電状態インジケータは、蓄電池における損失、特に蓄電池の内部抵抗に起因する損失を考慮できない点が不十分である。
【0009】
実際、蓄電池の内部抵抗が大きい程、再生されるエネルギ量が小さくなる。この場合、蓄電池が非常に大きな量の電荷を蓄積していても、実際に使用可能な電荷が少なくなる。したがって、蓄電池の内部抵抗が高い程、充電状態の値が不正確になる。
【0010】
したがって、蓄電池の実際の状態を表す他のインジケータが求められている。
【0011】
特許文献FR2947637は、蓄電池のエネルギ状態を特徴付ける方法を開示している。
【0012】
この方法では、
図1に示すように、3次元空間にマッピングして表現することができるSOE(Whで表されるエネルギ状態)、P(Wで表される取り出された使用可能な電力)及びEn(Whで表される残留エネルギ)の値の集合を定義して、蓄電池の挙動の幾つかの特徴点を判定する。
【0013】
エネルギ状態は、基準電力において使用可能なエネルギに関連する。この基準電力は、使用可能なエネルギが最大となる電力であってもよい。エネルギ状態(State Of Energy:SOE)は、0〜1、すなわち、0%〜100%の範囲で変化する。例えば、基準電力における基準エネルギが10Whである蓄電池について、SOE=50%、P=20W、En=3Whの実験点を選択すると、これは、蓄電池が実際に20Wの電力で使用されている場合、(5Whではなく)3Whの残留エネルギを提供できることを意味する。
【0014】
このような推論を可能にする
図1のSOE値は、標準の蓄電池又はバッテリを構成する一組の蓄電池から判定でき、したがって、蓄電池の電力及び残留エネルギを制御可能な環境下で、実験室で標準化することができる。
【0015】
本発明は、特に、演算リソースが限定的である実時間のオンボードアプリケーションのコンテキストにおいて、これらのデータを用いる際に生じる問題を解決するものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
オンボードアプリケーションの一部としてエネルギ状態を判定する場合、リソースの管理は、無視できないパラメータである。このため、電気化学蓄電池の動作点に関連する第1の値の処理を集合から開始することが提案されている。各点は、温度Tである追加的な変数を考慮に入れることによって組み合わされた電力P、エネルギ状態SOE及び残留エネルギEn、又は電力P、エネルギ状態SOE及び傾斜dEn/dSOEを含む。電気化学蓄電池の内部抵抗の挙動には、温度が影響するため、ここでは、温度を組み込んでいる。
【0027】
換言すれば、第1の集合は、例えば、テーブルEn=f(SOE,P,T)又はテーブルdEn/dSOE=f(SOE,P,T)の形式で表される4値(4個一組の値:クワドラプレット:quadruplet)を表している。
【0028】
これらのデータは、
図2に示すように、マッピングの形式で表現することができる。
図2は、それぞれ、Whで表される残留エネルギ、Wで表される電力及び%で表されるエネルギ状態SOEによって定義される3次元空間を示している。この空間の各層は、そのメッシュ化の関数として、温度(この具体例では、5つの温度)に関連する仮想表面を画定している。各層の各メッシュは、4値(SOE、残留エネルギ、電力、温度)の関数として、実験的測定によって判定された動作点に対応している。実験は、自動化しても、時間が長くかかるため、動作点の数は極めて少なくしてある。したがって、これらの初期のマッピングを補足する必要がある。
【0029】
本発明の実施形態である方法のステップを詳細に説明する前に、幾つかの定義を説明する。
【0030】
「エネルギ状態(State Of Energy)」SOEは、蓄電池の公称条件下におけるエネルギの放電の仮定下で使用可能な残留エネルギE
d/PNと、公称エネルギE
Nomとの間の比として定義され、したがって、式SOE=E
d/PN/E
Nomとして表される。このSOEの値は、0〜1の範囲であり、1の値は、フル充電されたエネルギ状態に対応し、0の値は、完全な放電状態に対応する。また、この値は、パーセンテージで表してもよい。
【0031】
電力Pは、蓄電池の製造業者が推奨する電力使用範囲内の値であり、この範囲は、製造業者が直接的に指定したものであってもよく、又は例えば、この製造業者によって指定された電流の範囲を指定された公称電圧に乗算することによって推定したものであってもよい。この電力は、蓄電池の使用の状態、すなわち、充電又は放電の関数である。放電とは、蓄電池から電力Pが取り出されることを意味し、充電とは、蓄電池に電力Pが供給されることを意味する。時刻tにおいて使用可能な電力Pは、エネルギ状態及び温度に依存することがある。
【0032】
充電状態及び放電状態は、蓄電池の技術に基づいて判定される。これらは、蓄電池製造業者が推奨する情報から判定してもよく、通常、閾値電圧に基づいて判定される。
【0033】
残留エネルギEnは、蓄電池に実際に蓄積されている内部エネルギと、蓄電池の内部抵抗のジュール効果によって失われたエネルギとを考慮に入れたWhで表される蓄電池の使用可能なエネルギである。これは、以下の式で表される。
En=Ei−Ep
【0035】
傾斜の概念は、エネルギ状態の関数としての残留エネルギに関連する。これは、好ましくは、固定の電力及び温度について、残留エネルギ/エネルギ状態の対を起点とし、同じ電力及び同じ温度に関連する全ての点を通過する曲線の残留エネルギ/エネルギ状態の対によって形成された点において局所的に評価される傾斜の値に対応している。すなわち、傾斜は、dEn/dSOE又はその逆数であるdSOE/dEnに関連付けることができる。包括的に言えば、この説明において、傾斜dEn/dSOE又はdSOE/dEnは、蓄電池のエネルギ状態の関数としての蓄電池の残留エネルギの傾斜と読み替えることができる。
【0036】
第1の4値の集合は、仏国特許出願FR2947637に記載されている手法に、更に、温度を考慮に入れて生成してもよい(
図2)。したがって、この第1の集合の生成については、ここでは詳細に記述しない。この仏国特許出願には、dEn/dSOE=f(SOE,P,T)を得るためのテーブルについては説明されていないが、この仏国特許出願の開示に基づいて情報を処理して、このテーブルを取得する手法は、当業者にとって明らかである。通常、初期のテーブルの各点において、傾斜(En(i+1)−En(i))/(SOE(i+1)−SOE(i))を算出でき、ここで、iは、初期のテーブルの行を表している。
【0037】
図3は、例えば、En=f(SOE,P,T)のタイプの電力P、温度T、エネルギ状態SOE及び残留エネルギEnを含む、若しくはdEn/dSOE=f(SOE,P,T)又はこの逆数のタイプの電力P、温度T、エネルギ状態SOE及び傾斜を含む電気化学蓄電池の動作点に関連する第1の4値の集合を処理する方法の具体例を示している。
【0038】
この処理方法は、第1の4値の集合に基づいて、補間によって、第2の4値の集合を生成するステップE1を含み、このステップE1は、以下のサブステップを含む。
・温度Tについて、補間、特に線形補間を実行するサブステップE1−1
・電力P及びエネルギ状態SOEについて、補間、特に3次スプライン補間を実行するサブステップE1−2
温度の線形補間の利点は、演算の簡潔性のために、実効が容易である点である。電力及びエネルギ状態における3次スプライン補間の場合、より定常的で単調(regular and monotonic)な結果を得ることができる。
【0039】
更に、方法は、特に第1及び第2の4値の集合に基づいて、第3の4値の集合を構成するステップE2を含む。
【0040】
好ましくは、第3の4値の集合は、電力(P)と、温度(T)と、エネルギ状態(SOE)と、少なくとも第2の4値の集合に基づく蓄電池のエネルギ状態SOEの関数としての蓄電池の残留エネルギEnの傾斜(dEn/dSOE又はdSOE/dEn)とを含む電気化学蓄電池の動作点に関連する値から構成される。
【0041】
実際、第3の4値の集合を構成するこのステップE2は、より包括的に言えば、少なくとも第2の4値の集合に基づいて実現することができる。換言すれば、第3の4値の集合は、実際には、第2の4値の集合のみから構成できる。この実施形態では、第2の4値の集合を生成するステップE1と、第3の4値の集合を構成するステップE2は、単一の共通のステップを構成している。
【0042】
一実施形態では、第3の4値の集合を構成するステップは、第1及び第2の4値の集合の併合として定義できる。
【0043】
実際、「補間」の概念は、簡潔な統計的数値、この場合、第1の4値の集合に基づく判定によって構成され、新しい値は、実験的測定が実行されていない中間値に対応する。換言すれば、第1及び第2の4値の集合は、好ましくは、別個である。この結果、第1及び第2の集合を併合することによって、可能な限り多数の値を含む第3の集合を得ることができる。
【0044】
このように、蓄電池の既知の動作点は、通常、実験データに由来し、標準の蓄電池について測定された第1の4値の集合に基づいて補足される。これは、オンボードアプリケーションのアップストリーム側の高性能マシンによって実現でき、したがって、オンボードアプリケーションは、多くの複雑な演算を実行することなく、これらの結果を利用することができる。
【0045】
図3の特定の具体例は、まず、En=f(SOE,P,T)によって構成される第1の4値の集合に基づいて、温度の補間、好ましくは、線形補間を行うことができることを示している。次に、温度の補間によって得られた中間集合に基づいて、電力とエネルギ状態の補間、例えば、3次スプライン補間を行う。したがって、第2の集合は、中間集合と、この中間集合の電力及びエネルギ状態の補間によって得られた集合との併合に対応している。
【0046】
したがって、中間集合は、第1の集合と、温度の補間の間に得られたデータとの併合に対応している。したがって、第3の集合は、中間集合と、この中間集合の電力及びエネルギ状態の補間によって得られた集合との併合に対応している。
【0047】
図3の特定の具体例では、実験的発見に基づいて、En=f(SOE,P,T)のタイプの元のテーブルが得られ、SOEの6つの異なる値と、電力Pの6つの異なる値と、温度Tの8つの異なる値との組合せについて、残留エネルギ値を求める。
【0048】
温度の補間、好ましくは、線形補間では、1℃毎に一連のデータを取得し、すなわち、ステップE1−1において、6個の電力×6個のエネルギ状態について、91個のデータを連続的に取得する。
【0049】
そして、これらの一連のデータに対して、20個の電力及び20個のエネルギ状態の補間、好ましくは、3次スプライン補間を行う(ステップE1−2)。
【0050】
図4は、電力及びエネルギ状態SOEにおける補間の表現の具体例を示している。
図4では、説明を明瞭にするために、温度の補間の結果を示しておらず、補間後の91個の層のうち、実験による温度に関連する5つの層のみを示している。
【0051】
このように、SOEの6個の点、電力Pの6個の点及び温度Tの8個の点、すなわち、エネルギの288個の点の実験データに基づいて、SOEの20個の点、電力Pの20個の点及び温度Tの91個の点の集合、すなわち、エネルギの36400個の点を生成する。
【0052】
倍精度浮動小数点符号化すなわち、1つの値あたり8バイトによる符号化では、第3の集合は、36400×8=291200バイトで表現される。
【0053】
91個の温度に亘る補間は、蓄電池の通常の動作範囲に亘って、1℃毎に直接的に行うことができるため、実用的である。当業者は、蓄電池の用途に応じて、温度の補間を適応化できる。
【0054】
図2及び
図4の比較から、
図4の層では、不規則性が滑らかになっていることがわかり、この結果、充電状態を正確に推定することができる。
【0055】
この具体例のマッピングを格納するために必要なメモリ量は、合計で300キロバイトの桁であり、特にオンボードアプリケーションにおいて、処理の集中の問題は生じない。
【0056】
補間された電力の段階の数をNpをとし、補間されたエネルギ状態の段階の数をNsoeとし、補間された温度の段階の数をNtempとすると、メモリ内に格納される4値の数は、Ntemp*Np*Nsoeとなる。
【0057】
以下の表1は、Ntemp、Nsoe及びNpの値及び符号化ビット数の関数として、第3の集合を格納するメモリサイズ(キロビット又はキロバイト)を評価した結果を示している。
【0059】
64ビットで100×100×91といった、先験的で高精度なデータ補間及び符号化を行ったとしても、メモリ量は合理的な大きさ、すなわち、8メガバイト以下であり、電子カードに容易に格納することができる。
【0060】
補間の精度は、要求されるエネルギ状態の推定の精度に応じて最適化する必要がある。使用電力及び温度に関するエネルギ状態関数の不規則性が高い程(
図2の領域Z参照)、より多数のモデリング点/動作点が望まれる。
【0061】
また、不規則性が存在する箇所のみにおいて、より多くの数の補間を行うことによって、動作点の数を増やすこともできる。これによって、アプリケーションが実行される際のメモリ内の探索の簡潔性を犠牲にして、マッピングを格納するメモリのサイズを小さくすることができる。
【0062】
マッピング、すなわち、補間から派生する追加的な動作点は、数値解析ソフトウェアを用いて、コンピュータによって生成できる。このようなソフトウェアとしては、例えば、matlab、mathcad、octave、scilab等を用いることができる。
【0063】
図5に示す1つの特定の実施形態では、第1の4値の集合及び第2の4値の集合は、電力P、温度T、エネルギ状態SOE及び残留エネルギEnを含む電気化学蓄電池の動作点、すなわち、例えば、En=f(SOE,P,T)のタイプに関連する。第1及び第2の4値の集合に基づいて第3の4値の集合を構成するステップは、電力P、温度T、エネルギ状態SOE及び傾斜dEn/dSOEを含む電気化学蓄電池の動作点、すなわち、例えば、dEn/dSOE=f(SOE,P,T)のタイプの第3の4値の集合を判定するステップを含む。これは、温度の補間、及び電力及びエネルギ状態の補間の後に、少なくとも第1の集合及び第2の集合の併合を表す4値の集合ついて行うことができる(ステップE2−1)。この場合、好ましくは、以下の手法によって、第3の4値の集合の温度T及び電力Pの組合せ毎に傾斜dEn/dSOEを得ることができる。
・それぞれが残留エネルギ及びエネルギ状態によって構成される座標の点を構成する残留エネルギ/エネルギ状態の対の集合を判定する。
・対の集合の各対について、処理された対の点及び異なる対に関連する異なる点の関数として関連する傾斜値を評価する(E2−3)。
【0064】
換言すれば、ステップE2−2では、エネルギ状態の関数として、残留エネルギのグラフを求め、残留エネルギ/エネルギ状態の各対は、グラフ上の点を構成し、この後のステップE2−3では、グラフの各点において、グラフ上の全ての点を通過する曲線を表す傾斜を局所的に評価する。
図5のステップE2−2及び
図6のグラフは、この方法を説明するために示しているだけであり、この方法では、ステップE2−2を行わなくてもよい。
【0065】
当業者は、曲線内の前の又は次の点を考慮に入れることによって、周知の手法で傾斜の局所的な評価を行うことができる。傾斜は、好ましくは、正の値であり、傾斜が負の値である場合、これは、補間のエッジ効果の影響である。実際、負の傾斜は、物理的意味を有さず、これは、蓄電池の放電中に蓄電池のエネルギ状態が高まることを意味する。実際には、残留エネルギ及びエネルギ状態は、同じ方向に変化する。しかしながら、電力及びエネルギ状態の補間の後に幾つかの傾斜が負になることがあり、この場合、これらの傾斜は、エネルギが取り出されている(又は供給されている)際の弱い放電(又は充電)を反映するように0より僅かに大きい正値となるように制限される。
【0066】
1つの変形例においては、第1の集合は、電力P、温度T、エネルギ状態SOE及び傾斜dEn/dSOEを含む電気化学蓄電池の動作点に関連する4値に関連し、方法は、電力P、温度T、エネルギ状態SOE及び残留エネルギEnを含む電気化学蓄電池の動作点に関連する第4の4値の集合に基づいて第1の集合を判定する先行するステップを含む。そして、傾斜は、上述と同様に判定することができる。
【0067】
図6は、固定された10℃の温度、15Wの電力について、エネルギ状態SOEの関数として残留エネルギをWhで示すグラフである。点線は、グラフの点の全てを通過する仮想曲線を示している。
【0068】
各点(残留エネルギ/エネルギ状態)において局所的に傾斜を評価した後、ステップE2−4において、dEn/dSOE=f(SOE,P,T)を好適に求めることができる温度、エネルギ状態及び傾斜を組み合わせたテーブルを容易に得ることができ、このテーブルは、第3の集合を表す。
【0069】
全ての変形例を含む上述した方法によって構成される第3の集合は、電気化学蓄電池のエネルギ状態を判定するための方法において包括的に使用することができる。この方法は、オンボードアプリケーションにおいて実時間で好適に実行される。
【0070】
このように、エネルギ状態を判定するための方法は、好ましくは、第3の4値の集合を使用する。より包括的に言えば、方法は、電力Pと、温度Tと、エネルギ状態SOEと、残留エネルギEnとを含む電気化学蓄電池の動作点又は電力Pと、温度Tと、エネルギ状態SOEと、蓄電池のエネルギ状態の関数としての蓄電池の残留エネルギの傾斜、特に傾斜dEn/dSOE又はdSOE/dEnとを含む電気化学蓄電池の動作点に関連する4値の所定の集合を使用するステップを含む。この所定の集合は、第3の4値の集合であってもよく、他の手法で取得してもよい。したがって、以下の説明では、第3の4値の集合は、4値の所定の集合によって置き換えてもよい。
【0071】
上述したような第3の集合への分割によって、モデリング及び複雑な演算を実時間アプリケーションの外部で行うことができ、実時間アプリケーションの実行の間には、以下に説明するように、比較的簡単な繰り返し演算及び幾つかの測定を実行すればよく、これによって、エネルギ状態インジケータにアクセスすることができ、エネルギ状態インジケータは、電池管理システム(Battery Management System:BMS)の電子回路に容易に統合できる。
【0072】
図7は、蓄電池のエネルギ状態を判定する方法の特定の具体例を示している。この方法は、好ましくは繰り返し行われ、メモリから第1のエネルギ状態SOE1を読み出すステップE101を有する。この方法が繰り返される場合、SOE1の値は、前のステップで判定された蓄電池のエネルギ状態に対応する。換言すれば、この方法は、必要な場合、各繰返しの最後に、メモリに格納されている第1のエネルギ状態SOE1の値を、繰返しの間に判定されたエネルギ状態(現在のエネルギ状態)を表す第2のエネルギ状態SOE2の値に置換するステップを有することが好ましく、このSOE2の値は、次の繰返しにおいて、第1のエネルギ状態として使用される。
【0073】
最初の初期状態では、蓄電池は、最大限に充電されていてもよく、充電が終了すると、メモリの値は、100%を示す。逆に、蓄電池は、完全に放電されていてもよく、この場合、初期化時点でメモリに保存される値は、0%を示していてもよい。
【0074】
そして、ステップE102において、蓄電池の現在の動作を表す温度T1及び電力P1を測定する。「現在」という用語は、繰返しの間の動作状態を意味する。「蓄電池を表す温度及び電力」とは、蓄電池から取り出されるエネルギ又は蓄電池に供給されるエネルギの電力及び蓄電池の動作温度を意味する。ここでは、電力は、符号付きであり、正の場合と、負の場合がある。正の電力は、蓄電池が充電フェーズであることを表し、負の電力は、蓄電池が放電フェーズであることを表す。したがって、4値の集合は、正の電力値及び負の電力値を含むことができる。蓄電池を表す温度は、内部温度に最も近い必要があり、したがって、センサが電解質に耐性を有していれば、蓄電池内に温度センサを配置することができる。温度センサは、第1の集合を生成する際に使用した標準の蓄電池の温度センサと同じ位置に配置することが望ましいことは明らかである。テーブルは、正の電力値及び負の電力値を含んでもよいが、単純化のために、テーブルには、電力の絶対値を格納してもよい。
【0075】
ステップE103では、第3の4値の集合に基づいて、測定された温度T1及び測定された電力P1の関数である第1のエネルギ状態SOE1を表す点における蓄電池のエネルギ状態の関数として、蓄電池内の残留エネルギの傾斜dEn/dSOE判定する。この傾斜dEn/dSOEは、例えば、第3の4値の集合がdEn/dSOE=f(SOE,P,T)のタイプである場合、単なる読出によって判定でき、第3の4値の集合がEn=f(SOE,P,T)のタイプである場合、計算によって取得することができる。
【0076】
最後に、ステップE104において、第1のエネルギ状態SOE1の傾斜dEn/dSOE及びエネルギ量の関数として、第2のエネルギ状態SOE2を判定する。
【0077】
この第2のエネルギ状態SOE2は、判定中の蓄電池の現在のエネルギ状態に対応しており、その動作変数、すなわち、測定された電力P1及び測定された温度T1を考慮に入れている。
【0078】
オンボードアプリケーションのコンテキストにおける演算を制限するために、エネルギ状態SOEを判定する方法の異なるステップの間に、概算を行うことが好ましい。
【0079】
すなわち、傾斜dEn/dSOEは、測定された温度T1、測定された電力P1、及び第3の4値の集合に含まれる関連値における第1のエネルギ状態SOE1の少なくとも1つの概算によって得られる。特に、これらの値が第3の集合の部分として含まれない場合、これらの値の全てを概算によって求めることが好ましい。
【0080】
実際、測定センサの分解能によっては、温度T1及び電力P1の測定値、又は読み出されたエネルギ状態SOE1は、第3の4値の集合に含まれない値であることがある。オンボードアプリケーションのリソース使用を制限するために、充電の状態の判定の場合、離散化された値、すなわち、第3の集合に含まれる値を考慮に入れることが有利である。これを実現するため、概算は、第3の集合内の最も近い関連値を選択すること、又は第3の集合における直下の関連値を選択することによって実行してもよい。もちろん、第3の集合に含まれている値が出現した場合は、概算を行う必要はない。直下の値を選択するより、最も近い値を選択した方がより正確な結果を得ることができる。
【0081】
第2のエネルギ状態SOE2は、好ましくは、P.dtをエネルギ量として、式SOE2≒SOE1+P.dt*dSOE/dEnを適用することによって求められる。実際、エネルギ量は、充電フェーズにおける所定の期間に蓄電池に供給される電力の正の値、又は放電フェーズにおける所定の期間に蓄電池から出力され又は蓄電池から取り出される電力の負の値に関連する。
【0082】
したがって、この方法は、エネルギ状態SOE2を判定する前に、蓄電池が充電フェーズであるか放電フェーズであるかを判定するステップを有していてもよい。この判定は、当業者に周知の如何なる手法で行ってもよく、例えば、電流を測定することによって行ってもよい。
【0083】
以上のように、エネルギ量は、取り出される又は供給されるエネルギに対応している。値に関しては、エネルギ量は、Qenergy=(En2−En1)に対応し、ここで、En1は、SOE1に関連する残留エネルギであり、En2は、SOE2に関連する残留エネルギである(
図6参照)。Qenergyは、Qenergy=U.I.dt=P.dtによって算出できる。時間導関数dtは、判定された期間の長さに対応する。上述したように、方法は、繰り返してもよく、判定された期間とは、方法における繰返し期間を表し、又はこの期間に等しい。傾斜を算出する必要がある特定の場合の
図7のステップE103の詳細を
図8に示す。まず、ステップE103−1において、測定された温度T1、測定された電力P1及び第1のエネルギ状態SOE1について、それぞれ概算された温度T1app、概算された電力P1app及び概算された第1はエネルギ状態SOE1appを選択することによって、概算を実行する。概算された温度及び概算された電力については、対応する値の概算は、例えば、En=f(SOE,P,T)のタイプの第3の4値の集合内に存在する測定値に等しい、測定値の直下の、又は測定値に最も近い対応する値を選択することによって行うことができる。SOE1appについては、第3の集合に含まれるSOE1の値に等しい値又はSOE1の直下の値を選択することが好ましい。第3の4値の集合は、既知の保存された値の組合せを含んでいるため、ステップE103−2では、第3の4値の集合から、簡単な読出によって、概算された温度T1app、概算された電力P1app及び概算された第1のエネルギ状態SOE1appの関数である第1の残留エネルギEn1を抽出することができる。更に、ステップE103−3では、上述と同じ理由により、第3の4値の集合から、簡単な読出によって、概算された温度T1appと、概算された電力P1appと、第3の集合に含まれる第1の概算されたエネルギ状態SOE1appに関連する行の直上の行にインデクスされた概算された第2のエネルギ状態SOE2appとの関数である第2の残留エネルギEn2を抽出することができる。「上位のインデクス」は、所与のT1app及びP1appの組合せについて、SOE1appの直上の値SOE2appを意味する。
図8では、ステップE103−3の前にステップE103−2を実行しているが、傾斜値を算出するステップE103−4値の時点で、関連するEn1、En2、SOE1app及びSOE2appが存在していれば、この順序は任意である。
【0084】
最後に、ステップE103−4において、式dEn/dSOE=(En1−En2)/(SOE1app−SOE2app)を用いて、傾斜dEn/dSOEを算出する。そして、この傾斜値は、
図7のステップE104で使用することができる。
【0085】
以上のように、dEn/dSOE=f(SOE,P,T)のタイプの第3の集合を用いることにより、傾斜を直接的に取得できるため、オンボードアプリケーションのコンテキストにおいて有利である。これによって、エネルギ状態を判定する方法を実行するオンボードコンピュータのリソース使用を制限でき、蓄電池のエネルギ状態の現在の値をより速やかに取得することができる。
【0086】
2つの連続する繰返し間で、電力又は温度が変化することもある。この特定の場合、繰返しの間、現在のエネルギ状態の判定は、前の繰返しからの温度及び/又は電力の変化を考慮に入れる。
【0087】
実際、メモリを読み出して値SOE1を判定することによって、及び第3の4値の集合に基づいて、測定された温度及び測定された電力の関数として傾斜を判定することによって、温度又は電力の変化が自動的に考慮に入れられる。前の繰返しの演算からは、エネルギ状態(新しいステップの間のSOE1)だけが引き継がれる。新たな測定値に基づいて、新たな電力及び新たな温度を判定し、これによって、テーブルにアクセスして、残留エネルギ又は傾斜を判定する判定し、新たなエネルギ状態SOE2を算出することができる。このように、電力及び温度の変動は、原理的に考慮に入れられる。
【0088】
式SOE2≒SOE1+P.dt*dSOE/dEnは、温度補正することもできる。この場合、この式は、SOE2≒SOE1+effCh*P.dt*dSOE/dEnに置き換えられ、ここで、effChは、充電又は放電の関数である補正係数である。補正係数を使用することによって、充電に関連するテーブル及び放電に関連するテーブルの使用を回避でき、したがって、データサイズが小さくなるために有益である。
【0089】
電力は、蓄電池電圧と、蓄電池を流れる電流の値に基づいて測定することができる。
【0090】
コンピュータプログラムが記録されているコンピュータ可読データ記録媒体は、上述した処理及び/又は判定方法のステップ及び/又はサブステップを実行するコンピュータプログラムコード手段を含むことができる。
【0091】
同様にコンピュータプログラムは、プログラムがコンピュータによって実行されると、この判定方法及び/又は処理方法のステップ及び/又はサブステップを実行するように適応化されたコンピュータプログラムコード手段を含むことができる。また、本発明は、蓄電池のエネルギ状態を判定するデバイスを提供し、このデバイスは、判定方法及び/又は処理方法のステップを実行する(すなわち、判定方法及び/又は処理方法を実行する)ハードウェア及び/又はソフトウェア手段を含む。デバイスは、通常、メモリを備え、メモリには、例えば、データベースの形式で第3の集合が格納され、このデータベースの主キー(primary key)は、単一の残留エネルギ値又は単一の傾斜値を定義する電力、温度及びエネルギ状態である。このデバイスは、上述した記録媒体及び/又はコンピュータプログラムを含んでいてもよい。
【0092】
以上の説明から明らかなように、記録媒体のコンピュータプログラムは、判定方法及び/又は処理方法を実行するために、上述したデバイスのソフトウェア手段によって実行可能なコンピュータプログラムコード手段を含むことができる。
【0093】
更に、コンピュータプログラムは、特に、プログラムがコンピュータによって実行されると、この判定方法及び/又は処理方法を実現する上述したデバイスのソフトウェア手段で実行可能なコンピュータプログラムコード手段を含むことができる。
【0094】
したがって、デバイスは、蓄電池の正確な動作点を実時間で速やかに判定でき、正確で確実なエネルギ状態値を抽出することができる。
【0095】
エネルギ状態を判定する方法を使用プロファイルについて検査し、有効性を確認した。検査条件は、以下の通りとした。
・充電フェーズ及び放電フェーズを有する電力プロファイルを蓄電池に印加した。
・蓄電池の端子における電圧及び蓄電池の温度を測定した。
【0096】
更に、上述したエネルギ状態を推定するために、蓄電池の電力プロファイル及び動作温度を演算アルゴリズムのシミュレーションに入力した。
【0097】
そして、エネルギ状態のシミュレート結果と、実際に測定された電圧とを比較した。
【0098】
検査の結果を
図9に示す。この
図9は、時間の関数としてのエネルギ状態SOE、及び時間の関数としての蓄電池の端子における電圧の変化を示している。この
図9は、放電が終了し、電圧が2V近傍に達すると、エネルギ状態(SOE)が実際に約0に近付く(1.48%)ことを示している。誤差の幅は、非常に小さく、オンボードアプリケーションのコンテキストでは、十分である。
【0099】
ここでは、電気化学蓄電池について説明した。蓄電池の定義は、広義に解釈され、基本素子としての蓄電池及びバッテリの形式に構成された複数の蓄電池素子の両方を含むものとする。参照用の蓄電池として、A123システムズ社(A123systems)の製品番号ANR26650M1を検査のために使用した。