(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内側に、母線が挿入方向に延びる円柱状の空間が形成されるように、上記挿入方向からみて中心角が180度を越えていて周方向の両端縁の間に隙間が形成された過半円筒状、又は周方向の両端縁が重ねられた重ね円筒状に設けられた、導電性で弾性を有する胴部と、
上記胴部における上記挿入方向の奥側と手前側のうち少なくとも一方側に配置され、上記胴部から上記挿入方向奥側又は上記挿入方向手前側へ延びる基片、および上記基片に設けられた係止片を有する係止部とを備え、
上記胴部が、外側へ突き出た凸部を少なくとも一つ有しており、
上記胴部の内側に被接続物の導体を挿入し、上記係止部により上記被接続物を係止することで上記被接続物を端子に接続し、上記被接続物付き端子の上記胴部を実装先部材の貫通孔へ挿入して上記貫通孔に嵌合すると、上記凸部によって上記被接続物付き端子の上記胴部と上記貫通孔を構成する壁との間の隙間が形成されるように構成されている端子。
上記凸部が三つ以上設けられており、そのうちの三つの上記凸部が、上記挿入方向からみて、これらを結んで三角形をつくると上記三角形のなかに上記過半円筒状又は上記重ね円筒状の中心軸が含まれるような三箇所に設けられている請求項1の端子。
【発明の概要】
【0005】
電線が接続された端子をプリント配線板に設けた貫通孔に挿し、上記端子を上記プリント配線板のランドにハンダ付けする場合、上記電線を上記端子に接続する接続工程と、上記電線付き端子を上記プリント配線板の貫通孔に嵌合させる嵌合工程と、上記電線付き端子を上記プリント配線板のランドにハンダ付けするハンダ付け工程とを行うことになる。
【0006】
上記嵌合工程において、上記電線付き端子が上記貫通孔にしっかり嵌合していないと、上記電線付き端子が上記貫通孔に対して傾くことがあり、そうなると上記電線付き端子と上記貫通孔を構成する壁との間の隙間の寸法がばらつく。そのため、上記ハンダ付け工程において、上記隙間への溶解ハンダの吸収、すなわち、いわゆるハンダの濡れ上がりが不良になり、上記隙間にハンダ層が良好に形成されないことがある。その結果、上記電線と上記プリント配線板との機械的および電気的な接続強度を安定的に得られなくなる可能性がある。それを防ぐためには、上記ハンダ付け工程において上記貫通孔に嵌合した上記電線付き端子を傾かないように保持しておかねばならず、そのために余分な工数がかかる。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、上記問題を解決することができる端子、および端子を用いた接続構造を提供することにある。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の端子は、
内側に、母線が挿入方向に延びる円柱状の空間が形成されるように、上記挿入方向からみて中心角が180度を越えていて周方向の両端縁の間に隙間が形成された過半円筒状、又は周方向の両端縁が重ねられた重ね円筒状に設けられた、導電性で弾性を有する胴部と、
上記胴部における上記挿入方向の奥側と手前側のうち少なくとも一方側に配置され、上記胴部から上記挿入方向奥側又は上記挿入方向手前側へ延びる基片、および上記基片に設けられた係止片を有する係止部とを備え、
上記胴部が、外側へ突き出た凸部を少なくとも一つ有して
おり、
上記胴部の内側に被接続物の導体を挿入し、上記係止部により上記被接続物を係止することで上記被接続物を端子に接続し、上記被接続物付き端子の上記胴部を実装先部材の貫通孔へ挿入して上記貫通孔に嵌合すると、上記凸部によって上記被接続物付き端子の上記胴部と上記貫通孔を構成する壁との間の隙間が形成されるように構成されている端子である。
【0009】
上記胴部の上記円筒状の空間に上記被接続物の上記導体を挿入し、上記係止部により上記被接続物を係止することで上記被接続物を上記端子に接続する。そして、上記被接続物付き端子の上記胴部を上記実装先部材の上記貫通孔へ挿入して上記貫通孔に嵌合する。そうすると、上記胴部が弾性を有する上記過半円筒状又は上記重ね円筒状に設けられていると共に、上記胴部が上記凸部を有しているので、上記凸部を含む上記胴部の寸法管理を行えば、上記被接続物付き端子が上記凸部を含む上記胴部において上記貫通孔を構成する壁に接して上記貫通孔に所定の嵌合力でもって嵌合することから、上記嵌合工程において上記被接続物付き端子が上記実装先部材に対して自立し、上記凸部によって上記被接続物付き端子の上記胴部と上記貫通孔を構成する上記壁との間の隙間が確保されることから、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間へのハンダの濡れ上がりが促進され、上記隙間にハンダ層が良好に形成される。そのため、上記被接続物と上記実装先部材との機械的および電気的な接続強度が安定的に得られる。
【0010】
本発明の上記端子は、上記端子の上記胴部を弾性を有する上記過半円筒状又は上記重ね円筒状に設けると共に、上記胴部に上記外側へ突き出た上記凸部を設けたので、上記被接続物が接続された上記端子を上記実装先部材に設けられた上記貫通孔に所定の嵌合力でもって嵌合させて上記嵌合工程において上記被接続物付き端子を上記実装先部材に対して自立させ、上記被接続物付き端子と上記貫通孔を構成する上記壁との間の上記隙間を確保して、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間へのハンダの濡れ上がりを促進し、上記隙間に上記ハンダ層を良好に形成して、上記被接続物と上記実装先部材との機械的および電気的な接続強度を安定的に得ることができる端子を提供することができた。
【0011】
本発明の、端子を用いた接続構造は、
棒状の導体を有する被接続物と、
貫通孔が設けられた実装先部材と、
端子とを備え、上記端子が、
内側に、母線が挿入方向に延びる円柱状の空間が形成されるように、上記挿入方向からみて中心角が180度を越えていて周方向の両端縁の間に隙間が形成された過半円筒状、又は周方向の両端縁が重ねられた重ね円筒状に設けられた、導電性で弾性を有する胴部と、
上記胴部における上記挿入方向の奥側と手前側のうち少なくとも一方側に配置され、上記胴部から上記挿入方向奥側又は上記挿入方向手前側へ延びる基片、および上記基片に設けられた係止片を有する係止部とを備え、
上記胴部が、外側へ突き出た凸部を少なくとも一つ有しており、
上記被接続物の上記導体が上記端子の上記胴部の内側に挿入されて上記係止部に係止され
ることで上記被接続物が上記端子に接続されており、
上記胴部が上記実装先部材の上記貫通孔に嵌合されて上記凸部が上記貫通孔を構成する壁に接しており、
上記凸部によって上記胴部と上記貫通孔を構成する上記壁との間の隙間が形成されており、
上記胴部と上記貫通孔を構成する上記壁との間
の上記隙間にハンダ層が形成されている、端子を用いた接続構造である。
【0012】
上記胴部の上記円筒状の空間に上記被接続物の上記導体を挿入し、上記係止部により上記被接続物を係止することで上記被接続物を上記端子に接続する。そして、上記被接続物付き端子の上記胴部を上記実装先部材の上記貫通孔へ挿入して上記貫通孔に嵌合する。そうすると、上記胴部が弾性を有する上記過半円筒状又は上記重ね円筒状に設けられていると共に、上記胴部が上記凸部を有しているので、上記凸部を含む上記胴部の寸法管理を行えば、上記被接続物付き端子が上記凸部を含む上記胴部において上記貫通孔を構成する上記壁に接して上記貫通孔に所定の嵌合力でもって嵌合することから、上記嵌合工程において上記被接続物付き端子が上記実装先部材に対して自立し、上記凸部によって上記被接続物付き端子の上記胴部と上記貫通孔を構成する上記壁との間の隙間が確保されることから、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間へのハンダの濡れ上がりが促進され、上記隙間にハンダ層が良好に形成される。そのため、上記被接続物と上記実装先部材との機械的および電気的な接続強度が安定的に得られる。
【0013】
本発明の、上記端子を用いた接続構造は、上記端子の上記胴部を弾性を有する上記過半円筒状又は上記重ね円筒状に設けると共に、上記胴部に上記外側へ突き出た上記凸部を設けたので、上記被接続物が接続された上記端子を上記実装先部材に設けられた上記貫通孔に所定の嵌合力でもって嵌合させて上記嵌合工程において上記被接続物付き端子を上記実装先部材に対して自立させ、上記被接続物付き端子と上記貫通孔を構成する上記壁との間の上記隙間を確保して、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間へのハンダの濡れ上がりを促進し、上記隙間に上記ハンダ層を良好に形成して、上記被接続物と上記実装先部材との機械的および電気的な接続強度を安定的に得ることができる、端子を用いた接続構造を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1ないし
図14は、本発明の端子の一つの実施形態を示す。この端子100により、棒状の導体210を有する被接続物200を、貫通孔310が設けられた実装先部材300に接続する。すなわち、上記端子100は、胴部110と、係止部とを備えている。そして、上記被接続物200の上記導体210を上記端子100に接続し、上記被接続物付き端子の上記胴部110を上記実装先部材300の上記貫通孔310へ挿入して上記貫通孔310に嵌合し、上記胴部110、および上記実装先部材300の導電部320をハンダ付けし、又は上記導体210、上記胴部110、および上記実装先部材300の導電部320をハンダ付けすることにより、上記被接続物200を上記実装先部材300へ機械的および電気的に接続する。この実施形態の場合、上記胴部110および上記係止部は、導電性で弾性を有する一つの板状素材から一連に成形されているが、上記胴部および上記係止部の素材は例えば塊状などの他の形態の素材から形成してもよいし、例えば上記胴部と上記係止部とを同一又は別の素材により別々に形成してからそれらを接続してもよい。
【0016】
上記胴部110は、導電性で弾性を有する素材により形成されている。上記胴部110は、内側に、母線が挿入方向に延びる円柱状の空間111が形成されるように、上記挿入方向からみて過半円筒状又は重ね円筒状に設けられている。上記挿入方向は、上記被接続物付き端子の上記胴部110を上記実装先部材300の上記貫通孔310へ挿入する方向であり、
図11の矢印で示す方向である。円筒状のものを、その中心軸Cを含んだ平面で真半分に割った形状が半円筒状であるが、円筒状のものを、上記中心軸Cから半径方向へずれた軸を含んだ平面で割ったときの大きい方の部分が上記過半円筒状であり、この実施形態の上記胴部110は、上記過半円筒状に形成されている。上記中心軸Cは、上記円筒状のものの内側に形成された円柱状の空間の中心軸でもある。すなわち、上記過半円筒状は、
図5に示すように、上記挿入方向からみて中心角θiが180度を越えていて周方向の両端縁の間に隙間が形成された形状である。これに対して上記半円筒状の場合は、
図5に示すように、上記挿入方向からみて中心角θhが180度になる。上記隙間は、上記胴部110が上記貫通孔310に嵌合したときに上記胴部110が上記周方向の長さが縮むように弾性変形したときに上記周方向の上記両端縁が突き合って干渉することを防止するためである。また、上記重ね円筒状は、上記周方向に連続した円筒状ではなく、上記周方向の両端縁が重ねられた円筒状であり、一例として、上記胴部に関する変形例の端子100を
図27に示した。上記周方向の上記両端縁を重ねているのは、上記胴部110が上記貫通孔310に嵌合したときに上記胴部110が上記周方向の長さが縮むように弾性変形したときに上記両端縁が相対的に上記周方向に変位して上記周方向に重なる長さが変化しやすくするためである。上記胴部の上記挿入方向の手前側にはフレア部112が形成されている。このフレア部112は、上記挿入方向手前側に向かって直径が広がっていくように漏斗状に形成されている。本発明は上記フレア部が形成されていない胴部の実施形態を含んでいる。
【0017】
上記係止部は、上記胴部における上記挿入方向の奥側と上記手前側のうち少なくとも一方側に配置されており、上記係止部は、上記胴部から上記挿入方向奥側又は上記挿入方向手前側へ延びる基片と、上記基片に設けられた係止片とを有している。上記係止部は任意の材料で形成することができる。この実施形態の場合、上記係止部は上記胴部における上記挿入方向奥側と上記挿入方向手前側の両方に配置されている。すなわち、上記胴部110における上記挿入方向奥側に第1の係止部120が配置され、上記胴部110における上記挿入方向手前側に第2の係止部130が配置されている。上記第1の係止部120は、上記胴部110から上記挿入方向奥側へ延びる基片121と、上記基片121に設けられた係止片122とを有している。上記第2の係止部130は、上記胴部110から上記挿入方向手前側へ延びる基片131と、上記基片131に設けられた係止片132とを有している。上記第1の係止部120は圧着形である。したがって、上記係止片122は、上記基片121の幅方向両側のうち少なくとも一方側から厚さ方向へ立ち上がるバレルである。ここでは、上記係止片122は上記幅方向の両側から上記厚さ方向へ立ち上がっているが、上記係止片を上記幅方向の片側からのみ立ち上げてもよい。上記幅方向とは、上記挿入方向に直交する方向であり、上記厚さ方向とは、上記挿入方向および上記幅方向の両方向と直交する方向である。上記第2の係止部130は上記圧着形である。したがって、上記係止片132は、上記基片131の上記幅方向両側のうち少なくとも一方側から上記厚さ方向へ立ち上がるバレルである。ここでは、上記係止片132は上記幅方向の両側から上記厚さ方向へ立ち上がっているが、上記係止片を上記幅方向の片側からのみ立ち上げてもよい。上記第2の係止部130の上記二つの係止片132は上記挿入方向に沿ってずれているが、このようにすれば、複数の上記第2の係止部130を一連の板状の素材から打ち抜いて製造するときに、上記第2の係止部130を隣りの端子の上記第2の係止部130と上記挿入方向に沿ってずれるように板取り配置することで素材を有効に使うことができるなどの利点があり、好ましい。しかし、上記第2の係止部の上記二つの係止片を上記第1の係止部120の上記二つの係止片122と同様に上記幅方向からみて重なるように設けてもよい。また、上記第1の係止部の上記二つの係止片を、上記第2の係止部130の上記二つの係止片132のように上記挿入方向に沿ってずらしてもよい。
図10に示すように、上記第1の係止部120の上記係止片122および上記第2の係止部130の上記係止片132は、内側へ曲げられることで上記被接続物200に押圧力をもって抱きつき、上記被接続物200にかしめるように構成されている。
図15ないし
図17は、一例として、上記係止部に関する第1の変形例の端子100を示す。この第1の変形例の端子100の場合、上記胴部110における上記挿入方向奥側に第1の係止部120が設けられているが、上記胴部110における上記挿入方向手前側に第2の係止部130が設けられていない。上記第1の係止部120の上記係止片122は、内側へ曲げられることで上記被接続物200に押圧力をもって抱きつき、上記被接続物200にかしめるように構成されている。
図18ないし
図20は、上記係止部に関する第2の変形例の端子100を示す。この第2の変形例の端子100の場合、上記胴部110における上記挿入方向奥側に第1の係止部が設けられていないが、上記胴部110における上記挿入方向手前側に第2の係止部130が設けられている。上記第2の係止部130の上記係止片132は、内側へ曲げられることで上記被接続物200に押圧力をもって抱きつき、上記被接続物200にかしめるように構成されている。
図28は、上記係止部に関する第3の変形例の端子100を示す。この第3の変形例の端子100の場合、上記第1の係止部120は上記圧着形であるが、上記第2の係止部130は上記圧着形ではなく圧接形である。したがって、上記第2の係止部130の上記係止片132は、上記挿入方向を向いて上記基片131から上記厚さ方向へ立ち上がる板片であり、その板片の先端から根本へ向けて上記厚さ方向に延びる凹部が形成され、この凹部の端縁に圧接刃132aが形成されている。そして、上記係止片132に上記厚さ方向に沿って上記被接続物200を押し込むと、上記圧接刃132aが上記被接続物200の外周部に切り込んで上記第2の係止部130が上記被接続物200を係止するように構成されている。上記第1の係止部を圧接形にすると共に、上記第2の係止部を圧着形にしてもよい。また、上記第1の係止部および上記第2の係止部を共に圧接形にしてもよい。
図29は、上記係止部に関する第4の変形例の端子100を示す。この第4の変形例の端子100の場合、上記第1の係止部120は上記圧着形であるが、上記第2の係止部130は上記圧着形ではなくピアシング形である。したがって、上記第2の係止部130の上記係止片132は、上記幅方向を向いて上記基片131から上記厚さ方向へ立ち上がる板片であり、その板片の先端が尖っている。そして、上記係止片132に上記厚さ方向に沿って上記被接続物200を押し込むと、上記係止片132が上記被接続物200を突き刺すことで上記第2の係止部130が上記被接続物200を係止するように構成されている。上記第1の係止部をピアシング形にすると共に、上記第2の係止部を圧着形にしてもよい。また、上記第1の係止部および上記第2の係止部を共にピアシング形にしてもよい。また、上記第1の係止部を上記圧着形、上記圧接形、上記ピアシング形、又はその他の係止構造のいずれかにすると共に、上記第2の係止部を上記圧着形、上記圧接形、上記ピアシング形、又はその他の係止構造のいずれかにしてもよく、その組み合わせは自在である。
【0018】
上記胴部110は、外側へ突き出た凸部を少なくとも一つ有している。外側とは、上記円柱状の空間111から離れる側であり、その反対側が内側である。上記凸部の形状は例えば半球状などを含む球状、直方体状、円錐状、円錐台状、角錐状、角錐台状、又はその他の形状であってもよい。上記凸部は、例えば上記胴部の一部を上記胴部の内側から上記外側へ押し出すことで形成してもよいし、例えば上記胴部の外面に上記胴部とは別に形成した上記凸部を例えばロー付け、接着、又はその他の方法で取り付けてもよい。この実施形態の場合、上記凸部は弾性を有しているが、上記凸部が弾性を有していなくてもよい。また、この実施形態の場合、上記貫通孔310を構成する壁311は弾性を有しているが、この壁が弾性を有していなくてもよい。上記胴部110が上記実装先部材300の上記貫通孔310に嵌合すると、上記胴部110が弾性変形し、それによって上記凸部が上記貫通孔310を構成する上記壁311に押圧力をもって接するように構成されている。その場合、上記凸部が弾性変形することもあるし、上記貫通孔を構成する上記壁が弾性変形することもある。その場合、上記凸部の一態様として、上記胴部110が上記貫通孔310に嵌合したときに、上記胴部110が弾性変形することで上記貫通孔310を通過して上記貫通孔310の上記挿入方向奥側にその一部が出、上記貫通孔310の上記挿入方向奥側の開口の縁、つまり上記貫通孔310を構成する上記壁311の上記挿入方向奥側の端部に上記過半円筒状又は上記重ね円筒状の上記半径方向への押圧力をもって接して留まる後述の第1の凸部113のような上記凸部がある。また、上記凸部の一態様として、上記胴部110が上記貫通孔310に嵌合したときに、上記胴部110が弾性変形することで上記貫通孔310の上記挿入方向手前側にその一部が残り上記貫通孔310の上記挿入方向手前側の開口の縁、つまり上記貫通孔310を構成する上記壁311の上記挿入方向手前側の端部に上記過半円筒状又は上記重ね円筒状の上記半径方向への押圧力をもって接して留まる後述の第2の凸部114のような上記凸部がある。さらに、上記凸部の一態様として、上記胴部110が上記貫通孔310に嵌合したときに、上記胴部110が弾性変形することで上記貫通孔310に入り、上記壁311の上記挿入方向中途部に上記過半円筒状又は上記重ね円筒状の上記半径方向への押圧力をもって接して留まる上記凸部もある(例えば
図32を参照)。ここでは上記胴部110が弾性変形することで上記凸部が上記貫通孔を構成する上記壁に押圧力をもって接することを説明したが、上記凸部が弾性を有しているときは、上記凸部の弾性変形も相俟って上記凸部が上記壁の上記挿入方向奥側の端部、上記挿入方向奥側手前側の端部、又は上記挿入方向中途部に押圧力をもって接するし、上記壁が弾性を有しているときは、上記壁の弾性変形も相俟って上記凸部が上記壁の上記挿入方向奥側の端部、上記挿入方向奥側手前側の端部、又は上記挿入方向中途部に押圧力をもって接する。上記挿入方向からみて、上記凸部の上記外側の端部を結ぶ包絡線、又は上記凸部の上記外側の端部と上記胴部110の外周面を結ぶ包絡線が、上記実装先部材300の上記貫通孔310よりも若干大きくなるように構成されている。
そして、上記胴部110の内側に上記被接続物200の上記導体210を挿入し、上記係止部120、130により上記被接続物200を係止することで上記被接続物200を上記端子100に接続し、上記被接続物付き端子の上記胴部110を上記実装先部材300の上記貫通孔310へ挿入して上記貫通孔310に嵌合すると、上記凸部113、114によって上記被接続物付き端子の上記胴部110と上記貫通孔310を構成する上記壁311との間の隙間330が形成されるように構成されている。
【0019】
この実施形態の場合、上記胴部110における上記挿入方向奥側に上記第1の凸部113が設けられ、上記挿入方向手前側に上記第2の凸部114が設けられている。そして、上記第1の凸部113が上記胴部110の上記周方向に離れて三つ設けられており、上記第2の凸部114が上記胴部110の上記周方向に離れて三つ設けられている。しかし、これによって上記凸部の数および配列が限定解釈されることはない。上記凸部は、少なくとも一つ設けられておればよい。また、上記凸部を二以上設けた場合、上記胴部における上記挿入方向および上記周方向における相対位置をそれぞれ任意に設定してよい。
【0020】
上記凸部は三つ以上設けられており、そのうちの三つの上記凸部が、上記挿入方向からみて、これらを結んで三角形をつくると上記三角形のなかに上記過半円筒状又は上記重ね円筒状の中心軸が含まれるような三箇所に設けられている。上記三箇所以外に上記凸部を設けてもよい。この実施形態の場合、上記胴部110における上記挿入方向奥側に上記第1の凸部113が設けられ、上記挿入方向手前側に上記第2の凸部114が設けられているが、
図7に示すように、上記第1の凸部113は、上記挿入方向からみて、これらを結んで三角形Rをつくると上記三角形Rのなかに上記過半円筒状又は上記重ね円筒状の上記中心軸Cが含まれるような三箇所に設けられており、また上記第2の凸部114は、上記挿入方向からみて、これらを結んで三角形Rをつくると上記三角形Rのなかに上記過半円筒状又は上記重ね円筒状の上記中心軸Cが含まれるような三箇所に設けられている。上記第1の凸部113又は上記第2の凸部114のいずれかを、このような三箇所に設けてもよいし、上記第1の凸部113と上記第2の凸部114とをあわせたときに、このような三箇所に位置するように設けてもよい。
【0021】
上記第1の凸部113の上記挿入方向手前側の面113aは上記外側へ向かうにつれて上記挿入方向奥側へ寄るように傾いて形成されていると共に、上記第2の凸部114の上記挿入方向奥側の面114aは上記外側へ向かうにつれて上記挿入方向手前側へ寄るように傾いて形成されている。そして、上記第1の凸部113の上記挿入方向手前側の面113aにおける上記第1の凸部113の突出方向の中途部と、上記第2の凸部114の上記挿入方向奥側の面114aにおける上記第2の凸部114の突出方向の中途部との間の上記挿入方向に沿った距離が、上記実装先部材300の厚さに等しい。すなわち、上記第1の凸部113は、上記胴部110の表面に中心を置いた半球状に形成されており、よって上記第1の凸部113の上記挿入方向手前側の面113aが上記外側へ向かうにつれて上記挿入方向奥側へ寄るように傾いて形成されている。また、上記第2の凸部114は、上記胴部110の表面に底面を置いた四角錐台状に形成されており、よって上記第2の凸部114の上記挿入方向奥側の面114aが上記外側へ向かうにつれて上記挿入方向手前側へ寄るように傾いて形成されている。そして、上記第1の凸部113の上記挿入方向手前側の面113aにおける上記第1の凸部113の突出方向の中途部と、上記第2の凸部114の上記挿入方向奥側の面114aにおける上記第2の凸部114の突出方向の中途部との間の上記挿入方向に沿った距離D(
図3を参照)が、上記実装先部材300の厚さT(
図14を参照)に等しい。この場合、上記第1の凸部が半球状ではなく他の形状であってもよく、上記第1の凸部の上記挿入方向手前側の面が上記外側へ向かうにつれて上記挿入方向奥側へ寄るように傾いて形成されておればよい。また、上記第2の凸部が四角錐台状ではなく他の形状であってもよく、上記第2の凸部の上記挿入方向奥側の面が上記外側へ向かうにつれて上記挿入方向手前側へ寄るように傾いて形成されておればよい。
【0022】
上記凸部は、例えば上記第1の凸部113又は上記第2の凸部114などのように上記胴部110に点状に設けてもよい。しかし、
図21に示す、上記凸部に関する上記第1の変形例の端子100のように、上記凸部113を例えば上記胴部110から上記外側へ突き出すと共に、上記挿入方向に沿って線状に延ばして設けてもよい。また、
図23に示す、上記凸部に関する上記第2の変形例の端子100のように、上記凸部113、114を例えば上記胴部110から上記外側へ突き出すと共に、上記胴部110の上記周方向に沿って線状に延ばして設けてもよい。ここでは上記実施形態のように、上記胴部110における上記挿入方向奥側に上記第1の凸部113を設け、上記挿入方向手前側に上記第2の凸部114を設けた。そのため、上記第1の凸部113の上記挿入方向手前側の面113aを上記外側へ向かうにつれて上記挿入方向奥側へ寄るように傾いて形成すると共に、上記第2の凸部114の上記挿入方向奥側の面114aを上記外側へ向かうにつれて上記挿入方向手前側へ寄るように傾いて形成し、上記第1の凸部113の上記挿入方向手前側の面113aにおける上記第1の凸部113の突出方向の中途部と、上記第2の凸部114の上記挿入方向奥側の面114aにおける上記第2の凸部114の突出方向の中途部との間の上記挿入方向に沿った距離を、上記実装先部材300の厚さに等しくしてもよい。さらに、
図25に示す、上記凸部に関する上記第3の変形例の端子100のように、上記凸部113を例えば上記胴部110から上記外側へ突き出すと共に、上記挿入方向に沿って進むと上記胴部110の上記周方向に寄るように上記挿入方向および上記周方向に対して斜め方向に沿って線状に延ばして設けてもよい。また、上記胴部に、外側へ突き出た凸状のストッパを設け、上記胴部が上記貫通孔に嵌合したときに、上記貫通孔310の上記挿入方向手前側に上記ストッパの全体が残り、上記ストッパが上記貫通孔310の上記挿入方向手前側の開口周縁部、つまり上記貫通孔310を構成する上記壁311の上記挿入方向手前側の端部の周縁部に上記挿入方向への押圧力をもって当たるように構成してもよい。
【0023】
上記被接続物200は、上記導体210としての芯線と、上記導体210の周囲を覆う絶縁被覆220とを備えた電線である。よって、
図10に示すように、上記第1の係止部120の上記係止片122は、内側へ曲げられることで上記導体210に押圧力をもって抱きつき、上記導体210にかしめるように構成されている。また、上記第2の係止部130の上記係止片132は、内側へ曲げられることで上記絶縁被覆220に押圧力をもって抱きつき、上記被接続物200にかしめるように構成されている。上記係止部に関する上記第1の変形例の端子100の場合、
図17に示すように、上記第1の係止部120を
図10の場合と同様にして上記被接続物200の上記導体210にかしめる。上記係止部に関する上記第2の変形例の端子100の場合、
図20に示すように、上記第2の係止部130を
図10の場合と同様にして上記被接続物200にかしめる。また、上記凸部に関する上記第1ないし第3の変形例の端子100の場合、それぞれ
図22、
図24、
図26に示すように、上記第1の係止部120を
図10の場合と同様にして上記被接続物200の上記導体210にかしめると共に、上記第2の係止部130を
図10の場合と同様にして上記被接続物200にかしめる。上記第1の係止部、又は上記第2の係止部を圧接形にしたときは、上記圧接刃132aが上記被接続物200の上記絶縁被覆220に切り込んで上記第2の係止部130が上記被接続物200を係止する。上記第1の係止部、又は上記第2の係止部をピアシング形にしたときは、上記係止片132が上記絶縁被覆220を、場合によっては更に上記導体210を突き刺すことで上記第2の係止部130が上記被接続物200を係止する。上記被接続物200は、棒状の導体を有しておればよく、例えば上記電線の他にも例えばシールドケーブル又はその要素を含み、また例えばFFC(フレキシブルフラットケーブル)などの平形柔軟ケーブル又はその要素を含み、さらに、その他の棒状導体を備えた導電手段を含んでいる。上記被接続物は上記導体のみにより構成されていてもよい。
【0024】
図11ないし
図14などに示すように、この実施形態の場合、上記実装先部材300は、プリント配線板である。この実装先部材300には、上記貫通孔310が貫通して設けられている。上記貫通孔310から上記実装先部材300の表面および裏面へかけて導電性部材が設けられ、この導電性部材により、上記プリント配線板ではランドと称されることがある上記導電部320が構成されている。よって、上記貫通孔310の表面は上記導電部320により形成されている。上記導電部は、上記貫通孔に上記端子の上記胴部が嵌合したときに、上記胴部との間にハンダ層が形成できるように上記貫通孔の周辺に設けられておればよく、上記貫通孔の内部に設けられていなくてもよい。上記導電部320は銅合金により形成されているが、他の導電性部材によって形成してもよい。上記実装先部材は上記プリント配線板に限定されない。上記実装先部材には、例えば電気製品の筐体、又はその他の部材が含まれている。上記被接続物200の上記導体210を上記端子100に接続し、上記被接続物付き端子の上記胴部110を上記実装先部材300の上記貫通孔310へ挿入して上記貫通孔310に嵌合すると、上記胴部110と上記貫通孔310を構成する上記壁311との間に隙間330が形成され、上記胴部110と上記被接続物200との間、詳しくは上記胴部110と上記導体210との間に隙間115が形成される。そして、上記胴部110、および上記実装先部材300の導電部320をハンダ付けすると、上記実装先部材300の表面又は裏面から供給された溶解ハンダが上記隙間330に吸収されて固まり、それによってハンダ層S1が形成される。或いは、上記導体210、上記胴部110、および上記実装先部材300の導電部320をハンダ付けすると、上記実装先部材300の表面又は裏面から供給された溶解ハンダが上記隙間330に吸収されて固まり、それによってハンダ層S1が形成されると共に、上記溶解ハンダが上記隙間115に吸収されて固まり、それによってハンダ層S2が形成される。このように上記ハンダが上記実装先部材300の表面又は裏面から上記隙間330、115へ毛細管現象などにより吸収されていくことをハンダが濡れ上がると表現している。そして、上記ハンダ層S1、S2などによって上記被接続物200が上記実装先部材300へ機械的および電気的に接続される。本発明は、このように上記胴部110と上記被接続物200との間の上記隙間115に上記ハンダ層を形成しない実施形態を含んでいる。上記係止部による上記被接続物の係止力が充分に確保されているときには、それでも充分に上記被接続物と上記実装先部材との機械的および電気的な接続強度が確保される場合がある。
【0025】
したがって、上記胴部110の上記円柱状の空間111に上記被接続物200の上記導体210を挿入し、上記係止部120、130により上記被接続物200を係止することで上記被接続物200を上記端子100に接続する。そして、上記被接続物付き端子の上記胴部110を上記実装先部材300の上記貫通孔310へ挿入して上記貫通孔310に嵌合する。そうすると、上記胴部110が弾性を有する上記過半円筒状又は上記重ね円筒状に設けられていると共に、上記胴部110が上記凸部113、114を有しているので、上記凸部113、114を含む上記胴部110の寸法管理を行えば、上記被接続物付き端子が上記凸部113、114を含む上記胴部110において上記貫通孔310を構成する上記壁311に接して上記貫通孔310に所定の嵌合力でもって嵌合することから、上記嵌合工程において上記被接続物付き端子が上記実装先部材300に対して自立し、上記凸部113、114によって上記被接続物付き端子の上記胴部110と上記貫通孔310を構成する上記壁311との間の上記隙間330が確保されることから、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間330への上記ハンダの濡れ上がりが促進され、上記隙間に上記ハンダ層S1が良好に形成される。また、上記胴部110と上記被接続物200との間の上記隙間115に上記ハンダ層S2を形成したときには、上記ハンダ層S2により上記胴部110と上記被接続物200との接続力を増すことができる。そのため、上記被接続物200と上記実装先部材300との機械的および電気的な接続強度が安定的に得られる。このように上記実施形態の端子100は、上記胴部110を弾性を有する上記過半円筒状又は上記重ね円筒状に設けると共に、上記胴部110に上記外側へ突き出た上記凸部113、114を設けたので、上記被接続物200が接続された上記端子100を上記実装先部材300に設けられた上記貫通孔310に所定の嵌合力でもって嵌合させて上記嵌合工程において上記被接続物付き端子を上記実装先部材300に対して自立させ、上記被接続物付き端子と上記貫通孔310を構成する上記壁311との間の上記隙間330を確保して、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間330への上記ハンダの濡れ上がりを促進し、上記隙間330に上記ハンダ層S1を良好に形成して、上記被接続物200と上記実装先部材300との機械的および電気的な接続強度を安定的に得ることができる端子を提供することができた。
【0026】
本発明の上記端子は、上記胴部が、上記外側へ突き出た上記凸部を少なくとも一つ有しておればよく、上記胴部における上記凸部の数も配置も限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、上記実施形態、および上記変形例の上記端子100は、上記凸部113、114が三つ以上設けられており、そのうちの三つの上記凸部113、114が、上記挿入方向からみて、これらを結んで三角形をつくると上記三角形のなかに上記過半円筒状又は上記重ね円筒状の中心軸Cが含まれるような三箇所に設けられている。このようにすれば、上記三箇所の凸部113、114が上記貫通孔310を構成する上記壁311に接することで、上記胴部110の上記壁311に対する位置が確定するので、上記嵌合工程において上記被接続物付き端子が上記実装先部材300に対して自立し、上記凸部113、114によって上記被接続物付き端子の上記胴部110と上記貫通孔310を構成する上記壁311との間の上記隙間330が確保されて、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間330への上記ハンダの濡れ上がりが促進され、上記隙間330に上記ハンダ層S1が良好に形成される。そのため、上記被接続物200と上記実装先部材300との機械的および電気的な接続強度が安定的に得られる。このように上記三箇所の凸部113、114が上記貫通孔310を構成する上記壁311に接することで、上記胴部110の上記壁311に対する位置が確定するので、上記端子100により得られる効果を一層確実に得ることができる。
【0027】
上述したように、本発明の上記端子は、上記胴部が、上記外側へ突き出た上記凸部を少なくとも一つ有しておればよく、上記胴部における上記凸部の数も配置も限定しない。そして、上記凸部の形状は上記実施形態、又は変形例によって限定されず、例えば、上記凸部の上記挿入方向奥側の面、上記挿入方向手前側の面などの側面の向きは自在に設定すればよく、例えば上記側面の向きが上記挿入方向に対して傾斜していてもよいし、傾斜していなくてもよい。例えば
図32に例示したように、上記胴部110が上記貫通孔310に嵌合したときに、上記壁311の上記挿入方向中途部に上記過半円筒状又は上記重ね円筒状の上記半径方向への押圧力をもって接して留まる上記凸部113の場合などは、上記側面の向きは自在に設定すればよく、例えば上記側面の向きが上記挿入方向に対して傾斜していてもよいし、傾斜していなくてもよい。そのような種々の実施形態のなかで、上記実施形態、および上記変形例の上記端子100は、上記胴部110における上記挿入方向奥側に第1の上記凸部113が設けられ、上記挿入方向手前側に第2の上記凸部114が設けられ、上記第1の凸部113の上記挿入方向手前側の面113aが上記外側へ向かうにつれて上記挿入方向奥側へ寄るように傾いて形成されていると共に、上記第2の凸部114の上記挿入方向奥側の面114aが上記外側へ向かうにつれて上記挿入方向手前側へ寄るように傾いて形成されており、上記第1の凸部113の上記挿入方向手前側の面113aにおける上記第1の凸部113の突出方向の中途部と、上記第2の凸部114の上記挿入方向奥側の面114aにおける上記第2の凸部114の突出方向の中途部との間の上記挿入方向に沿った距離Dが、実装先部材300の厚さTに等しい。このようにすれば、上記被接続物付き端子の上記胴部110を上記実装先部材300の上記貫通孔310に嵌合すると、上記第1の凸部113の上記挿入方向手前側の面113aが上記貫通孔310の上記挿入方向奥側の開口周縁部に掛かるので、上記被接続物付き端子が上記実装先部材300の上記貫通孔310から容易に引き抜かれることが阻止される。また、上記第2の凸部114の上記挿入方向奥側の面114aが上記貫通孔310の上記挿入方向手前側の開口周縁部に当たるので、その手応えなどにより嵌合作業の完了が検知される。さらに、例えば上記第1の凸部113が上記貫通孔310を抜け出た途端に弾性復原するときにクリック感が得られることがある。
【0028】
本発明の上記係止部は、例えば上記圧接形、上記ピアシング形、又はその他の係止構造のいずれであってもよい。そのような種々の実施形態のなかで、上記実施形態、および上記変形例の上記端子100は、上記係止片122、132が、上記基片121、131の上記幅方向両側のうち少なくとも一方側から立ち上がるバレルである。このようにすれば、上記胴部110の上記円柱状の空間111に上記導体210を挿入し、上記係止片122、132を上記被接続物200にかしめることで上記端子100が上記導体210に接続される。
【0029】
また、以上の説明により、本発明の、端子を用いた接続構造も十分に開示された。すなわち、上記本発明の、端子を用いた接続構造は、棒状の上記導体210を有する上記被接続物200と、上記貫通孔310が設けられた上記実装先部材300と、上記端子100とを備え、上記端子100が、上記内側に、上記母線が上記挿入方向に延びる上記円柱状の空間111が形成されるように、上記挿入方向からみて上記中心角θiが180度を越えていて上記周方向の両端縁の間に上記隙間が形成された上記過半円筒状、又は上記周方向の上記両端縁が重ねられた上記重ね円筒状に設けられた、導電性で弾性を有する上記胴部110と、上記胴部110における上記挿入方向の上記奥側と上記手前側のうち少なくとも一方側に配置され、上記胴部110から上記挿入方向奥側又は上記挿入方向手前側へ延びる上記基片121、131、および上記基片121、131に設けられた上記係止片122、132を有する上記係止部120、130とを備え、上記胴部110が、上記外側へ突き出た上記凸部113、114を少なくとも一つ有しており、上記被接続物200の上記導体210が上記端子100の上記胴部110の上記内側に挿入されて上記係止部120、130に係止されており、上記胴部110が上記実装先部材300の上記貫通孔310に嵌合されて上記凸部113、114が上記貫通孔310を構成する上記壁311に接しており、上記胴部110と上記貫通孔310を構成する上記壁311との間
の上記隙間330に上記ハンダ層S1が形成されている、端子を用いた接続構造である。
【0030】
上記胴部110の上記円柱状の空間111に上記被接続物200の上記導体210を挿入し、上記係止部120、130により上記被接続物200を係止することで上記被接続物200を上記端子100に接続する。そして、上記被接続物付き端子の上記胴部110を上記実装先部材300の上記貫通孔310へ挿入して上記貫通孔310に嵌合する。そうすると、上記胴部110が弾性を有する上記過半円筒状又は上記重ね円筒状に設けられていると共に、上記胴部110が上記凸部113、114を有しているので、上記凸部113、114を含む上記胴部110の寸法管理を行えば、上記被接続物付き端子が上記凸部113、114を含む上記胴部110において上記貫通孔310を構成する上記壁311に接して上記被接続物付き端子の上記胴部110が上記貫通孔310に所定の嵌合力でもって嵌合することから、上記嵌合工程において上記被接続物付き端子が上記実装先部材300に対して自立し、上記凸部113、114によって上記被接続物付き端子の上記胴部110と上記貫通孔310を構成する上記壁311との間の上記隙間330が確保されることから、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間330への上記ハンダの濡れ上がりが促進され、上記隙間330に上記ハンダ層S1が良好に形成される。そのため、上記被接続物200と上記実装先部材300との機械的および電気的な接続強度が安定的に得られる。
【0031】
上記実施形態の、端子を用いた接続構造は、上記端子100の上記胴部110を弾性を有する上記過半円筒状又は上記重ね円筒状に設けると共に、上記胴部110に上記外側へ突き出た上記凸部113、114を設けたので、上記被接続物200が接続された上記端子100を上記実装先部材300に設けられた上記貫通孔310に所定の嵌合力でもって嵌合させて上記嵌合工程において上記被接続物付き端子を上記実装先部材300に対して自立させ、上記被接続物付き端子と上記貫通孔310を構成する上記壁311との間の上記隙間115を確保して、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間115への上記ハンダの濡れ上がりを促進し、上記隙間115に上記ハンダ層S1を良好に形成させ、上記被接続物200と上記実装先部材300との機械的および電気的な接続強度を安定的に得ることができる、端子を用いた接続構造を提供することができた。
【0032】
上記本発明の、端子を用いた接続構造は、上記胴部と上記被接続物の上記導体との間にハンダ層が形成されていない実施形態を含んでいる。そのような種々の実施形態のなかで、上記実施形態、および上記変形例の、端子を用いた接続構造では、上記胴部110と上記貫通孔310を構成する上記壁311との間に上記ハンダ層S1が形成されていると共に、上記胴部110と上記被接続物200の上記導体210との間にも上記ハンダ層S2が形成されている。このようにすれば、上記ハンダ層S2により上記端子100と上記被接続物200との機械的および電気的な接続強度が向上するので、上記被接続物200と上記実装先部材300との機械的および電気的な接続強度が向上する。
【0033】
以下に、本発明の実施形態の概要を説明する。
1)本発明の端子のうち第1の態様に係るものは、
内側に、母線が挿入方向に延びる円柱状の空間が形成されるように、上記挿入方向からみて中心角が180度を越えていて周方向の両端縁の間に隙間が形成された過半円筒状、又は周方向の両端縁が重ねられた重ね円筒状に設けられた、導電性で弾性を有する胴部と、
上記胴部における上記挿入方向の奥側と手前側のうち少なくとも一方側に配置され、上記胴部から上記挿入方向奥側又は上記挿入方向手前側へ延びる基片、および上記基片に設けられた係止片を有する係止部とを備え、
上記胴部が、外側へ突き出た凸部を少なくとも一つ有して
おり、
上記胴部の内側に被接続物の導体を挿入し、上記係止部により上記被接続物を係止することで上記被接続物を端子に接続し、上記被接続物付き端子の上記胴部を実装先部材の貫通孔へ挿入して上記貫通孔に嵌合すると、上記凸部によって上記被接続物付き端子の上記胴部と上記貫通孔を構成する壁との間の隙間が形成されるように構成されている端子である。
【0034】
上記胴部の上記円筒状の空間に上記被接続物の上記導体を挿入し、上記係止部により上記被接続物を係止することで上記被接続物を上記端子に接続する。そして、上記被接続物付き端子の上記胴部を上記実装先部材の上記貫通孔へ挿入して上記貫通孔に嵌合する。そうすると、上記胴部が弾性を有する上記過半円筒状又は上記重ね円筒状に設けられていると共に、上記胴部が上記凸部を有しているので、上記凸部を含む上記胴部の寸法管理を行えば、上記被接続物付き端子が上記凸部を含む上記胴部において上記貫通孔を構成する壁に接して上記貫通孔に所定の嵌合力でもって嵌合することから、上記嵌合工程において上記被接続物付き端子が上記実装先部材に対して自立し、上記凸部によって上記被接続物付き端子の上記胴部と上記貫通孔を構成する上記壁との間の隙間が確保されることから、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間へのハンダの濡れ上がりが促進され、上記隙間にハンダ層が良好に形成される。そのため、上記被接続物と上記実装先部材との機械的および電気的な接続強度が安定的に得られる。
【0035】
上記第1の態様の端子は、上記端子の上記胴部を弾性を有する上記過半円筒状又は上記重ね円筒状に設けると共に、上記胴部に上記外側へ突き出た上記凸部を設けたので、上記被接続物が接続された上記端子を上記実装先部材に設けられた上記貫通孔に所定の嵌合力でもって嵌合させて上記嵌合工程において上記被接続物付き端子を上記実装先部材に対して自立させ、上記被接続物付き端子と上記貫通孔を構成する上記壁との間の上記隙間を確保して、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間へのハンダの濡れ上がりを促進し、上記隙間に上記ハンダ層を良好に形成して、上記被接続物と上記実装先部材との機械的および電気的な接続強度を安定的に得ることができる端子を提供することができた。
【0036】
2)本発明の端子のうち第2の態様に係るものは、上記第1の態様の端子において、さらに、
上記凸部が三つ以上設けられており、そのうちの三つの上記凸部が、上記挿入方向からみて、これらを結んで三角形をつくると上記三角形のなかに上記過半円筒状又は上記重ね円筒状の中心軸が含まれるような三箇所に設けられている端子である。
【0037】
このようにすれば、上記三箇所の凸部が上記貫通孔を構成する上記壁に接することで、上記胴部の上記壁に対する位置が確定するので、上記嵌合工程において上記被接続物付き端子が上記実装先部材に対して自立し、上記凸部によって上記被接続物付き端子の上記胴部と上記貫通孔を構成する上記壁との間の隙間が確保されて、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間へのハンダの濡れ上がりが促進され、上記隙間にハンダ層が良好に形成される。そのため、上記被接続物と上記実装先部材との機械的および電気的な接続強度が安定的に得られる。
【0038】
上記第2の態様の端子は、上記三箇所の凸部が上記貫通孔を構成する上記壁に接することで、上記胴部の上記壁に対する位置が確定するので、上記第1の端子により得られる効果を一層確実に得ることができる。
【0039】
3)本発明の端子のうち第3の態様に係るものは、上記第1又は上記第2の態様の端子において、さらに、
上記胴部における上記挿入方向奥側に第1の上記凸部が設けられ、上記挿入方向手前側に第2の上記凸部が設けられ、
上記第1の凸部の上記挿入方向手前側の面が上記外側へ向かうにつれて上記挿入方向奥側へ寄るように傾いて形成されていると共に、上記第2の凸部の上記挿入方向奥側の面が上記外側へ向かうにつれて上記挿入方向手前側へ寄るように傾いて形成されており、
上記第1の凸部の上記挿入方向手前側の面における上記第1の凸部の突出方向の中途部と、上記第2の凸部の上記挿入方向奥側の面における上記第2の凸部の突出方向の中途部との間の上記挿入方向に沿った距離が、実装先部材の厚さに等しい端子である。
【0040】
このようにすれば、上記被接続物付き端子の上記胴部を上記実装先部材の上記貫通孔に嵌合すると、上記第1の凸部の上記面が上記貫通孔の上記挿入方向奥側の開口周縁部に掛かるので、上記被接続物付き端子が上記実装先部材の上記貫通孔から容易に引き抜かれることが阻止される。また、上記第2の凸部の上記面が上記貫通孔の上記挿入方向手前側の開口周縁部に当たるので、その手応えなどにより嵌合作業の完了が検知される。
【0041】
上記第3の態様の端子は、上記第1又は上記第2の態様の端子により得られる効果が得られることに加え、さらに、上記被接続物付き端子が上記実装先部材の上記貫通孔から容易に引き抜かれることを阻止することができると共に、嵌合作業の完了を検知することができる。
【0042】
4)本発明の端子のうち第4の態様に係るものは、上記第1ないし上記第3のうちいずれか一つの態様の端子において、さらに、
上記係止片が、上記基片の幅方向両側のうち少なくとも一方側から立ち上がるバレルである端子である。
【0043】
このようにすれば、上記胴部の上記円筒状の空間に上記導体を挿入し、上記係止片を上記被接続物にかしめることで上記端子が上記導体に接続される。
【0044】
上記第4の端子は、上記第1ないし上記第3の態様のうちいずれか一つの端子により得られる効果が得られることに加え、さらに、上記係止片を上記被接続物にかしめることで上記端子を上記導体に接続することができる。
【0045】
5)本発明の、端子を用いた接続構造のうち第1の態様に係るものは、
棒状の導体を有する被接続物と、
貫通孔が設けられた実装先部材と、
端子とを備え、上記端子が、
内側に、母線が挿入方向に延びる円柱状の空間が形成されるように、上記挿入方向からみて中心角が180度を越えていて周方向の両端縁の間に隙間が形成された過半円筒状、又は周方向の両端縁が重ねられた重ね円筒状に設けられた、導電性で弾性を有する胴部と、
上記胴部における上記挿入方向の奥側と手前側のうち少なくとも一方側に配置され、上記胴部から上記挿入方向奥側又は上記挿入方向手前側へ延びる基片、および上記基片に設けられた係止片を有する係止部とを備え、
上記胴部が、外側へ突き出た凸部を少なくとも一つ有しており、
上記被接続物の上記導体が上記端子の上記胴部の内側に挿入されて上記係止部に係止され
ることで上記被接続物が上記端子に接続されており、
上記胴部が上記実装先部材の上記貫通孔に嵌合されて上記凸部が上記貫通孔を構成する壁に接しており、
上記凸部によって上記胴部と上記貫通孔を構成する上記壁との間の隙間が形成されており、
上記胴部と上記貫通孔を構成する上記壁との間
の上記隙間にハンダ層が形成されている、端子を用いた接続構造である。
【0046】
上記胴部の上記円筒状の空間に上記被接続物の上記導体を挿入し、上記係止部により上記被接続物を係止することで上記被接続物を上記端子に接続する。そして、上記被接続物付き端子の上記胴部を上記実装先部材の上記貫通孔へ挿入して上記貫通孔に嵌合する。そうすると、上記胴部が弾性を有する上記過半円筒状又は上記重ね円筒状に設けられていると共に、上記胴部が上記凸部を有しているので、上記凸部を含む上記胴部の寸法管理を行えば、上記被接続物付き端子が上記凸部を含む上記胴部において上記貫通孔を構成する上記壁に接して上記貫通孔に所定の嵌合力でもって嵌合することから、上記嵌合工程において上記被接続物付き端子が上記実装先部材に対して自立し、上記凸部によって上記被接続物付き端子の上記胴部と上記貫通孔を構成する上記壁との間の隙間が確保されることから、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間へのハンダの濡れ上がりが促進され、上記隙間にハンダ層が良好に形成される。そのため、上記被接続物と上記実装先部材との機械的および電気的な接続強度が安定的に得られる。
【0047】
上記第1の、端子を用いた接続構造は、上記端子の上記胴部を弾性を有する上記過半円筒状又は上記重ね円筒状に設けると共に、上記胴部に上記外側へ突き出た上記凸部を設けたので、上記被接続物が接続された上記端子を上記実装先部材に設けられた上記貫通孔に所定の嵌合力でもって嵌合させて上記嵌合工程において上記被接続物付き端子を上記実装先部材に対して自立させ、上記被接続物付き端子と上記貫通孔を構成する上記壁との間の上記隙間を確保して、上記ハンダ付け工程において毛細管現象などにより上記隙間へのハンダの濡れ上がりを促進し、上記隙間に上記ハンダ層を良好に形成して、上記被接続物と上記実装先部材との機械的および電気的な接続強度を安定的に得ることができる、端子を用いた接続構造を提供することができた。
【0048】
6)本発明の、端子を用いた接続構造のうち、第2の態様に係るものは、上記第1の態様の、端子を用いた接続構造において、さらに、
上記胴部と上記被接続物の上記導体との間にハンダ層が形成されている、端子を用いた接続構造である。
【0049】
このようにすれば、上記ハンダ層により上記端子と上記被接続物との機械的および電気的な接続強度が向上するので、上記被接続物と上記実装先部材との機械的および電気的な接続強度が向上する。
【0050】
上記第2の、端子を用いた接続構造は、上記第1の、端子を用いた接続構造により得られる効果が得られることに加え、さらに、上記被接続物と上記実装先部材との機械的および電気的な接続強度を向上させることができる。
【0051】
上記本発明の端子、および端子を用いた接続構造は、以上で説明した上記実施形態および上記変形例の特徴を組み合わせた実施形態を含んでいる。さらに、以上で説明した上記実施形態および上記変形例は上記本発明の端子、および端子を用いた接続構造のいくつかの例を示したに過ぎない。したがって、これらの上記実施形態および上記変形例の記載によって上記本発明の端子、および端子を用いた接続構造が限定解釈されることはない。