(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロセッサは、前記第1の光源構造から発せられた放射に応答して前記第3の検出器構造から第3の情報を収集するように適合され、前記プロセッサは、前記第1の光源構造から発せられた放射に応答して前記第4の検出器構造から第4の情報を収集するように適合され、前記第3の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第3の深さにおける前記組織を反映しており、前記第4の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第4の深さにおける前記組織を反映しており、前記第3および第4の深さは前記第1および第2の深さの間にある、請求項1に記載の装置。
前記プロセッサは、前記第2の光源構造から発せられた放射に応答して前記第3の検出器構造から第3の情報を収集するように適合され、前記プロセッサは、前記第2の光源構造から発せられた放射に応答して前記第4の検出器構造から第4の情報を収集するように適合され、前記第3の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第3の深さにおける前記組織を反映しており、前記第4の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第4の深さにおける前記組織を反映しており、前記第3および第4の深さは前記第1および第2の深さの間にある、請求項1に記載の装置。
前記第1の検出器構造は、前記プローブ面の上に位置決めされる第1の光検出器を備え、前記第2の検出器構造は、前記プローブ面の上に位置決めされる第2の光検出器を備え、前記第3の検出器構造は、前記プローブ面の上に位置決めされる第3の光検出器を備え、前記第4の検出器構造は、前記プローブ面の上に位置決めされる第4の光検出器を備える、請求項5に記載の装置。
前記センサモジュールは開口マスクを備え、前記開口マスクは、前記第1の導波管、前記第2の導波管、前記第3の導波管、および前記第4の導波管を備える、請求項9に記載の装置。
前記第1の距離が前記第2の距離と異なることに基づいて、前記プロセッサは、前記第1の光源構造から受信した第1のデータおよび前記第2の光源構造から受信した第2のデータに基づいて酸素飽和値を求めるように適合される、請求項1に記載の装置。
前記プローブの先端は、前記第1の光源構造の温度を表わす温度情報を生成するように構成される温度検知ユニットを備え、前記プロセッサは、前記第1の光源構造の温度が変化すると、前記温度情報に基づいて、前記第1の光源構造に供給される発振制御信号のデューティサイクルを調整して、前記第1の光源構造によって生成される光度を調整するように構成される、請求項1に記載の装置。
第9の距離は前記第1の光源構造から前記第2の光源構造までであり、前記第9の距離は前記第1、第2、第5、第6、第7および第8の距離よりも大きい、請求項1に記載の装置。
前記プロセッサは、前記第3および第4の検出器構造からではなく、前記第1および第2の検出器構造から収集した情報を用いて、前記第1の光源構造と前記第2の光源構造との光源出力の差に起因するオフセットを求める、請求項1に記載の装置。
前記プロセッサは、前記第1の光源構造から発せられた放射に応答して前記第3の検出器構造から第3の情報を収集するように適合され、前記プロセッサは、前記第1の光源構造から発せられた放射に応答して前記第4の検出器構造から第4の情報を収集するように適合され、前記第3の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第3の深さにおける前記組織を反映しており、前記第4の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第4の深さにおける前記組織を反映しており、前記第3および第4の深さは前記第1および第2の深さの間にある、請求項24に記載の装置。
前記プロセッサは、前記第2の光源構造から発せられた放射に応答して前記第3の検出器構造から第3の情報を収集するように適合され、前記プロセッサは、前記第2の光源構造から発せられた放射に応答して前記第4の検出器構造から第4の情報を収集するように適合され、前記第3の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第3の深さにおける前記組織を反映しており、前記第4の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第4の深さにおける前記組織を反映しており、前記第3および第4の深さは前記第1および第2の深さの間にある、請求項24に記載の装置。
前記第1の距離が前記第2の距離と異なることに基づいて、前記プロセッサは、前記第1の光源構造から受信した第1のデータおよび前記第2の光源構造から受信した第2のデータに基づいて酸素飽和値を求めるように適合される、請求項24に記載の装置。
前記プロセッサは、前記メモリに予め記憶されている、それぞれ、前記第1の光源構造および前記第1の検出器構造、前記第1の光源構造および前記第2の検出器構造、前記第1の光源構造および前記第3の検出器構造、前記第1の光源構造および前記第4の検出器構造、前記第2の光源構造および前記第1の検出器構造、前記第2の光源構造および前記第2の検出器構造、前記第2の光源構造および前記第3の検出器構造のための、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の校正係数を前記メモリから取出すように適合され、
前記第1から第8の距離に依存する前記第1から第8の校正係数は互いに異なり、
前記プロセッサは、測定対象の組織について酸素飽和値を求める際に、前記第1から第8の校正係数を計算することなくこれらの校正係数を用いるように適合される、請求項24に記載の装置。
前記プロセッサは、前記第1の光源構造に、第1の期間中に前記第1の光源構造から第1の放射波長を発し、第2の期間中に前記第1の光源構造から第2の放射波長を発し、第3の期間中に前記第1の光源構造から第3の放射波長を発し、第4の期間中に前記第1の光源構造から第4の放射波長を発するようにさせ、
前記第1の期間中、前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第1の検出器構造を校正するために第1の校正係数を用いるように適合され、
前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第2の検出器構造を校正するために第2の校正係数を用いるように適合され、
前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第3の検出器構造を校正するために第3の校正係数を用いるように適合され、
前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第4の検出器構造を校正するために第4の校正係数を用いるように適合され、
前記第2の期間中、前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第1の検出器構造を校正するために第5の校正係数を用いるように適合され、
前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第2の検出器構造を校正するために第6の校正係数を用いるように適合され、
前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第3の検出器構造を校正するために第7の校正係数を用いるように適合され、
前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第4の検出器構造を校正するために第8の校正係数を用いるように適合され、
前記第3の期間中、前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第1の検出器構造を校正するために第9の校正係数を用いるように適合され、
前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第2の検出器構造を校正するために第10の校正係数を用いるように適合され、
前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第3の検出器構造を校正するために第11の校正係数を用いるように適合され、
前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第4の検出器構造を校正するために第12の校正係数を用いるように適合され、
前記第4の期間中、前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第1の検出器構造を校正するために第13の校正係数を用いるように適合され、
前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第2の検出器構造を校正するために第14の校正係数を用いるように適合され、
前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第3の検出器構造を校正するために第15の校正係数を用いるように適合され、
前記プロセッサは、前記第1の光源構造および前記第4の検出器構造を校正するために第16の校正係数を用いるように適合される、請求項24に記載の装置。
前記プロセッサは、前記第1の光源構造から発せられた放射に応答して前記第3の検出器構造から第3の情報を収集するように適合され、前記プロセッサは、前記第1の光源構造から発せられた放射に応答して前記第4の検出器構造から第4の情報を収集するように適合され、前記第3の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第3の深さにおける前記組織を反映しており、前記第4の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第4の深さにおける前記組織を反映しており、前記第3および第4の深さは前記第1および第2の深さの間にある、請求項39に記載の装置。
前記プロセッサは、前記第2の光源構造から発せられた放射に応答して前記第3の検出器構造から第3の情報を収集するように適合され、前記プロセッサは、前記第2の光源構造から発せられた放射に応答して前記第4の検出器構造から第4の情報を収集するように適合され、前記第3の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第3の深さにおける前記組織を反映しており、前記第4の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第4の深さにおける前記組織を反映しており、前記第3および第4の深さは前記第1および第2の深さの間にある、請求項39に記載の装置。
前記プロセッサによる、前記第1および第2の光源構造からの第1および第2のデータに基づく推定酸素飽和値のための計算は、前記第1の距離と前記第2の距離とが異なっていることに依存する、請求項39に記載の装置。
前記プロセッサは、前記メモリから第1の複数の校正係数を取出し、前記校正係数を用いて、前記第1の光源構造によって発せられた放射の波長ごとに前記第1、第2、第3および第4の検出器構造の各々によって収集される放射の絶対強度を補正するように適合され、
前記プロセッサは、前記メモリから第2の複数の校正係数を取出し、前記校正係数を用いて、前記第2の光源構造によって発せられた放射の波長ごとに前記第1、第2、第3および第4の検出器構造の各々によって収集される放射の絶対強度を補正するように適合される、請求項39に記載の装置。
前記第1および第2の複数の校正係数は前記メモリに予め記憶されており、前記プロセッサは前記第1および第2の複数の校正係数を決定しない、請求項52に記載の装置。
前記プロセッサは、前記第1の光源構造から発せられた放射に応答して前記第3の検出器構造から第3の情報を収集するように適合され、前記プロセッサは、前記第1の光源構造から発せられた放射に応答して前記第4の検出器構造から第4の情報を収集するように適合され、前記第3の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第3の深さにおける前記組織を反映しており、前記第4の情報は、前記測定対象の組織の前記表面より下の第4の深さにおける前記組織を反映しており、前記第3および第4の深さは前記第1および第2の深さの間にある、請求項54に記載の装置。
前記第1の検出器構造は第1の光検出器を備え、前記第2の検出器構造は第2の光検出器を備え、前記第3の検出器構造は第3の光検出器を備え、前記第4の検出器構造は第4の光検出器を備える、請求項54に記載の装置。
前記プロセッサは、前記メモリから第1の複数の校正係数を取出し、前記校正係数を用いて、前記第1の光源構造によって発せられた放射の波長ごとに前記第1、第2、第3および第4の検出器構造の各々によって収集される放射の絶対強度を補正するように適合され、
前記プロセッサは、前記メモリから第2の複数の校正係数を取出し、前記校正係数を用いて、第2の光源構造によって発せられた放射の波長ごとに前記第1、第2、第3および第4の検出器構造の各々によって収集される放射の絶対強度を補正するように適合される、請求項54に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
分光法は、被験動物および被験者のさまざまな生理学的性質の非侵襲的測定のために用いられている。可視(たとえば赤色光)および近赤外分光法は、これらのスペクトル範囲における生体組織の散乱が比較的低いため、利用されることが多い。ヒト組織は、たとえば、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、メラニン、水、脂質、およびシトクロムなどの多数の光吸収発色団を含む。ヘモグロビンは、可視および近赤外スペクトル範囲のほとんどについて組織内の優勢な発色団であり、光吸収を介してヒト組織の色に寄与する。可視および近赤外範囲において、酸素化および脱酸素化ヘモグロビンは大きく異なる吸収特徴を有する。したがって、可視および近赤外分光法は、これらの異なる吸収特徴を利用して、組織ヘモグロビン酸素飽和度(酸素飽和度と称されることもある)および総ヘモグロビン濃度などの生理的媒質内の酸素レベルを測定するために適用されている。
【0025】
時間分解分光法(time-resolved spectroscopy:TRS)、位相変調分光法(phase modulation spectroscopy:PMS)などの周波数領域技術、および連続波分光法(continuous wave spectroscopy:CWS)などのさまざまな技術が可視および近赤外分光法について開発されている。生理的媒質の均質で半無限のモデルでは、TRSおよびPMSの両方を用いて、光子拡散近似またはモンテカルロモデルを用いることによって生理的媒質の吸収係数および減少散乱係数が得られる。複数の波長における吸収係数から、酸素化および脱酸素化ヘモグロビンの濃度を求めることができ、これらの濃度から組織酸素飽和度を計算することができる。
【0026】
CWSは一般に、散乱および吸収の効果を分離するのに十分な情報を有していない。したがって、酸素化および脱酸素化ヘモグロビンの濃度は典型的に、互いに区別することができない。CWSは典型的に、組織散乱についての仮定を必要とする修正されたベール・ランバート方程式(modified Beer-Lambert equation)を解くために用いられており、2つ以上の波長がレシオメトリック的に用いられ、別の方法では当該方程式を解くために必要とされる光路長をなくす。CWSは、その一般に用いられる形態において、相対的な酸素飽和度のみを提供し、酸素化および脱酸素化ヘモグロビンの絶対酸素飽和度または濃度を提供することはできない。
【0027】
ヘモグロビン濃度および絶対酸素飽和度を提供するTRSおよびPMSの能力にもかかわらず、TRSおよびPMS設備の1つの主な欠点は、設備が大型で比較的高価なことである。別の主な欠点は、これらの技術の両方とも、比較的少量の組織の内部の測定(すなわち2,3ミリメートル以内の「局所」測定)が困難なことである。これらの技術は典型的に、少量の組織を通る短い通過時間と関連付けられる小さい時間変化または位相シフトのため、「局部」測定(最小で1センチメートル)のために用いられる。これに対して、CWS設備は比較的より低コストで製造され得るが、広帯域スペクトル情報を含むことによって、または空間情報を含むことによって向上がなされない限り、上述のようにその有用性が典型的に制限されてしまう。CWSに基づく現在のプローブは、絶対飽和度測定が関心事であるよりはむしろ測定速度がそれほど重要でなく相対的である手術後の組織監視には十分であることが分かっている。しかし、現在利用可能なプローブは、一般的なCWSの仮定のため、手術中に用いられると不正確な飽和度測定を提供することが示されている。ここに説明される発明の実施形態は、公知の装置に対する組織オキシメトリの改良を提供する。
【0028】
空間分解分光法(spatially-resolved spectroscopy:SRS)は、組織吸収を組織散乱とは独立して求めることができ、それによって酸素化および脱酸素化ヘモグロビンなどの発色団濃度の絶対測定を可能にする、一種の可視および近赤外分光法である。より具体的には、SRS機器は光源を介して組織内に発光し、光源から異なる距離に位置決めされる2つ以上の検出器で拡散反射光を集光し得る。
【0029】
代替的に、SRS機器は、1つ以上の検出器から異なる距離に位置決めされる2つ以上の光源から発光し得る。検出器に戻る光の散乱は組織の屈折率の相対変化によって生じ、ミトコンドリアなどのより大きい構造からのミー散乱(組織散乱の大半はミトコンドリアの結果である)、および細胞内小胞などのより小さい構造からのレイリー散乱を含む。光の吸収は、組織の発色団との相互作用によって生じる。
【0030】
光源からの距離(たとえば光検出器の複数の別個の距離)の関数として回復される反射率(すなわち回復した光強度)から、SRS機器は単一波長で組織の吸収係数および散乱係数を定量化し得る。
【0031】
そして、光の複数の波長をSRSとともに用いて、プローブ中の組織の容量内の酸素化および脱酸素化ヘモグロビン濃度を、ならびにしたがって酸素飽和度を求めることができる。さらに、1つまたは複数の光源の波長、および検出器に対する当該光源の相対位置によって、予め定められた組織深さについての組織オキシメトリ測定が可能になる。
【0032】
SRSなどの可視および近赤外分光法が有用な1つの分野は、再建手術のために組織弁を患者の1つの部位から別の部位に移す組織弁手術である。可視および近赤外分光法技術を用いて組織弁内の酸素飽和度を測定することができるため、当該組織弁の生存率を手術中および手術後に求めることができる。可視および近赤外SRSを用いる手術中の組織弁オキシメトリプローブは、さまざまな理想的でない状況下で正確な酸素飽和度測定を迅速に果たすことが可能でなければならない。空間分解分光法を使用可能な組織オキシメトリ装置を記載している2013年5月3日に出願された米国特許出願第13/887,130号、第13/887,220号、第13/887,213号、第13/887,178号、および第13/887,152号が引用により援用される。
【0033】
組織オキシメトリ装置
本発明の実施形態は、組織オキシメトリ装置であって、SRSを用いて酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンの濃度を提供し、そこから組織オキシメトリ装置が推定酸素飽和度を求めることができる組織オキシメトリ装置に関する。組織オキシメトリ装置の実施形態は比較的コンパクトであり、単一ユーザによるハンドヘルド使用を容易にする。
【0034】
図1は一実施形態に係る組織オキシメトリ装置100の簡略ブロック図であり、組織オキシメトリ装置に含まれ得る多数の処理モジュールを示す。組織オキシメトリ装置100は、単一ユーザによるハンドヘルド使用のために構成されるハンドヘルド装置であり、組織の絶対酸素飽和度を求めるためにSRSを用いる。
【0035】
具体化では、組織オキシメトリ装置は、0から100(または2桁表示では0から99)のパーセント値である絶対酸素飽和度を表示する。他の具体化では、組織オキシメトリ装置は、絶対酸素飽和度の値または他の指標表現を表示する。この代表値は、別の範囲(たとえば0から20または0から50)、インジケータライト(たとえばLEDライト)、バーグラフもしくはゲージ、または絶対酸素飽和度を表わす他の指示器であってもよい。絶対酸素飽和度のこの代替的なディスプレイの目盛は、直線的、幾何学的、対数的、または他の目盛であってもよい。
【0036】
さらに、他の具体化では、組織オキシメトリ装置は組織の推定酸素飽和度を表示する。この推定値は上述の絶対酸素飽和度であってもよいし、または酸素飽和度の他の推定であってもよい。この推定酸素飽和度は、本願に説明される回路構成および技術を用いて求められる中間値であってもよく、絶対酸素飽和度は、この推定酸素飽和値から計算または生成される。そして、装置は、推定酸素飽和値(表示されない)および絶対酸素飽和度(表示される)を計算する。そして代替的に、絶対酸素飽和度から推定酸素飽和値を求めることができる。
【0037】
図1に示される実施形態によると、組織オキシメトリ装置100は、ハンドヘルド装置ハウジング105(
図1の太い囲み線)、センササブシステム110、収集モジュール115、測定モジュール120(演算モジュールと称されることもある)、ディスプレイ125(たとえば任意にバックライト付きの液晶表示画面)、1つ以上の入力制御部130、および電源135を含む。ハンドヘルド装置ハウジング105(「ハウジング」)は、上に列記された要素の1つ以上を収容するように構成される。ハウジング105の具体例の実施形態は以下に説明される。
【0038】
センササブシステム110および収集モジュール115はバスシステムを介して通信可能に結合され得、収集モジュール110および測定モジュール120もバスシステムを介して通信可能に結合され得る。電源135は、センササブシステム110、収集モジュール115、および測定モジュール120にDC電力、変調電力、または両方を提供するように構成され得る。
【0039】
センササブシステム110は、光または輻射(可視、赤外もしくは両方)を生成して組織140内に発し、組織からセンササブシステム内に散乱または反射した光を集光するためのさまざまな光学要素を含む。センササブシステム110は、センササブシステムによって検出された散乱光から反射率データを生成し、反射率データを前処理のために収集モジュール115に送信し得る。測定モジュール120は、収集モジュール115から前処理された反射率データを受信して組織の酸素飽和度を求めるように構成され得る。測定モジュール120は、入力コントローラ130の1つ以上に、またはディスプレイ125に通信可能に結合され得る。入力コントローラ130の1つから受信したユーザ入力に基づいて、組織オキシメトリモジュール100は組織の酸素飽和度を求め、酸素飽和度の結果をディスプレイ125上に表示し得る。
【0040】
センササブシステム110がここでさらに説明される。
図2は、一実施形態に係るセンササブシステム110の簡略ブロック図である。センササブシステム110は1つ以上の光源150(たとえば2つの光源)を含み得、各光源は、1つ以上の発光ダイオード(LED)または1つ以上のレーザダイオード等の、1つ以上の照明要素152a〜152n(包括的に照明要素152と称する)を含む。センササブシステム110はさらに、各光源150からの放射光を集光して放射光を組織140上に導く第1のセットの光学装置155(たとえばレンズまたは光ファイバケーブル等の従来の光学装置)を含み得る。
【0041】
センサシステム110はさらに、光源150の温度を検出するように構成される、1つ以上のサーミスタなどの1つ以上の温度センサ160を含み得る。一実施形態では、温度センサ160は光源150にそれぞれ関連付けられ、光源の温度を測定するように構成される。
【0042】
温度センサ160は、光源150の温度情報をセンササブシステム110、収集モジュール115、測定モジュール120の1つ以上に送信し得、これらは温度情報を用いて、光源に供給される制御信号(たとえば時変制御信号)を調節し得、制御信号は光源の光度を制御する。たとえば、光源のうちの1つのLEDが加熱および冷却されると、LEDの効率が変化し、したがってLEDの光度が変化し得る。
【0043】
センササブシステム110、収集モジュール115、または測定モジュール120、またはこれらの要素の組合せは、LEDが実質的に一定の光度を提供するように、LEDに供給される制御信号を変更し得る。たとえば、正弦波形状制御信号などの制御信号がLEDに供給されると、センササブシステム110、収集モジュール115、測定モジュール120、またはこれらの要素の組合せは、LEDが加熱または冷却されたときにLEDが実質的に一定の光度を提供するように、制御信号のデューティ信号を変化させ得る。
【0044】
代替実施形態では、光源の光度の増加、減少、または変化がないことを検出するための光検出器がセンササブシステム110内に、たとえばプローブ先端内に(以下に説明される)位置決めされ得る。センササブシステム110、収集モジュール115、および測定モジュール120の1つ以上は光検出器情報を受信するように光検出器に通信可能に接続され得、光検出器情報は増加、減少、または変化の欠如(たとえば変化なし)の情報を含む。センササブシステム110、収集モジュール115、および測定モジュール120の1つ以上は、受信した光検出器情報を用いて、光源が実質的に一定または均一の光度を生成するように光源を制御し得る。
【0045】
特定の具体化では、照明要素152の温度が、温度センサ160によって行なわれる2つの連続する温度測定同士の間で閾値量だけ変化する場合は、照明要素152によって発せられる光度がセンササブシステム110、収集モジュール115、測定モジュール120、またはこれらの組合せによって変更され得る。具体的には、温度変化が閾値であるか閾値以内である場合、照明要素の光度は変更されない場合がある(たとえば時変制御信号のデューティ信号が一定に保持される)。代替的に、温度変化が閾値よりも大きい場合は、照明要素の光度が変更されて(たとえば時変制御信号のデューティサイクルが上昇、または下降、または別の方法でしかるべく変化させられて)、実質的に一定の光度が維持され得る。
【0046】
センササブシステム110はさらに、組織140から反射される光を集光し、この光を、1つ以上のPINダイオードまたは1つ以上のフォトレジスタ等の1つ以上の光検出器170a〜170n(包括的に光検出器170と称する)に導く第2のセットの光学装置165を含み得る。各光検出器170は検出光に基づいて反射率データを生成し得、これは収集モジュール115、測定モジュール115、または両方によって用いられて組織140の酸素飽和度測定が生成され得る。光源150および光検出器170の空間分布のさらなる詳細は以下に説明される。この空間分布によって、組織オキシメトリ装置100によってSRSが行なわれることが可能になる。
【0047】
センササブシステム110はさらに、組織140に接するセンササブシステムのセンサヘッドの圧力を検出するように構成される圧力センサ175を含み得る。圧力センサ175は、力検知抵抗器またはロードセル等の1つ以上を含み得る。圧力センサ175はここで簡単に言及され、以下にさらに説明される。なお、組織オキシメトリ装置100の選択実施形態は圧力センサ175を含むが、組織オキシメトリ装置の他の実施形態は圧力センサを含まない場合がある。
【0048】
収集モジュール115がここでさらに説明される。
図3は、一実施形態に係る収集モジュールの簡略ブロック図である。収集モジュール115は、駆動回路180、反射率データコレクタ185、圧力データコレクタ190、および信号収集プロセッサ195を含み得る。収集サブシステム115のさまざまな実施形態は、これらの要素のいくつかまたはすべてを任意の組合せで含み得る。収集プロセッサ195、駆動回路180、または両方を介して、収集モジュール115は可変制御信号を光源150に提供し、そこから発せられる光を制御し得る。たとえば、信号収集プロセッサ195は、デジタル波形などの波形を駆動回路180に供給し得る。デジタル波形は、上述の時変制御信号(たとえば正弦波形状制御信号)のデジタル形式であり得る。
【0049】
駆動回路180のデジタル−アナログ変換器(DAC)180aがデジタル波形を受信し、デジタル波形を制御信号のアナログ形式(すなわちアナログ正弦波制御信号)に変換し、制御信号のアナログ形式を電流ドライバ180bに供給または出力する。信号収集プロセッサ195はさらに、定義済の電流パターンおよびデジタル駆動レベルを駆動回路180に供給または出力する。電流ドライバ180bは、信号収集プロセッサ195から実質的に直接に電流パターンを受信し、駆動回路180の第2のDAC180cから駆動レベルのアナログ形式を受信する。電流ドライバ180は、制御信号のアナログ形式、パターン、および駆動レベルを用いて制御信号を光源150に供給し得、電流ドライバはパターンおよび駆動レベルを用いて、センササブシステム105への転送に先立って制御信号をコンディショニングし得る。
【0050】
信号収集プロセッサ195、測定モジュール120、または両方は、温度センサ160から温度情報を受信し、上述のように温度に基づいて制御信号、パターン、および駆動レベルの1つ以上を調整して制御信号のデューティサイクルを増加または減少させるように構成され得る。より具体的には、信号収集プロセッサ195は、(温度センサ160に含まれる)サーミスタなどから温度情報を受信して上述の調整を制御するように構成され得る。センササブシステム110は、温度情報(たとえばアナログ信号)を受信し、温度情報が信号収集プロセッサ195、測定モジュール120、または両方によって使用されるためにコンディショニングするように構成され得る温度−情報コンディショニングモジュール(図示せず)を含み得る。温度−情報コンディショニングモジュールは温度情報のアナログ信号をフィルタリングし、温度情報をデジタルに変換するかまたはそれに対して他の操作を行なって、温度情報が信号収集プロセッサ195および測定モジュール120の一方または両方によって使用可能であるようにし得る。
【0051】
次に反射率データコレクタ185に注目して、反射率データコレクタは、光検出器170によって生成される生反射率データを受信して生反射率データを処理するように構成され得る。より具体的には、反射率データコレクタ185は、生反射率データを受信、蓄積、フィルタリング、デジタル化、および平均するように構成され得、当該データはその後、光強度などの対応する物理量に変換され得る。反射率データコレクタ185は、生反射率データを受信する信号コンディショナ185aを含み得、必要に応じて生反射率データをフィルタリングし得る。サンプルホールド回路を有するアナログ−デジタル変換器(ADC)185bが生反射率データをデジタル信号に変換し得、これは信号収集プロセッサ195によって平均され、光源から発せられた光と相関させられ、測定モジュール120においてさらに処理され得る。
【0052】
相関は、各光検出器170と各照明要素152との相関校正情報を含み得る。すなわち、組織オキシメトリ装置100によって用いられる校正情報は、光源ごとに校正される光検出器ごとの校正情報を含み得る。各光源の光度、各光検出器のゲイン、または両方が校正情報に基づいて調整され得る。代替的に、各光検出器によって生成される反射率データは、収集モジュール115(たとえば信号収集プロセッサ195)、測定モジュール120、または両方によって、校正情報に基づいて調整され得る。校正情報の生成は以下にさらに説明される。
【0053】
信号収集プロセッサ195はさらに、収集モジュール115へのゲイン制御信号の発行を介して光検出器170(たとえばピンダイオード)のゲインを制御するように構成され得、収集モジュール115はDAC85cを介してゲイン制御信号をデジタル信号からアナログ信号に変換し得、DAC85cは次にゲイン制御信号を信号コンディショナ185aに提供して1つ以上の光検出器170にさらに送信する。信号収集プロセッサ195は、上述の処理を行なうためのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、ゲートアレイ、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはプロセッサ等の、1つ以上の論理制御回路を含み得る。
【0054】
測定モジュール120がここでさらに説明される。
図4は、一実施形態に係る測定モジュール120の簡略ブロック図である。測定モジュール120は、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、または制御ロジック等の、またはこれらの回路要素の任意の組合せなどの制御プロセッサ200を含み得る。測定モジュール120はさらにメモリ装置205を含み得る。メモリ装置205は、ディスク(たとえばマイクロディスクドライブ)またはフラッシュ等のさまざまなメモリ種類の1つ以上を含み得、メモリ装置は、コンピュータコード命令、データ(たとえば校正情報)、または両方を記憶するように構成され得る。記憶されたコンピュータコード命令、データ、または両方は、集光された光から組織140の酸素飽和度を求めるためのさまざまな方法などの、ここに説明される方法および計算の1つ以上を行なうために、制御プロセッサ200、信号収集プロセッサ195、または両方によって用いられ得る。酸素飽和度の判定は、モンテカルロシミュレーションと題された本願の節において以下により詳細に説明される。
【0055】
酸素飽和度の酸素飽和値が、たとえば、組織140の全体の可能な酸素飽和度のパーセンテージのインデックス値としてまたは正規化値として計算された後、酸素飽和値がディスプレイ125上に表示され得る。酸素飽和値の判定および表示は繰返される処理であり得る。たとえば、組織140の酸素飽和度は、毎秒多数回、たとえば毎秒3回求められ得る。酸素飽和値の2回以上の測定、たとえば3回の測定が制御プロセッサ200によって平均されてディスプレイ125上に表示され得る。たとえば、1秒間に酸素飽和度の測定が3回行われて平均され得る。
【0056】
この平均酸素飽和値は次にディスプレイ125上に表示され得、表示された酸素飽和値は毎秒1回(たとえば1ヘルツで)ディスプレイ上で更新され得る。一般に、比較的長期間にわたる酸素飽和度測定の平均化は、酸素飽和度測定が組織140上の異なる部位について平均されないようにするため、行なわれない。たとえば、ユーザが組織オキシメトリ装置100を組織上の1つの部位から組織上の別の部位に移した場合、そしてこれは1秒以上かかることが多いが、これらの異なる部位の酸素飽和値の平均は一般にディスプレイ上に表示されるべきでない。一般に、酸素飽和値の平均化を1秒のタイムフレームに制限すると、2つ以上の組織部位の酸素飽和値の平均化が制限される。
【0057】
電源135がここでさらに説明される。
図5は、一実施形態に係る電源135の簡略ブロック図である。電源135は、1つ以上のバッテリ220、電源スイッチ225、または電力変換器230等を含み得る。電源135は、センササブシステム110、収集モジュール115、測定モジュール120、ディスプレイ125、および入力コントローラ130の1つ以上にDC電力、変調電力、または両方を供給し得る。電源135はさらに測定モジュール120と通信可能に結合され得、測定モジュールは電力モジュールを制御して、組織オキシメトリ装置100のさまざまな電力動作モード、たとえばパワーアップ動作およびスタンバイモード等のために電力を供給し得る。
【0058】
バッテリ220は、使い捨てバッテリまたは充電可能バッテリであってもよい。当該技術において公知であるように、使い捨てバッテリは、その蓄積電荷が消費された後に捨てられる。電源135に使用され得る使い捨てバッテリ化学技術の中には、アルカリ、亜鉛炭素、リチウム空気、亜鉛空気、または酸化銀を含むものもある。バッテリは、電源135が組織オキシメトリ装置100のさまざまな部品に最大で6ボルトを提供し得るように電気的に直列の4つの1.5ボルトバッテリ(たとえば単4、単3、もしくは単5バッテリ)または2つの3ボルトバッテリ(たとえばCR2032、CR2016、およびCR123A等)を含み得る。
【0059】
バッテリは、組織オキシメトリ装置100の数時間の使用を提供するのに十分な蓄積電荷を有する。たとえば、バッテリは、組織オキシメトリ装置100の2または3時間の使用を提供するように構成され得る。使用後、組織オキシメトリ装置100またはその使い捨て部分は捨てられ得る。他の具体化では、バッテリは充電可能であり、蓄積電荷が消費された後に複数回充電可能である。電源135に使用され得る充電可能バッテリ化学技術の中には、ニッケルカドミウム(NiCd)、ニッケル水素(NiMH)、リチウムイオン(Liイオン)、および亜鉛空気を含むものもある。バッテリは、たとえば、組織オキシメトリ装置に接続するコードを用いてACアダプタを介して充電され得る。組織オキシメトリ装置内の回路構成は、バッテリ充電のための充電回路(図示せず)を含み得る。充電可能バッテリ化学を有するバッテリは、バッテリが充電されずに使用後に処分される使い捨てバッテリとして使用されることもある。組織オキシメトリ装置100は、組織オキシメトリ装置またはその一部が再利用のために構成されている場合は充電可能バッテリを使用し得る。
【0060】
電源135の電源スイッチ225は、パワーアップ、パワーダウン、動作のスタンバイパワーモードの開始、動作のスタンバイパワーモードの終了、および他の機能のために測定モジュール120とともに動作するように構成され得る、ユーザが操作可能なスイッチであり得る。たとえば、組織オキシメトリ装置100がパワーダウンした場合、電源スイッチ225の起動によって組織オキシメトリ装置100が測定モジュール120の制御下でパワーアップシーケンスを実行し得る。組織オキシメトリ装置100の電源が投入された場合、電源スイッチ225の比較的短い起動(たとえば2秒未満)によって組織オキシメトリ装置がスタンバイパワーモードになってバッテリを節電し得る。組織オキシメトリ装置100がスタンバイパワーモードにある場合、電源スイッチ225のその後の比較的短い起動(たとえば2秒未満)によって組織オキシメトリ装置が比較的迅速にフルパワーモードになり得る。組織オキシメトリ装置100がフルパワーモードにある場合、またはスタンバイパワーモードにある場合、電源スイッチ225の比較的長い起動(たとえば2秒以上)によって組織オキシメトリ装置がパワーダウンし得る。
【0061】
測定モジュール120はさらに、組織オキシメトリ装置100が1つ以上の所与の期間にわたってアクティブでなかった等の1つ以上の基準が満たされた場合、組織オキシメトリ装置をスタンバイパワーモードにするかまたはパワーダウンさせ得る。たとえば、測定モジュール120は、組織オキシメトリ装置が20秒間アクティブでなければ組織オキシメトリ装置100をスタンバイパワーモードにし、組織オキシメトリ装置が5分間アクティブでなければ組織オキシメトリ装置をパワーダウンモードにし得る。
【0062】
パワーアップ後、組織オキシメトリ装置は、圧力センサの圧力を校正すること、センササブシステム110、収集モジュール115、測定モジュール120、および電源135の1つ以上に存在し得るエラーメッセージをクリアすることなど、さまざまなセルフチェックを実行し得る。
【0063】
電源135の電力変換器230は、バッテリ220から出力された電圧を、センササブシステム110、収集モジュール115、測定モジュール120、ディスプレイ125、および入力制御部130によって用いられるさまざまなDC電圧に変換するように構成されるDC−DC変換器であり得る。たとえば、電力変換器230は、1.2ボルト、2.5ボルト、3.3ボルト、5ボルト、または6ボルト等を出力するように構成され得る。電力変換器230は、所与の時点でこれらの電圧の1つ以上を出力するように構成され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、センササブシステム110、収集モジュール115、測定モジュール120、ディスプレイ125、入力制御部130、および電源135は、これらの電子部品が組織オキシメトリ測定を行ない、他の装置(たとえば組織オキシメトリ装置のハウジングの外部の装置)と(有線または無線で)通信する必要なしに組織の酸素飽和度の情報を提供し得るという意味で、自立型電子部品と称されることもある。したがって、組織オキシメトリ装置100の実施形態のいくつかは自立型であると称される。
【0065】
図6は、センササブシステム110、収集モジュール115、測定モジュール120、および電源135の簡略ブロック図であり、これらの要素を通る、かつこれらの要素同士の間の情報および電力の流れを示す。機能および回路ブロック同士の間の実線はアナログ信号の流れを示す。ダッシュが比較的長い破線はデジタル信号の流れを示す。ダッシュが比較的短い破線は電力の流れを示す。混合された破線−点線は混合信号の流れを示す。
【0066】
図7Aおよび
図7Bは、一実施形態に係る組織オキシメトリ装置100の2つの全体斜視図である。
図7Cは組織オキシメトリ装置100の側面図であり、
図7Dはハウジング105が実質的に透明であるとして示される組織オキシメトリ装置100の図である。
図7Dのハウジング105の透視図では、ハウジング内の要素の位置は一実施形態に従って示される。
【0067】
図7A〜
図7Dに示される組織オキシメトリ装置100の特定の実施形態では、ハウジング105は、ディスプレイ125を含む上部105aを含む。ハウジング105はさらに、本体部105bと、センサヘッド250の一部を形成する先端部105cとを含む。ハウジング105の上部105aは、ユーザが自身の手の中に本体部105bを保持し、かつセンサヘッド250が患者の組織に押付けられた状態で、上向きに位置決めされるように構成される。上部105aは、センサヘッド250が組織に接して保持された状態でユーザが本体部105bを保持している間、ディスプレイ125をユーザの顔の方に向くように方向付け得る。
【0068】
ハウジング105は比較的コンパクトであり得、たとえば、ハウジングは上部105aからセンサヘッド250までの長さが約25センチメートル以下であり得、任意の横軸を横切る幅が13センチメートル未満であり得る。ハウジング105は、プラスチック、ナイロン、金属、またはこれらの組合せなどの、さまざまな材料で形成され得る。ハウジング105は、UL/IEC/CAN 60601−1および耐流体流出性についての関連文献の要件に準拠し得る。先端部105cは、液体ファントム校正に十分なレベルまで潜水可能であり得る。
【0069】
入力制御部130の少なくとも1つがハウジング105において上部105aの下側に位置決めされ得、ボタンであり得る。上部105aの下側の少なくとも1つの入力制御部は、(上述の)パワーオン、パワーオフ、スタンバイパワーモードの開始、およびスタンバイパワーモードの終了のために構成される電力ボタンであり得る。
【0070】
図7Dに示される組織オキシメトリ装置100の具体的な実施形態では、収集モジュール115は、上述の収集モジュールの回路などの多数の回路が配置されたプリント回路基板115aを含む。収集モジュール115は、たとえば本体部105bの前側に沿って、ハウジング105の本体部105b内に実質的に位置決めされ得る。
図7Dの組織オキシメトリ装置100の実施形態にさらに示されるように、測定モジュール120は、上述の測定モジュールの回路などの多数の回路が配置されたプリント回路基板120aを含む。測定モジュール120は、たとえばディスプレイ125の下側に沿って、ハウジング105の上部105a内に実質的に位置決めされ得る。収集モジュール115および測定モジュール120は、ねじ、ナット、もしくはボルト等のさまざまなファスナを介して、またはエポキシ、瞬間接着剤、もしくはプラスチック溶接等のさまざまな接着剤を介して、ハウジング105に締結され得る。なお、収集モジュール115および測定モジュール120はそれぞれ本体部105bおよび上部105a内にあるとして示されるが、収集モジュールおよび測定モジュールの場所はハウジング105内で入れ替わってもよいし、両方が本体部内にあってもよいし、または両方が上部内にあってもよい。バッテリ220はハウジングの下側に沿ってハウジング105内に位置決めされ得、上部105aから本体部105bに延在し得る。
【0071】
具体的な実施形態によると、ハウジング105の先端部105cは、本体部105bから剛性的に延在し、使用時にハウジング105に対して相対的に固定されるセンサヘッド250およびプローブ先端300を剛性的に保持するアームとして構成され得る。他の実施形態では、プローブ先端300はハウジング105に可撓的に結合され得るか、またはハウジング105は、プローブ先端が組織と接触する位置にあるときにプローブ先端300に可撓性を提供する可撓性部材を含み得る。たとえば、本体部105bは可撓性アームとして構成され得るか、またはプローブ先端300およびセンサヘッド250がプローブ先端に可撓性を提供することを可能にする1つ以上のばね形式装置を含み得る。センサヘッド250またはプローブ先端300はさらに、そのような可撓性またはばね形式品質を提供するためのさまざまなばね形式装置を含み得る。
【0072】
具体化では、センサヘッドは、ばね定数を有するばねを介して可撓的に結合され得る(たとえばフックの法則に従って動作する)。センサヘッドを筐体に結合する可撓性部材は弾性変形可能であるため、変形後に元の形態に戻る。この可撓性センサヘッドは、ユーザが測定しようとしている組織にユーザが圧力を加え過ぎることを防止するのに役立ち得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、先端部105c、本体部105bの一部、センサヘッド250、プローブ先端300、またはこれらの組合せは、組織オキシメトリ装置100から取外し可能であってもよく、交換可能であってもよい。たとえば、先端部105cおよびセンサヘッド250は1人の患者に使用するように構成され得、当該患者に使用した後に組織オキシメトリ装置100から取外され得る。その後、異なる患者に使用するために、先端部およびセンサヘッドが新たな滅菌先端部105cおよび新たな滅菌センサヘッド250と交換され得る。残りの本体部105b、上部105a、およびそれに含まれる電子装置は、たとえば先端部105cおよびセンサヘッド250が交換された後に異なる患者に再利用されるように構成され得る。
【0074】
図7E、
図7F、および
図7Gは、一実施形態に係る先端部105cおよびセンサヘッド250のさらなる拡大図である。具体的には、
図7E、
図7F、および
図7Gは、センサヘッドおよびハウジングの先端部のそれぞれ拡大側面図、拡大正面図、および拡大斜視図である。ハウジング105の先端部105cは、ファスナ250aを受けてディスク状端をセンサヘッドのケージ250bに取付けるための開口が形成されたディスク状端105dを有し得る。ケージ250bは、センサヘッドのさまざまな部品をともに保持するように構成され得る。たとえば、先端部105cのディスク状端105dには凹部が形成され得、凹部は、先端部105cをケージ250bに取付けるためのファスナ250aに取付けられるナット250f(
図7H参照)を受けるように成形され得る。具体的には、
図7Hはセンサヘッド250の簡略側面図であり、これは、先端部105cのケージ250bへの結合のさらなる理解のために、ハウジング105の先端部105cおよびプローブ先端300がない状態で示されているため、ナット250fはファスナー250aに結合されて示され得る。
図7Hに示されるセンサヘッド250の図のさらなる説明を以下に提供する。
【0075】
図7Iは、先端部105cのディスク状端105dの端面図であり、端105dに形成された凹部を示しており、凹部はディスク状端の中心開口を中心に位置決めされる。上記に簡単に説明されたように、凹部は、ナット250fまたは他の同様のファスナを受けるために、示されるような六角形状を有し得るか、または他の有用な形状を有し得る。
【0076】
センサヘッド250の長さは1.25センチメートルから約4センチメートル、幅は約0.7センチメートルから約2センチメートル(たとえば具体的な実施形態では約1センチメートル)であり得る。ハウジング105の先端部105cの長さは約9ミリメートルから約20ミリメートル(たとえば1つの具体的な実施形態では約12ミリメートル)であり得る。先端部105cのディスク状端105dの直径は約8ミリメートルから約12ミリメートル(たとえば1つの具体的な実施形態では約10.6ミリメートル)であり得る。
【0077】
センサヘッド250はさらに1つ以上のばね座金250dおよび250eを含み得、第1のばね座金250dはファスナ250aのヘッドの下に位置決めされ得、第2のばね座金250はケージ250bの内部およびディスク状端105dの第2の凹部の内部に位置決めされ得、第2の凹部はディスク状端の上部に形成される。
図7Jはハウジング105のディスク状端105dの簡略上面図であり、ディスク状端の上部に形成された第2の凹部を示し、凹部は内部に形成された開口を中心に位置決めされる。センサヘッド250は、ばね座金250dおよび250eとケージ250bの上部との間に位置決めされる1つ以上の付加的な座金を含み得る。
【0078】
センサヘッド205はさらに、ディスク状端105dとプローブ先端300との間に位置決めされるスペーサ250cを含み得る。いくつかの実施形態では、スペーサ250cは、組織に接するプローブ先端300の圧力を検出するように構成される圧力センサ175(たとえば力検知抵抗器、ロードセル、または両方)である。プローブ先端300上の圧力は圧力センサに伝達され得、圧力は圧力センサによって検出され、検出圧力の情報が圧力センサから収集モジュール115、測定モジュール120、または両方に伝達されて、この検出圧力がたとえばディスプレイ125上でユーザに報告され得る。
【0079】
圧力検出および圧力報告は以下にさらに説明される。しかし、ここで、たとえば圧力センサがロードセルを含む場合、ファスナ250d、ナット250f、ならびにばね座金250dおよび250eによって圧力センサに印加される力を介して、圧力センサに前負荷力が与えられ得る。前負荷力は、ファスナ250dおよびナット250fを締付けるまたは緩めることによって増加または減少し得る。前負荷力は、圧力センサを校正するためにも用いられ得る。圧力センサがロードセルである実施形態では、ロードセルの高さは約3ミリメートルから約5ミリメートル、直径は約8ミリメートルから約11ミリメートル(具体的な実施形態では約9.6ミリメートル)であり得る。ロードセルは、プローブ先端300と接触して、組織に接するプローブ先端の伝達圧力を検出するように構成されるボタン端250gを含み得る。
【0080】
図7Kは、ケージ250bの簡略画像である。ケージ250bは、金属、樹脂加工繊維(たとえば炭素繊維もしくはホウ素繊維等)、またはプラスチック等からなり得る。ケージ250aは、本体部250h(たとえば3本のアーム)、上部ディスク250i、下部ディスク250jを含み得、本体部は上部ディスクを下部ディスクに連結する。上部ディスク250iには上部開口が形成され得、上部開口はファスナ250aを受けるように構成される。下部ディスク250jには下部開口が形成され得、下部開口はプローブ先端300の開口プレート430(
図7F、
図10A、および
図10B参照)を受けるように構成される。下部ディスク250jは、プローブ先端300の検出器プリント回路基板(PCB)410などの、プローブ先端300の他の部分のための肩部を形成し得る。プローブ先端300、検出器PCB410、および開口プレート430は以下にさらに説明される。ケージ250bの長さは約11ミリメートルから約14ミリメートル(たとえば具体的な実施形態では約13ミリメートル)であり得る。ケージ205bの下部の直径は約7ミリメートルから約9ミリメートル(たとえば一実施形態によると約8ミリメートル)であり得る。ケージ250bの直径は、ケージの最も広い部分で約8ミリメートルから約11ミリメートルであり得る。
【0081】
図8Aおよび
図8Bは、使用するユーザの手によって保持されている組織オキシメトリ装置100の画像である。具体的には、
図8Aおよび
図8Bは、使用するためにハウジング105の本体部105bを保持しているユーザの手を示す。一使用方法では、ユーザは、親指を本体部の前部に当て、1本以上の指を本体部の後部および側部に巻付けて、本体部105bを保持し得る。組織オキシメトリ装置100の質量はこれによって、本体部105bに巻付けられたユーザの指によって実質的に支持され得る。ユーザの手はハウジング105の本体部105bを保持しているとして示されるが、ユーザは代替的にハウジングの上部105aまたは上部と本体部との組合せも保持することもできる。
【0082】
プローブ先端
図9Aは、一実施形態に係るプローブ先端300の下部の簡略端面図である。
図9Aに示される実施形態では、プローブ先端300は、2つの光源150aおよび150bならびに8個の光検出器170aから170hを含む。
図9の具体的な実施形態はプローブ先端300が2つの光源および8個の光検出器を含むことを示しているが、プローブ先端300のさまざまな代替実施形態はより多いまたはより少ない光源を含んでもよく、より多いまたはより少ない光検出器を含んでもよい。たとえば、一代替実施形態では、プローブ先端300は
図9Bに示されるように3つの光源を含んでもよい。
【0083】
上述のように、光源150は、光(たとえば赤色または近赤外光)を生成して、組織オキシメトリプローブ100が接触している組織内に発光するように構成される。組織は光の一部を反射し、各光検出器170は反射された光の一部を検出する。各光検出器170は受光した光の部分についての反射率データ(すなわち応答)を生成し、センササブシステム110は測定モジュール150とともに、反射率データに基づいて組織の酸素飽和度を求める。
【0084】
光源150はプローブ先端300を横切るように直線状に位置決めされ得、光検出器170はプローブ先端300上で弧状にまたは円形に配置(すなわち円形配置)され得る。より具体的には、光源150は、検出器170が配置され得る円を二等分する線(たとえば直径)上に配置され得る。光源150aおよび150bは距離D1だけ互いに離れていてもよく、D1は約3ミリメートルから約10ミリメートルの範囲にあり得る。
【0085】
プローブ先端300が中心光源150cを含む実施形態(
図9B参照)では、中心光源150cは、光源150aと150bとの間のほぼ中間点に位置決めされ得る。中心光源150cは、各光検出器170から実質的に等距離(たとえば+/−10ミクロン)であり得、中心光源と各光検出器との間の距離は約1.5ミリメートルから5ミリメートルである。すなわち、光検出器170が配置される円の直径は、約3ミリメートルから約10ミリメートル(たとえば1つの具体的な実施形態によると4ミリメートル)であり得る。
【0086】
光源と検出器との間のこの最大距離によって、反射率データが、組織の最上層の内部を伝播する光に実質的に制限され、組織から反射される光から光検出器170によって生成される反射率データに寄与する下部の皮下脂肪または筋層はほとんどないか、まったくない。伝播深さは光源−検出器距離が増加するにつれて増加し、下部の組織層内を伝播する光子がほとんど検出されないことを確実にするためには約4〜5ミリメートルが一般に十分な上限である。
【0087】
光検出器170は弧状にまたは円形に配置されるとして説明されるが、プローブ先端300は、直線、正方形、矩形、疑似ランダム、または他の任意のパターンなどの、光検出器の他の構成を有してもよい。
【0088】
上記に簡単に説明されたように、
図9Aおよび
図9Bに示されるプローブ先端300の具体的な実施形態は、8個の光検出器170a、170b、170c、170d、170e、170f、170g、および170hを含む。しかし、他の具体的な実施形態では、プローブ先端300は2つ以上の光検出器170を含んでもよい。
【0089】
光検出器170は固体検出器であってもよく、検出器プリント回路基板410に装着されてもよい。さらに、光検出器170は組合わされた装置であってもよいし、または別々の装置であってもよい。
【0090】
収集モジュール115、測定モジュール120、または両方は、光源および光検出器が装着される1つ以上のプリント回路基板の中を走る一組の電気トレースを介して光源150および光検出器170を制御するように構成され得る。光検出器170の円形構成および光源155の直線配置によって、これらのプリント回路基板における電気トレースの比較的単純な配置が可能になる。たとえば、電気トレースは、光源150および光検出器170が装着される1つ以上のPCB内で電気トレース同士が重ならないようにこれらの装置から外向きに放射状に延在し得、これによって電気トレース同士の間の比較的一様な間隔が可能になり、それによって、電気トレース同士の間の比較的低い電気クロストークがもたらされる。状況によっては、電気トレース同士の間の比較的低いクロストークによって、交互に配置される電気トレースと比較して、光源150および光検出器170の両方の信号対雑音比が低下する。
【0091】
特定の具体化では、光検出器170は、2つ以上の(たとえば14個の)一意の光源−検出器距離が作り出されるように光源150aおよび150bに対して位置決めされる。光源−検出器距離の数が増えると、これを用いてより高い精度、より高速な校正、および冗長性(複製の光源−検出器距離が提供される場合)を得ることができる。少なくとも1つの光源−検出器距離は約1.5ミリメートル以下(たとえば0.5ミリメートル、最大で約1.7ミリメートル)であり、少なくとも1つの光源−検出器距離は約2.5ミリメートル以上(たとえば1.5ミリメートル、最大で約3.2ミリメートル)である。
【0092】
たとえば、一実施形態では、第1の光源−検出器距離は約1.5ミリメートル以下である。第2の光源−検出器距離は約1.5ミリメートル以下である。第3の光源−検出器距離は約2.5ミリメートル以上である。第4の光源−検出器距離は約2.5ミリメートル以上である。1つの光源および4つの光検出器、2つの光源および2つの光検出器、1つの光検出器および4つの光源、または他の配置および組合わせなど、これら4つの光源−検出器距離を得るための多数の光源および光検出器の配置があり得る。
【0093】
たとえば、一実施形態は、少なくとも2つの光源および少なくとも2つの光検出器を含み、光源と光検出器との間の最大距離は約4ミリメートル(または約5ミリメートル)であり、少なくとも1つの光源−検出器距離は約2.5ミリメートル以上であり、少なくとも1つの光源−検出器距離は約1.5ミリメートル以下である。
【0094】
より多くの光源および光検出器がプローブ先端に含まれる場合、より多くの光源−検出器距離が利用可能である。述べたように、これらを用いてより高い精度、より高速な校正、または冗長性、またはこれらの組合わせが提供され得る。光源および光検出器の配置は、約4ミリメートルから約5ミリメートルの半径を有する円の弧に沿った点上などの円形パターンであってもよい。具体化では、弧上の光検出器または光源の位置の公差は、弧曲線の10ミクロン以内である。他の具体化では、公差は約0.25ミリメートル以内である。
【0095】
上述の光源−検出器距離によって、光検出器170によって生成される反射率データからSRSを介して散乱係数および吸収係数を求めることができる。具体的には、比較的小さい光源−検出器距離(たとえば1.5ミリメートルまたはより近く)を有する光検出器170によって生成される反射率データは、組織の吸収係数ではなく散乱係数の関数である。さらに、比較的大きい光源−検出器距離(たとえば2.5ミリメートルまたはより遠く)を有する光検出器170によって生成される反射率データはμeff(貫通深さの逆数)の関数であり、μeffは散乱係数および吸収係数の両方の関数である。少なくとも2つの光検出器170が少なくとも1つの光源150から1.5ミリメートルまたはより近くに位置決めされ、少なくとも2つの検出器が少なくとも1つの光源150から2.5ミリメートルまたはより遠くに位置決めされた状態で、散乱係数および吸収係数を独立して求めることができる。
【0096】
1つの具体的な実施形態によると、16個の一意の光源−検出器距離が提供される。16個の一意の光源−検出器距離は、150a−170d=1.000ミリメートル、150b−170h=1.249ミリメートル、150a−170e=1.500ミリメートル、150c−170a=1.744ミリメートル、150a−170c=2.000ミリメートル、150c−170g=2.261ミリメートル、150a−170f=2.500ミリメートル、150b−170b=2.712ミリメートル、150a−170b=2.940ミリメートル、150b−170f=3.122ミリメートル、150a−170g=3.300ミリメートル、150b−170c=3.464ミリメートル、150a−170a=3.600ミリメートル、150b−170e=3.708ミリメートル、150a−170h=3.800ミリメートル、および150b−170d=3.873ミリメートルであり得、これらの距離は約+/−10ミクロン変化し得る。
【0097】
1つの代替実施形態では、光源−検出器距離の少なくとも2つは同一であり、たとえば最短の光源−検出器距離である。たとえば、光源150aと光検出器170eとの間の最短の光源−検出器距離D2と、光源150bと光検出器170aとの間の最短の光源−検出器距離D3とは同一であり得る。その結果、光源150aと光検出器170aとの間の光源−検出器距離D4と、光源150cと光検出器170eとの間の光源−検出器距離D5も同一であり得る。光源−検出器距離D4およびD5は、光源150aおよび150bについての最長の光源−検出器距離である。上記の説明は例の実施形態についてのものである。たとえば、最短の光源−検出器距離の隣、および最長の光源−検出器距離の隣など、他の光源−検出器距離の対が同一であってもよい。
【0098】
光源150aおよび150bについての最短の光源−検出器距離および最長の光源−検出器距離を除いて、光源150aおよび150bについての光源−検出器距離は一意であり得る。上述のように、プローブ先端300は14個の一意の光源−検出器距離を有し得、これによって、14個の反射率データ点を、光源150aおよび150bから発せられる光から光検出器170a〜170hによって収集することができる。
【0099】
さらに、光源150aおよび150bについての光源−検出器距離は、これらの距離の増加が実質的に均一であるように選択され得る。それによって、光検出器170によって検出される反射率に対する光源−検出器距離のプロットが、データ点がx軸に沿って実質的に均等に間隔を空けられた反射率曲線を提供し得る。光源150aおよび150bについてのこれらの光源−検出器距離およびその均一な増加によってデータ冗長性が減少し、比較的正確な反射率曲線の生成につながり得る。
【0100】
図10Aおよび
図10Bは、1つの具体的な実施形態に係るセンササブシステム110の少なくとも一部を構成する光源−センサアセンブリ400のそれぞれ簡略斜視図および分解図である。光源−センサアセンブリ400は、光源−センサアセンブリの一端に配置されるプローブ先端300を含む。プローブ先端300は、光源−センサアセンブリの1つ以上の部品の部分で構成され得る。
【0101】
一実施形態では、光源−センサアセンブリ400は、プローブ先端300を収集モジュール115に電気的に結合するように構成される検出器PCB410および光源PCB415を含む。光検出器170は検出器PCB410に装着され得、光源150は光源PCB410に装着され得る。検出器PCB410は、光検出器170が装着される剛性部410a(
図10Bに全体的に円形で示される)を含み得、光検出器と収集モジュール115との間で電気信号をルーティングするように構成される可撓部410bを含み得る。光源PCB415は同様に、光源150が装着される剛性部415a(
図10Bに全体的に円形で示される)を含み得、光源150と収集モジュール115との間で電気信号をルーティングするように構成される可撓部415bを含み得る。
【0102】
検出器PCB410の可撓部410bおよび光源PCB415の可撓部415bは、ケージ250aに結合される剛性部410aおよび415a、ならびに収集モジュール115のPCB115aに電気的および物理的に結合されるコネクタ端を有する可撓構成において
図7Cおよび
図7Dに示される。可撓部410bおよび415bのコネクタ端は、PCB115aに結合するように構成されるさまざまなコネクタ種類のうちの1つであり得る。一具体化では、可撓部410bおよび415bのコネクタの端は、PCB115a上の対応するゼロ挿入力(ZIF)コネクタに接続するZIFコネクタを含み得る。可撓部410bおよび415bの電気コネクタは約0.5ミリメートルのピッチを有し得、10ピン FH12シリーズのヒロセコネクタであり得る。ヒロセコネクタの部品番号はFH12−10S−0.5SHであり得る。光源PCB115の検出器PCB410および415bの可撓部410bの各々の長さは、約40ミリメートルから約50ミリメートル(たとえば1つの具体的な実施形態では約46ミリメートル)であり得、幅は約4ミリメートルから約6.5ミリメートル(たとえば1つの具体的な実施形態では約5.5ミリメートル)であり得る。
【0103】
一具体化では、光源150aおよび150bは、光源PCB415の剛性部415aに装着(たとえばはんだ付け)される。たとえば、光源150aが多数のLEDを含む場合、これらのLEDは剛性部415aに装着され得、光源150bが多数のLEDを含む場合、これらのLEDも剛性部415aに装着され得る。
【0104】
別の具体化では、光検出器170は検出器PCB410の剛性部410aに装着(たとえばはんだ付け)される。たとえば、光検出器170がフォトダイオードである場合、これらのフォトダイオードは剛性部410aに装着され得る。
図10Cは光源PCB415の簡略正面図であり、
図10Dは検出器PCB410の簡略正面図である。光源−センサアセンブリ400は2つの異なるPCBに装着された光源および光検出器を有する2つのPCBを含むとして説明されるが、光源および光検出器は1つのPCBに装着されてもよい。
【0105】
二組のレンズ510および515が光源150aおよび150bにそれぞれ隣接して位置決めされ、これらの光源から発せられる光を前方に導き得る。より具体的には、レンズ510および515の各組は、光源150aおよび150bから発せられる光を前方に導く1つ以上のレンズを含み得る。1つの具体的な実施形態によると、一組のレンズ510は、光源150aの照明要素152と同数のレンズを含み、一組のレンズ515は、光源150bに含まれる照明要素と同数のレンズを含む。さらに、一組のレンズ510内のレンズは光源150aの照明要素152にそれぞれ対応し、一組のレンズ515内のレンズは光源515の照明要素152にそれぞれ対応する。レンズは半球状などであり得る。代替の具体的な実施形態によると、単レンズが光源150aから発せられる光を前方に導き、別の単レンズが光源150bから発せられる光を前方に導く。
【0106】
光源−センサアセンブリ400は、放射光を実質的に最適の前方向に導くためにレンズを一列に保持するレンズプレート420を含み得る。レンズプレート420はLED開口プレート425とスペーサプレート427との間に結合され得、LED開口プレートおよびスペーサプレートには、光源150aおよび150bから発せられる光がプローブ先端300から前方に進むことを可能にするためにレンズプレート420の開口に隣接した開口が形成される。
【0107】
コンタクトプレート430は、検出器PCB410の剛性部410aの前部に結合され得る。検出器プレート410の剛性部410aおよびコンタクトプレート430の両方には、光源150aおよび150bから発せられる光がプローブ先端300から前方に進むことをさらに可能にするための開口が形成される。コンタクトプレート430にはさらに、組織から散乱した光が光検出器170に進むことを可能にするための多数の開口が形成され得る。
【0108】
一実施形態では、光源−センサアセンブリ400は、レンズ510および515のセットを介して光源150aおよび150aにそれぞれ光学的に結合される第1および第2の光ファイバケーブル435aおよび435b(一般に光ファイバケーブル435であり、導波管と称されることもある)を含む。光ファイバケーブルは、マルチモードグラスファイバケーブルであり得る。光源−センサアセンブリ400に含まれ得る1種類の光ファイバケーブルは、外径が約440マイクロメートル、コア直径が400マイクロメートルである。
【0109】
第1および第2の光ファイバケーブル435aおよび435bは、検出器PCB410の剛性部410aにおいて、およびコンタクトプレート430において、開口プレート425に形成された開口の1つ以上の内部に位置決めされ得る。一実施形態では、レンズ510および515のセットは、それぞれ、光源150aおよび150bから発せられる光を第1および第2の光ファイバケーブル435aおよび435b内に集光するように構成される。第1および第2の光ファイバケーブル435aおよび435bは、光が光ファイバケーブルの開口部を横切って実質的に均質な強度で光ファイバケーブルから出ることによって組織を一様に照らすように、光を拡散する(光の混合と称されることもある)ように構成される。第1および第2の光ファイバケーブル435aおよび435bの各々の長さは約1ミリメートルから約20ミリメートルであり得、1つの特定の実施形態では長さが約10ミリメートルである。第1および第2の光ファイバケーブル435aおよび435bの直径は、光ファイバケーブルの長さの関数であり得る。たとえば、各光ファイバケーブルの長さは、比較的均質な光の強度が光ファイバケーブルから発せられるように、光ファイバケーブルの直径の10倍であり得る。
【0110】
図11Aは光源−センサアセンブリ400の断面図であり、照明要素152の1つから発せられる光がレンズ510の1つを通過し、光ファイバケーブル435の1本を通過して組織140内に発せられることを示す。この断面図は、光ファイバケーブル内の光の混合を示す。この断面図はさらに、一実施形態に係るプローブ先端300の積層構成を示す。プローブ先端300内に積層されたさまざまな要素の厚みは、
図11Aにおいて一定の縮尺で描かれていない場合がある。
【0111】
図10Bを再び参照して、光源−センサアセンブリ400はさらに一実施形態に係る温度センサ160(たとえば第1および第2のサーミスタ160aおよび160b)を含み、エンドキャップ440を含む。エンドキャップ400は、温度センサを収容するように構成され得る。たとえば、エンドキャップ440には、光源PCB415に隣接した温度センサ160(たとえばサーミスタ160aおよび160b)を保持して光源の温度を監視するための1つ以上の凹部(たとえば第1および第2のトレンチ)、または1つ以上の開口等が形成され得る。サーミスタ160aおよび160bは比較的長い装置であってもよく、サーミスタの縦軸は、光源PCB152上の光源150aおよび150bの照明要素152の構成(たとえば正方形または矩形等)と実質的に一直線に並ぶ。
【0112】
図11Bは一代替実施形態に係る光源−センサアセンブリ400の断面図であり、スペーサプレート427ならびに光ファイバケーブル435aおよび435bは、
図11Aに示されるスペーサプレート427ならびに光ファイバケーブル435aおよび435bの実施形態と比較して相対的に長い。たとえば、
図11Aの実施形態に示されるスペーサプレート427ならびに光ファイバケーブル435aおよび435bの高さは約1ミリメートルから約2.5ミリメートルであり得、
図11Bに示される実施形態では高さが約5ミリメートルから約20ミリメートルであり得る。検出器PCB410、光源PCB415、レンズプレート420、開口プレート425、スペーサプレート427、およびコンタクトプレート430の各々の厚みは約0.5ミリメートルから約2ミリメートルの範囲にあり得る。検出器PCB410の剛性部410a、光源PCB415の剛性部415a、レンズプレート420、開口プレート425、およびスペーサプレート427の各々の直径は約4ミリメートルから約10ミリメートルの範囲にあり得、コンタクトプレート430の直径は約3ミリメートルから約8ミリメートルの範囲にあり得る。
【0113】
図10Cは光源PCB415の平面図であり、光源150aおよび150bの両方において正方形の構成に配置された照明要素152を示す。照明要素152は
図10Cにおいて相対的に正方形の構成であるとして示されるが、照明要素は矩形、円形、または卵形等の代替構成で配置されてもよい。
【0114】
図10Cは光源PCB415のコネクタ端をさらに示し、コネクタ端の電気コンタクトパッド415cを示す。電気コンタクトパッドは、コネクタ端から電気パッドに走る電気トレースの部分を形成し得、当該電気パッド上に照明要素が電気的に接続される。電気コンタクトパッド415cのうちのいくつかは、接地トレースに接続する接地パッド、接地パッド、または両方であり得る。接地は、電気トレースを介して光源に送信される制御信号に、制御された電気環境(たとえば電気トレースについて50オーム抵抗)を提供するように構成される。検出器PCB410の電気コンタクトパッド410c、電気トレース、および接地要素は、
図10Dに示されるように同様に構成され得る。一実施形態では、検出器PCB410および光源PCB415内の最も外側のコンタクトパッドおよびトレースは接地であり、中央のコンタクトパッドおよびトレースは信号パッドおよびトレースである。
【0115】
光検出器170は組織から実質的に直接に光を受光するように構成されるとして示されるが、一代替実施形態では、光検出器は、光検出器に光をルーティングする1本以上の光ファイバケーブルから光を受光するように構成されてもよい。さらに、光源150および光検出器170はプローブ先端300内にあるとして説明および示されるが、光源および光検出器はハウジング105の内部に、たとえばハウジングの本体部105bの内部に配置されてもよい。この構成では、光源150および光検出器170は、1本以上の光ファイバケーブルを介してプローブ先端300に光学的に結合され得る。
【0116】
光源および検出器の校正
図12は、一実施形態に係る光源−検出器の各対を校正するための方法のハイレベルフロー図である。このハイレベルフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、ハイレベルフロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0117】
1200において、プローブ先端300は、均質な光学特性を有する組織ファントムと接触する。ステップ1205において、照明要素152のうちの1つ以上から組織ファントム内に光が発せられ、この光の少なくともいくらかが組織ファントムによって反射される。ステップ1210において、各光検出器170は組織ファントムから反射される光の一部を受光し、ステップ1215において、各光検出器は受光した反射光の部分についての反射率データ(すなわち応答)を生成する。光検出器170についての反射率データは、組織ファントムについての反射率曲線と一致しない場合がある(すなわち反射率曲線からオフセットする場合がある)。光検出器170によって生成された反射率データが組織ファントムについての反射率曲線と一致しない場合、光検出器は固有のゲインもしくはロスを有し得るか、または光源がシミュレートしたよりも多いもしくは少ないパワーを有し得る。ステップ1220において、生成された反射率データがセンササブシステム110、収集モジュール115、および測定モジュール120の1つ以上によって用いられ、生反射率データが組織ファントムについての反射率曲線と一致するように一組の校正関数が生成され得る。生反射率データは、組織についての光学特性を求めるために利用されるのに先立って、かつ組織についての酸素飽和度を求めるために利用される前に、光検出器によって生成および出力された反射率データを含む。
【0118】
ステップ1200から1220は、1つ以上の組織ファントムについて繰返され得る。組織ファントムごとの光源−検出器の対ごとの校正関数は一般に同一であるべきである。しかし、多数の組織ファントムについての所与の光源−検出器の対について校正関数同士の間に偏差がある場合は、その所与の光源−検出器についての校正関数内の因数が平均され得る。ステップ1225において、(平均された関数を含む)生成された校正関数の各々がメモリ装置205に記憶される。
【0119】
ステップ1200から1225は、光源150aおよび150bの各々の照明要素152ごとに繰返され得る。たとえば、ステップ1200から1225が、光源150aおよび150bの各々の照明要素152ごとに繰返される場合は、光検出器170ごとに多数の校正関数がメモリ装置205に記憶され得、光検出器ごとに記憶された校正関数の各々が照明要素152の1つと関連付けられる。すなわち、光源−検出器の各対は、その光源−検出器の対に特定の校正関数を有する。
【0120】
たとえば、光検出器170aは、光源150aがより多くの照明要素152を含む場合、光源150aの第1の照明要素152から発せられる光について記憶される第1の校正関数と、光源150aの第2の照明要素152についての第2の校正関数と、光源150aの第3の照明要素152についての第3の校正関数と、光源150aの第4の照明要素152についての第4の校正関数等を有し得る。さらに、光検出器170aは、光源150bがより多くの照明要素152を含む場合、光源150bの第1の照明要素152から発せられる光について記憶される第5の校正関数と、光源150bの第2の照明要素152についての第2の校正関数と、光源150bの第3の照明要素152についての第3の校正関数と、光源150bの第4の照明要素152についての第4の校正関数等を有し得る。
【0121】
校正関数は光源−検出器の対ごとに記憶されるため、光検出器ごとの校正関数(たとえば8個の校正関数)は、光検出器の変動についてだけでなく、光源150の照明要素152の変動についても校正を提供する。たとえば、光源150aまたは150bの照明要素152から受光している時、光検出器の固有のゲインまたはロスは変動すべきでない。異なる照明要素について反射光を受光している時に光検出器について校正関数が異なる場合、所与の組織ファントムについての反射率データの差は、照明要素から発せられる光の強度の差に起因する。校正関数は、たとえば、実際の組織内の酸素飽和度測定のために組織オキシメトリ装置100を使用している時に光検出器170によって生成される反射率データに適用され得、これによって、光検出器170の固有のゲインまたはロスがあれば、かつ照明要素152からの光の強度に差があればそれらが補償され得る。具体的には、校正関数は、検出器によって生成される生反射率データについて光源−検出器の対ごとに適用される。
【0122】
上記に簡単に説明されたように、中心光源150cは、均質な組織ファントムを用いて光検出器170を比較的容易に校正できるように、光検出器の各々から実質的に等距離(たとえば+/−10ミクロン)であり得る。組織ファントムに関して使用する「均質性」という用語は、組織ファントムの光学特性が組織ファントムの容量全体にわたって実質的に一定であることを意味する。たとえば、組織ファントムの吸収係数μ
aおよび減少散乱係数μ
s´は、組織ファントム全体にわたって均質である(すなわち実質的に一定である)と称され得る。これは、異なる程度の組織成分および酸素飽和度に由来し得る、コラーゲンファイバの固有の配列および他の生物学的要因ならびに空間変化に由来する異方光学特性を示す実際の組織とは対照的である。
【0123】
図13は、一実施形態に係る光検出器170を校正するための方法のハイレベルフロー図である。このハイレベルフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、ハイレベルフロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0124】
1300において、プローブ先端300は、均質な光学特性を有する組織ファントムと接触する。ステップ1305において、中心光源120bから組織ファントム内に光(たとえば近赤外光)が発せられ、この光の少なくともいくらかが組織ファントムによって反射される。ステップ1210において、各光検出器170は組織ファントムから反射される光を受光し、ステップ1315において、各光検出器は反射光に対する応答を生成する。各光検出器170は、組織ファントムの均質性のために同量の反射光を受光すべきである。したがって、光検出器応答同士のいかなる差も、光検出器同士の物理的な差に起因し得る。たとえば、光検出器の1つ以上は固有のゲインまたは固有のロスを有し得る。
【0125】
ステップ1320において、光検出器170からの応答がセンササブシステム110、収集モジュール115、および測定モジュール120の1つ以上によって用いられ、光検出器について校正関数が生成され、当該校正関数がセンササブシステム110、収集モジュール115、および測定モジュール120の1つ以上によって用いられ、光検出器によって生成された生反射率データ(すなわち応答)が単一値に平坦化され得る。ステップ1325において、校正関数もしくは校正関数を生成するために用いられる応答、または両方が、たとえばメモリ装置205に保存され得る。校正関数は、組織オキシメトリ装置100を用いて実際の組織内の酸素飽和度レベルを測定している時に光検出器170によって生成される生反射率データに適用され得、それによって光検出器の固有のゲインまたはロスがあれば補償され得る。
【0126】
図14は、一実施形態に係る組織オキシメトリ装置100の使用時に異常を検出するための方法のハイレベルフロー図である。このハイレベルフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、ハイレベルフロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0127】
組織オキシメトリ装置100は、実際の組織内の大きな、空間的に適合する不均質性などの異常を検出するための方法を採用し得る。そのような不均質性は、たとえば、組織弁内の酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビン濃度に関する関連情報に寄与しないモルの存在または組織の種類を示し得る。不均質性はさらに、プローブの一部が傷の端縁を超えたこと、またはプローブの一部が血で覆われていることも示し得る。
【0128】
1400において、中心光源120cから組織内に光(たとえば近赤外光)が発せられ、ステップ1405において、この光が組織によって光検出器170の1つ以上の内部に反射される。ステップ1410において、各光検出器170は受光した光に対する検出器応答を生成する。1つ以上の検出器が組織との接触を失った場合は、これらの検出器は検出器応答を生成し得るが、検出器応答は、中心光源120cから発せられる光に対するものではない場合がある。ステップ1415において、組織オキシメトリ装置100は、光検出器の少なくとも1つによって検出された(すなわち検出器応答)の光の差が、他の光検出器の1つ以上によって検出された光と比較して、閾値量だけ異なるか否かを判断し得る。
【0129】
ステップ1420において、中心光源120bから発せられる光に対する検出器応答が光検出器同士の間で閾値量だけ(すなわち、通常の組織異方性によって推測されるよりも高い程度まで)異なる場合は、明らかな少数派の検出器応答における少なくとも1つの光検出器からの検出器応答(すなわち、検出器応答は少なくとも閾値量だけ異なる)は捨てられ得、酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビン濃度を計算するために用いられ得ない。明らかな少数派内のこの少なくとも1つの光検出器は、モルもしくは血液等と接触して位置決めされた、または組織との接触を失ったと仮定され得る。
【0130】
一代替例によると、かなりの数(たとえば4つ)の光検出器170によって生成された検出器応答が互いに大きく(たとえば閾値量だけ)異なるが、明らかな多数派の検出器応答がない場合は、収集モジュール115および測定モジュール120の一方または両方はすべての検出器応答を捨て得、現在プローブ中の組織の領域について正確な酸素飽和度を求めることができないことを(たとえばディスプレイ125上に)示し得る。本方法のステップは、組織オキシメトリ装置100が組織内の酸素飽和度を測定するときに実質的に連続的に繰返され得る。なお、中心光源120cは、その他の場合は、酸素飽和度を求めるために用いられる反射率曲線についての寄与データを得るためには用いられ得ない。
【0131】
酸素飽和度検出時のデータの自己補正
図15は、組織に対する、または組織ファントムを用いた酸素飽和度測定時に光源150aおよび150bによって発せられる光の量を校正するための方法のハイレベルフロー図である。このハイレベルフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、ハイレベルフロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0132】
上述のように、最短の光源−検出器距離D2およびD3は2つの外側光源150aおよび150bについて意図的に一致させられ得、最長の光源−検出器距離D4およびD5もこれらの光源について意図的に一致させられ得る。最短の光源−検出器距離が一致しているため、ステップ1500において外側光源150aが所与の波長の光を組織内に発し、ステップ1505において光検出器170eが組織から反射されるこの光を検出し、ステップ1510において光源150cが組織内に光を発し、ステップ1515において検出器170aが組織から反射されるこの光を検出すると、それぞれステップ1520および1525において光検出器170aおよび170eによって生成される反射率データは実質的に一致すべきである。すなわち、光検出器170aおよび170eによって検出される光の量は実質的に一致すべきである。
【0133】
さらに、最長の光源−検出器距離が一致しているため、外側光源150aが所与の波長の光を組織内に発し、光検出器170aが組織から反射されるこの光を検出し、光源150cが組織内に光を発し、検出器170eが組織から反射されるこの光を検出すると、光検出器170aおよび170eによって生成される反射率データも実質的に一致すべきである。これらの反射率データの対が一致しない場合は、光源150aおよび150bの光源出力およびこれらの外側光源によって発せられる光の量も不一致であり得る。
【0134】
一実施形態によると、組織オキシメトリ装置は、光検出器170aおよび170eによって生成されるこれらの反射率データの対(不一致の場合)を用いて、すべての検出器によって生成される反射率データを補正し、装置によって行われる酸素飽和度分析を補正する。より具体的には、ステップ1530において、光検出器170aおよび170eによって検出される絶対反射率同士の差から、反射率データ(光源150aと150bとの光源出力差のために)についての校正関数が求められ得る。この校正関数は各光検出器170によって生成される生反射率データに適用され、光源150aおよび150bによって発せられる光の量の差が補償され得る。具体的には、生成された関数を各光検出器170によって生成される反射率データに適用し、それによって比較的より正確な酸素飽和度データを生成することによって、互いにオフセットしている二組の反射率データ点を単一の反射率曲線上にのせることができる。
【0135】
組織オキシメトリ装置100は、光検出器170aおよび170eによって生成される反射率データを実質的に連続的に監視して比較し、光源150aおよび150bによって発せられる光の量に差が生じるか否かを判断し得る。この差(存在する場合)を用いて、検出器170の各々についての反射率データが、酸素飽和度測定時に組織オキシメトリ装置100によって実質的に連続的に補正され得る。一代替実施形態によると、光源150aおよび150bの校正は一度行われ、生成された関数は、酸素飽和度測定を行う間に後の使用のために記憶される。
【0136】
一代替例によると、光源150aと150bとの光源出力差のために、反射率データについての関数を生成する(すなわち光源150aおよび150bを校正する)ために付加的なまたは代替の光源−検出器距離が一致させられ得る。すなわち、最短または最長の光源−検出器距離(またはこれらの組合わせ)は、光源150aおよび150bを校正するために、ならびに反射率データを補正するために必要とされない。さらに、二対以上の一致した光源−検出器距離を用いると光源校正の信頼性または精度が増大し得るが、一対の一致した光源−検出器距離を用いて光源150aおよび150bを校正してもよい。
【0137】
一対の一致した光源−検出器距離(たとえばD2およびD3)を用いて光源150aおよび150bを校正し、かつ反射率データを補正する場合は、反射率データの信号対雑音比は、一致すべき特定の光源−検出器距離の選択と関連し得る。最小から低いノイズが存在する場合は、最長の光源−検出器距離を一致させることによって最もロバストな光源校正が提供され得る。しかし、ノイズは反射率データ測定の大きさの平方根として増加し得、したがって、より長い光源−検出器距離についてはさらにかなり大きくなり得る。この場合、最短のまたは比較的短い光源−検出器距離を一致させることによって、外側光源および反射率データのよりロバストな校正が提供され得る。
【0138】
別の代替実施形態によると、光源150aおよび150b、ならびに光検出器170a〜170hについてのすべての光源−検出器距離が、4つの一致した光源−検出器距離を提供することによって一致する。光源150aおよび150bについて4つの光源−検出器距離を一致させることによって、外側光源ごとに2つの反射率データセットを生成することができ、これを比較して反射率データの精度を確認することができる。高速でロバストな校正、自己補正、ならびに正確なデータ収集および処理方法のジオメトリックな組込みによって、先行技術であると考えられる手術中のプローブによってなされる飽和度測定においてみられる変動および不正確性が制限される。先に述べた校正、自己補正、および他の特徴は高速で正確な組織オキシメトリ装置につながり得、これは、インプラントを用いる乳房再建に従事する形成外科医および手術環境における壊死の危険がある組織領域の検出に携わる他の者にとって望ましい。
【0139】
光波形
図16は、光源150aの照明要素152(たとえば8個のLED)に供給され得る制御信号の簡略概略図である。具体的には、
図16は制御信号を表わし、所与の時点で光源のうちの1つの照明要素によって生成される光の強度を表わし得る。
図16に示される制御信号および光生成のパターンは、光源によって順次繰返され得る。一実施形態では、所与の時点で1つの照明要素152が制御信号を受信し、制御信号の受信に基づいて光を生成して発光する。すなわち、光源の照明要素は制御信号を順次受信し得る。たとえば、光源のうちの1つの第1の照明要素(たとえばLED1)が制御信号を受信して光を生成して発光し得、次に光源の第2の照明要素(たとえばLED2)が光を生成して発光し得、次に光源の第3の照明要素(たとえばLED3)が制御信号を受信して光を生成して発光し得、第8の照明要素(たとえばLED8)が制御信号を受信して光を生成して発光するまでこのように継続する。
【0140】
制御信号は、各照明要素によって生成される光の強度を正弦波状に変調する正弦波制御信号などの時変制御信号であり得る。1つの具体的な実施形態では、制御信号の周波数は2.5キロヘルツ周波数である。
【0141】
制御信号は、制御信号の多数のサイクル(たとえば6サイクル)を含み得る所与の時間(ここではフレームとも処される)にわたって各照明要素に供給される。制御信号は、照明要素をゼロの光生成および発光からピークの光生成および発光に循環させ得る。一実施形態では、照明要素の各々に供給される正弦波制御信号は、照明要素によって生成される光の増加(ramp up)がゼロの光生成で開始して正弦波波形で上昇するように、ゼロ(たとえばゼロ電流および電圧)で開始する。
【0142】
一実施形態では、光検出器170の各々は、たとえば制御信号のサイクルごとに100サンプル(すなわちサンプリングは250キロヘルツであり得る)など、所与の周波数で組織140から反射される光をサンプリングする。いくつかの実施形態では、光検出器170は、照明要素が安定した動作温度へのウォームアップ中であり得るフレームの第1のサイクル中は組織から反射される光をサンプリングしないか、または収集モジュール115、測定モジュール120もしくは両方が第1のサイクルに生成された反射率データを無視し得る。照明要素による光生成の第1のサイクルを無視するための他の方法も使用可能である。
【0143】
光源150のすべての照明要素152が多数の連続フレーム(たとえば8個のLEDに対して8フレーム)について光を生成して発光した後は、光源のすべての照明要素はフレームの当該期間(たとえば制御信号の6サイクル)中は光を生成して発光することができない。その後、上述のように別の光源が光を生成して発光し得る。簡単に要約すると、ここに言及されるように、サイクルは制御信号の1サイクルであり、フレームは複数のサイクル(たとえば6サイクル)を含み、ウインドウは一連のフレーム(たとえばLEDごとに1フレームおよび1ダークフレーム)を含み、測定は、反射率データが測定モジュール120によって生成および処理される間の複数のウインドウを使用する。
【0144】
1つの特定の実施形態によると、各光源150aおよび150bの照明要素152は760ナノメートル(たとえば+/−10ナノメートル)、810ナノメートル(たとえば+/−10ナノメートル)、845ナノメートル(たとえば+/−20ナノメートル)、および895ナノメートル(たとえば+/−10ナノメートル)の波長で光を生成して発光するように構成される。照明要素152は、光源150aおよび150bの各々について上記の順序で(たとえば760ナノメートル、810ナノメートル、845ナノメートル、および895ナノメートル)光を順次生成して発光し得る。光源150aおよび150bは4つの照明要素152を含むとしてここに説明されるが、光源150aおよび150bの代替実施形態はより多いまたはより少ない照明要素を含む。
【0145】
たとえば、光源150aおよび150bの各々が2つの照明要素を含む実施形態によると、各光源のこれらの照明要素は、約760ナノメートル(たとえば+/−10ナノメートル)および850ナノメートル(たとえば+/−20ナノメートル)の波長を生成して発し得る。各光源150が3つの照明要素を含む実施形態によると、照明要素は、約760ナノメートル(たとえば+/−10ナノメートル)、810ナノメートル(たとえば+/−10ナノメートル)、および850ナノメートル(たとえば+/−20ナノメートル)の波形を生成して発するように構成され得る。各光源150が4つの照明要素を含む別の実施形態によると、照明要素は、約760ナノメートル(たとえば+/−10ナノメートル)、810ナノメートル(たとえば+/−10ナノメートル)、850ナノメートル(たとえば+/−20ナノメートル)、および900ナノメートル(たとえば+/−20ナノメートル)の波長を発するように構成され得る。付加的なおよび/または代替的な波長も組織オキシメトリ装置100によって利用され得る。
【0146】
組織オキシメトリ装置100による上記の波長の使用によって、メチレンブルー、ゲンチアナバイオレット、およびポビドンヨード(PVPI)によって吸収され得る放射光の部分が減少する傾向があり、これによって固有の組織要素によって散乱または吸収され得る光の部分が増加して正確な反射率データが生成される。組織をマークするために、手術室では染料が用いられることが多い。組織の光学特性を抽出するために正確な反射率データが必要であり、そこから酸素化および脱酸素化ヘモグロビンの濃度を得ることができる。
【0147】
上述の波長については、組織散乱は比較的低く、光はより短い波長よりも組織のさらに内部まで貫通する。さらに、上述の波長は、ヘモグロビンについては810ナノメートルである等吸収点と称される酸素化−脱酸素化ヘモグロビンスペクトルが交差する点の両側にある。したがって、一方の発色団(たとえば酸素化ヘモグロビン)が高吸収を有する場合、他方の発色団(たとえば脱酸素化ヘモグロビン)は低吸収を有し、または逆の場合も同様である。等吸収点を取囲む波長を組織オキシメトリ装置が利用することによって、酸素飽和度判定について比較的改良された統計が提供される。
【0148】
上述の実施形態の少なくとも1つにおいて、組織オキシメトリ装置100は、810ナノメートルで、ほぼ等吸収点にある波長を利用する。等吸収点では、酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンについて810ナノメートル波長の吸収は同等であり、したがって光検出器170によって生成される反射率データにおける安定した基準点を提供する。少なくとも1つの実施形態の900ナノメートル波長などの比較的長い波長によって、メラニンについての吸収曲線から脱酸素化ヘモグロビンについての吸収曲線同士を区別することができる。
【0149】
光学プロービングのための波長の使用
そこから酸素飽和度が計算可能な酸素化および脱酸素化ヘモグロビン濃度は、光の所与の波長についての組織の領域の吸収係数μaに関連し得る。場合によっては、吸収係数が酸素化および脱酸素化ヘモグロビンの濃度のみに依存していると仮定される単純な関係が計算に用いられる。しかし、組織内に存在するメラニンおよび水も入射光を吸収し得るため、水およびメラニンからの吸収は酸素化または脱酸素化ヘモグロビンに不正確に起因し得るので、この単純な関係は高度に正確な濃度計算には不十分であり得る。吸収係数と、酸素化ヘモグロビン(HbO2)、脱酸素化ヘモグロビン(Hb)、水(H2O)、およびメラニン(mel)の濃度との関係は以下のようであり得る。
【0151】
式中、ε
speciesは所与の種のモル吸光係数を示し、括弧内の量は濃度値を示す。
反射率曲線(拡散反射または再放射された光の強度をプロットすることによって生成される)の形状を分析して、組織の所与の領域についての吸収および散乱係数を得ることができる。上記の関係では、吸収係数に対応する4つの未知濃度(すなわち[HbO2]、[Hb]、[H2O]、および[mel])がある。所与の波長についての吸収係数が求められると、この関係は4つの未知変数の方程式になる。しかし、酸素化および脱酸素化ヘモグロビン、水、ならびにメラニンの濃度はプローブ測定の過程で大幅に変動すべきでないため、波長源によって発せられる4つの異なる波長を用いて組織をプローブすることによってμaの4つの値を提供することができ、これを用いてμaについての式中の4つの関連濃度を求めることができる。すなわち、4つの未知変数を有する4つの方程式のシステムは、よく理解されているように解くことができる。酸素化ヘモグロビン[HbO2]および脱酸素化ヘモグロビン[Hb]の求めた濃度から、組織の酸素飽和度を求めることができる。
【0152】
波長源によって3つの波長が発せられる実施形態によると、水、メラニン、および他の光吸収体からの寄与を1つの項にまとめて以下のように表わすことができる。
【0154】
3つの波長について3つの吸収係数μ
aが求められると、[HbO2]、[Hb]、および[H2O、mel]について3つの関連濃度を求めることができ、酸素化および脱酸素化ヘモグロビンの求めた濃度から酸素飽和度を再び求めることができる。吸収係数は、たとえば、反射率データを1つ以上の予め定められた反射率曲線と一致させ、予め定められた反射率曲線の各々は一意の吸収係数を表わすなど、さまざまな方法によって反射率データから求めることができる。吸収係数は代替的に、「絶対酸素飽和度のためのシステムおよび方法(System and Method for Absolute Oxygen Saturation)」と題された米国特許第6,597,931号に記載されているネットアナライト(analyte)信号を用いたベクトル乗算によって求めることができ、当該米国特許は引用により援用される。
【0155】
モンテカルロシミュレーション
具体的な実施形態によると、メモリ装置205は多数のモンテカルロシミュレートされた反射率曲線600(「シミュレート反射率曲線」)を記憶し、これはコンピュータによって生成され、その後メモリ装置に記憶され得る。シミュレート反射率曲線600の各々は、1つ以上のシミュレート光源からシミュレート組織内に発せられてシミュレート組織から1つ以上のシミュレート検出器内に反射される光(たとえば可視または近赤外光)のシミュレーションを表わす。シミュレート反射率曲線600は、光源150の照明要素152およびプローブ先端300の検出器170の構成などの、シミュレート光源およびシミュレート検出器の具体的な構成についてのものである。したがって、シミュレート反射率曲線600は、組織オキシメトリ装置100によって発光および集光される光をモデル化する。
【0156】
さらに、シミュレート反射率曲線600の各々は、組織発色団の特定の濃度および組織散乱体の密度に関連する具体的な組織吸収および組織散乱値などの、一意の実際の組織状態を表わす。メモリ装置205に記憶されるシミュレート反射率曲線の数は比較的大きくてもよく、組織オキシメトリ装置100によって生存率を分析される実際の組織内に存在し得る光学特性と組織特性との実際的な組合せのすべてではないがほぼすべてを表わし得る。メモリ装置205はモンテカルロシミュレート反射率曲線を記憶するとしてここに説明されるが、メモリ装置205は、拡散近似を使用するなど、モンテカルロ法以外の方法によって生成されるシミュレート反射率曲線を記憶してもよい。
【0157】
図17は反射率曲線の例のグラフであり、これは、プローブ先端300の光源および検出器の構成のうちの1つなどの、光源150および光検出器170の具体的な構成についてのものであり得る。グラフの横軸は、光源150と光検出器170との間の距離(すなわち光源−検出器距離)を表わす。光源150と光検出器170との間の距離が適切に選択され、シミュレート反射率曲線が光源150および光検出器170についてのシミュレーションである場合は、シミュレート反射率曲線におけるデータ点同士の間の横方向の間隔は比較的均一になる。そのような比較的均一の間隔は、
図17のシミュレート反射率曲線に見ることができる。グラフの縦軸は、組織から反射して光検出器170によって検出される光のシミュレート反射率を表わす。シミュレート反射率曲線によって示されるように、光検出器170に達する反射率は、光源150と光検出器170との間の距離によって変化する。
【0158】
一具体化によると、メモリ装置205はシミュレート反射率曲線600ごとに選択された数の点を記憶し、シミュレート反射率曲線の全体を記憶しない場合がある。シミュレート反射率曲線600ごとに記憶される点の数は、光源−検出器の対の数と一致し得る。たとえば、プローブ先端300が2つの光源150aおよび150bならびに8個の光検出器170a〜170hを含む場合は、組織オキシメトリプローブ100は16個の光源−検出器の対を含み、メモリ装置205はしたがってシミュレート反射率曲線ごとに16個の選択データ点を記憶し得、記憶されたデータ点は具体的な光源−検出器距離(すなわち光源と光検出器との間の距離)についてのものである。
【0159】
したがって、メモリ装置205に記憶されるシミュレート反射率曲線データベースのサイズは16×3×5850であり得、各光源150によって生成され発せられ得る3つの異なる波長について16個の点が曲線ごとに記憶され、光学特性範囲にわたって合計5850本の曲線がある。代替的に、メモリ装置205に記憶されるシミュレート反射率曲線データベースのサイズは16×4×5850であり得、各光源によって生成され発せられ得る4つの異なる波長について16個の点が曲線ごとに記憶され、光学特性範囲にわたって合計5850本の曲線がある。5850本の曲線は、たとえば、39個の吸収係数μ
's値および150個の吸収係数μ
a値のマトリクスに由来する。μ
's値の範囲は5:5:24センチメートル
-1からであり得る(μ
'sはgの値に依存する)。μ
a値の範囲は0.01:0.01:1.5センチメートル
-1からであり得る。上述の範囲は例の範囲であり、光源−検出器の対の数、各光源によって生成される波長の数、およびシミュレート反射率曲線の数はより小さくても大きくてもよいことが理解されるであろう。
【0160】
組織分析
図18Aは、組織オキシメトリ装置100によって組織(たとえば実際の組織)の光学特性を求めるための方法のハイレベルフロー図であり、組織オキシメトリ装置は反射率データおよびシミュレート反射率曲線600を用いて光学特性を求める。光学特性は、組織の吸収係数μ
aおよび散乱係数μ
sを含み得る。組織の吸収係数μ
aおよび散乱係数μ
sを組織の酸素飽和値に変換するためのさらなる方法は、以下により詳細に説明される。このハイレベルフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、ハイレベルフロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0161】
1800において、組織オキシメトリ装置100は、光源150aなどの光源150の1つから組織内に光を発する。プローブ先端300は一般に、光源から発光されているときに組織と接触している。放射光が組織から反射した後、ステップ1805において光検出器170がこの光の一部を検出し、ステップ1810において組織の反射率データ点を生成する。ステップ1800、1805、および1810は、光の複数の波長について、および光源150bなどの1つ以上の他の光源について繰返され得る。単一波長についての反射率データ点は、たとえばプローブ先端300が16個の光源−検出器距離を提供する場合、16個の反射率データ点を含み得る。反射率データ点は、反射率データ点のNベクトルと称されることもある。
【0162】
1815において、反射率データ点(たとえば生反射率データ点)が光源−検出器の対のゲインに対して補正される。(上述の)光源−検出器の対の校正の間、光源−検出器の対についてゲイン補正が生成され、メモリ装置205に記憶される。
【0163】
1820において、測定モジュール120の制御プロセッサ200は、(たとえば残差二乗和計算を介して)反射率データ点をシミュレート反射率曲線600に適合させて、反射率データ点に最良適合する(すなわち最低適合誤差を有する)特定の反射率データ曲線を求める。1つの特定の具体化によると、シミュレート反射率曲線のデータベースの「粗(coarse)」グリッドであるシミュレート反射率曲線の比較的小さいセットが選択されて適合ステップ1820に利用される。たとえば、39個の散乱係数μ
's値および150個の吸収係数μ
a値と仮定すると、シミュレート反射率曲線の粗グリッドは、粗グリッド内の合計40本のシミュレート反射率曲線について4個おきの散乱係数μ
's値および7個おきの吸収係数μ
aを取ることによって、制御プロセッサ200によって求められ得る。上述の具体値は例の実施形態についてのものであり、他のサイズの粗グリッドも制御プロセッサ200によって利用され得ることが理解されるであろう。反射率データ点を粗グリッドに適合させることによる結果は、最良適合するシミュレート反射率曲線の粗グリッド内の座標(μ
a,μ
's)
coarseである。
【0164】
1825において、最低適合誤差を有する粗グリッドからの特定のシミュレート反射率曲線が制御プロセッサ200によって利用されてシミュレート反射率曲線の「微細(fine)」グリッドが定義され、微細グリッド内のシミュレート反射率曲線は、最低適合誤差を有する粗グリッドからのシミュレート反射率曲線の周りにある。
【0165】
すなわち、微細グリッドは規定サイズであり、粗グリッドからの最低誤差シミュレート反射率曲線が微細グリッドの中心を規定する。微細グリッドは粗グリッドと同数のシミュレート反射率曲線を有してもよいし、またはより多いもしくはより少ないシミュレート反射率曲線を有してもよい。微細グリッドは、ステップ1830において微細グリッド内の近傍の吸収係数μ
a値および散乱係数μ
's値のピーク表面アレイを求めるのに十分な数の点を提供するために実質的に微細である。具体的には、粗グリッドからの最低誤差値に加えて特定のオフセットを利用する制御プロセッサ200によって閾値が設定され得る。閾値未満の誤差を有する微細グリッド上の散乱係数μ
'sおよび吸収係数μ
aの位置はすべて、ピーク表面アレイを求める際に用いるために識別され得、反射率データについての散乱係数μ
'sおよび吸収係数μ
aがさらに求められる。具体的には、ピークについて誤差適合がなされ、ピークにおける吸収係数μ
aおよび散乱係数μ
's値が求められる。ステップ1840において、ピークにおける吸収係数μ
aおよび散乱係数μ
's値の重み付け平均(たとえばセントロイド計算)が組織オキシメトリ装置によって利用され、組織の反射率データ点についての吸収係数μ
aおよび散乱係数μ
's値が求められ得る。
【0166】
重み付け平均についての吸収係数μ
aおよび散乱係数μ
's値の重みは、閾値マイナス微細グリッド誤差として制御プロセッサ200によって求められ得る。微細グリッド上の点は閾値未満の誤差を用いて選択されるため、これによって正の重みが与えられる。重み付け平均の重み付け計算(たとえばセントロイド計算)によって、組織の反射率データ点についての予想される散乱係数μ
'sおよび吸収係数μ
a(すなわち(μ
a,μ
's)fine)が提供される。さまざまな非線形最小二乗法の1つ以上を用いて適合して散乱係数μ
'sの真の最小誤差ピークを求めるなど、他の方法も組織オキシメトリ装置によって利用され得る。
【0167】
一具体化によると、制御プロセッサ200は反射率データ点およびシミュレート反射率曲線のログを計算し、各ログを光源−検出器距離(たとえばセンチメートルで表わされる)の平方根で割る。光源−検出器距離の平方根で割られるログ値は、上述のステップ(たとえばステップ1815、1820、1825、および1830)において反射率データ点およびシミュレート反射率曲線について制御プロセッサ200によって利用されて、シミュレート反射率曲線に対する反射率データ点の適合が改善され得る。
【0168】
別の具体化によると、オフセットは実質的にゼロに設定され、これによって粗グリッド最小と微細グリッド最小との差のオフセットが有効に与えられる。
図18Aに関して上記に説明された方法は粗グリッドからの最小適合誤差に依拠するため、微細グリッド上の真の最小誤差は典型的により低い。理想的には、閾値は微細グリッド上の最低誤差から求められ、これは典型的にプロセッサによるさらなる演算を必要とする。
【0169】
以下は、一具体化に係る微細グリッド内の反射率データ点に最良適合する特定のシミュレート反射率曲線を見つけるためのさらなる詳細な説明である。
図18Bは、一具体化に係る微細グリッド内の反射率データ点に最良適合する特定のシミュレート反射率曲線を見つけるための方法のハイレベルフロー図である。このハイレベルフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、ハイレベルフロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0170】
ステップ1825において反射率データ点に最良適合する粗グリッドから特定のシミュレート反射率曲線(μ
a,μ
's)
coarseを求めた後、ステップ1850において、制御プロセッサ200はシミュレート反射率曲線の完全シミュレート反射率曲線データベース(すなわち16×4×5850の(μ
a,μ
's)データベース)内の(μ
a,μ
's)
coarseの周りの領域内の誤差表面を演算する。誤差表面はerr(μ
a,μ
's)と示される。その後、ステップ1855において、制御プロセッサ200は、err
minと称される、err(μ
a,μ
's)内の最小誤差値を探す。制御プロセッサ200は次に、ステップ1860において、ピーク表面がゼロよりも大きい場合はpksurf(μ
a,μ
's)=k+err
min−err(μ
a,μ
's)によって示される、またはピーク表面がゼロ以下である場合はpksurf(μ
a,μ
's)=k+err
min−err(μ
a,μ
's)=0によって示されるerr(μ
a,μ
's)からのピーク表面アレイを生成する。当該式において、kは、約10個の要素のゼロよりも大きい幅を有するerr(μ
a,μ
's)の最小点におけるピークから選択される。ステップ1865において、pksurf(μ
a,μ
's)のピークの質量中心(すなわちセントロイド計算)は、点の高さを重みとして用いる。質量中心の位置は、組織の反射率データ点についての吸収係数μ
aおよび散乱係数μ
'sの補間結果である。
【0171】
組織の反射率データ点についての吸収係数μ
aおよび散乱係数μ
'sを求めるための
図18Aおよび
図18Bに関して上記に説明された方法は、光源150の各々によって生成される波長(たとえば3個または4個の波長)ごとに繰返され得る。
【0172】
酸素飽和度判定
第1の具体化によると、制御プロセッサ200は、各光源120によって生成される光の3個または4個の波長について(上述のように)求められる吸収係数μ
a(たとえば3個または4個の吸収係数μ
a)を利用することによって、組織オキシメトリ装置100によってプローブされる組織の酸素飽和度を求める。第1の具体化によると、酸素飽和度に対する吸収係数μ
aの最良適合を見つけるための酸素飽和値のルックアップテーブルが生成される。ルックアップテーブルは、可能性のある全体のヘモグロビン、メラニン、および酸素飽和値の範囲を仮定し、これらのシナリオごとにμ
aを計算することによって生成され得る。そして、単位ベクトルのノルム(norm)を分割して、システム誤差を減少させて曲線の相対形状にのみ依存することによって、吸収係数μ
a点が単位ベクトルに変換される。そして、単位ベクトルがルックアップテーブルと比較されて最良適合が見つけられ、これによって酸素飽和度が与えられる。
【0173】
第2の具体化によると、制御プロセッサ200は、脱酸素化ヘモグロビンおよび酸素化ヘモグロビンのネットアナライト信号(net analyte signal:NAS)を計算することによって組織の酸素飽和度を求める。NASは、システム内の他のスペクトル構成要素に直交するスペクトルの部分と定義される。たとえば、脱酸素化ヘモグロビンのNASは、酸素化ヘモグロビンスペクトルおよびメラニンスペクトルに直交するスペクトルの部分である。そして、ベクトルがそれぞれのNASを掛け、二乗されたNASのノルムで割ることによって、脱酸素化および酸素化ヘモグロビンの濃度が計算され得る。そして、酸素飽和度が、酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンの合計で割られる酸素化ヘモグロビンの濃度として容易に計算される。LorberによるAnal. Chem. 58:1167-1172(1986)が引用により本明細書中に援用され、組織の酸素飽和度を求めるための第2の具体化のさらなる詳細な理解のための枠組みを提供する。
【0174】
組織オキシメトリ装置100の一実施形態によると、反射率データは30ヘルツで光検出器170によって生成され、酸素飽和値は約3へルツで計算される。求められた酸素飽和値(たとえば少なくとも3つの酸素飽和値)の移動平均が、1ヘルツの更新速度を有し得るディスプレイ125上に表示され得る。
【0175】
光学特性
上記に簡単に説明されたように、メモリ装置205に記憶される各シミュレート反射率曲線600は、組織の一意の光学特性を表わす。より具体的には、所与の波長についてのシミュレート反射率曲線の一意の形状は組織の光学特性の一意の値、すなわち、散乱係数(μ
s)、吸収係数(μ
a)、組織の異方性(g)、および組織の屈折率を表わす。
【0176】
比較的小さい光源−検出器距離について光検出器170によって検出される反射率は、減少散乱係数μ
'sに主に依存する。減少散乱係数は、散乱係数μ
sおよび組織の異方性gを組込んだ「集合(lumped)」特性であり、μ
's=μ
s(1−g)であり、1/μ
'sのサイズの多くのステップのランダムウォークの光子の拡散を記述するために用いられ、各ステップは等方散乱を含む。そのような記述は、多くの小さいステップ1/μ
sを用いる光子移動の記述と同等であり、これらのステップの各々は、吸収事象の前に多くの散乱事象がある場合、すなわちμ
a<<μ
'sである場合は一部偏向角度のみを含む。
【0177】
対照的に、比較的大きい光源−検出器距離について光検出器170によって検出される反射率は、有効吸収係数μ
effに主に依存し、これは
【0179】
と定義され、これはμ
aおよびμ
'sの両方の関数である。
したがって、比較的小さい光源−検出器距離(たとえば光源150aと光検出器170eとの間の距離および光源120bと光検出器170aとの間の距離)ならびに比較的大きい光源−検出器距離(たとえば光源150aと検出器170aとの間の距離および光源120bと検出器170eとの間距離)における反射率を測定することによって、μ
aおよびμ
'sの両方を互いに独立して求めることができる。組織の光学特性は次に、酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビン濃度の計算のための十分な情報、およびしたがって組織の酸素飽和度を提供し得る。
【0180】
データ収集最適化のための反復適合
図19は、組織オキシメトリ装置100によって組織の光学特性を求めるための別の方法のハイレベルフロー図である。このハイレベルフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、ハイレベルフロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0181】
1900において、組織オキシメトリ装置100は、光源150aなどの光源の1つから組織内に光を発する。放射光が組織から反射した後、光検出器170がステップ1905において光を検出し、ステップ1910において組織の反射率データ点を生成する。ステップ1900、1905、および1910は、光の複数の波長について、および光源150bなどの1つ以上の他の光源について繰返され得る。1915において、制御プロセッサ200は反射率データをシミュレート反射率曲線600に適合させ、反射率データが最良適合を有するシミュレート反射率曲線を求める。その後、ステップ1920において、制御プロセッサ200は、反射率データに最良適合するシミュレート反射率曲線の光学特性に基づいて、組織の光学特性(たとえばμ
aおよびμ
's)を求める。
【0182】
1925において、制御プロセッサ200は、ステップ1920で求めた光学特性(たとえばmfp=1/(μ
a+μ
's))から組織内の光の平均自由工程を求める。具体的には、平均自由工程は、すべての光源−検出器の対(たとえば、対1:光源150a−検出器170e、対2:光源150a−検出器170f、対3:光源150a−検出器170g、対4:光源150a−検出器170h、対5:光源150a−検出器170a、対6:光源150a−検出器170b、対7:光源150a−検出器170c、対8:光源150a−検出器170d、…対9:光源150b−検出器170e、対10:光源150b−検出器170f…など)についての反射率データを含む累積反射率曲線から得られる光学特性から求められ得る。
【0183】
1930において、制御プロセッサ200は、組織の所与の領域について計算した平均自由工程が最短の光源−検出器距離(たとえば光源150aと検出器170eとの間の距離、および光源150bと検出器170aとの間の距離)の2倍よりも長いか否かを判断する。平均自由工程が最短の光源−検出器距離の2倍よりも長い場合は、最短の光源−検出器距離を有する光源−検出器の対(たとえば、対1:光源150a−検出器170eおよび対9:光源150b−検出器170a)の検出器から収集される反射率データを利用することなく、収集された反射率データはシミュレート反射率曲線に再適合される(すなわち再分析される)。たとえば、ステップ1915〜1930は、光源150aが検出器170eの光源として作用している状態で検出器170eからの反射率データを使用せずに、かつ、光源150bが検出器170aの光源として作用している状態で検出器170aからの反射率データを使用せずに繰返される。平均自由工程を計算し、1つ以上の光源−検出器の対についての反射率データを捨てる処理は、適合に対する反射率データに寄与する光源−検出器の対のうち、計算された平均自由工程の半分よりも短い光源−検出器距離を有する対がなくなるまで繰返され得る。その後、ステップ1935において、最良適合するシミュレート反射率曲線から酸素飽和度が求められ、組織オキシメトリ装置110によってたとえばディスプレイ125上に報告される。
【0184】
光源150の1つから組織内に発せされ、平均自由工程の半分未満だけ進む光は、実質的に非拡散反射される。この光の再発光距離は、組織位相関数および局所組織構成に大きく依存する。したがって、この光の反射率データを使用すると、複数の散乱事象を経験した光の反射率データと比較して、光学特性および組織特性の判定の精度が低下する傾向がある。
【0185】
データ重み付け
光源150から増大した距離に位置決めされる光検出器170は、組織から受ける反射率の量が低下する。したがって、比較的短い光源−検出器距離(たとえば光源と光検出器との間の平均距離以下の光源−検出器距離)を有する光検出器170によって生成される反射率データは、比較的長い光源−検出器距離(たとえば平均距離よりも大きい光源−検出器距離)を有する検出器によって生成される反射率データと比較して、本質的により低いノイズを示す傾向がある。
【0186】
したがって、適合アルゴリズムは、シミュレート反射率曲線を、比較的長い光源−検出器距離(たとえば光源と光検出器との間の平均距離よりも大きい光源−検出器距離)を有する光検出器によって生成される反射率データよりも緊密に、比較的短い光源−検出器距離(たとえば平均距離以下の光源−検出器距離)を有する光検出器170によって生成される反射率データに優先的に適合させ得る。反射率データから光学特性を比較的正確に求めるためには、この距離に比例したスキューは望ましくない場合があり、直下に説明されるように反射率データを重み付けすることによって補正され得る。
【0187】
図20は、選択された光検出器170によって生成される反射率データを重み付けするための方法のハイレベルフロー図である。このハイレベルフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、ハイレベルフロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0188】
2000において、組織オキシメトリ装置100は、光源150aなどの光源の1つから組織内に光を発する。放射光が組織から反射した後、光検出器170はステップ2005において光を検出し、ステップ2010において組織の反射率データ点を生成する。ステップ2000、2005、および2010は、光の複数の波長について、および光源150bなどの1つ以上の他の光源150について繰返され得る。2015において、制御プロセッサ200は反射率データの第1の部分をシミュレート反射率曲線に適合させる。
【0189】
反射率データの第1の部分は、光源から閾値距離未満にある検出器の第1の部分によって生成される。閾値距離は、光源と光検出器との間の平均距離(たとえばほぼ中間の距離)であってもよい。2020において、反射率データの第2の部分についての反射率データが、シミュレート反射率曲線に適合される。反射率データの第2の部分は、光検出器の第1の部分と、閾値距離と比較して2番目に大きい光源からの光源−検出器距離にある別の光検出器によって生成される。たとえば、光検出器の第1の部分が光検出器170c、170d、170e、および170fを含む場合は、2番目に大きい光源−検出器距離にある光検出器は検出器170gである(たとえば検出器170cよりも光源150aに近い、
図9Aおよび
図9B参照)。
【0190】
2025において、ステップ2015で生成された適合がステップ2020で生成された適合と比較され、ステップ2020で生成された適合がステップ2015で生成された適合よりも良好であるか否かが判断される。当業者によって理解されるように、曲線に対するデータの適合の「接近」はさまざまなパラメータに基づいて定量化可能であり、適合の接近は、曲線に対するより近い適合(より近い適合)を有するデータを求めることに直接相当する。さらに理解されるように、より近い適合はより良好な適合またはより緊密な適合とも称される。
【0191】
ステップ2020で生成された適合がステップ2015で生成された適合よりも良好である場合は、次に大きい光源からの光源−検出器距離に位置決めされる付加的な光検出器(考察中の例によると光検出器170c)を含む光検出器によって生成される反射率データを用いて、ステップ2020および2025が繰返される。代替的に、ステップ2020で生成された適合がステップ2015で生成された適合よりも良好でない場合は、閾値距離よりも大きい検出器−光源距離に位置決めされる光検出器170についての反射率データは適合に用いられない。その後、ステップ2030において、制御プロセッサ200は2015または(ステップ2015で求められた適合よりも良好である場合は)ステップ2020で生成された適合を用いて、組織の光学特性および酸素飽和度を求める。その後、ステップ2035において、酸素飽和度が組織オキシメトリ装置110によってたとえばディスプレイ125上に報告される。
【0192】
代替実施形態によると、ステップ2020で生成された適合がステップ2015で生成された適合よりも良好でない場合は、反射率データは、閾値距離よりも大きい光源−検出器距離を有する光検出器についての重み係数によって重み付けされ、これによって、重み付けされた反射率データの適合への影響が減少する。適合に用いられない反射率データはゼロの重みを有していると考えることができ、対象の組織層の下の組織からの反射率と関連付けられ得る。対象の組織層の下の組織からの反射率は、この特定の反射率を示す反射率曲線における特性歪み(kink)を示すといわれている。
【0193】
なお、反射率データをシミュレート反射率曲線に適合させる曲線適合アルゴリズムは、反射率データの不確実性の量および反射率データの絶対位置を考慮し得る。反射率データにおける不確実性は、光検出器の1つによる反射率データの生成からのノイズ量に対応し、ノイズ量は、反射率データの大きさの平方根としてスケール変更し得る。
【0194】
さらなる実施形態によると、制御プロセッサ200は、反射率データの測定と関連付けられるノイズ量に基づいて、反射率データを反復的に重み付けする。具体的には、比較的大きい光源−検出器距離を有する光検出器によって生成される反射率データは、一般に、比較的短い光源−検出器距離を有する光検出器によって生成される反射率データと比較して信号雑音比が低い。比較的大きい光源−検出器距離を有する光検出器によって生成される反射率データの重み付けを減少させることによって、このデータの適合への影響を他の反射率データよりも減少させることができる。
【0195】
校正
一実施形態によると、組織オキシメトリ装置100は、既知の光学特性を有する多数(たとえば3から30個)の組織ファントムを利用して校正される。組織オキシメトリ装置100を用いて組織ファントムをプローブし、組織ファントムの反射率データが収集され得る。組織ファントムごとの反射率データは、シミュレート反射率曲線600に適合され得る。組織ファントムごとに生成される反射率データは、組織ファントムと同じ光学特性を有するシミュレート反射率曲線に適合すべきである。反射率データが、組織ファントムの光学特性と一致するシミュレート曲線に良好に適合しない場合は、制御プロセッサ200によって校正関数が生成されて適合が改善され得る。1つ以上の校正関数または校正関数の平均がメモリ装置205に記憶され得る。1つ以上の校正関数が、組織オキシメトリ装置100によってプローブされる実際の組織について生成される反射率データに適用され得るため、実際の組織についての反射率データは、実際の組織の光学特性と実質的に高精度に一致する光学特性を有するシミュレート反射率曲線の1本に適合することになる。その後、一致したシミュレート反射率曲線の光学特性を用いて、実際の組織の酸素飽和度が計算および報告され得る。
【0196】
圧力センサ
上記に簡単に説明されたように、プローブ先端300は少なくとも1つの圧力センサ175を含み得る。圧力センサ175はプローブ先端300の表面上で、センサヘッド250のさまざまな部品同士の間に(たとえばプローブ先端300とハウジング105のディスク状端105dとの間に)、またはプローブ先端300のさまざまな部品同士の間等に配置され得る。圧力センサ175は、プローブ中の組織にプローブ先端300が押し付けられる圧力を検出するように構成される。圧力センサ175は、水銀柱約0ミリメートルから水銀柱約100ミリメートルの圧力を検出し得る。他の具体化では、圧力センサは省略されてもよい。
【0197】
圧力センサ175は、力検知抵抗器(FSR)、圧電圧力センサ、容量圧力センサ、誘導圧力センサ、またはロードセル等であってもよいし、またはFSRおよびロードセルなどのこれらのセンサの1つ以上を組合せて含んでもよい。1つの具体的な実施形態によると、圧力センサ175は、インターリンク社(Interlink Electronics)によって製造され、Standard 400 FSRという商標名で販売されているFSRである。
図21は、組織オキシメトリ装置100とともに使用され得るFSRの後面図および正面図を示す。このFSRはインターリンク社によって製造され、Standard 400 FSRという商標名で販売され得る。FSRは、FSRから収集モジュール115、測定モジュール120、または両方に電気信号を送信するための圧力検知領域および1組のトレースをPCB内に含む。
【0198】
一具体化では、ゼロでない前負荷力が、プローブ先端130、センサヘッド250、ハウジング105、またはこれらの組合せの部品によって圧力センサ175に印加される。さらに、収集モジュール115、測定モジュール120、または両方は、組織オキシメトリ装置100の電源投入後に圧力センサ175に対して風袋作業を実行し得る。組織オキシメトリ装置100の電源投入後に圧力センサ175を風袋することによって、組立、出荷、保管、または他の目的の間に起こった可能性のある圧力センサに対する圧力変化を修正する。
【0199】
図22Aはディスプレイ125の簡略画像であり、これは、圧力センサ175によって検知される圧力量を示す圧力インジケータ177を表示するように構成され得る。圧力インジケータ177は、圧力センサ175によって検出される圧力を示すための数値インジケータ(図示せず)、グラフィカルインジケータ(
図22Aに示す)、または両方を含み得る。数値インジケータは、検出圧力を水銀柱ミリメートル、ポンド/平方インチ、グラム/平方センチメートル、または他の単位で表示し得る。代替的に、数値インジケータは、組織オキシメトリ装置100によってプローブ中の組織に印加される力を表示し得る。
【0200】
一実施形態では、グラフィカルインジケータは、検出圧力をグラフで示す一次元バーグラフまたは二次元グラフ等の一次元グラフである。たとえば、グラフィカルインジケータが
図22Aに示されるような一次元バーグラフである場合、(たとえば所与の色で)塗り潰されるバーグラフのパーセンテージが検出圧力を示す。
【0201】
グラフィカルインジケータは、検出圧力が最適圧力範囲であることを示すための付加的なグラフィカルマーク(たとえば
図22Aに示される矢印)を含み得る。たとえば、矢印同士の間のバーグラフの部分が最適圧力範囲を示し得る。最適圧力範囲は、以下により詳細に説明される。
【0202】
圧力インジケータ177またはその一部は、検出圧力が最適圧力範囲内にある場合に固有の態様で表示され得る。たとえば、数値インジケータおよび/またはグラフィカルインジケータは、検出圧力が最適圧力範囲にない場合は第1の色(たとえば赤)で表示され得、検出圧力が最適圧力範囲内にある場合は第2の色(たとえば緑)で表示され得る。別の例によると、最適圧力範囲についての一次元バーグラフの部分および最適圧力範囲を示すグラフィカルマーク(たとえば矢印)は、最適圧力が検出されることを示すために第2の色(緑)で表示され得、グラフィカルマークの外側の一次元バーグラフの他の部分は、最適圧力が検出されないことを示すために第1の色(たとえば赤)で表示され得る。
【0203】
ディスプレイ125は、酸素飽和度についてのインジケータ178および印加圧力についてのインジケータ177を表示するように構成されるとしてここに説明されるが、組織オキシメトリ装置100と有線または無線で通信するように構成される取外されたベースユニットのディスプレイまたは外部ディスプレイなど、他のディスプレイ装置がこれらのインジケータを表示するように構成されてもよい。
【0204】
次に最適圧力範囲に注目して、最適圧力範囲は、組織オキシメトリ装置100によって有効な酸素飽和度測定を行うことができる範囲である。最適圧力範囲内で印加される圧力は、周囲の光源からの光が光検出器170内に漏れないようにプローブ先端300をプローブ中の組織に対して封止する程度に十分大きい。さらに、最適圧力範囲内で印加される圧力は、酸素飽和度測定がスキューしないようにプローブ中の組織内の血液が組織から押圧されないように、または組織に流れ込むのを阻止されないように十分小さい。より具体的には、最適圧力範囲の上限よりも高い印加圧力は、組織に対するプローブ先端300の圧力が比較的高く、組織から血液を押圧しているため、酸素飽和度測定がこれらの圧力によって悪影響を受けることを示し得る。
【0205】
組織に対するプローブ先端300の印加圧力の最適範囲は、患者ごとに異なり得る。たとえば、印加圧力の最適範囲は、糖尿病を患っていない健常患者と比較して糖尿病を患っている患者の方が低くてもよい。たとえば、健常患者の最適圧力範囲は水銀柱約10ミリメートルから水銀柱約30ミリメートルであり得るのに対して、糖尿病を患っている患者の最適圧力範囲は水銀柱約5ミリメートルから水銀柱約25ミリメートルであり得る。
【0206】
1つ以上の最適圧力範囲が経験的に予め定められ得、当該1つ以上の最適圧力範囲の情報がメモリ装置205に記憶され得る。組織オキシメトリ装置100は、メモリ装置205に記憶される最適圧力範囲のうちの1つの情報を選択するために使用され得るさまざまな装置の1つ以上を含み得る。たとえば、入力コントローラ130の1つ以上は、さまざまな最適圧力範囲を切換えるように構成され得る。代替的に、ディスプレイ125はタッチスクリーンであってもよく、1つ以上の表示ボタンを表示するように構成されてもよく(たとえば入力コントローラ130の具体例)、表示ボタンに触れるおよび/または表示ボタンを押して、最適圧力範囲の1つを選択することができる。ディスプレイ125はさらに、選択された特定の最適圧力範囲についてのインジケータを表示し得る。選択された特定の最適圧力範囲についてのインジケータは、選択された特定の最適圧力範囲と関連付けられる状態(すなわち健常、糖尿病性、または他の状態)を示す「状態」インジケータを含み得る。
【0207】
ディスプレイ125はさらに、組織オキシメトリ装置100の使用の合計時間176を表示し得る。使用時間は測定モジュール120によって追跡されて、ディスプレイ125上に表示され得る。ディスプレイ125はさらに、バッテリ電力が低い場合は低バッテリインジケータ179を表示し得る。別の代替例では、ディスプレイ125は、バッテリ220に残っている電荷を示す電力メータ(図示せず)を表示し得る。
【0208】
図23は、プローブ中の組織に接するプローブ先端300の圧力を測定するための、および当該圧力に基づいて組織オキシメトリ装置100の組織オキシメトリ測定が有効であるか否かを示すための方法のハイレベルフロー図である。このハイレベルフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、ハイレベルフロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0209】
2300において、プローブ先端300が組織と接触する。ステップ2305において、光源150の1つ以上から光(たとえば近赤外光)が組織内に発せされ、この光の少なくともいくらかが組織によって反射される。ステップ2310において、各光検出器170は組織から反射される光の一部を受光し、ステップ2315において、各光検出器は、受光した反射光の部分について反射率データ(すなわち応答)を生成する。2320において、制御プロセッサ200は、反射率データに基づいて組織の酸素飽和値を求める。2325において、圧力センサ175は、組織に対するプローブ先端300の圧力(または力)を測定する。2330において、ディスプレイ125は圧力インジケータ177を表示し、酸素飽和度のインジケータを表示する。圧力インジケータ177は、圧力に基づいて、測定された酸素飽和度が有効または無効であることを示す。たとえば、圧力インジケータ177は、有効な酸素飽和度測定が実行可能な最適圧力範囲内に圧力がある場合は第2の色(たとえば緑)で、圧力が最適圧力範囲内にない場合は第1の色(たとえば赤)で表示され得る。酸素飽和度測定が有効であるか否かを示すために色の利用が説明されるが、テキストまたはグラフィックの点滅、フォントの変更、酸素飽和度についてインジケータ178(
図22B参照)に破線を使用すること、または他の表示など、そのような表示のための他のインジケータが使用されてもよい。ここに説明されるさまざまな状態について、有効な酸素飽和度測定が実行不可能であること示すためのマーク(たとえば破線)が表示されてもよい。
【0210】
圧力検知方法のステップは、最適圧力範囲内の圧力が印加されるように、かつ有効な組織オキシメトリ測定が行われるように、組織オキシメトリ装置100を使用しているユーザが組織に印加される圧力を増加または減少させると、ユーザが更新フィードバック(すなわち圧力インジケータ177)を受信するように、実質的に連続的に繰返され得る。
【0211】
組織マーキング
一実施形態によると、組織オキシメトリ装置100は、組織をマークするように構成される組織マーカを含む。
図24はプローブ先端300の実施形態を示しており、プローブ先端300は組織マーカの少なくともディスペンサ部700を含む。組織マーカのディスペンサ部は、プローブ先端300の表面上のさまざまな位置に配置され得る。1つの具体的な実施形態によると、ディスペンサ部は光源150aと150bとの間に配置され、検出器170の円形配置のほぼ中央に配置され得る。ディスペンサが光源150および検出器170のほぼ中央にあるため、ディスペンサによって付けられる標識は、組織オキシメトリ装置100によってプローブされた局所組織領域の実質的に中央にある。プローブされた組織領域の中央に標識があるため、標識は、プローブされる局所組織領域の場所から移動しない。
【0212】
一具体化によると、組織マーカは、プローブ先端200の異なる位置に配置され得る1つ以上のディスペンサを含む。たとえば、2つのディスペンサが光源150および光検出器170の「外側に」配置され得る。すなわち、ディスペンサは、光源150および検出器170の場所の半径よりも長い半径の端に配置され得る。さらに、ディスペンサは、光検出器170の円形配置の円の中心を通る線上に存在し得る。ディスペンサがそのような線に沿って配置されるため、これらのディスペンサによって付けられる標識によって、ユーザは、標識同士の間の領域を組織オキシメトリ装置100によってプローブされた局所組織領域であると容易に識別することができる。
【0213】
ディスペンサは、比較的小さい標識(たとえばドット)で組織をマークするように構成され得る比較的局所化された装置(たとえば単数または複数のペン、および単数または複数の印字機等)として
図24に示されているが、ディスペンサは、線などの拡張標識を付けるように構成される拡張装置であってもよい。たとえば、ディスペンサは、円形もしくは他の閉じた形状で組織をマークするように構成される拡張装置であってもよいし、またはu字形もしくはv字形等の開いた形状で組織をマークしてもよい。
【0214】
ディスペンサはプローブ先端300の内部に固定され得るか、または組織がマークされると下がるように構成され得る。ディスペンサを下げるためのさまざまな機械または電子機械装置がプローブ先端300によって利用され得る。そのような機械および電子機械装置は当業者によってよく理解されており、ここでは詳細に説明されない。
【0215】
組織マーカは、FDAが承認している組織マーキングインクである、ゲンチアナバイオレットなどのさまざまな色を有するさまざまなインクで組織をマークし得る。組織オキシメトリ装置100によって利用されるインク色の1つ以上は、1つ以上の酸素飽和度範囲を示し得る。たとえば、組織マーカは、(i)組織の酸素飽和度が第1の閾値以下である場合は第1のインク色で組織をマークし、(ii)組織の酸素飽和度が第1の閾値よりも高く第2の閾値以下である場合は第2のインク色で組織をマークし、(iii)組織の酸素飽和度が第2の閾値よりも高い場合は第3のインク色で組織をマークするように構成され得る。上述の例では、3つの酸素飽和度範囲を視覚的に識別するために組織をマークするための3つのインク色の使用が説明されているが、より多いまたはより少ない酸素飽和度範囲を示すためにより多いまたはより少ない色が組織マーカによって利用されてもよい。
【0216】
制御プロセッサ200は、上述のように反射率データの分析に基づいて局所組織領域の酸素飽和度を求め得、酸素飽和度が存在する範囲を示す選択インク色で局所組織領域をマークするように組織マーカを制御し得る。組織マーカは、インク容器またはペン等の、1つ以上の色を有するマーキング材料を提供するさまざまな装置を含み得る。引用により援用される、「マーキング特徴を有するオキシメータ(Oximeter with Marking Feature)」と題された、2008年7月23日に出願された米国特許出願第12/178,359号(Heaton)は、マーキング材料の1色以上で組織をマークするように構成されるさまざまな装置を記載している。
【0217】
組織マーカの容器が、たとえば管類または溝を介してディスペンサに接続され得、ディスペンサを介して分配されるインクまたは他の流体(たとえばインク)を収容し得る。インクは容器からディスペンサを通って移され、(圧電トランスデューサを用いるなどして)圧力または低周波数音を介して皮膚上に置かれ得る。容器はハウジング105に入れられ得る。使い捨てプローブについては、容器は詰替可能でなくてもよい。
【0218】
一代替例によると、組織マーカは、プロセッサ116の制御下で1つ以上の酸素飽和度範囲について組織をマークするが、1つ以上の他の酸素飽和度領域については組織をマークしない。たとえば、組織マーカは、局所組織領域の酸素飽和度が閾値レベル以下である場合は局所組織領域をマークし得るか、または代替的に、酸素飽和度レベルが閾値レベルよりも高い場合は局所組織領域をマークしない。上記方法に係る組織に行なわれるマーキングによって、ユーザは、閾値レベルが比較的低い場合は、低い生存可能性を有し得る組織を比較的迅速に識別することができる。代替的に、組織マーカは、局所組織領域の酸素飽和度が閾値レベル以上である場合は局所組織領域をマークし得、酸素飽和度レベルが閾値未満である場合は局所組織領域をマークし得ない。この方法によって付けられる標識によって、ユーザは、閾値レベルが比較的高い場合は、高い生存可能性を有し得る組織を比較的迅速に識別することができる。
【0219】
上述の閾値レベル(たとえば範囲)の情報はメモリ装置205に記憶され、制御プロセッサ200によってアクセスされて使用され得る。閾値レベルは、組織オキシメトリ装置100の製造時にメモリ装置205に記憶され得るか、またはその後にメモリに記憶され得る。たとえば、組織オキシメトリ装置100は、1つ以上のユーザ定義閾値レベルについてのユーザ入力を受信し、これらの閾値レベルの情報をメモリ装置205に記憶するように構成され得る。1つ以上の入力コントローラ130(など)は、ユーザ定義閾値レベルについてのユーザ入力を受信し、ユーザ定義閾値レベルをメモリ装置205に記憶するように構成され得る。
【0220】
図25は、組織をマークして組織の酸素飽和度の範囲を示すための方法のハイレベルフロー図である。このハイレベルフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、ハイレベルフロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0221】
2500において、プローブ先端300が組織と接触する。ステップ2505において、光源150の1つ以上から光(たとえば近赤外光)が組織内に発せされ、この光の少なくともいくらかが組織によって反射される。ステップ2510において、各光検出器170は組織から反射される光の一部を受光し、ステップ2515において、各光検出器は、受光した反射光の部分について反射率データ(すなわち応答)を生成する。2520において、制御プロセッサ200は、上述のように反射率データに基づいて組織の酸素飽和値を求める。
【0222】
2525において、制御プロセッサ200は、酸素飽和度が存在する酸素飽和度の複数の範囲から酸素飽和度の範囲を求める。2530において、制御プロセッサ200は、酸素飽和度が存在する範囲に基づいて組織をインクでマークするように組織マーカを制御する。たとえば、制御プロセッサは、酸素飽和度が酸素飽和度の第1の範囲内にある場合は組織をインクでマークするが、酸素飽和度が酸素飽和度の第2の範囲にある場合は組織をマークしないようにディスペンサを制御するように構成され得、第1の範囲と第2の範囲は異なり、たとえば重複しない範囲である。上述の例の実施形態では組織オキシメトリ装置による酸素飽和度の2つの範囲の利用が記載されているが、組織オキシメトリ装置は、組織をインクでマークするか否かを判断するために酸素飽和度の2つよりも多い範囲を利用してもよい。
【0223】
一実施形態によると、制御プロセッサ200は、酸素飽和度が存在する酸素飽和度の範囲に基づいて、組織を特定のインク色でマークするようにディスペンサを制御し得る。特定のインク色によって、ユーザは、組織を再プローブするか、または酸素飽和値を含む組織のチャートを見てチャートを組織と一致させる必要なしに、組織の酸素飽和度の範囲を比較的迅速に求めることができる。
【0224】
組織オキシメトリ装置100は、ユーザが組織オキシメトリ装置を手動で制御して組織をマークすることができるように、プロセッサ200が組織のマーキングを制御することができるように、またはその両方であるように構成され得る。組織オキシメトリ装置100は、プロセッサによって制御される組織マーキング方法と、(たとえば入力コントローラ130のうちの1つを起動することによって)手動制御される組織マーキング方法との間で切換えられ得る。
【0225】
腹腔鏡検査
組織オキシメトリプローブ100の1つの用途では、組織オキシメトリプローブは腹腔鏡処置のために医師によって用いられ、患者の組織の酸素飽和度が測定され得る。腹腔鏡処置では、組織オキシメトリプローブ100のプローブ先端300は、患者の(たとえば患者の腹部または骨盤の)比較的小さい切開(たとえば約0.5センチメートルから約2センチメートル)に挿入され、酸素飽和測定を行うべき組織に押付けられ接触させられ得る。使用ケースによっては、プローブ先端を切開の内部にさらに入れる場合は、プローブヘッド250、ハウジング105の先端部105c、または両方がさらに切開に挿入され得る。
【0226】
この用途では、組織オキシメトリプローブ100は、組織オキシメトリプローブに使用した切開とは異なる切開または同じ切開に挿入されるように構成され得る照明システムおよびカメラシステムと組合せて用いられ得る。たとえば、プローブ先端300は、1つの切開に挿入される照明システムおよびカメラシステムに結合され得る。プローブ先端300は、照明システムおよびカメラシステムを収容する腹腔鏡管内または上に配置されるように構成され得る。本実施形態では、プローブ先端300はさまざまな装置によって組織オキシメトリ装置100に結合され得る。たとえば、プローブ先端300は延長導波管によって光学的に結合され得、延長導波管は次にハウジング105内の光源、光検出器、または両方に光学的に結合される。別の例によると、プローブ先端300は、延長電気配線またはトレース等によって収集モジュール115に電気的に結合され得る。カメラシステムは、患者の体の外部に配置されるビデオカメラに接続される伸縮式ロッドレンズシステムを含み得るか、または腹腔鏡処置時に患者内に位置決めされるデジタル腹腔鏡の端にミニチュアデジタルビデオカメラが配置されるデジタル腹腔鏡を含み得る。
【0227】
発明の本説明は例示および説明の目的で提示された。これは、網羅的であること、または発明を説明された厳密な形態に限定することを意図しておらず、上記の教示に鑑みて多くの修正および変形が可能である。実施形態は、発明の原理およびその実際的な用途を最もよく説明するために選択および説明された。この説明によって、当業者は、発明を特定の使用に好適であるようにさまざま実施形態で、さまざま修正を加えて最適に利用および実践することができるであろう。発明の範囲は以下の請求項によって定義される。