特許第6306009号(P6306009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306009
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】結晶性構造化剤を作製するプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/00 20060101AFI20180326BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20180326BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20180326BHJP
   C11D 1/02 20060101ALI20180326BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20180326BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20180326BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20180326BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   B01F17/00
   B01J13/00 A
   C09K3/00 103H
   C11D1/02
   C11D1/22
   C11D1/29
   C11D3/20
   C11D17/08
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-527556(P2015-527556)
(86)(22)【出願日】2013年8月14日
(65)【公表番号】特表2015-533624(P2015-533624A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】US2013054839
(87)【国際公開番号】WO2014028559
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2015年2月13日
【審判番号】不服2017-4194(P2017-4194/J1)
【審判請求日】2017年3月23日
(31)【優先権主張番号】12180567.5
(32)【優先日】2012年8月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】ニールス、ド、メアレール
(72)【発明者】
【氏名】ワルター、アウグスト、マリア、ブロエク
(72)【発明者】
【氏名】リンダ、ペレンス
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 阪▲崎▼ 裕美
【審判官】 天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−534800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F17/00-17/56
B01J13/00
C09K 3/00
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化されていない水中油型エマルジョンであって、
−溶融水素化ヒマシ油の液滴であって、2.5μm〜3μmの平均直径を有する、液滴と、
−アニオン性界面活性剤と、
を備え、
前記平均直径は当該エマルジョンが85℃〜95℃の温度であるときに測定される、水中油型エマルジョン。
【請求項2】
前記アニオン性界面活性剤は、洗浄界面活性剤である、請求項1に記載の水中油型エマルジョン。
【請求項3】
前記アニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルエトキシ化サルフェート、及びこれらの混合物から選択されている、請求項1又は2に記載の水中油型エマルジョン。
【請求項4】
液体洗浄組成物の構造化剤としての請求項1〜3のいずれか一項に記載の水中油型エマルジョンを冷却することにより形成された結晶性構造化剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄組成物中で用いるための水素化ヒマシ油を含む結晶性構造化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性構造化剤は、多くの場合、安定剤及び増粘剤として、又は言い換えると構造化剤として液体洗浄組成物中で使用される。そのようなシステムは、欧州特許第1328616A1号に記載されている。液体洗浄組成物等の液体組成物に添加されると、これらの構造化剤は、組成成分が合体及び/又は相分裂する傾向を減少させる化学ネットワークを提供する。したがって、構造化剤は、液体組成物に所望の粘度及び改善された貯蔵安定性を提供する。
【0003】
多くの場合、結晶性構造化剤は、水素化ヒマシ油由来である。この結晶性構造化剤を作製するプロセスは、高温で水素化ヒマシ油の水中油型エマルジョンを作製する工程と、次いでこれを冷却して最終結晶性構造化剤を産生する工程とを備える。その後、この最終結晶性構造化剤は、液体洗浄組成物の所望の粘度を達成するのに必要とされる量で液体洗浄組成物に添加される。
【0004】
しかしながら、サンプル間で一貫した粘度を達成するために液体洗浄組成物の同一のサンプルに添加されなければならない結晶性構造化剤の量に依然としてかなりのばらつきがある。そのようなばらつきは、結晶性構造化剤の単一サンプルの一定分量が、液体洗浄組成物の単一サンプルの一定分量に添加される(すなわち、構造化剤の一定分量が同一であり、液体洗浄組成物の一定分量も同一である)場合にも明らかである。
【0005】
そのようなばらつきは、製造プロセスの絶え間ない再調整及び修正が要求されることを意味する。これは、不便であり、多大な時間を必要とし、費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1328616A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、所望のレオロジー特性を達成するために液体洗浄組成物に添加されなければならない量のばらつきの減少を示す結晶性構造化剤が当技術分野で必要とされている。そのような結晶性構造化剤を作製するための便利なプロセスも当技術分野で必要とされている。
【0008】
驚くべきことに、本発明の水中油型エマルジョン及びプロセスがこれを達成することが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、
−溶融水素化ヒマシ油の液滴であって、0.1μm〜4μmの平均直径を有する、液滴と、
−アニオン性界面活性剤と、
を備える水中油型エマルジョンであり、平均直径は、このエマルジョンが85℃〜95℃の温度であるときに測定される。
【0010】
本発明の第2の態様は、液体洗浄組成物中で用いるための結晶性構造化剤を作製するためのプロセスであり、このプロセスは、
a)第1の態様に従う水素化ヒマシ油エマルジョンを含む水中油型エマルジョンを調製する工程と、
b)エマルジョンを冷却して、液体洗浄組成物中で用いるための結晶性構造化剤を形成する工程と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の態様は、溶融水素化ヒマシ油の液滴であって、0.1μm〜4μmの平均直径を有する、液滴を備える水中油型エマルジョンであり、平均直径は、エマルジョンが85℃〜95℃の温度であるときに測定される。このエマルジョンは、アニオン性界面活性剤も備える。
【0012】
水中油型エマルジョンとは、本明細書において、2つ以上の非混合性液体の混合物を意味する。本発明において、このエマルジョンは、水性媒体中での溶融水素化ヒマシ油の液滴を特徴とする。水中油型エマルジョンは、微量の結晶性ヒマシ油も備え得る。
【0013】
液滴は、0.1μm〜4μm、又は更には0.5μm〜4μm、又は更には1μm〜3.5μm、又は更には2μm〜3.5μm、又は更には2.5μm〜3μmの平均直径を有してもよく、エマルジョンは、85℃〜95℃、又は更には87.5℃〜92.5℃、又は更には90℃の温度で測定される。85℃〜95℃の温度で平均直径を測定するための方法が以下に記載される。
【0014】
驚くべきことに、水中油型水素化ヒマシ油エマルジョンのこの特定の平均直径液滴寸法が、所望のレオロジーを達成するために添加されなければならない最終結晶性構造化剤の量のばらつきの減少をもたらすことが見出された。理論によって束縛されることなく、産生される結晶性構造化剤は、様々な結晶形状及び寸法を有する。結晶形状及び寸法のばらつきが結晶性構造化剤のレオロジー付与能力に影響を及ぼすと考えられている。冷却工程中、溶融水素化ヒマシワックスが結晶化する。このプロセスは、第一に結晶表面の形成を含み、その後に油滴から水相を通って結晶表面上へのモノマーの輸送が続く。本発明に従う油滴の寸法が小さいため、この油滴がより高い溶解度を有すると考えられている。したがって、これらは、油滴から水相内(それらが前述の水相中でより可溶性であるため)、その後、結晶表面へのモノマー輸送に対する抵抗の低減をもたらし、産生される結晶の寸法及び形状分布がより小さくなる。驚くべきことに、より大きい平均直径を有する液滴が、異なるサンプル(異なる時点で産生されたが、同一の処理条件並びに成分及び濃度で産生されたもの)間で、結晶性構造化剤に存在する最終結晶の種類及び寸法分布により大きなばらつきをもたらした。単なる仮説例として、液体洗浄組成物の所望の粘度を達成するために、全ての製造条件並びに組成成分及び濃度が同一に保たれるが、同一の所望の粘度を達成するために、ある日産生された5gの結晶性構造化剤を添加する必要がある場合があり、次の日に製造された10gの結晶性構造化剤を添加する必要がある場合がある。
【0015】
産生された結晶性構造化剤に存在する結晶形状及び寸法のばらつきのこの減少は、結晶性構造化剤の異なるバッチ間により高い一貫性をもたらす。産生された結晶の種類及び寸法は、冷却速度及び温度の影響も受ける。産生された形状及び寸法にかかわらず、エマルジョンが0.1μm〜4μmの平均直径を有するとき、驚くべきことに、異なるサンプル間で結晶性構造化剤に存在する異なる形状及び寸法のばらつきが減少することが見出された。これは、所望の粘度を達成するために液体洗浄組成物に添加する必要がある、異なる時点で産生された結晶性構造化剤の量の一貫性を増加させる。
【0016】
平均直径は、液体中の液滴寸法の一般的な周知の測定値である。これは、全液滴集団の平均液滴寸法をもたらす。当技術分野で既知の任意の好適な測定手段を用いて、平均直径を測定することができる。光学顕微鏡法及び/又は画像分析を用いて、平均直径を測定することができる。一実施形態において、平均直径は、光学顕微鏡法を用いて測定される。別の実施形態において、平均直径は、画像分析を用いて測定される。0.25μm以下の液滴寸法で、静的又は動的光散乱法等の光散乱法が用いられる。当業者であれば、標準の実験室設備を用いた平均直径の計算方法を認識するであろう。
【0017】
当業者であれば、市販の設備を用いた85℃〜95℃の温度での平均直径の測定方法を認識するであろう。Formulaction(France)から市販されているTurbiscan LABexpertを用いて、本発明のサンプルの平均直径を測定した。サンプルの冷却を阻止するために、Turbiscanの測定セルを少なくとも60℃に平衡化した。その後、サンプルを測定セルに設置し、次いで、Formulaction(France)から市販されている「Turbiscan実験室エキスパートソフトウェア」を用いて平均直径を計算した。以下のパラメーターをTurbiscan計器に入力した:n(粒子屈折率)=1,477;n(流体屈折率)=1,368;分散相体積=4%。Turbiscan計器は、多重光散乱(MLS)を使用し、光子輸送平均自由行程を測定し、これは、直径/体積分率の比率に直接関連する。(Bru.P,Brunel L.,Buron H,Cayre I.,Ducarre X.,Fraux A.,Mengual O.,Meunier G.,de Sainte Marie A.,(2004)Particle size and rapid stability analyses of concentrated dispersions:Use of multiple light scattering,ACS Symposium series 881ed T.Provder and J.Texter,45〜60。)
【0018】
ヒマシ油は、主にリシノール酸を含むが、オレイン酸及びリノール酸も含むトリグリセリド植物油である。水素化の際、これはヒマシワックスになるが、さもなければ水素化ヒマシ油として既知である。水素化ヒマシ油は、ヒマシ油の少なくとも85重量%のリシノール酸を含み得る。好ましくは、水素化ヒマシ油は、グリセリルトリス−12−ヒドロキシステアレート(CAS139−44−6)を含む。好ましい実施形態において、水素化ヒマシ油は、水素化ヒマシ油の少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも95重量%のグリセリルトリス−12−ヒドロキシステアレートを含む。しかしながら、水素化ヒマシ油組成物は、他の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖エステルも含み得る。好ましい実施形態において、本発明の水素化ヒマシ油は、45℃〜95℃の範囲の融点を有する。当業者であれば、その範囲内の融点を有する水素化ヒマシ油組成物の調製方法を認識するであろう。同様に本発明に従って、水素化ヒマシ油は、低い残留不飽和度を有してもよく、エトキシ化が融点温度を望ましくない程度まで低下させるため、エトキシ化されない。低い残留不飽和度とは、本明細書において、20以下、好ましくは10以下、より好ましくは3以下のヨウ素価を意味する。当業者であれば、一般に既知の技法を用いたヨウ素価の測定方法を認識するであろう。
【0019】
本発明のエマルジョンは、界面活性剤を含む。界面活性剤は、一例において、乳化剤の役割を果たす。好ましくは、界面活性剤は、洗浄界面活性剤、すなわち、硬表面又は織物に洗浄効果を提供する界面活性剤である。例えば、洗浄界面活性剤は、表面及び/又は織物からの油染み又は泥/粘土染み除去を提供し得る。この界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性、及び両性イオン性界面活性剤を含む群から選択され得る。任意の界面活性剤を使用することもできるが、好ましい実施形態において、この界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。驚くべきことに、アニオン性界面活性剤がエマルジョン中で用いられる場合、非イオン性、カチオン性、又は両性イオン性界面活性剤が用いられる場合と比較して、所望の粘度を達成するのにより少ない最終結晶性構造化剤しか液体洗浄組成物に添加される必要がないことが見出された。
【0020】
好ましい実施形態において、界面活性剤は、アニオン性洗浄界面活性剤である。好ましくは、アニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルエトキシ化サルフェート、及びこれらの混合物から選択される。
【0021】
好適なアニオン性洗浄界面活性剤としては、サルフェート及びスルホネート洗浄界面活性剤が挙げられる。
【0022】
好ましいスルホネート洗浄界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホネート、好ましくはC10〜13アルキルベンゼンスルホネートが挙げられる。好適なアルキルベンゼンスルホネート(LAS)は、好ましくは市販の直鎖アルキルベンゼン(LAB)をスルホン化することによって得られ、好適なLABには、低2−フェニルLAB、例えば、Isochem(登録商標)という商品名でSasolから提供されるもの、又はPetrelab(登録商標)という商品名でPetresaから提供されるものが含まれ、他の好適なLABには、高2−フェニルLAB、例えば、Hyblene(登録商標)という商品名でSasolから提供されるものが含まれる。好適なアニオン性洗浄界面活性剤は、DETAL触媒プロセスによって得られるアルキルベンゼンスルホネートであるが、HF等の他の合成経路も好適であり得る。
【0023】
好ましいサルフェート洗浄界面活性剤には、アルキルサルフェート、好ましくはC8〜18アルキルサルフェート、又は主にC12アルキルサルフェートが含まれる。
【0024】
他の好ましいサルフェート洗浄界面活性剤は、アルキルアルコキシル化サルフェート、好ましくはアルキルエトキシ化サルフェート、好ましくはC8〜18アルキルアルコキシル化サルフェート、好ましくはC8〜18アルキルエトキシ化サルフェートであり、好ましくはアルキルアルコキシル化サルフェートは、0.5〜20、好ましくは0.5〜10の平均アルコキシル化度を有し、好ましくはアルキルアルコキシル化サルフェートは、0.5〜10、好ましくは0.5〜7、より好ましくは0.5〜5、及び最も好ましくは0.5〜3の平均エトキシル化度を有するC8〜18アルキルエトキシ化サルフェートである。
【0025】
アルキルサルフェート、アルキルアルコキシル化サルフェート及びアルキルベンゼンスルホネートは、直鎖又は分枝鎖であってもよく、置換又は非置換であってもよい。
【0026】
本発明に従う水素化ヒマシ油を含む結晶性構造化剤は、液体洗浄組成物中で構造化剤として使用される。そのような液体洗浄組成物は、洗濯洗剤、前処理洗剤、及び家庭用ケア組成物等の織物用ケア組成物を含み得る。この液体組成物は、織物又は硬表面用の洗剤組成物であり得る。この液体組成物は、液体、ゲル、又はペーストの形態であり得る。この液体組成物は、水溶性又は不溶性フィルムに封入される単位用量の形態でもあり得る。
【0027】
本発明は、結晶性構造化剤を作製するためのプロセスも企図する。
【0028】
このプロセスは、第一に、溶融水素化ヒマシ油の液滴であって、0.1〜4μm、又は更には1μm〜3.5μm、又は更には2μm〜3.5μm、又は更には2.5μm〜3μmの平均直径を有する、液滴と、アニオン性界面活性剤とを備える水中油型エマルジョンを調製する工程を備え、エマルジョンが85〜95℃、又は更には87.5℃〜92.5℃の温度、又は更には90℃の温度であるときに、平均直径が測定され、その後、エマルジョンを冷却して結晶性構造化剤を作製する第2の工程が続く。
【0029】
例示の方法において、本発明の水中油型エマルジョンは、溶融水素化ヒマシ油を含む第1の液体と水及び界面活性剤を含む第2の液体を調製し、これらを混合デバイスに通すことによって作製される。
【0030】
好ましくは、第1の液体は、70℃以上、より好ましくは70℃〜150℃、最も好ましくは75℃〜120℃の温度である。この温度範囲は、水素化ヒマシ油が溶融されて水中油型エマルジョンが効率的に作製されることを確実にするのに最適である。しかしながら、温度が高すぎると、水素化ヒマシ油の変色につながり、水素化ヒマシ油を沸騰させる可能性があり、最終的に水素化ヒマシ油の分解をもたらす。
【0031】
好ましくは、第2の液体組成物は、第2の組成物の50重量%〜99重量%、より好ましくは60重量%〜95重量%、最も好ましくは70重量%〜90重量%の水を含む。第2の液体組成物は、界面活性剤も含む。好ましい実施形態において、第2の組成物の少なくとも1重量%、好ましくは第2の組成物の1〜49重量%は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性イオン性界面活性剤、又はこれらの混合物を含む群から選択され得る。好ましくは、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、より好ましくはアルキルベンゼンスルホネート、最も好ましくは直鎖アルキルベンゼンスルホネートである。産生されたエマルジョンが主に水連続相に存在するが、主に界面活性剤連続相には存在しない油滴となるような濃度で、界面活性剤が第2の液体組成物に存在することを理解されたい。特に結晶性構造化剤が洗濯洗剤組成物に添加される場合、織物上に沈殿及び沈着し得るため、結晶性構造化剤中の高濃度の界面活性剤は望ましくない。これは、織物上に可視的な残留物を形成し、消費者にとって望ましくない。
【0032】
第2の組成物は、中和剤を含み得る。「中和剤」とは、本明細書において、酸性溶液を中和するために用いられる物質を意味する。好ましくは、中和剤は、水酸化ナトリウム、C〜Cエタノールアミン、又はこれらの混合物を含む群から選択される。好ましい中和剤は、C〜Cエタノールアミン、より好ましくはモノエタノールアミンである。
【0033】
第2の組成物は、防腐剤を含み得る。好ましくは、この防腐剤は、抗菌剤である。第2の液体は、Thor Chemicals(Cheshire,UK)から市販されている「Acticide」シリーズの抗菌剤から選択される抗菌剤を含み得る。好ましくは、抗菌剤は、Thor Chemicals(Cheshire,UK)から市販されているActicide MBSである。
【0034】
水素化ヒマシ油と水との比率は、1:100〜1:10であり得る。言い換えると、水素化ヒマシ油と水との比率は、2つの液体流が本発明の混合デバイスに入るとき、1:100〜1:10であり得る。
【0035】
本発明の水中油型エマルジョンは、任意の好適な混合デバイスを用いて調製され得る。この混合デバイスは、機械的エネルギーを用いて液体をインラインで混合する。好適な混合デバイスには、静的及び動的ミキサーが含まれ得る。動的ミキサーデバイスの例には、ホモジナイザー、ロータステータ、又は高剪断ミキサーがある。混合デバイスは、必要なエネルギー散逸速度を提供するために直列又は並列に配置された複数の混合デバイスであり得る。
【0036】
一実施形態において、水中油型エマルジョンは、第1及び第2の液体をマイクロチャネル混合デバイスに通すことによって調製され得る。好ましくは、マイクロチャネル混合デバイスは、分割再結合混合デバイス又はスタガードヘリンボンミキサーを含む群から選択される。好ましい実施形態において、マイクロチャネル混合デバイスは、分割再結合混合デバイスである。マイクロチャネル混合デバイスは、静的ミキサーの類である。
【0037】
好ましくは、混合デバイスは、水中油型エマルジョンを形成するために0.1〜10,000kW/kgのエネルギー散逸速度を有する。当業者であれば、エネルギー散逸速度の測定方法を認識するであろう。簡潔に、静的乳化デバイスを備える連続プロセスにおいて、エネルギー散逸速度は、乳化デバイスにおける圧力降下を測定し、この値に流速を乗じ、その後、デバイスのアクティブ体積(active volume)で除することによって計算される。バッチタンク又は高剪断ミキサー等の外部電源を介して乳化が行われる場合、エネルギー散逸は、以下の式1を用いて計算される(Kowalski,A.J.,2009.,Power consumption of in−line rotor−stator devices.Chem.Eng.Proc.48,581.);
=P+P+P 式1
式中、Pは、液体に対してロータを回転させるのに必要とされる電力であり、Pは、液体の流れからの更なる所要電力であり、Pは、例えば、軸受、振動、雑音等による電力損失である。
【0038】
好ましくは、第1の液体及び第2の液体は、70℃〜150℃、好ましくは75℃〜120℃の温度で混合デバイスに通す。この温度範囲は、水素化ヒマシ油が溶融されて水中油型エマルジョンが効率的に作製されることを確実にするのに最適である。しかしながら、温度が高すぎると、水素化ヒマシ油の変色につながり、水素化ヒマシ油を沸騰させる可能性があり、最終的に水素化ヒマシ油の分解をもたらす。好ましい実施形態において、第1の液体流及び第2の液体流は、82℃〜99℃の温度で混合デバイスに通す。これは、水素化ヒマシ油を沸騰させることなくその溶融を確実にするのに最も最適である。好ましくは、第1の液体流及び第2の液体流は、混合デバイスを通過するとき、82℃〜99℃の温度に保たれる。
【0039】
理論によって束縛されることなく、本発明のプロセスを用いて作製される本発明の水中油型エマルジョンが、後の工程において結晶成長の効率を増加させると考えられている。
【0040】
第2の工程において、水中油型エマルジョンは冷却されて、結晶性構造化剤を形成する。好ましくは、結晶性構造化剤は、75℃以下、より好ましくは45℃以下、最も好ましくは35℃以下の温度で収集される。水中油型エマルジョンは冷却されて、(水相中の分散物として)結晶性構造化剤を形成し得る。その後、この結晶性構造化剤又は水性分散物は、液体洗浄組成物に添加され得る。あるいは、水中油型エマルジョンは、82℃〜99℃の温度で混合デバイスを出るとき、液体洗浄組成物に直接添加され得る。この実施形態において、結晶化プロセスは、水中油型エマルジョンの冷却時に液体洗浄組成物自体で生じる。
【0041】
水中油型エマルジョンは、任意にそれを熱交換デバイスに通すことによって冷却され得る。好ましくは、熱交換デバイスは、プレート&フレーム熱交換器及びシェル&チューブ熱交換器を含む群から選択される。
【0042】
任意に、水中油型エマルジョンは、2つ以上の熱交換デバイスを通過し得る。この場合において、第2及びその後の熱交換デバイスは、第1の熱交換器に対して直列に配置される。熱交換デバイスのそのような配置は、水中油型エマルジョンの冷却プロファイルを制御するのに好ましい場合がある。異なる冷却プロファイルは、異なる結晶寸法及び形状の産生をもたらす。
【0043】
このプロセスは、連続プロセスであり得る。連続性であるため、運転間のダウンタイムが短縮され、より費用及び時間効率の良いプロセスをもたらす。
【0044】
「バッチプロセス」とは、本明細書において、プロセスが別個の異なる工程を経ることを意味する。装置を通る産物の流れは、様々な段階の変形が完了したときに中断される(すなわち、材料の不連続流)。
【0045】
「連続プロセス」とは、本明細書において、装置を通る材料の連続流を意味する。
【0046】
理論によって束縛されることなく、バッチプロセスと比較して、連続プロセスの使用が、水中油型エマルジョン中の液滴寸法の制御の改善を提供し、ひいては0.1μm〜4μmの平均直径を有する液滴のより効率的な産生をもたらすと考えられている。水中油型エマルジョンのバッチ産生は、概して、バッチタンク内で混合される液体内で生じる混合の程度の固有のばらつきのため、産生された液滴寸法のより大きなばらつきをもたらす。例えば、バッチタンク内の混合パドルの配置に応じて、これは、より低速で移動する液体の帯域(それ故に混合程度が低く、より大きい液滴をもたらす)と、より高速に移動する液体の帯域(それ故に混合程度が高く、より小さい液滴をもたらす)をもたらす。したがって、これは、液滴寸法に大きなばらつきをもたらす。当業者であれば、連続プロセスを可能にするのに適切な混合デバイスの選択方法を認識するであろう。更に、連続プロセスは、水中油型エマルジョンをより高速に冷却工程に移すことを可能にする。冷却プロファイルの制御が要求される場合、連続プロセスは、冷却工程に移す前にバッチタンク内で生じ得る早期冷却の減少を可能にする。
【実施例】
【0047】
従来のバッチプロセスを用いて作製した水素化ヒマシ油を含む結晶性ワックスエステルのばらつきと、本発明のプロセスを用いて作製した同一の産物のばらつきを比較した。
【0048】
従来のバッチプロセスを用いて作製した水素化ヒマシ油を含む結晶性ワックスエステルの3つの別個の6350.3キログラム(7トン)バッチを調製した。全てのバッチを同一のユニットで同日に調製し、全てを同一の水素化ヒマシ油で産生した。第1及び第2のバッチで作製されたエマルジョンからサンプルを採取し、上述の方法を用いて液滴の平均直径寸法を測定した。第1のサンプルの平均直径は8.5μmであり、第2のサンプルは10.5μmであった。これら3つのバッチのばらつきを決定するために、100gのサンプルを900gの基剤プレミックス(16.7w/w%のHLAS、3.34w/w%のモノエタノールアミン、及び79.96w/w%の水)で希釈し、Anton Paar MCR 302レオメーター(Anton Paar GmbH−AUSTRIA)上の平行プレート固定具を用いて、サンプル/基剤プレミックスのそれぞれのレオロジー応答を測定した。このプレートの半径は、40mmであった。用いた間隙離隔距離は、0.750mmであった。誤差が0.1℃以内であるPeltierプレートシステムを介して温度制御を提供し、温度を20℃で維持する。全ての実験において、流体を2つのプレート間に慎重に充填して気泡を避け、過剰な流体を除去して滑らかな円筒形接触面を確保した。サンプルを充填し、上方のプレートを指定の間隙まで下げた後、サンプルを周波数1Hz及び振幅1mNmで120秒の振動に供して、指定の温度で平衡化する。第2の工程において、160の対数ステップでサンプルを0.1〜30秒−1の剪断速度に供した。それぞれの剪断工程を1.875秒間維持した。以下の表において、剪断20.22秒−1時点の見掛けの粘度が報告される。このようにして、結晶性構造化剤を用いて、基剤プレミックスの粘度を高くした。
【0049】
Ehrfeld微小分割再結合リアクターを用いて、本発明に従う連続プロセスにおいて、水素化ヒマシ油を含む結晶性ワックスエステルを調製した。冷却工程を50℃の温度で行い、滞留時間は403秒であり、使用した熱交換デバイスは1.7mmのチャネル直径を有した。エマルジョンの2つのサンプルを収集し、第1のサンプルの液滴は2.8μmの平均直径寸法を有し、第2のサンプルの液滴は2.7μmの平均直径寸法を有した。2つの最終産物サンプルを異なる時点で採取した。この場合も先と同様に、20.22秒−1の剪断速度で、上で詳述したAnton paar MCRを用いて、900gの基剤プレミックスで希釈した100gのサンプルの粘度を決定した。
【0050】
これら両方の産生方法において、流体及び第2の液体を同一の方式で調製し、同一の温度で混合デバイスに通し、同一の温度で冷却工程に通した。
【0051】
結果が表1に示される。
【0052】
【表1】
【0053】
ばらつき係数は、平均値で除した標準偏差である。表1で見られるように、100gの異なる結晶性構造化剤を900gの基剤プレミックス中に希釈し、この混合物の粘度を測定したとき、ばらつき係数が10.52であった。しかしながら、本発明に従うエマルジョンから本発明のプロセスを用いて作製したサンプルでこの試験を繰り返したとき、ばらつき係数はたった0.55であった。したがって、本発明のプロセスを用いて作製した結晶性構造化剤のサンプル間のばらつきがより小さく、故に、異なる時点で作製した同一の量の構造化剤を用いて粘度のより高い一貫性が達成された。
【0054】
本明細書に開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に断らないかぎり、そのような寸法のそれぞれは、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。