(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記IVA族粒子が、リチウムイオン電池におけるアノードの一部、光起電性(PV)薄膜の一部、バイオセンサーの一部、エネルギー貯蔵デバイスの一部、熱電薄膜の一部または半導体デバイスの一部である、請求項1から3のいずれか一項に記載のIVA族粒子。
前記非誘電層が、ベンゼン、トルエン、カテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシアントラセン、2,3,6,7−テトラヒドロキシアントラセン、9,10−ジブロモアントラセン、またはこれらの組合せに由来する、請求項1に記載のIVA族粒子。
前記非誘電層が、ベンゼン、トルエン、カテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシアントラセン、2,3,6,7−テトラヒドロキシアントラセン、9,10−ジブロモアントラセン、またはこれらの組合せに由来する、請求項7に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ミクロンおよびサブミクロンサイズのパッシベーションされているIVA族粒子、該IVA族粒子を調製する方法および該IVA族粒子を使用する方法が、本明細書において開示される。さらに、IVA族粒子を含むインクまたはペーストなどの、IVA族粒子を含む組成物も開示される。さらに、IVA族粒子を含むアノードおよび電池も開示される。
【0040】
本明細書において開示されている、IVA族粒子、前記粒子の調製方法、および前記粒子の使用方法は、現在の技術および粒子を越えるいくつかの利点をもたらす。1つの利点として、IVA族粒子は、容易に入手可能な出発原料から、効率的および経済的に生成することができる。IV族粒子は、安価な工業的工程において、大規模で調製することができ、商業化することができる。例えば、IVA族粒子は、熱または他の高エネルギー工程を使用することなく作製して官能化することができ、これにより、製造コストが低下する。本明細書において開示されている方法により、ナノサイズのIVA族粒子を製造する工程は、プラズマ強化化学蒸着法(PECVD)、ホットワイヤ化学蒸着法(HWCVD)およびイオンビーム蒸着法(IBD)などの「アトムアップ(atom up)」法からIVA族ナノ粒子を製造するよりも、かなり経済的である。
【0041】
サブミクロンのIVA族粒子を製造するためのフィードストックの入手は、金属グレードのインゴットから様々な精製段階にあるインゴッドに由来する、多くのシリコン源およびゲルマニウム源があるので、豊富で経済的である。シリコンに関すると、バルク材料は、アモルファスから多結晶および結晶までの範囲に及ぶ。純度は、約95%純度から99.9999%純度までの範囲に及ぶ。シリコンおよびゲルマニウムは、n型(BまたはAl)またはp型(N、PまたはAs)としての半導体特性を付与する、添加ドーパントを含むものが入手可能である。精製結晶および多結晶バルク材料のなかで、特定の抵抗率を有するインゴット由来のウェハが、半導体マイクロエレクトロニクス製造および太陽光起電力セル製造に使用するのに入手可能である。ウェハ製造およびスクラップからの断片、または不良ウェハも、リサイクル材料価格で入手可能である。
【0042】
別の利点として、本明細書において開示されているIVA族粒子を、空気および水分を厳密に排除することなく、取り扱うおよび保管することができる点は、特にデバイス製造において、紛れもない利点である。酸素および水分を排除するよう厳密に制御しながら、半導体薄膜がインシチュ製造される大部分の半導体デバイスとは異なり、本明細書において開示されているサブミクロンのIVA族粒子は、デバイスと個別に製造することができ、最大数ヶ月間、分解することなく、乾燥粉末形態で保管することができる。
【0043】
したがって、本明細書において開示されている方法により、特に熱、焼成、環境的に制御されたクリーンルーム、および環境的に優しくないエッチングが必要と思われる任意の基板/担体上、ならびに加熱工程などに耐えると思われる基板上に、任意の施用を行うためのIVA族材料の官能化が可能になる。既存の方法は、材料と一緒に結合させるため、および基板または担体に結合させるための、現状の前記熱方法およびクリーンルームに基づく方法を支える施用においてしか使用することができず、または基板上にしか使用することができない。
【0044】
別の利点として、本明細書において開示されているIVA族粒子および方法は、当技術分野における既存の課題を克服するような方法で、技術的に応用することができる。低エネルギーの反応により、パッシベーションしたサブミクロンの粒子から周囲媒体へと正式な共有結合を形成する能力により、この粒子から周囲媒体への電荷移動度度を最適にした材料の形成が可能になる。こうして、IVA族粒子は、リチウムイオン電池および光起電力技術における応用性を有する。例えば、IVA族粒子から製造されたインクは、導電性基板に施用されて、商業的用途に適した、場合によって現在の利用可能な技術に勝る、充電/放電容量、充電容量の劣化、および充電速度を有する、完全機能性リチウムイオン電池を作製することができる。
【0045】
IVA族粒子は多孔質共有結合性骨格に取り込まれて、高い電荷移動度を有する高容量アノードとして機能する、リチウムイオン電池のアノードにおいて使用するためのコンポジットを提供することができる。このコンポジットは最適な多孔性をもたらし、すべての方向にイオンが流れるのを可能にし、これにより、熱発生をもたらす恐れがある内部抵抗を低下させることができる。このコンポジットは、アノードにおいてリチウムが必要とする空間要件を受け入れ、シリコンをベースとする公知のコンポジットと比較すると、機械的な破壊に耐性を示すことができる。このコンポジットはまた、リチウムイオン(Li
+)が還元されてリチウム金属(Li
0)になる部位に出入りする電荷移動のため、およびLi
0原子が酸化されてLi
+になる逆の工程のための導電路(conduit)も提供することができる。容易な電子移動は、局所的な電位の結果として溶媒分解から形成すると考えられている、固体電解質界面(SEI)薄膜の形成を抑制する点でもやはり有益となり得る。効率的に電荷を導くコンポジットは、再充電速度の向上、すなわち電池を再充電するために必要な時間の減少を実現することができる。
【0046】
1.用語の定義
特に定義されない限り、本明細書において使用される技術的および科学的用語はすべて、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含めた本明細書に従う。好ましい方法および材料は、以下に記載されているが、本明細書に記載されているものと類似または均等な方法および材料が、本発明の実施または試験において使用することができる。本明細書において言及されているすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参照は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書において開示されている材料、方法および例は、単なる例示であり、限定を意図するものではない。
【0047】
本明細書および添付されている特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「および(and)」、および「the」は、文脈が特に明白に示さない限り、複数の参照物を含む。用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有している(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含有する(contain(s))」、およびこれらの変化形は、本明細書で使用する場合、追加的な行為または構造の可能性を排除しない、限定のない移行句、用語または単語であるものと意図される。本開示はさらに、明示的に記載されているか否かに関わらず、他の実施形態である「含んでいる(comprising)」、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」、本明細書において提示されている実施形態または要素も考慮している。
【0048】
2.官能化IVA族粒子
粒子の少なくとも一部を覆う材料の少なくとも1つの層によりパッシベーションされているIVA族粒子が、本明細書において開示される。この粒子は、少なくとも1つのIVA族元素(例えば、シリコン、ゲルマニウムまたはスズ)を含む。材料の層は、炭化水素などの材料が共有結合している非誘電層とすることができる。パッシベーションされているIVA族粒子はまた、「IVA族粒子」、「官能化IVA族粒子」、「表面改質IVA族粒子」またはこれらの派生語として、本明細書において呼ばれることもある。
【0049】
表面改質IVA族粒子は、1種以上の追加成分と混合されて、特定用途に適した組成物を提供することができる。例えば、表面改質IVA族粒子は、導電性粘着添加剤、ドーパント添加剤、他の追加の成分またはこれらの組合せ物と混合され得る。
【0050】
図2は、パッシベーションされているIVA族粒子の簡略化した図を示している。IVA族粒子は正方形として示されており、この正方形は、立方体の粒子を表すよう意図されているが、この粒子は、不規則な形状を有していてもよく、また幅広いサイズを有していてもよい。黒色の輪郭線の粒子1は、ベンゼンによりパッシベーションされている粒子を表しており、酸素および/または微量の偶発的な水の非存在下で、粉砕したウェハから調製することができる。粒子2は、部分的にパッシベーションされ、部分的に酸化されている(表面の推定上の酸化部分は、水色で表されている。)IVA族粒子を表す。酸化部分は不活発であり、細砕前に存在していることがあり、またはこの部分は、ミクロンまたはサブミクロンサイズのIVA族粒子に細砕している間に、酸素および/または水分が存在していることから形成され得る。粒子3は、(例えば、カテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレンまたは9,10−ジブロモアントラセンにより)表面改質された後のIVA族粒子を表している。粒子2から粒子3への改質反応は、
図3に示されている(粒子3の改質表面は、ラベンダー縞により表されている。)に示される。
図2の粒子4は、完全に表面改質されているIVA族粒子を表している。
【0051】
IVA族粒子は、ミクロンまたはサブミクロンサイズの粒子とすることができる。この粒子は、直径が25ミクロン未満、20ミクロン未満、15ミクロン未満、10ミクロン未満、5ミクロン未満、1ミクロン未満、0.5ミクロン未満、0.1ミクロン未満、または0.05ミクロン未満を有することができる。この粒子は、約0.05ミクロンから約25ミクロン、または約0.1ミクロンから約1ミクロンに及ぶ直径を有することができる。この粒子は、0.01ミクロン、0.02ミクロン、0.03ミクロン、0.04ミクロン、0.05ミクロン、0.06ミクロン、0.07ミクロン、0.08ミクロン、0.09ミクロン、0.10ミクロン、0.2ミクロン、0.3ミクロン、0.4ミクロン、0.5ミクロン、0.6ミクロン、0.7ミクロン、0.8ミクロン、0.9ミクロンまたは1ミクロンの直径を有することができる。本明細書において開示されている工程によって生成する粒子は、一定の直径からなる粒子を生成することがあり、または様々な直径からなる粒子分布を生じることがある。
【0052】
a.IVA族元素および材料
IVA族粒子は、これらの元素形態で、または幅広い範囲の不純物中で入手可能な元素シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)またはスズ(Sn)を含むことができる。不純物は、金属グレード(MG)のバルク材料において起こる天然不純物であることがあり、またはn型もしくはp型としてIVA族材料の半導体特性を付与するために、意図的に添加されたドーパントであることがある。シリコンの場合、金属グレードのバルク材料は、アモルファスから多結晶および結晶までの範囲に及ぶことができ、純度は、約95%純度から99.9999%純度までの範囲に及ぶことがある。IVA族材料をp型半導体とするドーパントは、通常、ホウ素(B)またはアルミニウム(Al)などのIIIA族元素からのものである。IVA族半導体をn型半導体とするドーパントは、通常、窒素(N)、リン(P)またはヒ素(As)などのVA族元素からのものである。金属グレードのSi中の天然不純物は、金属酸化物、金属スルフィドおよび金属ケイ化物の形態の金属元素を一般に含む。主な金属元素は、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、およびチタン(Ti)を含むが、他の元素が微量、観察され得る。
【0053】
IVA族粒子は、様々なフィードストックに由来してもよい。ある種の実施形態において、IVA族粒子は、シリコンウェハなどのウェハに由来してもよい。精製結晶および多結晶バルク材料のなかで、特定の抵抗率を有するインゴット由来のウェハが、半導体マイクロエレクトロニクス製造および太陽光起電力セル製造から入手可能である。ウェハ製造およびスクラップからの断片、または不良ウェハも、リサイクル材料価格で入手可能である。
【0054】
b.パッシベーション用材料
本明細書において開示されているIVA族粒子は、該粒子の少なくとも一部の上に、材料の少なくとも1つの層により官能化されている。この材料の層は、IVA族粒子に共有結合していてもよい。この材料の層は、炭化水素などの材料の非誘電層とすることができる。これらのパッシベーションされているIVA族粒子は、空気中において室温で酸化に対して安定なことがある。
【0055】
IVA族粒子は、「改質剤」または「改質試剤」とも呼ばれる様々な化合物によりパッシベーションされていてもよい。この化合物は、炭化水素をベースとする有機化合物などの有機化合物であってもよい。ある種の実施形態において、この化合物は、アルケン、アルキン、芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物、シクロアルケン、アルコール、グリコール、チオール、ジスルフィド、アミン、アミド、ピリジン、ピロール、フラン、チオフェン、シアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、ケトン、カルボン酸、アミノ酸およびアルデヒドからなる群から選択することができる。ある種の実施形態において、この化合物は、トルエン、ベンゼン、多環式芳香族化合物、フラーレン、メタロフラーレン、スチレン、シクロオクタテトラエン、ノルボルナジエン、一級C
2−C
18アルケン、一級C
2−C
18アルキン、飽和または不飽和脂肪酸、ペプチド、タンパク質、酵素、2,3,6,7−テトラヒドロキシアントラセン、カテコール、2,3−ヒドロキシナフタレン、9,10−ジブロモアントラセンおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択することができる。
【0056】
パッシベーションするために選択される炭化水素は、活性化の際に、他の試薬と共有結合を形成する他の官能基を有していてもよい。この特性により、共有結合性の入り組んだ網状組織を構築する際に、構造単位としてIVA族粒子を共有結合で連結するための基盤を提供する。パッシベーションのために選択される炭化水素は、サイズおよび極性が変わり得る。サイズと極性の両方が、溶解度の限度、特に溶媒によって標的となる粒子サイズの選択性に利用され得る。溶解度の限度に基づいた粒子サイズ分布の分割は、工業的規模の工程において、粒子サイズ分布を狭小化するための1つの手段である。
【0057】
本明細書において開示されている方法によって作製されるサブミクロンのIVA族粒子に関する構造および機能の可能性は無限であるが、室温または室温付近において行われる低エネルギー反応によって、機能性粒子を構築する適応性の範囲を実証する例として、以下の実施形態が示される。
【0058】
ある種の実施形態において、IVA族粒子は、トルエンによりパッシベーションされ得る。
【0059】
ある種の実施形態において、IVA族粒子は、ベンゼンによりパッシベーションされ得る。ベンゼンパッシベーションされているIVA族粒子は、さらなる改質のための安定中間体として役立つことがある。ベンゼンは、シリコン表面に可逆的に結合する数少ない有機炭化水素の1つである。したがって、ベンゼンパッシベーションされているIVA族材料は、この粒子の表面に他の官能性炭化水素を導入するための便利な安定中間体である。これは、速度論によって支配されているものと反対に、熱力学が界面化学において重要な役割を果たすという、IVA族材料の数少ない形態の1つである。
【0060】
ある種の実施形態において、IVA族粒子は、多環式芳香族炭化水素などの芳香族炭化水素によりパッシベーションされてもよい。芳香族炭化水素は、パッシベーションされている粒子表面を通過する電荷移動を実現する。パイ系の広がりがあり、この系によって電荷が移動することができる炭化水素が、ある種の実施形態において、IVA族材料表面の非誘電性パッシベーションに好ましいことがある。
【0061】
ある種の実施形態において、IVA族粒子は、カーボンナノチューブ、フラーレンまたはメタロフラーレンによりパッシベーションされていてもよい。そのような材料は、水素パッシベーションされている表面に直接、またはベンゼンパッシベーションされている表面の置換によるどちらか一方で、粒子表面に施用されてもよい。フラーレンは、電荷を分散する能力が非常に高く、マイクロエレクトロニクス用途において有用な特性を付与することができる。
【0062】
ある種の実施形態において、IVA族粒子は、スチレンによりパッシベーションされてもよい。そのような材料は、水素またはベンゼンパッシベーションされている表面に直接施用されてもよい。スチレンは、側鎖のビニル基により主に結合することが知られており、芳香族環を変化しないままにして、周囲の溶媒、すなわち電解質と自由に相互作用する、または芳香族環の置換反応により自由に改質される。フェニル環上の官能基は、周囲の骨格と共有結合を形成するための反応性前駆体として使用され得る。
【0063】
ある種の実施形態において、IVA族粒子は、シクロオクタテトラエン(COT)によりパッシベーションされてもよい。そのような材料は、水素またはベンゼンパッシベーションされている表面に施用することができ、粒子表面に正式に結合している交互の炭素原子を有する一方、この粒子表面に直接結合していない他の4個の炭素原子は、2つの平行な二重結合によって連結されており、ディールス−アルダー(Diels−Alder)型反応が可能なジエン部位を提供する。
【0064】
ある種の実施形態において、IVA族粒子は、ノルボルナジエン試薬によりパッシベーションされてもよい。そのような材料は、水素またはベンゼンパッシベーションされている表面に施用されてもよく、1つまたは両方の二重結合の結合を伴う。両方の二重結合が粒子表面と相互作用する場合、クアドリシクランに匹敵する歪み構造が生じ得る。ノルボルナジエン/クアドリシクランは、光子を捕捉する増感剤(アセトフェノン)を必要とするエネルギー貯蔵の対であることが知られている。ある種の実施形態において、シリコンまたはゲルマニウムも、増感剤として機能することができる。
【0065】
ある種の実施形態において、IVA族粒子は、6−12個の炭素鎖長を有するノルマル一級アルケンまたはアルキンによりパッシベーションされてもよい。アルケンまたはアルキンは、粒子サイズの向上または該粒子の溶解度特性を変化させるために、IVA族粒子の表面に炭化水素を結合するための反応性媒体として使用され得る。より鎖長の長いアルカンは、溶媒に対し一層大きな分子間引力を得ることができ、該粒子の溶解度が向上する。炭化水素を結合させることによってIVA族粒子のサイズを変更することにより、光ルミネセンス特性を変更することができる。
【0066】
ある種の実施形態において、IVA族粒子は、生物活性な反応性媒体によりパッシベーションされてもよい。そのような材料は、水素パッシベーションされている表面を置きかえるために使用され、光子に応答する生物マーカーを合成することができる。脂肪酸は、カルボキシレート基により、または鎖の不飽和結合の1つにより、活性表面に結合することができる。アミノ酸は水溶性であり、pHに応じて、一級アミンまたは酸末端のどちらか一方で結合することができる。同様に、ペプチド、タンパク質、酵素はすべて、IVA族ナノ粒子マーカーに連結することができる、特定の生物的機能を有する。
【0067】
ある種の実施形態において、パッシベーションされているIVA族ナノ粒子は、電荷伝導特性を有する液晶媒体と連通している電荷を伝播することが可能な多孔質骨格と連通して、存在することができる。そのような粒子は、複雑な混合物中の化学成分の相対濃度を測定する方法として、該混合物中のそれらを捕捉するためおよび選択的に隔離するために使用され得る。この測定方法は、半導体ナノ粒子により光子を捕捉して、前記ナノ粒子の光起電力特性から発生する電気インパルスを測定することによるものとすることができ、または捕捉された化学成分によって影響を受けた媒体から光子が再発光した結果としての光ルミネセンスを感知することによるものとすることができる。
【0068】
ある種の実施形態において、水素またはベンゼンパッシベーションされている表面を置きかえるために、二官能性有機鎖が使用されてもよい。例えば、2,3,6,7−テトラヒドロキシ−アントラセンは、3個の芳香族環の縮合鎖の両端に、2つのヒドロキシル基を有する。この炭化水素鎖は、共有結合性骨格を構築するために使用することができ、IVA族ナノ粒子をこの骨格に連結するために使用することができる。この鎖長構造およびこの鎖の両末端における官能基は、変わり得る。構築単位間の交差結合に使用するための官能基の一部には、以下に限定されないが、アルデヒド、カルボキシレート、エステル、ボレート、アミン、アミド、ビニル、ハライド、およびポリマー化学において使用される他の交差結合性官能基が含まれる。共有結合で連結しているポルフィリンに基づく骨格は、アモルファスシリコンよりも高く、他のいかなる公知の炭化水素コンポジットよりも高い、並外れた高い電荷(正孔伝導)移動度を有することができる。多孔質共有結合性骨格に共有結合で連結しているSiナノ粒子は、リチウムイオン電池用の高容量電極コンポジットとして役立ち得る。
図4は、2,3,6,7−テトラヒドロキシ−アントラセン基により官能化されているIVA族ナノ粒子を示している。
【0069】
ある種の実施形態において、パッシベーション用芳香族炭化水素は、IVA族粒子の反応性表面に結合している水素を置きかえるために使用され得る。芳香族炭化水素は、高い電荷移動度を促進することができ、粒子を囲む媒体中の他の平面パイ系と相互作用することができる。この実施形態は、機能性太陽光起電力(PV)セルに応用することができる。粒子上にパッシベーション層を形成する芳香族炭化水素は、粒子または周囲の媒体と共有結合を形成する官能基を有してもよく、または有していなくてもよい。例えば、トルエンは、シリコン上の活性表面に結合してこの表面を効果的にパッシベーションし、p型結晶のシリコン粒子中、電子と正孔のペアから発生する光子から電荷が移動するのを可能にする。高いK−誘電性溶媒、およびトルエンによりパッシベーションされているp型シリコン粒子とn型シリコン粒子の両方により作製された薄膜において、ダイオードの持続的な電気特性が測定された。
【0070】
ある種の実施形態において、IVA族粒子は、ベンゼン、トルエン、カテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシアントラセン、2,3,6,7−テトラヒドロキシアントラセン、9,10−ジブロモアントラセンまたはこれらの組合せ物によりパッシベーションされてもよい。用語「パッシベーションされている」とは、本明細書で使用する場合、一部または完全にパッシベーションされ得るIVA族粒子を指すものと理解すべきである。例えば、ある種の実施形態において、IVA族粒子は、ベンゼン、トルエン、カテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシアントラセン、2,3,6,7−テトラヒドロキシアントラセン、9,10−ジブロモアントラセンまたはこれらの組合せ物により、一部、パッシベーションされていてもよい。ある種の実施形態において、IVA族粒子は、ベンゼン、トルエン、カテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシアントラセン、2,3,6,7−テトラヒドロキシアントラセン、9,10−ジブロモアントラセン、またはこれらの組合せ物により完全にパッシベーションされていてもよい。
【0072】
c.パッシベーションの方法
本明細書において開示されているパッシベーションの方法は、室温または室温付近において、実施され得る。この方法により、さもなければ、熱、焼成、環境的に制御されたクリーンルームおよび環境的に優しくないエッチングが必要と思われる任意の基板/担体上、および加熱加工などに耐えると思われる基板上に、任意の施用を行うためのIVA族材料の官能化が可能になる。
【0073】
ある種の実施形態において、パッシベーションされているIVA族粒子は、第1のミクロンサイズまたはサブミクロンサイズのIVA族粒子を準備する段階、およびこの粒子をパッシベーション用の材料により処理して、パッシベーションされたIVA族粒子を得る段階により調製され得る。
【0074】
ある種の実施形態において、パッシベーションされているIVA族粒子は、第1のミクロンサイズまたはサブミクロンサイズのIVA族粒子を準備する段階、およびこの第1の粒子をある化合物(好ましくは、水素以外)により処理して、パッシベーションされたIVA族粒子を得る段階により調製され得る。ある種の実施形態において、この化合物はベンゼンであってもよい。ある種の実施形態において、この化合物は、それと1つ以上の共有結合を形成することによりIVA族粒子をパッシベーションする材料であってもよい。
【0075】
ある種の実施形態において、パッシベーションされているIVA族粒子は、ベンゼンおよび場合によって1種以上の非競合溶媒の存在下、IVA族元素(例えば、バルク結晶性シリコン(c−Si)インゴットおよび/またはシリコン粉末(325メッシュのシリコン粉末など))を含む材料に細砕を施し、サブミクロンサイズからナノサイズのベンゼンパッシベーションされたIVA族粒子(例えば、200−300nmのIVA族粒子)を準備する段階、およびこのベンゼンパッシベーションされたIVA族粒子を、場合によって非競合溶媒(例えば、トリグライム)の存在下で、パッシベーション用材料(例えば、2,3−ジヒドロキシナフタレン)により処理する段階によって調製され得る。場合によって、パッシベーションされているIVA族粒子は、1つ以上の添加剤(例えば、導電性粘着添加剤および/またはドーパント添加剤)と混合して、組成物またはコンポジットを得ることができる。
【0076】
ある種の実施形態において、パッシベーションされているIVA族粒子は、パッシベーション用材料(ベンゼンまたは水素以外)の存在下、IVA族元素(例えば、バルク結晶性シリコン(c−Si)インゴットおよび/またはシリコン粉末(325メッシュのシリコン粉末など))を含む材料に細砕を施す段階により調製され得る。この細砕は、ベンゼンおよび/または非競合溶媒(例えば、トリグライム)の使用を含み、サブミクロンサイズからナノサイズのパッシベーションされたIVA族粒子(例えば、200−300nmのIVA族粒子)を提供することができる。場合によって、パッシベーションされているIVA族粒子は、1種以上の添加剤(例えば、導電性粘着添加剤および/またはドーパント添加剤)と混合されて、組成物またはコンポジットを提供することができる。
【0077】
ある種の実施形態において、パッシベーションされているIVA族粒子は、ベンゼンおよび場合によって1種以上の非競合溶媒の存在下、IVA族元素(例えば、バルク結晶性シリコン(c−Si)インゴットおよび/またはシリコン粉末(325メッシュのシリコン粉末など))を含む材料に細砕を施し、サブミクロンサイズからナノサイズのベンゼンパッシベーションされているIVA族粒子(例えば、200−300nmのIVA族粒子)を準備する段階、このベンゼンパッシベーションされているIVA族粒子を単離する(例えば、真空下で溶媒を除去することにより)段階、このベンゼンパッシベーションされたIVA族粒子を場合によって非競合溶媒(例えば、トリグライム)の存在下、改質試剤(例えば、2,3−ジヒドロキシナフタレン)により、選択した時間(例えば、6時間)および温度(例えば、220℃)で処理する段階、およびこの改質IVA族粒子を単離する段階により調製され得る。場合によって、この改質IVA族粒子は、選択した溶媒(例えば、ジクロロメタン)中、1種以上の導電性粘着添加剤(例えば、C
60、C
70フラーレン誘導体)および/またはドーパント添加剤(例えば、C
60F
48)と混合されて、スラリーを得て、選択した期間(例えば、10分間)、超音波処理し、場合によって乾燥すると改質IVA族粒子と添加剤との組成物を得ることができる。
【0078】
ある種の実施形態において、パッシベーションされているIVA族粒子は、パッシベーション用材料(ベンゼンまたは水素以外)および場合によって1種以上の非競合溶媒および/またはベンゼンの存在下で、IVA族元素(例えば、バルク結晶性シリコン(c−Si)インゴットおよび/またはシリコン粉末(325メッシュのシリコン粉末など))を含む材料に細砕を施し、サブミクロンサイズからナノサイズのパッシベーションされたIVA族粒子(例えば、200−300nmのIVA族粒子)を準備する段階、およびこのパッシベーションされたIVA族粒子を単離する(例えば、真空下で溶媒を除去することにより)段階により調製され得る。場合によって、この改質IVA族粒子は、選択した溶媒(例えば、ジクロロメタン)中、1種以上の導電性粘着添加剤(例えば、C
60、C
70フラーレン誘導体)および/またはドーパント添加剤(例えば、C
60F
48)と混合されて、スラリーを得て、選択した期間(例えば、10分)、超音波処理し、場合によって乾燥すると改質IVA族粒子と添加剤との組成物を得ることができる。
【0079】
ある種の実施形態において、パッシベーションされているIVA族粒子は、第1のミクロンサイズまたはサブミクロンサイズのIVA族粒子を準備する段階、およびこの第1の粒子をある化合物(好ましくは、水素以外、および場合によってベンゼン以外)により処理して、パッシベーションされたIVA族粒子を得る段階により調製され得る。
【0080】
ある種の実施形態において、パッシベーションされているIVA族粒子は、第1のミクロンサイズまたはサブミクロンサイズのIVA族粒子を準備する段階、この第1の粒子をベンゼンにより処理し、ベンゼンパッシベーションされたIVA族粒子を生じさせる段階、およびこのベンゼンパッシベーションされたIVA族粒子をある化合物(好ましくは水素およびベンゼン以外)により処理し、パッシベーションされたIVA族粒子を得ることにより調製され得る。
【0081】
ある種の実施形態において、パッシベーションされているIVA族粒子は、第1のミクロンサイズまたはサブミクロンサイズのIVA族粒子を準備する段階、この第1の粒子をプロトン酸により処理し、水素パッシベーションされているIVA族粒子を得る段階、この水素パッシベーションされているIVA族粒子をある化合物(好ましくは水素以外)により処理し、パッシベーションされているIVA族粒子を得ることにより調製することができる。
【0082】
ある種の実施形態において、パッシベーションされているIVA族粒子は、第1のミクロンサイズまたはサブミクロンサイズのIVA族粒子を準備する段階、この第1の粒子をプロトン酸により処理し、水素パッシベーションされたIVA族粒子を得る段階、この水素パッシベーションされたIVA族粒子をベンゼンにより処理し、ベンゼンパッシベーションされているIVA族粒子を生じさせる段階、およびこのベンゼンパッシベーションされたIVA族粒子をある化合物(好ましくは水素以外)により処理し、パッシベーションされたIVA族粒子を得ることにより調製され得る。
【0083】
ベンゼンの単一層を溶媒以外の官能性炭化水素により置きかえることが望まれる場合において、非官能性溶媒(本明細書において、「非競合溶媒」とも呼ばれる)中、ベンゼンパッシベーションした粒子を、この中に溶解しているまたは懸濁している所望の官能性炭化水素と共に撹拌することが必要となり得る。表面改質IVA族粒子を調製する方法において有用な、例示的な非官能性溶媒には、以下に限定されないが、1,2−ジメトキシエタン(グライム、モノグライム、ジメチルグリコールまたはジメチルセロソルブとも呼ばれる)、1−メトキシ−2−(2−メトキシエトキシ)エタン(ジグライム、2−メトキシエチルエーテル、ジ(2−メトキシエチル)エーテルまたはジエチレングリコールジメチルエーテルとも呼ばれる)、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン(トリグライム、トリエチレングリコールジメチルエーテル、2,5,8,11−テトラオキサドデカン、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタンまたはジメチルトリグリコールとも呼ばれる)、2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデカン(テトラグライム、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテルまたはジメトキシテトラグリコールとも呼ばれる)、ジメトキシメタン(メチラールとも呼ばれる)、メトキシエタン(エチルメチルエーテルとも呼ばれる)、メチルtert−ブチルエーテル(MTBEとも呼ばれる)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−tert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテル、ジオキサン、フラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジフェニルエーテルが含まれる。例えば、トリグライム中に溶解しているナフタレンは、窒素雰囲気下、還流温度において撹拌すると、IVA族粒子の表面上のベンゼンを置きかえる。
【0084】
第1のミクロンサイズまたはサブミクロンサイズのIVA族粒子は、様々なフィードストックに由来され得る。ある種の実施形態において、第1の粒子は、シリコンウェハなどのウェハに由来してもよい。精製結晶および多結晶バルク材料のなかで、特定の抵抗率を有するインゴット由来のウェハが、半導体マイクロエレクトロニクス製造および太陽光起電力セル製造から入手可能である。ウェハ製造およびスクラップからの断片、または不良ウェハを、リサイクル材料価格で入手可能である。
【0085】
第1のミクロンサイズまたはサブミクロンサイズのIVA族粒子は、任意の適切な工程によるフィードストックから調製され得る。ある種の実施形態において、第1のIVA族粒子は、当技術分野で公知の細砕工程によって、バルクIVA族材料から調製され得る。バルクIVA族材料の細砕から入手可能な粒子サイズ範囲は、近年の新しいミル粉砕技術の開発に伴い、改善されてきた。高エネルギーボールミル法(HEBM)、流動床ビーズミル法およびスチームジェットミル法などのミル粉砕技法を使用し、ナノ粒子サイズの範囲のものが得られる。バルク材料は、範囲の狭い測定電気抵抗率および既知のドーパント濃度を含めた、幅広い範囲の規格で市販されており、ミル粉砕するために選択され得る。他の実施形態が考案されて、上記と同様の手順に従い、n型IVA族ウェハ、またはより高いもしくはより低い抵抗率を有するウェハ、またはバルクMG IVA族インゴット材料を使用して、ミクロンサイズからナノサイズの粒子を生成することができる。
【0086】
いかなるプロトン酸も使用して、水素パッシベーションされているIVA族粒子を得ることができる。ある種の実施形態において、プロトン酸は、強プロトン酸である。ある種の実施形態において、プロトン酸は、硝酸(HNO
3)、塩酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)、および臭化水素酸(HBr)からなる群から選択される。プロトン酸は、粒子から金属元素不純物をリーチングさせることにより、第1のIVA族粒子をパッシベーションするよう機能することができ、プロトン酸は、可溶性金属塩化物塩および水素ガス(H
2)を形成し、こうして不純物がここからリーチングして残った表面(例えば、Si表面)は、水素により弱くパッシベーションされているようになる。
【0087】
次に、水素を、選択した化合物によりIVA族粒子から置きかえることができる。ある種の実施形態において、水素パッシベーションされているIVA族粒子は、IVA族元素と強力な共有結合を形成する、ある種の官能性有機材料(例えば、炭化水素)により処理され得る。IVA族表面(例えば、Si表面)と結合を形成する官能基の例には、以下に限定されないが、アルケン、アルキン、フェニル(または任意の芳香族環式有機化合物)、アルコール、グリコール、チオール、ジスルフィド、アミン、アミド、ピリジン、ピロール、フラン、チオフェン、シアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、ケトン、カルボン酸、アミノ酸、アルデヒド、およびパイ結合または孤立電子対によって電子を共有することができる他の官能基が含まれる。
【0088】
ある種の実施形態において、上の連続した処理に従うと、不純物含有グレードのバルクSiから作製されたシリコン粒子は、不規則な形状を有していることがあるが、ゲッターさせた不純物のリーチングにより、またはミル粉砕工程中の破壊により新たに曝露したSi表面上に炭化水素の単層を含んでいる。炭化水素は、高度な電荷移動度を可能にするSi表面に対する水素結合を置きかえるために選択され、こうして、Si表面を効果的に非誘電性にすることができる。SiO
2を形成する、Si表面と酸素とのさらなる反応は、炭化水素の単層の存在によって阻止され得る。ナノ粒子表面の領域が、誘電性酸化物を全く含んでいないわけではない場合でさえも、ナノ粒子から周囲の骨格へ、またはこの反対の電荷移動が、表面に存在する非誘電性パッシベーションされている領域を経て、依然として起こり得る。
【0089】
ある種の実施形態において、パッシベーションされているIVA族粒子は、IVA族粉末を準備する段階、このIVA族粉末をサブミクロン粒子にまで小さくする段階、密封した入れ物内でこのサブミクロン粒子の少なくとも一部を、プロトン酸を含む水性液体により処理する段階、このサブミクロン粒子をその入れ物の中で水素によりパッシベーションするのに十分な時間、入れ物を震とうする段階、水性液体の少なくとも一部と水素パッシベーションしたサブミクロン粒子を分離する段階、および密閉した入れ物内で、水素パッシベーションしたサブミクロン粒子をある化合物(水素以外)により処理して、パッシベーションされたIVA族粒子を得る段階によって、調製され得る。
【0090】
IVA族粉末は、IVA族元素(例えば、シリコンウェハ)を含む材料を乳鉢および乳棒を用いて破砕し、この破砕済み材料をふるいに通すことによって供給され得る。粉末は、ボールミルを使用し、サブミクロン粒子まで小さくされ得る。例示的な実施形態において、粉末は、0.4−0.6mmのイットリウム安定化ジルコニアビーズを使用する、Netzsch Dynostarミルによって、サブミクロン粒子まで小さくされ得る。さらに加工して一層小さな平均粒子サイズ(APS)にするのは、もっと小さなビーズサイズを使用することにより達成され得る。直径0.1mmまたはもっと小さなビーズを使用することにより、100nm未満にまでAPSを小さくすることが可能になり得る。
【0091】
サブミクロン粒子をプロトン酸により処理するのは、撹拌子またはセラミック製ボールなどの震とう装置の存在下で実施され得る。粒子を水素によりパッシベーションするための入れ物の震とうは、ロールミルを用いて実施され得る(例えば、60rpmで2時間)。この入れ物は、ネジ蓋式入れ物とすることができる。水素パッシベーションするために入れ物を震とうした後(例えば、2時間)、この入れ物を静止して放置され得る(例えば、さらに2時間)。次に、この入れ物は開放されて除圧され、少なくとも液相の一部が除去され得る。場合によって、追加のプロトン酸が加えられて、水素パッシベーションステップが繰り返されてもよい。水素パッシベーション後、この入れ物は開放されて除圧されることができ、液体部分は、固体から分離され得る(例えば、デカンテーションにより)。同一または異なる入れ物において、震とう下、水素パッシベーションしたサブミクロン粒子は、パッシベーションを行うのに十分な時間(例えば、4から6時間)、パッシベーション用化合物により処理され得る。液相は、その後、固体から除去され得る(例えば、シリンジによって)。
【0092】
パッシベーションされている固体のサブミクロン粒子は、場合によって室温において減圧にして、蒸発により乾燥され得る。場合によって、蒸発は、減圧下で達成され得る。好ましくは、減圧下の場合、溶媒の凍結を回避するため、排気される容器に十分な熱を供給するという注意が払われる。好ましくは、溶媒蒸気の速度が速い場合、受けフラスコにナノ粒子が掃引されるのを回避するよう注意が払われる。
【0093】
工業的工程において、溶媒は大気圧付近において、粒子/溶媒のスラリーにより覆われる加熱蒸発プレートを通過する乾燥窒素ガスを循環させることにより除去され得る。溶媒で飽和したガスは、コンデンサに通されて溶媒を回収し、さらなる再循環のために不飽和ガスが戻され得る。この工程は、溶媒コンデンサへのナノ粒子の持ち込みを最小限にすることができる。
【0094】
図5は、官能化IVA族粒子を調製する例示的な工程の1つを示している。IVA族粒子は、バルク結晶性シリコン(c−Si)インゴット(例えば、0.4−0.6Ωcm
−1の抵抗率を有するPドープ(n型)シリコン)および/またはシリコン粉末(325メッシュのシリコン粉末(例えば、Alfa Aesar、26Parkridge Rd Ward Hill、MA01835 USAから入手可能な99.5%の325メッシュのSi、または金属グレードの325メッシュのc−Si)などに由来することができる。バルクc−Siインゴットは、ウェハへとスライスされ得る。325メッシュの金属c−Siが使用される場合、この材料は、酸によるリーチングおよびフッ化水素酸(HF)によるエッチングが施され、低抵抗率のn−バイアス化多孔質c−Siを得ることができる。スライスされたウェハおよび/またはシリコン粉末にベンゼン中で細砕が施されて、サブミクロンからナノサイズのベンゼン−パッシベーションされたc−Si粒子(例えば、200−300nm粒子)を得ることができる。細砕スラリー中の初期固体充てん量は、30重量%から40重量%の間とすることができ、この充てん量は、最適スラリー粘度を維持するために、粒子サイズ分布が低下するにつれて、減少(追加溶媒を添加することにより)し得る。ベンゼン溶媒は、真空蒸留と続く真空乾燥(例えば、23℃で6時間)により除去されて、ベンゼン−パッシベーションされたc−Si粒子を得ることができる。選択量のベンゼン−パッシベーションされているc−Si粒子(例えば、1グラム)は、非官能性溶媒(例えば、トリグライム)中、改質試剤(例えば、2,3−ジヒドロキシナフタレン)により処理されて、選択した時間(例えば、6時間)および温度(例えば、220℃)で還流され得る。還流後、改質nc−Si粒子は沈殿し、非官能性溶媒が除去され得る(例えば、デカンテーションまたはろ過により)。改質nc−Si粒子は洗浄されて(例えば、エーテル溶媒により)、次に乾燥され得る。改質nc−Si粒子(例えば、場合によって乾燥および粉末形態)は、選択された溶媒(例えば、ジクロロメタン)中、1種以上の導電性粘着添加剤(例えば、C
60、C
70フラーレン誘導体)と混合されて、スラリーを得ることができる。場合によって、ドーパント添加剤(例えば、C
60F
48)もスラリーに加えられてもよい。このスラリーは、選択された時間(例えば、10分)、超音波処理して、次に乾燥(例えば、空気乾燥または真空)されると、改質nc−Si粒子と導電性添加剤/結合添加剤との組成物を得ることができる。
【0095】
d.IVA族粒子の物性評価
IVA族粒子は、様々な方法により物性評価が行われ得る。例えば、パッシベーションされている粒子の物性評価は、走査型電子顕微鏡法(SEM)、熱重量分析−質量分析法(TGA−MS)、および/または分子蛍光分光法により実施され得る。
【0096】
SEM画像が使用されて、個々の粒子を測定し、粒子サイズ測定が結晶クラスターではなく、個々の粒子を真に表しているという一層の確信を得ることができる。SEM機器はまた、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を行う能力を有するが、粒子サイズが十分小さい場合、元素組成は、それぞれ炭素および酸化物の特徴的なK−アルファシグナルの観測および不在により、炭素の存在および酸化物の不在を確認することも可能である。鉄および他の金属不純物が観測されることがあり、より軽い元素の観測を妨害しない。
【0097】
ナノ粒子上の単層の組成物の存在を実証して同定するために使用することができる別の分析法は、熱重量分析法と質量分析法(TGA−MS)との組合せである。十分な表面積を用いると、試料が加熱されている場合、表面分子は粒子表面から脱着または剥離するため、粒子の質量に対する表面分子の割合が十分に高くなり得るので、単層の質量が重量測定法で検出され得る。物質が加熱されるにつれて放出される過剰の溶媒は、該溶媒の通常の沸点付近に現れる一方、結合している単層に属する溶媒分子は、かなり一層高温において放出されることになる。単層の放出が、わずかな総物質重量のあまりにも少ない量を占めるために、総損失質量の百分率スケールに基づいて観察することができない場合、その放出は、TGA実験中の排気ガスをモニタリングするために使用される質量分析計によって依然として検出され得る。表面分子の親イオンの主な質量フラグメントに由来する全イオン電流のモニタリングは、組成およびこれらの分子が放出される正確な温度を確認するための、非常に感度の高い手段である。
【0098】
表面に結合している不飽和炭化水素または芳香族炭化水素の存在を検出するための、さらに別の非常に感度の高い試験は、これらの蛍光スペクトルによるものである。蛍光スペクトルの測定は、2種以上の方法により実施され得るが、HPLC液流中に流れる非蛍光性溶媒中のIVA族粒子のスラリーまたは懸濁液からの、蛍光検出器による反射スペクトルを、ナノ粒子の場合に使用し得る。照射極大におけるシフト、および溶媒のみの蛍光スペクトルと比較した、結合している単層から得られた蛍光スペクトルを測定することにより、表面の結合性相互作用による摂動が評価され得る。
【0099】
約50nm未満のナノ粒子に関すると、核磁気共鳴(NMR)の使用は、強力な磁気回転比を有する一重項状態の同位元素の共鳴を観測することにより、表面分子の結合の影響を測定する、実現可能な方法になる。炭素13、水素およびシリコン29はすべて、NMRに妥当な感度を示す候補である。これらのナノ粒子はすべての溶媒に不溶となり得るので、固体状態におけるNMRスペクトルを得るための好ましい技法は、交差分極−マジック角度回転(CP−MAS)NMR分光法によるものである。顕著な共鳴シフトは、攪乱されていないまたは天然の共鳴位置と比較して、表面分子との結合性相互作用から説明される。これらの共鳴シフトは、表面分子の特定の原子と表面のIVA族原子との間の支配的な結合様式を示し得る。IVA族材料中のいかなる常磁性または強磁性不純物の存在は、NMRスペクトルを妨害して、この取得を妨げる恐れがある。したがって、好ましくは、非常に純度が高く鉄を含まない、50nm未満の直径からなるIVA族粒子だけが、NMR分析の候補となる。
【0100】
3.組成物およびコンポジット
官能化IVA族粒子は、組成物(例えば、インク、ペーストなど)またはコンポジット中に供給され得る。本組成物またはコンポジットは、官能化IVA族粒子および場合によって1種以上の添加剤成分を含んでもよい。ある種の実施形態において、組成物またはコンポジットは、官能化IVA族粒子および導電性接着添加剤を含む。ある種の実施形態において、組成物またはコンポジットは、官能化IVA族粒子およびドーパント添加剤を含む。ある種の実施形態において、組成物またはコンポジットは、官能化IVA族粒子および溶媒を含む。ある種の実施形態において、組成物またはコンポジットは、官能化IVA族粒子、導電性接着添加剤およびドーパント添加剤を含む。ある種の実施形態において、組成物またはコンポジットは、官能化IVA族粒子、導電性接着添加剤および溶媒を含む。ある種の実施形態において、組成物またはコンポジットは、官能化IVA族粒子、ドーパント添加剤および溶媒を含む。ある種の実施形態において、組成物またはコンポジットは、官能化IVA族粒子、導電性接着添加剤、ドーパント添加剤および溶媒を含む。
【0101】
官能化IVA族粒子は、コンポジット中に、50重量%から100重量%、60重量%から100重量%または75重量%から100重量%の範囲の量で存在し得る。ある種の実施形態において、官能化IVA族粒子は、コンポジット中に、約50重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%、約95重量%または約100重量%の量で存在し得る。ある種の実施形態において、官能化IVA族粒子は、コンポジット中に、50重量%、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、65重量%、66重量%、67重量%、68重量%、69重量%、70重量%、71重量%、72重量%、73重量%、74重量%、75重量%、76重量%、77重量%、78重量%、79重量%、80重量%、81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%、86重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%または100重量%の量で存在し得る。
【0102】
適切な導電性接着添加剤には、以下に限定されないが、C
60、C
70および他のフラーレン誘導体が含まれる。ある種の実施形態において、導電性接着添加剤は、C
60フラーレンとすることができる。導電性接着添加剤は、コンポジット中に、0重量%から1重量%、0重量%から2重量%、0重量%から3重量%、0重量%から4重量%、0重量%から5重量%、0重量%から10重量%、0重量%から15重量%、0重量%から20重量%、0重量%から30重量%、0重量%から40重量%または0重量%から50重量%の範囲の量で存在し得る。ある種の実施形態において、導電性接着添加剤は、コンポジット中に、約0重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%または約50重量%の量で存在し得る。ある種の実施形態において、導電性接着添加剤は、コンポジット中に、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%または50重量%の量で存在し得る。
【0103】
適切なドーパント添加剤には、以下に限定されないが、フラーレン(F)
n、フラーレン(CF
3)
n、多環式芳香族炭化水素(CF
3)
n、多環式芳香族炭化水素(F
n)が含まれる。ある種の実施形態において、ドーパント添加剤はC
60F
48とすることができる。ドーパント添加剤は、コンポジット中に、0重量%から1重量%、0重量%から2重量%、0重量%から3重量%、0重量%から4重量%、0重量%から5重量%または0重量%から10重量%の範囲の量で存在し得る。ある種の実施形態において、ドーパント添加剤は、コンポジット中に、約0重量%、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%または約10重量%の量で存在し得る。ある種の実施形態において、ドーパント添加剤は、コンポジット中に、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2.0重量%、2.1重量%、2.2重量%、2.3重量%、2.4重量%、2.5重量%、2.6重量%、2.7重量%、2.8重量%、2.9重量%、3.0重量%、3.1重量%、3.2重量%、3.3重量%、3.4重量%、3.5重量%、3.6重量%、3.7重量%、3.8重量%、3.9重量%、4.0重量%、4.1重量%、4.2重量%、4.3重量%、4.4重量%、4.5重量%、4.6重量%、4.7重量%、4.8重量%、4.9重量%、5.0重量%、5.1重量%、5.2重量%、5.3重量%、5.4重量%、5.5重量%、5.6重量%、5.7重量%、5.8重量%、5.9重量%、6.0重量%、6.1重量%、6.2重量%、6.3重量%、6.4重量%、6.5重量%、6.6重量%、6.7重量%、6.8重量%、6.9重量%、7.0重量%、7.1重量%、7.2重量%、7.3重量%、7.4重量%、7.5重量%、7.6重量%、7.7重量%、7.8重量%、7.9重量%、8.0重量%、8.1重量%、8.2重量%、8.3重量%、8.4重量%、8.5重量%、8.6重量%、8.7重量%、8.8重量%、8.9重量%、9.0重量%、9.1重量%、9.2重量%、9.3重量%、9.4重量%、9.5重量%、9.6重量%、9.7重量%、9.8重量%、9.9重量%または10.0重量%の量で存在し得る。
【0104】
適切な溶媒には、以下に限定されないが、ジクロロメタン(塩化メチレンとも呼ばれる)、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロプロパン、1,1,2−トリクロロプロパン、1,1,3−トリクロロプロパン、1,2,2−トリクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、1,2−ジクロロベンゼン(オルト−ジクロロベンゼンとも呼ばれる)、1,3−ジクロロベンゼン(メタ−ジクロロベンゼンとも呼ばれる)、1,4−ジクロロベンゼン(パラ−ジクロロベンゼンとも呼ばれる)、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、α,α,α−トリクロロトルエンおよび2,4,5−トリクロロトルエンが含まれる。適切な溶媒はまた、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、ニトロメタン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびスルファロンを含むことができる。溶媒は、コンポジット中に、0重量%から0.05重量%、0重量%から0.1重量%、0重量%から0.5重量%、0重量%から1重量%、0重量%から2重量%または0重量%から3重量%の範囲の量で存在し得る。溶媒は、コンポジット中に、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下、0.01重量%以下または0.001重量%以下の量で存在し得る。
【0105】
インク(例えば、インクジェット印刷用)中の固体充てん量(例えば、官能化IVA族粒子および場合による添加剤)は、1重量%から60重量%または10重量%から50重量%の範囲とすることができる。ある種の実施形態において、インク中の固体充てん量は、約1重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%または約50重量%とすることができる。ある種の実施形態において、インク中の固体充てん量は、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%または50重量%とすることができる。重量のバランスは、インクの1種以上の溶媒に起因し得る。
【0106】
組成物(例えば、展開塗布または刷毛塗布用)中の固体充てん量(例えば、官能化IVA族粒子および場合による添加剤)は、1重量%から60重量%、10重量%から50重量%または25重量%から40重量%の範囲とすることができる。ある種の実施形態において、組成物中の固体充てん量は、約1重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%または約65重量%とすることができる。ある種の実施形態において、組成物中の固体充てん量は、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%、50重量%、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%または65重量%とすることができる。重量のバランスは、組成物の1つ以上の溶媒に起因し得る。
【0107】
図6は、c−Si導電性薄膜に関する例示的なコンポジット1つを示している。このコンポジットには、多環式芳香族炭化水素(PAH)化合物により官能化されている複数のシリコン粒子を含んでおり、この化合物は、シリコン粒子に共有結合している。このコンポジットは、電子受容体添加剤として働き得るフラーレンまたはフラーレン誘導体をさらに含む。
【0108】
4.SEI薄膜
上記の通り、IVA族粒子は多孔質共有結合性骨格に取り込まれて、高い電荷移動度を有する高容量アノードとして機能する、リチウムイオン電池のアノードにおいて使用するためのコンポジットを実現することができる。このコンポジットは最適な多孔性をもたらし、すべての方向にイオンが流れるのを可能にし、これにより、熱発生をもたらす恐れがある内部抵抗を低下させる。このコンポジットは、アノードにおいてリチウムが必要とする空間を受け入れ、シリコンをベースとする公知のコンポジットに比較して、機械的な破壊に耐性を示すことができる。このコンポジットはまた、リチウムイオン(Li
+)が還元されてリチウム金属(Li
0)になる部位に出入りする電荷移動のため、およびLi
0原子が酸化されてLi
+になる逆の工程のための導電路も提供することができる。容易な電子移動は、局所的な電位の結果として溶媒分解から形成すると考えられている、固体電解質界面(SEI)薄膜の形成を抑制する点でもやはり有益となり得る。SEI形成は、あらゆる二次Li
+電池の継続的な作動にとって不可欠であるが、SEIが多く集積しすぎると、最終的に完全な電池の不具合を伴う、高い内部抵抗および容量の劣化につながる。電気伝導性のパッシベーション層により改質されていないシリコン(Si)表面は、SEIとSi表面の間のLi
0による膨張、および新しいSEI層の再形成によって、Si表面から既に形成されているSEI層が離層することによるサイクルが起こるので、SEIの多重層を形成する傾向がある。
【0109】
シリコン表面上にある共有結合している伝導性単層の利点は、この単層が、Li
+透過性SEI層をSi表面の上に形成させて、これによりLi原子が、SEI層を離層させることなく、Si表面近傍に留まらせることを可能にする点である。Si表面を改質する伝導性単層を構成する分子の最適な長さ、形状および電気特性を選択することによって、この単層は伝導性骨格の一体部分となりながら、この層はまたSi表面に近すぎるSEIの初期形成を防止し、Li原子を収容するための空間を提供する。上記のコンポジットは、元からあるSEI層の離層およびさらなるSEI層の形成を抑制するので、この元からあるSEI層は、無傷のままである。効率的に電荷を伝導するコンポジットは、再充電速度の向上、すなわち電池を再充電するために必要な時間の減少を実現することができる。
【0110】
5.用途
官能化IVA族粒子を含む組成物およびコンポジットを含む、官能化IVA族粒子は、様々な用途において使用され得る。量子閉じ込めによるスペクトルのシフトが望ましい場合、および15ナノメーター(nm)未満の粒子サイズ分布が必要とされる場合、本IVA族粒子が使用され得る。粒子サイズの多孔質骨格との適合性が望ましい場合、またはリチウム(Li)などの他の金属とのアマルガム化に耐性を示す材料特性を有することが望ましい場合、本IVA族粒子が使用され得る。本IVA族粒子が使用されて、特定の粒子サイズ分布範囲を使用した、実現可能な市販製品を得ることができる。
【0111】
本IVA族粒子が調製されて、使用するために保管され得る。
【0112】
本IVA族粒子が選択された溶媒中に供給されて、選択された基板に施用され、導電性薄膜を得ることができる。基板への施用に有用な、表面改質IVA族粒子/溶媒混合物は、「インク」、「ペースト」または「アノードペースト」と呼ぶことができる。インク調製用の適切な溶媒には、以下に限定されないが、ジクロロメタン(塩化メチレンとも呼ばれる)、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロプロパン、1,1,2−トリクロロプロパン、1,1,3−トリクロロプロパン、1,2,2−トリクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、1,2−ジクロロベンゼン(オルト−ジクロロベンゼンとも呼ばれる)、1,3−ジクロロベンゼン(メタ−ジクロロベンゼンとも呼ばれる)、1,4−ジクロロベンゼン(パラ−ジクロロベンゼンとも呼ばれる)、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、α,α,α−トリクロロトルエンおよび2,4,5−トリクロロトルエンが含まれる。インクにより被覆される基板は、導電性薄膜を含む製品およびデバイスを製造するため、さらに加工され得る。
【0113】
官能化IVA族粒子および粒子を含む導電性薄膜に関する有用な応用分野には、以下に限定されないが、粒子サイズ分布を分離するため、様々な溶媒系における官能性ナノ粒子を可溶性にすること、血液などの生物系における、または拡散性膜を通過する輸送特性の増強、ナノ粒子の量子効果の変化、および太陽光発電、ルミネセンス、バイオセンサー、電界効果トランジスター、顔料、電磁エネルギー増感剤および電子移動が関与する触媒において使用される電気性薄膜の特性の最適化が含まれる。
【0114】
a.電池用途
官能化IVA族粒子は、電池用途、特にリチウムイオン電池のアノードに有用となり得る。
図7は、官能化IVA族(例えば、IVA族粒子、導電性接着添加剤および/またはドーパント添加剤を含むコンポジット)を使用して作製されたアノードを使用したリチウムイオン電池を示している。
【0115】
官能化IVA族粒子から作製されたアノードは、本表面改質IVA族粒子により作製されたアノードを含む二次リチウムイオン(Li
+)電池が商業的に実現可能となるような、比充電容量、劣化性、および放電/再充電電流の1つ以上に適切な性能を示すことができる。用語「比充電容量」とは、本明細書で使用する場合、電池のアノードにおいて、電池が、表面改質IVA族粒子1グラムあたり、どれだけ多くのエネルギーを運ぶことができるかを言うことができる。用語「劣化性」とは、本明細書で使用する場合、電池が、充電容量の所与の損失が起こるまでに、放電/再充電サイクルを何回受けることができるかを言うことができる(例えば、100サイクルにわたり2%以下である、または500サイクルにわたり10%以下である、または電池がどのように使用されるかによって、ある程度決められたある別の値)。用語「放電/再充電電流」は、本明細書で使用する場合、電池が、充電容量または劣化に対する耐性を犠牲にすることなく、どれくらい速く放電され、再充電され得るかを言うことができる。
【0116】
比充電容量、劣化性、および放電/再充電電流は、相互に依存しないことがある。ある種の実施形態において、表面改質IVA族粒子により作製されたアノードを含む電池は、良好な比充電容量を示すが、劣化に対する耐性には乏しいことがある。ある種の実施形態において、表面改質IVA族粒子により作製されたアノードを含む電池は、中程度の比充電容量を示すが、劣化に対する耐性には非常に良好なことがある。ある種の実施形態において、表面改質IVA族粒子により作製されたアノードを含む電池は、良好な(高い)放電/再充電電流または劣った(低い)放電/再充電電流を伴い、良好な比充電容量、劣化に対する良好な耐性、またはこれらの両方のいずれかを示すことがある。ある種の実施形態において、表面改質IVA族粒子により作製されたアノードを含む電池は、高い比充電容量(4,000mAh/gという理論最大値にできる限り近い)、劣化に対する優れた耐性、および非常に速い放電/再充電を示すことがある。
【0117】
未改質の、一部酸化されている粒子により調製されたアノードは、粒子がこれらの表面の一部にしか電気的な接触がないので、伝導性に乏しく(すなわち、低い放電/再充電電流)、また上記のアノードは、粒子の一部が粒子の大部分と電気的な接触がないので、比充電容量は低い。この状況は、アノードへと作製される前に、IVA族が改質されると(例えば、2,3−ジヒドロキシナフタレンにより)、ある程度緩和され得る。
図8−10は、アノード中の電気的な接触における、複数のパッシベーションされているIVA族粒子を簡略化した図を示している。
図8によるアノード材料は、比充電容量は低いが、劣化に対する耐性は良好な電池を実現し得る。
図9は、C
60導電性粘着添加剤(C
60分子は、紺色のVercro様の円である。)の存在下で、表面改質IVA族粒子のアノードを示している。C
60がアノード作製前にアノードペーストに添加されると、単位体積あたりのアノード密度が増加し、アノードの比充電容量が向上し、一部の場合、放電/再充電電流が増加する。C
60分子は、粒子同士を「引っ付ける」ことができ、これにより粒子の一部の電気的接触が増加し、電気伝導性が向上する(すなわち、Li
+イオンがアノードに最初に充電される、Li
+イオンがアノードから放電される、またはLi
+イオンがアノードに再充電される速度が向上する。)。追加のドーパント添加剤C
60F
48が存在する場合(
図9に図示せず)、比充電容量、劣化性、および放電/再充電電流の1つ以上が改善され得る。
図10は、酸化していない官能化IVA族粒子、導電性粘着添加剤およびドーパント添加剤を含むアノードペーストから作製されたアノードを示している。
図10のアノードは、比充電容量、劣化性および放電/再充電電流のすべての点で、優れた性能を示すことができる。
【0118】
ある種の実施形態において、パッシベーションされているIVA族粒子は、多孔質共有結合性骨格に共有結合することができる。IVA族粒子を含む骨格は、リチウムイオン電池用途において特に有用となり得る。この骨格は、共有結合性有機骨格、有機金属性骨格、またはゼオライト型イミダゾレート骨格とすることができる。この骨格は、二次元骨格であってもよく、三次元骨格であってもよい。完全な骨格コンポジットは、互いの上に積層して整列している骨格の複数のシートを含み得る。このシートは、相互に非常に接近して整列および積層されて、該シートの面に対して垂直の方向への電子移動をもたらすことができる。
図11は、リチウムイオン電池用途において、アノードとして働き得る、本発明による多孔質骨格コンポジットの1つを示している。
【0119】
高い電荷移動度を有する多孔質共有結合性骨格に結合しているサブミクロンのシリコン粒子は、リチウムイオン電池中において、高容量アノードを実現し得る。他の公知の元素よりも多量のリチウムを誘引する能力を有するシリコンは、リチウムとアマルガムを形成することが知られている。シリコンを有するアノードは、従来の炭素をベースとするアノードコンポジットよりも10倍多量のリチウムを誘引する能力を有する。したがって、材料科学者および電池製造者らは、リチウムイオン電池において、アノードとして機能する、シリコン含有コンポジットを形成させる試みを行ってきた。これらの努力に直面する主要な難関は、アノードコンポジットの充電/再充電サイクルの安定性に関するものである。これは、バルクシリコン(またはゲルマニウム)の構造形態は、蓄積されたリチウムにより負わされる空間的な要件を受け入れることができないこと、およびこのコンポジットは、最初の充電サイクル後に機械的に分解するからである。
【0120】
リチウムイオン電池は二次電池(再充電可能である)として開発されることが多いので、この電池は、充電容量の顕著な損失なしに、多数の充電/再充電サイクル(1000回以上)を受けなければならない。したがって、シリコンがリチウムイオン電池のアノードにおいて使用される場合、コンポジットの構造は、多量のリチウムを収容することができなければならない(Li蓄積のないコンポジットと比べると、Liが完全に充電されているものは約4倍の体積となる。)。Si粒子はまた、リチウムによるアマルガム化に耐性を示すよう、十分小さいものでなければならない。Siナノワイヤおよびナノ多孔質シリコンおよび量子ドットはすべて、シリコン粒子に機械的な変化を引き起こすことなく、リチウムを誘引する能力があることを実証している。したがって、表面改質結晶性シリコン粒子を含むナノ多孔質コンポジットが生成されて、多孔性、およびリチウムイオンが接近可能な広い表面積、および還元されたリチウム金属が成長するための膨張に必要な粒子同士間に空間をもたらす。
【0121】
シリコン粒子を支える骨格は、Li
+イオンが移動することを可能にし得る。多孔質骨格は、溶媒および電解質を収容することができ、また理想的に、すべての方向にイオンの自由移動を可能にすることができる。この骨格は、最適な多孔性を含んで、設計され得る(実施例1を参照されたい)。構造単位を組み立てる入り組んだパターンにより、骨格全体に完全に均質な細孔(porosity)が生じることがあり、これにより熱の発生に至る電池の内部抵抗の一因となる「ホットスポット」または流れが制限される領域なしに、イオンがすべての方向に流れるのが可能になる(実施例2を参照されたい)。骨格は、Li
+イオンおよび電解質溶液が透過するのに適した多孔性をもたらす、サイズ分布内にあるランダム形状の粒子を効率よくパッキングしたものから構築され得る。
【0122】
多孔質電極コンポジットは、還元および酸化が起こる部位から電流コレクタへ電荷が伝導することを可能にし得る。電荷および電解質の流れの方向は、電池が再充電されている場合、電池が電力を供給している場合とは対照的に、反対になるので、伝導経路は双方向性である。適切な幾何学的形状(すなわち、フラーレンまたは多環式芳香族炭化水素(PAC))内に平面のポルフィリン構造単位または他の伝導性構造単位を使用する骨格は、パイ系の広がりに電荷を収容する能力を有しており、入り組んだ組立構造による構造単位の整列が、電荷移動度測定によって実証される通り、電子にとっての効率的な経路をもたらす。一部の電極設計はコンポジット内に伝導性炭素の含有を必要とするが、伝導性骨格を有する電極は、上記の炭素を必要とすることがあり、または必要としないことがある。例えば、官能化セルは、結晶性粒子表面に結合している単層をパッシベーションすること、および結晶性粒子表面を改質することによる以外、伝導性炭素をベースとするフラーレンまたはPAHの添加を使用しないことがある。
【0123】
多くの伝導性骨格が構築され得るが、有機ボロン酸エステルの骨格の合成は、温和な非毒性試薬および条件を使用して行われ得ること、およびこの骨格は、興味深い耐火特性を有するので、この骨格の例は、特に興味深い。芳香族支柱によって結合されているトリスボロン酸エステルまたはテトラボロン酸エステルの頂点を組み込んでいる共有結合性有機骨格(COF)は、それぞれ層形成した二次元または三次元骨格を構築する。2つの芳香族前駆体(1,2,4,5−テトラヒドロキシベンゼンおよび2,3,6,7−テトラヒドロキシアントラセン)が記載されており、非常に高い電子移動度および非常に良好な防火特性を有する構築物COFであるボロン酸と組み合わされてきた。これらの対称なテトラオールにより官能化されているIVA族粒子の取り込みにより、IVA族粒子をCOFマトリックスに共有結合する手段が提供される。これらの対称なテトラオールのいずれかを有するベンゼンパッシベーションされているIVA族粒子の官能化は、ベンゼン中またはトリグライムなどの非競合溶媒中、テトラオールにより懸濁しているベンゼン官能化IVA族粒子を還流することにより実施され得る。ベンゼンは分解することなく粒子表面から離れることができるが、テトラオールは、キレートを形成し、一旦表面粒子に結合すると、留まることになる。
【0124】
伝導性有機骨格に共有結合しているIVA族粒子は、リチウム電池のアノード向けの新規なコンポジットを作り上げる一方、層化グラファイト、積層カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭、または他のそれほど構造化していない多孔質炭素もしくはポリマーコンポジットに取り込まれた官能化IVA族粒子もやはり、こうした材料の特性を、リチウムの貯蔵、または上で概略した他の特性へと強化することができる。言いかえれば、コンポジットの利点を実現するために、官能化IVA族粒子の取り込みに、必ずしも一貫した骨格への正式な結合が必要となるわけではない。これらの用途において、「n型」(窒素、リン、アンチモン)および「p型」(ホウ素)にするドーパントの選択は、電子によりそれぞれ、IVA族半導体の伝導帯を占有するよう、または価電子帯を非占有するよう、選択されることになる。n型構造は、むしろ伝導体のように挙動する一方、p型構造は、光子エネルギーを捕捉してこのエネルギーを帯電粒子へと変換する傾向がある。さらに、光子エネルギーを捕捉して電荷に変換することができる光活性半導体の取り込みは、不安定なラジカルを生成することができる官能基を有する、電気的に活性な多孔質材料と組み合わせると有用になり得る。これらのラジカルは、化学変換、特に安定な炭化水素の酸化および低原子価状態にある安定金属の高原子価状態への酸化を触媒することが知られている。そのような活性は、化学廃棄物の処理、水および空気清浄、ならびにヒ素、セレン、鉛および水銀などの毒性金属の捕捉に有用となり得る。
【0125】
図12は、官能化IVA族粒子を含む電池を調製する例示的な工程の1つを示している。IVA族粒子は、バルク結晶性シリコン(c−Si)インゴット(例えば、0.4−0.6Ωcm
−1の抵抗率を有するPドープ(n型)シリコン)および/またはシリコン粉末(325メッシュのシリコン粉末などで、例えば、Alfa Aesar、26 Parkridge Rd Ward Hill、MA01835 USAから入手可能な99.5%の325メッシュのSi、または金属グレードの325メッシュのc−Si)に由来することができる。バルクc−Siインゴットはウェハへとスライスすることができ、表面配向を選択することができ、細砕前に個々のウェハの正確な抵抗率を測定して選択することができる。325メッシュの金属のc−Siが使用される場合、この材料は、酸によるリーチングおよびフッ化水素酸(HF)によるエッチングが施され、低抵抗率のn−バイアス化多孔質c−Siを得ることができる。スライスされたウェハおよび/またはシリコン粉末にベンゼン中で細砕が施されて、サブミクロンからナノサイズのベンゼン−パッシベーションされたc−Si粒子(例えば、200−300nm粒子)を得ることができる。ベンゼン溶媒は、真空蒸留、その後の真空乾燥(例えば、23℃で6時間)によって除去され、ベンゼン−パッシベーションされているc−Si粒子(例えば、200−300nm粒子)が得ることができる。選択量のベンゼン−パッシベーションされているc−Si粒子(例えば、1グラム)は、非官能性溶媒(例えば、トリグライム)中、改質試剤(例えば、2,3−ジヒドロキシナフタレン)により処理されて、選択した時間(例えば、6時間)および温度(例えば、220℃)で還流され得る。還流後、改質nc−Si粒子は沈殿し、非官能性溶媒が除去され得る(例えば、デカンテーションまたはろ過により)。改質nc−Si粒子はエーテル溶媒により洗浄されて、次に乾燥され得る。改質nc−Si粒子(例えば、乾燥および粉末形態)は、選択された溶媒(例えば、ジクロロメタン)中、1種以上の導電性粘着添加剤(例えば、C
60、C
70フラーレン誘導体)と混合されて、スラリーを得ることができる。場合によって、ドーパント添加剤(例えば、C
60F
48)もスラリーに加えられてもよい。このスラリーは、選択された時間(例えば、10分間)、超音波処理して、次に乾燥(例えば、空気乾燥または真空)されると、導電性添加剤/結合添加剤を含む改質nc−Si粒子を得ることができる。
【0126】
この導電性添加剤/結合添加剤により改質されたnc−Si粒子は、選択された溶媒(例えば、トリクロロプロパンなどのクロロ化溶媒)と混合されて、導電性インク(例えば、40−50重量%の固体充てん量)を得ることができる。導電性インクは、選択された基板(例えば、炭素コーティングを有するまたは有していない銅製基板)に施用(例えば、刷毛塗布、薄膜スプレッダー)されて、その後、選択された雰囲気(例えば、空気)および温度(例えば、90℃)下で乾燥され得る。
図13は、導電性インクが塗布されている、例示的な銅製基板を示している。次に、インクコーティングされた基板は、
図14に示されているものなどのダイカッターを使用して、ディスク(例えば、16ミリメートルのディスク)に打ち抜かれ得る。このディスクは、次に、真空下、選択された温度(例えば、100℃)において、選択された時間(例えば、2時間)、乾燥され得る。
【0127】
官能化IVA族粒子を含むディスク状アノードが調製され、Nikonデジタルカメラを用い、AmScope MA−1000デジタルカメラを装備したAmScope 40×−2000×三眼化合物顕微鏡を用いて40×および100×の出力で、金属の黒色バックグラウンド上に写真撮影された。このアノードは、ジクロロメタン中、超音波処理しながらスラリーにすることにより混合された10%C
60導電性粘着添加剤を含む2,3−ジヒドロキシナフタレンにより表面改質された99.5%純度の真性シリコンを使用して調製された。写真は、
図15a−15cにおいて、以下に示されている。
【0128】
コインセル電池を調製するための他の構成部品(例えば、カソード、セパレータ、電解質)と一緒に、ディスクを不活性雰囲気下(例えば、グローブボックス中)、コインセルへと組み立てられ得る。
図16は、2032型コインセルを圧着するための油圧式クリンパを含む、コインセル組立装置を備えた制御雰囲気グローブボックスを示している。このコインセルは、セルの上部および底部および側面を互いに封止するためのポリマーを含んでいるステンレス綱製入れ物を含むことができる。
【0129】
b.光起電力用途
官能化IVA族粒子は、光起電力用途において有用となり得る。IVA族粒子が使用され、電気伝導性流体マトリックスまたは液晶中で分散してこれらと連通しているサブミクロンのIVA族粒子からなる半導体薄膜を得ることができる。この薄膜は、半導体粒子懸濁液を作製する段階、この半導体粒子懸濁液を基板上に堆積させる段階、およびこの半導体粒子懸濁液を200℃以下の温度で硬化させて、半導体薄膜を形成させる段階により調製され得る。この半導体粒子は、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、N、P、As、Sb、O、S、Te、Se、F、Cl、Br、I、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、Cu、Au、Zn、Cd、ランタニドおよびアクチニドからなる群からの元素からなり得る。半導体粒子は,p型またはn型であってもよい。本方法は、室温で完全に行われ得る。
【0130】
基板(剛直性または可撓性)上で順に塗布され得る半導体薄膜は、製造工程のいかなる部分の間でも、アニーリングなしに一体化して組み立てられている機能性半導体デバイスの一体部分となり得る。半導体薄膜は、インクジェットまたは基板表面に均一な薄膜を作製することが可能な任意の公知の印刷法により、基板上に印刷されたインクとして塗布され得る。導電回路もやはり、半導体薄膜と同じ方法で印刷されてもよく、すべてが、完成した電子デバイスの一体部分となり得る。
【0131】
例えば、半導体デバイスが光起電力セルである場合、p型半導体薄膜(「p薄膜」として略す)は、インクジェットにより導電性表面を有する基板に施用され得る。p薄膜が十分に硬化する際に、n型半導体薄膜(n薄膜)が、一部が硬化したp薄膜上に直接塗布されてもよい。最初の2種の薄膜が十分に硬化した後、導電回路が、n薄膜の上部に塗布され得る。この導電回路は、マスク法によって、または狭いワイヤ様の伝導経路を作製することができるようなジェット印刷法により、印刷され得る。上部の導電回路は、半導体薄膜の表面に、入射光を遮蔽する部分を最小限にすることができる。n薄膜の上部の導電回路は、負端子(アノード)に接続され得る一方、基板上のp薄膜の下にある導電性表面は、陽端子(カソード)に接続され得る。次に、セルは、太陽光に透過性を示すカバー、ガスケットおよびセメントにより気密密閉され得る。そのようなセルの概略図が、
図17に示されている。
【0132】
サブミクロンのIVA族粒子からなる半導体薄膜から、光起電力セルを室温で作製する方法も、本明細書において開示される。ある種の実施形態において、光起電力活性は、1ミクロンより大きな平均粒子サイズ分布を有する結晶性シリコン薄膜を使用し、本発明における方法によって作製されるセルにおいて観察され得る。しかし、別の実施形態において、量子閉じ込めが光子の吸収および光子−電子遷移において重要な因子となるようなナノ粒子サイズ分布により作製された薄膜から、より高い光起電力効率が達成され得る。明らかな利点は、太陽PVコレクタ中にナノ粒子薄膜を使用した場合に得られ、この利点とは、結晶性シリコンを使用し、吸収されて電気エネルギーに変換することができる太陽輻射スペクトルの効率性および幅である。例えば、バルクシリコンウェハから作製される太陽セルは、通常、1000分の30(約0.7mm)の厚さである一方、等価な光子吸収能力を有する一部のシリコンナノ粒子薄膜は、わずか100nm未満しか必要としない。
【0133】
バルク結晶性シリコンは、本質的に間接バンドギャップ半導体であり、これにより、シリコンのもともとのバンドギャップが太陽スペクトルのほぼ完全に中心に位置しているにもかかわらず、なぜ光子吸収効率が低いのかが説明される。間接バンドギャップ半導体に起こる、光子の吸収および電子正孔ペアへの変換に関すると、この変換は、光子の生成を伴わなければならない(熱エネルギーの一層小さいパケット)。光子が電子へ変換される度に、一部のエネルギーが失われるのみならず、これらの変換は、禁制遷移であるので、容易に起こらない。さらに、禁制遷移が起こることは可能であり、また起こるが、この遷移は、直接バンドギャップ半導体における場合よりもはるかに少ない頻度で起こる。同様に、蛍光(電子、または光子の放出を伴う電子正孔ペアの消滅に至る)も、間接バンドギャップにおいて禁制であり、直接バンドギャップ半導体で許容される。したがって、シリコンは、劣ったルミネセンス半導体あるが、正孔がn−半導体層の伝導帯からの電子に出会うp−n接合に電荷が移動することが可能となるのに十分長い間、電子正孔ペアを形成する際にエネルギーを保存することができる。
【0134】
理想的な状態下において、バルク結晶性シリコンの最大理論光起電力効率は、ちょうど30%を超える一方、実際に、結晶性シリコンウェハの太陽セルにおける最良の光起電力効率は22−24%である。それにもかかわらず、市販太陽PVパネルの効率が、アモルファスシリコン薄膜よりもかなり優れており、また経時的なPV効率の劣化は、他の太陽PV技術に比べて非常に低いので、結晶性シリコンウェハ技術が、太陽PVパネルに最も一般に使用されている。シリコンナノ粒子薄膜の場合のPV効率は、研究室において、40−50%と高く測定されており、一層高い効率が到達可能であるという一部の期待がある。しかし、これらのデバイスは、恐らく商業化コストが高すぎて、既存技術と競争することができないので、依然として商業化されてこなかった。
【0135】
他のものが、半導体材料の様々な元素を融合する高価な熱処理加工を使用して、機能性半導体デバイスが形成される一方、本明細書において、液晶および共有結合性骨格構造中で正式な共有結合の形成およびパイオーバーラップ相互作用により機能するこれらのデバイスを、低温反応により作製する方法が開示されている。このアプローチに起因する追加の利点は、優れた性能を発揮するデバイスを製造するコストを低減することである。太陽光発電の場合の均等化発電原価(Levelized Cost of Energy;LCOE)が下がり、他の電気エネルギー源と同等に近づかなければならない場合、上記のことは、太陽PV製造にとってとりわけ重要である。
【0136】
電気伝導性流体により懸濁しているパッシベーションされているIVA族半導体粒子を塗布する方法も、本明細書において開示されている。半導体粒子、および液晶または電気伝導性流体または骨格の構成要素が、高K誘電性溶媒中で懸濁されて、塗布方法に適した、適切な粘度を有する液状インクを形成することができる。ジェット印刷の場合、10センチポアズ(cp)から30cpの範囲の粘度が適切である一方、グラビア印刷の場合、100cpを超える粘度が必要となり得る。高いK溶媒は、ナノ粒子の分散を促進し、粒子凝集を予防するために使用される。薄膜は、流体マトリックスもしくは骨格の構造単位の整列および/または自己集合が可能になり、半導体粒子との電気的な連通を確立するための、硬化期間を必要とし得る。硬化工程は、インクの作製に使用される溶媒の1種以上の成分の完全または部分的蒸発を必要とし得る。
【0137】
サブミクロンの半導体インクを作製するのに使用される溶媒は、以下に限定されないが、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、ニトロメタン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、およびスルファロンを含むことができる。ディスコティックカラムナー液晶を形成する、多くの有機をベースとする化合物が利用可能である。これらの例には、水素結合によって積層した柱に互いに整列するトリフェニレンをベースとする化合物に由来する化合物に分類されるものが含まれる。同様に、平面パイ系、および積層柱に整列するのに関与する環の置換基を有する、他の対称性および非対称性ポリ芳香族炭化水素が、ディスコティック液晶マトリックスに使用されてもよい。ポルフィリンをベースとする化合物が使用されて、液晶に分類することができる積層配列を形成することができ、または適切な官能基を有する場合、この骨格中において高い電荷移動度を可能にする共有結合性有機骨格を形成することができる。上記の溶媒、および有機をベースとする液晶または伝導性骨格の構造単位の1種以上の組合せの一部が、半導体薄膜マトリックスに使用され得る。
【0138】
c.汚染物質捕捉
官能化IVA族粒子、ならびに官能化および非官能化遷移金属(例えば、銅)は、汚染物質、特に、燃焼工程由来の汚染物質の捕捉に有用となり得る。例えば、燃焼ガス源(石炭燃焼ボイラおよび石油燃焼ボイラなど)からの水銀排出は、環境面における大きな懸案事項になっている。水銀(Hg)は、非常に低濃度で、人の健康に影響を及ぼす恐れのある、強力な神経毒である。米国における水銀排出の最大の源は、石炭火力発電所である。石炭火力発電所は、米国における総水銀排出量の3分の1から2分の1の間を占めている。水銀は、石炭燃焼ボイラの煙道ガス中の蒸気相中に主に見られる。水銀はまた、煙道ガス中のフライアッシュにも結合することができる。
【0139】
水銀および他の汚染物質は捕捉されて、排出流へ吸着剤を投入し、電気集塵器または織布ろ過器などの微粒子物制御装置中で、その後に回収することにより、煙道ガス流から除去され得る。煙道ガスからのHgの吸着による捕捉は、多くの変数が関与する複雑な工程である。これらの変数には、煙道ガスの温度および組成、排気流中のHgの濃度および種形成、滞留時間、および吸着剤の物理的および化学的特徴物が含まれる。
【0140】
現在、水銀排出削減のための最も一般に使用されている方法は、石炭火力および石油火力発電所の煙道流への粉末活性炭(PAC)の投入である。しかし、利用可能な技術があるにもかかわらず、汚染物質制御用吸着剤の改善およびこの製造方法の実現が継続的に必要とされている。
【0141】
本発明の態様には、組成物、製造方法、ならびにガス流からの重金属および他の汚染物質を除去するためのシステムおよび方法が含まれる。特に、本組成物およびシステムは、以下に限定されないが、石炭の燃焼により発生する煙道ガス流からの水銀の除去に有用である。本発明の一態様は、本明細書に記載されているIVA族により官能化されている粒子および/または官能化もしくは非官能化遷移金属(例えば、銅)を含む吸着剤に関する。
【0142】
ある種の実施形態において、燃焼煙道ガス流からの汚染物質(例えば、水銀)を除去する方法には、本明細書に記載されている官能化IVA族粒子、および/または官能化もしくは非官能化遷移金属(例えば、銅)を含む吸着剤を、煙道ガス流に投入する段階が含まれる。この吸着剤が使用されて、燃焼工程に見られる煙道ガス流に典型的な条件を含めた、様々な条件下で機能性を維持することができる。ある種の実施形態において、この吸着剤は、200°Fから2100°Fまたは400°Fから1100°Fの温度を有する煙道ガスまたは工程に供給され得る。ある種の実施形態において、この吸着剤は、50°F以上、100°F以上、200°F以上、300°F以上、400°F以上、500°F以上、600°F以上、700°F以上、800°F以上、900°F以上、1000°F以上、1100°F以上、1200°F以上、1300°F以上、1400°F以上、1500°F以上、1600°F以上、1700°F以上、1800°F以上、1900°F以上、2000°F以上または2100°F以上の温度を有する煙道ガスまたは工程に供給され得る。場合によって、投入される吸着剤は、固体回収装置中の投入箇所の下流で回収され得る。場合によって、投入された収着剤は、繰り返し使用のために再利用され得る。
【0143】
ある種の実施形態において、本明細書に記載されているIVA族粒子、および/または官能化もしくは非官能化遷移金属(例えば、銅)が使用されて、電気集塵器(ESP)において水銀捕捉の改善を実現することができる。大多数の石炭発電所は、現在、電気集塵器を有する。本明細書に記載されているIVA族粒子、および/または官能化もしくは非官能化遷移金属(例えば、銅)が、ESPの高帯電プレートの前、後、またはここでのスクラブ洗浄工程に導入されてもよい。捕捉済み水銀は、次に、上記のプレート上に留まるか、または酸化されたものとしてフライアッシュになり得る。エネルギー移動を考えると、ヒドロキシルラジカルが形成され、Hgの酸化が起こり得る。特に、本明細書に記載されているIV族粒子、および/または官能化もしくは非官能化遷移金属(例えば、銅)は、水銀除去用の光増感剤として使用され得る。この光増感剤は、活性炭と組み合わされて、Hgを除去することができる。
【0144】
d.他の用途
官能化IVA族粒子の他の用途には、バイオセンサー、熱電薄膜および他の半導体デバイスが含まれる。
6.
【実施例】
【0145】
以上の内容は、以下の実施例を参照にすることにより、よりよく理解することができるが、これらの実施例は、例示するために提示されており、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0146】
[実施例1]
トルエンパッシベーションされているシリコン粒子
一実施例において、2−4オーム/cm
2の測定抵抗率を有するp型シリコンウェハを破砕し、次に乳鉢および乳棒を用いて粉砕し、次に、#60メッシュのふるいに通した。この粉末は、ボールミルを使用し、サブミクロン粒子までさらに小さくした。40グラムのバッチにおいて、サブミクロンのシリコン粉末を、塩酸(100mL)および4−8セラミック製ボール(直径12mm)を含む250mLポリプロピレン製入れ物に加えた。ネジ蓋を閉じ、この入れ物を回転式ミル上、60rpmで2時間、回転させた。入れ物内の圧力上昇により、入れ物が膨らんだ。より多量またはより低グレードのシリコンを処理する一部の場合、入れ物は、H
2ガスの増加により、爆発を受けた。回転式ミル上で2時間震とうした後、ボトルをさらに2時間静止させて放置した。除圧しながら、このボトルを注意深く開け、ボトル内の固体の上にある液体を入れ物からシリンジにより抜き取った。新しい塩酸をさらに100mL加え、このボトルを閉じ、さらに2時間回転させ、次いで直立位置で、2−4時間放置した。最初の酸処理の後ほど高くない圧力を解放しながら、ボトルを再度、開けた。前回と同様に、水性液体部分を固体から注意深く抜き出した。デカンテーションした液体は、最初の酸処理から抜き出した液体よりもかなり澄んでいた。水性液体を徹底的にデカンテーションした後、トルエン100mLをこの固体に加え、ネジ蓋を交換して、入れ物内に残存している震とう用のセラミック製ボールと共に、このボトルを再度4−6時間回転させた。少なくとも1時間沈殿させた後、容器から解放される圧力はほとんどないまたは全くなく蓋を開け、液体を取り出し、続いてさらに100mL分のトルエンをこの容器に加えた。この容器を再び回転させて、さらに4−6時間、トルエン中でシリコン粉末を震とうした後、この混合物を沈殿させて、容器を開けてシリンジにより液体のトルエンを除去した。残存トルエンは、室温で減圧により補助した蒸発によって除去した。
【0147】
同様の手順に従い、n型IVA族ウェハ、またはより高いもしくはより低い抵抗率を有するウェハ、またはバルクMG IVA族インゴット材料を用いて、他の炭化水素パッシベーションされているミクロンサイズからナノサイズの粒子を作製することができる。処理した材料の量は、バルク材料のグレードおよびサイズおよび使用したポリプロピレン製またはポリエチレン製入れ物の破裂強度に応じて変動し得る。
【0148】
[実施例2]
ベンゼンパッシベーションしたシリコン粒子
(i)別の実施例において、実施例1において記載したものと同一のミル粉砕手順に続いて、トルエンの代わりのパッシベーション用炭化水素として、ベンゼン(C
6H
6)を代わりに使用した。同様に適用し、後反応において、ベンゼンをより強い結合性官能基を有する他の炭化水素によって置きかえることができる。ベンゼンは、シリコンの表面に可逆的に結合する少ない有機炭化水素の1つである。したがって、ベンゼンパッシベーションされているIVA族材料は、この粒子の表面に他の官能性炭化水素を導入するために使用される、便利で安定した中間体である。これは、速度論によって支配されているものと対照的に、熱力学が界面化学において重要な役割を果たすという、IVA族材料の少ない形態の1つである。
【0149】
(ii)別の実施例において、3種の異なるタイプのシリコンのウェハを規格に粉砕した。ベンゼンが、粉砕工程中に使用した溶媒であったが、酸素および微量の水分を排除しなかった。この3つのタイプのシリコンは、(i)製造者指定の抵抗率0.4−0.6Ωcm
−2を有する、リンをドープしたシリコン(すなわち、n型シリコン)、(ii)製造者指定の抵抗率0.014−0.017Ωcm
−2を有する、ホウ素をドープしたシリコン(すなわち、p型シリコン)、および(iii)99.5%純度の真性シリコンである。電子顕微鏡法によって測定したところ、粉砕されてベンゼンによりコーティングされているn型シリコン粒子の平均粒子サイズ(APS)は、400nm未満(<400nm)であることが分かった。
【0150】
[実施例3]
パッシベーションしたシリコン粒子
別の実施例において、0.4−0.6mmのイットリウム安定化ジルコニアビーズを使用する、Netzsch Dynostarミルによって、325メッシュのSi粉末をベンゼン中で処理した。Si−ベンゼンスラリーの固体充てん量は30−40%であった。粒子サイズ分布(PSD)分析により、平均粒子サイズ(APS)が約200nmに低下したことが示された。より小さなAPSとするためのさらなる加工は、粉砕媒体中において、より小さなビーズサイズに変更することが必要であった。直径0.1mmまたはもっと小さなビーズに変更すると、100nm未満にまでAPSを小さくすることが可能である。100nm未満という、ベンゼン中でのさらなるAPS低下は、スラリー粘度が急激に向上するため、困難になる。さらに、APS低下後、光散乱PSDA法によって進めるのは、粒子凝集により困難になる。
【0151】
サブミクロン粒子からのベンゼンの除去は、減圧下でベンゼンの蒸発によって実施した。ベンゼンの凍結を回避するための、スラリーを含む容器への熱の供給には注意を払わなければならない。24/40すり合わせにより、Si/ベンゼンスラリーを含有しているフラスコと溶媒凝縮物用の受けフラスコとの間につないだ20mmガラス管により、ナノ−シリコン/ベンゼンスラリーから溶媒が除去されるようにした。連結したフラスコ内の圧力を、大まかではあるが、真空により繰り返して低下させている間、溶媒蒸気は、この速度が速いと、受けフラスコにナノ粒子を容易に掃引するので、あまりに強力な真空を施すことがないよう、注意を払った。
【0152】
小実験規模において、この方法は、溶媒スラリーからIVA族粒子を単離するのに適している。工業的プロセスにおいて、大気圧付近において、スラリーにより覆われている加熱蒸発プレートを通過する乾燥窒素ガスを循環させることにより、溶媒を除去するのがより効率的となり得る。溶媒で飽和したガスは、コンデンサに通されて溶媒を回収し、さらなる再循環のための不飽和ガスを戻すことができる。この工程は、溶媒コンデンサへのナノ粒子の持ち込みを最小限にすることができる。
【0153】
ベンゼンパッシベーションされているSi粒子の物性評価には、SEM、TGA−MSおよび分子蛍光分光法が含まれる。SEM画像を使用すると個々の粒子が測定され、粒子サイズ測定が、結晶クラスターではなく、個々の粒子を真に表しているという一層の確信が得られた。SEM機器はまた、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を行う能力も有している一方、粒子サイズが十分小さい場合、元素組成は、それぞれ炭素および酸化物の特徴的なK−アルファシグナルの観測および不在により、炭素の存在および酸化物の不在を確認することも可能である。
図18は、Si、OおよびCを含む、K−アルファ分解シグナルを示す、EDSスペクトルである。鉄および他の金属不純物も観測することができ、より軽い元素の観測を妨害しない。
【0154】
平均粒子サイズ(APS):
ミクロトラック粒子サイズによって決定されるAPSは、200−300nmの間であった。最初のSEM画像は、EDXAスキャンの他に記録した。最初のSEM画像が分析試料の粒子サイズを決定するのに不適切であったが、EDXAスキャンにより、炭化水素およびわずかな酸化の存在が確認される、良好なデータであることが明らかになった(
図20および19をそれぞれ参照されたい。)。この試料をアルミニウムスタブ上にマウントし、そうするとEDXAスキャンにおいて観察されるAl K−アルファの位置のシグナルは、Alマウントスタブの寄与である可能性が最も高い。
図20の画像は、APSがサブミクロンをはるかに下回る範囲であることを示している。
【0155】
表面有機物の同定:
表面の有機物に関する定性試験の1つは、フーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルの測定である。FTIRは、分子の結合の伸縮振動数および曲げ振動数による分子の振動様式を測定するものである。
図21において、ベンゼンにより隠れているFTIRの指紋の証拠を観察することは可能であるが、C−Hの結合性相互作用からSi表面への摂動のために、C−H伸縮振動数における有意なシフトは存在していない。C−C曲げパターンは、より詳細に試験しなければならない。これは、これらの相互作用が実際に十分強いので、スペクトルの分解能限界(±4cm
−1)を超えてバンドがシフトする場合、摂動(波数シフト)が最も支配的になる場合である。
【0156】
水素結合よりも強いように思われるが、個々の単層から期待されると思われる程には明確ではない結合性相互作用を有する粒子表面に、ベンゼンが結合しているという、さらなる証拠がTGAスキャンにおいて示されている。
図22aおよび22bは、それぞれ30℃/秒および10℃/秒の加熱速度でのTGAスキャン操作である。30℃/秒における最初のスキャンを行い、最大500℃(932°F)までの熱プロファイルを迅速に観察した。このシナリオでは、化合物は、最大500℃(932°F)まで酸化に対して安定であり、さらにまた徐々に質量を失うように思われるという事実は、着目に値する。溶媒は、この沸点をずいぶん過ぎても残存している。
図22bにおける、より遅いスキャン速度により、この温度範囲全体にわたり、ベンゼンは試料から連続して発生しているが、この材料は、このより遅いスキャン速度において酸化が開始する前の最大250℃まで、数分間存続していることが実証される。この理由のため、持続温度に保持されている固定(充てん)床反応器中でこの材料を使用しても、250℃(482°F)を超えて存続することができない。しかし、表面に結合しているベンゼンの動的な脱着は即座に起こらず、より高い温度で、酸化からSi表面を一時的に保護することができると思われる。酸化が起こり始める前、質量損失は、総質量のわずか0.02%しか占めない。
【0157】
[実施例4]
トルエンパッシベーションされているシリコン粒子
ベンゼン溶媒中、0.4−0.6mmのイットリウム安定化ビーズを用いて、325メッシュの真性Si(99.99%、Alpha Aesar)を、見かけAPSが約300nmに到達するまでミル粉砕することにより加工したSi粒子を、トルエン中で撹拌することによりパッシベーションし、不活性雰囲気下、加熱して還流した。200mL丸底フラスコ中の上記の乾燥粒子20gに、ナトリウムから新しく蒸留したトルエン50mLを加えた。以前の保存物から作製した粒子を用いて、同じ手順に従ったが、0.1mmのビーズを用いて、見かけAPSが200nm未満になるまでさらにミル粉砕した。SEM画像から見積もった真のAPSは、100nm未満であった。両方の場合において、精製窒素1気圧下で覆ったトルエン中で1−2時間還流した。
【0158】
トルエンパッシベーションされているnc−Siを用いると、より高温において一層高い安定性の持続を伴って、質量損失の一層急激な低下がTGAにおいて期待される。これは、局所部位への一層強く、一層明確な結合性相互作用を特徴とする、パッシベーション層に期待されるものである。トルエンの非対称性のため、他のC−H環炭素−シリコン相互作用と比べて、より強いSi−C結合性相互作用が、メチルに結合している環炭素に形成される。C−C結合の振動のより確かな証拠はまた、IRスペクトルのバンドシフトでも明瞭になる。
【0159】
[実施例5]
リチウムイオンコインセル
表面改質IVA族粒子を本明細書に記載されている通り調製し、これを用いてアノードを作製し、続いて、このアノードをリチウムイオンコインセルに組み込んだ。一般に、表面改質IVA族粒子を調製し、アノードペーストまたはインクに配合し、銅製基板に塗布し、次に、この基板をアノードに作り上げてコインセルに組み込んだ。ある種の例では、この表面改質IVA族粒子は、アノードペーストまたはインク(例えば、導電性粘着添加剤、ドーパント添加剤)中で1種以上の追加成分と混合した後、銅製基板に塗布した。
【0160】
成分と共に作製された例示的なリチウムイオンコインセル、および製作変項は、以下の表に提示されている。いくつかのセルは、充電容量、放電容量、比充電容量および容量劣化に関して意味のある性能データを提示するよう、十分な時間サイクルした。充電/放電サイクルは、選択した市販のカソード薄膜および電解質を組み合わせたアノード薄膜から作製した、Li
+コインセルについて測定した。カソードは、Al基板上にLiCoO
2から作製し、電解質は、有機カーボネート溶媒のブレンド中のLiPF
6であった。一連のアノードは、カソードおよび電解質の配合表から選択した1つと比較した。
【0161】
コインセルに関する「容量」とは、充電容量を指す。しかし、放電容量は、所与のパラメータ一式に従って充電された場合に、コインセルにより運ばれ得る電荷量を表すので、放電容量もやはり重要なパラメータである。所与のコインセルについて測定され、mAh(ミリアンペア時間)の単位で与えられる充電容量は、比充電容量とは異なり、この比充電容量は、アノードが秤量されており、銅製基板の重量(質量)が分かっており、差し引くことができて、この特定のアノード上に堆積しているアノード材料の正味の重量(質量)が残る場合、所与のアノードについて求められる。次に、コインセルの充電容量をアノード材料の質量で除算することにより、比充電容量が算出され、したがって、この数がmAhg
−1で与えられる(アノード材料1グラムあたりのミリアンペア時間)。
【0162】
アノードの一部しか構成していないシリコン粒子の比充電容量は、別のパラメータである。ほとんどのアノードは、ある特定のタイプのシリコン粒子に加えて、(i)共有結合している表面改質剤(2,3−ジヒドロキシ−ナフタレンまたは9,10−ジブロモアントラセンなど)の未知の割合、(ii)非共有結合で結合している導電性粘着添加剤のある割合(通常、市販の99.5%純度のC
60を9%または10%であるが、この添加剤は一部のアノードには添加されなかった。)、および(iii)、ドーパント添加剤のある割合(通常、市販のC
60F
48を2%または7%であるが、この添加剤は多くのアノードに添加しなかった。)のある組合せを含んでいる。改質剤および(存在する場合)添加剤の質量は、アノードの質量から差し引かれなければならず、得られたシリコン粒子単独の質量が、比充電容量の算出に使用されることになる(すなわち、コイン−セルの充電容量をシリコン粒子の質量で除算したものが、ある特定のコインセル中のある特定のアノードにおける、シリコン粒子の比充電容量(mAhg
−1)に等しい。)。
【0163】
充電/放電サイクルの一部は、異なる電流および電圧の限界設定パラメータを用いて実施した。これらは、時間に対する電圧と電流の両方を示す図を精査することによって、識別することができる(これらの図において、電圧曲線は赤色で示されており、電流曲線は青色で示されている。)。ほとんどの場合、電圧限界は、充電に関すると3.7Vに設定し、放電に関しては2.0Vに設定した。電流限界は、コインセルにおいて、少なくとも初期には低速の充電/放電(すなわち、0.01mA)を行うと、もっと迅速に充電および/または放電(すなわち、≧0.02mA)したセルよりも、容量劣化に対する耐性が高くなるかどうかを試験するために、かなり変えた。
【0164】
試験結果により、充電容量、充電速度および容量劣化はすべて、c−Siおよび使用した表面改質のタイプに依存することが示されている。実施例は、n型c−Si系列に基づいたものであるが、p型c−Siは、電荷移動度および容量劣化の両方に関するいくつかの点で、良好な性能を示す。真性Si(高純度でドープされていない)は、同様な性能を示すようには思われない。
【0165】
C
60および恐らくC
70フラーレンなどの官能化c−Siコンポジットに電荷受容体を添加すると、電荷移動度が増強され、したがって充電容量と容量劣化の両方の観点から、電池のアノードの性能がかなり増強される。さらに、改質フラーレン材料(C
60F
48)は、低濃度でさえもドーパントとして、顕著な性能の増強を示す。これらの結果により、フッ素化フラーレンおよびこれらの誘導体は、表面改質IVA族粒子から作製された電池アノード薄膜に含まれた場合、優れた性能および安定性を実現することができることが示されている。理論によって拘泥されることを望むものではないが、これらの添加剤は、電荷移動度改善剤として、およびコンポジット材料の結合剤として作用していると考えられる。これにより、産業において他者により普遍的に使用されているポリマーを必要としないで、小型電池のアノード製造が可能になる。
【0166】
表面改質IVA族粒子を含むペーストから調製されたアノードの充電容量および放電容量は、少なくとも市販炭素アノードに匹敵する性能を示す。粒子サイズ、表面改質および導電性粘着添加剤/ドーパントの最適化により、最大2桁の性能改善が可能になり得る。
【0167】
【表1】
【0168】
図23に示されている充電/放電プロット(全体を通じて0.01mAの充電/放電電流)は、表1に記載されているコインセル4210−2 #1について、以下であることが明らかになった。初期充電容量は、0.930mAhであった。初期放電容量は、0.364mAhであった。セルの初期充電は、恐らく、微量不純物の還元、および一部の電解質溶媒分子の還元による固体−電解質界面(SEI)の形成が含まれる。2回目の充電容量は0.425mAhと、最初の放電容量よりもわずかに大きいものに過ぎなかった。2回目の放電容量は0.339mAhと、初期放電容量よりもわずかに小さいものに過ぎなかった。
【0169】
【表2】
【0170】
図24に示されている充電/放電プロット(全体を通じて0.01mAの充電/放電電流)は、表2に記載されているコインセル4210−2 #2が、先のエントリー4210−2 #1とほとんど同じ充電/放電挙動を有している。初期充電容量は0.930mAhと同じであった。初期放電容量は0.391mAhであった(セル#1の場合、0.364mAhであった。)。2回目の充電容量は0.424mAhと、セル#1(0.425mAh)に関する値とほとんど同じであった。2回目の放電容量は0.355mAhと、セル#1(0.364mAh)の値よりもわずかに高かった。
【0171】
【表3】
【0172】
表3のコインセル4D10−0におけるアノードの質量は、約7mgであった。したがって、
図25に示されているこれらのデータに対数あてはめしたものから0.062mAhと外挿された、初期のコイン−セル充電容量は、このアノード材料に関すると、8.9mAhg
−1という初期比充電容量になった。容量劣化は、
図26に示されている通り、これら58サイクルにわたり、10%未満である。
【0173】
【表4】
【0174】
表4のコインセル4D10−2 #1におけるこのアノードの質量は、約7mgであった。したがって、15サイクルから41サイクルまで0.04mAhとなる名目上のコイン−セル充電容量は、
図27に示されている通り、このアノード材料に関すると、5.7mAhg
−1の比充電容量となる。15サイクル後の容量劣化は、
図28に示されている通り、顕著なものではないように思われる。
【0175】
【表5】
【0176】
表5は、コインセル4D10−2 #2を示している。
図29および30は、このコインセルに関する性能データを示している。
【0177】
【表6】
【0178】
表6は、コインセル4D10−2 #3を示している。
図31および32は、このコインセルに関する性能データを示している。
【0179】
【表7】
【0180】
表7は、コインセル4D10−2 #4を示している。
図33および34は、このコインセルに関する性能データを示している。
【0181】
【表8】
【0182】
表8のコインセル429−0のアノード質量は、恐らく約7mgである。3回目のサイクル中のアノード材料の比充電容量は、
図35に示されている通り、約11mAhg
−1である。
図36に示されている通り、容量劣化が、非常に顕著である。
【0183】
【表9】
【0184】
表9のコインセル4210−7は、
図37および38に示される通り、優れた充電容量を有するが、限界劣化特性しか有していない。最初の10回分のサイクル後のコインセル充電容量を見ると、0.319mAhであり、このアノード材料の比充電容量は、アノードが約7mgの重量と仮定すると、約46mAhg
−1である。シリコンの理論比充電容量(約4,000mAhg
−1)は、約87倍高いことに留意されたい。しかし、このアノードにおけるシリコンの量は、7mgよりも20+%軽いことはほとんど間違いない(このアノードは、C
60導電性粘着添加剤を10%、C
60F
48ドーパント添加剤を7%および2,3−DHN表面改質剤を不明量含有している。)。したがって、このアノード材料におけるシリコンの比充電容量は、恐らく約58mAhg
−1である。さらに、それは、10回のサイクル後の比充電容量であり、この時間の間に、セルは、2回目のサイクル中の充電容量の25%よりも多く失った。上記のことに基づいてアノードにおけるシリコンの比充電容量を算出すると、約76mAhg
−1である。
【0185】
【表10】
【0186】
表10のコインセル1210−0 #1は、長時間後でも、依然として3.7Vに到達しない。電圧は、約3.6Vで安定しているように思われ、充電を継続した。電圧限界は、3.6Vに変わり、セルを再開始した。さらに20時間後でも、0.0075mAと依然として充電をしていた。コインセル1210−0 #3は、本質的に同じ挙動を示し、同じ電圧限界の変化があった。唯一の違いは、さらに20時間後でも0.0131mAと依然として充電をしていたことであった。定電流相の場合、0.02mAであり、充電中の定電圧相の場合、0.005mAに低下することに留意されたい。
【0187】
【表11】
【0188】
表11のコインセル4210−0 #1は、27時間後の最初の定電圧(3.7V)相の間、0.005mAに達しなかった。表11のコインセル4210−0 #3は、17時間後の最初の定電流相の間、3.7Vに達しなかった。定電流相の場合、0.02mAであり、充電中の定電圧相の場合、0.005mAに低下することに留意されたい。
【0189】
【表12】
【0190】
図39−41は、表2のコインセルに関する、充電/放電サイクルを示す。コインセル5210−0 #1は、以下の性能を示した。1回目のサイクル:充電容量=0.119mAh;放電容量=0.029mAh;2回目のサイクル:充電容量=0.037mAh;放電容量=0.026mAh;3回目のサイクル:充電容量=0.069mAh;放電容量=0.037mAh;および4回目のサイクル:充電容量=0.027+mAh(この時点で、充電は終了しなかった。)。コインセル5210−0 #2は、以下の性能を示した。1回目のサイクル:充電容量=0.116mAh;放電容量=0.029mAh;2回目のサイクル:充電容量=0.034mAh;放電容量=0.027mAh;および3回目のサイクル:充電容量=0.031mAh;放電容量=0.026mAh。コインセル5210−0 #3は、以下の性能を示した。1回目のサイクル:充電容量=0.130mAh;放電容量=0.034mAh;および2回目のサイクル:充電容量=0.041mAh;放電容量=0.031mAh。
【0191】
表13および14は、コインセルデータ、すなわち充電容量、放電容量、比充電容量、および劣化を、要約した形式で示している。表14中のデータは、表面改質したものの傾向を比較することを意図したものであり、すべて同じn型シリコンをベースとしている。表面改質剤のサイズが大きくなるほど、抵抗率の低下および比充電容量の向上が観測される。
【0192】
【表13】
【0193】
【表14】
【0194】
[実施例6]
炭素アノードとの比較
図42は、炭素をベースとする標準的なアノードにより調製された電池に対する、官能化IVA族粒子により調製されたアノードを有するリチウムイオン電池の比較を示している。炭素をベースとするアノードの性能は赤色で示されており、本発明により調製されたアノードの性能は、紫色および緑色で示されている。示されている通り、4210−0および4210−2の電池は、炭素をベースとする標準的なアノードよりも性能に優れていた。
【0195】
[実施例7]
比充電容量の予測
図43は、Siの抵抗に基づいて比充電容量(mAh/g)がいくらとなるかを予測するのに、電池の作製前にSiを試験することができる、相関関係があるように思われることを示している。
【0196】
上記の詳細説明および添付の実施例は、単に例示に過ぎず、本発明の範囲に関する限定として見なすべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびこの均等物によってしか規定されないことが理解される。
【0197】
開示された実施形態に対する様々な変更および修正は、当業者に明白である。本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成物、配合、または使用方法に関するものを非限定的に含む、そのような変更および修正は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、なされ得る。