(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基本特徴を、前記所望の任意形状パターンのトポロジカルな骨格のほぼ中央に置かれ、且つ前記VSBツール利用可能方向にほぼ平行な利用可能方向を有する長方形として画定するステップを更に含み、前記長方形の各々が、前記分割された模様のシミュレートされた輪郭と前記所望の任意形状パターンの輪郭との距離が所定の粗さ許容範囲内に留まるという制約下で最大のサイズを有している、請求項1に記載の方法。
前記基本特徴の中心、向き、および幅の少なくとも1個が、前記VSB処理および前記所望の任意形状パターン用の前記所定の粗さ許容限度の一群のパラメータのうち少なくとも1個のパラメータの関数として調整され、前記調整が、前記基本特徴の統合体の表面形状と前記所望パターンとの差の最小化に基づいている、請求項2に記載の方法。
前記VSB処理の前記一群のパラメータが、利用可能なショットの向き、最大ショットサイズ、点広がり関数(PSF)の特性寸法、最大ショットサイズ、および最大重なりを含んでいる、請求項3に記載の方法。
前記基本特徴の長さが、前記VSB処理の最大ショットサイズ、前記所望の任意形状パターンの局所的な幅、および一群のカテゴリールールのうち少なくとも1個のルールの関数として計算される、請求項2に記載の方法。
前記要求解像度が前記閾値パラメータよりも高い場合、解像度型である第1の組の基本特徴に加え、前記表面に転写する超微細な第2の組の基本特徴を決定するステップを更に含んでいる、請求項10に記載の方法。
超微細な前記基本特徴の中心位置が、エッジのトポロジカルな骨格および前記所望パターンの中間軸の一方を近似する少なくとも1個の中心曲線を描くことにより決定される、請求項12に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
電子ビームリソグラフィによりパターンを表面に転写する一方法は、可変成形ビームすなわちVSBを用いて正または負レジストコーティングを露出するものである。これを行うため、分割ステップを行う間、当該パターンは、(「ショット」として知られる)放射線量が割り当てられた基本形状に切断される。現在用いられている寸法(25nm未満の臨界寸法すなわち「CD」での技術)において、近接効果(前方散乱および後方散乱)が露出領域の密度に大きく依存するため、ショットの幾何学形状および放射線量は相互に密接に関係している。
【0003】
転写されるパターンは大抵、薄い長方形(ライン)または正方形(相互接続)等の単純な幾何学形状をなしている。これらの状況において、ショットの幾何学的形状は適宜画定されていて、且つ単純である。各パターンは、長方形または正方形のショットの統合体に分割される。
【0004】
にもかかわらず、多くの用途(逆リソグラフィ、フォトニクス、計量校正等)において、上述のような単純な形状ではなく、円形、または不確定な、恐らくは曲線の形状(以下で任意形状と言う)の模様パターンを含めることが必要または有利な場合がある。
【0005】
CDが極めて低い場合の近接効果をより良好に補正すべく、マスクに解像度程度の任意形状の補助的特徴を転写可能であることも有利であろう。
【0006】
これらの状況下で、従来の分割は生成するショットの個数が多過ぎるため、特にパターンの忠実度が最重要な場合に有利でない。書込時間は、ショットの個数に比例して増大するため、マスクまたはウェーハの製造コストが大幅に上昇する。
【0007】
更に、リソグラフィツールとは独立に、従来の分割は大量のデータを生成するためデータの記憶および転写に負担である。このデータ量はまた、近接効果の補正を計算する際の最重要な課題である。
【0008】
従って、電子ビーム装置およびソフトウェアの能力を最大限に利用しながら、表面に転写するパターンの不確定な形状に適応可能な分割方法を用いることは有利であろう。この方向での試みが、円形または曲線パターンを被覆すべく長方形および/または三角形のショットをグリフとして構成する構成方法を開示する米国特許第7,901,850号明細書に記述されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述の従来技術文献では、輪郭の粗さおよび/または解像度目標および/または電子ビーム装置で利用可能なショットの幾何学的形状等、各種の動作制約に対処可能な分割方法論を提供するような解決策を開示していない。
【0011】
本発明の目的は上述の課題の解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明は最初に、表面を複数の基本特徴に分割する、コンピュータ実装された方法を開示するものであり、前記基本特徴の各々が可変成形ビーム(VSB)の少なくとも1個のショットに対して露光されて所望の任意形状パターンを当該表面に転写し、前記方法は、所望の任意形状パターンのトポロジカルな骨格を決定するステップを含んでいる。
【0013】
有利な点として、所望の任意形状パターンのトポロジカルな骨格を決定するステップは、所望の任意形状パターンの中間軸および直線的骨格の少なくとも一方を決定するステップを含んでいる。
【0014】
有利な点として、所望の任意形状パターンの少なくとも1個の中間軸を決定するステップは、所望の任意形状パターンの近似形状を決定する第1のステップ、および当該近似形状にボロノイ図アルゴリズムを適用する第2のステップを含んでいる。
【0015】
有利な点として、所望の任意形状パターンのトポロジカルな骨格を決定するステップは、所望の任意形状パターンの少なくとも1個の直線的骨格を、所望の任意形状パターンを被覆するものとして最初に決定される多角形の頂点位置を含む点の組として決定するステップを含んでいる。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、表面を複数の基本特徴に分割する、コンピュータ実装された方法を開示するものであり、前記基本特徴の各々が可変成形ビーム(VSB)の少なくとも1個のショットに対して露光されて所望の任意形状パターンを当該表面に転写し、前記方法は、VSBツール利用可能方向を考慮に入れるステップを含んでいる。
【0017】
有利な点として、VSBツール利用可能方向は、表面の軸と0°、15°、30°、45°、60°、75°、90°、105°、120°、135°、150°、165°、180°の角度をなす方向を含む一群内で選択される。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、表面を複数の基本特徴に分割する、コンピュータ実装された方法を開示するものであり、前記基本特徴の各々が可変成形ビーム(VSB)の少なくとも1個のショットに対して露光されて所望の任意形状パターンを当該表面に転写し、前記方法は、分割された模様の輪郭をシミュレートするステップ、および分割された模様のシミュレートされた輪郭と所望の任意形状パターンの輪郭との距離を決定するステップを含んでいる。
【0019】
有利な点として、当該実施形態による本発明の方法は更に、分割された模様のシミュレートされた輪郭と所望の任意形状パターンの輪郭との距離の限界をパラメータとして考慮に入れるステップを含んでいる。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、表面を複数の基本特徴に分割する、コンピュータ実装された方法を開示するものであり、前記基本特徴の各々が可変成形ビーム(VSB)の少なくとも1個のショットに対して露光されて所望の任意形状パターンを当該表面に転写し、前記方法は、所望の任意形状パターンのトポロジカルな骨格を決定するステップと、VSBツール利用可能方向をパラメータとして考慮に入れるステップと、分割された模様の輪郭をシミュレートするステップと、分割された模様のシミュレートされた輪郭と所望の任意形状パターンの輪郭との距離を決定するステップとを含んでいる。
【0021】
有利な点として、当該実施形態による本発明の方法は更に、トポロジカルな骨格の一区間の方向に近いツール利用可能方向を少なくとも1個選択するステップを含んでいる。
【0022】
有利な点として、当該実施形態による本発明の方法は更に、基本特徴を、所望の任意形状パターンのトポロジカルな骨格のほぼ中央に置かれ、且つVSBツール利用可能方向にほぼ平行な利用可能方向を有する長方形として画定するステップを含み、前記長方形の各々が、分割された模様のシミュレートされた輪郭と所望の任意形状パターンの輪郭との距離が所定の粗さ許容範囲内に留まるという制約下で最大のサイズを有している。
【0023】
有利な点として、基本特徴の中心、向き、および幅の少なくとも1個が、VSBの処理および所望の任意形状パターン用の所定の粗さ許容限度の一群のパラメータのうち少なくとも1個のパラメータの関数として調整され、前記調整が、基本特徴の統合体の表面形状と所望パターンとの差の最小化に基づいている。
【0024】
有利な点として、VSB処理の当該一群のパラメータは、利用可能なショットの向き、最大ショットサイズ、点広がり関数(PSF)の特性寸法、最大ショットサイズ、および最大重なりを含んでいる。
【0025】
有利な点として、基本特徴のいくつかが重なり合い、カバーされていないショットの向きは、前記重なり合う基本特徴同士の重なり度合を変えることで補完される。
【0026】
有利な点として、基本特徴の幅は、最大ショットサイズ、VSB処理のPSFの特性寸法、および所望パターンに対する粗さ許容度の関数として計算される。
【0027】
有利な点として、基本特徴の長さは、VSB処理の最大ショットサイズ、所望の任意形状パターンの局所的な幅、および一群のカテゴリールールのうち少なくとも1個のルールの関数として計算される。
【0028】
有利な点として、当該一群のカテゴリールールは、幅中央での停止、所望パターンの反対側エッジへの移動、所定の幅での停止を含んでいる。
【0029】
有利な点として、当該実施形態による本発明の方法は更に、角丸めに対する近接効果補正の作用を弱めるステップを含んでいる。
【0030】
有利な点として、当該実施形態による本発明の方法は更に、転写されたパターンの要求解像度の閾値をパラメータとして決定するステップを含んでいる。
【0031】
有利な点として、要求解像度の閾値パラメータは、処理の臨界寸法(CD)が2α未満となるものであり、αは処理のPSFの前方散乱部分の特性寸法である。
【0032】
有利な点として、当該実施形態による本発明の方法は更に、要求解像度が閾値パラメータよりも高い場合、解像度型である第1の組の基本特徴に加え、表面に転写する超微細な第2の組の基本特徴を決定するステップを含んでいる。
【0033】
有利な点として、超微細な基本特徴の中心位置は、エッジのトポロジカルな骨格および所望パターンの中間軸の一方を近似する少なくとも1個の中心曲線を描くことにより決定される。
【0034】
上述の主な制約(解像度の臨界および電子ビーム装置によるショットの幾何学的形状に課される制約)の下で、本発明はショットの数、従って表面への書き込み時間を最小化することができる。本発明はまた、転写されるパターンの輪郭の粗さを最小化にすることができる。各種実施形態において、ショット間における鋭い角度で生じる角丸め効果を利用すべく分割と近接効果補正のステップとの間にループが含まれている。従って、現在使われている装置では利用できない分割角度を代替することができる。実際、電子ビーム装置は、基準となる直交座標系に対する角度が90°または45°ずれたショットは滅多に分割できないが、特定のケースで30°または60°ならば可能であろう。
【0035】
解像度が極めて決定的である場合、本発明によれば、(「電子解像度向上特徴」またはeRIF)を粗い被覆に重ね合わせることにより、コントラストおよび輪郭粒度を同時に最適化することは可能であろう。
【0036】
特定の実施形態において、基本特徴および/またはeRIFの自動配置は、計算能力および時間の観点から費用対効果が極めて優れている。
【0037】
各種実施形態および以下の添付図面の説明から本発明に対する理解が深まり、各種の特徴および利点が明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1a、1b、1cおよび1dは、転写されるパターン、従来技術の2個の分割方法、および本発明の一実施形態による分割方法を各々示す。
【0040】
CMOS集積回路上の接点等、いくつかの特徴の解像度を向上させるには、
図1aに示す種類の特徴をマスクの表面に極めて素早く転写しなければならない。
図1bに示すような標準的な分割を行えば、マンハッタン形状の特徴(すなわち水平および垂直なライン)と比較してショットの個数が劇的に増大するであろう。
【0041】
図1cに、
図1bに示す課題に対する従来技術の解決策を示す。例えば米国特許第7,901,850号明細書に開示された当該解決策によれば、長方形(110c、130c、後者は前者に対して90°傾けられている)または三角形(120c)のショットが曲線のパターンに沿って、当該パターンの表面の最大割合を覆うように配置されている。しかし、ショットの個数は依然として重要であり、良好な解像度を実現するのは極めて困難であろう。その理由は、全ての近接効果を充分考慮に入れて各ショットの適用量を計算することが、一群の重なり合う特徴と目標パターンとを合理的な許容囲内で良好に合致させるために必要な重なりの変動性に起因して極めて複雑であるからである。
【0042】
本発明の一態様によれば、重なり合うショット(110d、120d、130d、140d、150d、160d)は様々な角度で傾いているため、目標パターンの幾何学的形状に合わせることがより容易である。また、重なりを相応に制限できるため、近接効果の補正計算が従来技術での処理よりも簡素化される。無論、利用可能な装置は、傾きの特定の値の良し悪しに制約される場合がある。本発明はまた、当該状況で生じ得る短所を解決する方法を以下の記述で示す。
【0043】
図2に、本発明の多くの実施形態により実行される処理の高水準フロー図を示す。
【0044】
ステップ210において、所望パターン(例えば
図1aの所望パターン)を表すデータが分割ソフトウェアに入力される。ステップ220において、第1のフィルタを適用して、所望パターンが特定の分割を必要とする形式であるか否かを判定する。
【0045】
所望パターンの種類がテストされる。所望のパターン(またはその一部)がマンハッタン型である場合、重なり合わない基本特徴への分割が適用される。この分割は標準であって、本発明の一部ではない。
【0046】
所望パターン(またはその一部)が任意形状(
図1aの所望パターンのケースに類似)である場合、本発明による任意形状分割が適用される。任意形状分割は、重なり無しまたは重なり有りの2種類であってよい。前者は、被覆の基本特徴が全く重なり合わず、補正を実行する際に信頼性がより高く且つ容易である。後者は、被覆の基本特徴の少なくとも一部が重なり合う。両方の場合において、所望パターンの第2の特性がステップ230においてテストされる。このテストは、所望パターンが解像度の限界にあるか否かを判定するものである。判定は、所望パターンのサイズ(最小寸法または臨界寸法すなわちCD)と点広がり関数(PSF)のαパラメータとの関係に基づいている。このパラメータは、ビームの前方散乱が有効である距離を表す。
【0047】
本発明の例示的且つ非限定的なる実施形態として、当該テスト用の閾値を2αに設定することができる。これは、所望パターンのCDが2αよりも低い場合、所望パターンが解像度の限界にあると考えられることを意味する。所望パターンのCDが当該閾値よりも高い場合、ステップ240において、分割が1ステップ処理で実行されて所望パターンに最良に合致する重なり合う特徴の組を決定する。
【0048】
所望パターンに要求解像度が所定の閾値よりも高い場合、コンピュータは、所望パターンを分割すべく2ステップ処理(本方法のステップ250)を適用することを決定する。
−最初に、所望パターンを、重なり合う特徴の組で近似する。この種の基本特徴の決定について
図5a、5b、6aおよび6bを参照しながら記述する。
−第二に、電子超微細特徴を基本特徴に追加する。超微細特徴は実質的に、所望パターンの寸法より小さい寸法である。超微細特徴は例えば、電子解像度向上特徴すなわちeRIFである)。この種の基本特徴の決定について
図7a、7b、7cおよび7dを参照しながら記述する。
【0049】
次いで、従来の全ての分割方法と同様に、分割したデータをステップ260においてマージする。
【0050】
更に、近接効果補正(すなわちPEC)をステップ270において適用する。より良好な結果を与える多くのケースにおいて、分割したデータを補正すべくステップ240(または250)とステップ270の間をループ化することが可能である。例えば、従来のPECアルゴリズムでは、転写されるパターンのエッジの粗さを緩和すべく角丸めを残す方が望ましいにも拘わらず、解像度を上げるべく多数の特徴の角丸めを減らすことがある。この場合、角丸めPECを中止または変更する。
【0051】
次いで、分割したデータは、補正データ(ステップ290)として保存される(ステップ280)。
【0052】
図3a、3bおよび3cに、転写されるパターンおよび本発明の異なる実施形態による異なる2組のパラメータを用いる分割方法を各々示す。
【0053】
VSBツールでは、限られた数の形状、典型的には限られた数の方向を有する長方形または三角形を用いることが可能である。通常、長方形を0または90°の角度で用いることができるが、いくつかのツールでは45°の角度の長方形も許される。これらの方向を以下ではツール利用可能方向と称する。
【0054】
図3aに、1個以上の過渡的な副パターン(群)により分離された一方向の副パターンに切断可能な所望パターンを示す。これらの副パターンは、後続のステップにおいて1または複数のショットに分割される。
【0055】
5個の副パターン310b、320b、330b、340bおよび350bが一方向である決定された、第1の可能な分割を
図3bに示す。各々の一方向副パターンには単一のツール利用可能方向を関連付けることができる。これら5個の副パターンに対する本発明の分割方法について、
図4a、4b、および4cを参照しながら詳細に説明する。
【0056】
過渡的な副パターンが、機械ファイル形式またはVSBツール内で使用される分割のような標準的な分割を用いて分割される。
【0057】
第2の分割例を異なるパラメータの組と共に
図3cに示す。
【0058】
任意形状の分割方法の場合、分割の基本特徴と所望パターンとの距離が
図4aに示すように定義される。許容度を当該距離の最大限度として定義する。この許容度はユーザーにより設定される。
【0059】
図4b、4cは、本発明の各種実施形態における、転写されるパターン内で定義された変数およびアルゴリズムの終了条件の決定を各々示す。
【0060】
本発明の方法の重なりの無い被覆を実行すべく、最初に、被覆に用いる長方形または箱形の中心位置を決定する。
図4bに示すように、中心位置を決定する仕方は、所望パターン内で決定された各々の一方向区間の中間軸(410b、420b、430b)を近似することである。平面内に境界を有する点の組の中間軸を、当該点の組の境界を画定する曲線上に少なくとも2個の最も近い点を有する点の組として定義する。中間軸の計算または近似の可能性について更に以下の記述を参照されたい。
【0061】
各箱形の幅を、各箱形が所望パターンのエッジに重なるように決定する。当該パターンが、許容される最大ショットサイズよりも大きい場合、複数の箱形に分割される。
【0062】
長方形または箱形440b、450bおよび460bの高さは、許容度を尊重する制約下で箱形の個数を最小化するように決定されている。この高さは、許容度および局所中間軸傾きと、対応するツール利用可能方向の傾きとの差を用いて計算することができる。
【0063】
次いで、被覆を停止する条件をテストする。これを
図4cに示す。本例では、所望パターンの2個のエッジの両方が、ツール利用可能方向の一方と、予め設定された値よりも低い角度をなす場合、被覆は停止される。この値は、別のツール利用可能方向がより適している場合、複数のツール利用可能方向から選択されて新規の一方向副パターンを生成する。これは典型的には、現在のツール利用可能方向と次のツール利用可能方向との平均である。
【0064】
図5aおよび5bは、本発明の各種実施形態における、重なり合うショットを用いて転写されるパターンを被覆する2個の異なるモードを示す。
【0065】
図5aに、2次元に沿った被覆が重なり合うように実行される様子を見ることができる。基本特徴510aの第1の組が水平線に沿って配置されている。基本的に、当該組内の全ての特徴は、同一方向の長方形であって、それらの表面がほぼ同じ割合で重なっている。基本特徴520aの第2の組が、第1の組に対して45°傾いている。所望パターンを水平でも垂直でもない特徴に分割する可能性は全ての電子ビーム装置においてあり得ない。しかし、これが可能な場合、分割の基礎として利用可能な基本特徴の模様を最適化する可能性が大きく広がる。
【0066】
解像度を向上させるべく、所望パターンの角に追加的なショット530aを含めることによりパターンの内側エッジを滑らかにすることが可能である。
【0067】
図5bの所望パターンはもっと複雑である。最適分割に向けて被覆可能な仕方は、パターンの正確な形状、および電子ビーム装置による分割に利用可能な異なる向きの基本特徴の種類に依存するであろう。同図の例において、水平基本特徴510b、垂直基本特徴520b、水平方向に対して45°の基本特徴530b、および水平方向に対して135°の基本特徴540bを示す。トポロジカルな骨格として所望パターンの中間軸を用いることができる。平面内に境界500bを有する点の組の中間軸550bを、点の組の境界を画定する曲線上で少なくとも2個の最も近い点を有する点の組として定義する。閉じた任意形状の中間軸を、限定された数のケースにおいて正確に計算することができる。多くの場合、任意形状を、例えばボロノイ図を用いて中間軸の正確な計算が実行できる形状で近似する必要がある。次いで、近似形状の中間軸を、初期任意形状の近似的な中間軸に変換する。近似的中間軸の計算に用いる技術の例として、Attali and alii「Stability and Computation of Medial Axes−aState−of−the−Art Report」、B.Hamman T.Moeller and B.Russel、edtiors、Mathematical Foundations of Scientific Visualization、Computer Graphics、and Massive Data Exploration、Springer−Verlag、Mathematics and Visualization、2007が挙げられる。
【0068】
代替的に、所望パターンが多角形の場合、トポロジカルな骨格として、一様な速度で小型化される多角形の頂点位置である形状の直線的骨格を用いるのが計算効率が高いであろう。Aichholzer、Oswin;Aurenhammer、Franz(1996)、「Straight skeletons for general polygonal figures in the plane」、Proc.2nd Ann.Int.Conf.、Computing and Combinatorics(COCOON ’96)、Lecture Notes in Computer Science、no.1090、Springer−Verlag、pp.117−126を参照されたい。
【0069】
トポロジカルな骨格(または中間軸)の区間が決定されたならば、利用可能方向の中から処理中の区間の軸に最も近いツールの方向を選択することができる。
【0070】
図6a、6b、6cおよび6dに、本発明の各種実施形態における、重なり合う被覆のパラメータ計算を示す。
【0071】
所望パターンの被覆に用いる基本特徴の中心位置が決定されたならば、これらの基本特徴の正確な形状を決定する必要がある。
−このステップを実行するために、装置の特性に依存する以下のパラメータ、すなわち使用中の電子ビーム装置のショットの最大サイズ(現行装置では250nm〜1ミクロン)と、
−使用中の電子ビーム装置で利用可能なショットの傾き(0°、30°、45°、60°、90°、120°、135°等)(利用可能な方向が多いほど良く、本発明の方法は全ての利用可能な方向を考慮に入れることができる)と、
−電子ビーム装置の点広がり関数(PSF)の形状、すなわち前方散乱が有効な距離(この記述ではパラメータα)により画定できる形状とを考慮に入れる。
【0072】
他のパラメータは用途に依存し、初期形状と最終形状(
図4aに示すような)との間の許容度、または初期形状とシミュレートされた輪郭との間の最大偏差により定義される。典型的には、許容度はCDに依存して数ナノメートルから数十ナノメートルの範囲で変動する。導波管または共鳴器のような光学素子では、例えばナノメートル範囲での粗さが求められる。電子素子の場合、粗さは典型的にはCD/20未満でなければならない。これは、分割を電子ビームによるマスク書きこみに適用する場合、拡大係数に基づきスケーリングする必要がある。
【0073】
次いで、被覆に用いる基本特徴の実際の中心位置および寸法を計算する必要がある。
【0074】
各ショットに対する基本特徴の位置および傾きは、基本特徴の統合体の表面形状と所望パターンとの差を粗さ許容範囲内で最小化すべく調整する必要がある。
【0075】
使用する電子ビーム装置で傾き値が利用できない場合、追加的な重ね合わせにより補償することができる。
【0076】
次いで、各基本特徴の幅と長さを決定する必要がある。
図6aを参照するに、基本特徴610aを形成するショットの幅(所望の曲線パターンの区間に沿って画定)は、最大ショットサイズおよび最大間隙の関数として決定される。最大間隙は、異なる方法(シミュレーションまたは参照テーブル)により計算することができる。基本特徴の長さ620a(所望の曲線パターンの幅と交差する方向に画定される)は、所望の曲線パターンの局所形状630aおよび最大ショットサイズの関数として計算される。今述べた所のデータ準備(すなわち「dataprep」)のステップに続く近接効果補正のステップを行う間、若干ぼやけた角における解像度を上げるために角丸めの若干の補正を含めることは標準的な行為ある点に注意されたい。重なり合う基本特徴による曲線パターンの被覆を含む本発明のdataprepを適用する際に、角丸め効果は有利に働く。近接効果610bにより、レジストのcountourが、実験結果からα(αはPSFの前方拡散パラメータ)のオーダーであると予想できる距離620bだけ角の底部から離れたライン630bまでずれることが
図6bから分かる。
【0077】
角丸めをモデリングすることができる。従って、重なりによる被覆の特定の構成から生じた所望の曲線パターンのエッジの粗さに対する影響を予想することができる。PECステップを行う間、エッジチューニングを実行することができ、分割とPECステップとの間をループ化して、結果を向上させるべくショット間の重なりの量を変更することができる。重なりと粗さとの関係は、
図6cと6dの比較から評価することができる。すなわち
−
図6cでは、限られた重なり610cにより限られた角丸めが生じ、シミュレートされたレジストの輪郭620cと所望パターン630cの輪郭との間に有意差があり、
−
図6dでは、顕著な重なり610dにより生じる近接効果650dは、角丸めが生じるものの、シミュレートされたレジストの輪郭620dが所望パターンの輪郭630dの極めて近くにあるという良好な結果をもたらし、その結果、粗さは許容範囲内に留まり易くなる。
【0078】
図7aおよび7bは、本発明の各種実施形態における、被覆にeRIFを追加する2個の異なる実施形態を各々示し、
図7bはeRIFの寸法の計算を示す。
【0079】
パターンが解像度の観点から臨界に達している(所望パターンのCDが2α未満)場合、第1レベルの被覆に、転写されるパターンのエッジ上の重なり合う(または恐らくは重なり合うショットが無い)超微細特徴を重ね合わせることが必要である。これらの超微細特徴は、第1の被覆の基本特徴よりもはるかに小さい、例えば1桁小さい寸法である。これらはeRIFであってよい。
【0080】
図7aに見られるように、第1レベルの被覆は、
図5bを参照しながら説明したように実行することができる。中間軸710aまたは直線的骨格は、第1の組の基本特徴720aの幅および長さと同様に正確に計算される。
図5bの分割の計算に用いたものと同一のパラメータ(利用可能なショットの傾き、粗さ許容度、PSFのα、最大ショットサイズ、最大重なり)を用いて
図7aの第1レベルの分割を計算することができるが、eRIFによる第2の被覆がパターンのエッジに実行されるため、粗さ許容度をαの値の数倍まで緩和することができる。
【0081】
次いで、第2レベルの分割を実行して、eRIFの730aを第1の分割のエッジに配置する。eRIFを必要とする形状は、CDに基づくデータフィルタを用いて、自身のサイズに応じて選択される。
【0082】
図7bに見られるように、eRIFの傾き710bおよび長さ720bは、エッジまたは中間軸の傾きまたは所望パターンの骨格に沿うように画定されている。利用可能なショットの傾きの任意の組、任意のエッジまたは中間軸あるいは骨格の傾きに対して、eRIFの傾きおよび長さを、中間軸または骨格あるいはエッジの傾きに沿うように調整することができる。そのために、eRIFの傾きを最初に、利用可能なショットの傾きのうちエッジに傾きに最も近い値に設定することができる。これによりeRIFの長さは、エッジの傾きに完全に沿うように1個の値しか取り得ない。
【0083】
eRIFの幅730bは、以下のようなルールにより画定することができる。
aseRIFの幅=(局所CD)/3
【0084】
ルールの選択は、本発明のシステムのユーザーにより決定することができる。パターン印刷の精度を上げるには、eRIFの幅を狭めるか、または後続のPECステップを行う間の線量係数を増大させてレジスト内における線量を急激に増やすことにより過露光の利得を得ることが可能である。
【0085】
図7cの実施形態において、解像度目標はより野心的である。所望パターンのCDは、PSFのαパラメータにより決定される解像度限界に近い。この場合、各eRIFを所望パターンの中間軸または骨格710cに沿って配置することがより最適である。各eRIFの730cの形状は、所望パターンのエッジに沿って配置された(中間軸または骨格を用いて各eRIFの位置を画定)各eRIFの場合と同様に画定される。この種の実施形態のいくつかにおいて、第1の基本特徴720cを除外することができる。この場合、各eRIFの露光線量は大幅に増大する筈である。
【0086】
半導体ウェーハへの直接照射またはマスクの露出により本発明の方法を実装するには、例えば、VISTEC(商標)社から販売されているSB3054型の装置を用いることが可能である。分割およびPECステップは、本発明によるアルゴリズムにより変更された、Synopsis(商標)社から販売されているPROXECCO(商標)ブランド、Genisys(商標)社のBeamer(商標)ブランド、または本願譲受人であるAselta Nanographics(商標)社から販売されているInscale(商標)ブランドのソフトウェアにより実行することができる。
【0087】
本発明の特定の実装例は特に、分割装置およびソフトウェアで利用可能なショットの傾きに依存する。PECステップは、使用するPECソフトウェアで利用可能なアルゴリズムに従い実行される。特に、本発明の分割に容易に適合可能な角丸めアルゴリズムを提供するInscale(商標)ソフトウェアを用いるのが有利である。また、米国出願第13/641128号明細書に開示された種類の線量および形状最適化を組み合せて用いる線量変調アルゴリズムを実装するこの種のソフトウェアにおいて。これにより、本発明による分割をこの種のPECアルゴリズムと最適に一体化することが可能になる。
この分割が、リソグラフィツールがシングルまたはマルチパス露光を用いれば同様に実行できるのは、本発明の方法が充分堅牢であるためこの選択による影響を受けないからである。
【0088】
本明細書に開示する例は本発明のいくつかの実施形態を説明するものに過ぎず、添付の請求項により定義される前記発明の範囲を一切制限しない。