特許第6306100号(P6306100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306100
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ピストン摩耗判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 13/08 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
   G01B13/08
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-133869(P2016-133869)
(22)【出願日】2016年7月6日
(65)【公開番号】特開2018-4521(P2018-4521A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2017年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】松岡 祐之
(72)【発明者】
【氏名】吉原 宗徳
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−349718(JP,A)
【文献】 特開2001−349717(JP,A)
【文献】 特開平5−272950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 13/00−13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造機に用いられるピストンの摩耗量を判定することで、前記ピストンの使用条件を管理するために用いられるピストン摩耗判定装置であって、
判定対象となる前記ピストンを挿入設置するための挿入穴を備える測定ヘッドと、
空気を吸引排気するためのポンプと、
前記測定ヘッドと前記ポンプとを接続するチューブと、
前記チューブの途中に設置される流量計と、
を備え、
前記測定ヘッドに前記ピストンを挿入設置した状態で前記ポンプを稼働させることで前記測定ヘッドと前記チューブ内の空気を吸引排気し、当該吸引排気の際に前記流量計によって計測される流量値に基づいて、前記ピストンの摩耗量を判定するようにしたことを特徴とするピストン摩耗判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のピストン摩耗判定装置において、
前記流量計が、前記チューブの途中に複数個設けられていることを特徴とするピストン摩耗判定装置。
【請求項3】
請求項1に記載のピストン摩耗判定装置において、
前記ピストンの摩耗量の判定は、N段階(Nは2以上の自然数)で実行されるものであり、
前記流量計は、N−1個設けられるとともに、N段階ある前記ピストンの摩耗量の判定の境界の流量値を測定可能であることを特徴とするピストン摩耗判定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のピストン摩耗判定装置において、
前記測定ヘッドの挿入穴には、判定対象となる前記ピストンの寸法形状に応じてスペーサを設置可能であることを特徴とするピストン摩耗判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造機に用いられるピストンの摩耗量を判定することで、ピストンの使用条件を管理するために用いられるピストン摩耗判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト法などの鋳造を行う鋳造機には、金属溶湯などを射出するためのピストンが用いられている。このピストンには、鋳造機によって鋳造が繰り返されると、摩耗が生じることとなる。したがって、ピストンの摩耗量を適切に管理することで、ピストンの使用条件、すなわち、交換時期や補修時期などを決定する必要がある。適切なピストン管理を行わなければ、鋳造時の不具合発生や鋳造品の不良発生、鋳造機の故障発生といった問題が発生する虞があるからである。
【0003】
ところで、従来技術において、鋳造機に用いられるピストンの摩耗量を管理する際には、円環状のピストンゲージを用いることが一般的であった。しかし、円環状のピストンゲージを用いてピストンの外形寸法を測定する場合、ピストンが偏摩耗していると、寸法測定値だけからでは適切な管理を行うことが困難であった。
【0004】
また、下記特許文献1には、円柱状のワークの外形を測定するための装置が開示されている。この装置は、ワークを挿入する穴が形成されたヘッドと、該ヘッドを穴と直交する方向にスライド自在に支持するヘッド支持手段と、ワークを穴に挿入して該挿入位置でワークを支持するワーク支持手段と、穴に流体を穴の軸方向に供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁とワークとの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又はワークが受ける抗力、或いはワークの変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較してワークの外径に換算する換算手段と、を備えたことを特徴とする外径測定装置である。そして、この装置によれば、ヘッドの穴にワークを挿入してその挿入位置で支持するとともに、ヘッドを穴と直交する方向にスライド自在に支持したので、自動求心作用を受けたワークが自動的に穴の中心に配置され、ワークの外径寸法が精度良く測定されるという効果を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−349718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上掲した特許文献1に記載の装置は、架台、モータ、リニアスケール、アーム、スライダなどといった多数の構成部材を必要とするものであり、装置が大型化、複雑化するという課題が存在していた。また、従来技術では、上述した円環状のピストンゲージでは不可能であったピストンの摩耗量を精度良く測定することができ、かつ、簡易な構成を有する装置が存在していなかった。
【0007】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、鋳造機に用いられるピストンの摩耗量を適切に管理することができ、しかも、簡易な装置構成を有する従来技術には無い新たなピストン摩耗判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明に係るピストン摩耗判定装置(10)は、鋳造機に用いられるピストン(5)の摩耗量を判定することで、前記ピストン(5)の使用条件を管理するために用いられるピストン摩耗判定装置(10)であって、判定対象となる前記ピストン(5)を挿入設置するための挿入穴(12)を備える測定ヘッド(11)と、空気を吸引排気するためのポンプ(21)と、前記測定ヘッド(11)と前記ポンプ(21)とを接続するチューブ(31)と、前記チューブ(31)の途中に設置される流量計(41)と、を備え、前記測定ヘッド(11)に前記ピストン(5)を挿入設置した状態で前記ポンプ(21)を稼働させることで前記測定ヘッド(11)と前記チューブ(31)内の空気を吸引排気し、当該吸引排気の際に前記流量計(41)によって計測される流量値に基づいて、前記ピストン(5)の摩耗量を判定するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係るピストン摩耗判定装置(10)では、前記流量計(41)を、前記チューブ(31)の途中に複数個設けるようにすることができる。
【0011】
また、本発明に係るピストン摩耗判定装置(10)において、前記ピストン(5)の摩耗量の判定は、N段階(Nは2以上の自然数)で実行されるものであり、前記流量計(41)は、N−1個設けられるとともに、N段階ある前記ピストン(5)の摩耗量の判定の境界の流量値を測定可能であることとすることができる。
【0012】
さらに、本発明に係るピストン摩耗判定装置(10)において、前記測定ヘッド(11)の挿入穴(12)には、判定対象となる前記ピストン(5)の寸法形状に応じてスペーサ(13)を設置可能とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鋳造機に用いられるピストンの摩耗量を適切に管理することができ、しかも、簡易な装置構成を有する従来技術には無い新たなピストン摩耗判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るピストン摩耗判定装置の全体構成を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る測定ヘッドを説明するための図であり、図中の分図(a)が判定対象となるピストンを示しており、分図(b)が測定ヘッドにピストンを挿入設置した状態を示している。
図3】本実施形態に係るピストン摩耗判定装置によって実行されるピストン摩耗判定処理を示したフローチャート図である。
図4】本実施形態に係るピストン摩耗判定装置の設置例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、本実施形態に係るピストン摩耗判定装置の全体構成を示す概略構成図である。本実施形態に係るピストン摩耗判定装置10は、鋳造機に用いられるピストン5の摩耗量を判定することで、ピストン5の使用条件を管理するために用いられる装置であり、主要な構成部材として、測定ヘッド11と、真空ポンプ21と、測定ヘッド11と真空ポンプ21とを接続するチューブ31と、チューブ31の途中に設置される流量計41と、流量計41と電気的に接続する制御盤51と、を備えている。なお、真空ポンプ21の代わりに、負圧を発生させるブロワを用いても良い。
【0017】
測定ヘッド11の具体的な構成が、図2に示されている。ここで、図2は、本実施形態に係る測定ヘッドを説明するための図であり、図中の分図(a)が判定対象となるピストンを示しており、分図(b)が測定ヘッドにピストンを挿入設置した状態を示している。図2の分図(b)に示すように、本実施形態に係る測定ヘッド11は、判定対象となるピストン5を挿入設置するための挿入穴12を備えている。
【0018】
判定対象となるピストン5は、略円柱形状をした外観を有する部材であり、鋳造に用いることで、先端付近が偏摩耗し、径寸法が減少することとなる。その様子が、図2中の分図(a)で示されており、この分図(a)では、符号αで示す寸法だけ先端部が摩耗したピストン5が描かれている。この様なピストン5を、図2中の分図(b)で示すように、測定ヘッド11が備える挿入穴12に挿し込むことで、測定ヘッド11に対するピストン5の設置が完了する。なお、図2中の分図(b)で示すように、測定ヘッド11が備える挿入穴12には、スペーサ13を設置することが可能となっている。すなわち、ピストン5の摩耗は先端部に発生するので、挿入穴12の奥深くにピストン5を挿し込んでしまうと、摩耗状態を好適に判定することが不可能となってしまう。そこで、本実施形態では、挿入穴12に対して常に好適な位置にピストン5を設置するために、判定対象となるピストン5の寸法形状に応じてスペーサ13を用意し、測定ヘッド11の挿入穴12に対して適切なスペーサ13を設置することで、本実施形態に係る判定処理が実施可能となる。
【0019】
上述した測定ヘッド11は、図1に示す本実施形態では、5個準備されている。これら5個の測定ヘッド11は、ピストン5の径寸法に応じて使い分けられるものである。なお、本実施形態では、ピストン径がφ70mm用、φ80mm用、φ90mm用、φ100mm用、φ110mm用という、5種類の寸法サイズに適用可能な測定ヘッド11が準備されている。
【0020】
そして、5個の測定ヘッド11は、チューブ31を介して真空ポンプ21に接続されている。本実施形態に係る真空ポンプ21には、真空レギュレータ22が接続されている。真空ポンプ21が稼働することで、真空ポンプ21と測定ヘッド11との間をつなぐチューブ31内の空気が吸引排気されることとなるが、本実施形態に係る真空ポンプ21には真空レギュレータ22が併設されているので、この真空レギュレータ22を利用することでチューブ31から意図的に空気の漏れを生じさせ、真空ポンプ21と測定ヘッド11との間をつなぐチューブ31内の真空度や圧力等を好適に調整することが可能となっている。
【0021】
さらに、真空ポンプ21と測定ヘッド11との間をつなぐチューブ31の途中には、複数の流量計41が設置されている。本実施形態において、流量計41は、5個ある測定ヘッド11のそれぞれに対して2つずつ並列して設置されている。すなわち、本実施形態に係る流量計41は、第一流量計41aと第二流量計41bの2つで1組となるように設けられている。
【0022】
第一流量計41aと第二流量計41bには、測定ヘッド11と接続する側の間に電動ボールバルブ42が設置されている。この電動ボールバルブ42は、1つの電動弁で2つの流路の切り換えおよび全閉ができる三方ボールバルブとして構成されており、電動ボールバルブ42の動作によって、例えば、初めに第一流量計41aでチューブ31内を流通する空気の流量を測定した後、電動ボールバルブ42によって流路を切り替え、続いて第二流量計41bを用いてチューブ31内を流通する空気の流量を測定することが可能となっている。
【0023】
またさらに、本実施形態に係る流量計41は、制御盤51と電気的に接続されており、第一流量計41aと第二流量計41bによって測定された流量値や、測定可能であったか否か等の電気信号を、制御盤51に対して送信できるように構成されている。本実施形態に係る制御盤51には、マイコンやコンピュータ等といった中央演算処理装置(CPU)が組み込まれており、流量計41から受信した電気信号に基づき、ピストン5の摩耗判定処理を実行することが可能となっている。なお、制御盤51には、流量計41によって計測される流量値に基づいてピストン5の摩耗量を判定した結果を表示可能な判定ランプ52が設置されている。本実施形態では、判定ランプ52は3個設置されており、それぞれ「A」、「B」、「C」の3ランクの判定結果を表示することが可能となっている。
【0024】
以上、図1および図2を参照して、本実施形態に係るピストン摩耗判定装置10の全体構成を説明した。上述した構成を有するピストン摩耗判定装置10によれば、測定ヘッド11にピストン5を挿入設置した状態で真空ポンプ21を稼働させることで測定ヘッド11とチューブ31内の空気を吸引排気し、当該吸引排気の際に流量計41によって計測される流量値に基づいて、ピストン5の摩耗量を判定することが可能となる。そこで次に、図3を参照図面に加えることで、本実施形態に係るピストン摩耗判定装置10によって実行されるピストン摩耗判定処理の具体的な処理内容についての説明を行う。ここで、図3は、本実施形態に係るピストン摩耗判定装置によって実行されるピストン摩耗判定処理を示したフローチャート図である。
【0025】
本実施形態に係るピストン摩耗判定処理では、まず、測定ヘッド11に対してピストン5を挿入設置する(ステップS10)。このとき、図2を用いて説明したように、測定ヘッド11が備える挿入穴12にはスペーサ13を設置することが可能となっており、判定対象となるピストン5の寸法形状に応じてスペーサ13を用意し、測定ヘッド11の挿入穴12に対して適切なスペーサ13を設置することで、挿入穴12に対して好適な位置でピストン5を設置することが可能となる。また、本実施形態に係る測定ヘッド11は5個準備されているので、判定対象となるピストン5の径寸法に応じて適切な測定ヘッド11を準備すれば良い。
【0026】
次に、真空ポンプ21を稼働させて、真空ポンプ21と測定ヘッド11との間をつなぐチューブ31内の空気を吸引排気する(ステップS11)。また、真空ポンプ21を稼働させた状態で、電動ボールバルブ42を動作させてチューブ31内の流路を開放させる(ステップS12)。真空ポンプ21を稼働させた状態で電動ボールバルブ42を弁開放させると、まず初めに第一流量計41aが設置された側の流路で空気が流通するように弁開放されることとなるので、第一流量計41aによってチューブ31内を流通する空気の流量値を測定可能な状態となる(ステップS13)。
【0027】
このとき、仮に、測定ヘッド11とピストン5との間に隙間が無ければ、チューブ31内で空気が流通することは無い。すなわち、第一流量計41aは、空気の流量値が「ゼロ」であることを計測できるのみである。しかし、図2の分図(a)で示したように、ピストン5が符号αで示した寸法分、摩耗していた場合には、測定ヘッド11とピストン5との間に隙間が生じることになるので、真空ポンプ21によって空気は引かれ続けることとなり、第一流量計41aは、一定の流量値を計測することとなる。なお、本実施形態の第一流量計41aは、例えば、計測可能な上限値が30L/minの流量計となっており、チューブ31内で流通する空気の流量値が、30L/min以下であるか、30L/minより大きく測定不能であるかを判定し、その情報を電気信号として制御盤51に対して電送できるようになっている。
【0028】
第一流量計41aによる流量値の測定が終了すると、電動ボールバルブ42を動作させて空気の流通経路を切り替え、第二流量計41bによってチューブ31内を流通する空気の流量値を測定可能な状態とする(ステップS14)。本実施形態の第二流量計41bは、例えば、計測可能な上限値が59L/minの流量計となっており、チューブ31内で流通する空気の流量値が、59L/min以下であるか、59L/minより大きく測定不能であるかを判定し、その情報を電気信号として制御盤51に対して電送できるようになっている。
【0029】
以上のように、第一流量計41aで測定された流量値と、第二流量計41bによって測定された流量値とが、制御盤51に電送されることとなる(ステップS15)。本実施形態に係る制御盤51には、上述したようにマイコンやコンピュータ等といった中央演算処理装置(CPU)が組み込まれている。そして、本実施形態に係る制御盤51の中央演算処理装置(CPU)には、以下の表1に示すような判定テーブルが記憶されている。
【0030】
【表1】
【0031】
そして、制御盤51の中央演算処理装置(CPU)は、上掲した表1に示す判定テーブルに従って、判定処理を行うこととなる。具体的には、流量値を電送してきた第一流量計41aと第二流量計41bの情報から、制御盤51の中央演算処理装置(CPU)は、判定対象となるピストン5の径が何れの径のものかを判断することができる(ステップS16)。すなわち、ピストン5がφ70mmの場合には、φ70mm用の測定ヘッド11が用いられているはずであり、φ70mm用の測定ヘッド11に対応した第一流量計41aと第二流量計41bから流量値が電送されているはずである。このことから、ピストン5の径が何れのものであるかが判定できる。
【0032】
そして例えば、ピストン5がφ70mmの場合において、第一流量計41aから電送されてきた流量値が30L/min以下であれば、判定ランク「A」と判定できる。この「A」ランクは、流量値が最も小さいことから、ピストン5の摩耗量が少ないことを示しており、使用を継続して良いと判断することができる。なお、本実施形態では、判定ランク「A」と判断すると、判定対象となったピストン5は、「鋳造個数5000個以上のロットで使用することができる。」などと判定することができる。
【0033】
また例えば、ピストン5がφ70mmの場合において、第一流量計41aから電送されてきた流量値がオーバーフロー(計測不能)であり、第二流量計41bから電送されてきた流量値が59L/min以下であれば、判定ランク「B」と判定できる。この「B」ランクは、流量値が「A」ランクよりも大きくなっており、ピストン5の摩耗量がある程度大きくなってきていることを示しており、未だ使用を継続することはできるが、今後の継続使用に際しては注意を要すると判断することができる。なお、本実施形態では、判定ランク「B」と判断すると、判定対象となったピストン5は、「鋳造個数5000個未満のロットで使用することができる。」などと判定することができる。
【0034】
さらに例えば、ピストン5がφ70mmの場合において、第一流量計41aから電送されてきた流量値がオーバーフロー(計測不能)であり、第二流量計41bから電送されてきた流量値もオーバーフロー(計測不能)であった場合には、チューブ31内を流通する空気の流量値は60L/min以上であると判断できるので、判定ランク「C」と判定できる。この「C」ランクは、流量値が「B」ランクよりも更に大きくなっており、ピストン5の摩耗量が非常に大きくなってきていることを示しており、使用を継続することができないと判断することができる。なお、本実施形態では、判定ランク「C」と判断すると、判定対象となったピストン5は、「ピストン担当者確認後、廃棄処分する。」などと判定することができる。
【0035】
以上のようにして制御盤51の中央演算処理装置(CPU)によって判定された結果は、判定ランプ52に表示されることとなる(ステップS16)。なお、本実施形態の判定ランプ52は、「A」、「B」、「C」の3ランクの判定結果を表示することが可能となっているので、ピストン摩耗判定装置10のオペレータは、一見して判定結果を把握することができる。
【0036】
以上、本実施形態に係るピストン摩耗判定装置10によって実行されるピストン摩耗判定処理の具体的な処理内容についての説明を行った。図1図3を用いて説明したように、本実施形態に係るピストン摩耗判定装置10は、従来技術に比べて比較的シンプルな装置構成を有している。また、測定ヘッド11にピストン5を挿入設置した状態で真空ポンプ21を稼働させれば、電動ボールバルブ42の切り替え動作だけで簡便に判定結果が制御盤51の判定ランプ52に表示されるので、ピストン摩耗判定装置10のオペレータに掛かる負荷が非常に少なく済む構成となっている。したがって、本実施形態に係るピストン摩耗判定装置10によれば、鋳造機に用いられるピストン5の摩耗量を適切に管理することができ、しかも、簡易な装置構成を有する従来技術には無い新たなピストン摩耗判定装置10を提供することが可能となっている。また、吸気による流量測定なので、測定ヘッド11からピストン5が抜け出す虞が無く、安全である。その上、測定ヘッド11内にピストン5を水平方向に設置するので、ピストン5が鋳造機に設置されるのと同様な状態で判定ができ、判定精度を増すことができる。また、真空ポンプ21を稼働させた後、この稼働を止め、所定時間に流出した空気の流量を測定する、いわゆるリーク測定としても良い。
【0037】
なお、上述した本実施形態に係るピストン摩耗判定装置10は、あらゆる設置条件に対応することが可能である。例えば、図4は、本実施形態に係るピストン摩耗判定装置の設置例を説明するための図であるが、図1で例示した構成のピストン摩耗判定装置10をピストン置場の近くに設置しておき、5個ある測定ヘッド11をピストン置場に固定設置した治具架台45に設けておき、判定対象であるピストン5を鋳造機から台車46に載せて運ぶように構成することができる。
【0038】
また、例えば、図4で示す台車46に対してピストン摩耗判定装置10を設置し、移動式のピストン摩耗判定装置10として構成することも可能である。この場合、台車46には、1個の測定ヘッド11を載せて利用するようにし、他の4個の測定ヘッド11については、ピストン置場に設けた治具架台45上に置いておき、台車46上に治具架台45から測定ヘッド11を載せ替えるようにして使用することができる。このように使用することで、機動的に使用可能なピストン摩耗判定装置10を実現することが可能となる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、2つの流量計41を用いることで、ピストン5の摩耗量の判定を「A」、「B」、「C」の3ランクで行うようにした場合を例示した。しかし、本発明に係るピストン摩耗判定装置では、流量計の設置個数を増加させることで、ピストンの摩耗量の判定ランク数を増加することができる。すなわち、本発明では、ピストンの摩耗量の判定は、N段階(Nは2以上の自然数)で実行されるものであり、流量計は、N−1個設けられるとともに、N段階あるピストンの摩耗量の判定の境界の流量値を測定可能であることとすることができる。このようにしてピストン5の摩耗量の判定ランク数を増加させれば、より詳細な管理を実行することができる。
【0041】
また例えば、上述した実施形態において、電動ボールバルブ42の切り替え動作はオペレータの操作によって行われることが想定されていた。しかしながら、電動ボールバルブ42の切り替え動作については、例えば、制御盤51の中央演算処理装置(CPU)を利用することで、自動的に行うようにしても良い。
【0042】
また例えば、上述した実施形態において、流量計41は、5個ある測定ヘッド11のそれぞれに対して2つずつ並列して設置されていた。しかしながら、本発明の範囲は上述した実施形態には限定されない。例えば、測定ヘッド11のそれぞれに対して2つずつ設置される流量計を直列に配置することも可能である。流量計を直列配置することで、チューブ31内の空気の流通状態(流量値)を同一条件で同時に計測することができ、また、電動ボールバルブ42の切り替え動作も不要となるので、装置の簡便化が進み好ましい。
【0043】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0044】
5 ピストン、10 ピストン摩耗判定装置、11 測定ヘッド、12 挿入穴、13 スペーサ、21 真空ポンプ、22 真空レギュレータ、31 チューブ、41 流量計、41a 第一流量計、41b 第二流量計、42 電動ボールバルブ、45 治具架台、46 台車、51 制御盤、52 判定ランプ。
図1
図2
図3
図4