(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306119
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】インキフィードバックを排除するための石版インキへの添加剤
(51)【国際特許分類】
C09D 11/03 20140101AFI20180326BHJP
【FI】
C09D11/03
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-198255(P2016-198255)
(22)【出願日】2016年10月6日
(62)【分割の表示】特願2014-531977(P2014-531977)の分割
【原出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2017-71773(P2017-71773A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2016年11月4日
(31)【優先権主張番号】61/538,718
(32)【優先日】2011年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506165128
【氏名又は名称】サン ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナン, ラマサミ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ, ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッリブラウ, マティーアス
【審査官】
菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−215848(JP,A)
【文献】
特開平06−234950(JP,A)
【文献】
特開2010−229299(JP,A)
【文献】
特開2004−359767(JP,A)
【文献】
特開平06−080918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性オフセット輪転石版インキ組成物であって、
着色剤と、
ニスと、
水溶性アルコキシ化修飾ロジンと、を含む、石版インキ組成物。
【請求項2】
放射線硬化性オフセット輪転石版インキ組成物であって、
着色剤と、
ニスと、
水溶性アルコキシ化修飾ロジンと、を含む、石版インキ組成物。
【請求項3】
前記修飾ロジンが、ガムロジン、ウッドロジン、またはトール油ロジンである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記修飾ロジンが、メトキシ化修飾ロジン、エトキシ化修飾ロジン、プロポキシ化修飾ロジン、およびブトキシ化修飾ロジンから選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記修飾ロジンが10%〜70%アルコキシ化される、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記修飾ロジンが少なくとも50%アルコキシ化される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記修飾ロジンが、前記インキ組成物の0.1重量%または約0.1重量%〜10重量%または約10重量%の量で存在する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記修飾ロジンがエトキシ化修飾ロジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ビヒクル、粘土、乳化安定剤、ワックス、油、および乳化剤、またはこれらの任意の組み合わせから選択される成分をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
オフセット輪転石版印刷プロセス中のインキフィードバックおよびインキ蓄積を減少させるか、または排除する方法であって、
石版インキを提供することと、
アルコキシ化修飾ロジンを前記石版インキに添加することと、
オフセット輪転石版印刷プロセスを用いて前記インキを被印刷物に塗布することと、を含む、方法。
【請求項11】
前記アルコキシ化修飾ロジンが、前記インキの0.1重量%または約0.1重量%〜10重量%または約10重量%の量で前記インキに添加される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アルコキシ化修飾ロジンが10%〜70%アルコキシ化される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルコキシ化修飾ロジンが少なくとも50%アルコキシ化される、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記修飾ロジンが、メトキシ化修飾ロジン、エトキシ化修飾ロジン、プロポキシ化修飾ロジン、およびブトキシ化修飾ロジンから選択される、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アルコキシ化修飾ロジンがエトキシ化修飾ロジンである、請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
石版印刷中のインキフィードバックおよびインキ蓄積を減少させるための石版インキ中の添加剤としての水溶性アルコキシ化修飾ロジンの使用。
【請求項17】
前記修飾ロジンが10%〜70%アルコキシ化される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記修飾ロジンが、メトキシ化修飾ロジン、エトキシ化修飾ロジン、プロポキシ化修飾ロジン、およびブトキシ化修飾ロジンから選択される、請求項16または17に記載の使用。
【請求項19】
前記アルコキシ化修飾ロジンがエトキシ化修飾ロジンである、請求項16〜18のいずれかに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
2011年9月23日に出願されたRamasamy Krishnan、Jeff Jones、およびMatthias Hellblauの米国仮出願第61/538,718号、表題「ADDITIVES TO LITHO INKS TO ELIMINATE INK FEEDBACK」に対する優先権の利益を主張する。可能な場合、本出願の主題は、参照によりその全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
石版印刷とは、同一の平面上に画像領域および非画像領域を有する印刷版を利用する平版印刷プロセスである。オフセット石版印刷機は、典型的には、1つ以上の印刷版を保持する円筒平板を含む。インキローラーは、1つ以上のインキ着けローラーを利用してインキを印刷版に塗布する。インキ着けローラー上のインキ膜は、印刷版上の画像領域と接触し、インキをインキ着けローラーから印刷版に移動させる。その後、印刷版上のインキ付けされた画像は、紙等の印刷される材料に画像を移動させるゴム胴に移動する。このプロセスは、印刷版が紙に直接印刷しないが、画像の複製を材料上に形成する前に最初にゴムブランケット上に「オフセット」される(オフセットブランケット)ため、オフセット石版印刷と称される。
【0003】
インキがいくつかの領域に付着するが、その他の領域には付着しないように、化学的処理を用いて、印刷版上で異なる表面エネルギーを有する領域を作成する。印刷(画像)領域が、典型的には、疎水性かつインキ受容性である一方で、非印刷領域は、典型的には、親水性かつ水受容性である。この効果を得るために、印刷版がインキ付けされる前に、印刷版を水性湿し水(fountain solution)(湿し水(dampening solution))で湿らせてもよい。湿し水は容器中に保存され、1つ以上のクロム(湿し)ローラーによって印刷版に供給され得る。湿し水は、典型的には、印刷版の水受容性領域上に膜を形成するが、撥水性領域上に微小な液滴を形成する。インキ着けローラーが湿らせた印刷版の上を通過するとき、膜でコーティングされた非印刷領域をインキ付けすることは不可能であるが、撥水性領域上の液滴を押しやってそれらの領域をインキでコーティングすることは可能である。
【0004】
印刷プロセス中、印刷版は、薄膜を維持し、ひいては非画像領域の親水性を維持するために、湿し水で継続的に処理されなければならない。湿し水の薄膜は、その後のインキの塗布が印刷版の非画像領域をコーティングするのを防ぐ。しかしながら、印刷が繰り返し中断されながら実行されるときに、インキが湿しローラー上に蓄積し、印刷版表面の非画像領域に付着する傾向がある。これは、「地汚れ」または「インキフィードバック」と称され、印刷物上に汚点およびリングの望ましくない形成をもたらす。
【0005】
湿しローラー上のインキフィードバック(すなわち、着色)および過度のインキ蓄積(すなわち、地汚れ)は、高速オフセット輪転石版印刷の共通の問題である。多くの場合、印刷機は、1日にいくつかの色の変化を経験し、着色および地汚れの量を増加させ得る。そのような場合において、クロムローラーおよび印刷版は、水を受容しインキを受容しない能力を維持するように、完全に洗浄されなければならない。着色および地汚れを最小限に抑えることにより「湿し」制御を改善するために受動的な(親水性の)クロムローラーが提供されるが、この点において完璧ではない。着色および地汚れが回避される場合にのみ良好な印刷が生じる。
【0006】
着色および地汚れは、インキロールを経由することなく湿し水を印刷版に直接塗布する連続ロール湿しシステムと併用したアルコールを含まない湿し水への転換以来、より大きな問題となっている。湿しローラーは、印刷版からインキを受け取り、インキを計測システム内の多孔性かつインキ感受性のクロムロールを介して計測ロールに戻し移動させ得る。インキローラーに戻す経路がないため、乳化インキが蓄積し続ける。ローラー上でのインキの蓄積を防ぐための方法が存在するが、それらの方法のうちの多くは費用がかかる上、不便であり、印刷時間を増大させ得る。そのため、着色および地汚れの問題を防ぐか、または少なくとも軽減する解決策が所望される。
【0007】
湿し水が水性であるため、界面活性剤およびロジン等の水溶性添加剤を含有する市販の湿し水が多く存在する。しかしながら、湿し水中の添加剤の存在は、印刷プロセスに支障をきたし得る。湿し水が印刷プロセス中に継続的に塗布されるため、添加剤の実際の量を制御することができず、印刷物の欠陥につながり得る。その代替案として、添加剤は、湿し水ではなくインキ組成物に組み込まれ得る。典型的には、印刷業界で使用されるインキは、油性インキであり、インキに組み込まれる添加剤は、油溶性添加剤である(例えば、米国特許第5,417,749号(添加剤がレシチンまたはアルキルポリグルコシド等の界面活性剤である)を参照のこと)。インキ組成物に添加されるときに添加剤の量を制御することができるが、印刷上の問題が依然として生じ得る。しかしながら、アルキルチオエーテル界面活性剤または高度にアルコキシ化されたロジン等の水溶性添加剤を含有する油性インキは、先行技術において開示されていない。
【0008】
米国特許第5,203,926号は、インキがローラーおよび印刷版に粘着するのを防ぐようにローラーおよび印刷版を清潔かつ新鮮な状態に保つために使用される製剤を開示する。これは、印刷業界で使用される湿し水と相溶性のある洗浄液を用いることによって達成される。しかしながら、この方法は、印刷が再開される前に印刷版およびローラーを清潔な布で拭き取ることができるように印刷プロセスを停止する必要がある。
【0009】
インキフィードバックおよび蓄積を排除するために、界面活性剤等の水溶性添加剤を組み込む湿し水が開発されている。この添加剤は、重要な湿潤特性および乳化特性を提供し、湿し水中の可燃性、毒性、および刺激性のアルコールを置換するためにも使用される。米国特許第7,240,615号、同第5,607,816号、および同第4,854,969号、ならびに米国特許公開第2002/0083865号は、界面活性剤を組み込む湿し水を開示している。界面活性剤は、湿し水中の疎水性画像化組成物の分散を促進するだけでなく、インキフィードバックおよび蓄積も減少させる。
【0010】
インキフィードバックおよび蓄積の問題に対処するために、インキフィードバックの量を減少させるために設計された新規の部品を有する湿しシステムが開発されている。米国特許第4,724,764号は、流体を印刷機の円筒平板に塗布するために使用される湿しシステムを開示している。このシステムは、湿しインキ着けローラー、湿し流体移動ローラー、および湿し流体を計測するための従来の計測メカニズムを含む。このシステムは、湿し流体を保持するローラーの速度を円筒平板の速度よりも遅くしてインキフィードバックの量を減少させる。米国特許第6,951,174号は、インキフィードバックおよび蓄積の量を減少させる湿しシステムについても説明している。このシステムは、インキ着けローラーに接触し、かつ印刷後に余分なインキおよび湿し水をインキ着けローラーから除去する減法ローラーシステムを採用するキーレスインキングシステムである。これらのシステムを利用するために新規の部品および備品を調達する必要があり、それらは石版印刷機に相互接続されなければならない。
【0011】
したがって、石版印刷プロセス中に非印刷版上で生じるインキフィードバックおよび過度のインキ蓄積の減少または排除等のオフセット輪転石版印刷に関連した問題を軽減するための非機械的手段の必要性が存在する。さらにオフセット石版印刷プロセス中のインキフィードバックおよび蓄積を排除することによって良好かつ効率的な印刷をもたらすインキ組成物の必要性も存在する。
【発明の概要】
【0012】
着色剤、ニス、および水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤もしくはエトキシ化修飾ロジン等のアルコキシ化修飾ロジン、またはこれらの組み合わせを含有するオフセット輪転石版インキ組成物が本明細書に提供される。本明細書に提供されるインキ組成物は、油性インキ組成物または水性インキ組成物であり得、これらは放射線硬化性インキ組成物であり得る。本明細書に提供されるオフセット石版インキ組成物は、ビヒクル、粘土、乳化安定剤、ワックス、油、および乳化剤、またはこれらの任意の組み合わせ等の1つ以上のさらなる成分も含み得る。
【0013】
石版インキを提供し、水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤またはエトキシ化修飾ロジン等のアルコキシ化修飾ロジンまたはこれらの組み合わせを石版インキに添加し、かつ石版印刷プロセスを用いてインキを被印刷物に塗布することとによって、オフセット輪転石版印刷プロセス中に生じるインキフィードバックおよびインキ蓄積を減少させるか、または排除する方法も本明細書に提供される。
【0014】
石版印刷中のインキフィードバックおよびインキ蓄積を減少させるための石版インキ中の添加剤としての水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤またはエトキシ化修飾ロジン等のアルコキシ化修飾ロジンまたはこれらの組み合わせの使用がさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、油性インキ4(アルキルチオエーテル界面活性剤もアルコキシ化修飾ロジンも含有しない粘着性のより低い黄色のレーザーインキ、比較)を用いた、ノッチ2と
1/
4、水設定20%、ならびに密度0.95、0.96、および0.99を用いてDidde印刷機で実行した5分間の印刷機試験の結果を図解する。5分後、インキローラー下部の左遠端に残留インキが著しく蓄積し、いくつかの黄色のインキ帯もインキローラー下部全体にわたって蓄積し、重大なフィードバック問題を提示している。インキフィードバックは矢印で示される。
【
図2A】
図2Aは、油性インキ4(アルキルチオエーテル界面活性剤もアルコキシ化修飾ロジンも含有しない粘着性のより低い黄色のレーザーインキ、比較)を用いた、5%の画像を有する30#アビボ紙を用いて印刷機速度100fpmのDidde印刷機で実行した印刷機試験の結果を図解する。実行が完了した後、インキローラー下部にインキフィードバックが蓄積した。インキフィードバックは矢印で示される。
【
図2B】
図2Bは、黄色のインキ9(0.3%の水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤EnviroGem(登録商標)360を含有)の結果を示し、
図2Aの条件と同一の条件下で試験されたが、インキローラー下部にインキ蓄積をもたらした。インキフィードバックは矢印で示される。
【
図3A】
図3は、高度にエトキシ化された水溶性ロジン添加剤を有する/有しないDingleyの黄色のレーザーインキを用いたDidde印刷機で実行した印刷機試験の結果を図解する。
図3Aは、インキ9(アルキルチオエーテル界面活性剤もアルコキシ化修飾ロジンも含有しない比較インキ)を用いた試験の結果を示す。インキローラー下部にインキが著しく蓄積し、黄色のインキ帯が散在した。インキフィードバックは矢印で示される。
【
図3B】
図3Bは、4%の高度にアルコキシ化された修飾ロジンをインキに添加した後の試験の結果を示す。インキローラー下部のインキフィードバックが著しく減少した。インキフィードバックは矢印で示される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.定義
本明細書に提供される技術用語および科学用語の定義は、本出願の出願時に意図された定義を包含する。本発明(複数を含む)が属する当業者によって一般に理解される態様等の列挙されない定義に対する他の態様が存在し得るため、これらの定義が限定的であるようには意図されていない。本明細書の全開示を通して参照されるすべての特許、特許出願、公開された出願および出版物、ウェブサイト、ならびに他の公開された試料は、別途言及されない限り、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本明細書において用語の定義が複数存在する場合、本項の定義を優先する。
【0017】
上述の発明の概要も以下の発明を実施するための形態もいずれも単に例示および説明するためのものであり、特許請求される主題を限定するものではないことを理解されたい。本出願において、単数形の使用は、別途明確に提示されない限り、複数形を含む。本出願において、「または」の使用は、別途提示されない限り、「および/または」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語、ならびに「含む(include)」および「含まれる」等の他の形態の使用は、限定的ではない。
【0018】
本明細書で使用される際、範囲および量は、「約」ある値または範囲として表され得る。「約」は、その正確な量も含む。したがって、「約10%」とは、「約10%」を意味し、「10%」も意味する。
【0019】
本明細書で使用される際、「a」、「an」、および「the」という単数形は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「アルキルチオエーテル」を含む組成物への言及は、1つまたは複数のアルキルチオエーテルを有する組成物を含む。
【0020】
本明細書で使用される際、「着色」および「インキフィードバック」または「フィードバック」は、印刷物の非画像領域上の色の薄い外観を指す。着色は、他のインキ成分の有無にかかわらず、色素が湿し水中で可溶化または乳化し、かつ印刷物の非画像領域に移動するときに生じる。着色は、逆エマルジョンの形成から、すなわち、形成されるエマルジョンが必要なインキ中水ではなく水中インキであるときにも生じ得る。逆エマルジョンの形成は、インキに湿しシステムを介して戻し移動させ、そのシステムにおいて、湿しトラフの汚染または湿しローラー上での堆積のいずれかを行う。
【0021】
本明細書で使用される際、「地汚れ」および「インキ蓄積」または「蓄積」は、印刷版の非画像領域がインキを受容し、そのインキをブランケットに、その後ブランケットから印刷物に移動させるときに生じる印刷物上の色の外観を指す。
B.オフセット輪転石版インキ組成物
【0022】
水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤、アルコキシ化修飾ロジン、またはこれらの組み合わせを含むオフセット輪転石版インキ組成物が本明細書に提供される。例えば、アルコキシ化修飾ロジンは、高度にアルコキシ化された修飾ロジンであり得る。好適な高度にアルコキシ化された修飾ロジンには、高度にエトキシ化された修飾ロジンが含まれる。オフセット輪転石版インキ組成物は、オフセット輪転石版印刷プロセス中に生じるインキフィードバックおよび過度のインキ蓄積を排除しなくとも、減少させる。この特徴のため、インキ組成物は、現行の先行技術オフセット輪転石版インキ組成物よりも有利である。本明細書に提供されるオフセット輪転石版インキ組成物は、任意の種類の石版インキであり得る。例えば、オフセット輪転石版インキは、油性インキまたは水性インキであり得る。これらのインキは、電子ビーム硬化性インキまたは紫外線硬化性インキ等の放射線硬化性インキであり得る。インキ組成物は、インキフィードバックの排除が所望される任意のオフセット輪転石版印刷プロセスにおいて使用され得る。例えば、本明細書に提供されるインキ組成物は、高速オフセット輪転石版印刷等の石版印刷またはオフセット印刷において使用され得る。
【0023】
例示の実施形態において、オフセット輪転石版インキ組成物は、約0.01〜5%の水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤または約1〜10%のアルコキシ化修飾ロジンを含有するように製剤化され得る。別の実施形態では、オフセット輪転石版インキ組成物は、水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤およびアルコキシ化修飾ロジンの両方を含有するように製剤化され得る。いくつかの例示の実施形態において、オフセット輪転石版インキ組成物は、油性インキ組成物である。他の例示の実施形態では、オフセット輪転石版インキ組成物は、電子ビーム硬化性インキ組成物等の放射線硬化性インキ組成物である。
1.水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤
【0024】
本明細書に提供されるオフセット輪転石版インキ組成物は、水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤を含み得る。水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤は、典型的には、耐オゾン性を改善し、色相変化を防ぎ、かつ平衡表面張力の減少を提供するために湿し水中で使用される。しかしながら、これらの界面活性剤は、オフセット輪転石版インキ、例えば、油性オフセット輪転石版インキ中の添加剤として使用されていない。本明細書に提供されるインキ組成物に組み込まれ得る好適な水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤は、任意のエーテル誘導体を含み、そこで酸素が硫黄で置換される。そのような界面活性剤は当技術分野で知られており、Air Products(Allentown,PA)およびBurlington Chemical(Greensboro,NC)等の供給業者から購入することができる。
【0025】
本明細書に提供されるインキ組成物での使用に好適なアルキルチオエーテルの例には、2,3−ジヒドロキシプロピル−2’−ヒドロキシ−3’−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル硫化物、2,3−ジヒドロキシプロピル−2’−ヒドロキシ−3’−ドデシルオキシプロピル硫化物、2,3−ジヒドロキシプロピル−2’−ヒドロキシ−3’−ヘキサデシルオキシプロピル硫化物、2,3−ジヒドロキシプロピル−2’−ヒドロキシ−3’−テトラデシルオキシプロピル硫化物、2−ヒドロキシエチル−2’−ヒドロキシ−3’−ブトキシプロピル硫化物、2−ヒドロキシエチル−2’−ヒドロキシ−3’−オクチルオキシプロピル硫化物、2−ヒドロキシエチル−2’−ヒドロキシ−3’−ノニルオキシプロピル硫化物、2−ヒドロキシエチル−2’−ヒドロキシ−3’−デシルオキシプロピル硫化物、2−ヒドロキシエチル−2’−ヒドロキシ−3’−ドデシルオキシプロピル硫化物、2−ヒドロキシエチル−2’−ヒドロキシ−3’−ヘキサデシルオキシプロピル硫化物、2−ヒドロキシエチル−2’−ヒドロキシ−3’−テトラデシルオキシプロピル硫化物、2−ヒドロキシエチル−2’−ヒドロキシ−3’−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル硫化物、および2−ドデシル−2’−ヒドロキシ−3’−ブトキシプロピル硫化物が挙げられる。当業者に既知の任意の他の好適な水溶性アルキルチオエーテルは、本明細書に提供されるインキ組成物中でも使用され得る。
【0026】
本発明の例示の実施形態で使用されるアルキルチオエーテル界面活性剤の具体的な例には、市販のAir Products and Chemicals(Allentown,PA)のEnviroGem(登録商標)360がある。EnviroGem(登録商標)360は、高性能の非イオン性超湿潤および合体界面活性剤(100%活性液体)である。EnviroGem(登録商標)360界面活性剤は、動的および平衡表面張力を大幅に減少させ、低泡および膜形成/合体利点も提供する。EnviroGem(登録商標)360を様々な水性塗布において、例えば、湿し水の成分として使用して、効率的かつ効果的な印刷版の湿潤および泡制御を提供することができる。
【0027】
本明細書に提供されるオフセット輪転石版インキ組成物において、インキ組成物(重量%)の重量パーセント(重量%)としてのアルキルチオエーテル界面活性剤の総量は、例えば、重量パーセントで、インキ組成物の0.01%または約0.01%〜5%または約5%、例えば、0.01%〜0.05%、0.01%〜0.1%、0.01%〜0.2%、0.01%〜0.3%、0.01%〜0.4%、0.01%〜0.5%、0.01%〜0.6%、0.01%〜0.7%、0.01%〜0.8%、0.01%〜0.9%、0.01%〜1%、0.01%〜1.5%、0.01%〜2%、0.01%〜2.5%、0.01%〜3%、0.01%〜3.5%、0.01%〜4%、0.01%〜4.5%、0.01%〜5%、0.05%〜0.1%、0.05%〜0.2%、0.05%〜0.3%、0.05%〜0.4%、0.05%〜0.5%、0.05%〜0.6%、0.05%〜0.7%、0.05%〜0.8%、0.05%〜0.9%、0.05%〜1%、0.05%〜1.5%、0.05%〜2%、0.05%〜2.5%、0.05%〜3%、0.05%〜3.5%、0.05%〜4%、0.05%〜4.5%、0.05%〜5%、0.1%〜0.2%、0.1%〜0.3%、0.1%〜0.4%、0.1%〜0.5%、0.1%〜0.6%、0.1%〜0.7%、0.1%〜0.8%、0.1%〜0.9%、0.1%〜1%、0.1%〜1.5%、0.1%〜2%、0.1%〜2.5%、0.1%〜3%、0.1%〜3.5%、0.1%〜4%、0.1%〜4.5%、0.1%〜5%、0.2%〜0.3%、0.2%〜0.4%、0.2%〜0.5%、0.2%〜0.6%、0.2%〜0.7%、0.2%〜0.8%、0.2%〜0.9%、0.2%〜1%、0.2%〜1.5%、0.2%〜2%、0.2%〜2.5%、0.2%〜3%、0.2%〜3.5%、0.2%〜4%、0.2%〜4.5%、0.2%〜5%、0.3%〜0.4%、0.3%〜0.5%、0.3%〜0.6%、0.3%〜0.7%、0.3%〜0.8%、0.3%〜0.9%、0.3%〜1%、0.3%〜1.5%、0.3%〜2%、0.3%〜2.5%、0.3%〜3%、0.3%〜3.5%、0.3%〜4%、0.3%〜4.5%、0.3%〜5%、0.4%〜0.5%、0.4%〜0.6%、0.4%〜0.7%、0.4%〜0.8%、0.4%〜0.9%、0.4%〜1%、0.4%〜1.5%、0.4%〜2%、0.4%〜2.5%、0.4%〜3%、0.4%〜3.5%、0.4%〜4%、0.4%〜4.5%、0.4%〜5%、0.5%〜0.6%、0.5%〜0.7%、0.5%〜0.8%、0.5%〜0.9%、0.5%〜1%、0.5%〜1.5%、0.5%〜2%、0.5%〜2.5%、0.5%〜3%、0.5%〜3.5%、0.5%〜4%、0.5%〜4.5%、0.5%〜5%、0.6%〜0.7%、0.6%〜0.8%、0.6%〜0.9%、0.6%〜1%、0.6%〜1.5%、0.6%〜2%、0.6%〜2.5%、0.6%〜3%、0.6%〜3.5%、0.6%〜4%、0.6%〜4.5%、0.6%〜5%、0.7%〜0.8%、0.7%〜0.9%、0.7%〜1%、0.7%〜1.5%、0.7%〜2%、0.7%〜2.5%、0.7%〜3%、0.7%〜3.5%、0.7%〜4%、0.7%〜4.5%、0.7%〜5%、0.8%〜0.9%、0.8%〜1%、0.8%〜1.5%、0.8%〜2%、0.8%〜2.5%、0.8%〜3%、0.8%〜3.5%、0.8%〜4%、0.8%〜4.5%、0.8%〜5%、0.9%〜1%、0.9%〜1.5%、0.9%〜2%、0.9%〜2.5%、0.9%〜3%、0.9%〜3.5%、0.9%〜4%、0.9%〜4.5%、0.9%〜5%、1%〜1.5%、1%〜2%、1%〜2.5%、1%〜3%、1%〜3.5%、1%〜4%、1%〜4.5%、1%〜5%、1.5%〜2%、1.5%〜2.5%、1.5%〜3%、1.5%〜3.5%、1.5%〜4%、1.5%〜4.5%、1.5%〜5%、2%〜2.5%、2%〜3%、2%〜3.5%、2%〜4%、2%〜4.5%、2%〜5%、2.5%〜3%、2.5%〜3.5%、2.5%〜4%、2.5%〜4.5%、2.5%〜5%、3%〜3.5%、3%〜4%、3%〜4.5%、3%〜5%、3.5%〜4%、3.5%〜4.5%、3.5%〜5%、4%〜4.5%、4%〜5%、または4.5%〜5%であり得る。概して、このインキ組成物は、5%未満のアルキルチオエーテル界面活性剤を含有する。例えば、本明細書に提供されるオフセット輪転石版インキ組成物は、組成物の重量に基づいて、最大または最大約0.01%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、または5%のアルキルチオエーテル界面活性剤を含有する。
【0028】
水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤を含有する例示のオフセット輪転石版インキ組成物が本明細書に提供される。本明細書に提供されるオフセット輪転石版インキ組成物を用いて、石版印刷プロセス中に一般に生じるインキフィードバックおよび蓄積を減少させるか、または排除することができる。例示のそのようなインキ組成物は、油性インキおよび0.01%または約0.01%〜5%または約5%の水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤を含有する。例えば、インキ組成物は、油性インキおよび0.3%または約0.3%の水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤を含有し得る。
2.アルコキシ化修飾ロジン
【0029】
アルコキシ化修飾ロジンを含有するオフセット輪転石版インキ組成物が本明細書に提供される。ロジンは、松の木およびいくつかの他の植物、主に針葉樹から得られる固形の樹脂であり、新鮮な液体樹脂を加熱して揮発性液体テルペン成分を蒸発させることによって生成される。ロジンは、主に、遊離酸形態(すなわち、アビエチン酸)を代表とするC
20三環式縮合環モノカルボン酸の混合物であり、以下の式で表される:
【0030】
ロジンは、官能基の添加等によって修飾され得る。例えば、ロジンは、1つ以上のアルコキシ基を添加することによって修飾され得る。ロジンは、高度にアルコキシ化された修飾ロジンとなるように修飾され得る。高度にアルコキシ化された修飾ロジンは、10%超または約10%アルコキシ化されるが、70%未満または約70%しかアルコキシ化されないロジンである。例えば、本明細書に提供されるインキ組成物中で使用される高度にアルコキシ化された修飾ロジンは、10%または約10%〜70%アルコキシ化され得、例えば、10%〜20%、10%〜30%、10%〜40%、10%〜45%、10%〜50%、10%〜55%、10%〜60%、10%〜70%、20%〜30%、20%〜40%、20%〜45%、20%〜50%、20%〜55%、20%〜60%、20%〜70%、30%〜40%、30%〜45%、30%〜50%、30%〜55%、30%〜60%、30%〜70%、40%〜45%、40%〜50%、40%〜55%、40%〜60%、40%〜70%、50%〜55%、50%〜60%、50%〜70%、55%〜60%、55%〜70%、および60%〜70%アルコキシ化され得る。概して、このアルコキシ化修飾ロジンは、70%未満アルコキシ化される。例えば、本明細書に提供されるインキ組成物中で使用されるアルコキシ化修飾ロジンは、少なくともまたは少なくとも約10%、20%、30%、40%、45%、50%、55%、60%アルコキシ化されるが、70%未満しかアルコキシ化されない。アルコキシ化によって修飾され、かつ本明細書に提供されるインキ組成物中で使用され得る好適なロジンには、ガムロジン、ウッドロジン、およびトール油ロジンが含まれる。高度にアルコキシ化された修飾ロジン化合物は、典型的には、印刷業界において湿し水の成分としても使用されているが、オフセット輪転石版インキへの添加剤としては使用されていない。
【0031】
本明細書に提供される組成物に組み込まれ得る好適なアルコキシ化修飾ロジンには、メトキシ修飾(すなわち、メトキシ化)ロジン、エトキシ修飾(すなわち、エトキシ化)ロジン、プロポキシ修飾(すなわち、プロポキシ化)ロジン、ブトキシ修飾(すなわち、ブトキシ化)ロジン、および当業者に既知の任意の他のアルコキシ修飾ロジン等のアルコキシ化修飾ロジンが含まれる。そのような修飾ロジンは当技術分野で知られており、Ethox Chemicals(Greenville,SC)、Eastman Chemical Company(Kingsport,TN)、Lawter(Chicago,IL)およびMWV(Richmond,VA)等の供給業者から購入することができる。
【0032】
本発明の例示の実施形態で使用されるアルコキシ化修飾ロジンの具体的な例には、Ethox4614(Ethox Chemicals,Greenville,SC)がある。Ethox4614は、少なくとも50%エトキシ化された水溶性の高度にエトキシ化された修飾ロジンである。
【0033】
本明細書に提供される組成物において、組成物(重量%)の重量パーセント(重量%)としてのアルコキシ化修飾ロジンの総量は、例えば、重量パーセントで、組成物の0.1%または約0.1%〜10%または約10%、例えば、0.1%〜0.5%、0.1%〜0.75%、0.1%〜1%、0.1%〜1.5%、0.1%〜2%、0.1%〜2.5%、0.1%〜3%、0.1%〜3.5%、0.1%〜4%、0.1%〜4.5%、0.1%〜5%、0.1%〜5.5%、0.1%〜6%、0.1%〜6.5%、0.1%〜7%、0.1%〜7.5%、0.1%〜8%、0.1%〜8.5%、0.1%〜9%、0.1%〜9.5%、0.1%〜10%、0.5%〜0.75%、0.5%〜1%、0.5%〜1.5%、0.5%〜2%、0.5%〜2.5%、0.5%〜3%、0.5%〜3.5%、0.5%〜4%、0.5%〜4.5%、0.5%〜5%、0.5%〜5.5%、0.5%〜6%、0.5%〜6.5%、0.5%〜7%、0.5%〜7.5%、0.5%〜8%、0.5%〜8.5%、0.5%〜9%、0.5%〜9.5%、0.5%〜10%、0.75%〜1%、0.75%〜1.5%、0.75%〜2%、0.75%〜2.5%、0.75%〜3%、0.75%〜3.5%、0.75%〜4%、0.75%〜4.5%、0.75%〜5%、0.75%〜5.5%、0.75%〜6%、0.75%〜6.5%、0.75%〜7%、0.75%〜7.5%、0.75%〜8%、0.75%〜8.5%、0.75%〜9%、0.75%〜9.5%、0.75%〜10%、1%〜1.5%、1%〜2%、1%〜2.5%、1%〜3%、1%〜3.5%、1%〜4%、1%〜4.5%、1%〜5%、1%〜5.5%、1%〜6%、1%〜6.5%、1%〜7%、1%〜7.5%、1%〜8%、1%〜8.5%、1%〜9%、1%〜9.5%、1%〜10%、1.5%〜2%、1.5%〜2.5%、1.5%〜3%、1.5%〜3.5%、1.5%〜4%、1.5%〜4.5%、1.5%〜5%、1.5%〜5.5%、1.5%〜6%、1.5%〜6.5%、1.5%〜7%、1.5%〜7.5%、1.5%〜8%、1.5%〜8.5%、1.5%〜9%、1.5%〜9.5%、1.5%〜10%、2%〜2.5%、2%〜3%、2%〜3.5%、2%〜4%、2%〜4.5%、2%〜5%、2%〜5.5%、2%〜6%、2%〜6.5%、2%〜7%、2%〜7.5%、2%〜8%、2%〜8.5%、2%〜9%、2%〜9.5%、2%〜10%、2.5%〜3%、2.5%〜3.5%、2.5%〜4%、2.5%〜4.5%、2.5%〜5%、2.5%〜5.5%、2.5%〜6%、2.5%〜6.5%、2.5%〜7%、2.5%〜7.5%、2.5%〜8%、2.5%〜8.5%、2.5%〜9%、2.5%〜9.5%、2.5%〜10%、3%〜3.5%、3%〜4%、3%〜4.5%、3%〜5%、3%〜5.5%、3%〜6%、3%〜6.5%、3%〜7%、3%〜7.5%、3%〜8%、3%〜8.5%、3%〜9%、3%〜9.5%、3%〜10%、3.5%〜4%、3.5%〜4.5%、3.5%〜5%、3.5%〜5.5%、3.5%〜6%、3.5%〜6.5%、3.5%〜7%、3.5%〜7.5%、3.5%〜8%、3.5%〜8.5%、3.5%〜9%、3.5%〜9.5%、3.5%〜10%、4%〜4.5%、4%〜5%、4%〜5.5%、4%〜6%、4%〜6.5%、4%〜7%、4%〜7.5%、4%〜8%、4%〜8.5%、4%〜9%、4%〜9.5%、4%〜10%、4.5%〜5%、4.5%〜5.5%、4.5%〜6%、4.5%〜6.5%、4.5%〜7%、4.5%〜7.5%、4.5%〜8%、4.5%〜8.5%、4.5%〜9%、4.5%〜9.5%、4.5%〜10%、5%〜5.5%、5%〜6%、5%〜6.5%、5%〜7%、5%〜7.5%、5%〜8%、5%〜8.5%、5%〜9%、5%〜9.5%、5%〜10%、5.5%〜6%、5.5%〜6.5%、5.5%〜7%、5.5%〜7.5%、5.5%〜8%、5.5%〜8.5%、5.5%〜9%、5.5%〜9.5%、5.5%〜10%、6%〜6.5%、6%〜7%、6%〜7.5%、6%〜8%、6%〜8.5%、6%〜9%、6%〜9.5%、6%〜10%、6.5%〜7%、6.5%〜7.5%、6.5%〜8%、6.5%〜8.5%、6.5%〜9%、6.5%〜9.5%、6.5%〜10%、7%〜7.5%、7%〜8%、7%〜8.5%、7%〜9%、7%〜9.5%、7%〜10%、7.5%〜8%、7.5%〜8.5%、7.5%〜9%、7.5%〜9.5%、7.5%〜10%、8%〜8.5%、8%〜9%、8%〜9.5%、8%〜10%、8.5%〜9%、8.5%〜9.5%、8.5%〜10%、9%〜9.5%、9%〜10%、または9.5%〜10%であり得る。概して、この組成物は、10重量%未満のアルコキシ化修飾ロジンを含有する。例えば、本明細書に提供される組成物は、インキ組成物の重量に基づいて、最大または最大約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%のアルコキシ化修飾ロジンを含有し得る。
【0034】
アルコキシ化修飾ロジンを含有する例示のオフセット輪転石版インキ組成物が本明細書に提供される。本明細書に提供されるオフセット輪転石版インキ組成物を用いて、石版印刷プロセス中に一般に生じるインキフィードバックおよび蓄積を減少させるか、または排除することができる。例示のそのようなインキ組成物は、油性インキおよび0.1%または約0.1%〜10%または約10%のアルコキシ化修飾ロジンを含有する。例えば、インキ組成物は、油性インキおよび3%または約3%のアルコキシ化修飾ロジンを含有し得る。別の例では、インキ組成物は、油性インキおよび4%または約4%のアルコキシ化修飾ロジンを含有し得る。別の例示の実施形態は、放射線硬化性インキおよび0.1%または約0.1%〜10%または約10%のアルコキシ化修飾ロジンを含有する。例えば、インキ組成物は、電子ビーム硬化性インキ等の放射線硬化性インキ、および3%または約3%のアルコキシ化修飾ロジンを含有し得る。
3.オフセット石版インキ
【0035】
水溶性アルキルチオエステル界面活性剤、アルコキシ化修飾ロジン、またはこれらの組み合わせを含有するオフセット輪転石版インキ組成物が本明細書に提供される。本明細書に提供される組成物中で使用されるオフセット輪転石版インキは、油性インキまたは水性インキであり得る。いくつかの実施形態において、オフセット輪転石版インキは、電子ビーム硬化性インキまたは紫外線硬化性インキ等の放射線硬化性インキであり得る。本明細書に提供される組成物中で使用されるオフセット輪転石版インキは、以下の表1に列記される成分を含むが、これらに限定されない多くの成分を含有し得る。表1に示されるように、油性インキ組成物は、例えば、ニス、ビヒクル(ゲル、挿入物、またはG80)、粘土、色素ベース、乳化安定剤、ワックス、水、ゲル、亜麻仁、亜麻仁油、ヒマシ油、大豆油、潤滑剤、乳化剤、および油から選択される1つ以上の成分を含み得る。典型的には、本明細書に提供される例示のインキ組成物等において、インキ組成物中の水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤またはアルコキシ化修飾ロジンの量を増加または減少させるとき、ゲルビヒクル等のニスの量は、それぞれ、減少または増加し得る。
【表1】
【0036】
本明細書に提供されるオフセット輪転石版インキ組成物は、水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤または高度にエトキシ化された修飾ロジン等のアルコキシ化修飾ロジンまたはこれらの組み合わせを含有する。本明細書に提供されるインキ組成物は、油性インキまたは水性インキであり得る。このインキは、電子ビーム硬化性または紫外線硬化性等の放射線硬化性インキであり得る。印刷、例えば、オフセット輪転石版印刷におけるこれらのインキ組成物の使用は、印刷の質を高め、石版印刷における主な問題であるインキフィードバックおよびインキ蓄積を減少させるか、または排除する。インキ組成物は、熱設定されたオフセットインキ印刷、枚葉印刷、新聞印刷、およびエネルギー硬化性オフセットインキ印刷等の多種多様の印刷適用において使用され得る。
C.実施例
実施例1
【0037】
表1に特定される成分のうちの1つ以上を含む様々な色の代表的なオフセット輪転油性石版インキ組成物の例は、以下の表2に記載されるインキ1〜4である。表2に示される油性インキ組成物は、水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤もアルコキシ化修飾ロジンも含有しない典型的な油性インキの例にすぎず、限定するものと見なされるべきではない。
【表2】
【0038】
以下の表3は、0.3%の水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤、EnviroGem(登録商標)360(Air Products、Allentown,PA)を含有する例示のオフセット輪転油性石版インキ組成物を提供する。これらの組成物は、単なる例であり、限定するものとみなされるべきではない。
【表3】
【0039】
表2の比較油性インキ(インキ1〜4)と表3の水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤を含有する例示の油性インキ(インキ5〜8)との間の粘着度、Laray粘度(L粘度)、およびLaray収率(L収率)の比較が、以下の表5および6に提供される。
【0040】
粘着度の重要性は、粘着度がそれほど過度ではないため、ローラーから印刷版、ブランケット、その後印刷される被印刷物までのインキの効果的な移動を可能にしないことである。ある色から別の色へのより良好な捕捉を可能にするために、インキを降順で粘着度「格付け」することもできる。粘着度の高すぎるインキは、紙表面の吸着を引き起こし、その後の印刷ユニットおよびコピーへの移動を妨害し得る。
【0041】
粘着度を、一般に市販されているインキ計測器を用いて測定することができる。インキ計測器は、印刷プロセス中に生じる動的条件をシュミレートすることによって信頼できるインキ粘着度のデータを提供することができる。粘着度を試験する際、インキ計測器は、インキ膜分裂に関与する統合力、ならびにこれらの力への速度、膜の厚さ、温度、および溶媒蒸発の影響を実際に測定する。
【0042】
試験結果は、既知の速度、所定の膜の厚さ、および温度でインキ膜を「働かせる」ために必要とされるトルクを表す数値(グラム/メートル単位)で示される。これらのトルク読み込みデータは、実際には、インキの粘着度の測定値である。
【0043】
この電子インキ計測器は、押しボタンで動作し、かつ温度、粘着度、RPM、および試験時間をデジタル表示することによってインキ試験を簡素化する。上の試験のために、Thwing−Albertインキ計測器(West Berlin,NJ)を使用した。
【0044】
粘度および収率値をLaray粘度計で測定した。Laray粘度計は、ロッドが規定の距離を移動するのに必要な時間を測定することによって広範囲の液体および粘性材料の粘度を決定する。例えば、液体の粘度を、Laray粘度計、LarayタイマーTMI92−15(0.00秒の分解能)、0.5℃の増分で測定することができる温度プローブ、Larayコンピュータプログラム、25±1℃で維持した水浴、約2〜3.5グラムの試料流体または液体、およびへらを用いて測定することができる。最初に、これらの器具の清潔度および全体の適切な条件を確認しなければならない。Laray粘度計を平衡させなければならない。温度も確認すべきであり、これらの器具を25±1℃で制御しなければならない。通風制御下のキャビネットを用いて、温度を25±1℃で維持することができる。へらを用いて試料を過度に混ぜることなくLarayロッドを湿らることができる。好ましくは、この液体試料をLarayロッド周囲に均一に沈着させる。異なる試料を試験するためのこの最初のステップの一貫性は、より一貫性のあるデータをもたらす可能性を高くする。その後、約1秒間の落下時間に相当する十分な力を用いてLarayロッドを流体試料中に落下することができる。
【0045】
以下の表4に列記される落下順序を用いて標準Laray試験を遂行することができる。
【表4】
【0046】
表4に列記されるそれぞれの落下順序に見合うように規定の時間範囲内でロッドを落下させることができる重量を選択および調整することができることを理解されたい。それぞれの時間範囲において複数の落下を回避するか、または最小限に抑えることが概して好ましい。キログラム単位の重量および秒単位の時間を摂氏温度のカラー温度とともに記録しなければならない。その後、記録した試験データを、粘度、収率値、および不足率を計算することができるLarayプログラムにアップロードしてもよい。
【0047】
これらの計算値から結果を記録することができる。これらの測定のために、2500秒
−1の剪断速度での粘度を変形または流動に抵抗する流体試料の能力と定義し、ポアズ単位(1ポアズ=0.1パスカル秒)で測定する。2.5秒
−2の剪断速度での収率値は、流動を開始するのに必要とされる仮定上の力であり、ダイン/cm
2単位で測定される。最後に、不足率は、収率値対粘度の比率である。
【0048】
標準Laray試験の代替案は、Vertis−Laray法である。Vertis−Laray法は、試料の調製および上述のLarayロッド上への試料の設置を含む。次に、700gの重量をロッドに設置した後に、これを落下する。その後、試料がカラーおよびロッドの周囲に再分布し得るようにロッドを後退させる。その後、時間を記録しながら700gの重量でロッドを2回連続落下する。落下時間は、好ましくは、互いに±0.1秒間である。これらの落下時間の平均を最初の時間として設定する。その後、ロッドをさらに3回(500gの重量で1回、300gの重量で1回、および100gの重量で1回)落下してもよい。それぞれの落下時間を記録しなければならない。カラー温度も摂氏温度で記録しなければならない。次に、記録したデータをLarayプログラムにアップロードした後、上で定義される粘度、収率値、および不足率を計算することができる。
【0049】
表2に列記される水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤を含有しない比較油性インキ(インキ1〜4)の特性と、表3に列記される水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤を含有する油性インキ(インキ5〜8)の特性を比較するために、1分間および5分間の粘着度試験を行った。表5および6に示されるように、水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤を油性インキに添加しても、粘着度、粘度、および収率等の望ましいインキ特性に影響を及ぼさないが、以下で論じられるように、インキフィードバック問題を軽減する。
【表5】
【表6】
【0050】
水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤の存在がインキフィードバックおよびインキ蓄積に与えた影響を比較するために、オフセット輪転油性石版インキ組成物を試験した。試験は、熱設定されたオフセット輪転印刷機(Didde Corporation,Springboro,OH)を必要とした。
【0051】
油性比較インキ4(いかなるアルキルチオエーテル界面活性剤も含有しない粘着性のより低い黄色のレーザーインキ)(表2を参照のこと)を用いた5分間の試験を、ノッチ2
1/
4、水設定20%、ならびに密度0.95、0.96、および0.99を用いてDidde印刷機で実行した。5分後、残留インキがインキローラーに蓄積し、したがって、重大なフィードバック問題を提示した。インキローラー下部の左遠端に黄色のインキが特に多く蓄積し、いくつかの黄色のインキ帯もインキローラー下部全体にわたって蓄積した。結果が
図1に図示されており、矢印は、インキフィードバックを示す。
【0052】
比較インキ4(いかなるアルキルチオエーテル界面活性剤も含有しない黄色のインキ)(表2を参照のこと)を用いた試験を、5%の画像を有する30#アビボ紙を用いて印刷機速度100fpmのDidde印刷機で実行した。使用した湿し水は、Printeasy2050(5オンス/ガロン)であった。実行が完了した後、インキローラー下部にインキフィードバックが蓄積した。結果が
図2Aに図示されており、矢印は、インキフィードバックの領域を示す。逆に、約0.3%の水溶性アルキルチオエーテル界面活性剤EnviroGem(登録商標)360を黄色のインキ(インキ8、表3)に添加して、インキ4と同一の条件下で試験したとき、インキローラー下部のフィードバック蓄積は大幅に減少した。インキローラー下部には、いかなる黄色のインキ帯も見られなかった。これらの結果が
図2Bに図示されており、矢印は、インキフィードバックの領域を示す。
実施例2
【0053】
いくつかのオフセット輪転油性石版インキ組成物を調製し、それらは以下の表7に示される。インキ9(比較)は、いかなるアルコキシ化修飾ロジンも含有しない油性で黄色のDingleyレーザーインキである。例示の組成物(インキ10〜11)は、約3%または約4%の水溶性の高度にエトキシ化されたロジンEthox 4614(Ethox Chemicals,Greenville,SC)を含有する油性インキ組成物である。
【表7】
【0054】
比較インキ9(表7)を用いた試験をDidde印刷機で実行した。試験が完了した後、インキローラー下部に黄色のインキフィードバックが複数の散在した暗黄色の帯の形態で著しく蓄積した。結果が
図3Aに図示されており、矢印は、インキフィードバックの領域を示す。その後、約4%の高度にエトキシ化されたロジン(Ethox4614)を黄色のインキ(インキ11、表7)に添加し、試験を再度実行した。
図3Bは、4%のロジンをインキに添加した後の試験の結果を示しており、矢印は、インキフィードバックの領域を示す。高度にエトキシ化されたロジンをインキに添加することによって、ローラー下部のインキフィードバックを著しく減少させた。いくつかの黄色の帯がインキローラー下部に見られたが、高度にエトキシ化された修飾ロジンを有しないインキ(インキ9)の結果と比較して、その数は少なく、色も著しく薄かった。
実施例3
【0055】
3%の高度にエトキシ化された水溶性ロジンEthox4614を含有する6個の電子ビーム(EB)硬化性オフセット石版インキを調製し、それぞれ、異なる色素色(インキ13=青緑色、インキ14=赤紫色、インキ15=黄色、インキ16=黒色、インキ17=緑色、インキ18=茶色)を含有した。修飾ロジンを含有しない比較EB硬化性オフセット石版インキ(インキ12)を調製した。インキ製剤が以下の表8に示されており、表中、インキ13〜18の「色素」は、それぞれ、青緑色、赤紫色、黄色、黒色、緑色、または茶色である。
【表8】
【0056】
比較インキ12および例示のインキ13〜18(表8)を用いた印刷試験を、コーティングされた板被印刷物およびRycoline(登録商標)PrintEasy(商標)4600湿し水(Sun Chemical,Chicago,IL)を用いてDrent Goebel VSOP印刷機(Eerbeek,Netherlands)およびGoss VSOP印刷機(Durham,New Hampshire)で実行した。比較インキ12を用いた全ての印刷試験物において、実行が完了した後に、インキローラー下部にインキフィードバックがかなり蓄積した。3%のEthox4614を含有する例示のインキ13〜18を用いた印刷試験物は、インキフィードバックを完全に排除した。高度にエトキシ化された修飾ロジンをインキ13〜18に添加することによって、ローラー下部のインキフィードバックを著しく減少させた。
【0057】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明において様々な修正および変形を加えることができることは当業者に明らかである。したがって、本発明が本発明の修正および変形を包含することが意図されるが、但し、それらが添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内で行われることを条件とする。