特許第6306122号(P6306122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6306122
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】椅子用シェード
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/66 20060101AFI20180326BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20180326BHJP
   B60N 2/24 20060101ALI20180326BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   A47C7/66
   A47C7/62 Z
   B60N2/24
   B60N3/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-209035(P2016-209035)
(22)【出願日】2016年10月25日
【審査請求日】2016年10月26日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508126985
【氏名又は名称】株式会社平成エンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】100109254
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 雅典
(72)【発明者】
【氏名】田倉 貴弥
【審査官】 須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3113377(JP,U)
【文献】 実開平05−043945(JP,U)
【文献】 実開昭60−172489(JP,U)
【文献】 特開2007−030561(JP,A)
【文献】 特開2014−065435(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0185573(US,A1)
【文献】 特開平02−006243(JP,A)
【文献】 特開2015−205665(JP,A)
【文献】 特開2014−037204(JP,A)
【文献】 米国特許第05544378(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C7/62−7/66
B60N2/44
B60N3/00
B62B7/00−19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面概ねコの字形状のブラケットで、該ブラケットが背もたれを前後方向に挟むように、背もたれの左右両側にそれぞれ外嵌させられる左右のシェード支持体と、
該左右のシェード支持体に跨設される撓み変形可能な骨部材を有してなるシェード本体と、
前記シェード本体とは別に、前記左右のシェード支持体を連結するために取り付けられて、前記左右のシェード支持体の横幅方向の間隔を規定して両端部分を支持されている骨部材のアーチ形状に湾曲した状態を維持し、かつ、前記左右のシェード支持体が背もたれの左右両側に外嵌させられたときに背もたれから左右外側方向へ外れないように規制する連結体と、を備えてなり、
前記連結体はストラップで形成されており、前記左右のシェード支持体が外嵌する背もたれの後面側にのみ配置されることを特徴とする椅子用シェード。
【請求項2】
横断面概ねコの字形状のブラケットで、該ブラケットが背もたれを前後方向に挟むように、背もたれの左右両側にそれぞれ外嵌させられる左右のシェード支持体と、
該左右のシェード支持体に跨設される撓み変形可能な骨部材を有してなるシェード本体と、
前記シェード本体とは別に、前記左右のシェード支持体を連結するために取り付けられて、前記左右のシェード支持体の横幅方向の間隔を規定して両端部分を支持されている骨部材のアーチ形状に湾曲した状態を維持し、かつ、前記左右のシェード支持体が背もたれの左右両側に外嵌させられたときに背もたれを左右両側から拘束する連結体と、を備えてなり、
前記連結体はストラップで形成されており、前記左右のシェード支持体が外嵌する背もたれの後面側にのみ配置されることを特徴とする椅子用シェード。
【請求項3】
前記シェード本体、前記左右のシェード支持体に跨って支持される複数の撓み変形可能なアーチ形状の骨部材にシート部材を架け渡して留めて、前記複数の骨部材を側面視扇状に開いて前記シート部材を概ね半ドーム形状に張り渡す展開状態と、前記複数の骨部材を閉じて前記シート部材を背もたれ沿いに畳む収縮状態になし得ることを特徴とする特徴とする請求項1又は2記載の椅子用シェード。
【請求項4】
前記連結体は、分離及び結合可能に左右方向で分割形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の椅子用シェード。
【請求項5】
前記連結体は、左右のシェード支持体の少なくとも一方に対して分離及び結合可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の椅子用シェード。
【請求項6】
前記連結体は、その長さを調節する長さ調節具を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の椅子用シェード。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかに記載の椅子用シェードが装着されていることを特徴とするバスの乗客用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスの乗客用椅子等に取り付けられる椅子用シェードに関する。
【背景技術】
【0002】
遠距離移動バスでは、高速道路のサービスエリア等で停まる休憩時間を設けているが、車内に残って仮眠する乗客で他の乗客に寝顔を見られたくない人は多い。また、日差しで車内が明るい場合や、夜間休憩時に車内照明が点灯された場合に、睡眠を阻害することがある。そこで、乗客用椅子に上部を覆う折畳み式シェードを設け、各乗客に操作させることでプライバシーや睡眠環境を確保する提案がなされている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−105225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、同じバスを遠距離移動でなく、例えば遊覧用として車外の景色を眺めたり、同乗者と会話を楽しんだり、停車した観光スポットで乗客全員が降車するような場合は、シェードを使用することが少ない一方、はね上げたシェードが乗客に圧迫感を与えることもあるので、できれば取り外しておきたいところである。
【0005】
しかし、従来のシェードは、椅子の背もたれ内部のフレームに一体固定したブラケットにシェード本体が支持されており取り外せない構造になっている。逆にシェードを装備していない椅子にシェードを付けたくても、シェード取り付け用ブラケットを備えていないため、椅子を改造する必要がある。
【0006】
また、乗客の体格によって、シェードの高さ位置が合わず、シェードが頭部に当たって窮屈に感じたり、眼の回りに光が差し込んだりする場合でも、上記従来のシェードは高さ調整ができなかった。
【0007】
本発明は、上記のような実情に鑑み、本来シェードを備えていない椅子に対し、改造等をしなくても、状況に応じて容易に装着及び取外し可能で、高さ調整も可能な椅子用シェードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、横断面概ねコの字形状のブラケットで、該ブラケットが背もたれを前後方向に挟むように、背もたれの左右両側にそれぞれ外嵌させられる左右のシェード支持体と、該左右のシェード支持体に跨設される撓み変形可能な骨部材を有してなるシェード本体と、前記シェード本体とは別に、前記左右のシェード支持体を連結するために取り付けられて、前記左右のシェード支持体の横幅方向の間隔を規定して両端部分を支持されている骨部材のアーチ形状に湾曲した状態を維持し、かつ、前記左右のシェード支持体が背もたれの左右両側に外嵌させられたときに背もたれから左右外側方向へ外れないように規制する連結体と、を備えてなり、前記連結体はストラップで形成されており、前記左右のシェード支持体が外嵌する背もたれの後面側にのみ配置されることを特徴とする椅子用シェードを提供する。
【0009】
請求項2記載の発明は、横断面概ねコの字形状のブラケットで、該ブラケットが背もたれを前後方向に挟むように、背もたれの左右両側にそれぞれ外嵌させられる左右のシェード支持体と、該左右のシェード支持体に跨設される撓み変形可能な骨部材を有してなるシェード本体と、前記シェード本体とは別に、前記左右のシェード支持体を連結するために取り付けられて、前記左右のシェード支持体の横幅方向の間隔を規定して両端部分を支持されている骨部材のアーチ形状に湾曲した状態を維持し、かつ、前記左右のシェード支持体が背もたれの左右両側に外嵌させられたときに背もたれを左右両側から拘束する連結体と、を備えてなり、前記連結体はストラップで形成されており、前記左右のシェード支持体が外嵌する背もたれの後面側にのみ配置されることを特徴とする椅子用シェードを提供する。
【0010】
請求項記載の発明は、前記シェード本体、前記左右のシェード支持体に跨って支持される複数の撓み変形可能なアーチ形状の骨部材にシート部材を架け渡して留めて、前記複数の骨部材を側面視扇状に開いて前記シート部材を概ね半ドーム形状に張り渡す展開状態と、前記複数の骨部材を閉じて前記シート部材を背もたれ沿いに畳む収縮状態になし得ることを特徴とする特徴とする請求項1又は2記載の椅子用シェードを提供する。
【0011】
請求項記載の発明は、前記連結体は、分離及び結合可能に左右方向で分割形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の椅子用シェードを提供する。
【0012】
請求項記載の発明は、前記連結体は、左右のシェード支持体の少なくとも一方に対して分離及び結合可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の椅子用シェードを提供する。
【0013】
請求項記載の発明は、前記連結体は、その長さを調節する長さ調節具を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の椅子用シェードを提供する。
【0014】
請求項記載の発明は、請求項1乃至のいずれかに記載の椅子用シェードが装着されていることを特徴とするバスの乗客用椅子を提供する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、以下の優れた効果を奏し得る。左右のシェード支持体に撓み変形可能な骨部材を有してなるシェード本体を跨設し、シェード本体とは別に連結体で左右のシェード支持体を相互に連結することにより、左右のシェード支持体の横幅方向の間隔を規定して両端部分を左右のシェード支持体に支持されている骨部材のアーチ形状に湾曲した状態を維持し、また、左右のシェード支持体が背もたれの左右両側に外嵌させられたときに背もたれから外れないように左右方向の動きを規制することで、固定用の受け金具等を有しない背もたれにシェードを保持させることができる。
【0016】
また、横断面概ねコの字形状のシェード支持体を背もたれに対し上下方向にスライド移動することで、シェード取付位置を着座者に適した高さに設定することができる。ストラップは、柔軟性により自由に変形して背もたれ形状に沿うので、予め形状加工しなくても良い。それゆえ低コストで製作できて形状が異なる背もたれにも取り付けられる。シェード本体が撓み可能なので、シェード支持体の外嵌位置を左右片側ずつ動かして調整する等の融通も効かせられる。連結体を背もたれの後面側(背もたれ面の裏側)にのみ通せば、着座者の背中に当たらず違和感を生じない。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、以下の優れた効果を奏し得る。左右のシェード支持体に撓み変形可能な骨部材を有してなるシェード本体を跨設し、シェード本体とは別に連結体で左右のシェード支持体を相互に連結することにより、左右のシェード支持体の横幅方向の間隔を規定して両端部分を左右のシェード支持体に支持されている骨部材のアーチ形状に湾曲した状態を維持し、また、左右のシェード支持体が背もたれの左右両側に外嵌させられたときにシェード支持体で背もたれを左右両側から拘束することで、固定用の受け金具等を有しない背もたれにシェードを固定することができる。
【0018】
また、横断面概ねコの字形状のシェード支持体を背もたれに対し上下方向にスライド移動することで、シェード取付位置を着座者に適した高さに設定することができる。ストラップは、柔軟性により自由に変形して背もたれ形状に沿うので、予め形状加工しなくても良い。それゆえ低コストで製作できて形状が異なる背もたれにも取り付けられる。シェード本体が撓み可能なので、シェード支持体の外嵌位置を左右片側ずつ動かして調整する等の融通も効かせられる。連結体を背もたれの後面側(背もたれ面の裏側)にのみ通せば、着座者の背中に当たらず違和感を生じない。
【0019】
請求項記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏し得る。シェード本体をアーチ形状の骨部材にシート部材を留めるだけの構造としたので、軽量かつ安価に製作できる。骨部材を扇状に開く展開状態では、シート部材が張り渡されて着座者の頭部回りを覆うことができる一方、骨部材を閉じる収縮状態では、シート部材が背もたれ沿いに折り畳まれて着座者の邪魔にならない。
【0020】
請求項記載の発明によれば、請求項1乃至記載の発明が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏し得る。分割形成した連結体を分離すれば、シェード本体を撓ませてシェード支持体の間隔を広げることで、背もたれに左右外側方向から楽に外嵌装着することができる。
【0021】
請求項記載の発明によれば、請求項1乃至記載の発明が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏し得る。シェード支持体と連結体を分離すれば、シェード本体を撓ませてシェード支持体の間隔を広げることで、背もたれに左右外側方向から楽に外嵌装着することができる。
【0022】
請求項記載の発明によれば、請求項1乃至記載の発明が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏し得る。長さ調節具で連結体を伸ばせば、シェード本体を撓ませてシェード支持体の間隔を広げることで、背もたれに左右外側方向から楽に外嵌装着することができる。装着後に長さ調節具で連結体を短めに縮めれば、シェード支持体の間隔を狭めて背もたれを左右両側から拘束することで確実に固定することができる。特にクッション材で形成した背もたれであれば撓みの反発力で保持力が一層高められる。なお、連結体の長さを調節することで、シェード支持体の間隔を変えて横幅が異なる背もたれにも取り付けることができる。
【0023】
請求項記載の発明に係るバスの乗客用椅子によれば、請求項1乃至記載の椅子用シェードが奏する効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】シェード(収縮状態)の斜視図。
図2】シェード(展開状態)の斜視図。
図3】シェードの取り付け部分の横断面図。
図4】シェード支持体とシェード本体(骨部材)の関係を示す組立斜視図。
図5】シェード支持体とシェード本体(骨部材)の関係を示す斜視図。
図6】シェード支持体とシェード本体(シート部材)の関係を示す斜視図。
図7】シェードの装着対象となる背もたれの横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(椅子用シェード1)
本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る椅子用シェード(以下、単に「シェード」という)1は、バスの乗客用椅子の背もたれSに着脱可能で、シェード本体(以下、単に「本体」という)3を閉じた収縮状態(図1)と、本体3を広げた展開状態(図2)にすることができる。シェード1の装着対象となる背もたれSは、金属製フレームの前面及び側面をポリウレタン製のクッション材で覆い、それらを布製の表皮で更に覆って形成され、横断面は図7(内部フレームの図示省略)に示すように概ね矩形状である。なお、背もたれSの左右幅寸法(横幅)Wsは高さ位置に関わらず一定だが、前後幅寸法(厚み)Tは一定でなく、上端寄り部分(頭部が当たる部分)がやや厚めで、それより少し下方が薄く、そこから下方に向かって逆に厚みを増すようになっている。
【0026】
シェード1は、図1図3に示すように、背もたれSの左右両側部にそれぞれ外嵌させられる左右一対のシェード支持体(以下、単に「支持体」という)2,2と、左右一対の支持体2.2に跨って支持される複数の撓み変形可能なアーチ形状の骨部材を有してなる本体3と、本体3とは別に左右一対の支持体2,2を相互に連結し、支持体2,2の間隔Wを背もたれSの横幅Wsに合わせるように設定して、支持体2,2の左右外側方向へ外れないように動きを規制する帯状ストラップの連結体4を備えている。
【0027】
(支持体2)
左右の支持体2,2は、ステンレスやアルミニウム等の金属板を折り曲げてなる左右対称形状の金属製ブラケットで、背もたれSに対し左右両側から外嵌係合可能となるように相対向する向きで設けられている。各支持体2は、図1及び図3に示すように横断面コの字形状に形成され、該コの字形状の相対向する部位(以下、「挟持部」という)2aと2bの内側面がそれぞれ背もたれSの前面Sと後面Sに当接して背もたれSを前後方向に挟持する。挟持部2a,2bを繋ぐ部位(以下、「接続部」という)2cは、図3に示すように側面Sに当接した状態となる。挟持部2bには、図1及び図3に示すように縦長スリット状の挿通穴2dが貫通形成されており、該挿通穴2dに挿通固定される連結体4が、背もたれSに外嵌される左右一対の支持体2,2を相互に連結する。なお、コの字形状の外側面は、本体3の支持部分及び連結体4との結合部分を含め、後述するシート部材32と一体形成されたカバー33で覆われている。
【0028】
図3に示す挟持部2a,2b間の前後幅寸法(内幅)Tは、背もたれSの上下方向の中央辺り(以下、「中途位置」という)における厚みT図7)と略同じに設定されている。背もたれSの上端より少し下方では、厚みTが挟持部の内幅Tより小さく、支持体2を外嵌させると前後方向に隙間を生じるが、そこから中途位置まで支持体2を下方移動させると、厚みTと内幅Tが一致して、図3に示すように挟持部2a,2bが前後面S,Sに当接し、支持体2は前後方向の動きを規制されると共に下方へずり落ちないように拘束される。図3に示す支持体2,2間の横幅寸法(接続部2c,2cの内側面の間隔)Wを、連結体4の長さ調節機構41(詳細は後述する)により背もたれSの横幅寸法Ws(図7)に合わせて調整することで、連結体4が略真直ぐに横方向に延びるように張設されて、支持体2,2の左右方向の動きを規制する。
【0029】
上記のとおり、挟持部2a,2bで背もたれSを前後方向に挟持することにより、支持体2,2自体が下方へずり落ちないように拘束されて、更に連結体4で相互に引き合わされることにより、左右方向にも外れないように規制される。これにより、左右一対の支持体2,2は、固定用の受け金具等を有しない背もたれSから脱落しないように保持される。
【0030】
背もたれSの厚みTが大きくなる下方位置でも、クッション材を前後方向に撓ませれば断面コの字形状の支持体2,2を外嵌させることができるので、小柄な人に合わせた低い位置にもシェード1を取り付けられる。この場合、クッション材の前後方向の反発力が増して、支持体2,2は確実に保持される。また、背もたれの厚みTが小さく、挟持部2a,2bとクッションの前後面S,Sの間に隙ができる上方位置でも、長さ調節機構41で連結体4を縮めて支持体2,2で背もたれSを左右両側から拘束するように締めれば、支持体2,2を保持できるので、大柄な人に合わせた高い位置にもシェード1を取り付けられる。この場合は、クッション材の左右方向の反発力が増すことで、支持体2,2を確実に保持する。なお、背もたれSの厚みTが挟持部2a,2bの内幅Tと同じか、もしくは内幅Tより大きい位置に支持体2,2を外嵌させて、連結体4を縮めるようにすれば、クッション材は横幅方向に小さく撓む一方、厚み方向に膨らんで、その反発力で支持体2,2は一層確実に保持される。
【0031】
上記のいずれの場合においても、シェード支持体2,2が、背もたれSの本体部分である左右両側部に直接に係合した状態で保持され、背もたれS側にシェード固定用の受け金具等を設けていなくても取り付けられる。また、シェードを取り外したときでも受け金具等がなければ人が引っ掛かって怪我したり服を破いたりする心配がなく、見栄えも良好である。
【0032】
(本体3)
本体3は、図1及び図2に示すように、左右一対の支持体2,2に跨るように両端部分を支持される3本(複数)のアーチ形状の骨部材31a,31b,31cと、これらの骨部材に前後方向に架け渡されるように留められる布製のシート部材32を有してなり、全体として撓み変形可能な概ねアーチ形状に形成されて支持体2,2に跨設される。本体3は、図1に示すように骨部材31a,31b,31cを背もたれSに寄せるように後方へ閉じると、それに応じてシート部材32も背もたれ沿いに畳まれる収縮状態となる。また、収縮状態から骨部材31cを前方に引き出すと、シート部材32及び骨部材31bも引っ張られて、側面視扇形状に開いて、図2に示すように、背もたれ上部の前側に概ね半ドーム形状に張り渡される展開状態になる。
【0033】
骨部材31a,31b,31cは、いずれもバネ鋼線等の撓み変形可能な材料からなる幅の狭い帯板状の線材で形成されており、連結体4で横幅方向の間隔を規定されている接続部2c,2cに両端部分を支持されて、アーチ形状の湾曲した状態が維持されている。骨部材31aは、図3図5に示すように両端部分が接続部2cの内側面沿いにリベット等(図示なし)で回動不能に取り付けられる固定骨部材で、図1及び図2に示すように、支持体2,2を背もたれの左右両側部に外嵌したときに、背もたれSに概ね沿う角度で支持される。残りの骨部材31b,31cは、図3及び図4に示すように、軸孔を穿孔形成した両端部分が接続部2cの外側に突設する支持軸21で回動支持される可動骨部材で、支持軸21の先端に取り付けられる抜け止め34で外れないようにしている。
【0034】
可動骨部材31bは、接続部2cの内面側に取り付けられている固定骨部材31aより若干大きいアーチ形状に形成されており、可動骨部材31cは、可動骨部材31bより若干大きいアーチ形状に形成され、可動骨部材31bの外側に取り付けられているが、図1に示すように可動骨部材31b、31cを回動して後方に寄せたときには、固定骨部材31aが可動骨部材31bと干渉し、可動骨部材31bが可動骨部材31bと干渉して、可動骨部材が後方へ行き過ぎないようにするストッパの役割を果たしている。なお、布部材32が前方展開時に張り渡されたときには、シート部材32が可動骨部材31b,31cの前方への回転規制ストッパとして機能する。
【0035】
シート部材32は、薄手の遮光性材料で形成され、図2に示すように、張り渡されたときに弛まないように立体的に縫製されている。骨部材に使用者の手指や頭部が直接触れて怪我をしないように、シート部材32の裏側には、骨部材31a,31b,31cを収納して留める細長いスリーブ32a,32b,32c(図6)が一体的に設けられている。スリーブ32a,32b,32cは、面ファスナ等の不図示の留め具で開閉可能とされ、骨部材31a,31b,31cを包んで留め具で閉じることでシート部材32に取り付けられる。シート部材32の下端部には、図6に示すように、支持体2の外側を覆うカバー33が一体的に設けられており、骨部材にシート部材を留めるときに合わせて取付作業を行うことができる。
【0036】
シート部材32の横方向中央の前後端には、留め具321,322が設けられている。これらは、可動骨部材31b,31cを固定骨部材31aと重ねるように閉じて、相互に接近したときに、図1に示すように係合させてシェードが不意に展開しないように保持するもので、シェードを展開するときは係合を解除する。また、シート部材32の可動骨部材31bと31cの間に張り渡される部位には、展開したシェードの中から外の様子を見られるように網目状シートで覆われた小窓323を設けている。
【0037】
本体3は、骨部材31a,31b,31cを前後方向に広げた展開状態において、遮光性のシート部材32を骨部材31a,31b,31cの間に張り渡し、着座者の顔を覆いプライバシーを確保すると共に、視線への光の差し込みを防止することができる。また、骨部材31a,31b,31cを背もたれSに寄せて閉じた収縮状態では、シート部材32を背もたれS沿いに小さく畳むことができる。なお、アーチ形状の骨部材にシート部材を留めるだけの構造であるから、軽量かつ安価に製作することができる。
【0038】
(連結体4)
連結体4は、布製の帯状ストラップで形成され、本体3とは別に、支持体2,2を相互に連結するために挟持部2b、2bに取り付けられて、シェード1が椅子に装着されたときに、図3に示すように背もたれSの平坦な後面Sに沿って大きな段差を生じることなく配索される。ストラップは柔軟性があるため、後面Sが平坦でなく膨らみがあるような場合でも、或る程度自由に変形させて取り回すことができる。また、本体3が撓み変形可能であることと相俟って、椅子装着時に左右のシェード支持体の外嵌位置を片側ずつ動かして調整する等の融通も効かせ易い。
【0039】
連結体4は、いわゆる一本物ではなく、長手方向の中途部位で左右に分割されている。左右の分割連結体42,43は、一端(以下、「固定端」という)42a,43aがそれぞれ左右の支持体2,2に対して結合され、反対側の他端(以下「自由端」という)42b,43bは、相互に分離及び結合可能とされている。固定端42a,43aは、支持体2,2の挿通穴2d,2dにそれぞれ挿通され、挿通穴の裏側へ突出した部分が折り返され、同じ分割連結体42,43自体に重ね合わせた状態で縫合されている。分割連結体42の自由端42bは、四角枠形状で二つ穴のバックル44の一方の枠穴44aに挿通され、枠穴の裏側へ突出した部分が折り返されて、同じ分割連結体42自体に重ね合わせた状態で縫合することでバックル44を取り付けている。分割連結体43の自由端43bは、連結体4の先端寄りに雄型面ファスナ45が取り付けられ、そこから長手方向に離れた真ん中寄りに雌型面ファスナ46が取り付けられている。
【0040】
したがって、バックル44の他方の枠穴44bに分割連結体43を挿通し、その裏側に突出する自由端43bを折り返し、雄型面ファスナ45と雌型面ファスナ46を係合することで、分割連結体42と43を相互に結合し、支持体2,2を連結する。また、雄型面ファスナ45と雌型面ファスナ46の係合を解除すれば、分割連結体42と43を分離して、連結体4による支持体2,2の連結を切り離すことができる。更に、雄型面ファスナ45と雌型面ファスナ46の係合位置を連結体4の長手方向にずらして、自由端43bの折り返し長さを変えることで、連結体4の長さを調節する長さ調節機構41として機能する。
【0041】
連結体4は、装着時に背もたれSに沿うように変形可能であるため、予め形状加工をする必要がなく、後面Sに他部品(例えばアシストグリップ等)が装着されており平坦でないような場合でも、それらに沿うように又はそれらを迂回するように自由に変形させられる。したがって、僅かな椅子形状の違いや仕様違いに応じて連結体を取り替え、シェードの種類を増やしたり、多種類のシェードを分別管理したりする必要がない。
【0042】
背もたれSの上端部における厚みTが支持体2の内幅Tより大きい等の場合でも連結体4を途中で切り離したり弛ませたりすれば、本体3を撓ませて支持体2,2の間隔を広げられるので、背もたれSに対し左右外側方向から楽に装着することができる。本体3が撓み変形可能であるから、背もたれの横幅が異なる椅子にも装着可能である。シェードを装着した後で位置や傾きを微修正する場合には、連結体4を弛ませずに支持体2,2をずり動かした方が効率的であるが、その際、帯状の連結体4は背もたれ表面に対してごろついたり引っ掛かったりしにくいため、作業がやり易い。連結体4は、背もたれSの後面S側にのみ配索されるので、前面Sにもたれる着座者の背中に違和感を与えることがない。なお、左右のシェード支持体2,2が脱落しないように保持され、又は背もたれSに対して固定できれば、連結体4を背もたれの後面側にのみ設けることにしても特に問題はない。
(上記実施形態の変形例)
【0043】
上記実施形態では、支持体2は、金属製ブラケットとしたが、合成樹脂や木材で形成することもできる。背もたれSとの嵌合面(内側面)には、背もたれとの相対動きを抑えるための滑り止め材や、外嵌時の撓みによる反発力で背もたれに対する保持力を向上させるためのクッション材を取り付けても良い。支持体2は横断面コの字形状としたが、背もたれを前後方向に挟持するように外嵌できれば他の形状にしても良く、例えばコの字形状の角部の一方又は両方を丸めたり、角部の開き角度を変えたりするなどした概ねコの字形状としても良い。支持体2,2は左右対称形に限らず、装着対象の背もたれが左右非対称形である場合は、それに応じて左右非対称形としても良い。上記実施形態では、支持体2,2と連結体4(ストラップ)を別々に形成して結合させるようにしたが、これらを一体成形することにしても良い。
【0044】
上記実施形態では、支持体2,2の接続部2c、2cと背もたれSの両側面が当接するものとして説明したが、支持体2,2が左右外側方向へ外れない程度に動きを規制することができれば、接続部2c、2cと背もたれSの両側面との間に隙があっても良い。すなわち、背もたれSの横幅Wsに対して支持体2,2の間隔Wは必ずしも一致していなくて良い。
【0045】
上記実施形態では、本体3において、骨部材31aを骨部材31b,31cと分けて、支持体2,2に固定したが、骨部材31aも骨部材31b,31cと同様に支持軸21に支持し、回り止めを設けることで回動しないように保持しても良い。本体3のシート部材の形成材料としては、布に限らず、布に類した柔軟性を有する皮革シートや軟質性樹脂シート、あるいは伸縮可能な蛇腹状の折目を有するように加工されたシート等を採用しても良い。また、本体3が椅子の立ち座りの邪魔にならない形状をしたものであれば、収縮可能とする必要はなく、骨部材はすべて固定されたものとしても良い。本体3は、撓み変形可能であれば、骨部材とシート部材を組み合わせることにより形成したものに限らず、合成樹脂で一体成型することにしても良い。
【0046】
上記実施形態では、連結体4を背もたれの後面S側にのみ設けることとしたが、前面S側に設けるようにしても良い。帯状ストラップのように柔軟で段差を生じにくいものであれば、着座者の背中に与える違和感が少ないからである。連結体4は布製の帯状ストラップに限らず、革製、紙製、金属製、合成樹脂製としても良く、ワイヤー状、紐状、チェーン状としても良い。また、左右の支持体2,2の連結を切り離せるように、連結体4を分離・結合可能な分割連結体42,43で形成したが、これに加えて、あるいはこれに代えて、支持体2,2の少なくとも一方と連結体4を分離及び結合可能にしても良い。上記実施形態は、分割連結体42,43を面ファスナで分離・結合可能としたが、他の留め具(例えばピンバックル、二つ穴バックル、鉤ホック、スプリングホック、ボタンホック等)を用いても良い。なお、これらの留め具も、ストラップの長手方向の複数位置において係合可能とすればストラップ長さの調節が可能である。
【0047】
上記実施形態では、シェード1は、バスの乗客用椅子の背もたれに装着する例について説明したが、本発明に係る椅子用シェードは、バス以外の乗物における乗客用椅子に適用してもよく、乗物以外に使用される椅子、例えば屋外に設置されるソファその他の椅子に適用することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 椅子用シェード
2 シェード支持体
2a 挟持部(前面側)
2b 挟持部(後面側)
2c 接続部
2d 挿通穴
3 シェード本体
31a 固定骨部材
31b 可動骨部材
31c 可動骨部材
32 シート部材
323 小窓
33 カバー
4 連結体
41 長さ調節機構
45 雄型面ファスナ
46 雌型面ファスナ
S 背もたれ
【要約】
【課題】 椅子の改造等をしなくても、状況に応じて着脱可能で、高さ位置も調整可能な椅子用シェードを提供することを目的とする。
【解決手段】 背もたれの左右両側に外嵌させられる左右一対のシェード支持体と、当該左右一対のシェード支持体に跨って支持される撓み変形可能な骨部材でアーチ形状に形成されるシェード本体と、前記左右一対のシェード支持体を相互に連結して、それらの間隔を背もたれの横幅寸法に合わせて設定する連結体を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図5
図6
図7