特許第6306150号(P6306150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6306150遷移金属を応用した画期的前駆触媒およびその調製プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306150
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】遷移金属を応用した画期的前駆触媒およびその調製プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/642 20060101AFI20180326BHJP
   C07F 7/28 20060101ALN20180326BHJP
【FI】
   C08F4/642
   !C07F7/28 F
【請求項の数】18
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-508290(P2016-508290)
(86)(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公表番号】特表2016-522844(P2016-522844A)
(43)【公表日】2016年8月4日
(86)【国際出願番号】IN2014000234
(87)【国際公開番号】WO2014170913
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2017年4月14日
(31)【優先権主張番号】1440/MUM/2013
(32)【優先日】2013年4月17日
(33)【優先権主張国】IN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511269587
【氏名又は名称】リライアンス、インダストリーズ、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RELIANCE INDUSTRIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】バグイ、マフヤ
(72)【発明者】
【氏名】パティル、ヨゲシュ ポパトラオ
(72)【発明者】
【氏名】パテル、ヴィラルクマール
(72)【発明者】
【氏名】サーマ、クリシュナ レンガナタ
(72)【発明者】
【氏名】ジャスラ、ラクシュ ヴィール
(72)【発明者】
【氏名】マトゥール、アジト ベハリ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァキル、スケトゥ
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−268030(JP,A)
【文献】 特開2004−148290(JP,A)
【文献】 国際公開第91/014694(WO,A1)
【文献】 特開2008−291241(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0120996(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1251842(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第1315460(CN,A)
【文献】 Chinese Journal of Chemistry,2004年,22,577-584
【文献】 Inorganic Chemistry Communications,2001年,392-394
【文献】 Inorganic Chemistry,2001年,40,3222-3227
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4,C07F7
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表されるオレフィン重合用触媒用の遷移金属系前駆触媒。
【化1】
[ここに、R1、R2、R4、R6 R8R10、R12は同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン化物から成る群より選択されるものであり、R5とR9は3級アルキル群であり、R7とR11 は同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素と3級アルキル群から成る群より選択されるものであり、R3は独立して水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、カルボキシル基とスルホン酸から成る群より選択されるものであり、Mはハフニウム(Hf)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、タングステン(W)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、チタン (Ti)から成る群より選択される遷移金属であり、XはCl、Br、Iから成る群より選択されるハロゲン化物であり、nは整数2を表す。]
【請求項2】
前記前駆触媒が、
i. R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8R10、R11、R12 は水素、R5とR9 はターシャリーブチル群、Mはチタン (Ti)、XはCl、nは整数2を表す組合せ、および、
ii. R1、R2、R3、R4、R6、R8R10 とR12が水素、R5、R9、R7、R11がターシャリーブチル群、Mはチタン (Ti)、XはCl、nは整数2を表す組合せからなる群より選択される置換基の組み合わせからなる、請求項1に記載の遷移金属系前駆触媒。
【請求項3】
請求項1に記載の遷移金属系前駆触媒の調製プロセスであって、
i. 式(II)の芳香族ジアミンと式(IIIa/IIIb)の少なくとも一つの置換サリチルアルデヒドを反応させ、式(IV)のシッフ基イミンリガンドを得る手順と、
ii. 選択的に、アルカリ金属イオン注入材を使用して式(IV)のシッフ基イミンリガンドにアルカリ金属イオンを注入し、式(V)のシッフ基イミンリガンドからなるアルカリ金属塩を得る手順と、
iii. 式IVのシッフ基イミンリガンドまたは式(V)のシッフ基イミンリガンドのアルカリ金属塩を遷移金属のハロゲン化物とキレート化し、式Iで表す遷移金属系前駆触媒を得る手順とを有することを特徴とするプロセス。
【化2】
[ここに、R1、R2、R4、R6 R8R10、R12は同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン化物から成る群より選択されるものであり、R5とR9は3級アルキル群であり、R7とR11 は同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素と3級アルキル群から成る群より選択されるものであり、R3は独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、カルボキシル基およびスルホン酸から成る群より選択される。]
【化3】
[ここに、R1、R2、R4、R6 R8R10、R12は同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン化物から成る群より選択されるものであり、R5とR9は3級アルキル群であり、R7とR11 は同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素と3級アルキル群から成る群より選択されるものであり、R3は独立して水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、カルボキシル基およびスルホン酸から成る群より選択されるものであり、M1はアルカリ金属イオン注入材のアルカリ金属イオンである。]
【化4】
[ここに、R1、R2、R4、R6 R8R10、R12は同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン化物から成る群より選択されるものであり、R5とR9は3級アルキル群であり、R7とR11 は同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素と3級アルキル群から成る群より選択されるものであり、R3は独立して水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、カルボキシル基とスルホン酸から成る群より選択されるものであり、Mはハフニウム(Hf)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、タングステン(W)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、チタン (Ti)から成る群から選択される遷移金属であり、XはCl、Br、Iから成る群より選択されるハロゲン化物であり、nは整数2を表す。]
【請求項4】
式IVのシッフ基イミンリガンドまたは式(V)のシッフ基イミンリガンドのアルカリ金属塩と、遷移金属ハロゲン化物との比が、1:1である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記手順(i)はp-トルエンスルホン酸および硫酸から成る群より選択される少なくとも一つの化合物の存在下において、トルエン、キシレン、ヘキサン、メタノールとエタノールから成る群より選択される少なくとも一つの液体媒体中で、温度範囲が40 oCから液体媒体の沸点までの間で実行される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
置換サリチルアルデヒドが、3-tert-ブチルサリチルアルデヒドおよび3,5-ジ-tert-ブチルサリチルアルデヒドから成る群より選択される少なくとも一つの化合物である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項7】
式(IIIa)の置換サリチルアルデヒドと、式(IIIb)の置換サリチルアルデヒドが、同一または異なるものである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項8】
前記前駆触媒が、
i. R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8R10、R11、R12は水素、R5とR9はターシャリーブチル群、Mはチタン (Ti)、XはCl、nは整数2を表す組合せ、および、
ii. R1、R2、R3、R4、R6、R8R10 とR12は水素、R5、R9、R7、R11がターシャリーブチル群、Mはチタン (Ti)、XはCl、nは整数2を表す組合せからなる群より選択される置換基の組み合わせからなる、請求項3に記載のプロセス。
【請求項9】
前記アルカリ金属イオン注入材が、n-ブチルリチウム、水素化ナトリウム、リチウムアミノアルコキシドおよびリチウムジイソプロピルアミドから成る群より選択される少なくとも一つの注入材である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項10】
式Iで表される遷移金属系前駆触媒、少なくとも一つのアルキルアルミニウム助触媒、および、少なくとも一つの不活性炭化水素の液体媒体から構成される、オレフィン重合用触媒用の触媒成分。
【化5】
[ここに、R1、R2、R4、R6 R8、R10、R12は同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン化物から成る群より選択されるものであり、R5とR9は3級アルキル群であり、R7とR11は同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素と3級アルキル群から成る群より選択されるものであり、R3は独立して水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、カルボキシル基とスルホン酸から成る群より選択されるものであり、Mはハフニウム(Hf)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、タングステン(W)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、チタン (Ti)から成る群から選択される遷移金属であり、XはCl、Br、Iから成る群より選択されるハロゲン化物であり、nは整数2を表す。]
【請求項11】
前記アルキルアルミニウム助触媒が、メチルアルモキサン、ポリメチルアルモキサン、トリエチルアルミニウム、イソプレニル アルミニウム、アルミニウムセスキクロライド、トリ-n-オクチルアルミニウムおよび、トリイソブチルアルミニウムから成る群より選択される少なくとも一つの化合物である、請求項10に記載の触媒成分。
【請求項12】
前記助触媒が、ポリメチルアルモキサンである、請求項10に記載の触媒成分。
【請求項13】
アルミニウム元素とチタン元素との比(Al/Ti)が、50:1〜1000:1の範囲である、請求項10に記載の触媒成分。
【請求項14】
前記不活性炭化水素液体媒体が、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、イソペンタン とミネラルスピリットから成る群より選択される少なくとも一つの媒体である、請求項10に記載の触媒成分。
【請求項15】
アルミニウム元素とチタン元素との比(Al/Ti)が200:1〜300:1の範囲であり、前記不活性炭化水素液体媒体はミネラルスピリットである、請求項10に記載の触媒成分。
【請求項16】
オレフィンの重合化プロセスであって、
i. 請求項1に記載の遷移金属系前駆触媒と少なくとも一つの助触媒を、アルミニウム元素とチタン元素との比が50:1〜1000:1となる範囲で、少なくとも一つの不活性炭化水素液体媒体の存在下において、温度範囲10〜30 0Cで混合し、活性化触媒成分を得る手順、
ii. 少なくとも一つのオレフィンモノマーを活性化触媒成分に添加し、反応混合物を得る手順、および、
iii. 温度範囲-5〜70 0C、圧力範囲0.1〜11 barsで反応時間1時間から10時間を掛け反応混合物を重合化し、オレフィン重合体を得る手順を有するプロセス。
【請求項17】
前記不活性炭化水素液体媒体はペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、イソペンタン とミネラルスピリットから成る群より選択される少なくとも一つの媒体である、請求項16に記載のオレフィン重合化プロセス。
【請求項18】
前記オレフィンモノマーはエチレンであり、前記不活性炭化水素液体媒体はミネラルスピリットである請求項16に記載のオレフィン重合化プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は前駆触媒とその調製プロセスに関する。本発明はまた、重合化反応を目的とする前記の前駆触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子量ポリオレフィンは高摩耗耐性、高衝撃耐性、低摩擦係数などの物性を有する。従って、ファイバー、シート、生体材料,ワイヤーやケーブルなど多様な携帯の高分子量ポリオレフィンへの需要が高い。超高分子量ポリオレフィンと通常呼ばれる分子量が100万g/molを超えるポリオレフィンは生医学からミサイルの材料に及ぶまで幅広く柔軟な用途に応用され普及が進んできた。超高分子量ポリエチレンは重合体連鎖のもつれが最も少なく(鎖のもつれ解除度が最大)、融点未満での多孔性の形態、高結晶度、興味深い固体状用途によって高衝撃耐性が要求される軍事用途のほか、3D再生術における重合体支持体や人工補綴物による組織代替等の生医学用途に適す。
【0003】
ポリオレフィンは遷移金属触媒反応による重合化技術を使用して製造できることは周知である。典型的に、ポリオレフィンの製造に使用される触媒は通常はマルチサイト(多くの活性的構造を含む)異質性ツィーグラー・ナッタ触媒である。重合化技術の進歩にともない、シングルサイト触媒または群IVメタロセン触媒がポリオレフィン.製造にますます利用されるようになっている。シングルサイト触媒とメタロセン触媒はますます基幹製造プロセス要件に適合させて設計されている。触媒の改善は設備機器の腐食皆無またはほぼ皆無にすることおよび触媒活性の維持に重点が置かれる。最終製品に要求される多くの特性を体化させるための複合機能を持つ触媒の開発には、触媒錯体の選択を注意深く行う必要がある。さらに、触媒の金属成分と錯体を形成するために適切なリガンドは最終製品に目的の特性を体化させることを目的として選択される。
【0004】
例えば、均質的シングルサイト触媒を用いたエチレン重合化反応ではリガンドと金属間で電子が交換される。リガンドの構造が活性と触媒の立体特異性を決定する際に一役を果たしていることが文献では報告されてきた。その性状からして、リガンドは電子的に柔軟性があり、目的ポリマーの目的分子量、多孔性、形態、かさ密度と高結晶度を実現するために触媒錯体をカスタム化するほか、高活性を触媒錯体に与えるという要件を果たす。
【0005】
継続研究によってエチレン重合化のために、フェノキシイミンリガンド早期遷移金属錯体(FI触媒)、ピロリジンイミンリガンド群IV遷移金属錯体(PI触媒)、インドライドイミンリガンドTi錯体(II触媒)、フェノキシイミンリガンド群(IV)遷移金属錯体(IF触媒)、フェノキシエーテルリガンドTi錯体(FE触媒)、イミンピリジンリガンド後期遷移金属錯体(IP触媒)およびトリス(ピラゾリル)ホウ酸塩リガンドTa錯体(PB触媒)を含む高活性触媒が発見された。先行技術の一部を次に検討する。
【0006】
CN101280031は遷移金属と5,5-イソプロピリデン-ビス(3-tert-ブチル-ヒドロキシベンザルデヒド)イミンリガンドからなる錯体から構成される触媒システムの調製プロセスを開示している。この技術は同触媒システムは5,5-イソプロピリデン - ビス(3 - tert-ブチル-ヒドロキシベンザルデヒド)をモノアミンと反応させリガンドを得て、このリガンドを遷移金属化合物と錯体化させて調製する。
【0007】
CN101089006はニッケルを応用したサリチルアルデヒド架橋二核カーボジイミド型化合物を開示している。CN101089006に開示されたニッケルを応用した触媒を重合化反応に使用すると、分子量が10万程度にしか至らないエチレンオリゴマーとポリマーを得る。
【0008】
「アレーン架橋アリチルアルジミン系二核中性ニッケル(II)錯体:合成およびエチレン重合化反応」(Organometallics 2007、26、617-625に出版された)という表題の記事は[O、N]型リガンドを有するニッケル系触媒を開示している。
【0009】
「一連のビス(フェノキシイミン)チタン錯体のエチレンとプロピレンの重合化挙動」(Rieko Furuyama et al、Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 200 (2003) 31-42に出版)という表題の別の記事はエチレンとプロピレンの重合化にチタン系触媒を開示している。3-t-ブチルサリチルアルデヒド/3、5-di-t-ブチルサリチルアルデヒドとモノアミンを反応させて得られるリガンドをハロゲン化チタンで錯体を形成し、触媒を調製する。
【0010】
「エチレン重合化用触媒としての四座と二座アゾメチン遷移金属錯体:遷移金属と助触媒の効果」(Marzena Bialek、et al、Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry、Vol. 47、565-575 (2009))という表題のさらに別の記事はバナジウム、チタンやジルコニウムなどの遷移金属系触媒を開示している。触媒のリガンド錯体はオルトフェニレンジアミンとサリチルアルデヒドを反応させ、次に遷移金属との錯体として触媒を得ることによって調製される。
【0011】
WO2013118140はサリチルアルデヒドイミンリガンドと、機能化無機支持体により支持された遷移金属化合物の錯体からなる化学的に固定された異質化重合化触媒を開示している。
【0012】
「オレフィン重合化のための画期的触媒」(Prof. Dr. Ibrahim M. Al Najjar、Saudi International Petrochemical Technologies Conference、2011で発表)という表題の記事はリガンド錯体の調製にパラフェニレンジアミンを使用する遷移金属系触媒を開示している。
【0013】
FI触媒は「オレフィンのオリゴマー化と重合化用FI触媒の原理と応用」(Terunori Fujita著)という表題の記事にも開示された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
先行技術触媒の一部は分子量が100万g/モル級の重合化を目指すオレフィン重合化のためには効率が低い。さらに、先行技術においては既知である常温高圧下での触媒が示す急速な反応動力学特性は、触媒の一部の活性があるため重合体の分子量を制御する上では課題となってきた。分子量制御という課題は100〜600万g/mol級の低い分子量を持つポリマーを取得する際、反応動力学を制御できないことによってさらに困難となった。この場合一般的に反応温度が65oCを遥かに超えるので、効果的に温度制御しないと反応混合物にポリマーの塊が形成される。このため最終的には重合化装置の腐食に至る。従って、先行技術で既知の触媒を使用すると保守頻度が高くなることから重合化プロセスコストが増加する。
【0015】
従って、反応動力学の制御、最小の運用費と分子量制御特性を改善させる重合化反応用の触媒開発ニーズが存在する。
【0016】
目的:
本発明の一部の目的について次に説明する。
【0017】
先行技術の持つ一つまたは複数の課題を改善するかまたは少なくとも有用な代替手段を提供することが本発明の目的である。
【0018】
本発明のもう一つの目的は遷移金属系前駆触媒を提供することである。
【0019】
超高分子量ポリオレフィンを生産するためのオレフィン重合化用遷移金属系前駆触媒を提供することが本発明のさらに別の目的である。
【0020】
重合体分子量の制御が可能な反応動力学が改善された重合体を得られる遷移金属系前駆触媒を提供することが本発明のさらに別の目的である。
【0021】
重合化装置の腐食を防止するために反応動力学制御が改善された遷移金属系前駆触媒を提供することが本発明のさらに別の目的である。
【0022】
簡素であって経済的な遷移金属系前駆触媒の調製プロセスを提供することが本発明のさらに別の目的である。
【0023】
遷移金属系前駆触媒を使用するオレフィンの重合化プロセスを提供することが本発明のさらに別の目的である。
【0024】
異質的と均質的重合化のプロセスともに適合した前駆触媒を提供することが本発明のさらに別の目的である。
【0025】
前記前駆触媒から構成される触媒成分を提供することが本発明のさらに別の目的である。
本発明のその他の目的と優位性は本発明の範囲をこれに限定することは意図されていない次の悦明によってさらに明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明のうちの1つの側面に従い式Iによって示される遷移金属系前駆触媒を提供する。
【化1】
ここに、 R1、R2、R4、R6 R8R10、R12は同じであるか異なることができ、さらに、水素、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン化物から成る群から個別に選択される。
R5とR9は3級アルキル群である
R7とR11 は同じであるか異なることができ、さらに、水素と3級アルキル群から成る群から個別に選択される。
R3は水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、カルボキシル基とスルホン酸から成る群から個別に選択される。
Mはハフニウム(Hf)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、タングステン(W)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、チタン (Ti)から成る群から選択される遷移金属である。
XはCl、Br、Iから成る群から選択されるハロゲン化物である。
nは整数2を表す。
【0027】
典型的に、前記の前駆触媒は次からなる群から選択される置換基の組から構成される。
i. R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8R10、R11、R12 は水素、R5とR9 はターシャリーブチル群、Mはチタン (Ti)、XがCl、nは整数2を表し、
ii. R1、R2、R3、R4、R6、R8R10 とR12が水素、R5、R9、R7、R11がターシャリーブチル群、Mはチタン (Ti)、XがClで とnは整数2を表す。
【0028】
本発明の他の一つの局面に従って遷移金属系前駆触媒の調製プロセスを提供する。前記のプロセスは以下の項目から構成される:
iii. 式(II)の芳香族ジアミンと式(IIIa/IIIb)の少なくとも一つの置換サリチルアルデヒドを反応させ、式(IV)のシッフ基イミンリガンドを得る。
【化2】
ここに、 R1、R2、R4、R6 R8R10、R12は同じであるか異なることができ、さらに、水素、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン化物から成る群から個別に選択される。
R5とR9は3級アルキル群である
R7とR11 は同じであるか異なることができ、さらに、水素と3級アルキル群から成る群から個別に選択される。
R3は水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、カルボキシル基 とスルホン酸から成る群から個別に選択される。
iv. 選択的に、アルカリ金属イオン注入材を使用して式(IV)のシッフ基イミンリガンドにアルカリ金属イオンを注入し、式(V)のシッフ基イミンリガンドからなるアルカリ金属塩を得る。さらに、
【化3】
ここに、 R1、R2、R4、R6 R8R10、R12は同じであるか異なることができ、さらに、水素、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン化物から成る群から個別に選択される。
R5とR9は3級アルキル群である
R7とR11 は同じであるか異なることができ、さらに、水素と3級アルキル群から成る群から個別に選択される。
R3は水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、カルボキシル基 とスルホン酸から成る群から個別に選択される。さらに、
M1はアルカリ金属イオン注入材のアルカリ金属イオンであり、
v. 式IVのシッフ基イミンリガンドまたは式(V)のシッフ基イミンリガンドのアルカリ金属塩を遷移金属のハロゲン化物とキレート化し、式Iで表す遷移金属系前駆触媒を得る。すなわち 、
【化4】
ここに、 R1、R2、R4、R6 R8R10、R12は同じであるか異なることができ、さらに、水素、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン化物から成る群から個別に選択される。
R5とR9は3級アルキル群である
R7とR11 は同じであるか異なることができ、さらに、水素と3級アルキル群から成る群から個別に選択される。
R3は水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、カルボキシル基とスルホン酸から成る群から個別に選択される。
Mはハフニウム(Hf)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、タングステン(W)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、チタン (Ti)から成る群から選択される遷移金属である。
XはCl、Br、Iから成る群から選択されるハロゲン化物である。
nは整数2を表す。
【0029】
典型的に、式IVのシッフ基イミンリガンドまたは式(V)のシッフ基イミンリガンドのアルカリ金属塩と遷移金属ハロゲン化物との比は1:1である。
【0030】
典型的に、手順(i)はp-トルエンスルホン酸と硫酸から成る群から選択される少なくとも一つの化合物の存在下において、トルエン、キシレン、ヘキサン、メタノールとエタノールから成る群から選択される少なくとも一つの液体媒体中で、温度範囲が40 oCから液体媒体の沸点までの間で実行される。
【0031】
典型的に、置換サリチルアルデヒドは3-tert-ブチルサリチルアルデヒド と3,5-ジ-tert-ブチルサリチルアルデヒドから成る群から選択される少なくとも一つの化合物である。
【0032】
典型的に、式(IIIa)の置換サリチルアルデヒドと式(IIIbの置換サリチルアルデヒドは同じであるか異なることができる。
【0033】
典型的に、前記の前駆触媒は次からなる群から選択される置換基の組から構成される。
R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8R10、R11、R12は水素、R5とR9はターシャリーブチル群、Mはチタン (Ti)、XがCl、nは整数2を表し、
R1、R2、R3、R4、R6、R8R10 とR12は水素、R5、R9、R7、R11がターシャリーブチル群、Mはチタン (Ti)、XがClで とnは整数2を表す。
【0034】
典型的に、アルカリ金属イオン注入材はn-ブチルリチウム、水素化ナトリウム、リチウムアミノアルコキシドとリチウムジイソプロピルアミドから成る群から選択される少なくとも一つの材料である。
【0035】
本発明の他の一つの局面に従って次から構成される触媒成分を提供する。
a. 式Iに示される遷移金属系前駆触媒
【化5】
ここに:
R1、R2、R4、R6 R8、R10、R12は同じであるか異なることができ、さらに、水素、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン化物から成る群から個別に選択される。
R5とR9は3級アルキル群である
R7とR11 は同じであるか異なることができ、さらに、水素と3級アルキル群から成る群から個別に選択される。
R3は水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、カルボキシル基とスルホン酸から成る群から個別に選択される。
Mはハフニウム(Hf)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、タングステン(W)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、チタン (Ti)から成る群から選択される遷移金属である。
XはCl、Br、Iから成る群から選択されるハロゲン化物である。
nは整数2を表す。
b. 少なくとも一つのアルキルアルミニウム助触媒
c. 少なくとも一つの不活性炭化水素の液体媒体。
【0036】
典型的に、アルキルアルミニウム助触媒はメチルアルモキサン、ポリメチルアルモキサン、トリエチルアルミニウム、イソプレニルアルミニウム、アルミニウムセスキクロライド、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムから成る群から選択される少なくとも一つの化合物である。
【0037】
本発明の一実施形態において、助触媒はポリメチルアルモキサンである。
【0038】
典型的に、元素アルミニウム対元素チタン (Al/Ti)の比は50:1〜1000:1の範囲である。
【0039】
典型的に、不活性炭化水素液体媒体はペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、イソペンタン とバルソルから成る群から選択される少なくとも一つの媒体である。
【0040】
本発明の一実施形態において、元素アルミニウム対元素チタン(Al/Ti)の比は200:1〜300:1であり、不活性炭化水素液体媒体はバルソルである。
【0041】
本発明の他の一つの局面に従ってオレフィンの重合化プロセスを提供する。前記のプロセスは以下から構成される。
i. 請求項1の遷移金属系前駆触媒と少なくとも一つの助触媒を元素アルミニウム対元素チタンの比の範囲が50:1〜1000:1にある比率で、少なくとも一つの不活性炭化水素液体媒体の存在下において、温度範囲10〜30 0Cで混合し、活性化触媒成分を得る。
ii. 少なくとも一つのオレフィンモノマーを活性化触媒成分に添加し、反応混合物を得、
iii.温度範囲-5〜70 0C、圧力範囲0.1〜11 barsで反応時間1時間から10時間を掛け反応混合物を重合化し、オレフィン重合体を得る。
【0042】
本発明の他の一つの局面に従って上記のプロセスで得られるポリオレフィンを提供する。ここに、前記のポリオレフィンはもつれから解放された超高分子量であって、少なくとも一つの以下の物性を特長とする。
vi. かさ密度範囲0.05〜0.1 g/cc、
vii. 分子量範囲100万g /モル〜600万g/モル、
viii. 結晶度範囲90〜99%
ix. 固有粘度範囲10〜32 dl/g
x. ファイバー状と多孔性形態。
【0043】
典型的に、不活性炭化水素液体媒体はペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、イソペンタン とバルソルから成る群から選択される少なくとも一つの媒体である。
【0044】
本発明の一実施形態において、オレフィンモノマーはエチレンであって、不活性炭化水素液体媒体はバルソルである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】先行技術触媒による遷移金属系前駆触媒(A)を使用した重合化反応の動力学特性を比較のために図示したもの。
図2】先行技術触媒による遷移金属系前駆触媒(A)を使用した場合、助触媒/触媒 (Al/Ti)の比が重合化特性に及ぼす効果を図示したもの。
図3】前駆触媒(A)用にEI (電子イオン化)モードで取得した質量スペクトルを図示したもの。
図4】前駆触媒(A)用にCI (化学的イオン化)モードで取得した質量スペクトルを図示したもの。
図5】前駆触媒(B)用にEI (電子イオン化)モードで取得した質量スペクトルを図示したもの。
図6】本発明の前駆触媒を使用して取得された代表的ポリマーの一例について走査電子顕微鏡画像を図示したもの。
図7】本発明の前駆触媒を使用して取得された代表的ポリマーの一例についてのX線回折を図示したもの。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明のうちの1つの側面に従いもつれが解かれた超高分子量ポリオレフィンを調製するためにオレフィン重合化に応用できる遷移金属系前駆触媒を提供する。
【0047】
本発明の画期的な遷移金属系前駆触媒は式Iによって示される。
【化6】
式Iの置換基であるR1、R2、R4、R6 R8R10 とR12は同じであるか異なることができ、水素、アリール、ヘテロアリール とハロゲン化物から成る群から個別に選択される。式Iの置換基R5とR7は3級アルキル群であって、R7とR11 は同じであるか異なることができ、さらに、水素 と3級アルキル群から成る群から個別に選択される。
さらに、 R3は水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、カルボキシル基 とスルホン酸から成る群から選択される。
式IのMはハフニウム(Hf)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、タングステン(W)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、チタン (Ti)から成る群から選択される遷移金属であり、XはCl、Br とIから成る群から選択されるハロゲン化物である。
式Iのnは遷移金属イオンの原子価を満足するXイオンの個数であり、2個である。
【0048】
一つの実施形態において、式(I)の置換基は以下の通りである:
R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8R10、R11、R12は水素、R5とR9はターシャリーブチル群、Mはチタン (Ti)、XがCl、nは整数2を表し、さらに、
【0049】
もう一つの実施形態において、式(I)の置換基は次のように定義される。
R1、R2、R3、R4、R6、R8R10 とR12が水素、R5、R9、R7、R11がターシャリーブチル群、Mはチタン (Ti)、XがClで とnは整数2を表す。
【0050】
本発明の他の一つの局面に従って式(I)の遷移金属系前駆触媒調製プロセスを提供する。
【0051】
本発明による遷移金属系前駆触媒の調製プロセスを次に説明する。
【0052】
最初に、式(II)の芳香族ジアミンと式(IIIa/IIIb)の少なくとも一つの置換サリチルアルデヒドを反応させ、式(IV)のシッフ基イミンリガンドを得る。同反応はp-トルエンスルホン酸と硫酸から成る群から選択される少なくとも一つの化合物の存在下において、トルエン、キシレン、ヘキサン、メタノールとエタノールから成る群から選択される少なくとも一つの液体媒体中で、温度範囲が40 oCから液体媒体の沸点までの間で実行される。
【0053】
同反応は次のように模式的に示すことができる。
【化7】
式II、IIIa、IIIb、IVの置換基は次のように定義される。
R1、R2、R4、R6 R8R10 とR12は同じであるか異なることができ、さらに、水素、アリール、ヘテロアリール とハロゲン化物から成る群から個別に選択される。R5 とR9 は3級アルキル群、R7とR11は同じであるか異なることができ、さらに、水素 と3級アルキル群から成る群から個別に選択される。R3は水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、カルボキシル基 とスルホン酸から成る群から個別に選択される。
【0054】
最終手順では、最初の手順で得られた式IVのシッフ基イミンリガンドを遷移金属ハロゲン化物とキレート化させ、式Iに示す本発明の遷移金属系前駆触媒を得る。
【0055】
もう一つの実施形態において、本発明による遷移金属系前駆触媒の調製プロセスは、式(IV)のシッフ基イミンリガンドをアルカリ金属イオン注入材と反応させ、式(V)のシッフ基イミンリガンドのアルカリ金属塩を得る手順からなる。アルカリ金属塩生成反応を次に模式的に示す。
【化8】
置換基R1、R2、R4、R6 R8R10R12 R5 、R9R7R11とR3は上記で定義された意味を持ち、M1はアルカリ金属イオン注入材のアルカリ金属イオンである。
【0056】
次に式Vのシッフ基イミンリガンドのアルカリ金属塩を遷移金属のハロゲン化物とキレート化し、式Iに示す本発明の遷移金属系前駆触媒を得る。
【0057】
本発明の発明者らは実験中に、式IVのシッフ基イミンリガンドまたは式(V)のシッフ基イミンリガンドのアルカリ金属塩と遷移金属ハロゲン化物との比率が前駆触媒のタイプを決定することを発見した。例えば、式IVのシッフ基イミンリガンドまたは式(V)のシッフ基イミンリガンドのアルカリ金属塩と遷移金属ハロゲン化物との比率が1:1のときは、式(I)に示すモノキレートタイプの前駆触媒が得られる。
【0058】
「アルカリ金属塩の形成」または「アルカリ金属イオン注入」または「〜のアルカリ金属塩」と本発明でいう場合は、アルカリ金属イオンが水酸基酸素の一で有機分子に添加され、水酸基群の水素イオンを代替する化学反応を意味する。
【0059】
さらに、式IVまたは式Vのシッフ基イミンリガンドと遷移金属ハロゲン化物の比が2:1のときは、ビスキレート化リガンドから構成される前駆触媒を得る。
【0060】
さらに、トリスキレート化リガンドから構成される前駆触媒を調製する必要がある場合は、式IVまたは式Vのシッフ基イミンリガンドと遷移金属ハロゲン化物の比を3:1に維持しなければならない。
【0061】
式(IV)のシッフ基イミンリガンドの塩形成のために選択されるアルカリ金属イオン注入材としては、限定することなく、n-ブチルリチウム、水素化ナトリウム、リチウムアミノアルコキシド、リチウムジイソプロピルアミドとその組み合わせが含まれる。
【0062】
一実施形態においては、式(IV)のシッフ基イミンリガンドを得るために使用される式(IIIa)の置換サリチルアルデヒドと式(IIIb)の置換サリチルアルデヒドは同じものである。
【0063】
もう一つの実施形態において、式(IV)のシッフ基イミンリガンドを得るために使用される式(IIIa)の置換サリチルアルデヒドと式(IIIb)の置換サリチルアルデヒドは異なる。
【0064】
本発明のプロセスで使用される遷移金属のハロゲン化物には限定することなく、ハフニウム(Hf)ハロゲン化物、マンガン(Mn)ハロゲン化物、鉄(Fe)ハロゲン化物、レニウム(Re)ハロゲン化物、タングステン(W)ハロゲン化物、ニオビウム(Nb)ハロゲン化物、タンタル(Ta)ハロゲン化物、バナジウム(V)ハロゲン化物、チタン(Ti)ハロゲン化物と塩化物、臭化物とヨウ化物から成る群から選択されるハロゲン化物これらの組み合わせを含む。四塩化チタンを本発明の目的のための遷移金属ハロゲン化物として優先的に使用する。
【0065】
一実施形態においては、本発明の遷移金属系前駆触媒はオレフィンの重合化用均質的前駆触媒として使用することができる。
【0066】
本発明の遷移金属系前駆触媒は無機酸化物、有機支持体その他無機支持体や他の高分子、さらにデンドリマと類似品などのポリマー系支持体を使用したさまざまな既知の固定技術を使用して異質性触媒に転換することができる。本発明の遷移金属系前駆触媒と支持体は、共有結合、水素結合、配位結合、配位共有結合 と物理的結合に制限されることなく含む結合によって相互に結合可能である。
【0067】
本発明の他の一つの側面に従って一つの触媒成分を提供する。同触媒成分は式Iに示される遷移金属系前駆触媒、少なくとも一つのアルキルアルミニウム助触媒および少なくとも一つの不活性炭化水素液体媒体から成る。触媒成分を調製するには、前駆触媒と助触媒を不活性炭化水素媒体の中で反応させる。しかし、前駆触媒の有機リガンドが持つ特性からして、前駆触媒を不活性炭化水素液体媒体に直接溶解することはできない。従って、前駆触媒を最初に溶媒などのトルエンに溶解し、次にアルキルアルミニウム助触媒を含有する不活性炭化水素液体媒体の懸濁液中で反応させる。
【0068】
同触媒成分を調製するために有用な助触媒はメチルアルモキサン、ポリメチルアルモキサン、トリエチルアルミニウム、イソプレニル アルミニウム、アルミニウムセスキクロライド、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム とその組み合わせから成る群から選択されるアルキルアルミニウム化合物である。特に、ポリメチルアルモキサンは助触媒として使用される。
【0069】
元素アルミニウム対元素チタン(Al/Ti)の比は重合化反応の決定要因である。従って、元素アルミニウム対元素チタン (Al/Ti)の比は50:1〜1000:1、特に、範囲200:1〜300:1である。
【0070】
本発明の目的に有用な不活性炭化水素液体媒体の例には限定することなく、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、イソペンタン とバルソルが含まれる。一連の実験を行った結果本発明の発明者らはバルソルが最適な不活性炭化水素液体媒体であることを発見した。
【0071】
本発明の他の一つの局面に従って式Iに示される本発明の遷移金属系前駆触媒を使用してもつれが解けた超高分子量ポリオレフィンを得るオレフィン重合化プロセスを提供する。
【0072】
本発明の遷移金属系前駆触媒は、カーボンナノチューブ(シングルウォール、マルチウォールなど)、シリカとグラフィームその他同様の新ナノ素材を含む適切なナノ粒子補助剤の存在下でオレフィン重合化を単独重合または共重合化モードから選択的に実行するために使用することができる。
【0073】
オレフィンの重合化は沸点が高い本発明の前駆触媒および適切なアルミニウムアルキルを活性剤を使用した液体媒体の存在下で常温常圧条件で実行される。
【0074】
本発明に従い、最初の手順では、少なくとも一つのアルキルアルミニウム化合物の助触媒で適切な条件ン下で処理することにより遷移金属系前駆触媒を活性化する。アルキルアルミニウム化合物は限定することなくメチルアルモキサン、ポリメチルアルモキサン、トリエチルアルミニウム、イソプレニル アルミニウム、アルミニウムセスキクロライド、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムとその組み合わせを含む。本発明の代表的一実施形態に従い、アルキルアルミニウム化合物はポリメチルアルモキサンである。遷移金属系前駆触媒を十分活性化するためにはアルミニウム対チタンの比を50:1〜1000:1の範囲に維持する。重合化装置の中で重合化を始める直前に不活性炭化水素液体媒体中に懸濁している助触媒をトルエンに溶解した前駆触媒に添加して前駆触媒を活性化する。触媒活性化の間に液体媒体として使用される不活性炭化水素は限定されることなくペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、イソペンタン、バルソルとその混合物を含む群から選択される。
【0075】
典型的に、触媒活性化のために液体媒体として使用される不活性炭化水素はバルソルである。
【0076】
触媒活性化手順を温度範囲10〜30 oC、不活性ガス雰囲気下で行った。
【0077】
第二手順で、炭素原子が2〜18個あるオレフィンモノマーを活性化触媒に添加し、反応混合物を得る。次に同反応混合物を温度範囲-5〜70 oC、圧力範囲0.1〜11 barsで反応時間1時間から10時間で重合化して、もつれがほどけた超高分子量ポリオレフィンを得る。こうして得られたポリオレフィンの分子量は100万g/モル〜600万g/モルの範囲である。オレフィン重合化分野の専門家には既知の通り、重合化プロセス条件を適宜変化させることによって、この触媒成分を使用して生産される重合体の分子量をさらに大きくすることができる。本発明の触媒成分を使用するポリオレフィン調製が極めてもつれが解けた状態であるのは前駆触媒に存在するリガンドの構造と特性に関連している。芳香族ジアミンと置換サリチルアルデヒド系リガンドは触媒の中央にあるチタン周囲の電子と幾何学的環境を制御し、もつれが解けた超高分子量ポリオレフィンを可能にする。本発明の前駆触媒は重合化動力学にも寄与する。さらに、助触媒が本発明の前駆触媒と相互作用し、発生するポリオレフィンの分子量を制御し、重合化反応を必要な時点で終了する陰イオン系錯体を形成することが観察された。
【0078】
本発明の代表的一実施形態に従い、エチレンを本発明の遷移金属系前駆触媒を使用して重合化した。その結果得られたポリエチレンは極めてもつれが解かれたものであった。圧力下で融点未満でのシート形成などの試験を行うことによって、もつれが解けたことが確認された。1 GPaを超える超高強度フィルム、テープやファイバーに伸ばすことができることがさらに観察された。得られたポリエチレンは高強度のさまざまな形状に成形できた。
【0079】
式(I)の遷移金属系触媒を使用して得られたポリエチレンは次の特性を持つ:
- かさ密度範囲0.05〜0.1 g/cc
- 結晶度は示差走査熱量測定とX線回折で90〜99%,と同定された
- 分子量範囲は100万〜600万g/モル
- 固有粘度範囲10〜32 dl/g
-ファイバー状と多孔性形態。
【実施例】
【0080】
次に本発明を次の限定されることのない例によって説明する。
【0081】

例1:
ステップA:シッフ基イミンリガンド(C)の調製
すべての操作を窒素雰囲気下で行った。 m-フェニレンジアミン(1.08 g、10 mmol)、3-tertブチルサリチルアルデヒド(3.42 mL、20 mmol)とp-トルエンスルホン酸(10 mg)を無水トルエン(50 mL)に溶解し、混合物を窒素雰囲気下で110 oCで5時間攪拌した。その結果得られた混合物を真空下で濃縮し、こげ茶色の粗シッフ基イミンリガンド(C)固体を得た。n-ヘキサン/エチルアセテート(100:1)を溶離液として使用し、粗シッフ基イミンリガンド(C)をシリカゲル系カラムクロマトグラフェィーで精製して明るいオレンジ色の固体(3.6 g、歩留り 85%)であるシッフ基イミンリガンド(C)の純粋産物を得た。
【化9】
【0082】
ステップB:シッフ基イミンリガンドをリチウム化、次に四塩化チタンでキレート化
【化10】
すべての操作を窒素雰囲気下で行った。シッフ基イミンリガンド(C)(1.0 g、2.33 mmol)を乾燥ジエチルエーテル(100 mL)に若干攪拌して溶解し、生成された混合物をドライアイスとアセトン浴によって-78OCまで冷却した。同混合物に、1.52 Mのn-ブチルリチウム /n-ヘキサン溶液(3.2 mL、4.94 mmol)を10〜15分かけて点滴で添加した。この溶液を室温まで温め、3時間攪拌してリチウム化反応を完了させた。得られた反応生成物を再び、-78OCまで冷却し、TiCl4 (0.25 mL、2.32 mmol)を点滴で添加した。混合物を室温まで温め、15〜18時間攪拌し、暗い赤茶色の溶液を得た。同溶液を真空で濃縮し、暗い茶色の固体として粗(A)を得た。ジクロロメタン50.0 mLを粗(A)に添加し、5分攪拌してから、媒体多孔性G-2焼結漏斗でろ過した。同手順を(50 mL ジクロロメタン -各回)二回繰り返し、粗(A)からすべての固定不純物を除去した。有機性ろ過残留物(DCMの抽出物)を真空下で結合し、乾燥し、茶色の固体を得た。同固体をn-ヘキサン/ジエチルエーテル(95:5)溶液(3 時間、各回20 mL溶液)で洗浄し、次にn-ヘキサン(20 mL)で洗浄し、茶色系の赤い固体(1.3 g、歩留り 97%)として精物質(モノキレート)(A)を得た。
【0083】
上記と同様な合成処理によってビスキレートを得ることができる。この際のリガンド:TiCl4のモル比が2:1で得られた。トリキレートはリガンド:TiCl4のモル比が3:1のときに得られた。
【0084】
特性データ
a. 式Iの場合、置換基は以下のものである(A):
R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8R10、R11、R12は水素、R5とR9はターシャリーブチル群、Mはチタン (Ti)、XがCl、nは整数2を表わす
前駆触媒の分子式 :C28H30Cl2N2O2Ti
元素分析:C:61.35% (理論値:61.67%)、H:5.31% (理論値:5.54%)、Cl:13.52% (理論値:13:00%)、N:5.09% (理論値:5.14%)、Ti:8.54% ( 理論値:8.78%).
【0085】
EI (電子イオン化)モードで撮影した質量スペクトル(図3)は617.53 m/zでピークを示した。これはペンタン (質量72)と分子イオン(質量545.46)の付加分である。ペンタンガスをEIモードでの質量スペクトル分析に使用した。分析をCI (化学的イオン化)モードで行うと(図4)、リガンドピークはCIモードと同様に428.56 m/zでのみ発生し、触媒が安定的なリガンド部分に断片化する。
【0086】
こうしたタイプの触媒はルイス酸とはカチオン性錯体を形成することが周知である。従ってこうした過敏な触媒の正確な質量スペクトルはEI とCIモードでは得難い。たとえ微量の水分でもTiキレートからHClを発生させて、触媒半量体のカチオン性カウンターパートとともに付加物を形成する。しかし元素分析から得る暗い赤茶色以外にはTi とClの存在を裏続ける間接的証拠でも、ここに提案された文政期/経験則式を得るには適正である。
【0087】
B. 式Iにおいて、置換基が下記のもの(B)
R1、R2、R3、R4、R6、R8R10 とR12は水素、R5、R9、R7、R11がターシャリーブチル群、Mはチタン (Ti)、XがClで とnは整数2を表す。
前駆触媒の分子式 :C36H46Cl2N2O2Ti
元素分析:C:65.54% (理論値:65.76%)、H:7.11% (理論値:7.05%)、Cl:11.12% (理論値:10.78%), N:4.15% (理論値:4.26%)、Ti:7.15% (理論値:7.28%)。
【0088】
EI (電子イオン化)モードで撮影された質量スペクトル (図5)は541.48 m/zでピークを発生している。これは請求されている触媒のリガンド部分(質量540.1)を示す。EIモードにおける分析中に触媒は安定したfリガンド部分に断片化される。Ti とCl成分に関する他の関連分析データが前記の触媒の提案された分子式を裏付ける。前記の前駆触媒もエチレンを効果的に重合化したが、リガンドのみではこうにはならない。
【0089】
c. 前駆触媒から構成される触媒 (A)が先行技術触媒より高効率であることを示す前駆触媒(A)から構成される触媒と先行技術の触媒を費用、毒性、反応動力学特性、反応装置の腐食、ポリマーの特性などについての比較
もつれが解けた超高分子量ポリエチレンを効率的に生産可能な先行技術触媒のリガンドにはペンタフルオロアニリン半量体が含まれている。先行技術触媒とは異なり、前駆触媒(A)から構成される遷移金属系触媒にはペンタフルオロアニリン半量体が含まれず、この前駆触媒が既存の先行技術触媒より環境に害を与えない。
【0090】
前駆触媒(A)から構成される遷移金属系触媒は高価なペンタフルオロアニリン半量体を含まないので先行技術触媒より遥かに経済的である。
【0091】
先行技術触媒は急激な反応動力学特性(図1のグラフ)を示し、この際、重合化反応温度が室温から55 oCまで反応のみで4〜5分内に加熱し、クライオスタットを応用した排熱機構を正しく装備しない場合は重合化反応装置を腐食する。一方、重合化条件が等しい場合、前駆触媒(A)から構成される遷移金属系触媒の反応動力学特性は緩やか(下記のグラフ)であって、この際重合化反応温度が室温から最高温度まで35〜40分かけてゆっくりと昇温する。前駆触媒(A)から構成される触媒は反応動力学が制御されているので、低速で安定的、かつ均一の重合化反応によってクライオスタットなしでも集塊が発生せず、60 oC付近まで温度が上がっても反応装置を腐食させない。
【0092】
急速な動力学特性のほかにも、先行技術触媒ではエチレン重合化が激しく、ポリマー分子量が経時的に急速に増大する。結果として、ポリマーの目的歩留りを維持すると同時に、特に100万〜600万g/モルの低分子量では重合体分子量を制御することが困難となる前駆触媒(A)から構成される遷移金属系触媒は制御されると同時により緩やかな反応動力学を示し、プロセス制御により都合がよく、特に分子量範囲100万〜600万g/モルでポリマー歩留りも改善できる。分子量範囲1〜6 M g/モルがポリマー処理には最適であり、このため、前駆触媒(A)から構成される遷移金属系触媒は目的分子量を得るために生産性とプロセス効率が優れる。
【0093】
図2に示されるグラフは両方の触媒について、助触媒/触媒(Al/Ti)比が重合化特性に与える効果を図解したものである。前駆触媒(A)から構成される遷移金属系触媒のAl/Ti比を高くすると、助触媒が触媒の活性化のほかにmol.wt.制御用の連鎖終結剤としても機能するので、分子量を下げる効果がある。先行技術触媒の場合、分子量は生きている特性が原因でAl/Ti比にともない増加する。従って前駆触媒(A)から構成される遷移金属系触媒は100万〜600万g/モルの分子量をより優れて制御する。
【0094】
前駆触媒(A)から構成される遷移金属系触媒では先行技術触媒より生産性に優れるので、分子量100万〜600万g/モルを達成することができる。下表1を参照。
【0095】
表1:もつれが解かれた超高分子量 ポリエチレンの調製にすぐれる前駆触媒 Aから構成される遷移金属系触媒の性能 - 先行技術触媒の性能との対比
【0096】
【表1】
【0097】
Alは 助触媒として使用されるPMAOから得られる。重合化はバルソルを媒体として使用し、エチレン圧力2.5 bar、攪拌回転数500 rpmで行う。SS316金属と容積19 Lの反応容器を使用した。
【0098】
もつれが解かれた超高分子量ポリエチレンの調製における前駆触媒Aから構成される遷移金属系触媒の異なるプロセス条件下での性能特性評価(リチウム化と非リチウム化経路による)を下記に示す(表2) - 例示的結果。典型的な重合化反応を容量1 LのBuchi Polyclave ガラスリアクター内で重合化媒体500 mLを使用して実施した。助触媒としてPMAOを添加後、触媒とエチレンを室温(26〜28 °C)で追加した。攪拌回転数は〜500 rpmとした。
【0099】
【表2】
【0100】
大半の重合化反応は極めて動力学特性が制御されており、温度範囲45〜48 oCで行われた。
【0101】
上記すべての実験で得られたポリエチレンはファイバー状と多孔性形態であって、かさ密度範囲0.05〜0.1 g/ccの高結晶度を呈した(示差走査熱量測定とX線回折)。
【0102】
ファイバー状と多孔性形態を呈する代表的な一個のポリマー試料の走査電子顕微鏡画像を図6に示す。
【0103】
結晶度が高い様子が示される代表的な一個のポリマー試料のX線回折を図7に示す。
【0104】
前駆触媒(A)から構成される遷移金属系触媒を使用して得られたDUHMPEはあらゆる側面で(0.05〜0.10 g/ccの低かさ密度範囲、増大した結晶度(95〜99%、X線回折で見た場合)、融点未満でとファイバー状/多孔性形態に伸ばせる特性)、先行技術触媒から得られたDUHMWPEと同じであった。
【0105】
技術的優位性と経済的意義
本発明の画期的な遷移金属系前駆触媒は重合化反応動力学を効果的に制御し、分子量をさらに効率的に制御するので、重合化プロセスがより経済的で環境に害を与えない。
本発明の遷移金属系前駆触媒を使用すると、先行技術触媒による重合化プロセスとは異なり、重合化装置を腐食させない。
【0106】
本明細書を一貫して用語「成す」「構成する」やその類語としての「組成する」または「なしている」は記載されている要素、整数または手順または要素、整数または手順の群を含むがその他の要素、整数または手順またはその他の要素、整数または手順の群を除くことなくこれらを含むことを含意している。
【0107】
「少なくとも」または「少なくとも1つの」という表現の使用は、1つまたは複数の目的物質または結果を得るために本発明の実施例において使用される場合があることに従い、1つまたは複数の要素または成分または数量の使用を示唆している。
【0108】
本明細書に含まれている文書、行為、素材、デバイス、商品または同類のものについての議論は本発明開示のための文脈を成す目的のためにのみ含まれている。任意のまたはすべての以上の事項が既知の発明技術の基礎の一部を構成するまたは本出願優先日以前に任意の場所に存在していた本発明関連分野における共有されている一般的知識であるという是認と解釈されてはならない。
【0109】
異なる物理的パラメータ、変数、寸法や数量を表す数値は概数であって、パラメータ、変数、寸法や数量に代入された数値より高い/低い値は本発明の範囲に含まれることが意図されている。但し、明細書に異なる記載がなされている場合はこの限りではない。
【0110】
本発明の特定の特長を相当強調してきたが、異なる修正を行うことができ、また、発明の原理から乖離することなく優先実施形態には多くの変更が可能である。本発明または優先実施形態の特質を修正できることは本発明分野の専門的技能を有する者には明らかであって、この際、以上の説明的事項が単に本発明を説明するためのものであり、限定的なものとして解釈されてはならないことを明確に理解する必要がある。
【0111】
前記の具体的実施例は本発明の実施例が持つ一般的性質をじゅうぶんに明らかにしているので、現状の知識を適用することにより他者は前記の一般的概念から乖離することなく前記の具体的実施例を異なる用途のために変更および/または適合することができる。従って、同適合や変更は本発明の実施例と同等の物としての意味およびその範囲で理解されることが意図されるべきであり、意図されている。本明細書に使用されている句節の用法や用語は説明目的のためであって限定するために使用されてはいない。従って、本明細書に記載された実施例は優先的実施例に基づいて説明されていると同時に、同分野の技能を有する者は本明細書に記載された実施例が本明細書で説明された実施例の意図および範囲で変更しても実践可能であることが認められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7