特許第6306152号(P6306152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6306152タイヤ用ビードフィラーの巻き回方法及び巻き回装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306152
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】タイヤ用ビードフィラーの巻き回方法及び巻き回装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/06 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
   B29D30/06
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-509624(P2016-509624)
(86)(22)【出願日】2014年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2014057959
(87)【国際公開番号】WO2015145519
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】591032356
【氏名又は名称】不二精工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594029333
【氏名又は名称】不二商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野村 誠明
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 章
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−142227(JP,A)
【文献】 特開平02−062232(JP,A)
【文献】 特開2002−096401(JP,A)
【文献】 特開昭64−090736(JP,A)
【文献】 実開昭63−033924(JP,U)
【文献】 特開平03−166149(JP,A)
【文献】 特開2006−281621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さの帯状ゴムを環状に巻き回し、前記帯状ゴムの両端を接合して、タイヤ用ビードフィラーを巻き回するタイヤビード用フィラーの巻き回方法において、
前記帯状ゴムの両端の接合に先立って、前記帯状ゴムの両端のうちの少なくとも一方を吸着することによって保持し、保持された前記帯状ゴムの端部の薄い部分を、前記帯状ゴムの搬送方向と逆方向に引っ張って引き伸ばすタイヤビード用フィラーの巻き回方法。
【請求項2】
前記帯状ゴムをコンベアにより成形ドラムに搬送すると共に前記帯状ゴムの始端を吸着部材により吸着して前記コンベアから成形ドラムの外周面に移してから吸着を停止し、次いで、成形ドラムの外周面に前記帯状ゴムを環状に巻き回し、前記帯状ゴムの巻き回が終了する前に、前記吸着部材を前記帯状ゴムの搬送方向の上流側に戻して前記帯状ゴムの終端を前記吸着部材により吸着し、その状態で前記帯状ゴムを引き伸ばす請求項に記載のタイヤ用ビードフィラーの巻き回方法。
【請求項3】
帯状ゴムを環状に成形するための成形ドラムと、
所定長さの帯状ゴムを前記成形ドラムの外周面に搬送する主搬送部材と、
前記主搬送部材と協働して前記帯状ゴムを搬送する補助搬送部材とを備え、
前記補助搬送部材の搬送速度を調整することにより前記帯状ゴムを引き伸ばすようにしたタイヤ用ビードフィラーの巻き回装置。
【請求項4】
前記補助搬送装置は、前記帯状ゴムの側面を吸着する吸着部材を備え、
前記吸着部材の搬送移動速度を調整することにより前記帯状ゴムを引き伸ばすようにした請求項に記載のタイヤ用ビードフィラーの巻き回装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤのビード部に埋設されるビードフィラー(以下、単にフィラーという)の巻き回方法及び巻き回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
押し出し機から押し出されて所定長さに切断された断面三角形状の帯状ゴムが巻き回されると共に帯状ゴムの両端が接合されることにより、環状のビードフィラーが構成される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002―361757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
押し出し機から押し出された帯状ゴムは、時間経過に伴う温度低下によって収縮する。この場合、温度低下し易い薄い部分ほど、帯状ゴムの収縮量は大きい。このため、帯状ゴムが断面三角形状をなして幅方向の厚さが一定ではない場合、幅方向端部の薄い部分が、厚い部分よりも、帯状ゴムの長さ方向に収縮し易い。この状態で、所定長さに切断された帯状ゴムの両端を接合しようとしても、帯状ゴムの両端間に隙間が生じたり、帯状ゴムの両端間の接合強度が不足したりする。よって、接合不良が生じ、フィラーの品質低下が生じるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、帯状ゴムの両端を適切に接合することができ、高品質のフィラーを実現できる巻き回方法及び巻き回装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明においては、所定長さの帯状ゴムを環状に巻き回し、帯状ゴムの両端を接合して、タイヤ用ビードフィラーを巻き回するタイヤビード用フィラーの巻き回方法が提供される。この方法によれば、帯状ゴムの両端の接合に先立って、帯状ゴムの両端のうちの少なくとも一方が引き伸ばされる。
【0007】
このようにすれば、帯状ゴムの薄い部分の端部の収縮が抑えられて、高精度な環状のフィラーを得ることができる。
短寸化を抑制するため、帯状ゴムの両端のうちの一方を吸着することによって保持し、保持された帯状ゴムの端部を、帯状ゴムの搬送方向と逆方向に引っ張って引き伸ばすことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高精度なフィラーを成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】帯状ゴムの一部省略平面図。
図2】フィラーの斜視図。
図3】帯状ゴムとサッカとの関係を示す断面図。
図4】フィラーの巻き回工程の初期を示す簡略図。
図5図4の工程に続くフィラーの巻き回工程を示す簡略図。
図6図5の工程に続くフィラーの巻き回工程を示す簡略図。
図7図6の工程に続くフィラーの巻き回工程を示す簡略図。
図8図7の工程に続くフィラーの巻き回工程を示す簡略図。
図9図8の工程に続くフィラーの巻き回工程を示す簡略図。
図10図9の工程に続くフィラーの巻き回工程を示す簡略図。
図11】移動体ユニットを示す簡略平面図。
図12】サッカ及びセンサを示す簡略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、タイヤ用ビードフィラーの巻き回方法及び巻き回装置を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、帯状ゴム100は、図示しない押し出し機から押し出されかつ所定長さに切断されて形成される。図2に示すように、帯状ゴム100が巻き回されて帯状ゴム100の両端が接合されることにより、環状のフィラー101が形成される。図3に示すように、帯状ゴム100及びフィラー101は、扁平な三角形状の断面を有している。ここで、帯状ゴム100の厚い部分を基部とし、薄い部分を頂部とする。
【0011】
以下に帯状ゴム100を巻き回してフィラー101を成形するための巻き回装置について説明する。
図4図10に示すように、成形ドラム21は、水平なドラム軸22を中心に回転可能であり、図示しない駆動モータによって図4図10の反時計方向に回転される。成形ドラム21の外周面には、バキュームを利用した吸着部23が設けられている。帯状ゴム100の始端(図4図10の左端)が、吸着部23によって成形ドラム21の外周面に吸着される。この状態で成形ドラム21が図4図10の反時計回り方向に回転すると、帯状ゴム100が成形ドラム21の外周面に巻き回されて、環状に成形される。
【0012】
成形ドラム21の近傍には、主搬送部材としての第1コンベア31が配置されている。第1コンベア31により、帯状ゴム100が成形ドラム21に搬送される。第1コンベア31の上流側には、第1コンベア31との間に僅かな間隙を空けて、第2コンベア32が配置されている。第2コンベア32により、帯状ゴム100が第1コンベア31に搬送される。
【0013】
第1コンベア31と第2コンベア32との間の位置には、カッター33が配置されている。カッター33により、第1コンベア31と第2コンベア32との間の間隙で、帯状ゴム100が所定長さに切断される。
【0014】
成形ドラム21及び第1コンベア31の上方には、帯状ゴム100の搬送方向に延びるガイドレール41が設けられている。図4及び図11に示すように、ガイドレール41には、移動体ユニット40が支持されている。移動体ユニット40は、モータ43によって回転される送りネジ44の回転によって、ガイドレール41に沿って帯状ゴム100の搬送方向に往復移動される。
【0015】
移動体ユニット40には、第1移動体42が設けられている。移動体42は、ガイドレール41によってガイドされる。第1移動体42には、送りネジ44によって移動力が付与される。
【0016】
図11に示すように、第1移動体42には、上下方向に延びるガイドレール45が設けられている。ガイドレール45には、第2移動体46が支持されている。第2移動体46は、図示しないモータによって回転される送りネジ48によりガイドレール45に沿って昇降される。第2移動体46には、上下方向に延びるガイドレール49が設けられている。ガイドレール49には、第3移動体50が支持されている。第3移動体50は、図示しないモータ51によって回転される送りネジ52によりガイドレール49に沿って昇降される。第3移動体50には、帯状ゴム100の搬送方向に延びるガイドレール53が設けられている。ガイドレール53には、第4移動体54が支持されている。第4移動体54は、第3移動体50に支持されたモータ55によって回転される送りネジ56によりガイドレール53に沿って前記搬送方向に往復移動される。
【0017】
図4及び図12に示すように、第2移動体46には、3個のサッカ61が帯状ゴム100の搬送方向に配列された状態で搭載されている。これらのサッカ61は、帯状ゴム100の基部の側面を吸着可能である。第4移動体54には、一対のサッカ62が前記搬送方向に配列された状態で搭載されている。これらのサッカ62は、帯状ゴム100の頂部の側面を吸着可能である。一対のサッカ62は、移動体ユニット40を前記搬送方向に移動させるモータ43、送りネジ44等と共に補助搬送部材を構成する。
【0018】
図12に示すように、第2移動体46には、一対のセンサ63が前記搬送方向に配列された状態で搭載されている。
次に巻き回装置を使用した巻き回方法について説明する。
【0019】
図4に示すように、図示しない押し出し機から押し出された帯状ゴム100は、第1コンベア31及び第2コンベア32によって成形ドラム21に搬送される。このとき、移動体ユニット40は、第1コンベア31の搬送方向の中間部に配置されている。また、第2移動体46は上昇位置に配置され、第3及び第4移動体50,54も上昇位置に配置されている。帯状ゴム100の始端が移動体ユニット40の下方に到達すると、左側のセンサ63は、帯状ゴム100の始端を検出する。
【0020】
この検出に基づいて、移動体ユニット40の第2移動体46が送りネジ48の回転によって下降され、第3及び第4移動体50,54が第2移動体46と共に下降される。このため、図5図1及び図3から明らかなように、サッカ61,62が帯状ゴム100の始端の基部及び頂部の両側面に接し、サッカ61,62の吸着作用によって帯状ゴム100の始端が保持される。この状態で、送りネジ48が回転することにより、第2移動体46が第3及び第4移動体50,54と共に上昇位置に復帰すると共に、移動体ユニット40が第1コンベア31及び第2コンベア32と同速度で搬送方向に移動される。このため、帯状ゴム100は、サッカ61,62によって保持された状態で搬送される。そして、図6に示すように、帯状ゴム100の始端が、成形ドラム21の吸着部23の上方に到達する。
【0021】
次いで、図7に示すように、第2移動体46が第3及び第4移動体50,54と共に下降されて、帯状ゴム100の始端が成形ドラム21の吸着部23上に載置される。次いで、サッカ61,62の吸着が停止されると共に、成形ドラム21の吸着部23の吸着動作が開始されて、帯状ゴム100の始端が吸着部23に保持される。このとき、カッター33によって、帯状ゴム100が所定長さに切断される。
【0022】
その後、第2移動体46が上昇位置に復帰されて、サッカ61,62も上昇位置に復帰される。引き続き、図8に示すように、移動体ユニット40が第1コンベア31の下流側端部まで後退される。一方、成形ドラム21は反時計回り方向に回転され、帯状ゴム100が搬送されながら成形ドラム21の外周面に巻き回される。
【0023】
次いで、右側のセンサ63によって帯状ゴム100の終端が検出されると、図9に示すように、第3移動体50が送りネジ52の回転により下降されて、一対のサッカ62が帯状ゴム100の頂部の側面に接する。そして、サッカ62の吸着動作が開始されて、帯状ゴム100の頂部がサッカ62によって保持される。このとき、第2移動体46は上昇位置に固定されており、サッカ61は帯状ゴム100の基部から上方に離間した位置に保持されている。
【0024】
そして、成形ドラム21による帯状ゴム100の巻回と第1コンベア31による搬送とが継続されるが、この場合、モータ55の駆動による送りネジ56の回転により、第4移動体54が搬送方向と逆方向に一定ストローク分だけ移動される。この結果、図1に示すように、帯状ゴム100の頂部が、帯状ゴム100の長さ方向に引き伸ばされる。従って、図1の2点鎖線で示された押し出し後の頂部の後退した長さを補うことができる。帯状ゴム100の引き伸ばされる量は、予め定められている。
【0025】
そして、帯状ゴム100の頂部が引き伸ばされて、サッカ62による帯状ゴム100の保持が維持されたまま、帯状ゴム100が搬送される。そして、図10に示すように、帯状ゴム100の終端が、成形ドラム21の吸着部23上に到達する。その後、サッカ62による吸着動作が停止されて、第4移動体54が送りネジ56の回転により元の位置に復帰すると共に、第3移動体50が上方に復帰される。そして、成形ドラム21の吸着部23で、帯状ゴム100の始端と終端とが手作業又は接合装置により接合される。こうして、帯状ゴム100が環状に成形され、フィラー101が完成する。
【0026】
この場合、帯状ゴム100の頂部の後退が抑えられているため、帯状ゴム100の両端間に隙間や接合不良が生じることはなく、帯状ゴム100の両端が適切に接合される。フィラー101の成形後、成形ドラム21の外径が収縮して、フィラー101が成形ドラム21から外され、タイヤ製造の次工程に送られる。
【0027】
従って、本実施形態は、以下の効果を奏することができる。
・帯状ゴム100の頂部の後退を抑えることができ、高精度な環状のフィラー101を得ることができる。
【0028】
・帯状ゴム100の短寸化を抑えるため、帯状ゴム100を引き伸ばす機構として、帯状ゴム100を第1コンベア31と共に搬送する移動体ユニット40が利用されている。このため、帯状ゴム100を引き伸ばすための専用の機構は不要である。従って、装置の構成が簡素化される。
【0029】
前記実施形態は、前記実施形態に限定されず、以下のように変更してもよい。
・帯状ゴム100の端部を検出するセンサを一つにしてもよい。
・帯状ゴム100の端部を検出するセンサを用いなくてもよい。この場合、帯状ゴム100の搬送を駆動するモータの回転量等に基づいて、移動体ユニット40と帯状ゴム100との位置関係を把握し、帯状ゴム100の引き伸ばしを実行すればよい。
【0030】
・前記実施形態では、帯状ゴム100の終端を引き伸ばしたが、帯状ゴム100の両端を引き伸ばしても、帯状ゴム100の始端を引き伸ばしてもよい。帯状ゴム100の始端を単独で、あるいは終端と共に引き伸ばす場合、帯状ゴム100の始端が成形ドラム21上に到達する前に、帯状ゴム100の引き伸ばしが実行される。
【符号の説明】
【0031】
21…成形ドラム、31…第1コンベア、32…第2コンベア、40…移動体ユニット、61…サッカ、62…サッカ、63…センサ、100…帯状ゴム、101…フィラー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12