(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306166
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ハイコントラストのマーキングを有するタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
B60C13/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-520497(P2016-520497)
(86)(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公表番号】特表2016-521662(P2016-521662A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2014062959
(87)【国際公開番号】WO2014202731
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2017年3月10日
(31)【優先権主張番号】1355937
(32)【優先日】2013年6月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】エモリーヌ エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ミュールホフ オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデル マチュー
【審査官】
増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−512584(JP,A)
【文献】
特表2013−505872(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0227879(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0218019(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0051159(US,A1)
【文献】
特開昭63−106109(JP,A)
【文献】
特開2010−52471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール(3)及びマーキング(5)を有するゴム状材料で作られているタイヤであって、前記マーキング(5)は、前記サイドウォール(3)から突き出ており、この前記タイヤは、テキスチャ(9)を有し、前記テキスチャは、前記サイドウォール(3)から突き出た複数のストランド(11)を含み、前記ストランドは、1平方ミリメートル(mm2)当たり少なくとも5本のストランドに等しい密度で分布して設けられ、各ストランドは、0.0007mm2〜0.06mm2の平均断面積を有すると共に/或いは前記テキスチャは、前記サイドウォール(3)から突き出た複数の実質的に相互に平行な板状体(13)を含み、前記板状体の間隔は、多くとも0.5mmに等しく、各板状体は、0.03mm〜0.3mmの平均幅を有する、タイヤにおいて、前記テキスチャ(9)は、前記タイヤの前記サイドウォール(3)から突き出ており、前記テキスチャ(9)は、前記マーキング(5)の全て又は一部を包囲している、タイヤ。
【請求項2】
前記テキスチャの前記ストランド(11)又は前記テキスチャの前記板状体(13)は、前記サイドウォール上の前記マーキングと同一の高さ位置で延びている、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記テキスチャの前記ストランド(11)又は前記テキスチャの前記板状体(13)は、前記マーキングの高さよりも低い高さ位置で延びている、請求項1記載のタイヤ。
【請求項4】
前記テキスチャの前記ストランド(11)又は前記テキスチャの前記板状体(13)は、前記マーキングを越えて突き出ている、請求項1記載のタイヤ。
【請求項5】
前記テキスチャの前記ストランド(11)のうちの一部又は前記テキスチャ(9)の前記板状体のうちの一部は、前記マーキングを越えて突き出ており、前記ストランドのうちの別の一部又は前記板状体のうちの別の一部は、前記マーキングよりも低い高さ位置にある、請求項1記載のタイヤ。
【請求項6】
前記マーキングは、前記マーキングの残部に対して隆起した縁部を有する、請求項1乃至5の何れか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記テキスチャ(9)は、前記マーキングから0.5mm〜50mmの幅Lにわたって延びている、請求項1乃至6の何れか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーキング及びこのマーキングを包囲した特別のテキスチャを有する自動車用のタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤサイドウォールは、技術的及び法的な情報を提供し又は消費者が製品の出所を識別することができるようになった非常に多くのマーキングを備えている。
【0003】
タイヤサイドウォール上のこれらマーキングの視認性及び可読性を向上させる試みが常時なされている。
【0004】
欧州特許第2204206号明細書は、タイヤサイドウォールの外面上に存在するテキスチャを記載している。このテキスチャは、このテキスチャ中に一様に分布して配置された複数のストランドを有する。
【0005】
米国特許出願公開第2008/0283169号明細書は、サイドウォール及びこのサイドウォール上に形成されたマーキングを有するゴム材料で作られているタイヤを記載している。マーキングは、サイドウォール中に引っ込んだ状態で設けられたハウジング内に位置決めされている。このマーキングは、これがタイヤサイドウォール上で良好な視認性を提供するようハウジングの底部から突き出ている。
【0006】
しかしながら、走行中、多量の泥又はダストがハウジング内に詰まった状態になる場合があり、それによりマーキングとハウジングの底部とのコントラストが低減する。さらに、かかるハウジング内に嵌め込まれるかかるマーキングの製造では、モールドを機械加工する追加の作業が必要であり、この作業は、時間が長く且つ費用が高くつく場合がある。
【0007】
したがって、ハイコントラストのマーキングをタイヤのサイドウォール上に保つことができ、しかも実施するのが簡単且つ経済的である解決策を提案することが要望されている。
【0008】
定義
【0009】
「タイヤ」は、内圧を受けるにせよ受けないにせよいずれにせよ、あらゆる形式の弾性タイヤを意味している。
【0010】
タイヤの「トレッド」は、側面及び2つの主要な表面によって境界付けられた或る量のゴム材料を意味しており、2つの主要表面のうちの一方は、タイヤが走行しているときに路面に接触するようになっている。
【0011】
タイヤの「サイドウォール」は、タイヤトレッドとこのタイヤのビードとの間に位置するタイヤの側面を意味している。
【0012】
タイヤサイドウォール上の「マーキング」は、このサイドウォール上に設けられていて、技術的及び法的情報を提供し又は消費者が製品の出所を識別することができるようにするようになった標識を意味している。
【0013】
「テキスチャ」は、複数の要素の組織化された配列体を意味しており、この配列体の要素の全て又はこれら要素のうちの一部は、1つの単一基本要素、例えばストランド又は板状体を繰り返したものである。
【0014】
「ストランド」は、高さがこのストランドの平均断面積と同一の表面積を有する円板の直径の少なくとも2倍に等しい糸状要素を意味している。
【0015】
ストランドの「平均断面積」は、ストランドの基部からこのストランドの先端まで一定間隔で測定された断面積の平均値を意味している。
【0016】
「板状体」は、高さの少なくとも2倍に等しい長さを有する細長いストランドを意味している。
【0017】
板状体の「平均幅」は、板状体の基部からこの板状体の先端まで一定間隔で測定された幅の平均値を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】欧州特許第2204206号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0283169号明細書
【発明の概要】
【0019】
ゴム状材料で作られているタイヤがサイドウォール及びこのサイドウォールから突き出たマーキングを有する。タイヤは、テキスチャを有する。テキスチャは、サイドウォールから突き出た複数のストランドを含み、これらストランドは、1平方ミリメートル(mm
2)当たり少なくとも5本のストランドに等しい密度で分布して設けられ、各ストランドは、0.0007mm
2〜0.06mm
2の平均断面積を有すると共に/或いはテキスチャは、サイドウォールから突き出た複数の実質的に相互に平行な板状体を含み、板状体の間隔は、多くとも0.5mmに等しく、各板状体は、0.03mm〜0.3mmの平均幅を有する。テキスチャは、タイヤのサイドウォールから突き出ており、このテキスチャは、マーキングの全て又はマーキングの一部を包囲している。
【0020】
マーキングを包囲すると共にストランド又は板状体によって形成されたテキスチャは、幾つかの利点をもたらす。一方において、このテキスチャにより、サイドウォールに当たった入射光線の全て又は何割かが「捕捉状態」になることができる。これにより、マーキングの周りの領域に暗い外観を与えることができ、それによりそのコントラストを高め、従ってサイドウォールの残部に対するその視認性を高めることができる。他方、この特別なテキスチャにより、サイドウォールに対して感じの良い「ベロア」状の風合いを提供することができる。さらに、用いられるテキスチャは、疎水性を有し、このことは、マーキングの周りの水、ダスト又は泥を取り出すのが容易であることを意味している。さらに、マーキングを包囲したテキスチャは、全体的に高い耐久性を有する。確かに、マーキングは、テキスチャを或る特定の形式の摩耗、例えば、車輪が縁石に当たることによって生じる摩耗から保護する。
【0021】
実施形態の一変形形態では、テキスチャのストランド又はテキスチャの板状体は、サイドウォール上のマーキングと同一の高さ位置で延びている。
【0022】
このように、これらストランド又はこれら板状体は、マーキングと同じ高さ位置で互いのサイドウォールの延長部をなす。かくして、タイヤサイドウォールの全体的視覚的印象が向上する。
【0023】
実施形態の別の変形形態では、テキスチャのストランド又はテキスチャの板状体は、マーキングの高さよりも低い高さ位置で延びている。
【0024】
かくして、マーキングは、テキスチャに対して保護をもたらす。この場合、これにより、このテキスチャの耐久性が向上する。
【0025】
実施形態の別の変形形態では、テキスチャのストランド又はテキスチャの板状体は、マーキングを越えて突き出ている。
【0026】
テキスチャのストランド又は板状体の突き出て現れている部分は、これらがほっそりとしているために或る程度の可撓性を有する。テキスチャが擦りを受けると、これらストランド又はこれら板状体は、変形し、それによりこの擦りの力のうちの何割かを吸収する。このように、マーキングは、摩耗に対して保護され、より耐久性がある状態になる。さらに、テキスチャのストランド又は板状体がタイヤのサイドウォールを越えて突き出ているということにより、テキスチャの触感的効果の全体的な向上が得られる。
【0027】
好ましい一実施形態では、テキスチャのストランドのうちの一部又はテキスチャの板状体のうちの一部は、マーキングを越えて突き出ており、ストランドのうちの別の一部又は板状体のうちの別の一部は、マーキングよりも低い高さ位置にある。
【0028】
これにより、テキスチャの保護とマーキングの保護の良好な釣り合いを取ることができる。
【0029】
別の実施形態では、マーキングは、このマーキングの残部に対して隆起した縁部を有する。
【0030】
マーキングとテキスチャのコントラストは、このようにして更に一層向上し、かくして、タイヤのサイドウォールのマーキングの視認性が向上する。
【0031】
別の実施形態では、テキスチャは、マーキングから0.5mm〜50mmの幅Lにわたって延びている。
【0032】
このように、マーキングとのコントラストを作るのに十分な寸法を有するテキスチャ付きゾーンがマーキングの周りに作られる。このテキスチャ付きゾーンは又、その製造費も又制限されるよう制限された寸法を有する。
【0033】
本発明の他の特徴及び他の利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として与えられる以下の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】タイヤサイドウォール及びこのサイドウォール上に存在するマーキングの概略斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に従ってサイドウォール上に存在するマーキングを包囲したテキスチャの
図1のX‐X線矢視断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に従ってサイドウォール上に存在するマーキングを包囲したテキスチャの
図1のX‐X線矢視断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に従ってサイドウォール上に存在するマーキングを包囲したテキスチャの
図1のX‐X線矢視断面図である。
【
図5】サイドウォールが擦られたときの
図4のテキスチャの状態を示す図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態に従ってサイドウォール上に存在するマーキングを包囲したテキスチャの
図1のX‐X線矢視断面図である。
【
図7】特定の実施形態による
図1のマーキングを示す図である。
【
図8】
図1のマーキングを包囲し且つストランドから成るテキスチャの略図である。
【
図9】
図1のマーキングを包囲し且つ板状体から成るテキスチャの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の説明において、同一又は実質的に同一の要素は、同一の符号で示される。
【0036】
図1は、タイヤ1のサイドウォール3を示している。このタイヤサイドウォールは、この場合O字形のマーキング5を有する。タイヤは、マーキング5を包囲したテキスチャ9を更に有する。テキスチャ9は、この場合マーキング5の全てを包囲している。変形例として、このテキスチャ9は、このマーキング5の一部しか包囲しない。テキスチャ9は、
図8に示されているように複数のストランド11から成る。この図では、ストランド11は、これらストランドの高さHbに沿って減少する断面を備えた円錐形の全体的形状を有している。具体的に説明すると、ストランドの基部から上方に一定間隔で測定された断面積Sの平均値に一致した各ストランドの平均断面積は、0.0007mm
2〜0.06mm
2である。テキスチャ9では、ストランドは、1平方ミリメートル当たり少なくとも5本のストランドに等しい密度で分布して設けられている。
【0037】
実施形態の変形形態では、テキスチャ9は、
図9に示されているように複数の板状体13から成る。この図では、板状体13は、三角形の全体的断面を有し、板状体の高さHlに沿って一定間隔で測定された幅lの平均値に一致した各板状体の平均幅は、0.03mm〜0.3mmである。テキスチャ9では、板状体13は、実質的に相互に並行であり、板状体の間隔Pは、多くとも0.5mmに等しい。
【0038】
実施形態の別の変形形態では、テキスチャ9は、ストランド11と板状体13の組み合わせから成る。
【0039】
この場合、注目されるように、テキスチャ9は、マーキング5から0.5mm〜50mmの幅Lにわたって延びる。
【0040】
図2は、本発明の第1の実施形態に従ってマーキング5を包囲したテキスチャの断面図である。このテキスチャは、ストランド11及び/又は板状体13から成るのが良い。
【0041】
具体的に説明すると、テキスチャのストランド11又はテキスチャの板状体13は、マーキング5と同一の高さ位置で延び、このことは、これらストランド11の先端又はこれら板状体13の先端がマーキング5の上方部分の高さ位置6に位置することを意味している。
【0042】
図3に見える実施形態の変形形態では、テキスチャのストランド11又はテキスチャの板状体13は、マーキング5の高さよりも低い高さ位置で延びている。このことは、これらストランド11又はこれら板状体13がマーキングの高さ位置6に対して引っ込んだ状態で設けられていることを意味している。
【0043】
図4に見える実施形態の別の変形形態では、テキスチャのストランド11又はテキスチャの板状体13は、マーキング5を越えて突き出ており、このことは、これらストランド11の先端又はこれら板状体13の先端がマーキング5の上方部分の高さ位置6を越えて突き出ているということを意味している。タイヤサイドウォールがテキスチャの付近で擦られた場合、ストランド11又は板状体13が
図5で理解できるように撓み、それによりこの擦れの力の全て又は何割かを吸収する。
【0044】
図6に見える実施形態の別の変形形態では、テキスチャのストランド11のうちの一部又はテキスチャの板状体13のうちの一部は、マーキング5を越えて突き出ており、これらストランド11のうちの別の一部又はこれら板状体13のうちの別の一部は、このマーキング5に対して引っ込んだ状態で設けられている。好ましくは、ストランド11又は板状体13の少なくとも20%はマーキング5を越えて突き出ている。
【0045】
図7に見える実施形態の変形形態では、マーキング5は、このマーキングの残部に対して隆起した縁部15を有している。
【0046】
本発明は、図示すると共に説明した実施例には限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、かかる実施例の種々の改造が可能である。
【0047】
タイヤサイドウォールは、例えば、他のマーキングを有するのが良く、これら他のマーキングは、これら他のマーキングの周りに本発明と関連して説明したテキスチャを備えない。
【0048】
さらに、或る特定のマーキングについて、テキスチャは、これらマーキングを部分的にしか包囲しなくても良い。
【0049】
加うるに、
図2〜
図7は、ゼロ逃げ角を有し、このことは、高い垂直性を呈していることを意味している。変形例として、逃げ角は5°〜20°である勾配を備えたマーキングを作ることが可能である。
【0050】
最後に、
図9の板状体13は、不連続であっても良い。これら板状体は、断面を更に有しても良い。