(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクスと称される腸内環境の改善に有効な微生物が、経口的に摂取された後で消化管下部、特に大腸に到達するためには、強い殺菌作用をもつ胃酸及び小腸における食物の消化吸収に関与する様々な物質への暴露に対する抵抗性を有する必要がある。
【0003】
しかしながら、上記の抵抗性をもともと備えている微生物は多くない。有胞子性乳酸菌であるバチルス・コアギュランス(
Bacillus coagulans)は胃酸に対する抵抗性が高く腸に達して乳酸を生成する能力を有するが、微生物にとって貧栄養環境である大腸、特に大腸遠位における増殖特性は満足のいくものではない。また、有胞子性乳酸菌の芽胞は周囲環境に対する高い抵抗性を示すが、生育に適した環境例えば胃より下部の消化管などに到達した芽胞は、発芽して栄養細胞へと変化し、周囲環境に対する抵抗性を失う。酪酸菌も同様の問題を有する。そのため、各種の抵抗性を備えていないか又は不十分な微生物はもちろんのこと、有胞子性乳酸菌や酪酸菌などのヒトに有用な芽胞菌及びその芽胞も含め、プロバイオティクスとして利用される微生物に対して外因的に所望の抵抗性を与えることのできる製剤的な工夫に向けられたニーズは高い。
【0004】
また、微生物であるプロバイオティクスに限らず、腸内細菌の生育に影響を与える栄養素特にプレバイオティクスについても、同様のニーズは存在する。具体的には、所望の部位に到達する前にプレバイオティクスがプロバイオティクス以外の微生物に資化されないように、又は食物の消化吸収に関与する様々な物質への暴露によって変質しないように、プレバイオティクスに対して外因的に所望の抵抗性を与えることのできる製剤的な工夫に向けられたニーズは高い。
【0005】
さらにプロバイオティクスは、極めて多種多様な微生物が混在して菌叢を形成している腸内環境において、他の腸内細菌よりも優位に増殖する特性を備えていることが好ましい。かかる増殖特性を外因的に与える、すなわち所望のプロバイオティクスにとって有利な生育環境を与えることのできる製剤的な工夫も、プロバイオティクスを利用した腸内環境の改善にとって有効であり得る。
【0006】
有効成分を所望の部位に選択的に到達させるための製剤的な工夫は、以前よりなされている。例えば特許文献1はエチルセルロースを利用した大腸内圧崩壊型大腸デリバリーカプセルを開示している。しかしこの様なポリマーフィルムを用いたカプセル技術は主に医薬のデリバリーを目的とするものであり、プロバイオティクスやプレバイオティクス等の有用物質を食品の形態で提供する上ではコスト的に不利である、また製剤化の工程において対象物であるプロバイオティクスやプレバイオティクスの安定性を低下させるなどの問題を伴う。
【0007】
有胞子性乳酸菌の芽胞を含む食品の例として、特許文献2には乳酸菌含有冷凍パンが開示されている。また、特定の乳化剤と増粘多糖類を利用した芽胞の安定化方法が開示されている。しかし、これらの技術は経口的に摂取する前までは芽胞状態を維持することは可能であっても、摂取した後に小腸等で芽胞が発芽して栄養細胞に変わり、結果として大腸等に必要量の芽胞又は有胞子性乳酸菌を送達できないおそれは依然として残る。さらに、これらの技術は、大腸における有胞子性乳酸菌の増殖特性を改善するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、食物繊維、芽胞菌及び/又はその芽胞、糖類並びにタンパク質又はアミノ酸を含む混合物を調製する工程と、前記混合物を加熱することによってメラノイジンを形成させる工程とを含む、難消化性物質の製造方法を提供する。
【0015】
本発明における食物繊維としては、純品の食物繊維、例えば難消化性デキストリンなどの水溶性食物繊維、セルロースなどの水不溶性食物繊維の他に、果皮、穀類の糠、フスマ、オカラ、又は野菜(芋類及び豆類を含む)若しくは果物を搾汁した後の水不溶性固形分を微細化若しくは磨砕化して得られる、上記食物繊維を含む食品素材なども利用することができる。これらの食物繊維含有食品素材の多くは、原料に由来する糖類及び/又はタンパク質などを少量ながら含んでいるので、後に説明するメラノイジンを形成させる上で、本発明において有利な食物繊維である。
【0016】
本発明において利用可能な食物繊維含有食品素材としては、日本甜菜製糖株式会社の「ビートファイバー」(http://www.nitten.co.jp/product/fiber.html、ビートの水不溶性食物繊維)、株式会社Fiニュートリションの「PURE FIBER」(http://www.fi−nutrition.jp/product/product01_01.html、小麦、オート麦、サトウキビなどの水不溶性食物繊維)、サンケミファ株式会社の「せんいっ粉」(http://3maru.co.jp/sanchemipha/q.seni.htm、コーンの水不溶性食物繊維)などを挙げることができる。
【0017】
本発明において特に好ましい食物繊維含有素材としては、水不溶性食物繊維を含む、例えば粒子径が200μm以下、好ましくは150μm以下の微粉オカラを挙げることができる。前記粒子径を有する微粉オカラを含め、様々な粒子径を有する粉砕オカラは既に市販されており、本発明では市販の微粉オカラを用いてもよい。または、微粉化されていない通常のオカラを原料とし、当業者に知られた微粉処理又は破砕処理を行い、100メッシュサイズ以上の篩を利用して篩い分けして調製したものを本発明にいう微粉オカラとして用いてもよい。
【0018】
また本発明において好ましい食物繊維の別の例としては、セルロース又はその誘導体を挙げることができる。セルロースは経口的に摂取なものであれば利用することができ、食品添加物又は医薬品の賦形剤として広く利用されているセルロースパウダー、特に微晶質セルロースの利用が好ましい。微晶質セルロースは水不溶性食物繊維の一例であり、旭化成株式会社のセオラス(登録商標)UF、ST又はFDグレード、日本製紙グループのKCフロック(登録商標)などを挙げることができる。またセルロース誘導体も経口的に摂取可能であればよく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどを利用することができる。
【0019】
芽胞菌は、一般的には生育に好ましくない環境に置かれたときに耐久性の芽胞を形成することができる細菌であるが、本発明では、腸内環境の改善効果に優れた難消化性物質を提供することを目的とすることから、芽胞菌は腸内環境に有用なものに限定される。このようなヒトの腸内環境に対して有益な芽胞菌は、有胞子性乳酸菌(参考文献:牧浦祐一、「FOOD Style21」、2002年、6,9、第77−80ページ)及び酪酸菌が挙げられる。
【0020】
有胞子性乳酸菌の例としては、バチルス・コアギュランス、スポロラクトバチルス・イヌリナス(
Sporolactobacillus inulinus)などを挙げることができる。B.コアギュランスはラクリス(登録商標)―Sなどの名称で市販されている。本発明ではB.コアギュランス株の利用が好ましく、特にB.コアギュランス lilac−01株の利用が好ましい。lilac−01株は、特許第5006986号公報に記載され、また独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号:NITE P−1102として寄託されている。
【0021】
また、酪酸菌の例としてはクロストリジウム・ブチリカム(
Clostridium butyricum)を挙げることができる。C.ブチリカムは、宮入菌などの名称で市販されている。
【0022】
上記腸内環境に有用な芽胞菌の芽胞は、芽胞菌の栄養細胞に対して、芽胞を形成させることのできる公知の処理、例えば加熱、乾燥、化学品の添加等を行うことにより、調製することができる。簡便には、芽胞菌を増殖させた培地を加熱したり、乾燥したりすることで調製することができる。
【0023】
本発明における糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖若しくは多糖類であって還元末端を有するもの又はそれらの組合せ若しくはそれらを含有する混合物を挙げることができる。糖類は、他の原料とは別に混合物に加えたものでもよく、又は食物繊維含有食品素材若しくは以下に説明するタンパク質の原料に由来する糖類であってもよい。
【0024】
タンパク質(ペプチド及びポリペプチドを含む)としては、植物性タンパク質及び/又は動物タンパク質を挙げることができる。本発明では特に、糖類及びタンパク質をいずれも含む穀物又はその加工物の使用が好ましい。その例としては、大豆粉、オリザ油化株式会社製のオリザプロテイン(登録商標、参考URL:http://www.oryza.co.jp/product/detail/oryza_protein_igai.html)又は大関株式会社製のプロファイバー(参考URL:http://www.ozeki.co.jp/food_bio/jyozo2.html)などの難消化性米タンパク質、三和酒類株式会社の発酵大麦エキス(http://www.b−fermentation.com/product/index.php?action=story&story_id=1)などの大麦エキス、株式会社東洋新薬の「ポテイン」(http://www.toyoshinyaku.co.jp/gnc−material/potein01.html)などのポテトタンパク質などを使用することが好ましく、大豆粉又は難消化性米タンパク質の使用がより好ましい。
【0025】
アミノ酸は、メラノジンを形成し得るアミノ酸であれば特にその種類に制限はなく、あるいは上記食物繊維含有食品素材に含まれるアミノ酸であってもよい。
【0026】
本発明の方法は、先にそれぞれ説明した、食物繊維、芽胞菌及び/又はその芽胞、糖類並びにタンパク質又はアミノ酸を混合して混合物を調製する工程を含む。かかる工程において、糖類は他の成分とは別に用意されたものであってもよいが、食物繊維含有食品素材を使用するとき又はタンパク質として穀物又はその加工物を使用するときは、それらにもともと含まれている原料由来の糖類であってもよい。
【0027】
混合は、適当量の水分と共に行うことが好ましい。水分は、食物繊維、芽胞菌及び/又はその芽胞、糖類並びにタンパク質又はアミノ酸とは独立して混合物に添加したものでもよく、又は食物繊維、芽胞菌及び/又はその芽胞、糖類並びにタンパク質又はアミノ酸を湿らせるために使用した水若しくはこれらを含む溶液又は懸濁液として混合物中に持ち込まれたものであってもよい。その量は、食物繊維、芽胞菌及び/又はその芽胞、糖類並びにタンパク質又はアミノ酸の混合物を粉末が飛散せずに混練できる程度の湿り気を与える量から、混合物がペースト状になる程度の量の範囲で適宜調節することが好ましい。
【0028】
混合物における糖類とタンパク質又はアミノ酸との混合量比は、それぞれに含有されるメイラード反応に寄与する官能基、すなわち糖類の還元末端及びタンパク質又はアミノ酸のアミノ基の数に応じて設定することができ、例えば、糖類:タンパク質又はアミノ酸の比を概ね0.1:10〜10:0.1、又は1:5〜5:1、あるいは0.5:1〜1:0.5の範囲内で適宜調節することが好ましい。また、食物繊維と糖類及びタンパク質又はアミノ酸との混合量比は、水分を除いた重量比で食物繊維:糖類及びタンパク質又はアミノ酸の比を500:1〜1:5、好ましくは500:1〜1:1の範囲内で適宜調節することが好ましい。
【0029】
また、食物繊維として利用する食物繊維含有素材、例えば微粉オカラ自身又は穀類若しくはその加工物が糖類及び/又はタンパク質又はアミノ酸をもともと含有している場合には、原料ごとに糖類及びタンパク質又はアミノ酸の含有量を特定しておき、これらを勘案して、混合物に含まれる糖類及タンパク質又はアミノ酸の量を上記範囲で調節すればよい。
【0030】
原料としての食物繊維に含まれる糖類及び/又はタンパク質又はアミノ酸の含有量も勘案して混合物中の糖類及びタンパク質又はアミノ酸の量を調節することによって、最終的に製造される難消化性物質における難消化性糖質(レジスタントカーボハイドレート、RCと略される)及び/又は難消化性タンパク質(レジスタントプロテイン、RPと略される)の含有量を調節することができる。
【0031】
腸内環境の改善に資する微生物であるプロバイオティクスはそれぞれ、自身の優位な増殖に適した糖質(C)とタンパク質(P)の含有比率を有するが、これまでの整腸剤の多くは、糖質(C)とタンパク質(P)の含有比率(C/P比)とりわけRCとRPの含有比率(RC/RP比)を調節又は制御することは考慮されていない。本発明の方法は、混合物中のC/P比を適切に調節又は制御することで、芽胞菌の増殖に適したC/P比さらにはRC/RP比を有する難消化性物質を製造することができる。
【0032】
また、混合物に含まれる芽胞菌及び/又はその芽胞の個数は、芽胞菌ごとの成人一日当たりの好ましい摂取量(一般的には概ね100万個〜10億個といわれている)を考慮して定めればよい。例えば、難消化性物質の単位重量(グラム)当たり概ね1万個〜100億、好ましくは10万個〜10億個の芽胞菌及び/又はその芽胞が含まれるよう、これらと同数の芽胞菌の芽胞又はこれらの10〜100倍の芽胞菌の栄養細胞が混合物に含まれていればよい。ただし混合物に含まれる芽胞菌及び/又はその芽胞の個数は上記の範囲に制限されるものではない。より少量の又はより多量の芽胞菌及び/又はその芽胞を含む難消化性物質を調製することは本明細書に開示される方法の範囲内で可能である。
【0033】
本発明の混合物を調製する工程の好ましい態様は、微粉オカラと、ペプトン又は穀物粉例えば大豆粉、難消化性米タンパク質又は前記大麦エキスを適当量の水に懸濁させた液中で芽胞菌を適当な時間培養して得られる培養液とを混合する工程である。
【0034】
本発明は、前記混合物を加熱することによってメラノイジンを形成させる工程をさらに含む。メラノイジンとは、タンパク質又はアミノ酸と還元糖との反応、すなわちメイラード反応(アミノカルボニル反応とも呼ばれる)によって生成する褐色物であり、日常的にも調理などを行う際に見かける反応物である。本発明における加熱も、適当な温度と時間をかけて混合物が褐変化するまで行えばよく、温度及び時間に特殊な手法や条件さらには特殊な装置などは必要とはされない。具体的には、混合物の量や水分含量に応じて、概ね80℃〜150℃、好ましくは90℃〜120℃の範囲の温度で10分〜120分間、褐変の度合い及び乾燥状態を適宜確認しながら混合物を加熱すればよい。
【0035】
本発明における混合物を加熱する方法の例としては、高温の熱風で混合物を巻き上げる等しながら加熱する方法、必要に応じて混合物を攪拌しながら赤外線又は輻射熱に晒して加熱する方法、及び必要に応じて混合物を攪拌しながら炒る方法などを挙げることができるが、これらには限定されない。本発明で好ましい加熱処理の方法は、適当な容器の上で又は容器内で混合物を攪拌しながら炒る方法である。特に本発明は、加熱と共に又は加熱後にさらに乾燥処理を行うことが好ましい。
【0036】
上記の加熱により形成されるメラノイジンとしては、食物繊維に含まれる糖類及び/又はタンパク質又はアミノ酸と混合物中のその他の成分との間で形成されるメラノイジン、食物繊維自身が還元末端を有するときはその還元末端と混合物中のタンパク質又はアミノ酸との間で形成されるメラノイジンを挙げることができる。このメラノイジンの場合、食物繊維自体がメライノジン化されることになる。また食物繊維以外の成分間でもメラノイジンが形成され得る。このメラノイジンの場合は、食物繊維にいわば焦げつくように付着して、食物繊維から容易に離れなくなる。このように食物繊維自体がメラノイジン化する又は食物繊維にメラノイジンが付着して容易に離れない状態を、本発明ではメラノイジンが食物繊維に固着していると表すこととする。
【0037】
また、加熱後の芽胞菌及び/又はその芽胞は、食物繊維とこれに固着したメラノイジンとの間に挟み込まれている状態、食物繊維に固着したメラノイジンの中に埋め込まれている状態、芽胞と食物繊維との間でメラノイジンが形成されて食物繊維と一体になっている状態、あるいは芽胞と糖類及び/またはタンパク質又はアミノ酸との間で形成されるメラノイジンとして食物繊維に固着している状態などにあると推察される。このような状態にあって芽胞菌及び/又はその芽胞が食物繊維から容易に離れない状態を、本発明では芽胞菌及び/又はその芽胞が食物繊維に固着していると表すこととする。なお、加熱前の混合物が芽胞菌の栄養細胞を含む場合、その多くは加熱の途中で耐久性の芽胞を形成し、この芽胞が食物繊維に固着すると推察される。
【0038】
このように、本発明の方法によって製造される難消化性物質は、食物繊維自身が他の成分と芽胞菌を包含してメラノイジン化した又は芽胞菌の芽胞及びメラノイジンが容易には分離できないほどに食物繊維に付着した、すなわち食物繊維に芽胞及びメラノジンが固着したものであり、食物繊維、芽胞菌の芽胞及びメラノイジンがそれぞれ独立に共存する単なる混合物の状態にあるものとは明確に区別される。
【0039】
本発明の製造方法における混合物は、加熱によるメラノイジンの形成を妨げることがない限り、食物繊維、芽胞菌及び/又はその芽胞、糖類並びにタンパク質又はアミノ酸以外の任意の有用物質を含んでいてもよい。特に混合物に有用物質を加えることにより、有用物質を食物繊維に固着させることができる。
【0040】
本発明における有用物質の代表的な例は、芽胞菌を含む有用な腸内細菌の増殖を選択的に促すいわゆるプレバイオティクスである。プレバイオティクスをさらに含む混合物を経て製造される難消化性物質は、プロバイオティクス及びプレバイオティクスを同時に含むシンバイオティクスとして有用である。
【0041】
プレバイオティクスとしては、ツラノース、セロビオース、ラクチュロースなどの二糖類、パノース、ゲンチアノース、メレジトース、スタキオース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラフィノース、マンナンオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、セロオリゴ糖、マルトトリオース、シクロデキストリン、コーヒー豆マンノオリゴ糖などのオリゴ糖、グルコン酸などの有機酸、ポリデキストロース、イヌリン、グァーガム分解物、サイリウムなどの可溶性食物繊維、米デンプン、上新粉、白玉粉、コーンスターチ、片栗粉、米粉、玄米粉などの澱粉などを挙げることができる。
【0042】
なお、メラノイジンの形成及び大腸遠位における芽胞菌の生育を妨げないことを条件に、前記プレバイオティクスに代えて又はこれに追加して、アミノ酸類、ビタミン類、ミネラル類などの栄養学的に有効な物質又は一般に食品機能成分とされる有効な物質などを混合物に加えて食物繊維に固着させてもよい。
【0043】
本発明はさらに、食物繊維に芽胞菌の芽胞及びメラノイジンが固着してなる難消化性物質を提供する。
【0044】
ここで、食物繊維及びその粒子径、芽胞菌の芽胞及び用語「固着」については、上で説明したとおりである。また、難消化性物質に含まれる食物繊維、糖類、タンパク質及び芽胞菌の芽胞の含有量は、上記の製造方法において説明した使用量により定まる範囲内であればよい。また、本発明の難消化性物質は、先に説明したプレバイオティクスの他、薬学的な有効な物質、栄養学的に有効な物質など様々な物質を、芽胞と同様の形態で食物繊維に固着させたものであってもよいことは先に説明したとおりである。すなわち、本発明の難消化性物質の典型的な又は好適な例は、前記本発明の方法により製造される難消化性物質である。
【0045】
本発明の難消化性物質は、塊状、粒状又は粉末などの任意の形態とすることができる。例えば、先に説明した本発明における混合物を適当な型に入れて加熱することで塊状としてもよく、またメラノイジンを形成させた後に適当な結着剤又はつなぎを加えて適当な型に加工して塊状としてもよい。さらに、混合物を攪拌しながら加熱することで粒状または粉末の難消化性物質とすることができ、あるいは塊状に加工したものを粉砕又は破砕して粒状又は粉状の難消化性物質としてもよい。
【0046】
本発明の難消化性物質は、腸内環境の改善、特に大腸遠位における環境改善に有効である。本発明の難消化性物質に含まれる食物繊維、芽胞菌の芽胞及びメラノイジンは、いずれも、胃の内部環境及び小腸の内部環境における分解に抵抗性を有することから、難消化性物質を摂取した宿主自身の消化吸収から保護されるものと期待される。また同時に、食物繊維及びメラノイジンによる保護作用により、胃や小腸などで芽胞菌の芽胞が栄養細胞へと変わることも防止されると期待される。
【0047】
一方、本発明の難消化性物質の分解は、大腸の内部環境条件下で、ようやく本格的に開始される。この分解によって固着していた芽胞菌の芽胞の殆どが放出される。またそれまで芽胞が固着していた食物繊維やこれに固着していたメラノイジンそのもの又はそれらの分解物は芽胞菌の発芽誘起物質及び/又は菌体増殖の栄養源となるため、芽胞が栄養細胞へと変化して、芽胞菌の増殖が始まる。
【0048】
上記の事実をもとに合理的に推察すれば、本発明の難消化性物質は、これを摂取した宿主の胃及び腸を殆ど分解されることなく通過して大腸近位に到達した後、大腸遠位に至るまでの間に、徐々に分解を受け続ける結果として、大腸全体、特に分解が進む遠位において芽胞菌の芽胞を放出し、さらにメラノジン又はその分解物を栄養分として供給することで芽胞を栄養細胞へと変化させ、大腸遠位における芽胞菌の優位な増殖を促すものと期待される。
【0049】
一般に、欧米化した食は食物繊維が少なく脂質が多いため、宿主からの胆汁の分泌量が亢進し、腸内発酵特に大腸内の乳酸生成と乳酸利用のバランスが崩れ易くなるといわれている。特に大腸遠位では乳酸菌の増殖が弱く乳酸が少なくなるとpHが上昇して低水分化するので黒くてかたい便となり、さらに乳酸から変換される酪酸も少なくなって腸の蠕動運動は鈍く停滞するので、便秘になりやすい。一方、乳酸が過剰に存在するとpHが低下して乳酸資化性細菌の活性が下がることでさらに乳酸蓄積が進む結果、大腸の萎縮が進んで下痢になりやすくなる他、過敏性腸症候群などの大腸疾患の原因となると考えられている。
【0050】
腸内環境の改善に有効なプロバイオティクスとして、前出の通り、乳酸菌や酪酸菌が知られている。しかしこれらのプロバイオティクスを用いた従来の整腸剤は、大腸全体を同一の環境を有する一つの消化管とみなしており、大腸部位ごとの最適な発酵状態を維持することは考慮されていない。また、前記整腸剤において酪酸菌はいわば裸の状態で製剤化されており、大腸特に大腸遠位への到達能に関する考慮は十分ではない。これらのためか、従来の整腸剤の便通改善効果、具体的には便秘又は便秘気味の若しくは下痢を起こしやすい又は軟便気味の便通を改善する効果は必ずしも満足のいくものではない。
【0051】
一方の本発明の難消化性物質は、上記の特徴に基づいて腸内特に大腸遠位において適当量の乳酸の生成を促進させ、さらにこの乳酸から酪酸が変換されることによって、又は酪酸自体の生成を促進させることによって腸の蠕動運動が誘導されて適切な排便を促すことができるものと期待される。また適切な量の酪酸は、大腸上皮細胞の正常な更新や大腸癌予防にも有利に働く。
【0052】
また本発明の難消化性物質は、大腸遠位における腸内環境を改善することの他に、継続的に摂取することで改善された環境を安定的に保つことができ、これにより過敏性腸症候群に見られる下痢や便秘の繰り返しを防止することができるものと期待される。
【0053】
本発明の難消化性物質は、そのまま摂取してもよく、水、果汁、牛乳、豆乳などの適当な飲料に懸濁して又はパン、白米、シリアルその他の食品に混ぜて、又はクッキー、ケーキ、パンなどの加工食品の形態にして摂取してもよい。また、本発明の難消化性物質を原料の一つとして製造される健康補助食品、サプリメント又は医薬品などの形態で利用してもよく、これらは、当業者が通常使用する様々な原料、添加物その他の物質と本発明の難消化性物質とを適当な形態で組み合わせ、通常の方法に従って製造することができる。
【0054】
本発明の難消化性物質の摂取量は、難消化性物質の単位重量当たりに含まれる芽胞菌及び/又はその芽胞の数に応じて適宜定めることができる。一般に、芽胞菌の好ましい摂取量は成人1日当たり100万個〜10億個といわれており、この範囲の個数を与えることのできる量の難消化性物質を摂取すればよい。好ましくは、芽胞菌及び/又はその芽胞の数だけでなく、食物繊維及びメラノイジンの効果的な摂取量も考慮して、1日当たり1mg〜1000g、好ましくは0.1g〜1000g、より好ましくは1g〜100g、さらにより好ましくは1〜10gの範囲で本発明の難消化性物質の摂取量を調節すればよい。
【0055】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0056】
<実施例1>
B.コアギュランス lilac−01株を、ペプトンSE 50M 0.5%、酵母エキス0.5%、グルコース0.5%、硫酸マグネシウム0.1%及び硫酸マンガン5ppmを含む培地100mL(pH7.0)に接種し40℃で2日間振盪培養して、芽胞を形成させた。遠心分離後、滅菌生理食塩水で一度洗浄したのちに、滅菌生理食塩水に懸濁した。大豆粉(ミナミ産業株式会社)5gに蒸留水100mLを加えた大豆粉懸濁液に先の芽胞懸濁液(200μL)を加え、さらに微粉オカラ(キッコーマン飲料株式会社)200gを加えて混合した。この混合物100gをフライパンで8分間加熱乾燥することによって、本発明の難消化性物質を製造した。この難消化性物質1g当たりのlilac−01株の芽胞数は、4.0×10
2個であった。
【0057】
<実施例2>
B.コアギュランス lilac−01株を4Lの豆乳(キッコーマン飲料株式会社)に接種して55℃で24時間振盪培養した。培養終了後に微粉オカラ(キッコーマン飲料株式会社)4kgを加えて混合した。この混合物のうち10gを対照品として取り、残りの約4kgをニーダー(株式会社サムソン製)に移し、120℃で20分間加熱乾燥を続けた。乾燥後、分析篩(メッシュNO.24、編目の大きさは0.71mm)の篩に掛けて、通過しなかった分(粒の大きさは1−2mm)を回収して本発明の難消化性物質とした。この難消化性物質1g当たりのlilac−01株の芽胞数は、1.9×10
8個であった。また、原料の一部である微粉オカラ及び実施例2で製造した難消化性物質それぞれの顕微鏡写真を
図1及び
図2に示す。加熱処理によって水不溶性食物繊維である微粉オカラの外観が変化し、褐色化してメラノイジンが生成していることが分かる。
【0058】
<試験例1>
1)疑似近位大腸環境モデルでの試験
実施例1で製造した難消化性物質をラボミルサー(LAB CAT社)で破砕して粉状に加工した。ペプトンSE 50M 0.25%、酵母エキス0.1%及び硫酸マグネシウム0.1%を含む培地10mL(pH6.5)に、コントロールとして生理食塩水に懸濁したlilac−01株の芽胞(培地1mlあたり20個)を、また前記粉状の難消化性物質0.5g(培地1mlあたり20個の芽胞を含む)をそれぞれ加え、37℃で嫌気培養し、経時的にlilac−01株の生菌数を測定した。その結果を
図3に示す。
【0059】
コントロールでは、lilac−01株の増殖は、培養開始後15時間で対数増殖期となり、24時間後に平衡期に達するのに対して、実施例ではコントロールと比較して遅く発芽し、増殖することが確認された。
【0060】
2)疑似遠位大腸環境モデルでの試験
0.85%滅菌生理食塩水10mL(pH7.0)に、コントロールとして生理食塩水に懸濁したlilac−01株の芽胞(生理食塩水1mlあたり20個)を、また前記粉状の難消化性物質0.5g(生理食塩水1mlあたり20個の芽胞を含む)をそれぞれ加え、37℃で嫌気培養し、経時的にlilac−01株の生菌数を測定した。その結果を
図4に示す。
【0061】
この培地ではコントロールである芽胞は発芽せず、菌の増殖は確認されなかった。一方、実施例では
図4に示されるような増殖曲線を示した。このことから、実施例に含まれる有胞子性乳酸菌の芽胞は、疑似遠位大腸環境において発芽し、難消化性物質に含まれる成分を栄養源として増殖することができることが確認された。
【0062】
3)人工消化処理に対する抵抗性試験
実施例1及び実施例2で製造した難消化性物質及び各実施例の加熱処理を行わなかった対照品について、本間らの論文(食科工、2008年、第55巻、第18−24ページ)を参考にして、人工消化処理に対する抵抗性を評価した。
【0063】
10mM塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH6.9)10mL/コニカルチューブに、固形分量を同じにした対照品0.88g(実施例1と2の含水率はそれぞれ49.3%と46.8%)及び難消化性物質0.5g(実施例1と2の含水率はそれぞれ10.7%と6.2%)をそれぞれ加え、37℃で15分間予備加温した後、25μLのαアミラーゼ(シグマ社カタログ番号A−0521、1mg/mL)を加えて、37℃で15分間反応させた。次いで、1M塩酸を加えてpH2.5に調整した後、62.5μLのペプシン(シグマ社カタログ番号P−7012、0.5mg/mL)をさらに加えて37℃で30分間反応させた。さらに、1M水酸化ナトリウムを加えてpH7.1に調整した後、125μLのパンクレアチン(シグマ社カタログ番号P−7545、0.5mg/mLの10mM塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液、pH6.9)を加えて37℃で90分間反応させた。
【0064】
嫌気培養用培地(日水製薬社のGAM培地を4倍希釈し、寒天を除いた培地)10mLに、人工消化処理後さらに1度生理食塩水で洗浄した対照品及び実施例1の難消化性物質を、それぞれ培地1mlあたり芽胞数が20個になるように加えて、37℃で嫌気培養し、経時的にlilac−01株の生菌数を調べた。この培養は、疑似近位大腸環境での増殖能を確認するためのものである。その結果を
図5に示す。
【0065】
また、0.85%滅菌生理食塩水5mLに、人工消化処理後にさらに1度生理食塩水で洗浄した対照品及び実施例2の消化性物質を、それぞれ生理食塩水1mlあたり芽胞数が3×10
6個になるように加えて、37℃で嫌気培養し、経時的にlilac−01株の生菌数を調べた。この培養は、疑似遠位大腸環境での増殖能を確認するためのものである。その結果を
図6に示す。
【0066】
上記の人工消化処理に対する抵抗性試験の結果から、本発明の難消化性物質は、大腸まで到達し、疑似近位大腸環境では対照品より遅く発芽し、疑似遠位大腸環境では対照品よりも増殖速度が大きいことが確認された。
【0067】
<実施例3>
B.コアギュランス lilac−01株を、ペプトン0.5%、酵母エキス0.5%、グルコース0.5%、硫酸マグネシウム0.1%及び硫酸マンガン5ppmを含む培地100mL(pH7.0)に接種し40℃で2日間振盪培養して、芽胞を形成させた。遠心分離後、滅菌生理食塩水で一度洗浄したのちに、滅菌生理食塩水に懸濁した。5%滅菌大豆粉懸濁液30mLに先の芽胞懸濁液(20μL)を加え、さらに微粉セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社)15gを加えて混合した。この混合物をフライパンで5分間加熱乾燥し、分析篩(メッシュNO.24、編目の大きさは0.71mm)の篩に掛けて、通過しなかった分(粒の大きさは1−2mm)を回収することによって、本発明の難消化性物質を製造した。この難消化性物質1g当たりのlilac−01株の芽胞数は、2.1×10
2個であった。
【0068】
<実施例4>
B.コアギュランス lilac−01株を、ペプトン0.5%、酵母エキス0.5%、グルコース0.5%、硫酸マグネシウム0.1%及び硫酸マンガン5ppmを含む培地100mL(pH7.0)に接種し40℃で2日間振盪培養して、芽胞を形成させた。遠心分離後、滅菌生理食塩水で一度洗浄したのちに、滅菌生理食塩水に懸濁した。ペプトン2.0gとハチミツ11.0gに蒸留水20mLを加えた溶液に先の芽胞懸濁液(20μL)を加え、さらに微粉セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社)15gを加えて混合した。この混合物をフライパンで5分間加熱乾燥し、分析篩(メッシュNO.24、編目の大きさは0.71mm)の篩に掛けて、通過しなかった分(粒の大きさは1−2mm)を回収することによって、本発明の難消化性物質を製造した。この難消化性物質1g当たりのlilac−01株の芽胞数は、1.3×10
2個であった。
【0069】
<実施例5>
B.コアギュランス lilac−01株を、ペプトン0.5%、酵母エキス0.5%、グルコース0.5%、硫酸マグネシウム0.1%及び硫酸マンガン5ppmを含む培地100mL(pH7.0)に接種し40℃で2日間振盪培養して、芽胞を形成させた。遠心分離後、滅菌生理食塩水で一度洗浄したのちに、滅菌生理食塩水に懸濁した。ペプトン0.5%、グルコース0.5%を含む溶液30mLに先の芽胞懸濁液(20μL)を加え、さらにカルボキシルメチルセルロースナトリウム(日本製紙株式会社)15gを加えて混合した。この混合物をフライパンで5分間加熱乾燥し、分析篩(メッシュNO.24、編目の大きさは0.71mm)の篩に掛けて、通過しなかった分(粒の大きさは1−2mm)を回収することによって、本発明の難消化性物質を製造した。この難消化性物質1g当たりのlilac−01株の芽胞数は、2.1×10
2個であった。
【0070】
<試験例2>
試験例1の2)疑似遠位大腸環境モデルでの試験に準じて、実施例3〜5で製造された難消化性物質0.5g(生理食塩水1mlあたり13〜20個の芽胞を含む)及びコントロールとして生理食塩水に懸濁したlilac−01株の芽胞(生理食塩水1mlあたり400個)を0.85%滅菌生理食塩水5mL(pH7.0)にそれぞれ加え、37℃で嫌気培養し、経時的にlilac−01株の生菌数を測定した。その結果を
図7に示す。
【0071】
生理食塩水中ではコントロールである芽胞は発芽せず、lilac−01株の増殖は確認されなかった。一方、実施例3〜5に関しては、lilac−01株は
図7に示されるような増殖曲線を示した。このことから、実施例3〜5で製造された難消化性物質に含まれる有胞子性乳酸菌の芽胞は、疑似遠位大腸環境において発芽し、難消化性物質に含まれる成分を栄養源として増殖することができることが確認された。
【0072】
<試験例3>
WKAH/HkmSlcラット(5週齢雄性、体重約120g)を予備飼育後、実施例2で製造された難消化性物質を混合した飼料(飼料1gあたり芽胞菌5×10
6個)を自由摂取させながら2週間飼育した。飼育後に解剖して盲腸を取り出し、内容物を観察した(
図8)。その結果、多数の難消化性物質(図中の→で示された箇所)が未消化のまま盲腸に到達していることが確認された。また、盲腸から回収された難消化性物質の一塊を滅菌生理食塩水で希釈後、標準寒天培地で混釈培養(55℃2日間)して、これに含まれている生菌数及び芽胞数を測定したところ、生菌数は1.5×10
4個/難消化性物質0.01g、芽胞数は1.1×10
4個/難消化性物質0.01であった。この結果から、ラット盲腸においてlilac−01株の多くは発芽して生菌へと変化していることが確認された。
【0073】
<試験例4>
イエネコ(16歳、雄性、体重約4kg)に、実施例2で製造された難消化性物質(芽胞菌一日当たり1×10
7個)を投与した。1週間飼育した後、糞便の色を難消化性物質の摂取前後で比較した。摂取前の糞便は黒褐色であったのに対し、摂取後の糞便は色が黄色化した。このことから、本発明の難消化性物質はイエネコの腸内環境を改善することが確認された。
【0074】
<試験例5>
SD系Slcラット(5週齢雄性、体重約120g)を予備飼育後、2群に分け、対照群には有胞子性乳酸菌のみ(飼料1g当たり芽胞菌1×10
6個)を、試験群には実施例2で製造された難消化性物質を含む飼料(飼料1g当たり芽胞菌1×10
6個)を自由摂取させながら2週間飼育した。飼育後に解剖して盲腸を取り出し、盲腸内容物中の有胞子性乳酸菌数の生菌数は、希釈後標準寒天培地(日水製薬)に塗抹し、55℃で1日好気培養後に計測した。有胞子性乳酸菌の芽胞数は、10倍希釈液をマイクロチューブにとり、90℃10分加熱後に、同様に培養して計測した。これらの値から発芽率を算出したところ、対照群の発芽率は6%、試験群の発芽率は29%と大きく上昇していることが確認された。
【0075】
<試験例6>
WKAH/HkmSlcラット(5週齢雄性、体重約120g)を予備飼育後、実施例2で製造された難消化性物質を含む飼料(飼料1g当たり芽胞菌5×10
6個)を自由摂取させながら2週間飼育した。飼育後に解剖して盲腸を取り出し、盲腸内容物中の短鎖脂肪酸濃度を有機酸測定用HPLC(LC−10ADvp;島津製作所)で測定した。その結果、表1に示されるように、難消化性物質を摂取していない又は有胞子性乳酸菌のみを摂取させた対照群に比べて、試験群では酢酸、プロピオン酸及び酪酸が有意に増加していることが示された。
【0076】
【表1】
【0077】
一般的に、短鎖脂肪酸は腸内環境の改善効果、及び潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患に対する治療効果等を示すことが知られている他、特に酪酸は過敏性腸症候群の治療に有効であることが知られている(例えばZateskiら、Przeglad Gastroenterologiczny、2013年、第8巻、第350−353ページ)。したがって、本発明の難消化性物質は、整腸剤、炎症性腸疾患又は過敏性腸症候群の治療剤としても有効であると考えられる。