(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306185
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】自動車両の電源バッテリの断線検出方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20180326BHJP
B60R 16/03 20060101ALI20180326BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20180326BHJP
H02J 7/14 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
H02M3/00 C
B60R16/03 A
H02J7/00 P
H02J7/14 W
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-535513(P2016-535513)
(86)(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公表番号】特表2016-528870(P2016-528870A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】FR2014051586
(87)【国際公開番号】WO2015025089
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2016年4月14日
(31)【優先権主張番号】1358125
(32)【優先日】2013年8月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブラスト, ジル
(72)【発明者】
【氏名】フラクサ, フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】バダサリアン, ヴァヘ
(72)【発明者】
【氏名】フリク, ハーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】フッシェ, アーワン
【審査官】
栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/114032(WO,A1)
【文献】
特開2002−366234(JP,A)
【文献】
特開2011−229338(JP,A)
【文献】
特開平02−282900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00−3/44
B60R 16/03
H02J 7/00
H02J 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧/直流電圧(DC/DC)コンバータ(4)によって相互接続された2つの電気回路網(2、3)が装備されたシステムにおける電気バッテリ(10)の断線検出方法であって、前記バッテリ(10)は2つの前記回路網(2)のいずれか一方に属しており、前記コンバータ(4)は前記バッテリ(10)に充電するように構成されている検出方法において、
前記バッテリ(10)を備える前記回路網(2)に前記コンバータ(4)によって付与される直流電圧成分(Us)に所定の電圧信号(Uvar)を付加すること、
前記バッテリ(10)を通過する電流(I)を測定すること、および
付加された前記電圧信号(Uvar)に対応する電流強度信号(Ialternatif)を探索することで前記バッテリ(10)が前記回路網(2)に確かに接続されているか調べること、を含み、
付加される前記電圧信号(Uvar)および探索される前記電流強度信号(Ialternatif)が周期信号を含む、
検出方法。
【請求項2】
付加される前記電圧信号が所定の符号を持つ電圧レベルの変更であり、前記電流強度信号が所定の符号を持つ強度レベルの変動である、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記バッテリ(10)を通過する前記電流(I)の絶対値が強度閾値(Imin)未満である場合にしか前記電圧信号(Uvar)を付加せず、電流信号(Ialternatif)を探索しない、請求項1または2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記電圧信号(Uvar)を付加した後、対応する前記電流強度信号(Ialternatif)が検出されないとき、前記電圧信号(Uvar)の振幅を増大させて前記電流強度信号(Ialternatif)の検出を改めて試す、請求項1から3のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項5】
前記電圧信号(Uvar)が前記コンバータ(4)の出力電圧(Us)を制御する指令値に信号を付加することによって得られる、請求項1から4のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項6】
前記電圧信号(Uvar)が専用の発振回路(16)によって生成され、前記コンバータ(4)の出力電圧(Us)に付加される、請求項1から4のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項7】
バッテリ(10)を充電するように構成された直流電圧/直流電圧(DC/DC)コンバータ(4)によって相互接続された2つの電気回路網(2、3)が装備された自動車両(1)であって、
前記バッテリ(10)を通過する電流の強度(I)を測定する強度推定装置(7)と、
前記コンバータ(4)から前記バッテリ(10)に付与される直流電圧に所定の電圧信号(Uvar)を付加するための手段と、
前記強度推定装置(7)によって測定される電流の強度(I)の中から付加された前記電圧信号(Uvar)に対応する電流強度信号(Ialternatif)を検出することができるフィルタリング手段とを備え、
付加される前記電圧信号(Uvar)および探索される前記電流強度信号(Ialternatif)が周期信号を含む、
自動車両(1)。
【請求項8】
前記バッテリ(10)を通過する前記電流強度(I)の絶対値が強度閾値(Imin)を下回ったときに前記電圧信号(Uvar)の付加をトリガするように構成された電子コントロールユニット(12)を備える、請求項7に記載の自動車両(1)。
【請求項9】
前記電子コントロールユニット(12)が、前記コンバータ(4)の直流出力電圧(Us)に前記電圧信号(Uvar)が付加されているにもかかわらず、時間閾値を超える時間にわたって前記電流強度信号(Ialternatif)が検出されない場合に警報メッセージを送出するように構成されている、請求項8に記載の自動車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車両車載回路網に対する電気エネルギー供給の保障を目的とする。より一般的には、本発明は、DC/DC型の電圧変換器(直流−直流コンバータ)によって相互接続された2つの電気回路網を組み合わせた電気系統、とりわけ車載電気系統であって、一方の回路網がDC/DCコンバータによって充電される蓄電バッテリを備える、電気系統にも適用することができる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、より詳細には、DC/DCコンバータによって相互接続された2つの電気回路網を備える自動車電気系統の低電圧電気供給の保障に関する。2つの回路網は同じ定格電圧または異なる定格電圧で動作することができる。典型的には、少なくとも一部の電気機械が制動エネルギーの回収もしくは車両の推進力補助またはその両方のための働きをする車両にあっては、車両は、導体内でのジュール効果による損失を制限し、より小径の導体ケーブルを使用することができるようにするため、電気機械が含まれた高電圧回路網を備えることができる。
【0003】
その他の標準機能のためには、車両はそれより低い電圧での供給を受ける第2の電気回路網を備えることができる。たとえば、24ないし58ボルト、たとえば48ボルトの電圧で動作する第1の電気回路網と、10.5ないし15ボルトの定格電圧で動作する低電圧の第2の電気回路網とを備えることができる。
【0004】
第2の「低電圧」電気回路網は、たとえば車両の走行時にDC/DCコンバータによって高電圧回路網から充電される専用蓄電池バッテリを備えることができる。
【0005】
「低電圧」回路網の電気エネルギー管理および「低電圧」蓄電池バッテリの充電管理のため、DC/DCコンバータは、低電圧回路網のバッテリから供給を受ける電子コントロールユニットによって制御されることができる。車両の一部安全機能のために、「低電圧」回路網への電気エネルギー供給の保障が必要となる場合がある。この供給の保障手段の1つは、「低電圧」蓄電バッテリと、DC/DCコンバータを介した第2の回路網による低電圧回路網への電気供給とによる、電力供給の冗長性を用いることであってよい。その場合、DC/DCコンバータによる低電圧回路網の供給を休止する前に、低電圧バッテリが低電圧回路網に確かに接続されていることを調べて、「低電圧」回路網のその後の給電が果たされるようにすることが重要である。
【0006】
これは、たとえば、赤信号の際に車両の推進用熱機関が切られ、運転者がアクセルペダルを再び踏んだときに素早く再始動する「アイドリングストップ」型のシステムによってエネルギーを節約するようにした車両の場合に言えることである。「低電圧」回路網の電気エネルギー供給の保障が「低電圧」蓄電池バッテリに頼るのみである場合には、機関の自動停止を作動させる前にその「低電圧」蓄電池バッテリが断線していないことを確認することが欠かせない。
【0007】
特許文献1は、低電圧車載回路網の保障のために第2のバッテリを利用することを提案している。第2のバッテリを追加することは車両の重量増をもたらす上に車両の原価を引き上げるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1958851号
【発明の概要】
【0009】
本発明は、DC/DCコンバータによって相互接続された2つの電気回路網による供給を受ける自動車両の低電圧回路網のバッテリの接続の良否について、とりわけ回路網のいずれか一方が他方の回路網からコンバータを通して充電されるバッテリを備える場合に、そのモニタリングを行うシステムを提案することを目的とする。DC/DCコンバータを通して供給を受ける回路網はしばしばスタータを備えるが、一般にエネルギー発生装置(オルタネータまたはオルタネータ兼スタータなど)は備えておらず、これらは第1の電気回路網の方に含まれる。
【0010】
提案されるモニタリング装置は信頼性があり、2つの回路網の電気構成品および負荷機器に障害をもたらさないものでなければならず、さらに低い原価で、しかも車両の重量増をまねくことなしに設置できるものでなければならない。
【0011】
そのため、本発明は、直流電圧/直流電圧(DC/DC)コンバータによって相互接続された2つの電気回路網が装備されたシステムにおける電気バッテリの断線の検出方法であって、バッテリは2つの回路網のいずれか一方に属しており、コンバータはバッテリの充電を可能とするものである、すなわちバッテリを充電できるように接続されている検出方法を提案する。
【0012】
より一般的には、コンバータの操作は、コンバータの動作中はバッテリが含まれる回路網に対してエネルギー供給を行うように、そしてコンバータが休止したときにバッテリが回路網に供給できるようにバッテリを充電するように構成される。
【0013】
バッテリが含まれる回路網にコンバータから付与される直流電圧成分に所定の電圧信号を付加し、バッテリを通過する電流を測定して、付加した電圧信号に対応する電流強度信号をその電流の中から探索することでバッテリが確かに回路網に接続されているか調べる。
【0014】
システムは、たとえば電気推進式自動車両またはハイブリッド推進式自動車両であることができる。コンバータは、時間間隔をおいてバッテリに充電するように構成することができ、バッテリはバッテリがその一部をなす回路網に対して別の時間間隔で必要に応じて供給を行う。バッテリに関連した回路網の定格動作電圧は他方の回路網の定格電圧よりも低いことが好ましい。好ましくは、この他方の回路網は、より高い定格電圧の第2のバッテリを備える。本明細書においては、別段の指定がある場合を除き、「バッテリ」という用語は、既定では、コンバータから電圧供給を受ける側の回路網、すなわち定格電圧が低い方の回路網に属するバッテリのことをいう。定格電圧が高い方の回路網はバッテリを備えることができるが、その場合、そのバッテリは「第2のバッテリ」と称されることが好ましい。
【0015】
有利な実施形態によれば、付加する電圧信号および探索する強度信号は周期信号である。
【0016】
それらの信号はたとえば周期的な交番信号であるか、または符号(正負の符号)が一定の周期信号であることができる。電圧信号の振幅は、コンバータおよびバッテリによる供給を受ける回路網の定格電圧に対して小さいことが好ましく、たとえば14V前後の定格電圧の回路網に対して振幅は2V未満である。電圧信号の振幅はたとえば0.2Vないし1.5V、好ましくは0.2Vないし0.5Vであることができる。周期信号の周波数はたとえば20Hzないし100Hzであることができる。周期信号の周波数は一定であることができる。別の変形実施形態によれば、特定パターンの周期信号、たとえば従来型の熱機関車両のオルタネータによって誘導されるものに近い誘導電流雑音を得ることのできるパターンを送ることができる。そうすることにより、オルタネータ付きのその種の車両のためにすでに開発済みの強度信号検出ストラテジーを利用することができる。
【0017】
特に有利な実施形態によれば、付加する電圧信号は所定の符号を持つ電圧レベルの変更であり、強度信号は所定の符号を持つ電流レベルの変動である。それは所定の符号を持つ電圧レベルの突然の変化であり、電流信号は所定の符号を持つ電流レベルの変動である。電圧レベルの変動幅は、コンバータおよびバッテリによる供給を受ける側の回路網の定格電圧に対して小さいことが好ましい。たとえば0.2Vないし2V、好ましくは0.2Vないし1Vの振幅の電圧ピッチを適用することができる。
【0018】
一実施形態によれば、バッテリを通過する電流の絶対値が電流閾値に満たない場合にのみ、電圧信号を付加し、電流信号の探索を行う。電流閾値は一定であることが好ましい。たとえば、バッテリを通過する電流の絶対値が時間閾値を超える時間にわたって電流閾値を下回るときは電圧の交番成分の付加をトリガして、電流が電流閾値を下回っている間はその付加を続けることができる。
【0019】
別の変形実施形態によれば、バッテリを通過する電流の絶対値が電流閾値に満たない場合は、バッテリがその回路網に接続されている限り、回路網に電流を流すことをバッテリに強いるように、バッテリを備える回路の供給電圧を下げることができる。その場合、そのバッテリを通過する電流を読み取るだけで、バッテリの断線の有無を検出することが可能となる。
【0020】
一実施形態によれば、対応する電流信号を検出しないままに電圧信号を追加した後、電圧信号の振幅を増大させて改めて検出を試みる。電圧信号の振幅の増大を一回のみ行うことも、または複数の振幅レベルを用意して順に試すこともできる。
【0021】
電圧信号は、コンバータの出力電圧を制御する指令値に付加することができる。ここでコンバータの出力電圧とは、コンバータがバッテリを含む回路網に対して付与する電圧のことをいう。
【0022】
別の実施形態によれば、電圧信号は専用の発振回路によって生成し、コンバータの出力電圧に付加することができる。
【0023】
本発明はまた、2つの異なる電圧レベルを有し、直流電圧/直流電圧(DC/DC)コンバータによって相互接続された2つの電気回路網が装備された自動車両も提案する。コンバータはバッテリに充電するように構成され、車両はバッテリを通過する電流強度の推定装置を備える。好ましくは、推定装置は、バッテリのマイナス端子とグランドの間に直接つながれた − すなわち、他の電気負荷も、バッテリ端子と回路のグランドの間に挿入された電気負荷の接続ポイントも介さずに − 、またはバッテリのプラス端子とグランドの間に直接つながれた電流センサである。
【0024】
車両は、コンバータからバッテリに付与される直流電圧に所定の電圧信号を付加するための手段を備え、強度推定装置によって計測された電流信号の中から付加した電圧信号に対応する電流信号を検出することができるフィルタ手段を備える。対応する強度信号とは、バッテリが回路網に正しくつながれているとき、電圧信号が送出されたときに通常得られる電流強度信号をいう。典型的には、電圧信号が周期的であれば、強度信号はそれとほぼ同一の周波数で周期的であることができる。電圧信号が電圧レベルの急な変化である場合、強度信号はそれまでの強度曲線の位相変位であることができ、その符号は電圧レベルの変化の符号によってあらかじめ決まるものであることができる。
【0025】
車両は、バッテリを通過する電流強度の絶対値が強度閾値を下回ったときに電圧信号の付加をトリガするように構成された電子コントロールユニットを備えることができる。好ましくは、電圧信号の付加は、バッテリを通過する電流強度の絶対値が所定の時間、たとえば1秒超、または1秒ないし5秒の時間にわたって強度閾値 − 強度閾値はたとえば、電流測定装置の精度に応じて0.5Aないし2Aであることができる − を下回ったままである場合にトリガされる。
【0026】
有利には、電子コントロールユニットは、コンバータの直流出力電圧に電圧信号が付加されているにもかかわらず、時間閾値を超える時間にわたって強度信号が検出されない場合には、警報メッセージが送出されるように構成される。警報メッセージは、たとえば、運転者に向けて表示されるようにしたり、合成音声によって送出されるようにしたりすることができる。電子コントロールユニットの警報メッセージは、バッテリが断線していても、コンバータを通してバッテリの回路網に供給を行う電気回路網の通電解除を禁止することなど、車両が無事目的地までたどり着けるようにする保護措置の実施をもたらすものであることができる。保護措置は、熱機関のアイドリング回転数の引上げを含むことができる。保護措置は、たとえば、熱機関がバッテリによる供給を受けるスタータを使用する場合には、車両の一時停止時に熱機関を自動的に切る「アイドリングストップ」手順の禁止を含むことができる。
【0027】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、限定的でない例としてのみ示し、添付の図面を参照して行う以下の説明を読むことによって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による検出装置が装備された車両の概略図である。
【
図2】本発明による検出装置が装備された車両の電気系統の概略図である。
【
図3】本発明による検出システムの動作アルゴリズムの簡易化した例である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に示すように、本発明による車両は第1の電気回路網3と第2の電気回路網2とを備え、第1の電気回路網3である高電圧回路網は、第2の回路網2である「低電圧」回路網2よりも明らかに高い電圧、たとえばその1.5倍以上、好ましくはほぼ2倍の電圧で動作する。
【0030】
図示した例では、車両1は「マイルドハイブリッド」型車両であり、すなわち、車両を走らせることができる熱機関5を備え、車両の走行駆動トルクを提供する電動機として寄与できるように車両の一部の車輪に連結された少なくとも1つの電気機械6を備える。電気機械6は、たとえば回生ブレーキと呼ばれる制動の際に電気エネルギーを回収するためなどに発電機としても、またはBTバッテリのエネルギー管理や充電の必要に応えるために電気回路網2に供給を行うオルタネータの役割を果たすためにも動作する。
【0031】
熱機関は、典型的には、熱機関が停止状態にあるときのその回転の機械的な開始動作を、とりわけ、冷態にある熱機関5の始動を果たすのに必要な出力を電気回路網3(BattHT11と電気機械6によるトルク)が有していない場合の初期始動に関して行うことができるスタータ8と連係することができる。スタータ8への供給はたとえば低電圧回路網2によって行う。
【0032】
その他の変形実施形態によれば、熱機関5は、スタータ8と連係しないものであってもよく、高電圧回路網3に接続されて前述の他の機能を果たす電気機械6によって直接始動されるものであってよい。
【0033】
第2の電気回路網2は、低電圧グランド21に接続され、第1の低電圧バッテリ10による供給を受ける。低電圧バッテリ10は、たとえば12ないし13ボルトの定格動作電圧を有することができる。第1の高電圧電気回路網3は高電圧バッテリ11を備えており、場合によって低電圧グランド21と同じグランドであることができる高電圧グランド22に接続される。
【0034】
他の電源がない場合、たとえば電気機械6による発電が行われない場合には、高電圧回路網3はバッテリ11による供給を受ける。直流/直流コンバータ4(「DC/DCコンバータ」)は、高電圧回路網3から低電圧回路網2に直流電流を送ることができるように、低電圧回路網2と高電圧回路網3の間に挿入される。コンバータ4は、第2の回路網2によって低電圧電流の供給を受ける電子コントロールユニット12によって制御される。コンバータ4は、ハードウェア的な方法によって、または調整ソフトウェアに組み込まれた戦略によって実現される交番電圧発生器13であって、第2の低電圧回路網2に送られる直流電圧に回路網2に送られる平均直流電圧よりも小さな振幅の交番成分を重畳することができる交番電圧発生器を備えることができる。
【0035】
コンバータ4が第2の回路網2に電流を送らないフェーズにあるときは、第2の回路網2は低電圧バッテリ10のみから供給を受ける。第2の低電圧回路網2は、典型的には、運転者が車両を運転し、車両の各種スイッチ類にアクセスすることを可能にするマンマシンインターフェース23などの低電圧負荷を備え、運転者および搭乗者の快適性に寄与するその他の負荷、たとえば暖房システム、音響システムを含むことができる負荷14を備え、さらに、制動システムまたは進路コントロールシステム、操舵補助システムまたは視認性システムなどの車両安全システムを備えることができる。
【0036】
低電圧バッテリ10は、バッテリ10のマイナス端子にねじ止めされた強度推定装置7、たとえば電流センサ7に接続される。電流センサ7によって測定された強度の値Iは電子コントロールユニット12に送信される。
【0037】
図1に示した実施形態では、電圧コンバータ4は、コンバータ4の出力電圧、すなわち、コンバータ4が第2の低電圧回路網2とのその接続端子間に印加する電圧を変更することができる信号発生器13を備える。信号発生器13は、たとえば、交番信号またはそれとは別の、迅速に、かつ所定の時間にわたって適用される出力電圧の位相変位のようなタイプの信号などの周期信号をコンバータの出力電圧に付加することができるように構成することができる。
【0038】
図2は、低電圧バッテリ10が低電圧回路網2から外れていないか検出できる本発明による検出システムの動作を模式的に描いたものである。
図2には
図1と共通の要素が見られ、同じ要素には同じ参照符が与えられている。
図2には、低電圧回路網の一部だけがコンバータ4の出力とともに示されている。
【0039】
図2に示した例では、コンバータ4は電子コントロールユニット12から指令U
consが送られることによって制御され、低電圧回路網2に直流出力電圧U
sを付与する。この直流電圧U
sは加算器18の第1の入力に送られ、加算器18の第2の入力はコンバータ4の外部の交流電圧発生器16によって付与される電圧U
varを受け取る。交流電圧発生器16は、たとえばコンバータ4から供給を受けるか、またはバッテリ11から直接供給を受ける。
【0040】
これにより、低電圧回路網2は、加算器18の出力側で、連続成分と、連続成分の平均値と比べて振幅の小さい振動成分とを有する電圧U
BTによる供給を受ける。ただし、選ばれる振幅は、低電圧バッテリ10を通過する電流Iとほぼ同じ周波数の変動をもたらすことができる類のもので、電流強度のその振動の振幅は、電流センサ7がその固有の精度に応じて検出できるものであり、たとえば1A前後の振幅、または数アンペア、たとえば1ないし3Aの振幅である。
【0041】
電子コントロールユニット12は、バッテリ10が低電圧回路網2に正しく接続されているとき、とりわけ、バッテリのプラス端子9がDC/DCコンバータの出力に接続され、バッテリ10のマイナス端子が低電圧グランド21に正しく接続されているときには、電流Iのその交番成分を検出できるように構成される。バッテリ10がそのいずれかの端子で回路網2から外れているときは、交流電圧発生器16によって付与される交番電圧信号に対応する交流成分がバッテリ10を通過することはなくなる。
【0042】
電流センサ7はたとえばバッテリ10のマイナス端子と低電圧グランド21の間に挿入することができる。その他の変形実施形態では、電流センサはバッテリ10の+端子上に直接配置することができよう。
【0043】
低電圧負荷の動作に過度な障害を与えないために、電流センサ7によって検出される電流が絶対値で閾値強度を超えている間はコンバータ4からの直流電圧によって低電圧回路網に供給を行うようにすることができる。この閾値強度を上回っていれば、強度の符号に応じて、バッテリが負荷14の方へ電流を流しているか、またはバッテリがコンバータ4からの充電電流を受けているかのいずれかであり、いずれにしてもバッテリは回路網2に接続されているものと即座に判断することができる。
【0044】
この閾値強度に満たないときは、DC/DCコンバータがバッテリ10の充電を行うことなしに回路網2の負荷全体に給電しているか、またはバッテリが回路網2に正しく接続されていないかのいずれかであると判断することができる。そこで、この閾値強度未満のときは、電子コントロールユニット12はそれを受けて交番信号U
varの発生をトリガし、それと同時に電流センサ7から来る強度信号Iのフィルタリングを行って交番電圧信号U
varに対応する交流成分を探索することができる。
【0045】
ある種の変形実施形態によれば、まずは交番電圧信号U
varの第1の振幅を追加し、その振幅では対応する強度信号の検出を得られない場合は、電流計7で測定される強度のレベルに対応する信号の探索を続けながら、さらに信号U
varの振幅を一度または数度にわたって増大させる方法をとることができる。信号U
varの振幅が一定の値に達しても可変強度信号が依然として検出されないときは、電子コントロールユニット12は、運転者に対する警報をトリガするなどしてバッテリの接続不良を運転者に警告することができ、さらに非常動作モードをトリガして、車両の各種コントロール類が完全に切られるまでコンバータ4が稼働し続けるようにして、車両が目的地に到着する前に走行不能となるのを防ぐこともできる。
【0046】
ある種の実施形態では、電流センサ7に接続されているものと同じ電子コントロールユニットによって電圧信号を制御することが可能とされ、それによって、時として生じる電流強度の振動からのフィードバックによって電圧信号の振幅を制御できるようにして、電流強度のその振動の発散を防ぐようにする。
【0047】
図3は、バッテリ10が回路網2に確かに間違いなく接続されているかを電子コントロールユニット12によって推定できるようにする電子コントロールユニット12の動作モードをアルゴリズム20の形で示した概略図である。
図3のアルゴリズム20に示したように、電子コントロールユニット12は、バッテリを通過する強度の絶対値が閾値I
min超であるかどうかを調べるために定期的にテスト21を行う。
【0048】
この絶対値が強度閾値I
min超である限り、電子コントロールユニットは強度の絶対値の監視を続け、DC/DCコンバータ4の出力側の交番電圧信号の発生をトリガしない。
【0049】
強度の絶対値が強度閾値I
min以下となったとき、すなわちテスト21が「No」の場合にはステップ22に進む。すると、電子コントロールユニットが電流センサ7の信号を解析し、DC/DCコンバータによって直接生成されるか、またはDC/DCの出力電圧に電圧を付加する装置によって生成される所定の信号に対応する強度信号をその中から探索する。電流強度信号(ここでは「I
alternatif」と記す)が検出されたときは、電子コントロールユニットはステップ21に戻り、バッテリを通過する電流強度の絶対値の監視を続ける。電流強度信号が検出されないときは、電子コントロールユニットはステップ25に進むことができて、そこでバッテリが外れていることを運転者に警報し、かつそこで、運転者が目的地に到着したと考えて明示的に車両の停止を要求するまで車両が走り続けることができるように、必要に応じて保護措置をトリガする。
【0050】
その他の変形実施形態によれば、テスト22の際に電子コントロールユニットによって探索対象の電流強度信号が検出されない場合は、電子コントロールユニットはステップ23に進むことができ、そこでDC/DCの出力電圧信号の振幅の増大を命じる。
【0051】
次いでコントロールユニットは、たとえばステップ24で、電圧信号の振幅がそれを超えないことが望ましいとされる閾値に達していないか調べることができる。信号の許容最大振幅に達してもなお強度信号が検出されない場合は、バッテリが外れていることを運転者に警告する警報25に進む。達していなければ、電圧信号の振幅を増大させた後、強度信号の探索ステップ22に戻り、電流強度信号を検出できるようになったか改めてテストする。
【0052】
本発明は説明した実施例だけに限定されるものではなく、様々な変形形態へと展開させることが可能である。DC/DCコンバータによって相互接続された2つの回路網は互いに接近した定格電圧で、さらにはほぼ同一の定格電圧で動作することができる。
【0053】
DC/DCコンバータの直流電圧に重畳する形で所定の電圧信号を常時送出することを企図することができる。バッテリを通過する強度の絶対値がある閾値を下回ったときは、所定の電圧信号は時間を置いてしか送出しないことを企図することができる。
【0054】
別の変形実施形態によれば、弱い交番成分を連続的に送出し、対応する強度信号を検出できない場合には、次いでその成分の振幅を増大させることができる。交番強度成分を連続的に探索するか、または強度の平均絶対値がある閾値よりも低くなったときにのみ特定の電流強度信号を探索することを企図することができる。コンバータの出力直流電圧に付加される電圧信号は、オルタネータによって通常発生する雑音電流の一定の特徴が再現されるように選ばれた周期信号、定周期信号または複合信号であることができる。電圧U
var信号は交番でない周期信号であることも、さらには矩形波、すなわち立上りエッジを有する形で印加される電圧の増分であることもでき、それに対応する符号を持つ電流強度の増分の検出を試みられる。その場合、探索対象の電流強度信号は交番ではなく、したがって、たとえば電流強度の絶対値の変更を探索することになる。換言すれば、立上り電圧エッジまたは立下りエッジを印加することにより、コンバータ4によって付与される電圧を好ましくはできるだけ速やかに上昇または低下させて(回路網2の負荷に対するその電圧の変更の影響を抑えながら)、新たな一定の値にその電圧値を確定する。コンバータによって付与される電圧のこの迅速な変更は、コントロールデバイス12により指令電圧の変更によって制御されることが好ましい。許容される代替方案として、このコンバータ出力電圧の変更はDC/DCコンバータ内部に統合されてよい。
【0055】
この最後に挙げたタイプの信号の利点は、ゼロでない電流を検出するだけという簡易な断線検出戦略を利用できるところにあり、バッテリ10は、コンバータ4の出力電圧のその変移に対して、選ばれる電圧の変移に応じて、回路網2への供給の連続性を保障するために放電するか、または充電するかして反応する。さらに、コンバータの出力電圧の変更の振幅をバッテリの反応の検出に十分でありながら小さくとどめることができれば、低電圧回路網2の電気負荷レベルに生じる障害を最小化することもできる。
【0056】
本発明によるバッテリの接続不良の検出システムは、バッテリの接続が悪い場合には運転者に警告することができる上に、低電圧バッテリを使用することなしに車両が無事目的地までたどり着けるようにする車両の動作保護手順を用意することもできる。