特許第6306186号(P6306186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルファ−ラヴァル・コーポレート・アーベーの特許一覧

<>
  • 特許6306186-ビール発酵の方法および装置 図000002
  • 特許6306186-ビール発酵の方法および装置 図000003
  • 特許6306186-ビール発酵の方法および装置 図000004
  • 特許6306186-ビール発酵の方法および装置 図000005
  • 特許6306186-ビール発酵の方法および装置 図000006
  • 特許6306186-ビール発酵の方法および装置 図000007
  • 特許6306186-ビール発酵の方法および装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306186
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ビール発酵の方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C12C 11/00 20060101AFI20180326BHJP
   C12C 13/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C12C11/04
   C12C13/00
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-537192(P2016-537192)
(86)(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公表番号】特表2016-531571(P2016-531571A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】EP2014066222
(87)【国際公開番号】WO2015032551
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2016年2月26日
(31)【優先権主張番号】13183455.8
(32)【優先日】2013年9月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ−ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミッケル・ノアドクヴィスト
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・カイル・ドルトン
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−176790(JP,A)
【文献】 特開平08−056565(JP,A)
【文献】 におい・かおり環境学会誌, (2013.01), 44, [1], p.13-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C 11/00−11/11
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦汁および酵母を容器(2)に入れて(31)発酵プロセスを開始するステップであって、前記麦汁および前記酵母が容器内容物(3)を形成する、ステップと、
オンライン測定装置(100)に含まれ、かつ中赤外分光法によって前記容器内容物(3)の全反射減衰を検知するために前記容器(2)に直接接続されたセンサ(9)で、前記容器(2)内に存在する時の前記容器内容物(3)の抽出物レベル(E)を表す第1抽出物値(A)を測定するステップ(32)と、
前記第1抽出物値(A)に応じて混合装置(6,7)を自動的に制御して(35)、前記容器内容物(3)の混合を実施するために、前記容器(2)から容器内容物(3)を取り出し、前記容器(2)へと再注入するステップと、
を含むビール発酵の方法。
【請求項2】
前記混合装置(6,7)を制御するステップ(35)が、
クロッピングを開始するための前記発酵プロセスのプロセスパラメータ(P)の第1レベル(P1)を決定するステップ(351)と、
混合を停止するためのプロセスパラメータの第2レベル(P2)を決定するステップ(353)と、
前記プロセスパラメータ(P)を監視するステップ(355)と、
前記プロセスパラメータ(P)が前記第2レベル(P2)に達したときに前記混合装置(6,7)を自動的に停止するステップ(357)と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセスパラメータ(P)が時間(t)であり、前記第1レベル(P1)が、
‐前記発酵プロセスの間に、第1の時点(t)での前記第1抽出物値(A)を測定し、第2の時点(t)での前記容器内容物(3)の抽出物レベル(E)を表す第2抽出物値(B)を測定するステップ(3511)と、
‐2つの時点(t,t)での前記第1抽出物値(A)および前記第2抽出物値(B)から抽出物レベルが所定の抽出物レベルに到達するであろう未来の時点(TLE)を直線的に推定するステップ(3513)と、
によって決定される未来の時点(tLE)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセスパラメータの前記第2レベル(P2)が、前記プロセスパラメータの前記第1レベル(tLE)より前の未来の時点(t)であり、
‐所定の期間(ΔtLE)だけ前記第1レベル(tLE)を低減するステップ(3515)
によって決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセスパラメータ(P)が抽出物(E)であり、前記プロセスパラメータの前記第2レベル(P2)が前記第1レベル(P1)の抽出物より高い抽出物値である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセスパラメータの前記第1レベル(tLE)に達したときにクロッピングを開始するステップ(359)を含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
‐前記容器(3)から酵母を連続的に除去することによってクロッピングするステップ(359)と、
‐除去された酵母の酵母濃度レベル(Y)を測定するステップ(361)と、
‐所定の酵母濃度(Y)に達したときにクロッピングを自動的に停止するステップ(363)と、
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
‐前記容器(2)の充填レベルを検知するステップ(311)と、
‐充填の間に第1充填レベル(F1)が検知されたときに、前記混合装置(6,7)を第1フローレベル(W1)に自動的に設定するステップ(313)と、
‐充填の間により高い第2充填レベル(F2)が検知されたときに、より高い第2フローレベル(W2)へと自動的に上昇させるステップ(315)と、
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
‐前記オンライン測定装置(100)で前記容器内容物(3)の総ジアセチルまたは総VDKのレベル(V)を測定するステップ(367)と、
(i)前記第1抽出物値(A)の変化速度が所定レベルを下回り、かつ
(ii)前記総ジアセチルまたは総VDKのレベルが所定レベルを下回ったときに、
‐前記容器内容物(3)のクラッシュ冷却を自動的に開始するステップ(369)と、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
‐ジアセチル変換を促進するために前記混合装置(6,7)を第3フローレベル(W3)に自動的に設定するステップ(365)
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
‐クラッシュ冷却が開始されたときに、冷却を促進するために前記混合装置(6,7)を第4フローレベル(W4)に自動的に設定するステップ(371)
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
発酵プロセスの間に少なくとも麦汁および酵母の混合物を含む容器内容物(3)を保持する容器(2)と、前記容器(2)内に存在する時の前記容器内容物(3)の抽出物レベルを表す第1抽出物値(A)を得るために、中赤外分光法によって前記容器内容物(3)の全反射減衰を検知するための前記容器(2)に直接接続されたセンサ(9)を含むオンライン測定装置(100)と、前記容器内容物(3)を混合するために、前記容器(2)から内容物を取り出し、前記容器(2)へと再注入するように構成された混合装置(6,7)と、を備え、前記オンライン測定装置(100)が、少なくとも前記第1抽出物値(A)に応じて少なくとも前記混合装置(6,7)を自動的に制御する制御装置(10)を含む、ビール発酵用装置(1)。
【請求項13】
前記制御装置(10)が、データ処理ユニット(101)と、前記処理ユニット(101)によって実行するための制御データを保持する固定データメモリ(102)とを備え、前記制御装置(10)が、請求項1から11のいずれか1項に記載された方法のステップのいずれか1つを実施するために前記装置(1)を制御するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール発酵の方法、およびビール発酵装置に関する。より具体的には、本発明は、内容物の撹拌によって作動するビール発酵槽の効率の上昇に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の醸造は、その他のタンク形状も使用するが、典型的には大きなシリンドロコロニカルタンク内での発酵を含む。麦汁は、醸造所で製造され、冷却されて通気された状態で発酵タンクに移される。また、通常、酵母がタンクに加えられる。つまり、麦汁が供給パイプを通じてタンクに供給されるときに酵母が麦汁に加えられる。実際の発酵プロセスは、酵母を利用して麦汁中の発酵性抽出物(糖)をエタノール、CO、および多くのフレーバー化合物に変換することを含む。プロセスの間、酵母によって排出される前駆体からビシナルジケトン(VDK)もまた形成される。望ましくない味のビールを製造しないために、タンク内容物が冷却されて、貯蔵容器に移動されるかまたはろ過までタンク内に残される前に、ビールの種類に応じて、十分低いレベルまでVDKを低減しなければならない。酵母の大部分は、冷却前(温クロッピング)または特定温度まで冷却した後(冷クロッピング)のいずれかに、低抽出物濃度に達すると、発酵槽から除去される。
【0003】
伝統的に、ビール発酵は、CO気泡、および反応熱を除去するために使用される冷却ジャケットによって発生する自然の対流による混合に依存してきた。しかしながら、シリンドロコロニカル発酵槽での商業的規模の製造では、混合しなければ、約60%の発酵性糖が消費された後に大部分の酵母沈殿物が円錐内に沈殿した状態で酵母が非均一に分散しているCO発生が開始される前の初期段階があることが示されている。したがって、後に、混合を発生させて酵母をより分散し、発酵時間を短縮するために、タンク内容物の再循環およびノズル装置を介したバルク液体への再注入に基づく多くの混合システムが提案された。
【0004】
依然として、麦汁中の抽出物レベル、すなわち発酵性糖の量、およびVDKの監視は、手動のサンプリングに基づいており、実験室でのこれらの変量の測定ならびに混合を開始する時点および混合を停止する時点は、典型的に、クロッピングの開始または停止、および冷却の開始などの主要な事象の間の定期的な順序によって制御され、実験室的測定の結果に基づいて行われる。
【0005】
WO2007085880には、モデル予測をプラントデータに合わせてモデルパラメータをアップデートするファジー論理に基づく手法を使用する、発酵槽の挙動を表す現象モデルを最適化する発明が記載されている。そのようなファジー論理に基づく手法は、温度などのいくつかの特徴、撹拌速度の調節等を自動的に制御するために、発酵ユニットにおけるオンライン測定に基づくいくつかのパラメータの較正を含む試行錯誤プロセスを使用する。そのアイディアは、オンライン測定値および実験室分析結果をプラント制御システムに接続されたコンピュータに記録して、プラントデータとモデル計算との間のずれを低減するようにパラメータ再較正を繰り返し実施するというものである。
【0006】
発酵プロセスを制御するためにパラメータ測定を使用するその他の提案が多くの特許文献において提案されている。
DE3927856には、発酵の間に、オンライン測定が例えば撹拌、加熱、および冷却を調整する一般的な方法が記載されている。
US4959228には、発酵の間の混合容器内の比重のオンライン測定について記載されている。
US20030008340には、ビール発酵時間を短縮するために、オンライン測定にバイオセンサを使用する方法について記載されている。
CN1733881には、ビール発酵プロセスに対するオンライン監視方法について記載されている。
US7078201には、発酵時間を短縮するために酸化還元電位を監視する方法について記載されている。
【0007】
しかしながら、提案された発酵プロセスは依然として最適化することができ、様々なプロセスステップで効率を高める余地があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007085880号
【特許文献2】独国特許出願公開第3927856号明細書
【特許文献3】米国特許第4959228号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第20030008340号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第1733881号明細書
【特許文献6】米国特許第7078201号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述の技術および従来技術の改善を提供することにある。したがって、本発明は、ビール発酵を自動化するための方法に関する。さらに具体的には、本発明のいくつかの実施形態は、発酵容器からサンプルを取り出して分析のために実験室に送る必要がないオンラインセンサ、すなわち容器内に存在する麦汁の測定を行うために接続されたセンサの使用を提案する。加えて、このセンサセットアップによって回収されるデータは、発酵プロセスの自動的制御に使用される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によると、本発明は、
‐麦汁および酵母を容器に入れて発酵プロセスを開始するステップであって、前記麦汁および前記酵母が容器内容物を形成する、ステップと、
‐オンライン測定装置で、前記容器内容物の抽出物レベルを表す第1抽出物値を測定するステップと、
‐前記第1抽出物値に応じて混合装置を自動的に制御して、前記容器内容物の混合を実施するために、前記容器から容器内容物を取り出し、前記容器へと再注入するステップと、
を含むビール発酵の方法に関する。
【0011】
1実施形態では、前記混合装置を制御するステップは、
‐クロッピングを開始するための前記発酵プロセスのプロセスパラメータの第1レベルを決定するステップと、
‐混合を停止するためのプロセスパラメータの第2レベルを決定するステップと、
‐前記プロセスパラメータを監視するステップと、
‐前記プロセスパラメータが前記第2レベルに達したときに前記混合装置を自動的に停止するステップと、を含む。
【0012】
1実施形態では、前記プロセスパラメータは時間であり、前記第1レベルは、
‐前記発酵プロセスの間に、第1の時点での前記第1抽出物値を測定し、第2の時点での前記容器内容物の抽出物レベルを表す第2抽出物値を測定するステップと、
‐2つの時点での前記第1抽出物値および前記第2抽出物値から抽出物レベルが所定の抽出物レベルに到達するであろう未来の時点を直線的に推測するステップと、
によって決定される未来の時点である。
【0013】
1実施形態では、前記プロセスパラメータの前記第2レベルは、前記プロセスパラメータの前記第1レベルより前の未来の時点であり、
‐所定の期間だけ前記第1レベルを低減するステップ
によって決定される。
【0014】
1実施形態では、前記プロセスパラメータは抽出物であり、前記プロセスパラメータの前記第2レベルは、前記第1レベルの抽出物より高い抽出物値である。
【0015】
1実施形態では、該方法は、
前記プロセスパラメータの前記第1レベルに達したときにクロッピングを開始するステップを含む。
【0016】
1実施形態では、該方法は、
‐前記容器から酵母を連続的に除去することによってクロッピングするステップと、
‐除去された酵母の酵母濃度レベルを測定するステップと、
‐所定の酵母濃度に達したときにクロッピングを自動的に停止するステップと、
を含む。
【0017】
1実施形態では、該方法は、
‐前記容器の充填レベルを検知するステップと、
‐充填の間に第1充填レベルが検知されたときに、前記混合装置を第1フローレベルに自動的に設定するステップと、
‐充填の間により高い第2充填レベルが検知されたときに、より高い第2フローレベルへと自動的に上昇させるステップと、
を含む。
【0018】
1実施形態では、該方法は、
‐前記オンライン測定装置で前記容器内容物の総ジアセチルまたは総VDKのレベルを測定するステップと、
(i)前記第1抽出物値の変化速度が所定レベルを下回り、かつ
(ii)前記総ジアセチルまたは総VDKのレベルが所定レベルを下回ったときに、
‐前記容器内容物のクラッシュ冷却を自動的に開始するステップと、
を含む。
【0019】
1実施形態では、該方法は、
‐ジアセチル変換を促進するために前記混合装置を第3フローレベルに自動的に設定するステップ
を含む。
【0020】
1実施形態では、該方法は、
‐クラッシュ冷却が開始されたときに、冷却を促進するために前記混合装置を第4フローレベルに自動的に設定するステップ
を含む。
【0021】
1実施形態では、前記オンライン測定装置は、前記第1抽出物値を得るために、中赤外分光法によって前記容器内容物の全反射減衰を検知するために前記容器に接続されたセンサを備える。
【0022】
第2の態様によると、本発明は、発酵プロセスの間に少なくとも麦汁および酵母の混合物を含む容器内容物を保持する容器と、前記容器内容物の抽出物レベルを表す第1抽出物値を得るために前記容器に接続されたセンサを含むオンライン測定装置と、前記容器内容物を混合するために、前記容器から内容物を取り出し、前記容器へと再注入するように構成された混合装置と、を備え、前記オンライン測定装置が、少なくとも前記第1抽出物値に応じて少なくとも前記混合装置を自動的に制御する制御装置を含む、ビール発酵用装置に関する。
【0023】
1実施形態では、前記容器内容物の前記第1抽出物値を得るために、中赤外分光法によって前記容器内容物の全反射減衰を検知するために前記センサが前記容器に接続されている。
【0024】
1実施形態では、前記制御装置は、データ処理ユニットと、前記処理ユニットによって実行するための制御データを保持する固定データメモリとを備え、前記制御装置は、上述の実施形態に記載されたステップのいずれか1つを実施するために前記装置を制御するように構成されている。
【0025】
本発明のその他の目的、特徴、態様、および利点は、以下の発明の詳細な説明および添付の図面から明らかになるであろう。
【0026】
ここで、添付の概略的な図面を参照して、例として本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】発酵装置の側面図である。
図2】実際の抽出物のオンライン測定の図を示す。
図3】本発明を一般的に表すフローチャートを示す。
図4】容器充填の間の混合制御のフローチャートを示す。
図5】クロッピングの前の混合制御のフローチャートを示す。
図6】冷却の前および間の混合制御のフローチャートを示す。
図7】発酵プロセスのための混合制御事象が示されたオンラインセンサ発酵カーブの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
一般的に言うと、本発明は、発酵内容物のプロセスパラメータ値のオンラインセンサ測定に基づくビール発酵プロセスの自動化を提案する。実際または見かけの抽出物の決定に関する実施形態について、さらに詳細に説明する。ビール発酵槽中の抽出物レベルは、直接測定され得るか、例えば比重、アルコール濃度、発酵槽から出るCOガス量、または実際もしくは見かけの抽出物と相関し、それを表すその他の時間依存性変数の測定によって推測され得る。実際の抽出物は、発酵され、アルコールの濃度低下作用を説明する糖の基準であり、初期および最終濃度から計算され得る。プロセスの1実施形態では、実際の抽出物は、中赤外線分光法の全反射減衰に基づく方法を使用して直接測定される。これは、液体比重計等を使用した従来の実験室的測定に対して明白な利点を提供し、オンライン測定を可能にする。実際の抽出物は通常、発酵の間、0〜25°P(Plato)の範囲内に入る。
【0029】
いくつかの実施形態では、酵母クロッピング、すなわち酵母除去の間の酵母濃度のオンライン測定もまた採用され得る。除去された酵母は、最初は70〜80%の範囲内の濃度を有し得るが、クロッピングの間にカットオフ値に到達するまで低下する。
【0030】
オンライン測定はまた、総ジアセチル(ジアセチルおよびその前駆体)または総VDK濃度からなり得る。直接前駆体は、例えばa−アセト乳酸(AL)を含む。典型的に、総VDKは、冷却前には50〜200ppbの範囲内とすべきであり、続くプロセスが実施され得る。
【0031】
オンライン測定は、発酵内容物を混合するように構成された混合装置を作動するためになされる。好ましくは、混合装置は、ポンプを使用して容器から液体を引き出し、ノズル装置を介してバルク液体へと再注入することによって作用するジェット混合装置を含む。1つまたは複数のノズルを備えたノズル装置が容器内部に配置され、標準ノズルに基づき得るかまたはベンチュリ型であり得る。さらに、ノズルは固定され得る。代替として、回転ノズル装置が採用される。
【0032】
前記ノズルを出る線速度(ノズル出口で計算され、「外部」ノズルに基づくベンチュリ型に対するものである)は、5〜40m/sの範囲内であり得る。
【0033】
提案されるプロセスはまた、オンライン測定に基づく、混合装置の制御が可能な制御装置を含む。具体的には、制御装置は、ジェット混合装置の線速度を調節し、抽出物のレベルに関する測定に基づいて、可能であれば総VDLおよび酵母濃度に関する測定に基づいて、ジェット混合装置を開始および停止するように構成される。制御装置はまた、クロッピングのために混合装置を自動的に停止し、酵母クロップの除去のために使用されるポンプを開始および停止するように調整され得る。ポンプの開始は、温クロッピングの場合には抽出物測定によって起動され得、ポンプの停止は、容器から酵母を引き出すように構成されたラインである酵母クロップラインにおける酵母濃度の測定に基づき得る。
【0034】
1実施形態では、抽出物および総ジアセチル/VDKを測定するためのセンサは、サンプルが自動的に発酵槽のネットワークにおける発酵槽から引き出され、センサが搭載されたパイプを通して送られることにより、タンクごとにセンサが搭載される場合よりも必要なセンサが少ない集中測定システムに組み込まれる。
【0035】
ここで、図面を参照して例示的実施形態について説明する。
図1は、ビール発酵用装置1を概略的に図示する。発酵槽装置1に組み込まれた部材は単に機能的な目的に基づいて図示されたものであることに留意すべきである。装置1は、好ましくは図示されているようにシリンドロコニカル形状の容器2を備える。容器2は、容器2で起こる発酵プロセスの間、少なくとも麦汁および酵母の容器内容物混合物3を保持するように構成されている。通常、発酵プラントは、平行して運転される多数の容器またはタンクを有するが、単純化のために1つの容器のみに対して説明する。
【0036】
容器2は、底部に配置された少なくとも1つのポート4を有し、バルブシステム5によって、容器2に供給または充填するための1つまたは複数のパイプ11(管)に容器2の内部を接続する。また、装置1は、内容物3を循環させることによって容器内容物の撹拌をもたらすように、容器2から内容物を取り出し、その後容器2へと内容物を再注入するように構成された混合装置を備える。混合装置は、容器のポート4から容器内容物3を引き出すように接続されたポンプ6と、容器2の内部に配置され、好ましくは容器2の底部より上の高さに固定されたノズル装置7とを含む。混合装置6,7は、ノズル装置7を介して容器内に戻される流体の流速を測定するように構成されたフローメータ8もまた備え得る。ノズル装置7は、上述のような任意の種類のジェット混合装置であり得る。フローメータ8は、ポンプ6とともに制御ループ80に配置され得る。ポンプ6は、「ミキサポンプ」6とも称される。
【0037】
オンライン測定装置100は、容器内容物3が容器2内に存在するときに、容器内容物3の第1抽出物値を測定するために組み込まれる。オンライン測定装置100は、容器2に接続され、容器2における発酵プロセスの時間依存性変数を検知するように構成されたセンサ9を含む。時間依存性変数は、容器内容物3の抽出物レベルと直接相関し、該レベルを表す。センサ9は、オンライン測定装置100の一部であり、センサ9からの測定信号を受信し、計算を実施して発酵プロセスの制御信号を提供する制御装置10に接続されている。
【0038】
先に説明したように、抽出物サンプリングは、煩雑なものであり、手動プロセスであった。容器内容物を抽出してその抽出物レベルを検査するよりもむしろ、制御装置10と組み合わせられたセンサ9を採用することが提案される。センサ9は、容器2から出る例えばアルコール濃度もしくはCOガス、または容器内容物3の抽出物レベルと相関し得る任意のその他の変数を測定するように構成され得る。
【0039】
1実施形態では、センサ9は、全反射減衰(ATR)を採用する光学センサを含む。ATRを採用するセンサは、光学結晶を含み、結晶内の全内部反射の特性を利用する。光は、結晶の一端から前面に対して適当な角度で入射し、全内部反射によって出射端まで結晶内部を伝搬し、そこで光が回収される。検査すべき容器内容物3を前面に接触させて配置することによって、検出器へと通過する光の量および特性が影響または減衰され得る。結晶の前面と容器内容物3との間の界面における反射点で、エバネッセント波が発生する。エバネッセント波は、容器内容物3へと最大数μm伸長し、正確な値は、光の波長、入射角、およびATR結晶および容器内容物3の屈折率によって決定される。したがって、もたらされる減衰は、容器内容物3の光学特性に依存する。さらに、様々な波長に対してこのプロセスを実施することによって、容器内容物3の特徴的プロファイルが得られる。これは、中赤外(MIR)分光法によって実施され、本明細書に記載されるような容器内容物、すなわち麦汁および酵母を含む発酵槽に適用した場合に非常に信頼性のある検知結果を提供することが示されている。センサ9自体は、任意の適切な従来のATRおよびMIR系センサであり得る。
【0040】
ATR MIRセンサ9を利用して行われる測定は、抽出物のレベルと直接相関することがわかった。
【0041】
図2は、抽出物レベルの実験室測定と比較したATR MIRセンサを使用した実際の抽出物のオンライン測定を図示する。示される例は、5000hL実用量を有する製造規模の発酵槽におけるATR MIR系センサを使用してオンラインで測定される。1実施形態によると、センサ9は、フランジ接続(図示せず)を介して、容器2の壁にポート4から半分程度の高さに搭載される。
【0042】
図1に戻ると、制御装置10は、センサ9から測定データを受信する。さらに、制御装置10は、少なくともバルブシステム5およびミキサポンプ6に接続される。制御装置10は、マイクロプロセッサなどのデータ処理ユニット101と、少なくともバルブシステム5およびミキサポンプ6を制御する制御データを保持する固定データメモリユニット102とを備える。制御装置10は、メモリユニット102に記憶された関連コンピュータプログラムコードを有するコンピュータまたはPLCを備え得ることを理解すべきである。制御装置10は、容器2の横に存在するように図示されているが、代わりに、装置1のような複数の発酵装置を備える醸造所の中央に配置され、複数のセンサ9からの測定信号を受信し、また複数の別々の装置のポンプおよびバルブに制御信号を送信するように構成され得る。図1において破線で示されている測定信号ラインならびに制御および信号ラインは、有線または例えば電波で送信する無線であり得る。
【0043】
ここで、発酵槽制御プロセスの1つの例について説明する。一般的なビール発酵プロセスはよく知られているため、ビール発酵のステップの全てのプロセスが詳細に説明されるとは限らないことに留意すべきである。
【0044】
図3を参照すると、ステップ31、すなわち発酵プロセスを開始するために容器2に麦汁および酵母を入れるステップ31において、容器2の充填が開始される。麦汁および酵母は、容器内容物3を形成する。充填は、例えば、バルブシステム5を介して管11を通して実施される。フローメータ12(図1参照)は、容器2への内容物のフローを測定するために組み込まれ得る。代替として、または付加的に、容器2が懸架されるロードセル(図示せず)によって、容器2の充填レベルFを測定する手段が設けられ得る。
【0045】
ステップ33において、発酵プロセスの間、センサ9によって、容器内容物3の抽出物レベルEを表す第1抽出物値Aが測定される。前述のように、好ましくは、この測定は、ATR MIRセンサ9を用いて容器2内に存在する内容物3に対して実施される。
【0046】
ステップ35において、混合装置は、容器2内での内容物3の混合をもたらすように、測定値に基づいて制御される。
【0047】
本発明の1実施形態による図4を参照して充填ステップ31をより詳細に説明する。充填プロセスはまた、発酵プロセスの間の様々なパラメータの図を示す図7から推測され得る。
【0048】
ステップ311において、容器の充填レベルFが検知される。これは、ロードセルまたはその他の周知の手段によるフローメータ12からのデータを使用した積算(integration)によって実施され得る。充填の最初には、混合装置6,7は停止される。
【0049】
ステップ313は、充填の間に第1充填レベルF1が検知されると、混合装置6,7が第1フローレベルW1に自動的に設定されることを示す。1実施形態では、混合装置は、ノズル装置7が所定の麦汁の高さ、典型的にはノズル径の100から200倍に対応する高さと等しい量の麦汁で覆われると、ミキサポンプ6を使用して、5〜20m/sのジェット線速度に対応する流量で開始される。これは、図7における時点tに対応しており、第1充填レベルF1で起こる。充填レベルFは、曲線71によって示される。
【0050】
ステップ315において、混合装置のフローレベルは次いで、充填の間により高い第2充填レベルF2が検知されると、第2レベルW2、例えば典型的に10〜30m/sのジェット線速度に自動的に増加される。これは、図7における時点tに対応しており、充填レベルF2で起こる。
【0051】
ここで、図5を参照して、「暖かい」条件でのクロッピングで動作するプロセスに対して混合装置を制御するステップ35についてより詳細に説明する。
【0052】
ステップ351において、クロッピングを開始する発酵プロセスのプロセスパラメータPの第1レベルP1が決定される。1実施形態では、プロセスパラメータPは、抽出物Eであるかまたはそれに相関し、このステップは、クロッピングが開始される所定の抽出物レベルE=P1を設定することによって実施される。別の実施形態について以下でさらに説明する。
【0053】
ステップ353において、混合を停止するプロセスパラメータPの第2レベルP2が決定される。典型的に、混合の停止はクロッピングの前に実施すべきであるため、プロセスパラメータPの第2レベルP2は、第1レベルP1よりも高い抽出物レベルEを表す。
【0054】
ステップ355において、プロセスパラメータPの値が監視される。これは、現在の抽出物レベルEを決定するために、例えば、前述のATR MIRセンサ9を使用した反復検知によって行われ得る。
【0055】
ステップ357において、プロセスパラメータPが第2レベルP2に達すると、混合装置は自動的に停止される。
【0056】
ステップ359において、プロセスパラメータPが第1レベルP1に達したことが決定されると、クロッピングが続いて開始される。このステップは、好ましくはクロップポンプ13(図1参照)を使用することによって実施され、連続的に容器3から酵母を除去するステップを含む。
【0057】
ステップ361において、除去された酵母の酵母濃度レベルYが測定される。酵母濃度測定は、検知器14(図1参照)によって、例えばキャパシタンス、濁度の測定、または酵母濃度を推測することができる任意のその他の方法によって実施される。
【0058】
ステップ363において、醸造されるビールの種類に応じて変化し得る所定の酵母濃度Yに達すると、クロッピングが自動的に停止される。
【0059】
ここで、図5のフローチャートの右側に破線で示されたボックスを含む、この実施形態の変形例について説明する。容器内容物3の抽出物レベルEが曲線72で示されており、アルコール信号が73で示されている図7を参照する。この実施形態では、プロセスパラメータPは時間tであり、ステップ351において設定される第1レベルP1は、抽出物レベルではなくジェット線速度tLEである。クロッピングを開始する時間のターゲット点を構成するこの未来の時点tLEは、センサ9からの測定値を使用して設定される。
【0060】
ステップ3511において、抽出物値Eは、第1時点tでの第1抽出物値Aおよび第2時点tでの容器内容物3の抽出物レベルEを表す第2抽出物値Bを測定することによって、発酵の間の2つの時点で検知される。好ましくは、対応する抽出物レベルを得るために、抽出物値Eは、センサ9を使用して測定される。
【0061】
ステップ3513において、抽出物が抽出物限界レベルLEに到達すると、2つの時点t、tでの対応する抽出物レベルA、Bから未来の時点tLEの直線外挿法が実施される。抽出物限界LEとは、図7からわかるように、抽出物値が漸近線に近づくレベルを意味するものであり、発酵性糖が残っていない場合に得られる抽出物レベルを表す。
【0062】
ステップ3515において、第2レベルP2はまた、所定の期間ΔtLE、典型的に6〜24時間の範囲でプロセスパラメータレベルtLEを低減することによって、言い換えると、第2レベルtは、計算される未来にあるが、第1レベルtLEよりは前である。
【0063】
この実施形態は、必要な測定がより少なく、混合装置の制御のために監視するための特定レベルのプロセスパラメータを設立するために制御装置10による計算を利用するという利点を有する。より具体的には、限られた数の測定値でこれらの計算を行うことによって、レベルの設立に関して監視されるプロセスパラメータが単に時間tとなり得る。抽出物レベル値を得るための測定を行う適当な時点t、tは、好ましくは、時間tLEの信頼性のある計算値が与えられるように、図2に示される抽出物レベル曲線の実質的に直線的な傾きに安全に入るように選択される。当然ながら、測定は、必要に応じて精度を高めるために、2点よりも多くの時点で行われ得る。
【0064】
1実施形態では、容器内容物3の混合は、クロッピングの後、ジアセチル変換の間に実施される。このプロセスは図6に示される。
【0065】
ステップ365において、クロッピングが停止されると、ジアセチル変換を促進するために、混合装置は、第3フローレベルW3に自動的に設定される。このような実施形態では、図7からわかるように、混合装置は、時点tで、圧力測定によって推測されるかまたはシステム較正の間に得られる、典型的に10〜25m/sのジェット線速度に対応する、フローメータ8によって測定される流量で開始される。ジアセチル変換を促進するために混合装置を第3フローレベルW3に自動的に設定するこのステップは、クロッピングを冷条件で行う実施形態では、クロッピングの前に実施され得る。
【0066】
ステップ367において、容器内容物3の総ジアセチルまたは総VDKのレベルVが測定される。このステップは、制御装置10に接続された、容器に適当なバイオセンサ15を含む、オンライン測定装置100を使用して実施され得る。
【0067】
ステップ369において、抽出物レベルE’の変化速度が所定のレベルE’、例えば一日当たりE’=0.1−0.2°P(Plato)未満に入り、総ジアセチルまたは総VDKのレベルVが所定のレベルV、例えばV=50−200ppb未満に入ったときに、抽出物レベル容器内容物3のクラッシュ冷却が続いて自動的に開始される。冷却は、所望の終了温度に達するまで続けられる。1実施形態では、クラッシュ冷却プロセスを促進するために、冷却の間に混合が実施され得る。クラッシュ冷却とは、典型的に、残留する酵母を沈殿させるための容器内容物の冷却を指す。
【0068】
ステップ371において、混合装置は、例えば典型的に20〜35m/sのジェット線速度に対応する速度に冷却を促進するために、第4フローレベルW4に自動的に設定される。好ましくは、温クロッピングが実施されており、容器2から移動させる前にさらに酵母を除去することが望ましくない場合には、容器内容物3がターゲット温度に達したときに、混合装置は停止される。そうでなければ、冷却中の混合は、ターゲット温度に達する約6〜24時間前に、ターゲット温度より高い温度で停止すべきである。かわりに、クロッピングが「冷」条件で実施される場合、冷却の間の混合は、ターゲット温度に達する約6〜24時間前にターゲット温度より高い温度で停止すべきであり、酵母は、例えばキャパシタンス、濁度によって、または検出器14を使用して測定されるように、所望の酵母濃度に達するまでクロップポンプ13を使用して除去されるべきである。最終的に、ターゲット温度で所定の時間保持した後、容器2は空にされる。
【0069】
明細書において、本発明は、多様な詳細において多数の実施形態を参照して説明された。ビール発酵プロセスのその他の関連詳細は当業者に周知であり、明細書の説明は当業者が本発明を実施するために十分な記載である。また、与えられた実施例は、本発明のベストモードを示すためのものであり、特許請求の範囲の範囲内に入るその他の実施形態もまた考慮される。
【符号の説明】
【0070】
1 発酵装置
2 容器
3 容器内容物
4 ポート
5 バルブシステム
6 ポンプ
7 ノズル装置
8 フローメータ
9 センサ
10 制御装置
100 オンライン測定装置
101 データ処理ユニット
102 固定データメモリユニット
11 パイプ
12 フローメータ
13 クロップポンプ
14 検知器
15 バイオセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7