特許第6306188号(P6306188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306188
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】長時間作用型ケトプロフェン組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/216 20060101AFI20180326BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20180326BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   A61K31/216
   A61P29/00
   A61K47/14
   A61K47/44
   A61K9/08
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-538550(P2016-538550)
(86)(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公表番号】特表2016-539997(P2016-539997A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】US2014070336
(87)【国際公開番号】WO2015095045
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年6月22日
(31)【優先権主張番号】61/916,462
(32)【優先日】2013年12月16日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515230154
【氏名又は名称】ゾエティス・サービシーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】イーウィン,リチャード・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】フー,スティーヴン・エックス.
(72)【発明者】
【氏名】マコビッチ,スーザン・エム.
(72)【発明者】
【氏名】マニング,バートン・エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】セクリースト,ステファン・リー
【審査官】 小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−036409(JP,A)
【文献】 特表2001−524510(JP,A)
【文献】 特表2002−510336(JP,A)
【文献】 特表2010−508289(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1709232(CN,A)
【文献】 International Journal of Pharmaceutics,2007年 8月16日,Volume 341, Issues 1-2,p.50-57
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/216
A61K 9/08
A61K 47/14
A61K 47/44
A61P 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ケトプロフェンメチルエステルプロドラッグと、
b)カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、グリセロールトリアセテート、ヒマシ油、綿実油、ゴマ油、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、
c)任意に少なくとも1つの保存料と、
d)任意に少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤と、を含む、獣医用長時間作用型組成物であって、前記組成物が、単回の注射可能な投与後、最大で120時間にわたる疼痛、炎症の治療、及び/または熱の低減を提供し、前記組成物が溶液である、前記組成物。
【請求項2】
前記組成物は、単回投与注射可能な組成物である、請求項1に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
【請求項3】
前記獣医学的に許容できるトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである、請求項に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
【請求項4】
前記獣医学的に許容できるトリグリセリドは、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールトリグリセリドである、請求項に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
【請求項5】
前記獣医学的に許容できるトリグリセリドは、グリセロールトリアセテート、ヒマシ油、綿実油、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
【請求項6】
前記獣医学的に許容できるカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドは、ミグリオール812(登録商標)である、請求項に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
【請求項7】
前記獣医学的に許容できるジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールトリグリセリドは、ミグリオール840(登録商標)である、請求項に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの保存料をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの獣医学的に許容できる賦形剤をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
【請求項10】
最大で120時間にわたる熱、疼痛、及び/または炎症に関して動物を治療するための医薬の製造のための、
ケトプロフェンメチルエステルプロドラッグの使用であって、
前記医薬は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、グリセロールトリアセテート、ヒマシ油、綿実油、ゴマ油、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドを含み、前記医薬が溶液である、前記使用。
【請求項11】
前記医薬が、筋肉内注射または皮下注射によって投与される単回投与注射可能な医薬である、請求項10に記載の前記使用。
【請求項12】
前記注射可能な医薬は、筋肉内注射剤である、請求項11に記載の前記使用。
【請求項13】
前記注射可能な医薬は、皮下注射剤である、請求項11に記載の前記使用。
【請求項14】
前記動物が家畜である、請求項10に記載の前記使用。
【請求項15】
前記家畜がブタまたはウシである、請求項14に記載の前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケトプロフェンエステルプロドラッグと、少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、任意に、保存料及び/または獣医学的に許容できる賦形剤とを含む、新規の長時間作用型組成物に関する。本発明はまた、熱、疼痛、及び/または炎症を患う動物を該長時間作用型組成物で治療する方法も記載する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ケトプロフェンエステルプロドラッグと、少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、任意に、少なくとも1つの保存料及び/または少なくとも1つの獣医学的に許容できる賦形剤とを含む、新規の長時間作用型組成物に関する。本発明はまた、熱、疼痛、及び/または炎症を患う動物を、該長時間作用型組成物を投与することによって治療する方法も記載する。ケトプロフェンのプロドラッグならびにケトプロフェンは、当該技術分野において周知である。同様に、ケトプロフェン及びそのプロドラッグと併用され得る、多くの既知の局所用、経口、及び注射可能な組成物がある。本発明は、少なくとも1つのケトプロフェンエステルプロドラッグを含む、改善された長時間作用型組成物を提供する。具体的には、本長時間作用型組成物は、注射可能な組成物である。
【0003】
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、シクロオキシゲナーゼ酵素COX−1及びCOX−2を阻害し、それにより、熱及び疼痛の両方の発生の一因となるプロスタグランジンの合成を阻害する。ケトプロフェン、2−(3−ベンゾイルフェニル)−プロピオン酸(ラセミ化合物)
【化1】

は、熱、疼痛、及び/または炎症の治療において有用であるとして長い間認識されているNSAIDである(すなわち、解熱剤及び鎮痛剤)。鎮痛剤として、ケトプロフェンは、インドメタシン、メロキシカム、フルニキシンメグルミン、及びフェニルブタゾンなど、他の利用可能な高効力NSAID化合物と少なくとも同じくらい有効である。解熱剤として、ケトプロフェンは、メロキシカムよりも強力である。
【0004】
現在のNSAID治療は、1日1回投与法のために設計され、持続時間を含む有効性及び毒性によって測定されるとき、様々な程度の成功を収める。したがって、安定し、かつ有効な長時間作用型解熱及び/または鎮痛組成物、特に、単回注射投与後2〜5日間の有効性を提供することができる組成物の必要性がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、動物における疼痛、炎症、及び/または熱の治療で使用するための長時間作用型ケトプロフェン組成物を記載する。本長時間作用型組成物は、a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、任意にc)少なくとも1つの保存料と、任意にd)少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤とを含む。本発明の別の態様では、本長時間作用型組成物は、a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドとを含む。本発明のさらに別の態様では、本長時間作用型組成物は、a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、c)少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤とを含む。本発明のさらに別の態様では、本長時間作用型組成物は、a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、c)少なくとも1つの保存料とを含む。本発明のさらに別の態様では、本長時間作用型組成物は、a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、c)少なくとも1つの保存料と、d)少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】SIV熱モデルにおける直腸温度値を示す。
図1B】SIV熱モデルにおける直腸温度値を示す。
図1C】SIV熱モデルにおける直腸温度値を示す。
図1D】SIV熱モデルにおける直腸温度値を示す。
図2】SIVモデルにおける直腸温度値−有効性の開始を示す。
図3A】LPSの関節内注射によって誘発された跛行に対する徐放性ケトプロフェンメチルエステルの効果を示す。
図3B】LPSの関節内注射によって誘発された跛行に対する徐放性ケトプロフェンメチルエステルの効果を示す。
【0007】
本発明の別の態様では、ケトプロフェンエステルプロドラッグは、アルキルエステル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルなど)、ベンジルエステル、ニコチンアミドエステル、グリコールエステル(例えば、ポリエチレングリコールエステル、プロピレングリコールモノエステル及びプロピレングリコールジエステル、ならびにこれらの混合物)である。本発明の別の態様では、エステルは、アルキルエステル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル)、及びこれらの混合物である。本発明の別の態様では、エステルは、メチルエステルである。本発明の別の態様では、エステルは、エチルエステルである。本発明の別の態様では、エステルは、プロピルエステルである。本発明の別の態様では、エステルは、イソプロピルエステルである。本発明の別の態様では、エステルは、ベンジルエステルである。本発明の別の態様では、エステルは、ニコチンアミドエステルである。本発明の別の態様では、エステルは、グリコールエステル(例えば、ポリエチレングリコールエステル、プロピレングリコールモノエステル、プロピレングリコールジエステル、及びこれらの混合物)である。本発明の別の態様では、エステルは、ポリエチレングリコールエステルである。本発明の別の態様では、エステルは、プロピレングリコールモノエステル、プロピレングリコールジエステル、及びこれらの混合物である。本発明の別の態様では、エステルは、プロピレングリコールモノエステルである。本発明の別の態様では、エステルは、プロピレングリコールジエステルである。本発明の別の態様では、エステルは、プロピレングリコールジアステレオマーである。
【0008】
本発明の別の態様では、本長時間作用型組成物は、獣医用組成物である。本発明のさらに別の態様では、本長時間作用型組成物は、注射可能な獣医用組成物である。本発明のさらに別の態様では、本長時間作用型の獣医用の注射可能な組成物は、筋肉内注射可能な組成物である。本発明のさらに別の態様では、本長時間作用型の獣医用の注射可能な組成物は、皮下注射可能な組成物である。
【0009】
本発明の別の態様では、獣医学的に許容できるトリグリセリド(トリグリセリド様を含む)は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール(トリグリセリド様)、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、グリセロールトリアセテート(トリアセチン)、ヒマシ油、綿実油、ゴマ油、及びこれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらに別の態様では、獣医学的に許容できるトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、グリセロールトリアセテート、ヒマシ油、綿実油、及びこれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらに別の態様では、獣医学的に許容できるトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセロールトリアセテート、及びヒマシ油、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらに別の態様では、獣医学的に許容できるトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、及びトリアセチン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらに別の態様では、獣医学的に許容できるトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、及びヒマシ油、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらに別の態様では、獣医学的に許容できるトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである。本発明のなおさらに別の態様では、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドは、ミグリオール812である。本発明のさらに別の態様では、トリグリセリドは、グリセロールトリアセテートである。本発明のさらに別の態様では、獣医学的に許容できるトリグリセリドは、ヒマシ油である。本発明のさらに別の態様では、獣医学的に許容できるトリグリセリドは、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、グリセロールトリアセテート、ヒマシ油、及びこれらの混合物から選択される。本発明のさらに別の態様では、獣医学的に許容できるトリグリセリドは、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール及びトリアセチンを含む2つのトリグリセリドの混合物である。本発明のさらに別の態様では、獣医学的に許容できるトリグリセリドは、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール及びヒマシ油を含む2つのトリグリセリドの混合物である。本発明のさらに別の態様では、獣医学的に許容できるトリグリセリドは、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、具体的にはミグリオール840である。
【0010】
本発明のさらに別の態様では、本組成物は、少なくとも1つの保存料をさらに含む。本発明のさらに別の態様では、保存料は、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ベンジルアルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらに別の態様では、保存料は、ブチル化ヒドロキシトルエン、及びブチル化ヒドロキシアニソール、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらに別の態様では、保存料は、ブチル化ヒドロキシトルエンである。本発明のさらに別の態様では、保存料は、ブチル化ヒドロキシアニソールである。本発明のさらに別の態様では、保存料は、ベンジルアルコールである。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、本組成物は、少なくとも1つの獣医学的に許容できる賦形剤をさらに含む。本発明のさらに別の態様では、追加の獣医用賦形剤は、テトラグリコール、トランスクトール、コリフォールHS15、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ピロリドン、エタノール、ベンジルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0012】
本発明のさらに別の態様には、熱、疼痛、及び/または炎症に関して動物を治療する方法があり、a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、任意にc)少なくとも1つの保存料と、任意にd)少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤とを含む、獣医用長時間作用型組成物を、治療を必要としている該動物に投与することを含む。本発明のさらに別の態様には、熱、疼痛、及び/または炎症に関して動物を治療する方法があり、a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドとを含む、獣医用長時間作用型組成物を、治療を必要としている該動物に投与することを含む。本発明のさらに別の態様には、熱、疼痛、及び/または炎症に関して動物を治療する方法があり、a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、c)少なくとも1つの保存料とを含む、獣医用長時間作用型組成物を、治療を必要としている該動物に投与することを含む。本発明のさらに別の態様には、熱、疼痛、及び/または炎症に関して動物を治療する方法があり、a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、c)少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤とを含む、獣医用長時間作用型組成物を、治療を必要としている該動物に投与することを含む。本発明のさらに別の態様には、熱、疼痛、及び/または炎症に関して動物を治療する方法があり、a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、c)少なくとも1つの保存料と、d)少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤とを含む、獣医用長時間作用型組成物を、治療を必要としている該動物に投与することを含む。
【0013】
本発明のさらに別の態様には、熱、疼痛、及び/または炎症に関して動物を治療する方法があり、獣医用長時間作用型組成物を、治療を必要としている該動物に投与することを含み、ケトプロフェンエステルプロドラッグは、メチルエステル、エチルエステル、ベンジルエステル、ニコチンアミドエステル、ポリエチレングリコールエステル、プロピレングリコールモノエステル、プロピレングリコールジエステル、プロピレングリコールモノ及びジエステル、ならびにプロピレングリコールジアステレオマーからなる群から選択される。
【0014】
本発明の別の態様には、治療を必要としている動物に、有効量の本発明の獣医用長時間作用型組成物を投与することによって、動物における疼痛を治療する方法がある。本発明の別の態様には、治療を必要としている動物に、有効量の本発明の獣医用長時間作用型組成物を投与することによって、動物における熱を治療する方法がある。本発明の別の態様には、治療を必要としている動物に、有効量の本発明の獣医用長時間作用型組成物を投与することによって、動物における炎症を治療する方法がある。
【0015】
本発明の別の態様では、本長時間作用型組成物は、注射によって投与される。本発明のさらに別の態様では、本組成物は、注射可能な組成物である。本発明のさらに別の態様では、本注射可能な組成物は、筋肉内(IM)注射可能な組成物である。本発明のさらに別の態様では、獣医用の注射可能な組成物は、皮下注射可能な組成物である。
【0016】
本発明の別の態様では、ケトプロフェンプロドラッグの量は、約0.5〜12mg/kgの用量で動物に投与される。本発明のさらに別の態様では、ケトプロフェンプロドラッグの量は、約10mg/mL〜約300mg/mLに及ぶ。
【0017】
本発明のさらに別の態様には、治療を必要としている動物における疼痛、熱、及び/または炎症を治療するための薬剤の製造のための、本発明の長時間作用型組成物の使用がある。
【0018】
本発明の別の態様には、治療または予防を必要としている動物における疼痛、熱、及び/または炎症を治療または予防するための、a)式1、式2、式3、式4、式5、式6、及び式7、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるケトプロフェンプロドラッグと、b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、任意にc)少なくとも1つの保存料と、任意にd)少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤とを含む、長時間作用型組成物の使用がある。
【0019】
定義
本明細書に記載及び特許請求される本発明の目的で、以下の用語及び語句は、以下の通り定義される。
測定可能な数値変数に関連して使用される場合、「約」は、変数の指示値、及び指示値の実験誤差以内(例えば、平均の95%信頼区間内)または指示値の10パーセント以内のどちらか大きい範囲にある変数の全ての値を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「動物」は、別段の指示がない限り、個々の動物を指し、該個々の動物は哺乳動物である。具体的には、哺乳動物は、哺乳類の分類の成員である、ヒト及び非ヒトである脊椎動物を指す。非ヒト哺乳動物の非排他的な例としては、伴侶動物及び家畜が挙げられる。伴侶動物の非排他的な例としては、イヌ、ネコ、及びウマが挙げられる。家畜の非排他的な例としては、ブタ、ヤギ、ヒツジ、及びウシが挙げられる。好ましい家畜はウシ及びブタである。好ましい動物はブタであるが、2番目の好ましい動物はウシである。
【0021】
本明細書で使用される場合、「任意に」は、別段の指示がない限り、少なくとも1つの保存料及び/または少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤の任意の包含を指し、すなわち、これらの追加の成分は必須ではない。
【0022】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、別段の指示がない限り、本明細書に記載される(i)特定の発熱、炎症、及び/もしくは疼痛事象を治療もしくは予防する、(ii)特定の発熱、炎症、及び/もしくは疼痛事象の1つ以上の症状を軽減、改善、もしくは排除する、または(iii)特定の発熱、炎症、及び/もしくは疼痛事象の1つ以上の症状の発現を予防もしくは遅延する、本発明の長時間作用型組成物中のケトプロフェンプロドラッグのうちの1つの量を指す。約0.5〜12mg/kgの用量範囲が、治療有効量であると見なされる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」などは、別段の指示がない限り、発熱、炎症、及び/または疼痛事象を回復、緩和、または阻害することを指す。本明細書で使用される場合、これらの用語はまた、動物の状態に応じて、該発熱、炎症、及び/または疼痛事象による苦痛の前に、疾患もしくは状態またはそれらと関連する症状の重症度を低減することを含む、疾患もしくは状態、または疾患もしくは状態と関連する症状の発現を予防することを包含する。したがって、治療は、例えば、予防的治療としての、投与時ではない時に発熱、炎症、及び/または疼痛事象を患う動物への本発明の長時間作用型組成物の投与を指し得る。治療することはまた、発熱、炎症、及び/もしくは疼痛事象またはそれらと関連する症状の再発を予防することを包含する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「獣医学的に許容できる」は、別段の指示がない限り、ケトプロフェンプロドラッグ及び長時間作用型組成物が、本組成物を含む他の成分及び/またはそれらで治療される動物と化学的及び/または毒性学的に適合しなければならないことを示す。該用語は、「薬学的に許容される」と同義である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本考察が、単に例示的な実施形態の説明であり、本発明のより幅広い態様を制限することを目的とせず、より幅広い態様が例示的な構成において具体化されることが、当業者によって理解されるものとする。実際に、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明において種々の修正及び変更が行われ得ることが、当業者に明らかとなるであろう。例えば、一実施形態の一部として例示または記載される特徴は、なおさらなる実施形態を得るために、別の実施形態で使用され得る。本発明がそのような修正及び変更を、添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内に入るものとして含むことを目的とする。
【0026】
本発明は、a)メチルエステル(式1、メチル2−(3−ベンゾイルフェニル)プロパノエート)、b)エチルエステル(式2、エチル2−(3−ベンゾイルフェニル)プロパノエート)、c)ニコチンアミドエステル(式3、2−(ニコチンアミド)エチル2−(3−ベンゾイルフェニル)プロパノエート)、d)ベンジルエステル(式4、(ベンジル2−(3−ベンゾイルフェニル)プロパノエート)、e)プロピレンモノエステル(式5、2−ヒドロキシプロピル2−(3−ベンゾイルフェニル)プロパノエート)、f)プロピレンジエステル(式6、プロパン−1,2−ジイルビス(2−(3−ベンゾイルフェニル)プロパノエート)、g)式5及び式6の混合物、ならびにh)ポリエチレングリコールエステル(式7)からなる群から選択される有効量のケトプロフェンエステルプロドラッグを投与することを含む、治療を必要としている動物における熱、疼痛、及び/または炎症の治療のための長時間作用型の安定した獣医用組成物を提供する。本発明のプロピレングリコールエステルはまた、その全てのジアステレオマーを含む。
【化2】

【0027】
注射後、ケトプロフェンエステルプロドラッグは、注射部位において製剤から徐々に放出される。いったん体循環(例えば、血液/血漿)中に放出されると、エステルプロドラッグは、肝臓酵素を介して加水分解される。薬物ケトプロフェンの親(活性)形態は、確立された有効性を提供する、循環した主要なNSAID化合物である。
【0028】
ケトプロフェンは、米国特許第3641127号に記載される手順に従って調製され得る。アルキルエステルケトプロフェンプロドラッグは、International Journal of Pharmaceutics,43(1988)、pp.101−110に記載される手順に従って調製され得る。さらに、メチルエステルは、Liang,Yu−Feng,et.al.,Highly Efficient C−H Hydroxylation of Carbonyl Compounds with Oxygen under Mild Conditions,Angewandte Chemie,International Edition,Volume 53,Issue 2,pages 548−552,2014;Scheme 5によって記載されるような、一般的なエステル化反応物質を使用して調製され得る。ニコチンアミドエステルケトプロフェンプロドラッグは、European Journal of Medicinal Chemistry,39(2004)、pp.715−727に記載される手順に従って調製され得る。ベンジルエステルは、Med Chem Res 21(2012)、pp.3361−3368に記載されるように、脱水剤、例えば、硫酸の存在下で、カルボン酸(ケトプロフェン)をアルコール(例えば、ベンジルアルコール)で処理することを伴う、フィッシャーエステル化によって調製され得る。アルキルエステルはまた、脂肪族アルコールを使用してこの方法で調製され得る。グリコールエステルは、米国特許第4,560,785号に記載される方法に従って調製され得る。
【0029】
ケトプロフェンは、プロスタグランジン合成及びブラジキニンの効果の拮抗作用の阻害と関連する強力な抗炎症、鎮痛、解熱作用を示す。ケトプロフェンは、COX−1及びCOX−2の活性を非選択的に阻害し、プロスタグランジン産生の遮断、特にPGEの遮断をもたらし、痛覚過敏の発症を防止する。ケトプロフェンは、非選択的ヒトCOXアッセイにおいて4〜8nMのIC50値を有し、評価された他のNSAID(例えば、ナプロキセンまたはインドメタシン)よりも機能的に6〜12倍強力である。Kantor,T.,Pharmacotherapy 6:93−103(1986)。COX−1及びCOX−2酵素のブタのオーソログに対するケトプロフェンのIC50値は、本明細書に記載されるように、6〜7nMの範囲内で、ヒトと同様である。対照的に、ケトプロフェンは、COX−1及びCOX−2酵素のウシのオーソログに対してあまり強力ではなく、本明細書に記載されるように、COX−1に対して30nMのIC50値及びCOX−2に対して220nMのIC50値を示す。ケトプロフェンはまた、機能的ブラジキニンアンタゴニスト活性を有し、その効果は、典型的なNSAID、インドメタシンで見られるものよりも8倍大きい。Julou,L.,et al.,Scand J Rheumatol Suppl 0:33−44(1976)。シクロオキシゲナーゼを阻害することに加えて、ケトプロフェンは、リポキシゲナーゼを阻害するさらなる抗炎症効果を提供すると信じられている。
【0030】
本発明のケトプロフェンプロドラッグのうちの少なくとも1つの送達に好適な組成物、具体的には獣医用組成物、より具体的には獣医用長時間作用型組成物、及びそれらの調製のための方法は、当業者に容易に明らかとなるであろう。そのような組成物及びそれらの調製のための方法は、例えば、‘Remington’s Pharmaceutical Sciences’,19th Edition(Mack Publishing Company,1995)に見られ得る。
【0031】
本発明において、獣医学的に許容できるトリグリセリドは、モノ及びジグリセリドをさらに包含する。さらに、トリグリセリドは、天然由来及び半合成/合成油、例えば、ヒマシ油、綿実油、ゴマ油、亜麻仁油、サフラワー油、落花生油、大豆油、ココナッツ油、オリーブ油、トウモロコシ油、アーモンド油、けし油、ひまわり油、アーモンド油、植物油、ならびにこれらの混合物を包含する。トリグリセリドはまた、トリカプリリン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(例えば、ミグリオール801、ミグリオール812、カプテックス355など)、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール(例えば、ミグリオール840及びカプテックス200など)、グリセロールトリアセテート(トリアセチン)、ステアリン酸グリセリルなどを包含し、これらの混合物を含む。好ましいトリグリセリドは、ヒマシ油、グリセロールトリアセテート、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール(例えば、ミグリオール840及びカプテックス200)、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ならびにこれらの混合物である。より好ましいトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセロールトリアセテート、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、ヒマシ油、及びこれらの混合物である。さらにより好ましいトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである。別のより好ましいトリグリセリドは、グリセロールトリアセテートである。別のより好ましいトリグリセリドは、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである。別のより好ましいトリグリセリドは、ヒマシ油である。ヒマシ油が組成トリグリセリドであるとき、他のグリセリド及び/もしくはトリグリセリド、例えば、プロピルジカプリレート/ジカプリレート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、もしくはアシル化モノグリセリド、またはこれらの混合物は、必須ではない。さらにより好ましいカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドは、ミグリオール812である。別のさらにより好ましいジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールトリグリセリドは、ミグリオール840である。
【0032】
本発明において、本長時間作用型組成物は、少なくとも1つの保存料を任意に含む。本発明において、本長時間作用型組成物は、少なくとも1つの保存料をさらに含む。保存料は、抗菌、抗真菌、及び/または抗酸化保存料であってもよい。保存料の非限定的な例としては、安息香酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、クエン酸、ベンジルアルコール、トコフェロール、エタノール、重硫酸ナトリウム、クロルブタノール、2−エトキシエタノール、メチル−、エチル−、プロピル、及びブチル−パラベン、ならびにこれらの組み合わせ、クロルヘキシジン、フェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、安息香酸ナトリウム、これらの混合物などが挙げられる。好ましい保存料は、BHA、BHT、ベンジルアルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0033】
本発明において、本長時間作用型組成物は、少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤を任意に含む。本発明において、本長時間作用型組成物は、少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤をさらに含む。例えば、追加の獣医用賦形剤(複数可)は、緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、アスパラギン酸、ジエタノールアミン、炭酸ナトリウム、リン酸カリウムなど)、粘度調整剤(例えば、ステアリン酸アルミニウム(モノ及びジステアレート)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースなど)、溶媒(例えば、安息香酸ベンジル、ポリエチレングリコール(例えば、PEG200、PEG 400など)、N,N−ジメチリアセトアミド(dimethylyacetamide)、プロピレングリコール、エタノール、ベンジルアルコール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマール、グリセロール、ミリスチン酸イソプロピル、テトラグリコール(グリコフロール、テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGMEE、例えば、トランスクトール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGMME)など)、乳化剤(例えば、ポリエトキシル化エーテル、マクロゴール、レシチンが一例であるリン脂質、ソルビタンエステル(例えば、ポリソルベート80(スパン80)、スパン40、スパン60など))、クレモフォール(例えば、クレマフォールEL、クレマフォールRH40など)、ポリソルベート(例えば、ツイーン20、ツイーン80など)、ポリエチレングリコール−15−ヒドロキシステアレート(例えば、コリフォールHS15、クロダソル(Crodasol)HS15など)、マクロゴール15ヒドロキシステアレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、及びトコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネートなどのビタミンEのポリオキシエチレン誘導体などのエステル及び油)、ならびに張度調節剤(例えば、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ブドウ糖、グルコース、プロピレングリコール、スクロース、塩化ナトリウム及びラクトースなどの無機塩など)を含むことができる。
【0034】
そのような組成物は、標準的な医薬的または獣医学的慣行に従って、従来の方法で調製される。
【0035】
これらのケトプロフェンエステルプロドラッグの量は、当業者によって容易に決定され、さらに、最終の長時間作用型組成物の投与量及び用量体積によって決まる。該投与量及び用量体積は、治療有効投与量及び用量体積であると見なされる。式1、式2、または式3、式4、式5、式6、式5及び式6、及び式7、ならびにこれらの混合物の治療有効量のケトプロフェンプロドラッグの代表的な量は、約0.1〜20mg/kgに及ぶ。治療有効量のケトプロフェンエステルプロドラッグのより好ましい代表的な量は、約0.25〜15mg/kgに及ぶ。治療有効量のケトプロフェンエステルプロドラッグのさらにより好ましい代表的な量は、約0.5〜12mg/kgに及ぶ。治療有効量のケトプロフェンエステルプロドラッグのさらにより好ましい代表的な量は、約0.5〜10mg/kgに及ぶ。本組成物中のケトプロフェンエステルプロドラッグの代表的な量は、約1mg/mL〜約500mg/mLに及ぶ。本組成物中のケトプロフェンエステルプロドラッグのより好ましい量は、約10mg/mL〜約400mg/mLに及ぶ。本組成物中のケトプロフェンエステルプロドラッグのさらにより好ましい量は、約20mg/mL〜約300mg/mLに及ぶ。
【0036】
本発明の長時間作用型組成物は、抗炎症剤、解熱剤、及び鎮痛剤として有用である。本長時間作用型組成物は、獣医学、畜産、及び公衆衛生の維持の分野で、すなわち、食用動物、特に家畜、例えばブタ及びウシの安全及び健康を確実にするために使用され得る。
【0037】
筋肉内注射または皮下注射を介したケトプロフェンプロドラッグの全身送達は、全治療用量が動物(すなわち、ウシ)に送達されることを確実にする。本長時間作用型組成物は、動物の耳内に、または耳介と頭蓋との接合部で注射され得る。例えば、皮下注射は、注射器、反復注射装置、複数回投与注射器などの装置に取り付けられる滅菌針(例えば、16ゲージ、1.5〜2.0cm)を使用して、耳介と頭蓋との接合部で投与される。針は、抗舟状窩表面の基部付近の耳介軟骨の近位端において、耳介軟骨の耳介隆起の尾側に方向付けられ、耳の尾側から吻側に方向付けられる。好ましくは、注射は、頸耳介筋の尾側及び耳下唾液腺の後尾側である。いったん針が完全に挿入されると、薬物投与者は、注射器プランジャー上で引き戻して、針が血管内にないことを確実にし得る。いったん皮下組織内に入ると、適切な体積の注射可能な長時間作用型組成物が針を通して放出され、針は続いて引き出される。好ましくは、直接圧力が針挿入点に適用されて、注射された組成物の逆流を最小限に抑える。針が皮膚に平行して挿入される必要はないが、この方法は、短い針の長さ及び注射部位の位置のため、それでもなお皮下注射と見なされる。
【0038】
針注射は、好ましい送達の方法であるが、注射器、自動注射器、複数回投与注射器、及び注射銃の使用もまた、同様の方法で使用され得る。
【0039】
現在の治療計画、例えば、Metacam(登録商標)(メロキシカム)は、関節炎と関連する疼痛及び/または炎症の制御のために1日1回注射可能である。後続の用量は、前の投与後24時間で投与されるべきである。同様に、注射可能なフルニキシンメグルミンの推奨される用量は、ウマに対して、最大で5日の反復投与で1日1回である。ウシにおいて、用量は、単回投与として1日1回投与され得るか、または最大で3日間、12時間に1回投与される2回の用量に分割され得る。注射可能なケトプロフェン(Anafen(登録商標))はまた、1日間(ブタ)〜5日(ウマ)間、1日1回の注射によって投与される。
【0040】
本発明によると、ケトプロフェンエステルプロドラッグ、少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリド、及び任意に少なくとも1つの保存料、及び任意に少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤のうちの少なくとも1つを含む、本長時間作用型組成物は、必要に応じて、2、3、4、または5日に1回使用され得る。本長時間作用型組成物は、単回の注射可能な投与後、最大で48時間、72時間、96時間、及び場合によっては最大で120時間にわたる疼痛、炎症、及び/または熱の低減の治療を提供する。したがって、本長時間作用型組成物は、長時間の軽減を動物に提供し、同様に、動物介護者による注射可能な投与の数を低減する。
【0041】
本発明によると、ケトプロフェンエステルプロドラッグ、少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリド、及び任意に少なくとも1つの保存料、及び任意に少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤のうちの少なくとも1つを含む、本長時間作用型組成物は、追加の生物活性剤、例えば抗菌剤をさらに含むことができる。動物における使用に利用可能な種々の抗菌剤がある。これらの抗菌剤としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない。マクロライド、例えば、ツラスロマイシン(Draxxin(登録商標))、チルジピロシン(Zuprevo(登録商標))、チルミコシン(Micotil(登録商標))、チロシンリン酸(Tylan(登録商標))、及びガミスロマイシン(Zactran(登録商標));セファロスポリン、例えば、セフチオフルナトリウム(例えば、Naxcel(登録商標)及びExcenel(登録商標))、セフチオフル塩酸塩(例えば、Excenel RTU(登録商標)、Excenel RTU EZ(登録商標)、Spectramast(登録商標))、結晶性遊離酸セフチオフル(Excede(登録商標))、セフォベシンナトリウム(Convenia(登録商標))、及びセフポドキシムプロキセチル(Simplicef(登録商標));リンコサミニド抗生物質、例えば、リンコマイシン(Lincomix(登録商標))、ピルリマイシン塩酸塩(Pirsue(登録商標))、及びクリンダマイシン塩酸塩(Antirobe(登録商標));フルオロキノロン、例えば、ダノフロキサシン(Advocin(登録商標))、エンロフロキサシン(Baytril(登録商標))、及びマルボフロキサシン(Zeniquin(登録商標));ならびにテトラサイクリン、例えば、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、及びドキシサイクリン。他の抗菌剤としては、アモキシシリン三水和物及びクラブラン酸(Clavamox(登録商標))、スペクチノマイシン(Adspec(登録商標))、トリメトプリム/スルファジアジンを含む増強スルホンアミド、(Tucoprim(登録商標))、及びスルファジメトキシン/オルメトプリム(Primor(登録商標));ならびにフロルフェニコール(例えば、Nuflor(登録商標)及びNuflor(登録商標)Gold)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0042】
加えて、親剤、ケトプロフェンはまた、例えば、ケトプロフェン及びDraxxin(登録商標)など、本明細書に開示される抗菌剤のうちのいずれか1つと組み合わされ得る。ケトプロフェン及びDraxxin(登録商標)、またはケトプロフェン及び本明細書に記載される任意の他の抗菌剤の両方を含む本組成物は、獣医学的に許容できるトリグリセリド及び/または保存料を含むが、本明細書に記載される少なくとも1つの獣医学的に許容できる賦形剤、及び/または動物のための安定した注射可能な組成物を調製するために当該技術において既知の、任意の追加の獣医学的に許容できる賦形剤(複数可)を含むことができる、組成物であっても、またはなくてもよい。
【0043】
本発明によると、少なくとも1つのケトプロフェンエステルプロドラッグと、少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、任意に少なくとも1つの保存料と、任意に少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤とを含む、本長時間作用型組成物は、抗菌剤と同時または順次に、すなわち、2つの別々の投薬単位として投与され得る。別様に、本長時間作用型組成物は、単一の注射可能な投薬単位として同時投与され得る抗菌剤をさらに含むことができる。同様に、ケトプロフェンは、単一の注射可能な投薬単位に一緒に製剤化されるか、または別々の投薬単位としてであるかにかかわらず、抗菌剤と同時または順次に投与され得る。
【0044】
実験
ケトプロフェンエステルは、本明細書に記載されるプロセス及び方法に従って調製され得る。あるいは、メチルエステルは、以下のスキームに従って調製され得る。
【化3】

ケトプロフェン(50g)を室温でメタノール(200mL)に添加し、溶解するまで撹拌した。溶液を約5〜10℃まで冷却した。HClガスを溶液に通過させて、反応生成量の約23gの増加をもたらした。溶液を撹拌しながら室温まで温めた。次いで、溶液を約0〜5℃まで冷却した。約0〜20℃の反応温度を維持しながら、冷水(200mL)を滴下添加した。次いで、溶液を約30分間室温で撹拌した。固体を濾過し、水で洗浄した。固体を約40℃において真空下で乾燥させて、約52gのケトプロフェンメチルエステル(98.6%)を得た。
【実施例】
【0045】
以下の長時間作用型組成物の実施例において、ケトプロフェンエステルプロドラッグ(KEP)は、式1〜式7、及びこれらの混合物のうちのいずれか1つであってもよい。限定されない獣医学的に許容できる長時間作用型組成物が以下に示される。
組成物1
【数1】

組成物2
【数2】

組成物3
【数3】

組成物4
【数4】

組成物5
【数5】

組成物6
【数6】


組成物7
【数7】

組成物8
【数8】

組成物9
【数9】

組成物10
【数10】

組成物11
【数11】

組成物12
【数12】


組成物13
【数13】


組成物14
【数14】
【0046】
組成物1(保存料なし)中の式1(60mg/mLまたは120mg/mL)は、25℃及び40℃で、かつ60%及び75%相対湿度での加速安定性条件下で、透明もしくは琥珀色ガラスバイアルまたは白色HDPEバイアル中で安定していることが示された。保存料(例えば、ベンジルアルコールまたはブチルヒドロキシトルエン(BHT)の添加は、同様の安定性結果を提供した。加えて、60mg/mLの組成物はまた、バイアルのヘッドスペースが空気または窒素で充填されていたかどうかにかかわらず、4℃、25℃、40℃、50℃、及び60℃で安定していた。
【0047】
生物製剤
ブタ肺胞マクロファージを使用した適格な初代細胞アッセイを用いて、ブタCOX−1及びCOX−2酵素に対して、多くのNSAIDのインビトロ活性を評価した。NSAIDは、フルニキシンメグルミン(Banamine−S(登録商標))、メロキシカム(Metacam(登録商標))、ケトプロフェン(Ketofen(登録商標)、注射可能)、ケトプロフェンS−エナンチオマー、ケトプロフェン(ラセミ)、カルプロフェン、及びケトプロフェンプロドラッグ(式1及び式3)を含んだ。肺胞マクロファージを、種々の量の阻害剤の存在下で、リポ多糖(LPS)で処理して、トロンボキサンB2(TXB2)及び/またはプロスタグランジンE(PGE)を生成した。細胞上清を21〜24時間のインキュベーション後に採取し、ELISAによって定量化されるまで−80℃で冷凍した。TXB2をCOX−1阻害に対するアッセイ読み出しとして使用した。PGEをCOX−2阻害に対するアッセイ読み出しとして使用した。各薬物を3つの異なる日における3つの異なる実験で試験した(最低でも)。COX−1またはCOX−2の阻害の百分率を、それぞれ観察されたTXB2またはPGE濃度の平均に基づき、各薬物濃度に対して計算した。平均%阻害曲線(%阻害対薬物濃度)を非線形回帰によって解析して、COX−2 IC50効力の順位で列挙される個々のIC50及びIC90値を得た。ブタCOX酵素に対するラセミケトプロフェンのIC50値(表1)は、ヒトに関して報告された値と同様である。表1に示されるように、ケトプロフェン(ラセミ化合物)は、フルニキシンよりもわずかに強力であり、両方が、典型的なCOX−2基準、メロキシカムよりも約5倍強力である、ケトプロフェンメチルエステルよりも1桁強力である。
表1.種々のNSAIDに対するブタCOX−1及びCOX−2のIC50及びIC90効力(μM)
【表1】
【0048】
ウシ全血アッセイを用いて、ウシCOX−1及びCOX−2酵素に対するケトプロフェン及び式1のインビトロ活性も評価した。簡潔に、ヘパリン添加血を両方のアッセイに対して採取した。COX−1アッセイは、プロタミンによる血液の処理、ヘパリンの抗凝血作用を低減すること、したがって、トロンボキサンB2(TXB2)の凝固及び生成を低減することを伴った。COX−2アッセイは、PGEを生成するためのLPSによる血液の処理を伴った。両方のアッセイが、TXB2またはPGEを阻害するために、種々の量の阻害剤の存在を含んだ。ケトプロフェン(Ketofen(登録商標)、注射可能)及びケトプロフェンプロドラッグエステル、式1をそれぞれ、3つの異なる日における3つの異なる実験で試験した(最低でも)。阻害の百分率を、TXB2またはPGE濃度の平均に基づき、各薬物用量に対する生データから計算した。次いで、平均%阻害曲線(%阻害対薬物濃度)を非線形回帰によって解析して、個々のIC50及びIC90値を得た。表2に示されるように、ケトプロフェン(ラセミ化合物)は、ウシCOX−1酵素の阻害において式1よりも強力であるが、COX−2酵素において式1に対して同様の効力を示す。ブタCOX酵素と比較して、ケトプロフェン及び式1の両方が、ウシCOX−1及びCOX−2に対してより低い効力を示す。
表2.ケトプロフェン(Ketofen(登録商標)、注射可能)及び式1に対するウシCOX−1及びCOX−2のIC50及びIC90効力(μM)
【表2】
【0049】
0.5mg/kgでの静脈内及び筋肉内投与後の水性組成物中で、未経産雌ブタ(約15kg)におけるケトプロフェンの薬物動態を評価した。ケトプロフェンは、筋肉内投与後に低い全身クリアランス(1.49±0.50mL/分/kg)、低い分布容積(0.199±0.027L/kg)、2.29±0.87時間の終末相半減期、及び高いバイオアベイラビリティ(121±9%)を示した。薬物動態結果に基づき、ブタインフルエンザウイルス(SIV)の気管内投与を伴う前臨床熱モデルを使用して、即放性ケトプロフェン(ラセミ)の解熱有効性を評価し、かつ離乳後の未経産雌ブタにおける熱の低下に対する薬物動態−薬力(PK−PD)関係を確立した。SIVの気管内投与(4mL 7.0±0.5log10 TCID 50/4mL)は、ブタにおける熱の段階的な上昇をもたらし、投与後約24時間でピークに達し、投与後約40時間までに低下した。約28日齢の若い未経産雌ブタの5つの群(1群当たりN=10)が、SIVの気管内投与、続いて、種々の用量(0、0.03、0.1、0.3、及び1mg/kg)でのケトプロフェンの筋肉内(IM)投与を受けた。ケトプロフェン(ラセミ)をSIV投与の23時間後に投与した。SIV投与の直前(t=0時間)、ケトプロフェン投与の1時間前(t=22時間)及び1時間後(t=24時間)の両方、ならびにt=6、27、29、32、及び35時間において、直腸温度を読み出した。ラセミケトプロフェンは、SIV誘発熱モデルにおいて用量依存的に熱を低下させ、試験された最低の用量(0.03mg/kg、IM)でさえ、媒体からの統計的に有意な分離を示した。強力な解熱活性は、500nMほど低い血漿濃度と関連した。データは、ラセミケトプロフェンがブタにおける強力な解熱剤であることを示す。
【0050】
LPS誘発ブタ滑膜炎モデルを使用して、即放性ケトプロフェンの鎮痛有効性を評価し、かつ離乳後の未経産雌ブタにおける疼痛低減(熱の低下と関連する疼痛低減とは異なり得る)に対するPK−PD関係を構築した。麻酔動物は、後膝関節内への2mLのLPS注射を受けた。十分な麻酔回復時間後に、動物を、その囲いから開放領域に移し、それをほぼ自発的に移動させることによって、跛行に関して評価した。観察者は、臨床的跛行に関して、視覚的アナログ尺度(VAS)スコアを割り当てた。潜在的な跛行スコアは、0cm(正常な運動からの逸脱なしに対応する)から10cm(考え得る最悪の跛行に対応する)に及ぶ。跛行が治まり、動物が正常な歩行に戻る、滑膜炎誘発後最大で5時間にわたって観察を繰り返した。検証研究において、ブタにおける鎮痛として欧州で承認された、多くの場合ブタにおける疼痛を治療するために許可外で使用される製品、フルニキシンメグルミン(2.2mg/kg、IM)、及び化合物、メロキシカム(0.2mg/kg、IM)の両方が、LPS誘発跛行を低減するのに効果的である。
【0051】
LPS誘発跛行を低減する即放性ケトプロフェンの能力を評価した。モデルにおけるケトプロフェンの用量反応機能を決定及び精密化するために、2つの別々の研究を実施した。加えて、ケトプロフェン血漿濃度の有効性との相関のために血液試料を採取した(すなわち、PK−PD評価)。2つの研究は、方法が同じであった。各研究は、36匹のブタ(N=9/治療群)からなり、滑膜炎をt=1時間において誘発し、ケトプロフェンをt=0時間において投与した。ブタをt=1、2、3、及び4時間において検査し、VAS臨床的跛行スコアを割り当てた。第1の研究において、広範囲のケトプロフェン用量レベル(0.01、0.1、1.0mg/kg、IM)を媒体と比較した。0.1及び1.0mg/kgのケトプロフェンは、投与後最大で3時間にわたって、媒体と比較して跛行の統計的に有意な低減をもたらした。血漿濃度は、これらの用量が両方のCOX酵素に対して、おおよそインビトロIC90の総血漿濃度をもたらしたと判断した。媒体と比較して、0.01、0.03、及び0.1mg/kg、IMの用量レベルでのケトプロフェンを検査することによって、用量反応曲線を精密化するために、第2の後続の研究を実施した。この研究も同様に、0.1mg/kgのケトプロフェンが投与後3時間にわたって、跛行の最大の低減をもたらしたことを実証した。この用量レベルは、ケトプロフェンの0.5〜0.7μMの血漿濃度に対応する。加えて、ケトプロフェンのバイオアベイラビリティは、IM注射後100%であると決定した。
【0052】
上記のインビトロ及びインビボ結果は、ケトプロフェンが1)ブタCOXアイソザイムの強力な阻害剤であること、2)ブタにおける好ましい薬物動態特性を有すること、ならびに3)500nMほど低い総血漿濃度において、ブタにおける熱及び疼痛の両方に対して、非常に有効であることを実証する。ケトプロフェンは、トリグリセリド系組成物に概して適していない親水性薬剤と見なされる。したがって、トリグリセリド系組成物が、より低い水溶解度を有するケトプロフェンエステルプロドラッグと共に考慮される。
【0053】
ブタ血漿及び肝臓ミクロソームにおける加水分解において、ケトプロフェンプロドラッグ、式1、式2、及び式3を評価した。試験された全ての式(1〜3)は、ブタ肝臓ミクロソームにおいて迅速に、かつブタ血漿において適度に、またはゆっくりと加水分解された。0.5mg/kgでのブタにおける単回の静脈内及び筋肉内投与後に、これらのケトプロフェンエステルの加水分解をインビボで評価した。ブタは、静脈内(IV)または筋肉内注射のいずれかによって、0.5mg/kgのケトプロフェンまたはそのエステル(式1〜3)を投与された。ケトプロフェンに関して血漿試料を評価し、AUC(nmol*時/mL/μmol/kg)を表3に示されるようにμmol/kg(n=3または4)の用量で正規化した。
表3.ケトプロフェンまたはそのエステルの静脈内及び筋肉内投与後のブタにおける正規化された平均ケトプロフェンAUC
【表3】

【0054】
表3に見られるように、ケトプロフェンのメチルエステル(式1)の投与後のケトプロフェン曝露は、ケトプロフェンそれ自体の投与後の曝露と同等である。
【0055】
正規化された曝露結果の結果として、ケトプロフェン薬物動態を評価するために、式1を含む4つの長時間作用型組成物を設計した。本組成物は、約1日〜約1週間の持続時間にわたって注射部位及び/または筋肉内空間からゆっくりと消散する共溶媒を含み、かつT01(グリセロールホルマール:トリアセチン(25:75v/v))、T02(ミグリオール812)、T03(綿実油:トリアセチン(90:10v/v))、及び少なくとも2つの利点1)比較的疎水性の化合物に溶液様動態を与えること、及び/または2)トリグリセリドを有する有意なレベルの乳化剤の存在によって、活性薬剤が溶液中に残る時間の長さを延長し、注射部位における沈殿を最小限に抑えることを潜在的に提供する、T04(自己微小乳化薬物送達系)を含んだ。約15kgの体重の妊娠したことがない雌ブタ、未経産雌ブタ(n=4)はそれぞれ、単回の3mg/kg(30mg/mL)筋肉内注射を受けた。表4に見られるように、ミグリオール812組成物は、72時間(C72hr)において最低のCmax及び最高のケトプロフェン血漿濃度を示した。C24hr、C48hr、及びC72hr値は、投与後24、48、及び72時間のそれぞれにおけるケトプロフェン血漿濃度である。
表4.ケトプロフェンメチルエステルの単回の筋肉内投与後のブタにおけるケトプロフェンの平均薬物動態パラメータ
【表4】
【0056】
追加の成分を有する式1(30mg/mLまたは60mg/mL)の組成物を評価するために、第2の組成物研究を実施した。例えば、モノステアリン酸アルミニウムをミグリオール812組成物に添加して、粘土を増加させ、それにより筋肉内空間からの薬物流束のための領域を減少させた。同様に、界面活性剤(スパン80、0.5%または1%)をミグリオール812に添加して、トリグリセリド枯渇の開始に対する遅延時間、及びトリグリセリドとエステルとの間で異なる分配係数を提供し得るヒマシ油を減少させる。本組成物は、T01(ミグリオール812、30mg/mL)、T02(モノステアリン酸アルミニウムを有するミグリオール812、30mg/mL)、T03(ミグリオール812、60mg/mL)、T04(0.5%のスパン80を有するミグリオール812、30mg/mL)、T05(1%のスパン80を有する、ミグリオール812、30mg/mL)、及びT06(ヒマシ油、30mg/mL)を含んだ。表5に見られるように、ケトプロフェンメチルエステル用量を増加させることは、ケトプロフェンの薬物動態プロファイルに影響を及ぼさなかった。粘度調整剤及び/または界面活性剤の添加は、ケトプロフェンCmaxまたは持続時間に対して明確な作用を示さなかった。さらに、ヒマシ油は、ミグリオール812と同様に機能した。
表5.ケトプロフェンメチルエステルの単回の筋肉内投与後のブタにおけるケトプロフェンの平均薬物動態パラメータ
【表5】
【0057】
異なる注射可能な長時間組成物中の式1に対して、ブタにおいて、追加の薬物動態研究を評価した。組成物は、組成物1:ミグリオール812、組成物3:ミギロール(migylol)812:テトラグリコール(67:33、v/v)、組成物4:ミギロール(migylol)812:トリアセチン(75:25、v/v)、組成物5:ミグリオール812:テトラグリコール:コリフォールHS15(67:28:5、v/v/v)を含む。これらの組成物は、任意の保存料を含まなかった。表6は、それぞれ184〜233kgの体重の雌ブタ(n=4)における、80mg/mLの式1を含む組成物のそれぞれに対する、単回の1mg/kg筋肉内注射後の平均薬物動態値を示す。
表6.ケトプロフェンメチルエステルの単回筋肉内投与後のブタにおけるケトプロフェンの平均薬物動態パラメータ
【表6】
【0058】
異なる注射可能な長時間組成物中の式1に対して、ブタにおいて、追加の薬物動態研究を評価した。組成物は、組成物6:ミギロール(migylol)840、組成物7:ミギロール(migylol)840:テトラグリコール(67:33)、組成物8:ミグリオール840:トリアセチン(75:25)、及び組成物10:ミグリオール840:テトラグリコール:コリフォールHS15(67:28:5)を含む。これらの組成物は、任意の保存料を含まなかった。表7は、184〜233kgの体重の雌ブタ(n=4)における、80mg/mLの式1を含む組成物のそれぞれに対する、単回の1mg/kg筋肉内注射後の平均薬物動態値を示す。
表7.ケトプロフェンメチルエステルの単回筋肉内投与後のブタにおけるケトプロフェンの平均薬物動態パラメータ
【表7】
【0059】
ブタ(特に未経産雌ブタ)における熱に対して、ミグリオール812中の式1(30mg/mL)の有効性の大きさ及び持続時間を評価するために、具体的に記載される場合を除いて、動物に筋肉内注射によって6mg/kgの用量を投与した。ブタSIV誘発熱モデルにおける即放性ケトプロフェンを用いた以前のPK−PD研究に基づき、6mg/kgの用量は、72時間にわたって≧500nMのケトプロフェンの総血漿濃度を与えると予測された。4つの治療群が媒体と比較され、T01(即放性ケトプロフェン(1mg/kg、IM、ピークの熱の1時間前に投与された)、T02(式1、SIV接種(すなわち、ピークの熱)の24時間前に投与された、T03(式1、SIV接種の48時間前に投与された)、及びT04(式1、SIV接種の72時間前に投与された)を含んだ。全ての場合において、直腸温度を、SIV接種後6、20、23、24、26、28、31、及び34時間において測定した。データは図1に示される。データは、少なくとも平方平均±SEMが表示され、エラーバーは、標準誤差(SEM)を表す。投与後24、48、及び72時間において決定されたケトプロフェンの平均血漿濃度(サテライトPK群)が示される。図1A:SIV接種の23時間後に投与されたケトプロフェン(即放性)、図1B:SIV接種と同時(すなわち、ピークの熱の24時間前)に投与された、ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステル(6mg/kg、IM)、図1C:SIV接種の24時間前(すなわち、ピークの熱の48時間前)に投与された、ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステル(6mg/kg、IM)、図1D:SIV接種の48時間前(すなわち、ピークの熱の72時間前)に投与された、ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステル(6mg/kg、IM)。図1中、「*」は、媒体と比較した統計的有意性の点(P<0.05)を指定する。N=10/群。
【0060】
図1B、1C、及び1Dに見られるように、ミグリオール812中の投与式1は、投与後10〜79時間の時点で、直腸温度の統計的に有意な低減をもたらした。有効性研究と並行して実施されたサテライトPK群は、組成物と関連する平均血漿濃度が、投与後24、48、及び72時間のそれぞれにおいて、3.67、1.19、及び0.52μMであったことを示し、これは、6mg/kgが72時間にわたって≧500nMを超える血漿濃度を維持するという予測と一致した。
【0061】
解熱剤有効性発現を評価するために、SIV熱モデルにおいて、投与後の早い時間において、ミグリオール812中の式1を評価した。若い未経産雌ブタの5つの群(1群当たりN=10)が、SIVの気管内投与、続いて、種々の用量(0、4、5、6mg/kg)での式1の化合物または陽性対照としてのバナミン(2.2mg/kg、IM)の筋肉内投与を受けた。全ての投与群が、SIV投与の24時間後に試験薬剤を投与された。SIV投与の直前(t=0時間)、用量投与の3時間前(t=21時間)及び1時間後(t=25時間)の両方、ならびにt=7、27、29、32、及び35時間において、直腸温度を読み出した(投与後の初期の時間における、媒体と比較した、ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステルの効果(4、5、6mg/kg、IM))。結果が図2に示される。データは、少なくとも平方平均±SEMが表示され、エラーバーは、SEMを表す。投与後0.5、1、及び3時間において評価される異なる用量レベルと関連する血漿濃度の時間的経過(サテライトPK群)。
【0062】
図2に見られるように、全ての式1の用量は、媒体と比較して、投与の1時間後に開始し、検査された全ての時点にわたって継続して有意に熱を低減した。重要なことに、全ての投与群が、t=35時間(すなわち、投与の11時間後)において、媒体と比較して活性のままであり、一方でバナミンはそうではなかった。ミグリオール812組成物と関連するPKプロファイルと一致して、サテライトPK群は、全ての用量に対する曝露レベルが、投与後0.5、1、及び3時間において、COX−1及びCOX−2のインビトロIC90値をはるかに超えていたことを示した。結論として、若い未経産雌ブタにおけるミグリオール812組成物の解熱効果は、以下の通り要約され得る。1)4、5、及び6mg/kg、IMで投与された式1は、投与の1時間後に発現する解熱有効性を示す、2)6mg/kg、IMは、投与後72時間にわたって解熱活性を示し続けるが、用量の減少は、解熱有効性の持続時間の対応する現象を示す。図2中、「*」は、媒体と比較した統計的有意性の点(P<0.05)を指定する。N=10/群。
【0063】
ブタ滑膜炎モデルにおいて、ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステル(6.0mg/kg、IM)の発現及び持続時間を試験した。この特定の研究に対して、各未経産雌ブタは、0日目に1回及び3日目に再び、2回の滑膜炎誘発を受けた。0日目、t=1時間において、右膝関節にLPSを注射することによって滑膜炎を誘発し、続いて、t=0時間において、式1−ミグリオール812組成物(N=9)または媒体(N=9)のいずれかを投与した。跛行評価は、用量投与後1〜4時間に対応する。3日目、各未経産雌ブタにおいて、左膝関節にLPSを注射することによって滑膜炎を再び誘発した(すなわち、t=71時間において)。3日目の跛行評価は、用量投与後73〜76時間に対応する。結果が図3に示される。データは、90%信頼限界で少なくとも平方平均が表される(N=9/群)。媒体と比較して、*P<0.05。図3のグラフ「A」に対するエラーバーは、95%信頼限界を示し、図3のグラフ「B」上のエラーバーは、SEMである。ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステル(6mg/kg、IM)は、0日目の投与の1時間以内に跛行の有意な低減をもたらした。3日目、跛行は、投与後74時間まで、プラセボと比較してなおも有意に低減される(図3A)。加えて、血漿レベルは、両方のCOX酵素に対するインビトロIC90が、この研究の持続時間にわたって含まれたことを確実にした(図3B)。
【0064】
無傷の雄ウシにおいて、ケトプロフェンメチルエステルの筋肉内投与後のケトプロフェン血漿中薬物動態もまた評価した。組成物は、組成物1:保存料なしのミグリオール812中の120mg/mLのケトプロフェンメチルエステル、組成物2:ミグリオール812中の160mg/mLのケトプロフェンメチルエステル:トランスクトール(50:50、v/v)、及び組成物4:ミグリオール812中の160mg/mLのケトプロフェンメチルエステル:トリアセチン(80:20、v/v)を含んだ。組成物1及び2に対して、3匹の雌子牛(220〜300kg)がそれぞれ、6mg/kgの筋肉内投与を受け、組成物4に対して、2匹の雌子牛(180〜240kg)がそれぞれ、6mg/kgの筋肉内投与を受けた。ケトプロフェンメチルエステルの単回の筋肉内注射後、ケトプロフェンの平均血漿濃度は、120時間にわたってウシCOX−1酵素の阻害に対するケトプロフェンのインビトロIC90よりも高いままであり、ほぼ72時間にわたってウシCOX−2酵素の阻害に対するケトプロフェンのインビトロIC90よりも高いままであった。結果が表8に示される。
表8.ケトプロフェンメチルエステルの単回の筋肉内投与後のウシにおけるケトプロフェンの平均薬物動態パラメータ
【表8】
【0065】
表8中のデータは、ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステルがウシに筋肉内注射によって1回投与されたとき、本組成物が、ブタにおいて観察された特性と同様の徐放特性を与え、3〜5日間にわたってウシCOX酵素を阻害するのに十分なレベルで、ケトプロフェンの長期の血漿曝露をもたらすことを示す。
【0066】
比較として、約91kgの平均体重を有するウシ(6〜12ヶ月齢の子牛)に与えられた、ケトプロフェンの非徐放性の注射可能な組成物(3mg/kg、Neoprofen(登録商標)、100mg/mL))の平均ケトプロフェン薬物動態が、表9に示される。Singh,R.,et.al.,Wayamba Journal of Animal Science,6,2014,pg.820−823。
表9.Neoprofen(登録商標)の単回の筋肉内注射後のケトプロフェンの平均薬物動態パラメータ
【表9】
【0067】
表8〜9で観察されるように、メチルエステルプロドラッグ(式1)後のケトプロフェンt1/2は、市販の注射可能な製品Neoprofen(登録商標)と比較して、ウシにおいて約14倍長く(組成物1及び2)、かつ約9.5倍長かった(組成物4)。したがって、より長いT1/2は、長時間の治療的血漿濃度、及びしたがって単回の注射可能な投与後の有効性のより長い持続時間と相関する。
本発明の態様
態様1
a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、
b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、
c)任意に少なくとも1つの保存料と、
d)任意に少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤と、を含む、獣医用長時間作用型組成物。
態様2
前記ケトプロフェンエステルプロドラッグは、メチルエステル、エチルエステル、ニコチンアミドエステル、ベンジルエステル、ポリエチレングリコールエステル、プロピレングリコールモノエステル、プロピレングリコールジエステル、プロピレングリコールモノエステル及びプロピレングリコールジエステルの混合物、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、態様1に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様3
前記ケトプロフェンエステルプロドラッグは、前記ケトプロフェンメチルエステルプロドラッグである、態様2に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様4
前記獣医学的に許容できるトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、グリセロールトリアセテート、ヒマシ油、綿実油、ゴマ油、及びこれらの混合物からなる群から選択される、態様1〜3のいずれか1項に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様5
前記獣医学的に許容できるトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである、態様4に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様6
前記獣医学的に許容できるトリグリセリドは、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールトリグリセリドである、態様4に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様7
前記獣医学的に許容できるトリグリセリドは、グリセロールトリアセテート、ヒマシ油、綿実油、及びこれらの混合物からなる群から選択される、態様4に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様8
前記獣医学的に許容できるカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドは、ミグリオール812である、態様5に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様9
前記獣医学的に許容できるジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールトリグリセリドは、ミグリオール840である、態様6に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様10
少なくとも1つの保存料をさらに含む、態様1〜9のいずれか1項に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様11
少なくとも1つの獣医学的に許容できる賦形剤をさらに含む、態様1〜10のいずれか1項に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様12
熱、疼痛、及び/または炎症に関して動物を治療する方法であって、
a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、
b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、
c)任意に少なくとも1つの保存料と、
d)任意に少なくとも1つの獣医学的に許容できる賦形剤と、を含む、獣医用長時間作用型組成物を、治療を必要としている前記動物に投与することを含む、前記方法。
態様13
前記ケトプロフェンエステルプロドラッグは、式1の化合物であり、前記少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、グリセロールトリアセテート、ヒマシ油、綿実油、ゴマ油、及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記組成物は、少なくとも1つの保存料をさらに含む、態様12に記載の前記方法。
態様14
治療を必要としている動物に注射によって前記組成物を投与することによる、前記動物における熱、疼痛、及び/または炎症の前記治療のための、態様1に記載の長時間作用型組成物の使用。
態様15
前記注射は、筋肉内注射または皮下注射である、態様14に記載の前記使用。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B