【実施例】
【0045】
以下の長時間作用型組成物の実施例において、ケトプロフェンエステルプロドラッグ(KEP)は、式1〜式7、及びこれらの混合物のうちのいずれか1つであってもよい。限定されない獣医学的に許容できる長時間作用型組成物が以下に示される。
組成物1
【数1】
組成物2
【数2】
組成物3
【数3】
組成物4
【数4】
組成物5
【数5】
組成物6
【数6】
組成物7
【数7】
組成物8
【数8】
組成物9
【数9】
組成物10
【数10】
組成物11
【数11】
組成物12
【数12】
組成物13
【数13】
組成物14
【数14】
【0046】
組成物1(保存料なし)中の式1(60mg/mLまたは120mg/mL)は、25℃及び40℃で、かつ60%及び75%相対湿度での加速安定性条件下で、透明もしくは琥珀色ガラスバイアルまたは白色HDPEバイアル中で安定していることが示された。保存料(例えば、ベンジルアルコールまたはブチルヒドロキシトルエン(BHT)の添加は、同様の安定性結果を提供した。加えて、60mg/mLの組成物はまた、バイアルのヘッドスペースが空気または窒素で充填されていたかどうかにかかわらず、4℃、25℃、40℃、50℃、及び60℃で安定していた。
【0047】
生物製剤
ブタ肺胞マクロファージを使用した適格な初代細胞アッセイを用いて、ブタCOX−1及びCOX−2酵素に対して、多くのNSAIDのインビトロ活性を評価した。NSAIDは、フルニキシンメグルミン(Banamine−S(登録商標))、メロキシカム(Metacam(登録商標))、ケトプロフェン(Ketofen(登録商標)、注射可能)、ケトプロフェンS−エナンチオマー、ケトプロフェン(ラセミ)、カルプロフェン、及びケトプロフェンプロドラッグ(式1及び式3)を含んだ。肺胞マクロファージを、種々の量の阻害剤の存在下で、リポ多糖(LPS)で処理して、トロンボキサンB2(TXB2)及び/またはプロスタグランジンE
2(PGE
2)を生成した。細胞上清を21〜24時間のインキュベーション後に採取し、ELISAによって定量化されるまで−80℃で冷凍した。TXB2をCOX−1阻害に対するアッセイ読み出しとして使用した。PGE
2をCOX−2阻害に対するアッセイ読み出しとして使用した。各薬物を3つの異なる日における3つの異なる実験で試験した(最低でも)。COX−1またはCOX−2の阻害の百分率を、それぞれ観察されたTXB2またはPGE
2濃度の平均に基づき、各薬物濃度に対して計算した。平均%阻害曲線(%阻害対薬物濃度)を非線形回帰によって解析して、COX−2 IC
50効力の順位で列挙される個々のIC
50及びIC
90値を得た。ブタCOX酵素に対するラセミケトプロフェンのIC
50値(表1)は、ヒトに関して報告された値と同様である。表1に示されるように、ケトプロフェン(ラセミ化合物)は、フルニキシンよりもわずかに強力であり、両方が、典型的なCOX−2基準、メロキシカムよりも約5倍強力である、ケトプロフェンメチルエステルよりも1桁強力である。
表1.種々のNSAIDに対するブタCOX−1及びCOX−2のIC
50及びIC
90効力(μM)
【表1】
【0048】
ウシ全血アッセイを用いて、ウシCOX−1及びCOX−2酵素に対するケトプロフェン及び式1のインビトロ活性も評価した。簡潔に、ヘパリン添加血を両方のアッセイに対して採取した。COX−1アッセイは、プロタミンによる血液の処理、ヘパリンの抗凝血作用を低減すること、したがって、トロンボキサンB2(TXB2)の凝固及び生成を低減することを伴った。COX−2アッセイは、PGE
2を生成するためのLPSによる血液の処理を伴った。両方のアッセイが、TXB2またはPGE
2を阻害するために、種々の量の阻害剤の存在を含んだ。ケトプロフェン(Ketofen(登録商標)、注射可能)及びケトプロフェンプロドラッグエステル、式1をそれぞれ、3つの異なる日における3つの異なる実験で試験した(最低でも)。阻害の百分率を、TXB2またはPGE
2濃度の平均に基づき、各薬物用量に対する生データから計算した。次いで、平均%阻害曲線(%阻害対薬物濃度)を非線形回帰によって解析して、個々のIC
50及びIC
90値を得た。表2に示されるように、ケトプロフェン(ラセミ化合物)は、ウシCOX−1酵素の阻害において式1よりも強力であるが、COX−2酵素において式1に対して同様の効力を示す。ブタCOX酵素と比較して、ケトプロフェン及び式1の両方が、ウシCOX−1及びCOX−2に対してより低い効力を示す。
表2.ケトプロフェン(Ketofen(登録商標)、注射可能)及び式1に対するウシCOX−1及びCOX−2のIC
50及びIC
90効力(μM)
【表2】
【0049】
0.5mg/kgでの静脈内及び筋肉内投与後の水性組成物中で、未経産雌ブタ(約15kg)におけるケトプロフェンの薬物動態を評価した。ケトプロフェンは、筋肉内投与後に低い全身クリアランス(1.49±0.50mL/分/kg)、低い分布容積(0.199±0.027L/kg)、2.29±0.87時間の終末相半減期、及び高いバイオアベイラビリティ(121±9%)を示した。薬物動態結果に基づき、ブタインフルエンザウイルス(SIV)の気管内投与を伴う前臨床熱モデルを使用して、即放性ケトプロフェン(ラセミ)の解熱有効性を評価し、かつ離乳後の未経産雌ブタにおける熱の低下に対する薬物動態−薬力(PK−PD)関係を確立した。SIVの気管内投与(4mL 7.0±0.5log
10 TCID 50/4mL)は、ブタにおける熱の段階的な上昇をもたらし、投与後約24時間でピークに達し、投与後約40時間までに低下した。約28日齢の若い未経産雌ブタの5つの群(1群当たりN=10)が、SIVの気管内投与、続いて、種々の用量(0、0.03、0.1、0.3、及び1mg/kg)でのケトプロフェンの筋肉内(IM)投与を受けた。ケトプロフェン(ラセミ)をSIV投与の23時間後に投与した。SIV投与の直前(t=0時間)、ケトプロフェン投与の1時間前(t=22時間)及び1時間後(t=24時間)の両方、ならびにt=6、27、29、32、及び35時間において、直腸温度を読み出した。ラセミケトプロフェンは、SIV誘発熱モデルにおいて用量依存的に熱を低下させ、試験された最低の用量(0.03mg/kg、IM)でさえ、媒体からの統計的に有意な分離を示した。強力な解熱活性は、500nMほど低い血漿濃度と関連した。データは、ラセミケトプロフェンがブタにおける強力な解熱剤であることを示す。
【0050】
LPS誘発ブタ滑膜炎モデルを使用して、即放性ケトプロフェンの鎮痛有効性を評価し、かつ離乳後の未経産雌ブタにおける疼痛低減(熱の低下と関連する疼痛低減とは異なり得る)に対するPK−PD関係を構築した。麻酔動物は、後膝関節内への2mLのLPS注射を受けた。十分な麻酔回復時間後に、動物を、その囲いから開放領域に移し、それをほぼ自発的に移動させることによって、跛行に関して評価した。観察者は、臨床的跛行に関して、視覚的アナログ尺度(VAS)スコアを割り当てた。潜在的な跛行スコアは、0cm(正常な運動からの逸脱なしに対応する)から10cm(考え得る最悪の跛行に対応する)に及ぶ。跛行が治まり、動物が正常な歩行に戻る、滑膜炎誘発後最大で5時間にわたって観察を繰り返した。検証研究において、ブタにおける鎮痛として欧州で承認された、多くの場合ブタにおける疼痛を治療するために許可外で使用される製品、フルニキシンメグルミン(2.2mg/kg、IM)、及び化合物、メロキシカム(0.2mg/kg、IM)の両方が、LPS誘発跛行を低減するのに効果的である。
【0051】
LPS誘発跛行を低減する即放性ケトプロフェンの能力を評価した。モデルにおけるケトプロフェンの用量反応機能を決定及び精密化するために、2つの別々の研究を実施した。加えて、ケトプロフェン血漿濃度の有効性との相関のために血液試料を採取した(すなわち、PK−PD評価)。2つの研究は、方法が同じであった。各研究は、36匹のブタ(N=9/治療群)からなり、滑膜炎をt=
−1時間において誘発し、ケトプロフェンをt=0時間において投与した。ブタをt=1、2、3、及び4時間において検査し、VAS臨床的跛行スコアを割り当てた。第1の研究において、広範囲のケトプロフェン用量レベル(0.01、0.1、1.0mg/kg、IM)を媒体と比較した。0.1及び1.0mg/kgのケトプロフェンは、投与後最大で3時間にわたって、媒体と比較して跛行の統計的に有意な低減をもたらした。血漿濃度は、これらの用量が両方のCOX酵素に対して、おおよそインビトロIC
90の総血漿濃度をもたらしたと判断した。媒体と比較して、0.01、0.03、及び0.1mg/kg、IMの用量レベルでのケトプロフェンを検査することによって、用量反応曲線を精密化するために、第2の後続の研究を実施した。この研究も同様に、0.1mg/kgのケトプロフェンが投与後3時間にわたって、跛行の最大の低減をもたらしたことを実証した。この用量レベルは、ケトプロフェンの0.5〜0.7μMの血漿濃度に対応する。加えて、ケトプロフェンのバイオアベイラビリティは、IM注射後100%であると決定した。
【0052】
上記のインビトロ及びインビボ結果は、ケトプロフェンが1)ブタCOXアイソザイムの強力な阻害剤であること、2)ブタにおける好ましい薬物動態特性を有すること、ならびに3)500nMほど低い総血漿濃度において、ブタにおける熱及び疼痛の両方に対して、非常に有効であることを実証する。ケトプロフェンは、トリグリセリド系組成物に概して適していない親水性薬剤と見なされる。したがって、トリグリセリド系組成物が、より低い水溶解度を有するケトプロフェンエステルプロドラッグと共に考慮される。
【0053】
ブタ血漿及び肝臓ミクロソームにおける加水分解において、ケトプロフェンプロドラッグ、式1、式2、及び式3を評価した。試験された全ての式(1〜3)は、ブタ肝臓ミクロソームにおいて迅速に、かつブタ血漿において適度に、またはゆっくりと加水分解された。0.5mg/kgでのブタにおける単回の静脈内及び筋肉内投与後に、これらのケトプロフェンエステルの加水分解をインビボで評価した。ブタは、静脈内(IV)または筋肉内注射のいずれかによって、0.5mg/kgのケトプロフェンまたはそのエステル(式1〜3)を投与された。ケトプロフェンに関して血漿試料を評価し、AUC(nmol*時/mL/μmol/kg)を表3に示されるようにμmol/kg(n=3または4)の用量で正規化した。
表3.ケトプロフェンまたはそのエステルの静脈内及び筋肉内投与後のブタにおける正規化された平均ケトプロフェンAUC
【表3】
【0054】
表3に見られるように、ケトプロフェンのメチルエステル(式1)の投与後のケトプロフェン曝露は、ケトプロフェンそれ自体の投与後の曝露と同等である。
【0055】
正規化された曝露結果の結果として、ケトプロフェン薬物動態を評価するために、式1を含む4つの長時間作用型組成物を設計した。本組成物は、約1日〜約1週間の持続時間にわたって注射部位及び/または筋肉内空間からゆっくりと消散する共溶媒を含み、かつT01(グリセロールホルマール:トリアセチン(25:75v/v))、T02(ミグリオール812)、T03(綿実油:トリアセチン(90:10v/v))、及び少なくとも2つの利点1)比較的疎水性の化合物に溶液様動態を与えること、及び/または2)トリグリセリドを有する有意なレベルの乳化剤の存在によって、活性薬剤が溶液中に残る時間の長さを延長し、注射部位における沈殿を最小限に抑えることを潜在的に提供する、T04(自己微小乳化薬物送達系)を含んだ。約15kgの体重の妊娠したことがない雌ブタ、未経産雌ブタ(n=4)はそれぞれ、単回の3mg/kg(30mg/mL)筋肉内注射を受けた。表4に見られるように、ミグリオール812組成物は、72時間(C72
hr)において最低のCmax及び最高のケトプロフェン血漿濃度を示した。C24
hr、C48
hr、及びC72
hr値は、投与後24、48、及び72時間のそれぞれにおけるケトプロフェン血漿濃度である。
表4.ケトプロフェンメチルエステルの単回の筋肉内投与後のブタにおけるケトプロフェンの平均薬物動態パラメータ
【表4】
【0056】
追加の成分を有する式1(30mg/mLまたは60mg/mL)の組成物を評価するために、第2の組成物研究を実施した。例えば、モノステアリン酸アルミニウムをミグリオール812組成物に添加して、粘土を増加させ、それにより筋肉内空間からの薬物流束のための領域を減少させた。同様に、界面活性剤(スパン80、0.5%または1%)をミグリオール812に添加して、トリグリセリド枯渇の開始に対する遅延時間、及びトリグリセリドとエステルとの間で異なる分配係数を提供し得るヒマシ油を減少させる。本組成物は、T01(ミグリオール812、30mg/mL)、T02(モノステアリン酸アルミニウムを有するミグリオール812、30mg/mL)、T03(ミグリオール812、60mg/mL)、T04(0.5%のスパン80を有するミグリオール812、30mg/mL)、T05(1%のスパン80を有する、ミグリオール812、30mg/mL)、及びT06(ヒマシ油、30mg/mL)を含んだ。表5に見られるように、ケトプロフェンメチルエステル用量を増加させることは、ケトプロフェンの薬物動態プロファイルに影響を及ぼさなかった。粘度調整剤及び/または界面活性剤の添加は、ケトプロフェンCmaxまたは持続時間に対して明確な作用を示さなかった。さらに、ヒマシ油は、ミグリオール812と同様に機能した。
表5.ケトプロフェンメチルエステルの単回の筋肉内投与後のブタにおけるケトプロフェンの平均薬物動態パラメータ
【表5】
【0057】
異なる注射可能な長時間組成物中の式1に対して、ブタにおいて、追加の薬物動態研究を評価した。組成物は、組成物1:ミグリオール812、組成物3:ミギロール(migylol)812:テトラグリコール(67:33、v/v)、組成物4:ミギロール(migylol)812:トリアセチン(75:25、v/v)、組成物5:ミグリオール812:テトラグリコール:コリフォールHS15(67:28:5、v/v/v)を含む。これらの組成物は、任意の保存料を含まなかった。表6は、それぞれ184〜233kgの体重の雌ブタ(n=4)における、80mg/mLの式1を含む組成物のそれぞれに対する、単回の1mg/kg筋肉内注射後の平均薬物動態値を示す。
表6.ケトプロフェンメチルエステルの単回筋肉内投与後のブタにおけるケトプロフェンの平均薬物動態パラメータ
【表6】
【0058】
異なる注射可能な長時間組成物中の式1に対して、ブタにおいて、追加の薬物動態研究を評価した。組成物は、組成物6:ミギロール(migylol)840、組成物7:ミギロール(migylol)840:テトラグリコール(67:33)、組成物8:ミグリオール840:トリアセチン(75:25)、及び組成物10:ミグリオール840:テトラグリコール:コリフォールHS15(67:28:5)を含む。これらの組成物は、任意の保存料を含まなかった。表7は、184〜233kgの体重の雌ブタ(n=4)における、80mg/mLの式1を含む組成物のそれぞれに対する、単回の1mg/kg筋肉内注射後の平均薬物動態値を示す。
表7.ケトプロフェンメチルエステルの単回筋肉内投与後のブタにおけるケトプロフェンの平均薬物動態パラメータ
【表7】
【0059】
ブタ(特に未経産雌ブタ)における熱に対して、ミグリオール812中の式1(30mg/mL)の有効性の大きさ及び持続時間を評価するために、具体的に記載される場合を除いて、動物に筋肉内注射によって6mg/kgの用量を投与した。ブタSIV誘発熱モデルにおける即放性ケトプロフェンを用いた以前のPK−PD研究に基づき、6mg/kgの用量は、72時間にわたって≧500nMのケトプロフェンの総血漿濃度を与えると予測された。4つの治療群が媒体と比較され、T01(即放性ケトプロフェン(1mg/kg、IM、ピークの熱の1時間前に投与された)、T02(式1、SIV接種(すなわち、ピークの熱)の24時間前に投与された、T03(式1、SIV接種の48時間前に投与された)、及びT04(式1、SIV接種の72時間前に投与された)を含んだ。全ての場合において、直腸温度を、SIV接種後6、20、23、24、26、28、31、及び34時間において測定した。データは
図1に示される。データは、少なくとも平方平均±SEMが表示され、エラーバーは、標準誤差(SEM)を表す。投与後24、48、及び72時間において決定されたケトプロフェンの平均血漿濃度(サテライトPK群)が示される。
図1A:SIV接種の23時間後に投与されたケトプロフェン(即放性)、
図1B:SIV接種と同時(すなわち、ピークの熱の24時間前)に投与された、ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステル(6mg/kg、IM)、
図1C:SIV接種の24時間前(すなわち、ピークの熱の48時間前)に投与された、ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステル(6mg/kg、IM)、
図1D:SIV接種の48時間前(すなわち、ピークの熱の72時間前)に投与された、ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステル(6mg/kg、IM)。
図1中、「*」は、媒体と比較した統計的有意性の点(P<0.05)を指定する。N=10/群。
【0060】
図1B、1C、及び1Dに見られるように、ミグリオール812中の投与式1は、投与後10〜79時間の時点で、直腸温度の統計的に有意な低減をもたらした。有効性研究と並行して実施されたサテライトPK群は、組成物と関連する平均血漿濃度が、投与後24、48、及び72時間のそれぞれにおいて、3.67、1.19、及び0.52μMであったことを示し、これは、6mg/kgが72時間にわたって≧500nMを超える血漿濃度を維持するという予測と一致した。
【0061】
解熱剤有効性発現を評価するために、SIV熱モデルにおいて、投与後の早い時間において、ミグリオール812中の式1を評価した。若い未経産雌ブタの5つの群(1群当たりN=10)が、SIVの気管内投与、続いて、種々の用量(0、4、5、6mg/kg)での式1の化合物または陽性対照としてのバナミン(2.2mg/kg、IM)の筋肉内投与を受けた。全ての投与群が、SIV投与の24時間後に試験薬剤を投与された。SIV投与の直前(t=0時間)、用量投与の3時間前(t=21時間)及び1時間後(t=25時間)の両方、ならびにt=7、27、29、32、及び35時間において、直腸温度を読み出した(投与後の初期の時間における、媒体と比較した、ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステルの効果(4、5、6mg/kg、IM))。結果が
図2に示される。データは、少なくとも平方平均±SEMが表示され、エラーバーは、SEMを表す。投与後0.5、1、及び3時間において評価される異なる用量レベルと関連する血漿濃度の時間的経過(サテライトPK群)。
【0062】
図2に見られるように、全ての式1の用量は、媒体と比較して、投与の1時間後に開始し、検査された全ての時点にわたって継続して有意に熱を低減した。重要なことに、全ての投与群が、t=35時間(すなわち、投与の11時間後)において、媒体と比較して活性のままであり、一方でバナミンはそうではなかった。ミグリオール812組成物と関連するPKプロファイルと一致して、サテライトPK群は、全ての用量に対する曝露レベルが、投与後0.5、1、及び3時間において、COX−1及びCOX−2のインビトロIC
90値をはるかに超えていたことを示した。結論として、若い未経産雌ブタにおけるミグリオール812組成物の解熱効果は、以下の通り要約され得る。1)4、5、及び6mg/kg、IMで投与された式1は、投与の1時間後に発現する解熱有効性を示す、2)6mg/kg、IMは、投与後72時間にわたって解熱活性を示し続けるが、用量の減少は、解熱有効性の持続時間の対応する現象を示す。
図2中、「*」は、媒体と比較した統計的有意性の点(P<0.05)を指定する。N=10/群。
【0063】
ブタ滑膜炎モデルにおいて、ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステル(6.0mg/kg、IM)の発現及び持続時間を試験した。この特定の研究に対して、各未経産雌ブタは、0日目に1回及び3日目に再び、2回の滑膜炎誘発を受けた。0日目、t=
−1時間において、右膝関節にLPSを注射することによって滑膜炎を誘発し、続いて、t=0時間において、式1−ミグリオール812組成物(N=9)または媒体(N=9)のいずれかを投与した。跛行評価は、用量投与後1〜4時間に対応する。3日目、各未経産雌ブタにおいて、左膝関節にLPSを注射することによって滑膜炎を再び誘発した(すなわち、t=71時間において)。3日目の跛行評価は、用量投与後73〜76時間に対応する。結果が
図3に示される。データは、90%信頼限界で少なくとも平方平均が表される(N=9/群)。媒体と比較して、*P<0.05。
図3のグラフ「A」に対するエラーバーは、95%信頼限界を示し、
図3のグラフ「B」上のエラーバーは、SEMである。ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステル(6mg/kg、IM)は、0日目の投与の1時間以内に跛行の有意な低減をもたらした。3日目、跛行は、投与後74時間まで、プラセボと比較してなおも有意に低減される(
図3A)。加えて、血漿レベルは、両方のCOX酵素に対するインビトロIC
90が、この研究の持続時間にわたって含まれたことを確実にした(
図3B)。
【0064】
無傷の雄ウシにおいて、ケトプロフェンメチルエステルの筋肉内投与後のケトプロフェン血漿中薬物動態もまた評価した。組成物は、組成物1:保存料なしのミグリオール812中の120mg/mLのケトプロフェンメチルエステル、組成物2:ミグリオール812中の160mg/mLのケトプロフェンメチルエステル:トランスクトール(50:50、v/v)、及び組成物4:ミグリオール812中の160mg/mLのケトプロフェンメチルエステル:トリアセチン(80:20、v/v)を含んだ。組成物1及び2に対して、3匹の雌子牛(220〜300kg)がそれぞれ、6mg/kgの筋肉内投与を受け、組成物4に対して、2匹の雌子牛(180〜240kg)がそれぞれ、6mg/kgの筋肉内投与を受けた。ケトプロフェンメチルエステルの単回の筋肉内注射後、ケトプロフェンの平均血漿濃度は、120時間にわたってウシCOX−1酵素の阻害に対するケトプロフェンのインビトロIC
90よりも高いままであり、ほぼ72時間にわたってウシCOX−2酵素の阻害に対するケトプロフェンのインビトロIC
90よりも高いままであった。結果が表8に示される。
表8.ケトプロフェンメチルエステルの単回の筋肉内投与後のウシにおけるケトプロフェンの平均薬物動態パラメータ
【表8】
【0065】
表8中のデータは、ミグリオール812中のケトプロフェンメチルエステルがウシに筋肉内注射によって1回投与されたとき、本組成物が、ブタにおいて観察された特性と同様の徐放特性を与え、3〜5日間にわたってウシCOX酵素を阻害するのに十分なレベルで、ケトプロフェンの長期の血漿曝露をもたらすことを示す。
【0066】
比較として、約91kgの平均体重を有するウシ(6〜12ヶ月齢の子牛)に与えられた、ケトプロフェンの非徐放性の注射可能な組成物(3mg/kg、Neoprofen(登録商標)、100mg/mL))の平均ケトプロフェン薬物動態が、表9に示される。Singh,R.,et.al.,Wayamba Journal of Animal Science,6,2014,pg.820−823。
表9.Neoprofen(登録商標)の単回の筋肉内注射後のケトプロフェンの平均薬物動態パラメータ
【表9】
【0067】
表8〜9で観察されるように、メチルエステルプロドラッグ(式1)後のケトプロフェンt1/2は、市販の注射可能な製品Neoprofen(登録商標)と比較して、ウシにおいて約14倍長く(組成物1及び2)、かつ約9.5倍長かった(組成物4)。したがって、より長いT1/2は、長時間の治療的血漿濃度、及びしたがって単回の注射可能な投与後の有効性のより長い持続時間と相関する。
本発明の態様
態様1
a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、
b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、
c)任意に少なくとも1つの保存料と、
d)任意に少なくとも1つの追加の獣医学的に許容できる賦形剤と、を含む、獣医用長時間作用型組成物。
態様2
前記ケトプロフェンエステルプロドラッグは、メチルエステル、エチルエステル、ニコチンアミドエステル、ベンジルエステル、ポリエチレングリコールエステル、プロピレングリコールモノエステル、プロピレングリコールジエステル、プロピレングリコールモノエステル及びプロピレングリコールジエステルの混合物、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、態様1に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様3
前記ケトプロフェンエステルプロドラッグは、前記ケトプロフェンメチルエステルプロドラッグである、態様2に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様4
前記獣医学的に許容できるトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、グリセロールトリアセテート、ヒマシ油、綿実油、ゴマ油、及びこれらの混合物からなる群から選択される、態様1〜3のいずれか1項に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様5
前記獣医学的に許容できるトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである、態様4に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様6
前記獣医学的に許容できるトリグリセリドは、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールトリグリセリドである、態様4に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様7
前記獣医学的に許容できるトリグリセリドは、グリセロールトリアセテート、ヒマシ油、綿実油、及びこれらの混合物からなる群から選択される、態様4に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様8
前記獣医学的に許容できるカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドは、ミグリオール812である、態様5に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様9
前記獣医学的に許容できるジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールトリグリセリドは、ミグリオール840である、態様6に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様10
少なくとも1つの保存料をさらに含む、態様1〜9のいずれか1項に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様11
少なくとも1つの獣医学的に許容できる賦形剤をさらに含む、態様1〜10のいずれか1項に記載の前記獣医用長時間作用型組成物。
態様12
熱、疼痛、及び/または炎症に関して動物を治療する方法であって、
a)ケトプロフェンエステルプロドラッグと、
b)少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドと、
c)任意に少なくとも1つの保存料と、
d)任意に少なくとも1つの獣医学的に許容できる賦形剤と、を含む、獣医用長時間作用型組成物を、治療を必要としている前記動物に投与することを含む、前記方法。
態様13
前記ケトプロフェンエステルプロドラッグは、式1の化合物であり、前記少なくとも1つの獣医学的に許容できるトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、グリセロールトリアセテート、ヒマシ油、綿実油、ゴマ油、及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記組成物は、少なくとも1つの保存料をさらに含む、態様12に記載の前記方法。
態様14
治療を必要としている動物に注射によって前記組成物を投与することによる、前記動物における熱、疼痛、及び/または炎症の前記治療のための、態様1に記載の長時間作用型組成物の使用。
態様15
前記注射は、筋肉内注射または皮下注射である、態様14に記載の前記使用。