【文献】
Journal of chromatography,2009年 5月 2日,Vol.1216,p.4589-4596
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固体支持体が、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項15に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
プロテインA親和性クロマトグラフィーは、カラム中に充填されたプロテインA樹脂または媒体(即ち、固体支持体上に固定化されたプロテインAリガンド)に対するFc含有タンパク質(例えば、免疫グロブリンまたは別のFc融合タンパク質)の結合、および、カラムからのFc含有タンパク質のその後の溶出に関係する。定置洗浄(CIP)は、クロマトグラフィーカラムの効率的な使用に重要であり、カラムが再利用され得るサイクル数を最大化するのに重要である。クロマトグラフィー樹脂に対して有害でない、不純物を効率的に除去するクリーニング手法が、一般的に必要とされる。商業的に利用可能なプロテインA樹脂の大部分の洗浄および衛生化に典型的に使用される最も一般的な洗浄溶液の1つは、水酸化ナトリウム(NaOH)である(例えば、Hagel L et.al.Handbook of Process Chromatography−Development,Manufacturing,Validation and Economics.Second edition.London,UK:Academic Press;2008.Cleaning and Sanitization;pp.147−159;Gronberg et al.,MAbs.2011 Mar−Apr;3(2):192−202を参照のこと。)。典型的には、カラム方式において、数多くの後のサイクルを行う場合、カラムの汚損を引き起こし、カラムの効率および結合能を低下させる、クロマトグラフィー樹脂上の汚染が徐々に蓄積され得る。サイクル間の効率的な洗浄手法は、クロマトグラフィーカラム上の汚染の蓄積を最小化することにより、カラムの寿命を延ばす。これは、カラム再生とも呼ばれる。
【0018】
最も商業的に利用可能なプロテインA樹脂は、アルカリ性溶液、例えば、水酸化ナトリウムを使用して洗浄されるが、ProSep(R)Ultra Plus樹脂(EMD Millipore Corporation)は、リン酸(H
3PO
4)を使用して洗浄される。
【0019】
本発明は、固体支持体上に固定化された、スタフィロコッカス アウレウスプロテインAのCドメインに基づくリガンドを含む媒体を使用するクロマトグラフィーカラムが、酸性溶液およびアルカリ性溶液の両方で洗浄され得るという、少なくとも驚くべき予想外の発見に基づいている。酸性溶液およびアルカリ性溶液の両方でカラムの洗浄を可能にすることにより、操作におけるより高い柔軟性が達成されるだけでなく、精製過程中の洗浄のためにアルカリ性溶液および酸性溶液の両方を使用する場合、より高いタンパク質純度が達成される。
【0020】
本開示がより容易に理解され得るために、まず、特定の用語が定義される。更なる定義は、発明を実施するための形態全体を通して説明される。
【0021】
I.定義
本明細書で使用する場合、「SpA」、「プロテインA」または「スタフィロコッカス アウレウスプロテインA」は、細菌であるスタフィロコッカス アウレウスから単離された、42kDaのマルチドメインタンパク質を意味する。SpAは、このカルボキシ末端細胞壁結合領域を介して、細菌の細胞壁に結合している。この領域は、Xドメインと呼ばれる。アミノ末端領域には、SpAは、5つの免疫グロブリン結合ドメインを含む。このドメインは、E、D、A、BおよびCと呼ばれる(Sjodhal,Eur J Biochem.Sep 78(2):471−90(1977);Uhlen et al.,J Biol Chem.Feb 259(3):1695−702(1984))。これらの各ドメインは、約58個のアミノ酸残基を含み、これらは、65から90%のアミノ酸配列同一性を共有する。
【0022】
SpAのE、D、A、BおよびCの各ドメインは、区別できるIg結合部位を有する。1つの部位は、Fc(IgGクラスのIgの定常領域)のためのものであり、他のものは、特定のIg分子のFab部(抗原認識を担うIgの一部)のためのものである。各ドメインが、Fab結合部位を含むことが報告されている。SpAの非Ig結合部は、C末端に位置しており、X領域またはXドメインと指定される。
【0023】
本明細書において互換的に使用されるように、「Cドメイン」、「SpAのCドメイン」、「プロテインAのCドメイン」および「スタフィロコッカス アウレウスプロテインAのCドメイン」という用語は、アミノ酸配列が、配列番号1に説明され、または、例えば、配列番号2に説明されたヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチオドを意味する。「Cドメイン」は、3へリックスバンドル構造にフォールドしている58個のアミノ酸ポリペプチドである。Cドメインは、へリックス1および2の表面上の残基を介してFc結合可能であり、または、へリックス2および3の表面上の残基を介してFabに結合可能である。
【0024】
本明細書に記載された方法において使用する場合、プロテインAのCドメインに基づくプロテインAリガンドは、配列番号1に説明されたアミノ酸配列に対して、少なくとも80%または少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%またはそれ以上同一なアミノ酸配列を有するリガンドを含む。
【0025】
種々の実施形態において、本明細書に記載された方法において使用されるプロテインAのCドメインに基づくプロテインAリガンドは、配列番号3または配列番号4に説明されたアミノ酸配列を含む。
【0026】
本明細書で使用する場合、「クロマトグラフィー」という用語は、ターゲット分子、例えば、ターゲットタンパク質(例えば、免疫グロブリンまたは別のFc含有タンパク質)を、混合物中の他の分子から分離し、これを単離するのを可能にする動的分離技術を意味する。典型的には、クロマトグラフィー法では、移動相(液体または気体)は、所望のターゲット分子を含むサンプルを、固定相(通常、固体)媒体を横切ってまたは同媒体を通過して移動させる。固定相への分配または親和性の差異は、固定相に対して選択された分子の一時的な結合を生じさせ、一方、移動相は、種々のタイミングで、種々の分子を運ぶ。
【0027】
本明細書で使用する場合、「親和性クロマトグラフィー」という用語は、分離されるべきターゲット分子、例えば、タンパク質分子(例えば、Fc含有タンパク質)が、クロマトグラフィー樹脂上に固定化された分子(例えば、プロテインA系リガンド)とのこのロックアンドキー相互作用により単離されるクロマトグラフィー方式を意味する。この特異的な相互作用は、ターゲット分子が結合するのを可能にし、一方、望ましくない分子が素通りするのを可能にする。ついで、移動相の温度、pH、イオン強度を変化させることは、ターゲット分子を高純度で放出する。本明細書に記載された種々の実施形態において、親和性クロマトグラフィーは、プロテインAのCドメインに基づくリガンドをその上に有する固体支持体(プロテインA親和性クロマトグラフィー媒体または樹脂と呼ばれる。)への、ターゲット分子(例えば、免疫グロブリンまたは別のFc含有タンパク質)を含むサンプルの添加に関係する。
【0028】
本明細書で使用する場合、「プロテインA親和性クロマトグラフィー」という用語は、プロテインAまたはプロテインAのCドメインに基づくSpA系リガンド、例えば本明細書に記載されたものを使用する、物質の分離または単離を意味する。この場合、SpAまたはプロテインAリガンドは、固体支持体上に固定化される。
【0029】
本明細書で使用する場合、「リガンド」という用語は、固体支持体(例えば、多孔性表面)上に固定化され、Fc含有タンパク質に結合可能な、プロテインAのCドメインに基づく生体分子を意味する。本明細書に記載された一部の実施形態では、リガンドは、配列番号3に説明されたアミノ酸配列またはこの変異体、フラグメントもしくは誘導体を含む。本明細書に記載された一部の他の実施形態では、リガンドは、配列番号4に説明されたアミノ酸配列またはこの変異体、フラグメントもしくは誘導体を含む。
【0030】
「固体支持体」という用語は、一般的には、リガンドが付着している任意の材料(多孔性または非多孔性)を意味する。固体支持体に対するリガンドの付着は、(エーテル、チオエーテル、炭素−炭素結合または他の結合を介した)グラフト化の場合には、共有結合等によるか、または、コーティング、接着、吸着および類似する機構によるかのいずれかであり得る。本明細書に記載された方法に使用される典型的な固体支持体としては、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリカーボネートが挙げられる。
【0031】
当分野において公知のプロテインA親和性クロマトグラフィー媒体/樹脂の例としては、制御された細孔ガラス骨格上に固定化されたプロテインAを有するもの、例えば、PROSEP(R)AおよびPROSEP(R)vA媒体/樹脂(EMD MILLIPORE);ポリスチレン固体相上に固定化されたプロテインAを有するもの、例えば、POROS(R)50AおよびPOROS(R)MabCapture(TM)A媒体/樹脂(APPLIED BIOSYSTEMS,INC.);および、アガロース固体支持体上に固定化されたプロテインAを有するもの、例えば、rPROTEIN A SEPHAROSE FAST FLOW(TM)またはMABSELECT(TM)媒体または樹脂(GE HEALTHCARE)が挙げられる。種々の実施形態において、本明細書に記載された方法に使用されるプロテインAリガンドは、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択される固体支持体上に固定化される。
【0032】
特定の実施形態では、本明細書に記載された方法に使用されるリガンドは、ポリビニルエーテルポリマー上に固定化される。例えば、米国特許第7,951,885号明細書を参照のこと。同特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
本明細書において互換的に使用されるように、「親和性樹脂」または「親和性クロマトグラフィー樹脂」または「親和性媒体」または「親和性クロマトグラフィー媒体」という用語は、固体支持体に付着している(例えば、プロテインAのCドメインに基づく)親和性クロマトグラフィーリガンド、例えば、本明細書に記載されたもの等を意味する。一般的には、「樹脂」および「媒体」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0034】
本明細書において互換的に使用されるように、「ターゲットタンパク質」または「所望のタンパク質」という用語は、プロテインAのCドメインまたはこの変異体もしくは誘導体を使用して精製され得る任意のタンパク質を意味する。種々の実施形態において、ターゲットタンパク質は、Fc含有タンパク質、例えば、免疫グロブリンまたはFc融合タンパク質である。
【0035】
(本明細書において互換的に使用される。)「免疫グロブリン」、「Ig」または「抗体」という用語は、2本の重鎖および2本の軽鎖からなる、基本的な4本のポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を意味する。前記鎖は、例えば、鎖間ジスルフィド結合により安定化されており、抗原に特異的に結合する能力を有する。(本明細書において互換的に使用される。)「一本鎖免疫グロブリン」または「一本鎖抗体」という用語は、重鎖および軽鎖からなる、2本のポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を意味する。前記鎖は、例えば、鎖間ペプチドリンカーにより安定化されており、抗原に特異的に結合する能力を有する。「ドメイン」という用語は、例えば、β−プリーツシートおよび/または鎖内ジスルフィド結合により安定化された、ペプチドループを含む(例えば、3から4個のペプチドループを含む。)重鎖または軽鎖のポリペプチドの球状領域を意味する。本明細書において、さらに、ドメインは、「定常」ドメインの場合には、種々のクラスのメンバーのドメイン内の配列可変性の相対的な欠落、または、「可変」ドメインの場合には、種々のクラスのメンバーのドメイン内の顕著な可変性に基づいて、「定常」または「可変」と呼ばれる。抗体またはポリペプチドの「ドメイン」は、多くの場合、抗体またはポリペプチドの「領域」と、当分野において互換的に呼ばれる。抗体軽鎖の「定常」ドメインは、互換的に、「軽鎖定常領域」、「軽鎖定常ドメイン」、「CL」領域または「CL」ドメインと呼ばれる。抗体重鎖の「定常」ドメインは、互換的に、「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「CH」領域または「CH」ドメインと呼ばれる。抗体軽鎖の「可変」ドメインは、互換的に、「軽鎖可変領域」、「軽鎖可変ドメイン」、「VL」領域または「VL」ドメインと呼ばれる。抗体重鎖の「可変」ドメインは、互換的に、「重鎖可変領域」、「重鎖可変ドメイン」、「VH」領域または「VH」ドメインと呼ばれる。
【0036】
免疫グロブリンまたは抗体は、モノクローナルでもよいし、または、ポリクローナルでもよく、単量体型または多量体型で存在してもよい。例えば、IgM抗体は、五量体型で存在し、および/または、IgA抗体は、単量体型、二量体型または多量体型で存在する。「フラグメント」という用語は、インタクトまたは完全な抗体または抗体鎖より少ないアミノ酸残基を含む、抗体または抗体鎖の一部または部分を意味する。フラグメントは、インタクトまたは完全な抗体または抗体鎖の化学的または酵素的な処理により得られることができる。フラグメントは、組換え手段によっても得られることができる。典型的なフラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fcおよび/またはFvのフラグメントが挙げられる。
【0037】
本発明の方法は、プロテインAに結合し得る任意の抗体またはこのフラグメント、例えば、制限されず、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体またはこれらのフラグメントの精製中に使用され得る。一部の実施形態では、本明細書に記載された方法は、治療抗体の精製中に使用される。
【0038】
典型的な治療抗体としては、Herceptin(TM);Rituxan(TM);Avastin(TM);Bexxar(TM);Campath(TM);Erbitux(TM);Humira(TM);Raptiva(TM);Remicade(TM);ReoPro(TM);Prolia(R);Xgeva(R);Simulect(TM);Synagis(TM);Xolair(TM);Zenapax(TM);Mylotarg(TM);およびVectibix(TM)が挙げられる。典型的なFc融合タンパク質としては、可溶型の受容体または酵素およびこれらの変異体、誘導体もしくは類似体への融合物、例えば、Enbrel(R)が挙げられる。
【0039】
本明細書に記載された方法を使用して精製されたターゲットタンパク質は、Fc領域を含むため、プロテインAによる精製を受け入れられるものであることが理解される。本明細書で使用する場合、「Fc領域」または「Fc」という用語は、プロテインAと相互作用する、免疫グロブリン分子のアミノ酸残基を意味する。Fc領域は、抗体の結晶性テイル領域であり、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体と相互作用する。
【0040】
「Fc結合」、「Fc部に結合する」または「Fc部への結合」という用語は、抗体の定常部(Fc)に結合する、本明細書に記載された親和性リガンドの能力を意味する。一部の実施形態では、本発明に基づくリガンドは、少なくとも10
−7Mまたは少なくとも10
−8Mまたは少なくとも10
−9Mの親和性で、抗体(例えば、ヒトIgG1、IgG2またはIgG4)のFc部に結合する。
【0041】
本明細書で使用する場合、「フラグメント」という用語は、全長Fc含有タンパク質、例えば、免疫グロブリン等の一部を意味する。フラグメントの例としては、Fabフラグメント、一本鎖抗体分子、ディアボディ、線状抗体および、抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0042】
本明細書に記載された方法を使用して精製される免疫グロブリンおよび他のFc含有タンパク質は、任意の適切な発現系または細胞種を使用して発現されてもよい。一部の実施形態では、免疫グロブリンまたは別のFc含有タンパク質は、哺乳類の細胞、例えば、CHOまたはNS0細胞、ハイブリドーマ、マウス細胞等において発現される。別の実施形態では、免疫グロブリンまたは別のFc含有タンパク質は、非哺乳類の細胞培養物(例えば、昆虫細胞、酵母細胞、大腸菌等)を使用して発現される。細胞培養物における発現後、典型的には、不溶性種が、浄化法、例えば、深層ろ過、遠心分離、凝集/沈殿(例えば、酸沈殿または刺激応答性ポリマー)を使用して除去される。この浄化された細胞培養物は、典型的には、プロテインAカラムに充填されて、可溶性不純物、例えば、宿主細胞のタンパク質、DNA、ウイルスまたは他の不純物から、免疫グロブリンまたはFc含有タンパク質を分離する。
【0043】
本明細書で使用する場合、「精製されたポリペプチド」または「精製されたタンパク質」という用語は、本明細書に記載されたpH勾配またはpH段階法を使用して、プロテインA親和性工程から溶出された生成物である。精製されたポリペプチド/タンパク質は、好ましくは、主にポリペプチドモノマーを含む。
【0044】
本明細書で使用する場合、「未精製のポリペプチド」、「未精製のタンパク質」または「タンパク質ロード」という用語は、プロテインA親和性精製工程前の充填材料または開始材料中のポリペプチドまたはタンパク質である。
【0045】
本明細書で使用する場合、「Fc含有タンパク質の純度」という用語は、精製過程後のプロテインAクロマトグラフィーカラムの総溶出タンパク質に対する、ターゲットタンパク質(即ち、Fc含有タンパク質)のモノマー種として定義される。精製過程は、本明細書に記載された洗浄手法を使用する。従って、純度は、最終的な溶出プール中の総タンパク質に対する総モノマーの割合により算出され得る。総タンパク質は、ターゲットタンパク質およびこの変異体の1つ以上のタンパク質フラグメント、凝集体、モノマー種を含み得る。
【0046】
本明細書で使用する場合、「洗浄」という用語は、カラムの性能および完全性を保持するために、親和性クロマトグラフィーカラム、例えば、プロテインAカラムに残留した微量レベルの不純物を除去することを必要とする、ターゲットタンパク質(例えば、免疫グロブリンまたは別のFc含有タンパク質)の精製過程中の工程を意味する。洗浄工程は、カラムから不純物を除去するが、結合能(カラムが精製し得るターゲットタンパク質の量)および/または分解能(望ましくない実体からターゲットタンパク質を分離するカラム中の樹脂または媒体についての能力)を使用して測定される場合、理想的には、カラムの性能における最小の影響を有するべきである。例えば、StaphylococcusプロテインAまたはこの誘導体を使用する、最も商業的に利用可能な親和性クロマトグラフィーカラムは、酸性溶液またはアルカリ性溶液のいずれかを使用して洗浄される。例えば、MabSelect SuRe(R)プロテインAカラムは、希釈されたNaOHで洗浄される。一方、Prosep(R)プロテインAカラムは、一般的には、リン酸を使用して洗浄される。しかしながら、現在、商業的に利用可能なプロテインA樹脂は、極端なpH下において不安定であるため、酸性およびアルカリ性条件の両方を使用して洗浄されることができない。
【0047】
本明細書で使用する場合、「定置洗浄」または「CIP」という用語は、パイプ、容器、プロセス機器、フィルタおよび関連する付属品の内部表面を、分解することなく洗浄する方法である。CIPを使用する利益は、洗浄がより速く、労働集約性がより低く、より繰り返し可能であり、人間に対する化学的暴露がより少ないことである。クロマトグラフィーカラムについて、CIPは、樹脂材料ならびにカラム本体および端部付属品を、カラムを開梱せずに洗浄することを意味する。通常、ラン後に洗浄されたクロマトグラフィーカラムは、次のランのために、直ちに平衡化され、または、短期もしくは長期の保存のために衛生化される。
【0048】
本明細書で使用する場合、「サイクル」または「親和性サイクル」または「プロテインA親和性クロマトグラフィー精製サイクル」という用語は、プロテインA系樹脂を使用するクロマトグラフィーカラムを、中性バッファーでの平衡化で開始し、続けて、浄化された細胞培養物フィードをカラムに充填し(この場合、浄化された細胞培養フィードは、精製されるべきFc含有タンパク質(例えば、モノクローナル抗体)を含む。);続けて、1から3種類のバッファーで、カラムを洗浄して、緩く結合している不純物を除去し(この不純物は、プロテインA樹脂に対するFc含有タンパク質の結合を妨害しない。);続けて、(例えば、2.5から4.5のpHを有する。)溶出バッファーを使用して、Fc含有タンパク質をプロテインAカラムから溶出する、多工程法を意味する。平衡化、充填、洗浄および溶出のこの多工程法は、サイクル、または結合および溶出のサイクルを構成する。サイクル後には、典型的には、次のサイクル前に、カラム上の微少レベルの不純物を除去する洗浄工程が行われる。
【0049】
本明細書で使用する場合、「キャンペーン(campaign)」という用語は、所望の量の材料を特定期間内に産生するために、次々に行われる、個々の精製過程またはサイクルの複数回のラウンドを意味する。Fc含有タンパク質、例えば、モノクローナル抗体を精製する場合、キャンペーンは、典型的には、複数のバイオリアクターでのラン、加えて最後の充填のために精製される、設定された量のタンパク質を提供するためのその後の精製工程を含む。洗浄は、キャンペーン内のラン間でルーチンに実施されるが、キャンペーンが完了した時点で、クロマトグラフィーカラム、例えば、プロテインA系リガンドを使用するクロマトグラフィーカラムは、カラムが次のキャンペーンに再度典型的に使用される場合、さらに、保存のために衛生化される。次のキャンペーンは、数日または数週間または数か月後であり得る。
【0050】
本明細書で使用する場合、「衛生化(sanitization)」または「衛生化すること(sanitizing)」または「衛生化する(sanitize)」という用語は、キャンペーン完了後に使用される工程であり、FDAまたは他の監督官庁により決定されたのと同様に、微生物集合を安全または許容可能と考えられるレベルに減少させるように設定される。衛生化は、典型的には、熱または化学物質を使用して達成される。次のキャンペーンまで保存されるべきクロマトグラフィーカラムは、熱による衛生化の非実用性のために、一般的には、化学的手段により衛生化される。ほとんどの親和性クロマトグラフィーカラム、例えば、最も商業的に利用可能なプロテインAリガンドを使用するものは、0.5M以下のNaOHを使用して衛生化される。ただし、0.5M NaOHは、プロテインAリガンドにおけるNaOHの脱アミノ化作用により、プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂の性能を、著しく低下させることも公知である。本明細書に記載された一部の実施形態では、リン酸、酢酸およびベンジルアルコールを含む溶液(PAB)が、衛生化に使用される。PAB(120mM リン酸、167mM 酢酸、2.2% ベンジルアルコール)が、ProSep(R)ファミリーのプロテインA親和性媒体の場合に、サニタントとして使用される場合があることが以前から示されているが、全てのプロテインA媒体、特に、アルカリ性条件下において、一般的に洗浄または衛生化される媒体に適しているとは考えられていない。M.Rogers et al.,J.Chromatogr.A 1216(2009)4589−4596を参照のこと。
【0051】
「充填密度」または「充填する密度」という用語は、クロマトグラフィー媒体の容量あたりの、クロマトグラフィーカラム上に充填される、免疫グロブリンまたは別のFc含有タンパク質を含むサンプルの量である。充填密度は、g/Lで測定される。一部の実施形態では、サンプルは、5g/Lまたは10g/L、12g/Lまたは15g/Lまたは20g/Lまたは30g/Lまたは40g/Lまたはそれ以上の充填密度で充填される。
【0052】
「バッファー」は、この酸−塩基共役成分の作用によるpHにおける変化に抵抗する溶液である。使用され得る種々のバッファーは、例えば、バッファーの所望のpHに応じて、Buffers.A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems,Gueffroy,D.,Ed.Calbiochem Corporation(1975)に記載されている。
【0053】
本明細書において、「平衡化バッファー」は、ターゲットタンパク質を充填するための(固定化されたプロテインAを含む。)固体支持体を調製するのに使用されるものである。
【0054】
本明細書において、「洗浄バッファー」は、ターゲットタンパク質の充填後で、溶出前に、(固定化されたプロテインAを含む。)固体支持体を通り過ぎるバッファーを意味するのに使用される。
【0055】
「結合能」という用語は、所定条件下で実行されるカラム中に充填された所定容量の樹脂または媒体に結合する分子の量を意味する。結合能は、静的結合能または動的結合能として測定され得る。静的結合能の場合には、分子および樹脂が無限量の時間接触する場合に所定容量の樹脂に結合する分子の量として決定される。静的結合能は、樹脂が結合し得るターゲット分子の最大量を測定する。実際に、この値は、多くの場合、過剰のターゲット分子を樹脂と、最小の流れでまたは流れを伴わず、4時間以上接触させることにより得られる。一方、動的結合能は、設定流速において樹脂の容量あたりに、樹脂が結合し得るターゲット分子の量である。任意の樹脂の動的結合能は、基礎をなす条件に非常に依存性である。一般的には、流速が遅いほど、動的結合能は高くなる。流速がゼロに近づくと、結合能は、最大利用可能能−静的結合能に近づくことになる。適切な洗浄および衛生化を行わないと、複数回の結合および溶出サイクル後に、プロテインA樹脂の結合能は、典型的には、最初の値を下回って低下する。結合能が、クロマトグラフィー法/過程の開発中に設定された特定の値を下回る場合、著しい量のターゲットタンパク質が、不純物を含む通過画分と共に、「ブレークスルー」または共溶出してしまい、生成物の損失をもたらし得る。適切な化学物質を使用する適切な洗浄は、長期間にわたって樹脂の結合能を維持し得る。これは、典型的には、種々の商業的に利用可能な樹脂について設定されている条件に基づいて、アルカリ性溶液、例えば、0.1M NaOHまたは酸性溶液、例えば、0.15M H
3PO
4のいずれかを使用して達成される。ただし、本明細書に記載された方法の場合には、酸性溶液およびアルカリ性溶液の両方が、樹脂の結合能を保持しながら、洗浄に使用され得る。
【0056】
II.プロテインAクロマトグラフィー
プロテインAクロマトグラフィーは、Fc含有タンパク質、例えば、免疫グロブリンまたは抗体等の精製に最も一般的に使用されている親和性クロマトグラフィーの形式である。一般的には、ターゲットタンパク質(例えば、免疫グロブリンまたは別のFc含有タンパク質)は、適切な細胞培養物中で発現され、細胞培養物フィードが浄化に供され、その後、例えば、クロマトグラフィーカラムに充填されたプロテインAクロマトグラフィー媒体上に浄化されたフィードを充填する。
【0057】
プロテインAクロマトグラフィーは、一般的には、その上に固定化された適切なプロテインAリガンドを有する固体支持体、例えば、多孔性ビーズまたは樹脂等を使用する。ついで、プロテインA結合固体支持体は、クロマトグラフィーカラムに充填される。まず、カラムは、適切な平衡化バッファーにより平衡化され得る。これは、通常、3から10カラム容量(CV)の中性pHバッファー、例えば、リン酸緩衝生理食塩水またはTrisバッファーを、pH7から7.5において、プロテインA樹脂を通過させて流すことにより達成される。ついで、ターゲットタンパク質を含む浄化されたフィードは、ターゲットタンパク質を含むサンプル(例えば、ターゲットタンパク質を含む浄化された細胞培養物フィード)をカラムに充填することにより、カラム中の固体支持体と接触される。充填される浄化フィードの量は、フィード中のFc含有タンパク質の濃度(力価)および設定された流速におけるプロテインA樹脂に対するFc含有タンパク質の結合能により決定される。典型的には、可溶性の不純物、例えば、宿主細胞のタンパク質およびDNAは、プロテインAには結合しないため、通過画分に除去され、廃棄物になる。充填が完了した後、カラムは、多くの場合、1から3種類のバッファーにより洗浄されて、緩く結合している不純物を除去する。この不純物は、プロテインA樹脂へのターゲットタンパク質の結合を妨害しない。この工程は、中間洗浄工程とも呼ばれる。この工程は、ターゲットタンパク質が、(例えば、2.5から4.5のpHを有する。)溶出バッファーを使用して、プロテインAカラムからその後に溶出される際に、ターゲットタンパク質の純度を、さらに改善する。一般的な溶出バッファーは、酢酸およびクエン酸、pH2.5から4.5である。溶出用の典型的な流速は、60カラム容量(CV)/時間から5CV/時間の範囲である。勾配溶出の場合、典型的には、溶出は、5から60カラム容量にわたって行われる。一部の実施形態では、高pHバッファーおよび低pHバッファーが混合されて、pH7.0から3.0の範囲のpH勾配を生成する。一部の実施形態では、pH勾配は、7.0または約6.8または約6.6または約6.4または約6.2または約6.0または約5.8または約5.6または約5.4または約5.2または約5.0または約4.8または約4.6または約4.4または約4.2または約4.0で開始し、pH勾配は、3.0または約3.2または約3.4または約3.6または約3.8で終了する。
【0058】
平衡化、充填、洗浄および溶出の工程は、サイクルまたは結合および溶出サイクルを構成する。典型的なプロテインA精製サイクルのこの結合および溶出サイクルの後には、通常、カラム上の微少レベルの不純物を除去する洗浄工程、続けて、別の結合および溶出サイクルが行われる。典型的な精製キャンペーンは、次々と行われる複数回の結合および溶出サイクル、およびサイクル間または各サイクル後に行われる洗浄工程を構成する。
【0059】
プロテインA親和性樹脂の洗浄は、樹脂が樹脂の寿命全体を通して一致して精製を行うことを確保するために、即ち、樹脂の結合能を保持するために、一般的には、各サイクル後に実施される。(1)プロテインA樹脂は、イオン交換樹脂または疎水性相互作用(HIC)樹脂と比較して、高い初期コストを有すること、および;(2)プロテインAクロマトグラフィー樹脂は、典型的には、より高いレベルの不純物を含む浄化された細胞培養物に暴露される、という2つの理由のために、洗浄は、プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に、特に重要である。従って、一部の残留した不純物は、プロテインA樹脂に結合し得、これにより、樹脂の再利用に基づいて、結合能の損失または溶出プールの不純物の増大をもたらす。このことは、(結合能の低下による)低下した生産性およびより低い生成物純度をもたらすため、製造現場において非常に望ましくない。このため、各プロテインA結合および溶出サイクル後のルーチンな洗浄は、一致した生成物純度およびプロセススループットをもたらす一致した樹脂性能を確保するのに重要である。
【0060】
洗浄は、典型的には、極端なpH、例えば、2つの一般的に使用される洗浄試薬である、0.15M H
3PO
4(pH 1.5)または0.1M NaOH(pH=13)を使用して達成される。例えば、0.15M H
3PO
4は、ProSep(R)ファミリーのプロテインA親和性樹脂に推奨および使用されている。H
3PO
4洗浄の利点は、プロテインA樹脂の結合能を犠牲にすることなく、H
3PO
4が樹脂を洗浄することである。一方、0.1M NaOHは、MabSelect SuRe(R)ファミリーのプロテインA親和性樹脂に推奨および使用されている。ただし、アルカリ性溶液、例えば、NaOHは、タンパク質リガンドの脱アミノ化により、潜在的に、プロテインA樹脂の結合能を経時的に低下させ得る。
【0061】
本明細書に記載された一部の実施形態では、洗浄は、酸性溶液およびアルカリ性溶液の両方を使用して行われる。一部の実施形態では、クロマトグラフィーカラムは、各サイクル後に、酸性溶液およびアルカリ性溶液の両方と接触される。他の実施形態では、クロマトグラフィーカラムは、酸性溶液およびアルカリ性溶液が、精製キャンペーンを通して、交互に使用されるように、一サイクル後に、酸性溶液またはアルカリ性溶液のいずれかと接触される。例えば、クロマトグラフィーカラムが、第1のサイクル後に、アルカリ性溶液と接触される場合、ついで、クロマトグラフィーカラムは、第2のサイクル後に、酸性溶液と接触され、続けて、第3のサイクル後に再度、アルカリ性溶液と接触される等である。逆に、クロマトグラフィーカラムが、第1のサイクル後に、酸性溶液と接触される場合、ついで、クロマトグラフィーカラムは、第2のサイクル後に、アルカリ性溶液と接触され、続けて、第3のサイクル後に、酸性溶液と接触される等である。
【0062】
洗浄用の酸性溶液およびアルカリ性溶液の使用は、酸性溶液またはアルカリ性溶液のみの使用に比較して、不純物の相乗的な除去をもたらす。即ち、洗浄用の酸性溶液およびアルカリ性溶液の両方の使用(本明細書に記載されたように、サイクル後の両方の使用、または、交互での使用)は、精製過程を通して、酸性洗浄単独またはアルカリ性洗浄単独だけの使用による除去の合計より、高い不純物の除去をもたらす。理論に拘束されるものではないが、酸性およびアルカリ性の各溶液は、異なる種類の不純物を除去することが考察される。
【0063】
III.本明細書に記載された方法に使用される典型的なリガンド
本発明に基づく方法は、プロテインAのCドメインに基づくプロテインAリガンドを使用する。一部の実施形態では、本明細書に記載された方法に使用されるリガンドは、配列番号1に説明されたアミノ酸配列に対して、少なくとも80%または少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%またはそれ以上同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載された方法に使用されるプロテインAリガンドは、配列番号3に説明されたアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、本明細書に記載された方法に使用されるプロテインAリガンドは、配列番号4に説明されたアミノ酸配列を含む。Fc含有タンパク質に結合する、これらの配列の変異体、フラグメントおよび誘導体も、本発明に包含される。
【0064】
IV.本明細書に記載された方法に使用される典型的な固体支持体
一部の実施形態では、本明細書に記載された方法に使用されるプロテインAリガンドは、支持体、例えば、固体支持体または可溶性支持体に固定化されて、生体分子、例えば、免疫グロブリンおよび他のFc含有タンパク質等の分離に適した、親和性クロマトグラフィー媒体または樹脂を生成する。
【0065】
典型的な固体支持体としては、合成ポリマー、例えば、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリカーボネートに基づくものが挙げられる。
【0066】
典型的な固体支持体の形式としては、制限されず、ビーズ(球形または不規則)、中空繊維、中まで詰まった繊維、パッド、ゲル、膜、カセット、カラム、チップ、スライド、プレートまたはモノリスが挙げられる。
【0067】
任意の適切な技術が、本明細書に記載されたリガンドを、固体支持体に付着させるのに使用され得る。例えば、一部の実施形態では、リガンドは、例えば、リガンドに存在するアミノおよび/またはカルボキシ基を使用する従来のカップリング技術により、固体支持体に付着していてもよい。例えば、ビスエポキシド、エピクロロヒドリン、CNBr、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)等が、周知のカップリング試薬である。一部の実施形態では、スペーサは、固体支持体とリガンドとの間に導入される。スペーサは、リガンドの利用能を改善し、リガンドの支持体への化学的カップリングを容易にする。
【0068】
本発明に包含される一部の実施形態では、リガンド上の2つ以上の部位が、このような固体支持体に付着している(即ち、多点付着)。
【0069】
一般的には、プロテインA系クロマトグラフィーリガンドの固体支持体への付着は、多くの種々の方法により達成され得る。これらのほとんどは、当分野において周知であり、本明細書に記載されたものである。例えば、Hermanson et al.,Immobilized Affinity Ligand Techniques,Academic Press,pp.51−136(1992)を参照のこと。
【0070】
V.プロテインAクロマトグラフィーカラムの洗浄および衛生化
クロマトグラフィーカラムの洗浄は、カラム性能を維持し、カラムの寿命を延ばすのに、各サイクル後に一般的に使用される実務である。通常、各ランが完了した後、洗浄液が、カラムに15から30分間充填され、続けて、再平衡化バッファーまたは(カラムが保存準備されている場合)衛生化バッファーが充填される。一般的な洗浄液は、0.05から0.3M NaOHまたは0.15M H
3PO
4である。洗浄中の流速は、典型的には、使用される具体的な樹脂およびクロマトグラフィーシステムに基づいて決定される。NaOHが、生物薬学産業において一般的に使用される洗浄液であるが、酸性溶液、例えば、0.15M H
3PO
4も、汚染を効果的に除去することができ、特定の例において使用される。
【0071】
プロテインAクロマトグラフィーについて、ProSep(R)ファミリーの製品を洗浄するのに、H
3PO
4を使用するのが一般的である。一方、NaOHは、MabSelect SuRe(R)ファミリーの製品の洗浄に使用される。ただし、最も商業的に利用可能なプロテインA媒体は、アルカリ性溶液または酸性溶液のいずれかでのみ洗浄され得る。
【0072】
しかしながら、本明細書に記載された方法の場合には、固体支持体上に固定化された、スタフィロコッカス アウレウスのCドメインに基づくプロテインA樹脂は、酸性溶液およびアルカリ性溶液の両方を使用して洗浄され得る。アルカリ性溶液および酸性溶液の両方を使用することは、各溶液個々と比較して、望ましくない不純物の相乗的な除去をもたらす。
【0073】
クロマトグラフィーカラムの衛生化は、カラムがキャンペーンに使用された後で、カラムが保存準備される前に、一般的に行われる。衛生化溶液は、予め設定された流速で、3から5カラム容量で、カラム上に充填される。ついで、流れが止められ、サニタントについての設定時間が、目的の微生物殺菌を達成するこの方法を行うのを可能にする。ついで、サニタントは、保存バッファーにより置き換えられ、カラムは、保存準備される。NaOHは、イオン交換および疎水性相互作用のクロマトグラフィーについての一般的なサニタントであるが、プロテインA親和性クロマトグラフィーにはほとんど耐久性がない。NaOHは、タンパク質上のアスパラギンを攻撃するのが公知であり、同攻撃は、タンパク質の分解をもたらす。プロテインAリガンドも例外ではない。アスパラギンを変異させることにより、プロテインAリガンドのアルカリ安定性を改善する努力がなされてきた。しかしながら、野生型に比較してより遅い速度の場合のみ、NaOHは、プロテインAを分解してしまう。このことは、NaOH(0.1から0.3M)による15から30分間での洗浄と比較して、衛生化はより長い期間(即ち、3から4時間)で、より高い濃度のNaOH(0.5M)を必要とするため、特に、衛生化の場合に問題となる。
【0074】
PABと呼ばれる、より効果的な衛生化溶液が、本明細書に記載されている。PABは、120mM リン酸、167mM 酢酸、2.2% ベンジルアルコールからなる。PABは、微生物を効果的に素早く殺菌する。PABは、ProSep(R)ファミリーの製品に使用されることが以前に記載されている。この製品は、酸性溶液を使用してのみ洗浄されることができ、GenentechとEMD Millipore Corporationとにより共同開発された(M.Rogers et al.J.Chromatogr.A 1216(2009)4589−4596)。
【0075】
本発明は、下記実施例によりさらに例示される。下記実施例は、限定として解釈されるべきものではない。この出願および図面全体を通して引用された、全ての参考文献、特許および公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0076】
[実施例1]
SpAリガンドの生成
配列番号3および配列番号4に説明されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする合成遺伝子が、DNA2.0(Menlo Park,CA)から取得される。各合成遺伝子の5’端は、開始メチオニンについてのコドンを含む。各遺伝子の5’および3’端はそれぞれ、NdeIおよびBamHI制限部位を含む。これらの合成遺伝子および使用される発現ベクター、即ち、pET11a(EMD Millipore Corporation,Billerica,MA)を、NdeIおよびBamHI(NEW ENGLAND BIOLABS,Ipswich,MA)により消化し、DNAフラグメントを、0.7% アガロースTAEゲル上で分離し、適切なDNAフラグメントを、QIAGEN(Valencia,CA)からのゲル抽出キットを使用して、切除および精製する。精製したインサートを、pET11aまたは任意の他の適切な発現ベクターの骨格内に、T4 DNAリガーゼ(NEW ENGLAND BIOLABS,Ipswich,MA)を使用してライゲートする。
【0077】
ライゲーション反応物を、メーカーの説明書通りに、DH5α(コンピテントE.coli(INVITROGEN,Carlsbad,CA)内に形質転換し、100μg/mL アンピシリンを含むTechnova LB培地上に播種し、37℃で一晩インキュベートする。精製したDNAを得るために、個々のコロニーを選び、100μg/mL アンピシリンを含むLB培地中で、一晩培養する。DNAを、QIAGEN(Valencia,CA)からのスピンミニプレップキットを使用して精製する。組換えプラスミドの特定を、NdeIおよびBamHI(NEW ENGLAND BIOLABS,Ipswich,MA)を使用する制限消化分析により確認する。
【0078】
[実施例2]
SpA系リガンドの発現および精製
任意の適切な微生物発現系が、本明細書に記載された種々のSpAリガンドを発現させるのに使用され得る。例えば、このタンパク質は、pETベクター、例えば、pET11a(EMD)を使用して、大腸菌株、例えば、BL21(DE3)株(PROMEGA,Madison WI)中で発現されてもよい。
【0079】
単一コロニーを、プレートから選択し、100μg/mL アンピシリンを含むLB培地中において、37℃で一晩増殖させる。一晩培養物は、100μg/mL アンピシリンを含む新たなLB培地中で、100倍希釈し、600nmでの光学密度が約0.8となる細胞密度に増殖させる。1mM イソプロピル−ベータ−D−チオガラクトピラノシドの添加後に、細胞を、さらに2時間増殖させる。発現を、SDS−PAGE分析およびウェスタンブロットにより確認する。
【0080】
細胞を、遠心分離(4000rpm、4℃、5分)により収集し、20mM イミダゾールを含む、3mLのリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁する。細胞を、超音波処理により溶解する。細胞の残骸を、遠心分離(4000rpm、4℃、30分)によりペレット化する。SpAリガンドを、50mLのIgG親和性樹脂(制御された細孔ガラス上に固定されているポリクローナルhIgG)を使用し、500mLの細胞ライゼートをアプライして精製する。カラムを、30mLのリン酸緩衝整理食塩水で洗浄する。SpAを、0.1M クエン酸、pH3中で溶出する。SpAを、Milli−Q(R)水(EMD Millipore Corporation,Billerica,MA)中で一晩透析する。タンパク質濃度を、理論的な吸光係数(Pace et.al.,Protein Science 4:2411(1995)に基づいて、UV分光計を使用して確認する。
【0081】
[実施例3]
SpA系リガンドの固体支持体への付着
実施例1および2に記載されたように、種々のリガンドの生成および発現後に、リガンドを、多点付着により、固体支持体に固定する。
【0082】
典型的な実験では、プロテインAリガンド(配列番号3に説明されたアミノ酸配列、10から20mg/mL)を、1から1.1M Na
2SO
4の存在下において、ポリビニルエーテル固体支持体(Merck KGaA proprietary materials)を、固体支持体上のエポキシ基とリガンド上の数多くのアミノ基との反応により、架橋して一晩固定する(Hermanson et.al.Academic Press,1992,page 118)。この樹脂を、樹脂Aと指定する。
【0083】
配列番号4に説明されたアミノ酸配列を有するリガンドおよびネイティブなプロテインP(Lonza,Ltd.,Switzerland)のカップリング法は、上記方法に類似する。対応する樹脂を、樹脂Bおよび樹脂Cと指定する。
【0084】
[実施例4]
酸性溶液およびアルカリ性溶液への樹脂A、BおよびCの長期暴露
この実験において、上記した樹脂A、BおよびCをそれぞれ、種々の酸性溶液およびアルカリ性溶液に暴露する。下記溶液:HCl(0.3%、v/v)、pH1.5;H
3PO
4(0.15M)、pH1.5;0.1M NaOHおよび0.5M NaOHが調製される。
【0085】
樹脂A、BおよびC(2mLの各樹脂が、各溶液条件についてダプリケートで使用される。)は、5”使い捨てカラム(Evergreen Scientific,Los Angeles,CA)内に移され、前述の溶液の1つにおいて、5分間慣らされる。溶液は、真空により除去され、樹脂は、15mLのポリプロピレン製コニカルチューブ(ThermoFisher,Waltham,MA)に移され、続けて、10mLの対応する溶液を添加する。対応する溶液中での樹脂スラリーのチューブが、LabQuake(R)回転機(ThermoFisher,Waltham,MA)に、室温で25時間装填され、続けて、Evergreen 5”使い捨てカラム中で5回洗浄され、4mLのMilli−Q(R)水(EMD Millipore Corporation,Billerica,MA)で3回洗浄される。
【0086】
【表1】
【0087】
[実施例5]
長期のアルカリおよび酸暴露前後での、樹脂A、BおよびCの静的結合能評価
この実験では、(1mL容量における)樹脂A、BおよびCそれぞれを、コントロールサンプルと共に、0.3% HCl;0.15M H
3PO
4;0.1M NaOH;または0.5M NaOHに暴露し、150mM NaClを含む20% エタノールの保存バッファー中に保存し、Milli−Q(R)水(EMD Millipore Corporation,Billerica,MA)中で、10%スラリーに調製する。1mLの各樹脂スラリーを、10mM リン酸緩衝生理食塩水中において、15mLのポリクローナルIgG(SERACARE、1mg/mL)に添加し、室温で4時間穏やかに混合する。280nmにおけるUV吸光の低下を、酸またはアルカリ暴露前後における、樹脂IgG結合能を算出するのに使用する。保持されたIgG結合能の割合を、酸またはアルカリ暴露後のIgG結合能を、酸またはアルカリ条件に暴露されていないコントロールサンプルの同結合能で割ることにより算出する。
【0088】
図1は、このような実験の結果を示す。3つ全ての樹脂サンプルは、0.3% HClまたは0.15M H
3PO
4のいずれかに対する25時間の暴露に対し、コントロールに対して最初の結合能の95%を上回る保持を示す。樹脂AおよびBは、0.1M NaOHへの暴露に対し、コントロールに対して95%を上回る結合能を保持しており、0.5M NaOHへの暴露に対し、コントロールに対して約75%の結合能を保持している。樹脂Cは、0.1M NaOHへの暴露に対し、コントロールに対して約65%の結合能を保持しており、0.5M NaOHへの暴露に対し、コントロールに対して約38%の結合能を保持している。試験の標準偏差は、約1から3%である。このため、樹脂AおよびBのアルカリ溶液暴露に対して保持された結合能は、同等と考えられる。
【0089】
[実施例6]
長期の酸暴露前後での樹脂Bの動的結合能評価
この実験では、市販のポリクローナルIgGを使用して樹脂の動的能力を試験するための標準的な方法を使用する。簡潔に、本発明に基づく樹脂Bを、50mM Tris w、25mM NaCl、5mM ETDA、pH7.2(EQバッファー)中のOmnifitカラム(6.6mm×50mm)内に充填する。流速を、100cm/時間に設定する。充填したカラムを、10カラム容量(CV)のEQバッファーで平衡化する。UV
280nmが、最初のIgG濃度の50%超に達するまで、ポリクローナルIgG(Seracare、EQバッファーにおける2mg/mL、pH7.2)を、カラム上に充填する。平衡化バッファーによる洗浄後、IgGを、0.1M酢酸、pH3.0で溶出する。最初のランのEQバッファーを使用するカラム平衡化後に、樹脂を、0.15M H
3PO
4を使用して、流速50cm/時間で25時間洗浄し、続けて、更なるIgG動的能力を測定する。0.15M H
3PO
4への更なる25時間の暴露を行い、続けて、3回目の動的結合能測定を行う。暴露サイクルを、15分間の暴露として定義する。従って、25時間の暴露は、合計100サイクルを表現している。2回の25時間暴露は、合計200サイクルの暴露を表現する。
【0090】
10%ブレークスルーでの動的結合能を、UV
280nmが最初のIgG濃度の10%に達した時点での、充填したIgG量に基づいて算出する。25時間および50時間の暴露前後で測定した動的結合能を比較し、
図2に示す。0.15M H
3PO
4への200サイクル(15分/サイクル)の暴露に対する樹脂の動的結合能において、顕著な変化は観察されない。
【0091】
[実施例7]
長期のアルカリ暴露前後での樹脂Bの動的結合能評価
この実験では、市販のポリクローナルIgGを使用して樹脂の動的能力を試験するための標準的な方法を使用する。簡潔に、本発明に基づく樹脂Bを、50mM Tris w、25mM NaCl、5mM ETDA、pH7.2中のOmnifitカラム(6.6mm×50mm)内に充填する。流速を、100cm/時間に設定する。充填したカラムを、10カラム容量(CV)のEQバッファーで平衡化する。UV
280nmが、最初のIgG濃度の50%超に達するまで、ポリクローナルIgG(Seracare、EQバッファーにおける2mg/mL、pH7.2)を、カラム上に充填する。平衡化バッファーによる洗浄後、IgGを、0.1M酢酸、pH3.0で溶出する。最初のランのEQバッファーを使用するカラム平衡化後に、樹脂を、0.1M NaOHを使用して、流速50cm/時間で25時間洗浄し、続けて、更なるIgG動的能力を測定する。0.1M NaOHへの更なる25時間の暴露を行い、続けて、3回目の動的結合能測定を行う。暴露サイクルを、15分間の暴露として定義する。従って、25時間の暴露は、合計100サイクルを表現している。2回の25時間暴露は、合計200サイクルの暴露を表現する。暴露サイクルを、15分間の暴露として定義する。このため、25時間の暴露は、合計100サイクルを表現している。
【0092】
10%の動的結合能を、UV
280nmが最初のIgG濃度の10%に達した時点での、充填したIgG量に基づいて算出する。25時間および50時間の暴露前後で測定された動的結合能を比較し、
図2に示す。0.1M NaOHへの200サイクル(15分/サイクル)の暴露に対する樹脂の動的結合能において、顕著な変化は観察されない。
【0093】
[実施例8]
交互法における長期の酸およびアルカリ暴露前後での樹脂Bの動的結合能評価
この実験では、市販のポリクローナルIgGを使用して樹脂の動的能力を試験するための標準的な方法を使用する。簡潔に、本発明に基づく樹脂Bを、50mM Tris w、25mM NaCl、5mM ETDA、pH7.2中のOmnifitカラム(6.6mm×50mm)内に充填する。流速を、100cm/時間に設定する。充填したカラムを、10カラム容量(CV)のEQバッファーで平衡化する。UV
280nmが、最初のIgG濃度の50%超に達するまで、ポリクローナルIgG(Seracare、EQバッファーにおける2mg/mL、pH7.2)を、カラム上に充填する。平衡化バッファーによる洗浄後、IgGを、0.1M酢酸、pH3.0で溶出する。最初のランのEQバッファーを使用するカラム平衡化後に、まず、樹脂を、0.1M NaOHを使用して、流速50cm/時間で、2.5時間(各15分の10サイクル)洗浄し、続けて、中性のEQバッファーに30分間暴露する。これを、工程1と呼ぶ。その後、樹脂を、0.15M H
3PO
4を使用して、流速50cm/時間で、2.5時間洗浄し、続けて、EQバッファーに30分間暴露する。これを、工程2と呼ぶ。ついで、工程1および2を、もう4回繰り返し、25時間または100サイクルの合計酸およびアルカリ暴露に達することにより、交互に酸およびアルカリ条件に樹脂を暴露する。その後、更なるIgG動的能力測定を行い、続けて、上記した交互の0.1M NaOHおよび0.15M H
3PO
4への更なる25時間の暴露を行う。この後、更なる動的結合能測定を行う。10%の動的結合能を、UV
280nmが最初のIgG濃度の10%に達した時点での、充填したIgG量に基づいて算出する。25時間および50時間の交互の酸およびアルカリ暴露前後で測定された動的結合能を比較し、
図2に示す。リン酸およびNaOHへの合計200サイクル(15分/サイクル)の交互暴露に対する樹脂の動的結合能において、顕著な変化は観察されない。
【0094】
[実施例9]
長期の酸暴露後、長期のアルカリ暴露後ならびに長期の酸およびアルカリ暴露後の樹脂Bにより得られた生成物の純度
ポリクローナルIgG(Seracare,Milford,MA)を、非発現CHO−Sフィード(Xcellerex,Marlborough,MA)に添加し、0.22μmの滅菌フィルタを通してろ過する。ろ過したフィード中の最終的なIgG濃度は、3.5mg/mLである。このフィードを、実施例6(酸暴露)、7(アルカリ暴露)および8(酸およびアルカリの交互暴露)からのクロマトグラフィーカラム、ならびに、保存溶液(150mM NaClを含む20%エタノール)中の樹脂Bが充填したコントロールカラム上に、樹脂1mLあたり20mgのIgGにおいて、4分の滞留時間で充填する。樹脂を、0.1M クエン酸塩、pH5.5で洗浄し、0.1M 酢酸、pH3.0で溶出する。溶出プールを、Cygnus(Southport,NC)3G CHO−S ELISAキットを使用して、宿主細胞タンパク質レベルについて分析する。生成物の純度を、以下の表2に示す。
【0095】
これらのサンプルの宿主細胞タンパク質(HCP)は全て低いが、交互の酸およびアルカリ溶液で洗浄されている樹脂サンプルは、溶出プールにおける最も低いレベルのHCPを示す。これは、おそらく、酸およびアルカリ洗浄の相乗的な洗浄効果によるものである。
【0096】
【表2】
【0097】
[実施例10]
PAB溶液への暴露に対して保持された樹脂の静的結合能研究
樹脂AおよびB(各5mL、各条件についてダプリケートで使用される。)を、PAB溶液(120mM リン酸、167mM 酢酸、2.2%(v/v) ベンジルアルコール)中に、4時間または24時間のいずれかで浸す。ついで、PAB浸漬樹脂サンプルを、直ちにリン酸緩衝生理食塩水(10mM、pH7.4)により、2カラム容量で少なくとも3回フラッシュする。ついで、樹脂を、1mL容量のMilli−Q(R)水(EMD Millipore Corporation,Billerica,MA)に添加し、ついで、10%スラリーに調製する。1mLのこのスラリーを、10mM リン酸緩衝生理食塩水中において、15mLのポリクローナルIgG(SERACARE、1mg/mL)に添加し、室温で4時間回転させる。280nmにおけるUV吸光の低下を、PAB暴露前後における能力を算出するのに使用する。保持されたIgG結合能を、4時間および24時間でのPAB暴露後のIgG結合能を、PABに暴露されていないコントロールの同結合能で割ることにより算出する。表3に示されたように、4時間および24時間の暴露後に、静的結合能における顕著な変化は観察されない。
【0098】
【表3】
【0099】
[実施例11]
非発現CHOフィードによる樹脂AおよびBの洗浄研究
浄化した細胞培養物に暴露したプロテインA樹脂についてのH
3PO
4およびNaOHの洗浄能は、H
3PO
4が極端に酸性であり、一方、NaOHが非常にアルカリ性であるため、おそらく異なる。
【0100】
洗浄能における差異を試験し、H
3PO
4およびNaOH洗浄後に汚損されたプロテインA樹脂に残ったものに基づいて比較する。
【0101】
非発現CHO−Sの浄化された細胞培養物を、酸またはアルカリの溶液の洗浄能を理解するために、樹脂AおよびBで充填したカラムを汚損させるのに使用する。樹脂AおよびBを、Omnifitカラム(内径6.6mm×ベッド高さ3cm)内に、各2つのカラム(樹脂Aの2つのカラムおよび樹脂Bの2つのカラム)で充填する。この試験の流速を、100cm/時間で設定する。4つ全てのカラムを、本明細書に記載されたEQバッファーで平衡化し、細胞培養物溶液で24時間充填および再循環する。1セットの樹脂AおよびBを含むカラムを、0.1M NaOHで30分間洗浄し、ついで、EQバッファーで30分間再度平衡化する。他のセットの樹脂AおよびBを含むカラムを、0.15M H
3PO
4、pH1.5で30分間洗浄し、ついで、EQバッファーで30分間再平衡化する。ついで、各カラムの上部1cmにおける樹脂を、分析用に取り出す。
【0102】
[実施例12]
実施例11からの抽出物の樹脂抽出および分析
実施例11におけるカラムの上部からの樹脂を、平衡化バッファーでさらに洗浄し、pH7.0、50℃での20mM Trisにおける2% SDSで、250rpmでのインキュベータ中で一晩抽出する。翌日、サンプルを、微量遠心分機において、13500rpmでスピンする。
【0103】
ついで、SDSを除去し、Centricon装置(3KD、EMD Millipore Corporation,Billerica,MA)を使用して、少なくとも5回のバッファー交換後に、平衡化バッファーに交換する。少量のバッファー交換済み樹脂抽出物を、SDS−PAGE、2Dゲルおよび/またはLC−MSにより分析する。
【0104】
観察されたように、樹脂Aについて、酸洗浄およびアルカリ洗浄は、異なる宿主タンパク質種を異なる程度で除去する。このことは、酸およびアルカリでの洗浄がそれぞれ、汚損されたカラムから、異なる不純物を除去し得ることを証明している。従って、酸性溶液、例えば、H
3PO
4およびアルカリ性溶液、例えば、NaOHにより交互洗浄は、プロテインAカラムの不純物の相乗的除去およびより効果的な洗浄効果をもたらすため、カラムの寿命を延ばす。
【0105】
本明細書は、本明細書内で引用された参考文献の教示を考慮して、最も完全に理解される。同参考文献は、参照により組み込まれる。本明細書内の実施形態は、本発明における実施形態の例示を提供し、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。多くの他の実施形態が本発明に包含されることは、当業者であれば容易に理解する。全ての刊行物および発明は、その全体が参照により包含される。参照により組み込まれた資料が本明細書を否定する、または、本明細書と矛盾する限りにおいて、本明細書が、任意のこのような資料に取って代わるものとする。本明細書における任意の参考文献の引用は、このような参考文献が本発明に対する先行技術であることを認めるものではない。
【0106】
別段の指示がない限り、特許請求の範囲を含む本明細書に使用される成分、細胞培養物、処理条件等の量を現す全ての数は、全ての事例において、「約」という用語により修飾されると理解されたい。従って、別段の指示がない限り、数的パラメータは、近似であり、本発明により得られるべき求められた所望の特性に応じて変動し得る。別段の指示がない限り、一連の要素に先立つ「少なくとも」という用語は、この一連における全ての要素を意味すると理解されたい。通例の実験により、本明細書に記載された発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を、当業者であれば理解するか、または、確認可能である。このような均等物は、下記特許請求の範囲に含むものとする。
【0107】
当業者に明らかであるように、発明の精神および範囲を逸脱することなく本発明の多くの修飾および変更を加える事ができる。本明細書に記載された特定の実施形態は、例示としてのみ提供され、何ら限定するものではない。明細書および実施例は、例示としてのみ考えられ、本発明の真の範囲および精神は、下記特許請求の範囲により示されるものとする。