(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料タンク内の蒸発燃料をキャニスタに吸着させ、その吸着された蒸発燃料をエンジンに吸入させ、燃料タンクとキャニスタとを連通させる弁として、弁座に対する弁可動部の軸方向移動距離であるストローク量が初期状態から所定量以内では閉弁状態に維持され、前記燃料タンクを密閉状態に保持可能な流量制御弁を用いた蒸発燃料処理装置において、
燃料タンク内の空間圧力を内圧として検出する内圧センサと、
前記流量制御弁の開弁動作開始後、内圧センサによって検出される内圧の二階微分値を求め、この二階微分値が所定値以上のとき、流量制御弁の開弁位置を開弁開始位置として検出する開弁開始位置検出手段と、
開弁開始位置検出手段によって検出された開弁開始位置を、流量制御弁の開度制御を行う際の学習値として記憶する学習手段とを備える蒸発燃料処理装置。
燃料タンク内の蒸発燃料をキャニスタに吸着させ、その吸着された蒸発燃料をエンジンに吸入させ、燃料タンクとキャニスタとを連通させる弁として、弁座に対する弁可動部の軸方向移動距離であるストローク量が初期状態から所定量以内では閉弁状態に維持され、前記燃料タンクを密閉状態に保持可能な流量制御弁を用いた蒸発燃料処理装置において、
燃料タンク内の空間圧力を内圧として検出する内圧センサと、
前記流量制御弁が閉弁されている状態で、前記内圧センサによって検出される内圧の単位時間当たりの変化量を求める第1内圧変化量算出手段と、
前記流量制御弁の開弁動作開始後、前記内圧センサによって検出される内圧の単位時間当たりの変化量を求める第2内圧変化量算出手段と、
前記第1内圧変化量算出手段と第2内圧変化量算出手段によってそれぞれ求められる各変化量の差が所定値以上のとき、流量制御弁の開弁位置を開弁開始位置として検出する開弁開始位置検出手段と、
該開弁開始位置検出手段によって検出された開弁開始位置を、前記流量制御弁の開度制御を行う際の学習値として記憶する学習手段とを備える蒸発燃料処理装置。
燃料タンク内の蒸発燃料をキャニスタに吸着させ、その吸着された蒸発燃料をエンジンに吸入させ、燃料タンクとキャニスタとを連通させる弁として、弁座に対する弁可動部の軸方向移動距離であるストローク量が初期状態から所定量以内では閉弁状態に維持され、前記燃料タンクを密閉状態に保持可能な流量制御弁を用いた蒸発燃料処理装置において、
燃料タンク内の空間圧力を内圧として検出する内圧センサと、
前記内圧センサによって検出される内圧の単位時間当たりの変化量を求める第3内圧変化量算出手段と、
前記第3内圧変化量算出手段によって求められた変化量の前回値と今回値との差が所定値以上のとき、流量制御弁の開弁位置を開弁開始位置として検出する開弁開始位置検出手段と、
該開弁開始位置検出手段によって検出された開弁開始位置を、流量制御弁の開度制御を行う際の学習値として記憶する学習手段とを備える蒸発燃料処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、燃料タンクの内圧は、燃料タンクの置かれた環境によっても変動し、内圧低下によって開弁開始位置を検出すると誤検出することがある。例えば、燃料タンク内の空間に大量にベーパが発生すると、ベーパによって内圧が上昇し、開弁開始位置において内圧低下が生じないことがある。
【0004】
このような問題に鑑み本発明の課題は、蒸発燃料処理装置におけるキャニスタと燃料タンクとを接続する経路上の弁として上記流量制御弁を用いたものにおいて、開弁動作を開始後、燃料タンクとキャニスタとが連通される開弁開始位置の検出を、燃料タンク内圧の変動分を考慮して行うことにより、燃料タンクの置かれた環境変化に係わらず、開弁開始位置を正確に検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における第1発明は、燃料タンク内の蒸発燃料をキャニスタに吸着させ、その吸着された蒸発燃料をエンジンに吸入させ、燃料タンクとキャニスタとを連通させる弁として、弁座に対する弁可動部の軸方向移動距離であるストローク量が初期状態から所定量以内では閉弁状態に維持され、前記燃料タンクを密閉状態に保持可能な流量制御弁を用いた蒸発燃料処理装置において、燃料タンク内の空間圧力を内圧として検出する内圧センサと、前記流量制御弁の開弁動作開始後、内圧センサによって検出される内圧の二階微分値を求め、この二階微分値が所定値以上のとき、流量制御弁の開弁位置を開弁開始位置として検出する開弁開始位置検出手段と、開弁開始位置検出手段によって検出された開弁開始位置を、流量制御弁の開度制御を行う際の学習値として記憶する学習手段とを備える。
【0006】
第1発明によれば、燃料タンク内圧の二階微分値が所定値以上のとき、流量制御弁の開弁位置を開弁開始位置として検出する。そのため、燃料タンク内圧が蒸発燃料の増加、気温の変化等の原因により増減変動しているときでも、開弁開始位置を正確に検出することができる。
【0007】
本発明における第2発明は、燃料タンク内の蒸発燃料をキャニスタに吸着させ、その吸着された蒸発燃料をエンジンに吸入させ、燃料タンクとキャニスタとを連通させる弁として、弁座に対する弁可動部の軸方向移動距離であるストローク量が初期状態から所定量以内では閉弁状態に維持され、前記燃料タンクを密閉状態に保持可能な流量制御弁を用いた蒸発燃料処理装置において、燃料タンク内の空間圧力を内圧として検出する内圧センサと、前記流量制御弁が閉弁されている状態で、前記内圧センサによって検出される内圧の単位時間当たりの変化量を求める第1内圧変化量算出手段と、前記流量制御弁の開弁動作開始後、前記内圧センサによって検出される内圧の単位時間当たりの変化量を求める第2内圧変化量算出手段と、前記第1内圧変化量算出手段と第2内圧変化量算出手段によってそれぞれ求められる各変化量の差が所定値以上のとき、流量制御弁の開弁位置を開弁開始位置として検出する開弁開始位置検出手段と、該開弁開始位置検出手段によって検出された開弁開始位置を、前記流量制御弁の開度制御を行う際の学習値として記憶する学習手段とを備える。
【0008】
第2発明によれば、流量制御弁が閉弁されている状態における燃料タンク内圧の単位時間当たりの変化量と、流量制御弁の開弁動作開始後における燃料タンク内圧の単位時間当たりの変化量との差が所定値以上のとき、流量制御弁の開弁位置を開弁開始位置として検出する。そのため、燃料タンク内圧が蒸発燃料の増加、気温の変化等の原因により増減変動しているときでも、開弁開始位置を正確に検出することができる。
【0009】
本発明における第3発明は、燃料タンク内の蒸発燃料をキャニスタに吸着させ、その吸着された蒸発燃料をエンジンに吸入させ、燃料タンクとキャニスタとを連通させる弁として、弁座に対する弁可動部の軸方向移動距離であるストローク量が初期状態から所定量以内では閉弁状態に維持され、前記燃料タンクを密閉状態に保持可能な流量制御弁を用いた蒸発燃料処理装置において、燃料タンク内の空間圧力を内圧として検出する内圧センサと、前記内圧センサによって検出される内圧の単位時間当たりの変化量を求める第3内圧変化量算出手段と、前記第3内圧変化量算出手段によって求められた変化量の前回値と今回値との差が所定値以上のとき、流量制御弁の開弁位置を開弁開始位置として検出する開弁開始位置検出手段と、該開弁開始位置検出手段によって検出された開弁開始位置を、流量制御弁の開度制御を行う際の学習値として記憶する学習手段とを備える。
【0010】
第3発明によれば、燃料タンク内圧の単位時間当たりの変化量の前回値と今回値との差が所定値以上のとき、流量制御弁の開弁位置を開弁開始位置として検出する。そのため、燃料タンク内圧が蒸発燃料の増加、気温の変化等の原因により増減変動しているときでも、開弁開始位置を正確に検出することができる。
【0011】
本発明における第4発明は、上記第2又は第3発明において、前記開弁開始位置検出手段は、前記第1内圧変化量算出手段によって求められた変化量が圧力増加の場合、前記第2内圧変化量算出手段によって求められた変化量が前記第1内圧変化量算出手段によって求められた変化量に比べて所定値以上小さいとき、若しくは、前記第3内圧変化量算出手段によって求められた変化量の前回値が圧力増加の場合、前記第3内圧変化量算出手段によって求められた変化量の今回値が前回値に比べて所定値以上小さいとき、流量制御弁の開弁位置を開弁開始位置として検出する。
【0012】
本発明における第5発明は、上記第2又は第3発明において、前記開弁開始位置検出手段は、前記第1内圧変化量算出手段によって求められた変化量が圧力降下の場合、前記第2内圧変化量算出手段によって求められた変化量が前記第1内圧変化量算出手段によって求められた変化量に比べて所定値以上大きいとき、若しくは、前記第3内圧変化量算出手段によって求められた変化量の前回値が圧力降下の場合、前記第3内圧変化量算出手段によって求められた変化量の今回値が前回値に比べて所定値以上大きいとき、流量制御弁の開弁位置を開弁開始位置として検出する。
【0013】
本発明における第6発明は、上記第2発明において、前記開弁開始位置検出手段は、前記第1内圧変化量算出手段によって求められる変化量が、燃料タンクの内圧が安定状態にあるか否かを判定するための基準値より小さく安定状態にあると判定されたとき、前記内圧センサによって検出される内圧の単位時間当りの変化量が所定値以上か否かに基づいて開弁開始位置を検出する。
【0014】
流量制御弁の開弁動作が開始され、開弁開始位置に達して燃料タンクとキャニスタとが連通されると、エンジンに蒸発燃料が供給される。そのとき、蒸発燃料の影響でエンジンの空燃比が瞬間的に変化する。この空燃比の変化を検出することにより流量制御弁の開弁開始位置を検出することができる。本発明では、内圧センサによって検出される燃料タンク内圧の変化に基づいて流量制御弁の開弁開始位置を検出しているが、上述の空燃比の変化による検出を併用して、より精度良く開弁開始位置を検出することもできる。また、空燃比に代えて、エンジンの空燃比制御において用いられている空燃比のフィードバック補正量の変化を検出して、この検出結果を併用して開弁開始位置を検出することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜3は、本発明の第1発明〜第3発明に対応する概念図であり、ここでの説明は繰り返しとなるため省略する。
【0017】
図4〜8は、本発明の第1実施形態を示す。この実施形態は、
図4に示すように、車両のエンジンシステム10に蒸発燃料処理装置20を付加している。
【0018】
図4において、エンジンシステム10は、周知のものであり、エンジン本体11に吸気通路12を介して空気に燃料を混ぜた混合気を供給している。空気はスロットル弁14によって流量を制御して供給され、燃料は燃料噴射弁(不図示)によって流量を制御して供給されている。スロットル弁14と燃料噴射弁は共に制御回路(ECU)16に接続されており、スロットル弁14は制御回路16にスロットル弁14の開弁量に関する信号を供給し、燃料噴射弁は制御回路16によって開弁時間を制御されている。燃料噴射弁には燃料が供給されており、その燃料は燃料タンク15から供給されている。
【0019】
蒸発燃料処理装置20は、給油中に発生する燃料蒸気、又は燃料タンク15内で蒸発した燃料蒸気(以下、蒸発燃料という)をベーパ通路22を介してキャニスタ21に吸着させている。また、キャニスタ21に吸着された蒸発燃料はパージ通路23を介してスロットル弁14の下流側の吸気通路12に供給されている。ベーパ通路22には、この通路22を開閉するようにステップモータ式封鎖弁(本発明における流量制御弁に相当する。以下、単に封鎖弁ともいう)24が設けられ、パージ通路23には、このパージ通路23を開閉するようにパージ弁25が設けられている。
【0020】
封鎖弁24は、ステップモータによる開弁動作開始後、弁座に対する弁可動部の軸方向移動距離であるストローク量が初期状態から所定量以内では閉弁状態に維持され、燃料タンク15を密閉状態に保持可能である。そして、ストローク量は連続的に変更可能とされている。上記ストローク量が上記所定量を超えて変化すると、封鎖弁24は開弁状態とされて燃料タンク15とキャニスタ21との連通が行われる。このストローク量が所定量を超える弁体の位置が本発明における開弁開始位置に相当する。
【0021】
キャニスタ21内には、吸着材としての活性炭21aが装填されており、ベーパ通路22からの蒸発燃料を活性炭21aにより吸着し、この吸着された蒸発燃料をパージ通路23へ放出するようにしている。キャニスタ21には大気通路28も接続されており、キャニスタ21にパージ通路23を介して吸気負圧が印加されると、大気通路28を通じて大気圧が供給されてパージ通路23を介した蒸発燃料のパージが行われる。大気通路28は、燃料タンク15に設けられた給油口17の付近から大気を吸引するようにされている。
【0022】
制御回路16には、燃料噴射弁の開弁時間等を制御するために必要な各種信号が入力されている。上述のスロットル弁14の開弁量信号の他、
図4に示されているものでは、燃料タンク15の内圧を検出する圧力センサ(本発明の内圧センサに相当し、以下、内圧センサという)26の検出信号を制御回路16に入力している。また、制御回路16は、上述のように燃料噴射弁の開弁時間の制御の他、
図4に示されているものでは、封鎖弁24及びパージ弁25の開弁制御を行っている。
【0023】
図5は、封鎖弁24の構造を示す。封鎖弁24は、バルブケーシング30の円筒形状の弁室32内に、同心状に配置された概ね円筒形状のバルブガイド60を備え、バルブガイド60内に同心状に配置された概ね円筒形状のバルブ体70を備えている。一方、バルブケーシング30の弁室32の下端部中央には、燃料タンク15側のベーパ通路22に連通する流入路34が形成されている。また、バルブケーシング30の弁室32の側壁には、キャニスタ21側のベーパ通路22に連通する流出路36が形成されている。また、バルブケーシング30の流入路34が形成された下端部とは反対側の上端部には、ステープモータ50のモータ本体52が設けられ、弁室32の上端部を封鎖している。
【0024】
バルブガイド60とバルブ体70は、本発明における弁可動部を構成し、また、流入路34が形成されたバルブケーシング30の下端部の開口縁部には円形の弁座40が同心状に形成されている。そして、弁座40に対してバルブガイド60及びバルブ体70が当接することによって封鎖弁24が閉弁状態とされ、弁座40からバルブガイド60及びバルブ体70が離れることによって封鎖弁24が開弁状態とされる。
【0025】
バルブガイド60は、円筒状の筒壁部62と筒壁部62の上端開口部を閉鎖する上壁部64とにより有天円筒状に形成されている。上壁部64の中央部には筒状の筒軸部66が同心状に形成されており、その筒軸部66の内周面に雌ネジ部66wが形成されている。そして、バルブガイド60の筒軸部66の雌ネジ部66wには、ステップモータ50の出力軸54の外周面に形成された雄ネジ部54nが螺合されている。なお、バルブガイド60は、バルブケーシング30に対して、回り止め手段(図示省略)により軸回り方向に回り止めされた状態で軸方向(上下方向)に移動可能に配置されている。従って、ステップモータ50の出力軸54の正逆回転に基いて、バルブガイド60が上下方向(軸方向)に昇降移動可能に構成されている。また、バルブガイド60の周囲には、そのバルブガイド60を上方へ付勢する補助スプリング68が介装されている。
【0026】
バルブ体70は、円筒状の筒壁部72と筒壁部72の下端開口部を閉鎖する下壁部74とから有底円筒状に形成されている。下壁部74の下面には、例えば、円板状のゴム状弾性材からなるシール部材76が装着されている。バルブ体70のシール部材76は、バルブケーシング30の弁座40の上面に対して当接可能に配置されている。
【0027】
バルブ体70の筒壁部72の上端外周面には、円周方向に複数個の連結凸部72tが形成されている。一方、バルブガイド60の筒壁部62の内周側には、バルブ体70の各連結凸部72tに対応してバルブガイド60の移動方向に沿って縦溝状の連結凹部62mが形成されている。従って、バルブ体70の各連結凸部72tは、バルブガイド60の各連結凹部62m内で上下方向に相対移動可能な状態で嵌合している。そして、バルブガイド60の連結凹部62mの底壁部62bがバルブ体70の連結凸部72tに対して下方から当接した状態で、バルブガイド60とバルブ体70とが一体で上方(開弁方向)に移動可能とされている。なお、バルブガイド60の上壁部64とバルブ体70の下壁部74との間には、バルブガイド60に対してバルブ体70を常に下方、即ち、閉弁方向へ付勢するバルブスプリング77が同心状に介装されている。
【0028】
次に、封鎖弁24の基本動作について説明する。
【0029】
封鎖弁24は、制御回路(ECU)16からの出力信号に基づいてステップモータ50を開弁方向、あるいは閉弁方向に予め決められたステップ数だけ回転させることによって動作される。即ち、ステップモータ50が予め決められたステップ数だけ回転することで、ステップモータ50の出力軸54の雄ネジ部54nとバルブガイド60の筒軸部66の雌ネジ部66wとの螺合作用により、バルブガイド60が上下方向に予め決められたストローク量だけ移動するようになる。例えば、封鎖弁24は、全開位置において初期状態からのステップ数が約200Step、ストローク量が約5mmとなるように設定されている。
【0030】
封鎖弁24のイニシャライズ状態(初期状態)では、
図5に示すように、バルブガイド60が下限位置に保持されて、そのバルブガイド60の筒壁部62の下端面がバルブケーシング42の弁座40の上面に対して当接している。また、この状態で、バルブ体70の連結凸部72tは、バルブガイド60の底壁部62bに対して上方に位置しており、バルブ体70のシール部材76はバルブスプリング77のバネ力により、バルブケーシング42の弁座40の上面に押付けられている。即ち、封鎖弁24は全閉状態に保持されている。このときのステップモータ50のステップ数が0Stepであり、バルブガイド60の軸方向(上方向)の移動量、即ち、開弁方向のストローク量が0mmとなる。
【0031】
車両の駐車中には、封鎖弁24のステップモータ50がイニシャライズ状態から開弁方向に、例えば、4Step回転する。これにより、ステップモータ50の出力軸54の雄ネジ部54nとバルブガイド60の筒軸部66の雌ネジ部66wとの螺合作用でバルブガイド60が約0.1mm上方に移動し、バルブケーシング42の弁座40から浮いた状態に保持される。これにより、気温等の環境変化で封鎖弁24のバルブガイド60とバルブケーシング42の弁座40間に無理な力が加わることが抑制されている。なお、この状態で、バルブ体70のシール部材76はバルブスプリング77のバネ力により、バルブケーシング42の弁座40の上面に押付けられている。
【0032】
ステップモータ50が4Step回転した位置からさらに開弁方向に回転すると、雄ネジ部54nと雌ネジ部66wとの螺合作用でバルブガイド60が上方に移動し、
図6に示すように、バルブガイド60の底壁部62bがバルブ体70の連結凸部72tに下方から当接する。そして、バルブガイド60がさらに上方に移動することで、
図7に示すように、バルブ体70がバルブガイド60と共に上方に移動し、バルブ体70のシール部材76がバルブケーシング42の弁座40から離れるようになる。これにより、封鎖弁24が開弁状態とされる。
【0033】
ここで、封鎖弁24の開弁開始位置は、バルブ体70に形成された連結凸部72tの位置公差、バルブガイド60の底壁部62bの位置公差等により、封鎖弁24毎に異なるため、正確に開弁開始位置を学習する必要がある。この学習を行なうのが学習制御であり、封鎖弁24のステップモータ50を開弁方向に回転(ステップ数を増加)させながら燃料タンク15の内圧が所定値以上低下したタイミングに基づいて開弁開始位置のステップ数を検出して記憶する。
【0034】
次に制御回路16にて行われるステップモータ式封鎖弁24の開弁開始位置の学習制御処理ルーチンについて、
図9〜11のタイムチャートを参照しながら
図8のフローチャートに基づいて説明する。このルーチンの処理が実行されると、ステップS1では学習実行フラグがセットされているか否かが判定される。学習実行フラグは、図示しない処理ルーチンにより、ステップモータ式封鎖弁24の開弁開始位置の学習制御が実行されるのに相応しい状態にあるときにセットされる。例えば、車両の電源スイッチであるイグニッションスイッチ(不図示)がオンとされ、車両が停止している状態においてセットされる。学習実行フラグがセットされと、ステップS1は肯定判断され、ステップS2以降の処理にて学習制御が実行される。
【0035】
ステップS2では、その時点の燃料タンク内圧(以下、単にタンク圧ともいう)P1が内圧センサ26によって計測され取り込まれる。次のステップS3では、時間計測用のカウンタが第1所定値に達したか否かが判定される。予め設定した時間が経過し、カウンタが第1所定値に達して、ステップS3が肯定判断されると、ステップS4にてステップS2と同様に内圧センサ26によってその時点のタンク圧P2が計測され取り込まれる。次にステップS5では、上述のように取り込まれたタンク圧P1とP2との差圧Vp1の演算が行われる。ここで求められる差圧Vp1は、
図10から明らかなように、封鎖弁24が閉弁されている状態で内圧センサ26によって検出されるタンク圧の単位時間当たりの変化量に相当する。
【0036】
ステップS6では、ステップS5にて求められた差圧Vp1の絶対値が第2所定値以上か否かが判定される。第2所定値は、タンク圧が安定状態にあるか否かを判定するための基準値である。
【0037】
差圧Vp1の絶対値が
図9に示すように第2所定値より小さい場合、ステップS6は否定判断され、タンク圧は安定状態にあるとして、ステップS20において通常の学習制御が実施される。
図8では図示を省略したが、ステップS20における通常の学習制御では、タンク圧の前回からの低下量が所定値以上となったとき封鎖弁24が開弁開始位置にあるとして検出し、その位置を学習値として記憶する。
【0038】
一方、差圧Vp1の絶対値が
図10、11に示すように第2所定値以上の場合、ステップS6は肯定判断され、ステップS7以降の処理が実行される。ステップS7では、封鎖弁24がステップモータによって
図10のように予め決められた量だけ階段状に開弁される。この間、ステップS8において、ステップS2と同様に、その時点のタンク圧Pnが内圧センサ26によって計測され取り込まれる。そしてステップS9では、時間計測用のカウンタが第3所定値に達したか否かが判定される。予め設定した時間が経過し、カウンタが第3所定値に達して、ステップS9が肯定判断されると、ステップS10にてステップS2と同様に内圧センサ26によってその時点のタンク圧Pn+1が計測され取り込まれる。次にステップS11では、上述のように取り込まれたタンク圧PnとPn+1との差圧Vpの演算が行われる。ここで求められる差圧Vpは、
図10から明らかなように、封鎖弁24が開弁動作開始後に内圧センサ26によって検出されるタンク圧の単位時間当たりの変化量に相当する。
【0039】
ステップS12では、ステップS5で求められた差圧Vp1とステップS11で求められた差圧Vpとの変化幅の絶対値が第4所定値以上か否か判定される。第4所定値は、封鎖弁24が開弁開始位置に達して燃料タンク15とキャニスタ21とが連通され、燃料タンク15からキャニスタ21に蒸発燃料が流れ始めることによって燃料タンク内圧が低下するのに対応した圧力の変化幅に設定されている。
図10のように、タンク内圧がPn+1、Pn+2のタイミングでは、差圧Vpの差圧Vp1に対する変化幅が略ゼロで、第4所定値以上とならないため、ステップS12は否定判断され、ステップS7以降の処理が繰り返される。タンク内圧がPn+3のとき、差圧Vpの差圧Vp1に対する変化幅の絶対値が第4所定値以上となる(タンク圧の単位時間当たりの変化量VpがVp1に比べて第4所定値以上小さくなる)ため、ステップS12は肯定判断され、ステップS13において、そのときの封鎖弁24の開弁位置が開弁開始位置として記憶される。実際には、Pn+2のタイミングで封鎖弁24が階段状に開弁されたとき、封鎖弁24におけるバルブ体70のシール部材76がバルブケーシング30の弁座40から離れて封鎖弁24が開かれ、燃料タンク15とキャニスタ21とが連通される。それに伴ってタンク圧の上昇速度が低くなっている。このようにして封鎖弁24の開弁開始位置の学習制御が完了すると、ステップS14において、学習完了フラグがセットされ、次に上述の学習実行フラグがセットされるまで、上述の学習制御処理ルーチンは実行されない。なお、ステップS5、ステップS11及びステップS12の処理は、本発明において二階微分を求めることに相当する。また、ステップS12における第4所定値は、本発明における所定値に相当する。
【0040】
図11のようにタンク圧が降下している状況で、封鎖弁24が開弁され、タンク内圧がPn+3のタイミングで開弁開始位置に達すると、差圧Vpが更に大きく低下して、差圧Vp1に対する変化幅の絶対値が第4所定値以上となって(タンク圧の単位時間当たりの変化量VpがVp1に比べて第4所定値以上大きくなって)、そのときの封鎖弁24の開弁位置が開弁開始位置として記憶される。
図11では封鎖弁24の開弁量のタイムチャートが図示省略されているが、
図10と同様に封鎖弁24は開弁され、Pn+3のタイミングで開弁開始位置が検出される。
【0041】
以上のように封鎖弁24の開弁開始位置の学習制御が行われることによって、その後封鎖弁24を開弁制御する際は、学習値として記憶された開弁開始位置から直ちに封鎖弁24を開弁開始することができる。また、開弁開始位置の学習に際しては、学習のため封鎖弁24が閉じている状態における燃料タンク内圧の変化を考慮して燃料タンク15からキャニスタ21に蒸発燃料が流れ始めることに伴う燃料タンク内圧の低下を検出するので、燃料タンク15の置かれた環境変化に係わらず開弁開始位置を精度良く検出することができる。
【0042】
図12は本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、封鎖弁24が開弁開始位置に達したときに生ずるタンク圧の変化の検出の仕方にある。即ち、第1実施形態では、封鎖弁24が閉じている状態におけるタンク圧の単位時間当たりの変化量を基準にして、封鎖弁24の開弁動作開始後のタンク圧の単位時間当たりの変化量を比較して開弁開始位置を検出した。これに対し、第2実施形態では、一定周期でタンク圧の単位時間当たりの変化量を検出して、検出された単位時間当たりの変化量の前回値を基準にして今回値を比較して開弁開始位置を検出している。具体的には、
図12において、第1実施形態を示す
図11に対して相違する点は、ステップS15を有する点である。その他の構成は両者全く同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0043】
図12のステップS15では、ステップS11にて求められた差圧Vpを、ステップS12において基準値となる差圧Vp1に置換している。そのため、次回、ステップS12において差圧Vp1と差圧Vpとの変化幅を求めて第4所定値と比較する際は、今回求めた差圧Vpと前回求めた差圧Vpとの変化幅の絶対値が第4所定値以上か否か判定することになる。
【0044】
このように第2実施形態によれば、今回求めた差圧Vpと前回求めた差圧Vpとの変化幅に基づいて封鎖弁24の開弁開始位置を検出しているので、気温の変化等の外部要因でタンク圧が徐々に変化した場合でも、その影響を受けることなく開弁開始位置を検出を行うことができる。
【0045】
なお、第2実施形態においては、ステップS2〜ステップS6及びステップS20の処理を省略してもよい。このように省略することにより、封鎖弁24の開弁開始位置検出のための処理プログラムを短くして処理時間を短縮することができる。
【0046】
上記各実施形態におけるステップS2〜ステップS5、ステップS8〜ステップS12の処理は、第1発明における開弁開始位置検出手段に相当する。また、ステップS2〜ステップS5の処理は、本発明における第1内圧変化量算出手段に相当する。更に、ステップS8〜ステップS11の処理は、本発明における第2内圧変化量算出手段に相当する。更にまた、ステップS8〜ステップS11及びステップS15の処理は、本発明における第3内圧変化量算出手段に相当する。更にまた、ステップS12の処理は、第2及び第3発明における開弁開始位置検出手段に相当する。更にまた、ステップS13の処理は、本発明における学習手段に相当する。更にまた、ステップS6及びステップS20の処理は、第6発明における開弁開始位置検出手段に相当する。
【0047】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、流量制御弁をステップモータ式封鎖弁24としたが、ボール状の弁体の回転によって開弁量が連続的に変わる構造のボールバルブとしてもよい。また、上記実施形態では、車両用のエンジンシステムに本発明を適用したが、本発明は車両用に限定されない。車両用のエンジンシステムの場合、エンジンとモータとを併用したハイブリッド車でもよい。