特許第6306198号(P6306198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユタ−イナ ディーディーエス アンド アドバンスト セラピューティクス リサーチ センターの特許一覧

特許6306198医療用導管用の生体内投与性マイクロ粒子
<>
  • 特許6306198-医療用導管用の生体内投与性マイクロ粒子 図000008
  • 特許6306198-医療用導管用の生体内投与性マイクロ粒子 図000009
  • 特許6306198-医療用導管用の生体内投与性マイクロ粒子 図000010
  • 特許6306198-医療用導管用の生体内投与性マイクロ粒子 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306198
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】医療用導管用の生体内投与性マイクロ粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20180326BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20180326BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20180326BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20180326BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 41/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   A61K9/14
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61K47/42
   A61L31/04 110
   A61L31/04 120
   A61L31/06
   A61L31/14 500
   A61P7/04
   A61P41/00
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-547539(P2016-547539)
(86)(22)【出願日】2015年1月21日
(65)【公表番号】特表2017-503819(P2017-503819A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】KR2015000630
(87)【国際公開番号】WO2015111914
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2016年7月20日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0007089
(32)【優先日】2014年1月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515129331
【氏名又は名称】ユタ−イナ ディーディーエス アンド アドバンスト セラピューティクス リサーチ センター
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】リ・ウネ
(72)【発明者】
【氏名】キム・グンス
(72)【発明者】
【氏名】リ・ドンヘン
(72)【発明者】
【氏名】パク・ヨンファン
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−306160(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/113512(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/115252(WO,A1)
【文献】 特表2011−509932(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/004838(WO,A1)
【文献】 特表2012−527924(JP,A)
【文献】 特表2006−514044(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02060253(EP,A1)
【文献】 特開2007−145826(JP,A)
【文献】 特表2011−518780(JP,A)
【文献】 Gastrointestinal Endoscopy,2013年,Vol.78, No.5,p.769-773
【文献】 Advanced Drug Delivery Reviews,2007年,Vol.59,p.207-233
【文献】 Journal of Controlled Release,1990年,Vol.11,p.167-179
【文献】 Digestive Endoscopy,[online],2013年 5月31日,[平成29年4月14日検索],インターネット,DOI:10.1111/den.12054 (Digestive Endoscopy 2014,Vol.26,No.1,p,63-68)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61L 15/00−33/18
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5〜2barの圧力で、内径1.0〜3.5mmの医療用導管を通じて、内視鏡的に生体内投与される粒子であって、前記粒子は、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギネート、ポリリジン及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の非架橋の生体適合性及び生分解性高分子を含む100〜350μmの粒径を有する高分子マイクロ粒子であることを特徴とする、医療用導管用の生体内投与性マイクロ粒子。
【請求項2】
前記非架橋の生体適合性及び生分解性高分子は、ヒアルロン酸、デキストラン、ポリリジン、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくともいずれかである請求項1に記載のマイクロ粒子。
【請求項3】
前記非架橋の生体適合性及び生分解性高分子は、デキストラン及びポリリジンの少なくともいずれかである請求項1又は2に記載のマイクロ粒子。
【請求項4】
前記高分子マイクロ粒子は、非架橋の生体適合性及び生分解性高分子の他に、医療用賦形剤をさらに含み、前記医療用賦形剤が、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルから選択されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のマイクロ粒子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のマイクロ粒子を含む、医療用導管用の生体内投与用組成物。
【請求項6】
デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギネート、ポリリジン及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の非架橋の生体適合性及び生分解性高分子を含む高分子マイクロ粒子を、100〜350μmの粒径に製造する段階を含む、0.5〜2barの圧力で、内径1.0〜3.5mmの医療用導管を通じて、導管の目詰まり現象無しに、内視鏡的に生体内投与されるマイクロ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記非架橋の生体適合性及び生分解性高分子は、ヒアルロン酸、デキストラン、ポリリジン、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくともいずれかである請求項6に記載のマイクロ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記非架橋の生体適合性及び生分解性高分子は、デキストラン及びポリリジンの少なくともいずれかである請求項6又は7に記載のマイクロ粒子の製造方法。
【請求項9】
0.5〜2barの圧力で、内径1.9〜2.2mmの医療用導管を用いる請求項6乃至8のいずれかに記載のマイクロ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用導管の目詰まり現象無しに、内視鏡的に生体内に投与可能なマイクロ粒子、これを含む組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手術の間の出血管理は、重要である。血液損失は、患者に数多くの問題を起こすだけではなく、好ましくない位置の血液の存在は、正常組織に有害であり、手術部位を見る医者の能力を阻害する恐れがある。このような出血は、最小侵襲手術(例えば、腹腔鏡手術)の間でも問題になりえる。
【0003】
胃腸管出血は、臨床でよく接する臨床疾患であって、胃腸管出血の80%以上は、上部胃腸管から発生するが、上部胃腸管出血とは、食道、胃及び十二指腸の病変から出血し、血を吐いたり、血便が発生する疾患である。上部胃腸管出血は、内視鏡検査を通じて、90%以上で病巣を確認することができ、40〜50%が胃潰瘍または十二指腸潰瘍出血が原因であると知られている。
【0004】
最近は、胃や大腸の茸腫切除術や、早期胃がんと大腸がんの治療のための粘膜切除術と治療内視鏡施術がよく行われていることから、このような施術中または施術後に出血が発生し、応急手術が必要になるか、甚だしくは、死亡に至る場合も発生している。
【0005】
最近は、このような手術中の出血あるいは胃腸管出血の治療のために、内視鏡を利用した止血が試みられている。このような内視鏡を利用した止血法は、止血の必要な粘膜損傷部位に、体内に挿入された内視鏡カテーテル(医療用導管)を接近させた後、カテーテルを通じて適切な止血剤を投与及び噴射することにより止血する方法である。そのための医療装置として、現在hemospray(Cook medical Inc.)とEndoclotTMがある。
【0006】
前記装置は、装置に連結された医療用導管に一定大きさの圧力を供給し、止血成分を投与及び噴射するように設計されている。しかし、止血成分の投与途中、導管が詰まってしまう現象が発生し、適期に出血部位の止血ができなくなる問題があった。
【0007】
このために医療用導管に供給する圧力を増加させる方案も考えられるが、前記導管は、人体内に挿入されているため、手術部位が圧力増加によって影響される恐れがあり、導管の目詰まり現象を解決できる水準までの圧力増加が不可能であるという限界点が存在する。
【0008】
本明細書全体にかけて多数の特許文献及び論文が参照されて、その引用が表示されている。引用された特許文献及び論文の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、止血、創傷被覆などのための薬理活性物質を医療用導管を通じて内視鏡的に体内投与時、導管の目詰まり現象を生じない製剤を開発するために鋭意研究した。その結果、粉末状でない、一定粒径を有するマイクロ粒子は、医療用導管の目詰まり現象無しに、目的部位に投与及び噴射が可能であることを確認し、本発明を完成した。
【0010】
したがって、本発明の目的は、医療用導管用の生体内投与性マイクロ粒子を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、医療用導管用の生体内投与性組成物を提供することにある。
【0012】
本発明のまた他の目的は、0.5〜2barの圧力で、内径1.0〜3.5mmの医療用導管を通じて、導管の目詰まり現象無しに、内視鏡的に生体内投与可能なマイクロ粒子の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明のまた他の目的は、生体適合性及び生分解性高分子を含む100〜350μmの粒径を有する高分子マイクロ粒子を、0.5〜2barの圧力で、内径1.0〜3.5mmの医療用導管を通じて、内視鏡的に生体内投与する方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一様態によると、本発明は、0.5〜2barの圧力で、内径1.0〜3.5mmの医療用導管を通じて、内視鏡的に生体内投与される粒子であって、前記粒子は、生体適合性及び生分解性高分子を含む100〜350μmの粒径を有する高分子マイクロ粒子であることを特徴とする、医療用導管用の生体内投与性マイクロ粒子を提供する。
【0016】
本発明の他の様態によると、本発明は、前記医療用導管用の生体内投与性マイクロ粒子が含まれた、医療用導管用の生体内投与用組成物を提供する。
【0017】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、生体適合性及び生分解性高分子を含む高分子マイクロ粒子を、100〜350μmの粒径に製造する段階を含む、0.5〜2barの圧力で、内径1.0〜3.5mmの医療用導管を通じて、導管の目詰まり現象無しに、内視鏡的に生体内投与可能なマイクロ粒子の製造方法を提供する。
【0018】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、生体適合性及び生分解性高分子を含む100〜350μmの粒径を有する高分子マイクロ粒子を、0.5〜2barの圧力で、内径1.0〜3.5mmの医療用導管を通じて、内視鏡的に生体内投与する方法を提供する。
【0019】
本発明者らは、止血、創傷被覆などのための薬理活性物質を、医療用導管を通じて内視鏡的に体内投与時、導管の目詰まり現象を生じない製剤を開発するために鋭意研究した。その結果、粉末状でない、一定粒径を有するマイクロ粒子は、医療用導管の目詰まり現象無しに、目的部位に投与及び噴射が可能であることを確認した。
【0020】
本発明は、特定内径を有する医療用導管(内視鏡カテーテル)に特定圧力を加えて製剤(例えば、医療用接着剤)を投与する場合、100〜350μmの粒径を有するマイクロ粒子のみが、導管の目詰まり現象無しに投与及び噴射可能であるという発見に基づくものである。したがって、本発明によると、前記範囲の大きさを有するマイクロ粒子は、医療用導管(内径1.0〜3.5mm、0.5〜2bar圧力)を通じて、導管の目詰まり現象無しに、生体内に内視鏡的に投与可能である。
【0021】
本明細書に使用された用語‘内視鏡的に投与’は、生体内に挿入されたカテーテル(内視鏡カテーテル)のような医療用導管を通じて、体内組織などの目的部位に投与することを意味する。hemosprayとEndoclotTMのように、使用者の作動によって、備えられた内視鏡カテーテル(生体内に挿入)に圧力を供給して物質を投与させる噴射装置を利用した投与を、内視鏡的に投与することである。但し、本発明が適用可能な噴射装置は、hemosprayとEndoclotTMに限らず、装置に備えられた導管を通じて体内に物質を注入可能な装置であれば、制限なく適用可能である。
【0022】
本発明において、医療用導管は、医療分野で通常的に使用されるカテーテルのような、小さい直径の管を意味し、本明細書では、医療用導管と内視鏡カテーテルとを相互交換的に使用する。
【0023】
本発明のマイクロ粒子は、生体適合性及び生分解性の高分子として製造される。
【0024】
本明細書で使用された用語‘高分子マイクロ粒子’または‘生体内投与性マイクロ粒子’は、生体適合性且つ生分解性の特性を有する高分子が、粒子間力あるいは他の物質(例えば、賦形剤)を通じて集合体を形成して得られたマイクロサイズの粒子状物質を意味する。したがって、表現用語を問わず、生体適合性及び生分解性高分子を含み、且つ粒径が100〜350μmである粒子状物質(錠剤含み)であれば、本発明の意図するマイクロ粒子の範囲に含まれる。このようなマイクロ粒子としては、例えば、顆粒、微粒球、多孔性微粒球及びマイクロビーズなどが挙げられる。また、前記高分子マイクロ粒子または生体内投与性マイクロ粒子の範囲には、粒径100〜350μmの範囲に属する同種または異種の多様な高分子マイクロ粒子の集合体または混合物も含まれると解釈できる。
【0025】
本明細書で使用された用語‘生体適合性’とは、生医学材料に要求される性質であって、生体に悪影響を及ぼすことなく、本来の機能を果たしながら生体と共存できる材料の属性を意味し、用語‘生分解性’とは、生理的溶液に露出された時、分解される性質を意味し、例えば、人間をはじめとした哺乳動物の生体内で体液または微生物などによって分解できる性質を意味する。
【0026】
本発明の一具現例によると、前記生体適合性及び生分解性高分子は、グルコースユニットを基本単位として有しており、α及びβに関係なく1,3−、1,4−及び1,6−グリコシド結合からなる群から選択されたグリコシド結合を有する。その例としては、α−及びβ−グルカンがあって、α−グルカンとしては、アミロース(α−1,4結合)、アミロペクチン(α−1,4とα−1,6結合)、グリコゲン(α−1,4とα−1,6結合)及びデキストラン(α−1,6結合)などがあり、β−グルカンとしては、セルロース(β−1,4結合)、褐藻類のラミナラン(β−1,3結合)及び地衣類のリケナン(β−1,3とβ−1,4結合)などがあるが、これによって本発明の高分子が制限されるものではない。
【0027】
本発明の一具現例によると、グルコースは、2位または5位炭素に−OH、−NH、−NHCOCHまたは−OOH基を有する。このような高分子は、例えば、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギネート、セルロース、及びスターチ(starch)などがある。
【0028】
本発明の一具現例によると、前記生体適合性及び生分解性高分子は、アルギネート;キトサン;デキストラン;血清アルブミン;デキストランサルフェート;セルロース;キチン;アガロース;アミロース;プロテオグリカン;グリコサミノグリカン;コラーゲン;ゼラチン;ペクチン;カラギーナン;ポリリジン;プルラン;プロタミン;アミノ基含有PEG、PLGA[poly(lactic−co−glycolic)acid]、デントリマー(dendrimer)、PLLA(poly−L−lactide)またはPEI(Polyethylenimine);プトレシン(putrescine)、カダベリン(cadaverine)、スペルミジン(spermidine)もしくはスペルミン(spermine)を含む化合物または高分子;タンパク質;あるいはポリペプチドである。
【0029】
本発明の一具現例によると、前記グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸、コンドロイチンサルフェート、デルマタンサルフェート、ヘパランサルフェート、ヘパリン及びケラタンサルフェートを含む。
【0030】
本発明の一具現例によると、前記生体適合性及び生分解性高分子は、重量平均分子量が1000乃至50万である。前記高分子の分子量分布及び平均分子量は、SDS−PAGE、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)のイオン会合クロマトグラフィー及びゲル浸透クロマトグラフィーなどの方法を使用して測定することができる。
【0031】
前記生体適合性及び生分解性高分子含有マイクロ粒子は、当業界に知られた通常的なマイクロ粒子製造方法を通じて製造可能である。一例として、前記高分子含有マイクロ粒子は、マイクロ流体システム、エンカプスレーター及び乳化法などによって製造可能である。また、マイクロ粒子として顆粒を製造する場合は、流動層機器(流動層顆粒機)を利用して顆粒化することができるが、前記機器は、流動室(Expansion chamber)の上部(Top spray)あるいは下部(Bottom spray)に設けられたノズルから、それぞれ下部あるいは上部の空間に向いて液状材料を噴霧し、噴霧乾燥によって作られる乾燥品の形状に類似した粒子を生成し、且つこれらの粒子を装置内部の流動状態で一定時間滞留させることにより、液状材料による粒子同士の接着及び被覆が繰り返され、これによって、粒子直径が徐々に大きくなる。
【0032】
本発明の一具現例によると、前記高分子マイクロ粒子は、生体適合性及び生分解性高分子の他に、医療用賦形剤をさらに含むことができる。前記賦形剤は、製剤時に通常的に利用されるものであっては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明のマイクロ粒子は、前記成分の他に、結合剤、潤滑剤、湿潤剤、着色剤、界面活性剤、乳化剤、保存剤、pH調節剤などをさらに含むことができる。
【0033】
本発明によると、前記医療用導管に加えられる圧力は、0.5〜2barの範囲内で自由に設定でき、この範囲の圧力により、100〜350μmの粒径を有するマイクロ粒子を、医療用導管を通じて生体内に目詰まり現象無しに投与することができる。
【0034】
本発明の一具現例によると、前記医療用導管に加えられる圧力は、0.5〜1.5barであり、一つの特定例では、0.5〜1.2barであって、他の特定例では、0.7〜1.1barである。
【0035】
本発明の一具現例によると、前記医療用導管の内径は、1.0〜3.5mmである。
【0036】
一つの特定例において、前記医療用導管の内径は、1.5〜3.2mmであり、他の特定例では、1.6〜3.0mmであって、また他の特定例では、1.7〜2.5mmであり、また他の特定例では、1.8〜2.3mmであって、また他の特定例では、1.9〜2.2mmである。
【発明の効果】
【0037】
本発明の特徴及び利点を要約すると、以下のようである:
(i)本発明は、医療用導管用の生体内投与性マイクロ粒子、これを含む組成物及びその製造方法を提供する。
(ii)本発明のマイクロ粒子は、噴射装置を通じて内視鏡的投与時、目詰まり現象が発生しない利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明の実施例で製造した各高分子(アルギネート、キトサン及びヒアルロン酸)マイクロ粒子のSEMイメージである。
図2図2は、本発明の実施例で製造した各高分子(デキストラン、ヒドロキシエチルセルロース)マイクロ粒子のSEMイメージである。
図3図3は、本発明の実施例で使用した噴射装置の本体と医療用導管の写真である。
図4図4は、本発明の実施例で使用した噴射装置の全体結合状態(本体+内視鏡カテーテル+高分子マイクロ粒子入りバイアル)を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明なことであろう。
【実施例】
【0040】
実施例1.生体適合性及び生分解性高分子の粒子化
各種賦形剤を使用して生体適合性及び生分解性高分子を粒子化(顆粒化)した。具体的に、乳糖(Lactose #100)300mg、微結晶セルロース(MCC)550mg及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)75mgと、顆粒化する高分子1,500mgとを混合して混合物を製造した。100%エタノール500mgにポリビニルピロリドン(PVP K−30)100mgと食用色素(青色1号)8.5mgを入れて完全に溶解されるように混合、攪拌して、結合液を製造した。前記混合物を結合液に混合した後、連合し、20メッシュを使用して製粒した。
【0041】
前記製粒した顆粒を乾燥減量3%以下になるように乾燥機で乾燥した。乾燥された混合物を再び50メッシュを使用して製粒した後、ステアリン酸マグネシウム25mgを添加して、湿式顆粒組成物2,500mgを製造した。湿式顆粒の組成物は、揮発されてなくなる揮発性成分を除いて、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)3重量%以内、乳糖(Lactose #100)12重量%以内、微結晶セルロース22重量%以内、ポリビニルピロリドン(PVP K−30)2重量%以内、ステアリン酸マグネシウム1重量%を含む。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例2.高分子粒子のサイズ確認
前記方法により製造された高分子粒子を金イオンでコーティングした後、走査電子顕微鏡(SirionTM/SUPER DRY II)で100倍の倍率で観察した。製造された各高分子粒子のSEMイメージを図1及び2に示した。
【0044】
実施例3.高分子粒子を利用した噴射テスト
既存市販されて使用される噴射装置(Alto Shooter,Cook Medical Inc.,圧力1bar)を利用し、マイクロ大きさで粒子化された高分子を、長さ2mのカテーテル(内径2.2mm)を利用して噴射テストを進行した。図3及び4は、実際使用した噴射装置とカテーテルの写真である。
【0045】
噴射時、Alto Shooterの各部位別高分子粒子の残存量を確認し、噴射程度を評価した。各部位別に高分子粒子の残存量が多いか、目詰まり現象が発生すると、噴射力がよくないと評価し、残存量が殆どなく、目詰まり現象が発生しないと、噴射力がよいと評価した。
【0046】
評価結果は、下記表2に示した。
【0047】
[評価基準]
+++:噴射装置に高分子粒子の残存量がほとんどなく、目詰まり現象無し
++:噴射装置に高分子粒子が残っており、目詰まり現象無し
+:噴射装置に高分子粒子が残っており、目詰まり現象発生
【0048】
【表2】
【0049】
前記表2に示されたように、100〜350μmの粒径を有する高分子粒子は、噴射力側面で優れており、噴射装置の各部位に残存量が殆どないばかりか、導管の目詰まり現象が生じなかった(表2)。そして、現在販売中のhemosprayとEndoclotTM(粒子大きさ100μm以下)の場合、導管の目詰まり現象が発生した。
【0050】
また、高分子粒子をサイズ別に、(100μm以下、100〜350μm、350〜600μm)Alto Shooterを利用して10回噴射した後、その噴射成功率を計算し、噴射時噴射された量と残っている量を利用して、噴射後回収率(%)(または噴射量;数学式1)に関する定量的結果を評価して、表3に示した。
【0051】
[数学式1]
【数1】
【0052】
【表3】
【0053】
前記表3に示されたように、100〜350μmの粒径を有する高分子粒子は、噴射力が、他の大きさの粒子に比べて非常に優れており、導管の目詰まり現象を生じなかった。その反面、〜100μmの粒径を有する粒子は、導管が詰まってしまって、噴射がろくになされず、350〜600μmの粒径を有する粒子は、初めから噴射ができなかった(表3)。
【0054】
一方、表3の結果を見ると、100〜350μmの粒径を有する高分子粒子の噴射後回収率が85%であるが、これは、噴射後、バイアルには残っていないが、装置とカテーテル壁面に、静電気による若干の損失が発生したからである(したがって、回収率は、80〜85%が最大値である)。
【0055】
さらに、高分子粒子(粒径が100〜350μm)を、内径の大きさが相異なる導管(1.9Φ、2.0Φ、2.2Φ)を利用してAlto Shooterで噴射した後、その噴射量(数学式2)を評価して、表4に示した。
【0056】
[数学式2]
【数2】
【0057】
【表4】
【0058】
表4に示されたように、内径1.9〜2.2mmの導管で確認した結果、100〜350μm大きさの粒子は、導管の目詰まり現象無しに、噴射がよくなされた(表4)。
【0059】
以上、本発明の望ましい具現例を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
図1
図2
図3
図4