特許第6306270号(P6306270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6306270ジフルオロメトキシ架橋結合を有する液晶化合物、組成物及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306270
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ジフルオロメトキシ架橋結合を有する液晶化合物、組成物及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C07D 319/06 20060101AFI20180326BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20180326BHJP
   C09K 19/08 20060101ALI20180326BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20180326BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C07D319/06CSP
   C09K19/34
   C09K19/08
   C09K19/12
   G02F1/13 500
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-531932(P2017-531932)
(86)(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公表番号】特表2017-529449(P2017-529449A)
(43)【公表日】2017年10月5日
(86)【国際出願番号】CN2015080515
(87)【国際公開番号】WO2016082510
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2017年3月8日
(31)【優先権主張番号】201410707262.1
(32)【優先日】2014年11月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517081840
【氏名又は名称】北京八億時空液晶科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING BAYI SPACE LCD TECHNOLOGY CO.,LTD
(73)【特許権者】
【識別番号】515068085
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】蒋 戦英
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−3053(JP,A)
【文献】 特開2011−98963(JP,A)
【文献】 特開2011−195587(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/63777(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104099105(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104031654(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103937508(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09K
G02F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される構造を有し、


ここで、Rは、H、非置換のあるいは1個以上のHがハロゲンにより置換された炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基からなる群から選択され、
A1は、単結合または1,4-フェニル基から選択され、ここで、1,4-フェニル基のHはそれぞれ独立して1個以上のハロゲンにより置換することができ、
L1及びL2はそれぞれ独立してHまたはハロゲンから選択され、
Z1は単結合または-(CH2)2-から選択される、ことを特徴とするジフルオロメトキシ架橋結合を有する液晶化合物。
【請求項2】
Rは、H、非置換のあるいは1個以上のHがフッ素元素により置換された炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基からなる群から選択され、
A1は、単結合または1,4-フェニル基から選択され、ここで、1,4-フェニル基のHはそれぞれ独立して1個以上のフッ素元素により置換することができ、
L1及びL2はそれぞれ独立してHまたはFから選択され、
Z1は単結合である、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rは、H及び非置換の炭素数1〜5のアルキル基からなる群から選択され、
A1は、単結合または1,4-フェニル基から選択され、ここで、1,4-フェニル基のHはそれぞれ独立して1個以上のフッ素元素により置換することができ、
L1及びL2はいずれもHであり、
Z1は単結合である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記液晶化合物は、以下の一般式で表される構造の化合物から選択され、


Rは、炭素数1〜5のアルキル基から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記液晶化合物は、

である、ことを特徴とする請求項1または4に記載の化合物。
【請求項6】
合成ルートは、


であり、具体的には、
(a)弱酸を触媒とし、ジクロロメタンを溶媒とし、化合物II-1を出発原料としてジヒドロピランと室温で反応させて、化合物II-2を得るステップと、
(b)テトラヒドロフランを溶媒とし、窒素ガス雰囲気下、-75℃〜-85℃で、化合物II-2をブチルリチウムと反応させて、リチウム試薬を形成してから、ヨードメタンと反応させて、化合物II-3を得るステップと、
(c)p-トルエンスルホン酸ピリジニウムを触媒とし、化合物II-3を撹拌し加熱することにより反応させて、化合物II-4を得るステップと、
(d)テトラヒドロフランを溶媒とし、窒素ガス雰囲気下、低温下で、化合物II-5をブチルリチウムと反応させて、リチウム試薬を形成してから、ジブロモジフルオロメタンと反応させて、化合物II-6を得るステップと、
(e)ジメチルスルホキシドと水を溶媒とし、テトラブチルアンモニウムブロミドを触媒とし、炭酸カリウムを酸結合剤として、化合物II-4と化合物II-6を反応させて標的化合物Iを得るステップと、を含み、
ここで、R、A1、Z1、L1及びL2は前記と同義である、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶化合物を含む液晶組成物。
【請求項8】
前記液晶化合物の添加量は1〜80%である、ことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記液晶化合物の添加量は3〜50%である、ことを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶化合物あるいは請求項7〜9のいずれか一項に記載の組成物の液晶表示分野における応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示材料の分野に関し、特にジフルオロメトキシ架橋結合を有する液晶化合物、組成物及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
環境材料としての液晶材料の情報表示材料や有機光電子材料などの分野での応用は、大きな研究の価値及び明るい応用の将来性を有する。液晶材料は、新たな表示材料として、低消費電力、低駆動電圧などの多くの利点を有すると同時に、他の材料と比較して、体積が小さく、重量が軽く、寿命が長く、表示される情報の量が多く、電磁放射がないなどの利点を有し、ほとんどすべての種類の情報表示(特にTFT-LCD製品の面で)の要求に適合することができる。
【0003】
現在、TFT-LCD製品は、技術が成熟して、視角、解像度、彩度及び輝度などの技術上の困難な問題の解決に成功し、その表示性能は、CRTディスプレイに近いかそれ以上となっている。大きいサイズと中小サイズのTFT-LCDディスプレイは、それぞれの分野において、徐々にフラットパネルディスプレイの主流を占めている。しかしながら、液晶材料自体の限界により、TFT-LCDには、十分に速くない応答、十分に低くない電圧、十分に高くない電荷保持率などの多くの欠陥が存在している。このことからわかるように、新たな要求に適合するように材料の性能を改善するために、新型の液晶化合物の合成、及び構造と性能の関係の研究は、液晶分野における重要な仕事になっている。
【0004】
1998年に、日本のチッソ株式会社は、特許CN1182085Aにおいてジフルオロメトキシ架橋結合とジオキサンを有する液晶化合物モノマーをさらに開示したが、該社は、理想的な総合性能を有する対応する液晶化合物を得るに至っていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の背景に対して、本発明は、ジフルオロメトキシ架橋結合ユニット構造を有する新たな液晶化合物を提供する。この化合物は、回転粘性が低く、誘電異方性が大きく、相溶性が良好であり、性能が安定している特徴を有し、式で表される構造Iを有する。


ここで、Rは、H、非置換のあるいは1個以上のHがハロゲンにより置換された炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基からなる群から選択され、
A1は、単結合または1,4-フェニル基から選択され、ここで、1,4-フェニル基のHはそれぞれ独立して1個以上のハロゲンにより置換することができ、
L1及びL2はそれぞれ独立してHまたはハロゲンから選択され、
Z1は単結合または-(CH2)2-から選択される。
【0006】
ここで、好ましくは、本発明の前記液晶化合物において、
Rは、H、非置換のあるいは1個以上のHがフッ素元素により置換された炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基からなる群から選択され、
A1は、単結合または1,4-フェニル基から選択され、ここで、1,4-フェニル基のHはそれぞれ独立して1個以上のフッ素元素により置換することができ、
L1及びL2はそれぞれ独立してHまたはFから選択され、
Z1は単結合である。
【0007】
さらに好ましくは、
Rは、H及び非置換の炭素数1〜5のアルキル基からなる群から選択され、
A1は、単結合または1,4-フェニル基から選択され、ここで、1,4-フェニル基のHはそれぞれ独立して1個以上のフッ素元素により置換することができ、
L1及びL2はいずれもHであり、
Z1は単結合である。
【0008】
さらに好ましくは、前記液晶化合物は、以下の一般式で表される構造の化合物から選択され、


Rは、炭素数1〜5のアルキル基から選択される。
本発明の最も好適な実施形態として、前記液晶化合物は、

【0009】
上述した化合物は、高い誘電異方性を有し、組成物に応用された後に素子の駆動電圧を低減することができる。
【0010】
本発明の第2の目的は、ジフルオロメトキシ架橋結合を有する液晶化合物の製造方法を提供することである。前記製造方法の合成ルートは、


であり、
(a)弱酸を触媒とし、ジクロロメタンを溶媒とし、化合物II-1を出発原料としてジヒドロピランと室温で反応させて、化合物II-2を得るステップと、
(b)テトラヒドロフランを溶媒とし、窒素ガス雰囲気下、-75℃〜-85℃で、化合物II-2をブチルリチウムと反応させて、リチウム試薬を形成してから、ヨードメタンと反応させて、化合物II-3を得るステップと、
(c)p-トルエンスルホン酸ピリジニウムを触媒とし、化合物II-3を撹拌し加熱することにより反応させて、化合物II-4を得るステップと、
(d)テトラヒドロフランを溶媒とし、窒素ガス雰囲気下、低温下で、化合物II-5をブチルリチウムと反応させて、リチウム試薬を形成してから、ジブロモジフルオロメタンと反応させて、化合物II-6を得るステップと、
(e)ジメチルスルホキシドと水を溶媒とし、テトラブチルアンモニウムブロミドを触媒とし、炭酸カリウムを酸結合剤として、化合物II-4と化合物II-6を反応させて標的化合物Iを得るステップと、を含み、
ここで、R、A1、Z1、L1及びL2は前記と同義である。
【0011】
上述した製造方法によれば、ジフルオロメトキシ架橋結合を有する液晶化合物をバッチサイズで安定的に得ることができる。得られた化合物は、誘電異方性が大きい利点を有する。
また、本発明はさらに、ジフルオロメトキシ架橋結合を有する液晶化合物を含む液晶組成物を保護しようとする。ここで、ジフルオロメトキシ架橋結合を有する液晶化合物は合理的に添加される。添加量は、1〜80%が好ましく、3〜50%がより好ましい。当業者は、上述した液晶化合物の添加に基づいて、常用されている既存の液晶組成物の誘電異方性をさらに向上させることができ、素子の駆動電圧を低減する技術効果を果たすことを予見できる。
【0012】
本発明の別の目的は、ジフルオロメトキシ架橋結合を有する前記液晶化合物及びその組成物の液晶表示分野における応用を保護しようとすることである。
【0013】
具体的には、上述した化合物または組成物の液晶表示装置での応用を保護しようとする。前記液晶表示装置は、TN、ADS、FFSまたはIPS 液晶ディスプレイを含むが、これらに限定されない。液晶組成物は、液晶表示装置に応用された後、駆動電圧を低減する利点を有する。
【0014】
本発明における各性能テストパラメータの省略形は、以下のとおりである。
Δεは、25℃及び1kHzでの誘電異方性を表す。
γ1は、25℃での回転粘性(mPa・s)を表す。
△nは光学異方性であり、noは屈折率(589nm,25℃)である。
C.pは、液晶組成物の透明点(℃)である。
VHR電荷保持率(%)は下記のように得られる。混合液晶を液晶セル内に注入し、液晶セルをオーブンに入れ、温度が安定した後、テストプログラムへ進み、手でプロットして電荷保持率の数値を得る。測定電圧は5V、パワーアップ時間は5ms、保持時間は500msである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〈実施例1〉


2-{4’-[(3,4,5-トリフルオロ-2-メチル-フェノキシ)-ジフルオロメチル]-3’,5’-ジフルオロビフェニル}-5-プロピル-[1,3]ジオキサン(化合物7)の合成
1) 2-(3,4,5-トリフルオロ-フェノキシ)-テトラヒドロピラン(化合物2)の合成


乾燥かつクリーンな500mlの三つ口フラスコに、70gの3,4,5-トリフルオロフェノール、72gの2,3-ジヒドロピラン、及び140mlのジクロロメタンを加え、撹拌し、室温で濃塩酸5滴をゆっくりと滴下した。滴下終了後に、室温で3時間反応させた。反応液を、10%水酸化ナトリウム水溶液100ml×2により2回洗浄し、20gの無水硫酸ナトリウムで30分間乾燥し、吸引ろ過した。ろ過液を回転乾燥して、使用に備える。
【0016】
2) 2-(3,4,5-トリフルオロ-2-メチル-フェノキシ)-テトラヒドロピラン(化合物3)の合成


乾燥かつクリーンな1Lの三つ口フラスコに、97gの2-(3,4,5-トリフルオロ-フェノキシ)-テトラヒドロピラン(化合物2)、及び500mlのテトラヒドロフランを加え、窒素ガス雰囲気下、液体窒素により-75℃〜-85℃まで温度を下げた。200mlのブチルリチウムを滴下し、滴下終了後に温度を制御しながら1時間反応させた。89gのヨードメタンを滴下し、滴下終了後に-75℃〜-85℃に温度を制御しながら30分間反応させた後、-20℃に温度を自然に上げて、塩化アンモニウム水溶液を用いて加水分解を行った。液体分離を行って、酢酸エチル100ml×2で水相を2回抽出し、有機相を合わせた。有機相を100ml×2の塩化ナトリウム水溶液で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウム30gで30分間乾燥し、吸引ろ過した。ろ過液を回転乾燥し、1.5倍のエタノールで結晶化させて、白色固体を得た。
【0017】
理論収量:102g、実際の収量:64g、収率:62.7%、白色固体、GC:99.6%、融点:67.65℃。
【0018】
3) 3,4,5-トリフルオロ-2-メチル-フェノール(化合物4)の合成


乾燥かつクリーンな100mlの三つ口フラスコに、10gの2-(3,4,5-トリフルオロ-2-メチル-フェノキシ)-テトラヒドロピラン(化合物3)、2gのp-トルエンスルホン酸ピリジニウム、50mlのエタノールを加え、撹拌し、60℃〜70℃まで加熱し、3時間反応させた。反応液を回転乾燥し、20mlのジクロロメタンを加え、生成物を溶解し、10ml×2の塩化ナトリウム水溶液で2回洗浄し、10gの無水硫酸ナトリウムで乾燥し、回転乾燥した。
【0019】
理論収量:6.5g、実際の収量:6.5g、収率:100%(理論に基づく)、無色の液体、GC:99.155%。
【0020】
4)ジフルオロメチル臭化物(化合物6)の合成


2Lの三つ口フラスコに、141.5gの2-(3’,5’-ジフルオロビフェニル)-5-プロピル-[1,3]ジオキサン(化合物5)、及び1Lのテトラヒドロフランを加え、撹拌を開始して、固体を完全に溶解した。窒素ガスを3回ポンプ排出し、-70℃まで温度を下げた。-65〜-75℃に温度を制御し、232mlの2.5Mブチルリチウムを滴下し、滴下終了後に、100mlのテトラヒドロフランにより滴下漏斗をリンスし、-65〜-75℃に温度を制御しながら1時間反応させた。-65〜-75℃に温度を制御し、141gのジブロモジフルオロメタンを含むテトラヒドロフラン溶液0.5Lを滴下し、滴下終了後に、温度を-20℃に自然に上昇させた。
【0021】
反応液に対して、40mlの濃塩酸と200mlの水からなる溶液を滴下し、30分間撹拌した後、水相を分離するように静置し、0.5Lの石油エーテルを加え、1L×3の水で3回洗浄し、溶媒を回転乾燥した。生成物は黄色の液体であり、重量は190g、収率は95%である。
【0022】
5)2-{4’-[(3,4,5-トリフルオロ-2-メチル-フェノキシ)-ジフルオロメチル]-3’,5’-ジフルオロビフェニル}-5-プロピル-[1,3]ジオキサン(化合物7)


2Lの三つ口フラスコに、190gのジフルオロメチル臭化物(化合物6)、1Lのジメチルスルホキシド、及び0.2Lの水を加え、撹拌を開始して、72gの3,4,5-トリフルオロ-2-メチル-フェノール(化合物4)、14gのテトラブチルアンモニウムブロミド、及び123gの炭酸カリウムを加え、窒素ガスを3回ポンプ排出し、加熱をオンにして温度を上げた。90〜95℃に温度を制御しながら5時間反応させた。
【0023】
反応液を吸引ろ過した。400mlのトルエンによりろ過ケーキを加熱し、一回抽出した。再び吸引ろ過を行い、トルエンによりろ過ケーキをリンスした。ろ液を合わせ、塩化ナトリウム水溶液で4回洗浄し、溶媒を回転乾燥し、1倍の石油エーテルと2倍の無水エタノールを加えて再結晶を行った。2倍のエタノールと1倍のトルエンを用いて再結晶を3回行い、白色固体を吸引ろ過して乾燥した。理論収量:235.7g、実際の収量:82.5g、収率35.0%。
生成物の分析:
ガスクロマトグラフィー純度(GC)99.9%、
融点:114.4℃,
透明点:128.3℃,
Δnは0.137、
Δεは33.7、
γ1は202mPa・sである。
質量分析フラグメント:239、267、367、528(分子イオンピーク)。
H-NMR核磁気共鳴スペクトル(CDCl3,300MHz):δH:0.90〜2.60(m,11H)、3.70〜4.10(m,4H)、 5.98(m,1H)、6.10〜7.60(m,7H)。
〈実施例2〉


2-{4-[(3,4,5-トリフルオロ-2-メチル-フェノキシ)-ジフルオロメチル]-3,5-ジフルオロベンゼン}-5-プロピル-[1,3]ジオキサン(化合物10)の合成(本実施例における化合物8は、実施例1に開示されたステップ1〜3を参照して得ることができ、ここでは詳述しない)
【0024】
1)ジフルオロメチル臭化物(化合物9)の合成


2Lの三つ口フラスコに、108gの2-(3,5-ジフルオロフェニル)-5-プロピル-[1,3]ジオキサン(化合物5)、及び1Lのテトラヒドロフランを加え、撹拌を開始して、固体を完全に溶解した。窒素ガスを3回ポンプ排出し、-70℃まで温度を下げた。-65〜-75℃に温度を制御し、232mlの2.5Mブチルリチウムを滴下し、滴下終了後に、100mlのテトラヒドロフランにより滴下漏斗をリンスし、-65〜-75℃に温度を制御しながら1時間反応させた。-65〜-75℃に温度を制御し、141gのジブロモジフルオロメタンを含むテトラヒドロフラン溶液0.5Lを滴下し、滴下終了後に、温度を-20℃に自然に上昇させた。
【0025】
反応液に対して、40mlの濃塩酸と200mlの水からなる溶液を滴下し、30分間撹拌した後、水相を分離するように静置し、0.5Lの石油エーテルを加え、1L×3の水で3回洗浄し、溶媒を回転乾燥した。生成物は黄色の液体であり、重量は157g、収率は95%である。
【0026】
2)2-{4’-[(3,4,5-トリフルオロ-2-メチル-フェノキシ)-ジフルオロメチル]-3’,5’-ジフルオロビフェニル}-5-プロピル-[1,3]ジオキサン(化合物10)の合成


2Lの三つ口フラスコに、157gのジフルオロメチル臭化物(化合物6)、1Lのジメチルスルホキシド、及び0.2Lの水を加え、撹拌を開始して、72gの3,4,5-トリフルオロ-2-メチル-フェノール(化合物4)、14gのテトラブチルアンモニウムブロミド、及び123gの炭酸カリウムを加え、窒素ガスを3回ポンプ排出し、加熱をオンにして温度を上げた。90〜95℃に温度を制御しながら5時間反応させた。
【0027】
反応液を吸引ろ過した。400mlのトルエンによりろ過ケーキを加熱し、一回抽出した。再び吸引ろ過を行い、トルエンによりろ過ケーキをリンスした。ろ液を合わせ、塩化ナトリウム水溶液で4回洗浄し、溶媒を回転乾燥し、1倍の石油エーテルと2倍の無水エタノールを加えて再結晶を行った。2倍のエタノールと1倍のトルエンを用いて再結晶を3回行い、白色固体を吸引ろ過して乾燥した。理論収量:191.5g、実際の収量:70.0g、収率36.5%。
生成物の分析:
ガスクロマトグラフィー純度(GC)99.9%、
Δnは0.068、
Δεは28.5、
γ1は57mPa・sである。
質量分析フラグメント:163、191、291、452(分子イオンピーク)。
H-NMR核磁気共鳴スペクトル(CDCl3,300MHz):δH:0.90〜2.60(m,11H)、 3.70〜4.10(m,4H)、5.98(m,1H)、6.10〜7.60(m,3H)。
〈実施例3〜12〉
実施例1〜2の技術的解決方法によれば、対応する基を含む原料と簡単に入れ替えると、以下の化合物を合成することができる。



〈実施例13〉混晶組成物
以下の組成物に使用されたすべての液晶モノマーは、北京八億時空液晶科学技術有限公司により提供された。特に明記しない限り、実施例における各成分の含量は、質量%で表される。
【0028】
以下の重量部の液晶化合物を取って液晶組成物を調製した。具体的な調合比率及び得られた液晶組成物の性能パラメータは、以下の表に示されている。
【0029】
ジフルオロメチルエーテル架橋結合の構造を有する液晶化合物のTN、IPS、FFS、ADS -TFTモードでの応用例は表1及び表2に示されている。同時に、本発明による液晶化合物の性能を検証するために、上記化合物が添加されていない液晶組成物及び従来の誘電異方性化合物が添加されて形成された液晶組成物を導入して、性能を比較した。結果は表1〜表4に示されている。
【0030】




【0031】
表1〜4から分かるように、本発明の化合物が直接添加されたか、または従来の誘電異方性化合物(化合物11)の代わりに本発明の化合物が用いられた液晶組成物は、適度の回転粘性、適度のΔn数値、高い電荷保持率、特に大きい誘電異方性を有している。同時に、本発明の前記液晶組成物において、化合物の添加量は、1〜80%が好ましく、3〜50%がより好ましい。
【0032】
試験例に挙げられた組成物に加えて、本発明によるジフルオロメチルエーテル架橋結合の構造を有する他の液晶化合物が添加された他の液晶組成物は、同様の優れた光学的及び電気的特性を得ることができる。
【0033】
本発明は、以上の一般的な説明、実施形態、及び試験を参照して詳細に説明されてきたが、当業者であれば、本発明に基づいて、修正または改善がなされ得ることは明らかである。したがって、本発明の精神から逸脱せずに、行われたこれらの修正または改善は本発明の保護範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は液晶化合物、及びこの液晶化合物を含む液晶組成物を提供する。該化合物は、回転粘性が低く、誘電異方性が大きく、相溶性が良好であり、性能が安定している特徴を有し、組成物に応用された後に液晶表示装置の駆動電圧を低減することができる。本発明による液晶表示装置は、TN、ADS、FFSまたはIPS液晶ディスプレイを含むが、これらに限定されない。本発明の液晶組成物・液晶組成物は、液晶表示分野において幅広い応用の将来性及び良好的な産業上の利用可能性を有する。