特許第6306276号(P6306276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6306276
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】移動施設のエアコン搭載構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20180326BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20180326BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20180326BHJP
   F24F 1/00 20110101ALI20180326BHJP
   B62D 47/00 20060101ALI20180326BHJP
   B62D 31/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   B60H1/32 615
   B60H1/00
   F24F5/00
   F24F1/00
   B62D47/00
   B62D31/00
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-1521(P2018-1521)
(22)【出願日】2018年1月9日
【審査請求日】2018年2月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508126985
【氏名又は名称】株式会社平成エンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】100109254
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 雅典
(72)【発明者】
【氏名】田倉 貴弥
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−45232(JP,A)
【文献】 特開平2−106423(JP,A)
【文献】 特開平11−48867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
B60H 1/00
F24F 1/00
F24F 5/00
B62D 31/00
B62D 47/00
B62D 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
客室への乗降口を複数有するバスを改造ベースとする移動施設において、前記乗降口の一つを客室側から仕切りで覆って、前記乗降口の内側に前記客室とは隔離された小空間を形成し、前記小空間をエアコンの室外機を設置するための室外機用個室とすることを特徴とする移動施設のエアコン搭載構造。
【請求項2】
前記室外機用個室が形成された乗降口はスライド式扉を備えていることを特徴とする請求項1記載の移動施設のエアコン搭載構造。
【請求項3】
前記室外機用個室に前記室外機を上下に並べて複数台設置したことを特徴とする請求項1又は2記載の移動施設のエアコン搭載構造。
【請求項4】
前記室外機用個室にエアコンへ電力供給するための電源装置及び/又は電源コードを配設したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の移動施設のエアコン搭載構造。
【請求項5】
前記仕切りの客室側の面に室内機を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の移動施設のエアコン搭載構造。
【請求項6】
上記請求項1乃至5の何れかに記載のエアコン搭載構造を採用していることを特徴とする移動施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスを改造してなる移動施設のエアコン搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
臨時イベントにおける託児所等の施設設置を容易にするため、バスの座席を取り外し、客室の内装を施設仕様に改造して、現地まで移動走行できるようにした移動施設が提案されている(例えば特許文献1参照。)。しかし、施設使用時(駐車時)にエアコン圧縮機の駆動源となる走行用エンジンをかけ放しにすると、騒音や排気ガスが周辺環境の障害になる。
【0003】
駐車時のエアコン使用によるエンジン騒音や排気ガスの対策を施したバスとして、エアコン圧縮機を走行用エンジンで駆動するエンジン駆動式エアコンと、エアコン圧縮機をバッテリーや外部電源で駆動する電気駆動式エアコンの両方を搭載したものが提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【0004】
上記特許文献1記載の移動施設の改造ベース車両として、上記特許文献2記載のようにエンジン駆動式エアコンと電気駆動式エアコンの両方を予め備えたバスを利用することにより、移動走行時にエンジン駆動式エアコンを運転する一方、施設使用時には電気駆動式エアコンをバッテリーや外部電源で駆動して運転して、騒音や排気ガスの問題を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−94600号公報
【特許文献2】特開2003−341334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような移動施設は、その使用形態から走行距離が少ない傾向にあるため、改造ベース車両は中古車で差し支えなく、導入コストを考慮すれば、新車より中古車を活用することがむしろ好ましい。但し、中古車を用いる場合、上記特許文献2記載のような特殊なバスを入手しにくいことから、エンジン駆動式エアコンのみを備える一般的な中古バスに電気駆動式エアコンを後付けしなければならない。
【0007】
ここで、後付けされる電気駆動式エアコンとして住宅用ルームエアコンを流用できれば安くなるが、その室内機及び室外機は、対象車両に応じて設計されている車両用エアコンとは異なり、大きな箱状体であるため、広い搭載スペースが必要になる。バスの客室は広いため、室内機については比較的容易に設置可能であるが、室外機については下記のような理由により設置しにくいという問題がある。
【0008】
バスの屋根に設置する場合、住宅用ルームエアコンの室外機は縦方向に大きい箱状体であるから、屋根の上方に大きく突出してしまうという問題があり、走行時のコーナリングやブレーキングによる加速度に耐え得るように固定することは困難である。床下に設置する場合でも、バスの機種によって床下部品の配置が異なり、当然ながら室外機を搭載可能なスペースの位置や大きさも異なるために、その都度、室外機の搭載位置・構造を一から考えなければならず、設計及び製作上の負担が大きい。
【0009】
住宅用に提供されるエアコンは、断熱性の低い車両用のエアコンに比べて性能面で劣るため、複数台必要になることもあるが、そういった場合、室外機の設置スペースの確保は一層難しくなる。また、住宅用ルームエアコンの室外機はある程度の防水性を有するが、バスの床下に設置して走行した場合の激しい水掛かりを想定したものではなく、泥掛かりによるコンデンサの目詰まりや石はね等に対しては何ら対策されていない。床下に室外機を設置すれば、室内壁上部に設置する室内機と離れるため、これらを接続する冷媒循環用配管が長くなり、車外配管部分は石はね対策等も必要になって、設置工事が大変である。
【0010】
本発明は、上記のような実情に鑑み、エンジン駆動式エアコンを備えたバスを改造して製作する移動施設において、施設使用の際に運転する電気駆動式エアコンを容易に後付け可能とし、かつ、バス走行時の室外機への水掛かり、泥掛かり、石はねの対策を要しないものとする移動施設のエアコン搭載構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、客室への乗降口を複数有するバスを改造ベースとする移動施設において、前記乗降口の一つを客室側から仕切りで覆って、前記乗降口の内側に前記客室とは隔離された小空間を形成し、前記小空間をエアコンの室外機を設置するための室外機用個室とすることを特徴とする移動施設のエアコン搭載構造を提供する。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記室外機用個室が形成された乗降口はスライド式扉を備えていることを特徴とする請求項1記載の移動施設のエアコン搭載構造を提供する。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記室外機用個室に前記室外機を上下に並べて複数台設置したことを特徴とする請求項1又は2記載の移動施設のエアコン搭載構造を提供する。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記室外機用個室にエアコンへ電力供給するための電源装置及び/又は電源コードを配設したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の移動施設のエアコン搭載構造を提供する。
【0015】
請求項5記載の発明は、前記仕切りの客室側の面に室内機を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の移動施設のエアコン搭載構造を提供する。
【0016】
請求項6記載の発明は、上記請求項1乃至5の何れかに記載のエアコン搭載構造を採用していることを特徴とする移動施設を提供する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、以下の優れた効果を奏する。乗降口を客室側から覆うように仕切りを設けて、バス車室内に客室(施設空間)と隔離した室外機用個室と設けることで、電気駆動式エアコンを容易に搭載できる。電気駆動式エアコンを使用するときは、バスの乗降口扉(室外機用個室の扉)を開放すれば、室外機から吹き出す熱風を車室外に排出することができる。
【0018】
移動走行時は、エンジン駆動式エアコンを使用するため、電気駆動式エアコンは不要であり、室外機用個室の外側扉を閉鎖することができるので、室外機は完全に保護される。なお、室外機用個室と客室は仕切りを介して隣接しているため、室外機と室内機を接続する冷媒循環用配管を短くすることができる。また、車室内のみで配管処理されるため、石はね対策等は不要である。
【0019】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏する。スライド式扉であれば、開閉時に室外機用個室側に入り込んで室外機に干渉することがないため、扉と室外機の隙間を小さく詰めることができる。これにより、室外機用個室の客室側への張り出しが小さくなり、結果として客室(施設空間)を広く使える。
【0020】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏する。エアコンを複数台搭載する場合、室外機を上下に並べて設置することで、室外機用個室の横方向への張り出しが大きくならず、施設空間を広く使うことができる。外側扉を開放すれば、すべての室外機から吹き出す熱風を直接、車室外に排出することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、請求項1乃至3の発明が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏する。電源装置や電源コードを客室と隔離された室外機用個室に配設したので、客室の施設利用者(例えば託児所の場合は子供)が手を触れる等の不都合を回避できる。また、外側扉を開放すれば、電源装置に対する作業(エアコンとバッテリーとの接続等)を車両外側から容易に行える。
【0022】
請求項5の発明によれば、請求項1乃至4の発明が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏する。仕切りに室内機を設ければ、室内機と室外機とを接続する冷媒循環用配管が更に短くなり、配管作業時の手間が少なく済み、冷房効率も向上する。
【0023】
請求項6の発明によれば、請求項1乃至5の発明が奏する効果と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る移動施設のエアコン搭載構造を採用した移動施設の外観図。
図2】移動施設の室内平面図。
図3】移動施設のエアコンを模式的に表した構成図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図面参照しながら説明する。図1及び図2に示す移動施設1は、臨時イベント会場において託児所等の施設を簡単に設営できるように中古バスを改造ベース車両として製作したもので、客室部分の座席等を取り外し、車体側壁部の内側面をクッション性の安全防護シートで覆う等の改造を施されている。但し、車両走行に必要な装置・装備類については一切変更せず、通常のバスと同様に移動走行可能である。
【0026】
改造ベース車両は、図1及び図2に示すように、車体左側の側壁部1aに複数の乗降口11,12を有する路線用バスである。乗降口11は、車両前方寄りに設けられており、図2に一点鎖線で示すように、開放時に二つ折りにされて車室内側に引き込まれる折畳み式扉11aを備えている。乗降口12は、車両前後方向の中程に設けられており、図1及び図2に示すように、開放時に側壁部1aに設けられた戸袋13に収納されるスライド式扉12aを備えている。乗降口12の車室内側には、客室Pの床面より一段低く掘り込まれた矩形状のステップ12bが形成されている。なお、後述するように、改造後、乗降口12は客室Pと仕切り71(図2)で隔てられて、客室Pへの乗降には使えないが、本願では一貫して乗降口12というものとする。
【0027】
図3は、移動施設1に搭載されている2種類のエアコン3、4を模式的に表した構成図である。エアコン3は、冷媒ガスを圧縮する圧縮機を走行用エンジン2で駆動するエンジン駆動式エアコンであり、エアコン4は、圧縮機を電気モータMで駆動される電気駆動式エアコンである。図3では、各エアコンの構成部品のうち車室内に搭載されるものを一点鎖線の枠内に記載し、車室外に搭載されるものを同枠外に記載している。
【0028】
エンジン駆動式エアコン3は、改造ベース車両に元から搭載されており、走行用エンジン2でベルト駆動されて低温低圧の冷媒ガスを圧縮する圧縮機31と、圧縮された高温高圧の半液状の冷媒を凝縮するコンデンサ32と、凝縮された冷媒液を膨張噴射する膨張弁33と、膨張して霧状になった冷媒液を気化して、その気化熱で客室Pの空気を冷却するエバポレータ34と、上記各構成部品31〜34を接続する冷媒循環用配管35で構成されている。コンデンサ32には冷媒凝縮用のコンデンサファン36が設けられ、エバポレータ34には空気冷却用のブロワファン37が設けられている。
【0029】
圧縮機31は、走行用エンジン2に固定されて、エンジン2と共に車室外(床下)に搭載されている。コンデンサ32は、高温高圧の冷媒ガスを冷却して生じた熱風を排出するため、車室外(床下)に搭載されている。エバポレータ34は、客室P内を空調するため、車室内に搭載されている。エバポレータ34で冷却された空気は、天井や壁面に設けたエアダクト(不図示)により客室Pの各部に供給される。
【0030】
エンジン駆動式エアコン3は、移動走行時の空調用として運転されるが、移動車両1を施設として使用する際にも運転すると、走行用エンジン2の騒音や排気ガスが周辺環境の障害になる。そこで、バスを改造する際、エンジン駆動式エアコン3に加えて、電気駆動式エアコン4を後付けし、施設使用時に車載バッテリー又は駐車場所近くにある市中電源で運転することとして、騒音や排気ガスを生じないようにしている。電気駆動式エアコン4には一般住宅用のルームエアコンを流用しているが、断熱性が低いバス用には空調性能がやや不足しているため、本実施形態では2台の電気駆動式エアコン4を搭載している。なお、図2及び図3では2台のうち1台を記載省略している。
【0031】
電気駆動式エアコン4は、図3に示すように、主に室外機5と室内機6で構成される。室外機5は、外観概ね直方体形状の箱体で、圧縮機51、コンデンサ52及びコンデンサファン53を内蔵してなる。圧縮機51は、電気モータMで回転駆動されて、低温低圧の冷媒ガスを圧縮して高温高圧の半液状体とし、冷媒用配管54を介してコンデンサ52に送り込む。コンデンサ52の直前に設けられたコンデンサファン53は、室外機5の背面側に開口形成した吸込口5Aから空気を導入し、その風をコンデンサ52に当てることで冷媒を冷却する。冷却(熱交換)で生じた熱風は、室外機5の前面側に開口形成した吹出口5Bから排出される。
【0032】
上記のとおり、室外機5は熱風を排出するため、本来、エンジン駆動式エアコン3のコンデンサ32と同様に車室外に搭載されるべきであるが、本発明では車室内に設置する。具体的には、図1乃至図3に示すように、乗降口12の車室内側において客室Pと隔離されるように仕切り71(図3では2点鎖線で示す)で仕切られた小空間が設けられており、そこを室外機用個室7として室外機5を設置している。仕切り71は、三枚の木製ボードを連結することにより、図2及び図3に示すように横断面概ねコ字形に形成され、乗降口12を車室内側から覆い隠すと共に、設置される室外機5を三方から取り囲むように設けられる。また、仕切り71は側壁部1a及びその上下につながる天井並びに床面に対して隙間なく設けられており、客室P側から見ると、側壁部1aから張り出して上下に延びる柱体を成している。
【0033】
電気駆動式エアコン4を運転する際は、乗降口12の扉12aを開放しておくことにより、コンデンサ32の冷却用空気を車外から吸込口5Aへ取り込んで、コンデンサ冷却後の熱風を吹出口5Bから車外へ排出することができる。その一方で、室外機用個室7は客室Pと隔離されているため、熱風が客室Pに侵入して空調の妨げになることはない。なお、移動走行時は乗降口12を閉じるが、エンジン駆動式エアコン3を使用するため、電気駆動式エアコン4を運転することはない。上記のとおりであるから、室外機5を車室内に設置しても何ら問題を生じないものである。
【0034】
仕切り71と室外機5の間には、電気駆動式エアコン4の配線・配管等の取り回し経路、吸込口5Aへの空気通路、及び室外機5を支持固定するラック72(図3では省略)の設置スペースを確保するために必要な隙間が設けられている。扉12aと室外機5との間には、両者が干渉しない程度の隙間が設けられているが、扉12aがスライド式で開閉時に室外機用個室7内に入り込むことがなく、開放すれば吹出口5Bが完全に露出するため、仕切り71のように空気通路等を確保する必要はない。そこで、室外機5と扉12aの隙間を詰めて、室外機用個室7の客室側への張り出しを小さく抑えることにより、客室Pが狭くならないように配慮している。
【0035】
ラック72は、4本の支柱に上下2段の架台721,722を架け渡してなる室外機用設置台であり、室外機用個室7に設置されて、車体に対して動かないように固定される。2台の室外機5は、図1に示すように各架台に1台ずつ上下方向に並べられた状態で支持固定される。これにより、室外機5の設置面積を小さくして室外機用個室7の横方向への張り出しを抑えることにより、客室Pの空間をあまり狭くならないようにしている。室外機が2台共、乗降口12から車外を臨むように配置されており、扉12aを開放すれば、熱風を各吹出口5Bから直接車外へ効率よく排出することができる。
【0036】
但し、移動施設1を駐車して電気駆動式エアコン4を作動させているときに、乗降口12の近くを人が通ると、吹出口5Bから熱風が直撃して不快感を与える心配がある。しかし、室外機用個室7では、ステップ12bの上方の床面に板材を架け渡して客室Pと同じ高さの床面73を形成し、更にその上方に高床面74を形成することにより、ラック72の位置を相当高くしている。これにより、吹出口5Bの位置は相当高くなっており、更に熱風は比重が軽く上昇しながら吹き出すため、乗降口12の直前を人が通らないようにパイロン等を置くことで、通行人が熱風を真面に受けることを防止できる。
【0037】
ラック72の下側には、車載バッテリー(不図示)の直流電流をエアコンで使える交流電流に変換する電源装置55を設置しており、ステップ12bには、電気エアコン4と市中電源を直接接続するための電源コード56を収納している。市中電源との接続作業性を考慮し、低いステップ部分から取り出すようにしたものである。なお、室外機用個室7は、客室Pから隔離されているため、施設利用者(特に子供)が電源装置55等に手を触れる危険が回避される。
【0038】
室内機6は、図2に示すように外観横長の箱状体で、室外機用個室7の客室側の壁面に固定されており、図3に示すように膨張弁61、エバポレータ62及びブロワファン63を内蔵してなる。膨張弁61は、室外機5から冷媒循環用配管41で送られる冷媒液を霧状に膨張噴射してエバポレータ62に送る。エバポレータ62は、霧状冷媒が内部で蒸発する際の気化熱で冷却される。ブロワファン63は、室内機6の上面側及び前面側(図3では作図の便宜上、背面側に描いている)に開口形成した吸込口6Aから空気を導入し、その風をエバポレータ62に当てて冷媒の蒸発を促進する。なお、エバポレータ62の表面に発生する水滴は、図1に示すドレーン75から車外に排出される。
【0039】
エバポレータ62を通過した冷風が、図3に示すように室内機6の前面側に開口形成した吹出口6Bから吹き出すことにより客室Pを空調する。エバポレータ62内で気化して客室Pと熱交換した冷媒ガスは、冷媒循環用配管42で室外機5に戻されて、圧縮機51で再度圧縮される。そして、コンデンサ52に高温高圧の半液状冷媒として送り込まれ、コンデンサファン53による凝縮と膨張弁61による膨張噴射が繰り返される。
【0040】
室外機用個室7は、室内機6を設置する客室Pに張り出すように設けられているため、室外機5と室内機6を間近に設置することができて、両者を相互接続する冷媒循環用配管が短くなるため、配管工事を比較的簡単に行うことができる。また、室外機5と室内機6は共に車室内に設置されており、冷媒循環用配管41、42や配線が車室外に一切露出しないため、石当たり等による損傷防止対策をせずに済む。なお、図2に示すように、室内機6を仕切り71に当接させて設置することにより、冷媒循環用配管41が更に短くなり、冷房効率を向上させることができる。
【0041】
上記実施形態では、エンジン駆動式エアコン3が既に搭載されているバスを移動施設に改造する際に、電気駆動式エアコン4を追加搭載するための構造として説明したが、エンジン駆動式エアコンを搭載していないバスを移動施設に改造する際に適用しても良い。改造ベース車両には中古車ではなく、新車を使用しても良いことは勿論である。
【0042】
上記実施形態では、室内機6を仕切り71の側面に固定することとしたが、車体側壁面に固定しても良く、室外機用個室7内において室外機5の上方に余裕スペースがあれば、当該スペースが客室P側になるように仕切り71の形状を変更して、そこに室内機6を設置することとしても良い。これにより、室内機6が客室内への出っ張りを抑えることができる。その他、本発明はその要旨を変更しない範囲で種々の変更をすることができるものである。
【符号の説明】
【0043】
1 移動施設
12 乗降口
12a 扉(室外機用個室の扉)
2 走行用エンジン
3 エンジン駆動式エアコン
4 電気駆動式エアコン
5 室外機(電気駆動式エアコン)
6 室内機(電気駆動式エアコン)
7 室外機用個室
71 仕切り
【要約】
【課題】 エンジン駆動式エアコンを既に備えているバスを改造して製作する移動施設において、施設使用する際に運転する電気駆動式エアコンとして住宅用ルームエアコンを容易に追加搭載可能に、かつ、バス走行時による室外機への水掛かり、泥掛かり、石はね等の対策を不要にする。
【解決手段】 客室への乗降口を複数有するバスを改造ベースとする移動施設において、前記乗降口の一つを客室側から覆うように仕切りを設けることにより、前記乗降口の内側に前記客室とは前記仕切りで隔離されている小空間を形成し、前記小空間に前記乗降口の扉開閉を妨げないようにエアコンの室外機を設置して、室外機用個室とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3