(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306286
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】流量制御用のオリフィスプレート及びこれを用いた圧力式流量制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-91867(P2013-91867)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-215782(P2014-215782A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年7月31日
【審判番号】不服2016-7951(P2016-7951/J1)
【審判請求日】2016年5月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(72)【発明者】
【氏名】平田 薫
(72)【発明者】
【氏名】日高 敦志
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
(72)【発明者】
【氏名】土肥 亮介
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】杉田 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 隆
【合議体】
【審判長】
和田 雄二
【審判官】
一ノ瀬 覚
【審判官】
出口 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】
実開平5−2215(JP,U)
【文献】
特開2000−20136(JP,A)
【文献】
特開2011−185183(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/046517(WO,A1)
【文献】
特開2004−199109(JP,A)
【文献】
特開2005−149075(JP,A)
【文献】
特開2002−213642(JP,A)
【文献】
特開2001−179136(JP,A)
【文献】
特開平2−178927(JP,A)
【文献】
特開2005−21420(JP,A)
【文献】
特開平11−212653(JP,A)
【文献】
特開平7−4551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントロール弁と、圧力検出器と、温度検出器と、オリフィスと、演算制御装置とを備え、Q=KP1(Q:流量、P1:オリフィス上流側圧力、K:定数)の式を用いてガス流量を制御する圧力式流量制御装置に用いられる流量制御用のオリフィスプレートであって、複数個のオリフィスが設けられ、前記複数個のオリフィスの総開口面積が、前記圧力式流量制御装置に設定された定格流量での流体の流通に必要な一つのオリフィスの開口面積と同じであり、前記オリフィスプレートの厚さを20〜200μm、前記オリフィスの口径を0.079〜0.200mm、前記オリフィスの数を2〜37個とし、前記複数個のオリフィスはプレス加工によって形成されている、流量制御用のオリフィスプレート。
【請求項2】
前記オリフィスの縦断面形状を長方形部分と台形部分とからなる形状とした請求項1に記載の流量制御用のオリフィスプレート。
【請求項3】
前記オリフィスの口径が0.079〜0.135mmであり、前記オリフィスの数が5〜37個である、請求項1または2に記載の流量制御用のオリフィスプレート。
【請求項4】
前記複数個のオリフィスの形状および口径は全て同じである、請求項1から3のいずれかに記載の流量制御用のオリフィスプレート。
【請求項5】
コントロール弁と、圧力検出器と、温度検出器と、流量制御用のオリフィスプレートと、演算制御装置とを備え、Q=KP1(Q:流量、P1:オリフィス上流側圧力、K:定数)の式を用いてガス流量を制御する圧力式流量制御装置であって、前記流量制御用のオリフィスプレートには複数個のオリフィスが設けられ、前記複数個のオリフィスの総開口面積が、前記圧力式流量制御装置に設定された定格流量での流体の流通に必要な一つのオリフィスの開口面積と同じであり、前記流量制御用のオリフィスプレートの厚さが20〜200μm、前記オリフィスの口径が0.079〜0.200mm、前記オリフィスの数が2〜37個であり、前記複数個のオリフィスはプレス加工によって形成されている、圧力式流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御用のオリフィスプレート及びこれを用いた圧力制御式の流量制御装置の改良に関するものであり、特に、半導体製造装置用ガス供給装置等で用いる圧力制御式流量制御装置において、オリフィスを流通する流体の臨界膨張条件が成立するオリフィス上流側圧力P
1、オリフィス下流側圧力P
2の圧力比P
2/P
1の範囲を広く且つ安定に保持できるようにすることにより、広い流量範囲に亘って高精度な流量制御を行えるようにした流量制御用の多孔型のオリフィスプレートとこれを用いた圧力制御式流量制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オリフィス上流側圧力P
1、オリフィス下流側圧力P
2の圧力比P
2/P
1が気体の臨界膨張条件が成立する圧力比以下になると、オリフィスを流通する気体の流速が音速となり、オリフィス下流側の圧力P
2の変動が上流側に伝播せず、その結果、オリフィスプレートを流通する気体流量は、オリフィスの孔径が一定であれば気体の種類に拘わらず、オリフィス上流側の気体圧力P
1に正比例して変化することになる。
【0003】
一方、オリフィスの有する上述のような特性を利用して、オリフィスを用いた流体の流量制御装置が多数開発されている。
図13は、本願発明者等が先に公開したオリフィスを用いた圧力制御式流量制御装置の構成一例を示すものであり、当該流量制御装置21はコントロール弁22、圧力検出器23、温度検出器24、オリフィス25、演算制御装置26、増幅器27a、27b、A/D変換28a
、28b等から形成されている(特開平8−338546号
公報)。
【0004】
そして、圧力検出器2によりオリフィス25の上流側の流体圧力P
1が検出され、演算制御装置26へ入力され、演算制御装置26ではQc=KP
1の演算式
(Kは定数)を用いて流量Qcが演算されると共に、流量指令値QsとQcの比較が行われ、両者の差Qc−Qsに相当する制御信号Qyがコントロール弁22の駆動部30へ入力される。
また、コントロール弁22は、制御信号Qyによって両者の差Qc−Qsが零になる方向に開閉制御され、これによりオリフィス25の下流側の流量が設定流量(流量指令値)Qsに常時保持される。
【0005】
更に、前記オリフィス25は、厚さ0.02〜0.20mmの金属板にプレス加工、放電加工やエッチング加工によって内径0.01〜0.20mmの小孔を一つ穿設することにより形成されており、気体の所要制御流量によってオリフィスの孔径は適宜に選定される。
【0006】
尚、オリフィス25の形成は、一般には放電加工やエッチング加工により行われているが、加工コストの引下げを図るために、ドリル錘を用いた所謂切削加工によりオリフィスが形成される場合もある(特開平11−117915号
公報)。
【0007】
図14は、
図13の圧力制御式流量制御装置において、気体を窒素ガスとした場合の流量制御特性を示すものであり、オリフィス25の下流側を大気圧とした場合を示すものである。
この
図14からも明らかなように、上流側圧力P
1が下流側圧力P
2の約2倍を越える範囲に於いては、流量QcとP
1とはリニアな関係に保持され、Qcはオリフィス上流側の圧力P
1に正比例することになり、オリフィス上流側圧力P
1を自動制御することにより、オリフィスを流通する流量のフィードバック制御を行うことができる。尚、
図14に於いて、Aはオリフィスの孔径が0.37mmφ、Bは0.20
mmφの場合の流量制御特性を示すものである。
【0008】
図14からも明らかなように、両線A、Bとも、P
2<0.5P
1の範囲(即ち、P
2/P
1<0.5)に於いて、直線性が良く保持されており、P
1の調整により高精度な流量制御が行える。
【0009】
しかし、気体の臨界膨張条件(P
2/P
1<0.5又は、P
1/P
2>2)が成立するP
1の下限値(即ち、直線性が保持されるP
1の下限値)は、現実にはオリフィスの内径によって若干変化することが判っており、オリフィスの孔径(
すなわち口径)が大になるほど臨界膨張条件が成立するP
2/P
1の範囲が小さくなる傾向にある。即ち、P
2=一定のときには、P
1の制御範囲の下限値が大きくなる。
【0010】
具体的には、オリフィスの孔径が大きくなると臨界圧比P
2/P
1<0.5がP
2/P
1<0.45程度に低下することとなり、P
2=一定の時は、P
1の制御範囲の下限値が大きくなり、P
1の制御範囲が減少する。
【0011】
換言すれば、流量制御装置の制御流量が増加してオリフィスの孔径が大径になると、臨界圧比P
2/P
1の制御範囲が減少し、半導体製造装置の真空チャンバーへガス供給を行うような場合には、様々な不都合が起生する。
【0012】
上述のように、従前の一つのオリフィスを設けたオリフィスプレートを用いた圧力式流量制御装置には、オリフィスの孔径が大径になるほど臨界膨張条件が成立する圧力比P
2/P
1が変動し、流量(圧力)制御範囲が変動すると云う難点があるため、半導体製造用装置に適用する圧力制御式流量制御装置の技術分野に於いては、オリフィスの孔径が変化しても、現実の臨界膨張条件が成立する圧力比P
2/P
1に変動が生じないようにした流量制御用オリフィスプレート、及び、これを用いた圧力制御式流量制御装置の出現が強く要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−338546号公報
【特許文献2】特開平11−117915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本願発明は、従前の流量制御用オリフィスプレート及びこれを用いた圧力制御式流量制御装置に於ける上述のような問題、即ち、オリフィスの内径が大きくなるに従って、現実の臨界膨張条件が成立する圧力比P
2/P
1が変動(減少)することになり、圧力比P
2/P
1の制御制御範囲が狭くなると共に、圧力制御式流量制御装置の流量制御精度が低下する等の問題を解決し、流体流量が増加してオリフィス孔の内径を増大させても、現実の流量制御に於ける圧力比P
2/P
1を常に一定に保持できると共に、オリフィスプレートの製造コストの引き下げを可能にした流量制御用オリフィスプレート及びこれを用いた圧力制御式流量制御装置を提供することを発明の主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
先ず、本願発明者等は、オリフィスが一つのオリフィスプレート(以下、単孔オリフィスプレートと呼ぶ)について、オリフィスの孔径φが変わることにより、流体の臨界膨張条件が成立するオリフィス上流側圧力P
1とオリフィス下流側圧力P
2の比P
2/P
1(以下、圧力比P
2/P
1と呼ぶ)が、現実にどの程度変動するかを検証した。
【0016】
図1は、従前の流量制御用単孔オリフィスプレート及び本発明に係る流量制御用多孔型オリフィスプレートの圧力比P
2/P
1等の流量特性試験に供した試験装置(流量測定装置)の系統図であり、1はガス入口、2は圧力調整器、3は圧力計、4はモルブロック流量測定器、5は圧力制御式流量制御装置、6はコントロール弁、7はオリフィスプレート、8はオリフィス上流側圧力検出器、9はオリフィス下流側圧力検出器、10はオリフィス下流側圧力P
2の調整弁、11は真空排気ポンプ、P
1はオリフィス上流側圧力、P
2はオリフィス下流側圧力である。なお、最大流量レンジF.S.はN
2ガスを基準とする。
【0017】
試験に供したオリフィスプレートは、厚さ50μmの鋼板にφ=67μm、φ=179μm、φ=250μmのオリフィスを設けた三種類であり、φ=67μmのオリフィスは最大流量レンジ(フルスケール
:定格流量)F.S.=130sccmの圧力制御式流量制御装置5に、また、φ=250μmは最大流量レンジF.S.850sccmの圧力制御式流量制御装置5に、更に、φ=250μmは最大流量レンジF.S.=1600sccmの圧力式流量制御装置5に夫々使用されているものである。
【0018】
試験に際しては、先ず圧力調整器2により圧力計3の圧力Poを300kPa absに調整する。次に、圧力制御式流量制御装置5の設定流量を100%F.S.(定格流量)に設定し、真空排気ポンプ11を運転する。その後、真空排気ポンプ11の上流側の調整弁10を調整してオリフィス下流側圧力P
2を調整しつつ、モルブロック流量測定器4及び圧力式流量制御装置5にて夫々のガス流量を測定する。尚、試験用のガスはN
2ガスとした。
【0019】
次に、モルブロック流量測定器4の測定流量Qsを基準値として圧力制御式流量制御装置5の各測定流量Qcの誤差(セットポイント誤差(S.P.%))を、(Qc−Qs)×100/Qs(S.P.%)として演算した。
尚、流量測定は、圧力制御式流量制御装置5の設定流量の100%、50%、20%及び10%の夫々について行った。
【0020】
図2、
図3及び
図4は、オリフィス孔径の異なった三種の圧力制御式流量制御装置(F.S.130sccm、F.S.850sccm、F.S.1600sccm)の圧力比(P
2/P
1)とセットポイント誤差(S.P.%)との関係を、圧力制御式流量制御装置5への設定入力(設定流量)をパラメータとして表したものであり、
図2〜
図4の対比から流量レンジ(定格流量 S.P.)が大でオリフィスの孔径が大きくなるほど、セットポイント誤差(S.P.%)が零、即ち臨界膨張条件が成立するP
2/P
1の範囲が小さくなることが、確認できた。
【0021】
また、
図5、
図6及び
図7は、上記
図1の試験装置により得られた流量調整結果から、セットポイント誤差(S.P.%)が±1%以内の圧力比P
2/P
1に於ける設定流量(%)と、100%設定時における制御流量を基準とした流量直線性誤差(F.S.%)の関係、即ち、設定流量(%)と直線性誤差(F.S.%)の関係を示すものであり、臨界膨張条件が成立する圧力比P
2/P
1の範囲内に於いては、単孔オリフィスプレートの流量直線性誤差F.S.%は±1%F.S.以内に収まっていることが判った。
【0022】
本願発明は上記
図2乃至
図7の如き流量特性試験の結果を基にして創作されたものであり、本願発明者等は、単孔オリフィスプレートのオリフィスの孔径が小さいほど臨界膨張条件が成立する圧力比P
2/P
1の範囲が大きくなることに着目して、制御流量が増大した時には、従前のように流量幅に応じて単孔オリフィスプレートのオリフィスの孔径を大きくするのではなしに、小さな孔径の多孔型オリフィスのオリフィスの孔数を変化させ、これによって制御流量の増大に対応することにより、オリフィス流通流体の臨界膨張条件が成立する圧力比P
2/P
1の範囲を最大且つ一定に保持した状態で流量増加に対応し得ることに想到した。
【0023】
本発明の実施形態によれば、流量制御に用いられるオリフィスプレートに於いて、複数個のオリフィスからなり、前記オリフィスの総開口面積が
定格流量の流体の流通に必要な一つのオリフィス孔の開口面積
と同じであり、前記オリフィスプレートの厚さを20〜200μm、前記オリフィスの口径を0.010〜0.200mm
(特に0.079〜0.200mm)、前記オリフィスの数を2〜100個
(特に2〜37個)とし、プレス加工によってオリフィスが形成されたオリフィスプレート
が提供される。
【0024】
ある実施形態において、流量制御装置を、コントロール弁と、圧力検出器と、温度検出器と、オリフィスと、演算制御装置とからなる圧力式流量制御装置としたものである。
【0025】
ある実施形態において、前記オリフィスの縦断平面形状を長方形部分と台形部分とからなる形状としたものである。
【0026】
本発明の実施形態によれば、コントロール弁と、圧力検出器と、温度検出器と、オリフィスと、演算制御装置とからなる圧力式流量制御装置において、前記オリフィスプレートが複数個のオリフィスから成る圧力式流量制御装置
が提供される。
【0027】
より具体的には、前記オリフィスプレートの厚さが20〜200μm、前記オリフィスの口径が0.010〜0.200mm
(特に0.079〜0.200mm)、前記オリフィスの数が2〜100
(特に2〜37個)であり、プレス加工によってオリフィスが形成されたもの
が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明
の実施形態によれば、流体を臨界膨張条件下で流通させ、オリフィスを流通する流体流量Qがオリフィス上流側圧力P
1に正比例するようにした流量制御用オリフィスプレートに於いて、所望流量の流体の流通に必要な一つのオリフィスの開口面積を分割し、前記開口面積に等しい総開口面積を有する複数個のオリフィスを設けた構成としている。
その結果、臨界膨張条件が成立するオリフィス上流側圧力P
1と下流側圧力P
2との圧力比P
2/P
1が、制御流量が増大してオリフィスの開口面積が大きくなっても、現実に変動することなく一定の値に保持されることになり、これによりP
2/P
1の制御範囲(流量制御範囲)の減少を有効に防止することができる。また、当該オリフィスプレートを用いた圧力制御式流量制御装置にあっては、流量制御範囲の拡大と制御精度の向上が可能となる。
【0029】
また、前記複数のオリフィスは、プレス加工により容易に形成することが出来るため、従前のレーザ加工等による製造に比較して、低コストでのオリフィスプレートの製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】オリフィスの流量特性試験に供した試験装置の系統図である。
【
図2】F.S.130sccmの圧力制御式流量制御装置の圧力比P
2/P
1とセットポイント誤差(S.P.%)との関係を示す線図である。
【
図3】F.S.850sccmの
図2と同じ線図である。
【
図4】F.S.1600sccmの
図2と同じ線図である。
【
図5】F.S.130sccmの圧力制御式流量制御装置のセットポイント誤差S.P.%が±1%以内の圧力比P
2/P
1に於ける設定流量(%)とフルスケールに対する誤差(直線性誤差)(F.S.%)の関係を示す線図である。
【
図6】F.S.850sccmの
図5と同じ線図である。
【
図7】F.S.1600sccmの
図5と同じ線図である。
【
図8】本発明に係る多孔型オリフィスプレートの一例を示すものである。
【
図9】本発明に係る多孔型オリフィスプレートの更に他の例を示す平面図である。
【
図10】本発明に係る多孔型オリフィスプレートの更に他の例を示す平面図である。
【
図11】
図10の多孔型オリフィスをプレート用いた場合の
図2乃至
図4と同様の圧力比P
2/P
1とセットポイント誤差(S.P.%)の関係線図である。
【
図12】
図10の多孔型オリフィスプレートを用いた場合の
図5乃至
図7と同様の設定流量(%)と直線性誤差(F.S.%)との関係線図である。
【
図13】公知の圧力制御式流量制御装置の構成図である。
【
図14】
図13の圧力制御式流量制御装置の流量制御特性を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態と図面に基づいて説明する。
図8は本発明に係る流量制御用オリフィスプレートの一例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は裏面図、(c)は(b)のイ−イ視図である。
【0032】
当該
図8に於いては、外径3.5mm、厚さ0.05mmのオリフィスプレート7aに孔径
(口径)0.085mmのオリフィス12が合計15個設けられている。
また、前記オリフィス12の縦断平面形状は、(c)に示すように長方形部12aと台形部12bとから成る形状にプレス加工により形成されており、オリフィス12の深さはオリフィスプレート7aの厚さ0.05mmと同一寸法である。
更に、オリフィスプレート7aの裏面側のオリフィス12を設けた部分は、細幅状に研磨され、研磨面12cが形成されており、当該研磨面12cによりオリフィス7aの表裏が判別される。
【0033】
図9は、本発明に係る流量制御用多孔型オリフィスプレート7aの他の例を示すものであり、オリフィス12の数が5個であり、且つオリフィス12の孔径
(口径)が0.135mmである点を除いて、その他の点は前記
図8の流量制御用多孔型オリフィスプレートと同一である。
【0034】
図10は、本発明に係る流量制御用多孔型オリフィスプレート7aの更に他の例を示す拡大平面図であり、孔径
(口径)φが79μm(0.079mm)のオリフィス12が37個設けられている。
尚
図10のオリフィスプレート7aの外径、厚さ等は前記
図8及び
図9のオリフィスプレート7aと同一である。
【0035】
当該オリフィス12の孔径
(口径)φ=79μmは、株式会社フジキン製のF180型圧力制御式流量制御装置の単孔型オリフィスプレート7のオリフィスの孔径に相当するものであり、定格流量180sccm(F.S.)の制御用オリフィスプレートである。
従って、
図10の流量制御用多孔型オリフィスプレート7aは、180sccm×37=6
,660sccmのF.S.流量に相当する。
【0036】
図11は、当該
図10の多孔型オリフィスプレート7aを、
図1の試験装置に於ける単孔型オリフィスプレート7に替えて使用した場合の前記
図2と同一の関係曲線即ち、圧力比P
2/P
1との関係を示すものである。
【0037】
当該
図11と前記
図2との対比からも明らかなように、本発明の多孔型オリフィスプレート7aの場合には、セットポイント誤差(S.P.%)が±1%の範囲内となる圧力比P
2/P
1の値が、10%入力(設定流量10%)の時でも0.45を下ることが無く、100%の入力(設定流量100%)に於いては、約0.52のP
2/P
1値を得ることが出来る。
【0038】
これに対して、最大流量が850sccmである前記
図3に於いては、100%入力時の圧力比P
2/P
1が約0.42であり、最大流量
(定格流量)が1600sccmの前記
図4に於いても、100%入力時の圧力比P
2/P
1が約0.40程度となっており、本願発明の多孔型オリフィスプレート7aを利用した場合には、臨界膨張条件が成立するP
2/P
1の範囲を広くできることが判る。尚、理論上の臨界膨張条件が成立する圧力比P
2/P
1と現実の実測による場合の臨界膨張条件が成立する圧力比P
2/P
1との間に、上述のような若干の相違が生ずる原因は、理論的に未解析であって現在考察中であるが、オリフィス出口側の流体の流れ状態の相違が影響しているものと想定されている。
【0039】
図12には、本願発明の多孔型オリフィスプレート7aを用いた場合の前記
図5と同じ線図であり、セットポイント誤差(S.P.%)が±1%以内の圧力比P
2/P
1に於ける設定流量(%)と100%設定時における制御流量に対する誤差(流量直線性誤差)(F.S.%)の関係を示す線図である。
図12からも明らかなように、本願発明の多孔型オリフィスプレート7aについても流量直線性誤差(F.S.%)は±1%F.S.以内になることが確認されている。
【0040】
尚、本願発明に係る圧力制御式流量制御装置は、前記株式会社フジキン製のF180型圧力制御式流量制御装置や
図13に示した圧力制御式流量制御装置等のオリフィスプレートを、本願発明のオリフィスプレートに変換したものである。よってその詳細な説明は省略する。
【0041】
上述の通り、本願発明に係る流量制御用多孔型オリフィスプレート及びこれを用いた圧力制御式流量制御装置は、制御流量に応じてオリフィス12の数を調整することにより、制御流量が大きくなっても、臨界膨張条件が成立する圧力比P
2/P
1の範囲を広く一定に保持することができ、これにより、高精度な流量制御を広範囲に亘って安定して行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る多孔型オリフィスプレートは、圧力制御式流量制御装
置に適用することができるものである。
【符号の説明】
【0043】
1 ガス入口
2 圧力調整器
3 圧力計
4 モルブロック流量測定器
5 圧力式流量制御装置
6 コントロール弁
7 オリフィスプレート(単孔型)
7a 多孔型オリフィスプレート
8 オリフィス上流側圧力検出器
9 オリフィス下流側圧力検出器
10 オリフィス下流側圧力P
2の調整弁
11 真空排気ポンプ
P
1 オリフィス上流側圧力
P
2 オリフィス下流側圧力
Po ガス供給源側圧力
12 オリフィス