(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306299
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】樹脂トルクロッド
(51)【国際特許分類】
F16F 15/08 20060101AFI20180326BHJP
F16F 1/38 20060101ALI20180326BHJP
B60K 5/12 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
F16F15/08 T
F16F1/38 G
B60K5/12 Z
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-168739(P2013-168739)
(22)【出願日】2013年8月14日
(65)【公開番号】特開2015-36579(P2015-36579A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177900
【氏名又は名称】山下ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089509
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 清光
(72)【発明者】
【氏名】稲富 崇敏
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第01411265(EP,A2)
【文献】
仏国特許出願公開第02805869(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 5/12
F16F 1/38
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド部(12)の長さ方向両端にリング部を一体に設け、
これら両リング部の中心を結ぶ中心線(C0)上に前記ロッド部を配置し、前記リング部のうちの一方のリング部(14)は、リング穴と、その内側に弾性体を介して連結される内側部材(22)を備えた樹脂製のトルクロッドにおいて、
平面視にて、
前記ロッド部(12)には、前記中心線(C0)を挟んで平行して延びる一対の横リブ(44)が設けられ、
前記一方のリング部(14)における前記ロッド部(12)との付け根部近傍に、前記一対の横リブ(44)の各長さ方向一端部(44a)と、これら長さ方向一端部(44a)間を連結する連結リブ(46)とが一体に設けられるとともに、
前記一対の横リブ(44)の各長さ方向一端部(44a)は、前記内側部材(22)よりも前記ロッド部(12)側へ後退した位置に、前記内側部材(22)を挟むように配置され、
前記一対の横リブ(44)の各長さ方向一端部(44a)は、互いに離反する方向へ拡開する拡開部をなし、前記連結リブ(46)はこの拡開部間を連結していることを特徴とする樹脂トルクロッド。
【請求項2】
前記一対の横リブ(44)の間は前記中心線(C0)に沿って溝状に形成された中央溝(45)をなし、その長さ方向一端部(45a)内に連結リブ(46)が形成されていることを特徴とする請求項1の樹脂トルクロッド。
【請求項3】
前記連結リブ(46)の突出高さは、横リブ(44)の長さ方向一端部(44a)より低いことを特徴とする請求項2の樹脂トルクロッド。
【請求項4】
前記連結リブ(46)は中心線(C0)の上に設けられていることを特徴とする請求項3の樹脂トルクロッド。
【請求項5】
前記連結リブ(46)は中心線(C0)と直交方向へ直線状に延びて前記一対の横リブ(44)の各長さ方向一端部(44a)に連結する部分を有することを特徴とする請求項4の樹脂トルクロッド。
【請求項6】
前記連結リブ(46)は中心線(C0)に沿って突出し、前記中央溝(45)の端部壁(45b)へ連結する突出部(46a)を有することを特徴とする請求項5の樹脂トルクロッド。
【請求項7】
前記突出部(46a)は前記一対の横リブ(44)の各長さ方向一端部(44a)に連結せず離隔していることを特徴とする請求項6の樹脂トルクロッド。
【請求項8】
前記中央溝(45)は、前記一対の横リブ(44)の各長さ方向一端部(44a)間において、端部側の幅が拡大する拡大部(45a)をなし、この拡大部(45a)内に、前記突出部(46a)を有する連結リブ(46)が配置されていることを特徴とする請求項7の樹脂トルクロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂トルクロッドに係り、特に複数のリブを設けたものに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを車体へ取付ける際に使用する防振装置としてのトルクロッドは公知である。また、樹脂で形成した樹脂トルクロッドも公知である。樹脂トルクロッドの場合は複数のリブを設けることで、軽量・高剛性にすることができる(例えば、特許文献1参照)。
また、リブを湾曲させたものもある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−19323号公報
【特許文献2】特許5095577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロッド部にその長さ方向へ延びる一対の横リブを設けて剛性を高めるとともに、この横リブの長さ方向各端部をリング部近傍に配置した場合において、ロッド部を圧縮する方向へ荷重が加わると、一対の横リブの各端部が押し広げられるように変形する可能性があり、この場合は、圧縮時の剛性が低くなる。したがって、圧縮時の剛性を高めることが望まれている。本願は係る要請の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため請求項1に記載した発明は、ロッド部(12)の長さ方向両端にリング部を一体に設け、
これら両リング部の中心を結ぶ中心線(C0)上に前記ロッド部を配置し、前記リング部のうちの一方のリング部(14)は、リング穴と、その内側に弾性体を介して連結される内側部材(22)を備えた樹脂製のトルクロッドにおいて、
平面視にて、
前記ロッド部(12)には、前記中心線(C0)を挟んで平行して延びる一対の横リブ(44)が設けられ、
前記一方のリング部(14)における前記ロッド部(12)との付け根部近傍に、前記一対の横リブ(44)の各長さ方向一端部(44a)と、これら長さ方向一端部(44a)間を連結する連結リブ(46)とが一体に設けられるとともに、
前記一対の横リブ(44)の各長さ方向一端部(44a)は、前記内側部材(22)よりも前記ロッド部(12)側へ後退した位置に、前記内側部材(22)を挟むように配置され
、
前記一対の横リブ(44)の各長さ方向一端部(44a)は、互いに離反する方向へ拡開する拡開部をなし、連結リブ(46)はこの拡開部間を連結していることを特徴とする。
【0007】
請求項
2に記載した発明は上記請求項
1において、前記一対の横リブ(44)の間は前記中心線(C0)に沿って溝状に形成された中央溝(45)をなし、その長さ方向一端部(45a)内に連結リブ(46)が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項
3に記載した発明は上記請求項
2において、連結リブ(46)の突出高さは、横リブ(44)の長さ方向一端部(44a)より低いことを特徴とする。
【0009】
請求項
4に記載した発明は上記請求項
3において、連結リブ(46)は中心線(C0)の上に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載した発明によれば、中心線(C0)方向へ延びる一対の横リブ(44)の各長さ方向の一端部(44a)をリング部(14)の近傍に設けるとともに、これら各一端部(44a)を連結リブ(46)で連結したので、各一端部(44a)がリング部(14)から圧縮方向への荷重を受けても、各一端部(44a)は連結リブ(46)により補強されて押し広げられにくくなる。このため、圧縮時の剛性を高くすることができる。
しかも、リング部(14)近傍の一端部(44a)を連結リブ(46)で連結するから、連結リブ(46)を荷重の入力部近傍へ配置することになり、圧縮時の力に対して効率よく補強でき、連結リブ(46)を小型・軽量化できる。
【0011】
また、一対の横リブの各一端部(44a)を互いに離反するように拡開させたので、リング部(14)の中心近くまで長く形成できる。このため、リング部(14)及び横リブ(44)の圧縮に対する剛性を高くすることができる。
【0012】
請求項3に記載した発明によれば、連結リブ(46)は、一対の横リブ(44)の各一端部(44a)間に形成された中央溝(45)の長さ方向一端部(45a)内に設けられるので、連結リブ(46)の張り出しを少なくしてコンパクト化できる。
【0013】
請求項4に記載した発明によれば、連結リブ(46)の突出高さを、横リブ(44)よりも低くしたので、さらにコンパクトにできる。
【0014】
請求項5に記載した発明によれば、中心線(C0)の上に連結リブ(46)を設けるので、リング部(14)からの圧縮荷重が中心線(C0)に沿って加わるとき、連結リブ(46)で効率よく受け止めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて一実施形態を説明する。このトルクロッド10は、棒状のロッド部12と、その長手方向両端に第1リング部14と第2リング部16とをFRP等の公知の適宜樹脂にて一体に形成した本体部18を備える。
【0017】
第1リング部14はリング穴15(
図3参照)を備え、この内側に配置された第1弾性体20を介して第1内側部材22と連結されている。第1弾性体20はゴム等の適宜弾性材料からなり、第1リング部14と第1内側部材22を加硫接着等の適宜手段で弾性的に結合している。第1内側部材22は金属製等のパイプ部材であり、ここに通した図示しないボルト等により図示しないエンジンへ取付けられる。
【0018】
第2リング部16はリング穴17(
図3参照)を備え、この内側に配置された第2弾性体30を介して第2内側部材32と結合されている。第2弾性体30は、ゴム等の適宜弾性材料よりなり、加硫接着等の適宜手段で第2リング部16と第2内側部材32を弾性的に結合している。
第2内側部材32は金属製等のパイプ部材であり、ここに通した図示しないボルト等により図示しない車体へ取付けられている。
【0019】
ここで、第1リング部14の中心をO1、第2リング部16の中心をO2とし、これらを結んだ直線を中心線C0とする。また、第1リング部14の中心軸線をC1、幅をW1(
図2)、第2リング部16の中心軸線をC2、幅をW2(
図1)とする。中心軸線C1は第1内側部材22の軸線でもあり、中心O1は中心軸線C1上で幅W1の中間となる。中心軸線C2は第2内側部材32の軸線でもあり、中心O2は中心軸線C2上で幅W2の中間となる。
各中心軸線C1とC2は直交して互いに90°ねじれている。但し、本願発明の対象となるトルクロッドはこのようなねじれタイプだけでなく、各中心軸線C1及びC2が平行するものでもよい。
【0020】
中心線C0はこれら中心軸線C1及びC2と直交している。また、この例では、ロッド部12が中心線C0に対して対称に設けられ(
図2参照)、中心線C0がロッド部12の中心線にもなっている。
【0021】
ここで、中心線C0の方向を前後方向、中心軸線をC2の方向を上下方向とし、
図1における左側を前方、上側を上方とする。また、
図2において、中心軸線C1の方向を左右方向とし、図の上側を右方とする。
【0022】
図2に示すように、第2弾性体30は、第2内側部材32から左右へ拡がる腕部34を有し、防振主体部をなしている。
腕部34は平面視で前方へ凸の略V字状をなし、後方へ向かって拡開し、第2内側部材32は上下方向へ貫通するすぐり穴36を介してストッパ38と対向している。
腕部34の前方側にも上下方向に貫通するすぐり穴39が形成されている。
【0023】
このトルクロッド10でエンジンと車体とを連結すると、エンジンの上下及び前後方向の振動は、第1内側部材22を介して第1リング部14へ入力され、第1弾性体20を弾性変形させる。このとき第1弾性体20は捩られ、トルクロッド10が第1内側部材22を中心に揺動されるため、第2リング部16が前後方向へ移動して腕部34を弾性変形させる。これにより、トルクロッド10により振動を吸収して、車体への振動伝達を低減する。
【0024】
次に、リブ構造を説明する。
図1・2・4を中心にして示すように、第1リング部14の外周面には、周方向へ複数の平行する肉抜き溝26が形成され、この肉抜き溝26の肉抜き残部がリブ28をなしている。リブ28は複数が平行して形成されている。
【0025】
ロッド部12は、上下に左右方向へ張り出す上下リブ40と、これら上下リブ40をつないで中心線C0に沿って前後方向へ延びる柱状部42(
図3・4・7参照)を一体に有し、断面において、上下方向に延びる1本の柱状部42に対して、水平方向に延びて互いに上下方向にて平行する複数(本例では4個)の上下リブ40が交差している(
図7)。
【0026】
上下リブ40の平面視は前後方向中間部が中央側へくびれた湾曲
部をなしている(
図2参照)。また、柱状部42の側面には、左右方向へ突出するとともに、前端部を除き中心線C0と平行に第2リング部16側へ延びる2本の中間リブ44が一体に形成されている。
【0027】
中間リブ44は上下リブ40よりも肉厚で中心線C0に沿って前後方向へ延びる横リブである。
中間リブ44と上下リブ40との間には上下部溝41が中間リブ44に沿って前後方向へ長く形成されている。
【0028】
一対の中間リブ44の間にも中央溝45が形成されている。中央溝45の上下方向幅は上下部溝41よりも狭いが、中心線C0に沿って前後方向へ長く形成されている。
図1に示すように、上下リブ40はロッド部12の長さ方向中間にて最も間隔が狭くなるように湾曲し、その前端部40aは、前方へ向かって拡開して第1リング部14のリブ28へ連続している。
【0029】
2本の上下部溝41の前端部41aも、互いに上下方向へ離反するように湾曲している。各前端部41aの前端位置は第1内側部材22の上下方向に位置し、換言すれば、第1内側部材22は、上下の前端部41aの各前端間へ入る位置になっている。
中央溝45の前端部45aは上下方向へ拡開した拡大部になっている。前端部45aとその上下の前端部41aとの間に、中間リブ44の各前端部44a
が湾曲して形成される。中間リブ44の各前端部44aは互いに上下方向へ離反するように湾曲している。
【0030】
中央溝45の前端部45aにおける前端位置は、上下の前端部41aの各前端位置よりも後退しており、中心線C0上にて第1内側部材22の後方近傍にしている。したがって、第1内側部材22が中心線C0上を後方へ移動するとき、すなわちトルクロッド10に圧縮方向の荷重が加わるとき、第1内側部材22が上下の中間リブ44の各前端部44aを押し広げる方向に作用する。
【0031】
中間リブ44の各前端部44a間は連結リブ46により連結されている。
図1中の拡大部に示すように、連結リブ46は、上下方向に延びて上下の中間リブ44の各前端部44aをつなぐとともに、一部は前方へ突出する突出部46aをなし、中央溝45の前端部45aにおける前壁45bへ連結している。
突出部46aは中間リブ44の各前端部44aと連結していない(
図5参照)。
【0032】
なお、上下部溝41の前端部41a内にも連結リブ46が設けられ、中間リブ44の前端部44aと、隣り合う上下リブ40の前端部40aとを連結している(
図6参照)。
【0033】
図4に示すように、連結リブ46の左右方向突出高さは、突出部46aを含めて前端部44aよりも低くなっており、中央溝45の前端部45a内へ引き込んでいる。なお、上下部溝41の前端部41a内に設けられる連結リブ46の左右方向突出高さも同様である。
【0034】
次に、本実施形態の作用を説明する。
図1に示すように、ロッド部12における第1リング部14の付け根部近傍には、横リブである一対の中間リブ44の各前端部44aが位置している。しかも、各前端部44aは、前方へ向かって互いに上下方向へ離反するように湾曲しながら拡開し、各前端部44a間に第1内側部材22を挟むように配置されている。
そこで、トルクロッド10の第1リング部14に圧縮方向の荷重が加わると、第1内側部材22が中心線C0上を後方へ移動し、一対の中間リブ44の各前端部44aに対して、拡開方向へさらに押し広げるように力を加える。
【0035】
ところが、
図4〜6に示すように、中間リブ44の前端部44aは連結リブ46にて一体に結合されている。したがって、中間リブ44の前端部44aはこの力に耐えることができる。このため、圧縮方向における剛性を高めることができる。しかも、第1内側部材22近傍の中間リブ44の各前端部44aを補強するだけで済むため、比較的小さな連結リブ46だけで足りることになり、第1リング部14の近傍部をコンパクト化でき、トルクロッド10全体の重量増加を抑制できる。
【0036】
また、連結リブ46は、中央溝45の前端部45aである拡大溝部内に設けられているので、中央溝45の前端部45aにおける拡大溝部を利用して容易に設けることができ、しかも左右方向にて中間リブ44の前端部44aよりも突出高さが低くなっているから、この点でも第1リング部14の近傍部をコンパクト化できる。
【0037】
なお、本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では連結リブ46を第1リング部14に設けてあるが、第2リング部16に設けてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10:トルクロッド、12:ロッド部、14:第1リング部、16:第2リング部、44:中間リブ、45:中央溝、46:連結リブ、50:第1リブ、52:縦リブ