特許第6306305号(P6306305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ケーヒンの特許一覧

<>
  • 特許6306305-車両用空調装置 図000002
  • 特許6306305-車両用空調装置 図000003
  • 特許6306305-車両用空調装置 図000004
  • 特許6306305-車両用空調装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306305
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
   B60H1/00 102P
   B60H1/00 102Q
   B60H1/00 103P
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-187824(P2013-187824)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-54567(P2015-54567A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】狩野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】福田 健二
【審査官】 関口 知寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−248351(JP,A)
【文献】 特開2003−011659(JP,A)
【文献】 特開平06−127261(JP,A)
【文献】 特開2002−036853(JP,A)
【文献】 特開2006−111119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00−3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の流通する流路及び車室内へ送風する送風口とを有した空調ケースと、前記空調ケースの内部に設けられ前記空気を冷却・加熱する熱交換器とを備えた車両用空調装置において、
前記空調ケースの外壁面には、外装部材を固定するための取付部が設けられ、前記外装部材には、前記取付部に開口した孔部を覆うカバー部が設けられ、前記取付部と前記外装部材は爪部によって係合され、前記爪部は前記外壁面と平行するように突出した係止部を有し、前記孔部は、前記爪部に対して前記係止部の突出した側の前記外壁面に開口し、
前記カバー部と前記外壁面との間に設けられる隙間がラビリンス構造となるように形成され
前記ラビリンス構造は、前記取付部に形成され前記外装部材側に向かって立設した第1の壁部と、前記外装部材に形成され前記取付部側に向かって立設した第2の壁部とを有し、前記第1の壁部と前記第2の壁部とが、前記外壁面の延在方向に沿ってオフセットして配置されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記爪部は、前記取付部において外方に向かって突出し、前記爪部が前記外装部材に係合されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項記載の車両用空調装置において、
前記第1の壁部及び前記第2の壁部の少なくともいずれか一方が2つ以上設けられることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記外装部材は、前記熱交換器に接続された配管を覆うカバー部材であることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記外装部材は、前記空調ケース内における空気の流通状態を切り替えるダンパを作動させるリンク機構を保持するブラケットであることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、熱交換器によって温度調整のなされた空気を車室内へと送風して車室内の温度調整を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される車両用空調装置は、送風機によって内気・外気を空気通路を内部に有した空調ケースへと取り込み、冷却手段であるエバポレータにより冷却された空気と、加熱手段であるヒータコアにより加熱された空気とを前記空調ケース内においてダンパを作動させることで所望の混合比率で混合した後、前記空調ケースに設けられた複数の吹出口から送風ダクトを通じて車室内へと送風することで前記車室内の温度及び湿度の調整を行っている。
【0003】
このような車両用空調装置では、エバポレータ及びヒータコアに接続された配管を覆う保護カバーや、ダンパを駆動させるリンクを固定するブラケット等の外装部材を空調ケースの外壁部へと固定する際、複数のボルトによって固定するのが一般的であるが、前記ボルトの数量が多いために組付作業が煩雑になると共に、金属製材料からなるボルトを装着することで重量増加を招くという問題がある。
【0004】
そこで、上述した課題を解決するために、例えば、特許文献1に開示された車両用空調装置では、エバポレータ及びヒータコアの配管を覆う保護カバーの端部に、空調ケース側に突出した複数の係止部を設け、各係止部を空調ケースの外壁部に形成された挿入孔にそれぞれ挿入させることで、前記係止部の段部が挿入孔に対して係合され前記保護カバーが固定される構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−36853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された車両用空調装置では、挿入孔と係止部との間に生じた隙間を通じて空調ケース内の空気が外部へと漏出してしまい、該空調ケースを通じて車室内へと送風される空気の送風量が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、空調ケースに対して外装部材を容易且つ確実に固定することができ、しかも、空調ケース内の空気が外部へ漏出することを防止可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、空気の流通する流路及び車室内へ送風する送風口とを有した空調ケースと、空調ケースの内部に設けられ空気を冷却・加熱する熱交換器とを備えた車両用空調装置において、
空調ケースの外壁面には、外装部材を固定するための取付部が設けられ、外装部材には、取付部に開口した孔部を覆うカバー部が設けられ、取付部と外装部材は爪部によって係合され、爪部は外壁面と平行するように突出した係止部を有し、孔部は、爪部に対して係止部の突出した側の外壁面に開口し、
カバー部と外壁面との間に設けられる隙間がラビリンス構造となるように形成され
ラビリンス構造は、取付部に形成され外装部材側に向かって立設した第1の壁部と、外装部材に形成され取付部側に向かって立設した第2の壁部とを有し、第1の壁部と第2の壁部とが、外壁面の延在方向に沿ってオフセットして配置されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、車両用空調装置を構成する空調ケースにおいて、その外壁面には外装部材を固定するための取付部が設けられ、外装部材には、取付部に開口した孔部を覆うカバー部を備え、また取付部と外装部材とを互いに係合する爪部を備え、取付部と外装部材との間に設けられる隙間にラビリンス構造が設けられている。
【0010】
従って、従来の車両用空調装置のようにボルト等を用いることなく、外装部材を爪部の係合作用下に空調ケースの取付部に対して確実且つ容易に固定することができると共に、外装部材のカバー部が取付部に開口した孔部を覆い、しかも、両者の間にラビリンス構造を設けて孔部から外部への空気の流れを妨げることで、空調ケース内の空気が孔部を通じて外部へと漏出してしまうことが防止される。また、第1の壁部と第2の壁部とを、外壁面の延在方向に沿ってオフセットして配置することにより、取付部に対して外装部材を組み付けるだけで、第1の壁部及び第2の壁部とから容易にラビリンス構造を構成して隙間を通じた空気の漏出を防止することができる。
【0011】
また、爪部は、取付部において外方に向かって突出し、爪部を外装部材に係合させることにより、爪部を介して取付部に外装部材を容易且つ確実に固定することができ、しかも、爪部が空調ケース内に突出することがないため、流路を流通する空気の流路抵抗となることが回避され円滑に流通させることができる。
【0013】
さらにまた、第1の壁部及び第2の壁部の少なくともいずれか一方を2つ以上設けることにより、取付部と外装部材との間に設けられる隙間をさらに複雑なラビリンス構造とし、孔部を通じた空気の外部への漏出をより一層効果的に防止することが可能となる。
【0014】
またさらに、外装部材を、熱交換器に接続された配管を覆うカバー部材や、空調ケース内における空気の流通状態を切り替えるダンパを作動させるリンク機構を保持するブラケットとするとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0016】
すなわち、車両用空調装置を構成する空調ケースにおいて、その外壁面に外装部材を固定するための取付部を設け、外装部材には、取付部に開口した孔部を覆うカバー部を備え、また取付部と外装部材とを互いに係合する爪部を備え、取付部と外装部材との間に設けられる隙間にラビリンス構造を設けることで、ボルト等を用いることなく、爪部の係合作用下に外装部材を空調ケースの取付部に対して確実且つ容易に固定することができる。また、外装部材のカバー部が取付部に開口した孔部を覆い、しかも、両者の間にラビリンス構造を設けて孔部から外部への空気の流れを妨げることで、空調ケース内の空気が孔部を通じて外部へと漏出してしまうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す全体正面図である。
図2図2Aは、図1の車両用空調装置における第1固定部近傍を示す拡大正面図であり、図2Bは、図1の車両用空調装置における第2取付部近傍を示す拡大正面図である。
図3図3Aは、図1のIIIA−IIIA線に沿った断面図であり、図3Bは、図1のIIIB−IIIB線に沿った断面図であり、図3Cは、図1のIIIC−IIIC線に沿った断面図である。
図4図4Aは、変形例に係るヒータカバーが用いられた場合の図1のIIIA−IIIA線に沿った第1固定部の断面図であり、図4Bは、図4Aのヒータカバーが用いられた場合の図1のIIIB−IIIB線に沿った第1固定部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る車両用空調装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す。なお、車両用空調装置10は、図1に示される右側(矢印A方向)が車両の前方側、すなわち、エンジンルーム側となり、左側(矢印B方向)が該車両の後方側、すなわち、車室内側となるように搭載されるため、以下、矢印A方向を車両前方とし、矢印B方向を車両後方として説明する。
【0019】
この車両用空調装置10は、図1に示されるように、空気の各通路12を構成する空調ケース14と、前記空調ケース14の内部に配設される送風機16と、前記空気を冷却するエバポレータ(熱交換器)18と、該空気を加熱するヒータコア(熱交換器)20と、前記各通路12内を流通する空気の流れを切り換えるダンパ機構22とを含む。
【0020】
空調ケース14は、例えば、略対称形状の第1及び第2分割ケース24、26から構成され、前記第1及び第2分割ケース24、26は車両の幅方向に分割可能に設けられている。この空調ケース14の上方には、乗員の顔近傍やフロントウィンドウへ送風を行う送風口28が形成される。
【0021】
この空調ケース14の内部には、車両用空調装置10を車両に搭載した際に車両後方側(矢印B方向)となる位置に送風機16が収納され、該送風機16の下方にエバポレータ18が収納されると共に、前記エバポレータ18に対して車両前方側(矢印A方向)となる位置にヒータコア20が収納される。
【0022】
一方、空調ケース14を構成する第2分割ケース26の外部には、車両後方側(矢印B方向)となる側壁部(外壁面)26aにヒータカバー(外装部材)32の装着される第1取付部34が形成されると共に、送風機16に対して車両前方(矢印A方向)となる側面には後述するリンク機構36を保持するブラケット(外装部材)38を固定する第2取付部40が形成される。
【0023】
第1取付部34は、図2A及び図3Aに示されるように、第2分割ケース26の側壁部26aに形成され、円筒状の第1ボス部42と、該第1ボス部42に対して半径外方向に離間した第1爪部44と、該第1爪部44に隣接した第1開口部(孔部)46とからなる。
【0024】
この第1ボス部42は、図3Aに示されるように、一定径で第2分割ケース26の側壁部26aに対して直立して所定高さで形成されると共に、中心部が軸方向に沿って中空となった円筒状に形成される。
【0025】
第1爪部44は、例えば、車両の前後方向(矢印A、B方向)に沿って所定幅を有した板状に形成され、第2分割ケース26の側壁部26aに対して直立して所定高さだけ突出するように形成される。そして、第1爪部44の先端には、第1ボス部42とは反対側となる方向(矢印C1方向)に突出した係止部48が形成される。係止部48は、第1爪部44の先端から基端に向かって徐々に幅広状となる断面略三角形状に形成される。
【0026】
第1開口部46は、第1爪部44の上方(矢印C1方向)に断面長方形状で開口し、且つ、車両の前後方向(矢印A、B方向)に沿った幅寸法が前記第1爪部44の幅寸法と略同一で形成されると共に、図3A及び図3Bに示されるように、前記第2分割ケース26の側壁部26aに対して立設した第1壁部50を有している。なお、この第1開口部46は、第2分割ケース26に第1爪部44を成形する際に型抜きの都合で形成されるものであり、何らかの機能をさせる目的で設けられるものではない。
【0027】
第2取付部40は、図2B及び図3Cに示されるように、第2分割ケース26の側壁部26aに形成され、該側壁部26aに対して突出した位置決め部52と、前記位置決め部52に対して所定間隔離間した断面長方形状の第2ボス部54と、該第2ボス部54の内部に形成され長方形状に開口した第2開口部(孔部)56とを有する。
【0028】
位置決め部52は、例えば、第2分割ケース26の側壁部26aに対して直立して所定高さで形成された軸体からなり、後述するブラケット38に形成された位置決め孔58(図3C参照)に挿通されることで、前記ブラケット38が前記第2取付部40に対して位置決めされる。
【0029】
第2ボス部54は、例えば、第2分割ケース26の側壁部26aに対して所定高さで形成され、その中央部には第2係合孔96が形成され、第2分割ケース26の側壁部26aまで貫通している。また、第2ボス部54の外側には、第2分割ケース26の側壁部26aに対して立設した第2壁部60との間に第2開口部56が形成される。なお、この第2開口部56は、第2分割ケース26に第2ボス部54を成形する際に型抜きの都合で形成されるものであり、何らかの機能をさせる目的で設けられるものではない。
【0030】
エバポレータ18は、図1に示されるように、例えば、第1分割ケース24及び第2分割ケース26に跨るように送風機16の下方(矢印C2方向)に設けられ、該空調ケース14の高さ方向に対して所定角度だけ傾斜するように配置される。そして、エバポレータ18には、図示しない複数のチューブを通じて冷媒が循環されており、前記チューブの間に設けられたフィンに空気が通過することで、該空気と前記冷媒との熱交換がなされ、冷却された空気がエバポレータ18の下流側へと供給される。
【0031】
ヒータコア20は、例えば、第1分割ケース24及び第2分割ケース26の内部においてエバポレータ18より車両前方側(矢印A方向)となる下流側に設けられ、該エバポレータ18と同様に、該空調ケース14の高さ方向に対して所定角度だけ傾斜して配置される。また、ヒータコア20における下端部及び上端部にはそれぞれタンク部62a、62bが設けられ、該タンク部62a、62bにはそれぞれ温水の供給・排出される一組の配管64a、64bが接続される。
【0032】
この配管64a、64bは、内部に温水が循環するように設けられ、図1に示されるように、タンク部62a、62bの端部にそれぞれ接続され互いに略平行な状態で車両前方側(矢印A、B方向)に向かって直線状に延在している。また、配管64a、64bは、図示しない第2分割ケース26の孔部を通じて外部へと突出しており、前記第2分割ケース26の側壁部26aに装着されたヒータカバー32によって覆われる。なお、配管64a、64bの端部は、それぞれ図示しない内燃機関に対して接続される。
【0033】
そして、ヒータコア20には、一方の配管64aからタンク部62aへと供給された温水が図示しない複数のチューブを通じて他方のタンク部62bへと流通した後、他方の配管64bを通じて排出されることで循環しており、前記チューブの間に設けられたフィンに空気が通過することで、該空気と前記温水との熱交換がなされ、加熱された空気がヒータコア20の下流側へと供給される。
【0034】
このヒータカバー32は、例えば、樹脂製材料から断面略三角形状に形成され、その内部に一組の配管64a、64bが収納され、幅広状となる一端部が車両前方側(矢印A方向)となり、徐々に幅狭状となる他端部が車両後方側(矢印B方向)となるように配置される。そして、ヒータカバー32の他端部には、空調ケース14の第1取付部34に対して固定される第1固定部66が形成される。
【0035】
この第1固定部66は、図1図3Bに示されるように、ヒータカバー32の他端部に対して車両後方側(矢印B方向)へと断面略矩形状に突出したベース部68と、該ベース部68に対して厚さ方向(図3A中、矢印D1方向)に突出した膨出部70と、前記ベース部68の側面に対して拡幅するように延在した第1スカート部(カバー部)72とを有する。
【0036】
膨出部70は、図3Aに示されるように、ベース部68から離間する方向へと所定高さで膨出した中空状に形成され、その内部がベース部68の内部と連通し、第2分割ケース26に臨む前記ベース部68の端部が開口した有底筒状に形成される。そして、膨出部70の内部には断面円形状の挿入孔74が形成され、前記挿入孔74には空調ケース14に形成された第1取付部34の第1ボス部42が挿入される。なお、挿入孔74の直径は、第1ボス部42の直径と略同等若しくは若干だけ大きく形成される。
【0037】
また、ベース部68の底面は、図3Aに示されるように、第1ボス部42と第1爪部44との間において第2分割ケース26の側壁部26aに当接し、前記ベース部68と第1スカート部72との間に形成された断面長方形状の第1係合孔76に第1爪部44が挿入され係合される。詳細には、第1爪部44の係止部48が、第1係合孔76の外縁部に係合されることで、前記第1爪部44が前記ベース部68に対して固定される。
【0038】
なお、第1係合孔76は、図2Aに示されるように、第1固定部66の突出方向、すなわち、車両前後方向(矢印A、B方向)に沿って長尺に形成される。
【0039】
さらに、第1固定部66における第1スカート部72の外縁部には、図2A図3A及び図3Bに示されるように、膨出部70の突出方向とは反対方向(図3A中、矢印D2方向)に突出したリブ78が形成され、該リブ78は外縁部に沿って断面略U字状に形成される。そして、第1固定部66が第1取付部34に装着された際、リブ78が第2分割ケース26の第1壁部50より外側となる位置で、該第1壁部50を覆うように側壁部26aから所定間隔離間して配置される。この際、第1壁部50は、リブ78の内側となる第1スカート部72の底面側に向かって突出し、該底面に対して若干の隙間を有した状態となるように配置されている。
【0040】
すなわち、第1取付部34を構成する第1壁部(第1の壁部)50と、第1固定部66を構成する第1スカート部72のリブ(第2の壁部)78とが、第2分割ケース26の側壁部26aに沿って互い違いとなるように交互に重なるように形成されたラビリンス構造となる。
【0041】
また、第2分割ケース26に開口した第1開口部46は、第1固定部66を装着することで第1スカート部72によって覆われる。この第1スカート部72の幅寸法は、第1開口部46の幅寸法に対して大きく形成されているため、該第1スカート部72によって前記第1開口部46が全体的に覆われることとなる。
【0042】
ダンパ機構22は、図1に示されるように、エバポレータ18とヒータコア20との間に設けられるエアミックスダンパ80と、送風口28の送風状態を切り替える切替ダンパ(図示せず)とからなり、前記エアミックスダンパ80は、例えば、湾曲したプレート状に形成され、空調ケース14の幅方向に沿って設けられ、その両側部が前記空調ケース14の内壁面に設けられたガイド手段(図示せず)に沿って案内される。そして、エアミックスダンパ80の内壁面にはラックギアが形成され、空調ケース14に軸支されたシャフト82のピニオンギアが噛合される。
【0043】
そして、図示しないアクチュエータの駆動作用下にシャフト82が所定角度だけ回動し、それに伴って、エアミックスダンパ80がガイド手段に沿って略水平方向にスライドすることで、エバポレータ18によって冷却された空気(冷風)と、ヒータコア20によって加熱された空気(温風)との混合比率を調整して下流側へと送風する。
【0044】
リンク機構36は、図1に示されるように、第2分割ケース26の側壁部26aに設けられ、例えば、該側壁部26aに形成された第2取付部40に固定されるブラケット38を有し、前記ブラケット38には、略円盤状に形成されたリンクプレート84が回転自在に設けられると共に、該リンクプレート84のリンク溝に係合され切替ダンパを駆動させる従動リンク86が設けられる。
【0045】
このブラケット38は、図1及び図2Bに示されるように、例えば、樹脂製材料から板状に形成され、高さ方向(矢印C1、C2方向)に沿って所定長さを有し、その上端部、下端部及び中間部には、空調ケース14の第2取付部40に対して固定される第2固定部88がそれぞれ形成される。そして、ブラケット38は、複数の第2固定部88を介して第2分割ケース26の側壁部26aに固定される。
【0046】
第2固定部88は、図3Cに示されるように、ブラケット38の延在方向(矢印C1、C2方向)に対して略直交するように突出した第2爪部90と、該第2爪部90に対してさらに外側に形成され第2分割ケース26の側壁部26a側に向かって折曲された第2スカート部92とを有している。
【0047】
この第2爪部90は、その先端に係止部94を有し、前記第2爪部90が第2取付部40の第2係合孔96に挿入され端部に係合されることで第2固定部88が第2取付部40に対して固定される。
【0048】
第2スカート部92は、第2固定部88が第2取付部40に固定された際、第2開口部56を覆うように形成されると共に、その外縁部が第2取付部40に形成された第2壁部60に対して外側となり、且つ、端部が側壁部26aに対して若干の隙間を有した状態で臨むように配置される。この際、第2壁部60は、外縁部の内側となる第2スカート部92の底面側に向かって突出し、該底面に対して若干の隙間を有した状態となるように配置されている。
【0049】
すなわち、第2取付部40を構成する第2壁部(第1の壁部)60と、第2固定部88を構成する第2スカート部92の外縁部(第2の壁部)とが、第2分割ケース26の側壁部26aに沿って互い違いとなるように交互に重なるように形成されたラビリンス構造となる。
【0050】
本発明の実施の形態に係る車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に空調ケース14に対してヒータカバー32及びブラケット38を組み付ける場合について説明する。
【0051】
先ず、空調ケース14の第2分割ケース26に対してヒータカバー32を組み付ける場合には、前記ヒータカバー32の第1固定部66を第2分割ケース26の第1取付部34に臨むように配置した後、第1ボス部42を膨出部70の挿入孔74へ挿入し、同時に、第1爪部44を第1係合孔76に挿入する。そして、第1ボス部42が挿入孔74の端部に当接すると共に、第1爪部44の係止部48が第1係合孔76を通じてベース部68の端部に対して係合される。
【0052】
これにより、第1固定部66は、図3Aに示されるように、第1ボス部42が膨出部70の挿入孔74に当接することで、さらなる第2分割ケース26側(矢印D2方向)への変位が規制され、且つ、第1爪部44の係合作用下に前記第2分割ケース26から離間する方向(矢印D1方向)への変位も規制された固定状態となる。
【0053】
なお、第1固定部66は、第1ボス部42に対して膨出部70が挿入され、且つ、第1爪部44が第1係合孔76に係合されることで、第2分割ケース26に対するヒータカバー32の高さ方向(矢印C1、C2方向)及び幅方向(矢印D1、D2方向)に沿った相対的な変位も規制されている。
【0054】
このように、ヒータカバー32に設けられた第1固定部66を空調ケース14の側壁部26aに形成された第1取付部34に対して係合させることで、前記ヒータカバー32を複数のボルトで締結する場合と比較し、車両用空調装置10を組み付ける際の組付工数を大幅に削減することが可能となり、しかも、ボルトを不要とすることで軽量化を図ることができる。
【0055】
また、第1固定部66の第1スカート部72は、第1取付部34の第1開口部46を覆うと共に、そのリブ78が第1壁部50の外側に配置される。これにより、第1スカート部72と第2分割ケース26の側壁部26aとの間は、リブ78と第1壁部50とが互い違いに配置されたラビリンス構造となり、第1開口部46から漏出した空気が、前記リブ78と前記第1壁部50との間を通じて空調ケース14内から外部へと漏出してしまうことが防止される。
【0056】
さらに、上述したようにヒータカバー32を第2分割ケース26の側壁部26aに装着した際、図3A及び図3Bに示されるように、該第2分割ケース26の内部に第1爪部44等の固定構造が突出してしまうことがなく、前記側壁部26aの内側が凹凸状となることがない。そのため、第2分割ケース26の内部に形成される各通路12に空気が流通する際の流路抵抗が生じることがなく、空気を所望の流量で円滑に流通させることができる。
【0057】
次に、空調ケース14の第2分割ケース26に対してリンク機構36を保持可能なブラケット38を組み付ける場合には、前記ブラケット38における第2固定部88が第2分割ケース26における第2取付部40にそれぞれ臨むように配置し、前記ブラケット38の上端部に形成された第2固定部88の位置決め孔58に位置決め部52を挿通させる。そして、各第2固定部88を第2取付部40側へと接近させ、図3Cに示されるように、第2爪部90をそれぞれ第2係合孔96に挿入すると共に、ブラケット38を第2ボス部54に当接させることで、前記第2爪部90の係止部94が前記第2ボス部54の端部に係合される。これにより、第2固定部88は、ブラケット38が第2ボス部54の端部に当接することで、さらなる第2分割ケース26側(矢印D2方向)への変位が規制され、且つ、第2爪部90の係合作用下に前記第2分割ケース26から離間する方向(矢印D1方向)への変位も規制された固定状態となる。
【0058】
このように、ブラケット38に設けられた第2固定部88を空調ケース14の側壁部26aに形成された第2取付部40に対して係合させることで、前記ブラケット38を複数のボルトで締結する場合と比較し、車両用空調装置10を組み付ける際の組付工数を大幅に削減することが可能となり、しかも、ボルトを不要とすることで軽量化を図ることができる。
【0059】
また、第2固定部88の第2スカート部92は、第2取付部40の第2開口部56を覆うと共に、その外縁部が第2壁部60の外側に配置される。これにより、第2スカート部92と第2分割ケース26の側壁部26aとの間は、外縁部と第2壁部60とが互い違いに配置されたラビリンス構造となり、第2開口部56から漏出した空気が、前記外縁部と前記第2壁部60との間を通じて空調ケース14内から外部へと漏出してしまうことが防止される。
【0060】
さらに、上述したようにブラケット38を第2分割ケース26の側壁部26aに装着した際、該第2分割ケース26の内部に第2爪部90等の固定構造が突出してしまうことがなく、前記側壁部26aの内側が凹凸状となることがない。そのため、第2分割ケース26の内部に形成される各通路12に空気が流通する際の流路抵抗が生じることがなく、空気を所望の流量で円滑に流通させることができる。
【0061】
次に、上述したように組み付けられた車両用空調装置10の作用について簡単に説明する。
【0062】
先ず、図示しない乗員が、車両用空調装置10の搭載された車両の車室内に配置された操作レバーを操作することで、該操作レバーの操作に応じて図示しないアクチュエータが駆動し、その駆動力の伝達されたシャフト82が所定角度だけ回転することで、エアミックスダンパ80が図示しないガイド手段による案内作用下に車両前方側又は後方側へと所定距離だけスライド変位する。
【0063】
同時に、図示しないコントローラからの制御信号に基づき、送風機16の駆動源が回転駆動し回転ファンが回転し、図示しない導入口から空調ケース14内へと取り込まれた空気が前記送風機16から送出される。そして、空気は、通路12を通じて下方へと流通し、エバポレータ18を通過することで冷却された後、ヒータコア20を通過した空気と混合されることで所望の温度へと調温され、送風口28を通じて車室内へと送風される。
【0064】
以上のように、本実施の形態では、車両用空調装置10を構成する空調ケース14において、その第2分割ケース26の側壁部26aにヒータカバー32を装着するための第1取付部34と、リンク機構36を保持するためのブラケット38を装着するための第2取付部40とを形成し、前記ヒータカバー32の第1固定部66に前記第1取付部34の第1爪部44と係合させることで固定し、前記ブラケット38の第2爪部90を前記第2取付部40に係合させることで固定することができる。
【0065】
その結果、ボルト等を用いることなく、空調ケース14に対して確実且つ容易にヒータカバー32及びブラケット38を固定でき、しかも、空調ケース14を成形する際に型抜きの都合で形成された第1及び第2取付部34、40の第1及び第2開口部46、56を、第1及び第2固定部66、88の第1及び第2スカート部72、92によって確実に閉塞できるため、空調ケース14内の空気が第1及び第2開口部46、56を通じて外部へと漏出してしまうことが防止される。
【0066】
また同時に、空調ケース14内の空気が第1及び第2開口部46、56を通じて外部へと漏出する際に生じる異音を防止することもできる
【0067】
さらに、第1取付部34側に第1爪部44を設け、第2分割ケース26の側壁部26aから外側に向かって突出するように形成することで、該第1爪部44を介してヒータカバー32を装着した際に、前記第1爪部44が前記第2分割ケース26の内部に突出することがなく、該内部を流通する空気の流路抵抗となることがない。そのため、空調ケース14内を流通する空気を所望の流量で円滑に流通させることができる。このように、空調ケース14側に第1爪部44を形成した場合、上述したように成形時における型抜きの都合で第1開口部46が形成されるが、第1固定部66の第1スカート部72で閉塞可能とすることで、空気の漏出を防止しつつ、空気の流路抵抗をなくして円滑に流通させることが可能となる。
【0068】
一方、空調ケース14に設けられる第1取付部34、ヒータカバー32に設けられる第1固定部66は、上述した構成に限定されるものではなく、例えば、図4A及び図4Bに示される第1取付部100及び第1固定部102のような構成としてもよい。
【0069】
この第1取付部100には、第2分割ケース26の側壁部26aにおいて第1壁部50から所定間隔離間した外側に、該第1壁部50と略同一高さの離間壁104が形成される。この離間壁104は、第1壁部50と同様に第1開口部46側に向かって開口した断面略U字状に形成され、第1壁部50の外側を取り囲むように形成される。すなわち、第2分割ケース26の側壁部26aは、第1開口部46から外側となる部位が第1壁部50及び離間壁104によって凹凸状となるように形成される。
【0070】
一方、第1固定部102には、第1スカート部72のリブ78の形成された外縁部からさらに外側へと延在した延長部106が形成される。延長部106は、第1スカート部72の延在方向と同一方向となるように形成される。
【0071】
そして、第1取付部100に対して第1固定部102を組み付ける際、第1スカート部72が第1壁部50及び離間壁104の端部に臨むように配置されると共に、リブ78が前記第1壁部50と離間壁104との間に配置される。
【0072】
これにより、第1固定部102のリブ78と第1取付部100における第1壁部50及び離間壁104によってさらに複雑なラビリンス構造が構成され、前記第1固定部102と前記第1取付部100との間の隙間を通じた空気の漏出をさらに好適に防止することが可能となる。なお、この第1固定部102及び第1取付部100の構成でも、空調ケース14内へ固定構造が突出してしまうことがないため、空気の流路抵抗が生じることがなく好適である。
【0073】
また、上述した実施の形態では、空調ケース14を構成する第2分割ケース26の側壁部26aに第1及び第2取付部34、40を介してそれぞれヒータカバー32、ブラケット38を固定する場合について説明したが、前記ヒータカバー32及びブラケット38に限定されるものではなく、前記空調ケース14の外壁部に装着される外装部材であれば特に限定されるものではない。
【0074】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0075】
10…車両用空調装置 14…空調ケース
18…エバポレータ 20…ヒータコア
24…第1分割ケース 26…第2分割ケース
26a…側壁部 32…ヒータカバー
34、100…第1取付部 36…リンク機構
38…ブラケット 40…第2取付部
44…第1爪部 46…第1開口部
56…第2開口部 64a、64b…配管
66、102…第1固定部 72…第1スカート部
78…リブ 88…第2固定部
90…第2爪部 92…第2スカート部
104…離間壁 106…延長部
図1
図2
図3
図4