(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電子機器を構成する部品である液晶ディスプレイやプリント配線板等の生産工程にはフォトリソグラフィ工程が含まれており、このフォトリソグラフィ工程中で描画装置及び描画方法が用いられる。
【0003】
従来、描画装置及び描画方法による描画対象物は板状の平面な部材であり、その描画領域が水平面となっていた。このため、照射するパターン光の焦点距離を描画対象物の板状平面(描画領域である水平面)に合わせて走査するだけで、好適な描画を行うことが可能であった。
【0004】
しかし近年、例えばモバイル電子機器等の発展に伴い、携行性向上の為あるいはデザインの観点から、上述した液晶ディスプレイやプリント配線板等の部品を立体的形状(例えば単一の平面ではなく傾斜した面を持つ形状)にする要求が高まっている。すなわち、描画対象物の描画領域が、従来の単一の板状平面(水平面)から、水平面に対して傾斜した傾斜面(水平面に対して湾曲した湾曲面を含む)といった立体的な形状にシフトしてきている。
【0005】
このような立体的形状の描画領域にパターンを描画する場合、次の3つの問題点が存在する。
第1の問題点は、描画領域が傾斜面を含んでいるため、走査時に、パターン光の焦点が外れてピンボケ状態(前ピン状態、後ピン状態)となる場所が生じ、パターンの解像度が低下してしまうことである。
第2の問題点は、描画領域の傾斜面に対して描画する際に、パターンが変形(主に伸長)してしまうことである。
第3の問題点は、傾斜する描画領域のレジスト膜に光が斜めに入射することにより、パターンの解像度が低下してしまうことである。
【0006】
特許文献1、2には、上記3つの技術課題を意識して工夫を施した技術が開示されている。
【0007】
特許文献1では、チャック(保持手段)に載置したプレート(被描画体)へのスキャン露光を行う際に、プレートの傾斜に沿ってチャックをZ方向(上下方向)に調整することにより、スキャン露光の焦点ぼけを防いでいる。
しかし、露光エリア(露光ユニットが照射するパターン光のエリア)内において焦点位置の差が出ることを防止することはできず、また露光エリア内のパターンの変形を防止することもできない。
【0008】
特許文献2では、試料ステージ上に固定したウエハ(被描画体)への露光を行う前に、ウエハの傾斜によるパターンの変形量を予め計算し、電子線で描画するパターンのデータを補正することで、露光エリア内のパターンの変形を防止している。
しかし、ウエハの傾斜面を露光する際に、パターン光の焦点が外れてピンボケ状態(前ピン状態、後ピン状態)となる場所が生じ、パターンの解像度が低下してしまう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜
図8を参照して、本発明の一実施形態に係る描画装置1について説明する。
【0019】
<被描画体である基板Wの構成>
まず、
図1(A)、(B)を参照して、描画装置1による被描画体である基板Wの構造(立体的形状)について説明する。基板Wは、例えば、電子機器を構成する部品である液晶ディスプレイやプリント配線板等である。
【0020】
図1(A)、(B)において、基板Wは、その走査方向(同図中の紙面垂直方向)に延びる傾斜形状の描画領域(被描画面)(以下では「傾斜描画領域」と呼ぶ)110を有している。
図1(A)では、同図中の左右方向に延びる描画領域から傾斜描画領域110への切り替わり部が比較的鋭角となっており、
図1(B)では、同図中の左右方向に延びる描画領域から傾斜描画領域110への切り替わり部が比較的緩やかなR面となっている。
本明細書において、「傾斜描画領域(被描画面)110」は、水平面に対して傾斜した傾斜面のほか、水平面に対して湾曲した湾曲面を含む立体的な形状を意味している。
【0021】
基板Wの傾斜描画領域110は、走査方向位置に依存して断面形状が変化する傾斜面や湾曲面を有していてもよい。例えば、
図1(A)、(B)において、基板Wの傾斜描画領域110を、走査方向(同図中の紙面垂直方向)と副走査方向(同図中の左右方向)を入れ替えた形状としてもよい。
すなわち、
図1(A)、(B)に示した基板Wの傾斜描画領域110の形状はあくまで一例にすぎず、傾斜描画領域110は任意の形状とすることができる。
【0022】
<描画装置1の構成>
続いて、
図2〜
図6を参照して、描画装置1の構成について説明する。描画装置1は、光変調素子により描画光を基板Wに照射し、基板Wを描画光に対して連続的に走査しながら基板Wにパターンを描画するものである。同図においては、描画装置1による被描画体として、
図1(A)に示した傾斜描画領域110を持つ基板Wを例示して説明する。
【0023】
図2に示すように、描画装置1は、被描画体である基板Wの傾斜描画領域110を走査方向と副走査方向に並ぶ複数の分割傾斜描画領域(以下では「分割領域」と呼ぶ)A1〜A7、B1〜B7、C1〜C7、D1〜D7、E1〜E7に区画し、各分割領域A1〜E7に対して連続的にパターン光を照射する走査型描画装置である。
基板Wの傾斜描画領域110は、実際には、例えば8(分割)×25(列)=200(分割領域)といったような多数の分割領域に区画される。パターン描画の解像度を高めるためには、分割領域の区画数は多ければ多い程良い。
しかし本実施形態では、発明の理解を容易にするために(上記多数の分割領域を全て示すのは現実的に不可能である)、基板Wの傾斜描画領域110を7×5=35の分割領域A1〜E7に区画した場合を例示して説明する。
【0024】
描画装置1は筐体1Xを有しており、この筐体1X内の載置台1Y上に、描画装置1の各構成要素が支持されている。
【0025】
描画装置1は、被描画体である基板Wを保持するステージ(保持手段)10を備えている。ステージ10は、基板Wの下面(ステージ接触面)を真空吸着してこれを保持する真空吸着保持機構(図示せず)を有している。また、基板Wの下面(ステージ接触面)が平面ではない特殊な形状である場合には、その特殊形状に応じた基板保持機構がステージ10に搭載される。
【0026】
描画装置1は、基板Wを保持したステージ10をX方向(走査方向)に連続的に移動させるステージ移動機構20を備えている。ステージ移動機構20は、載置台1Y上にX方向(走査方向)に2本並んで形成されたガイドレール21(
図5)と、このガイドレール21にガイドされるステージ10側のガイド部材(図示せず)と、このガイド部材をガイドレール21に対して連続的に駆動する駆動手段(図示せず)を有している。また、ステージ移動機構20は、ステージ10をY方向(副走査方向)、Z方向(高さ方向)、θ方向(回転方向)に移動可能な構造を備えていてもよい。
【0027】
ステージ10とステージ移動機構20との間には、基板Wを保持したステージ10をX方向(走査方向)に連続的に移動させるのと同期して、ステージ10を三次元的に移動させてステージ10及び該ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110(分割領域A1〜E7)の姿勢(傾き)を連続的、あるいはステップワイズに変化させる姿勢調整装置(傾き調整手段)30が設けられている。
【0028】
図5に示すように、姿勢調整装置30は、ステージ移動機構20のガイドレール21にガイド部材(図示せず)を介してガイドされる底板部31と、この底板部31よりも上方に位置する中板部32とを有しており、中板部32のさらに上方にステージ10が位置している(ステージ10が姿勢調整装置30の天板部を構成している)。
底板部31の上面と中板部32の下面には、XZ平面に描いた仮想円弧の一部をなし且つY方向に延びるガイド面を有する各4つのガイド部材31Aとガイド部材32Aがそれぞれ設けられている。ガイド部材31Aとガイド部材32Aのガイド面がXZ平面に描いた仮想円弧に沿ってガイドされることで、XZ平面内において、ステージ10及び該ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110(分割領域A1〜E7)の姿勢(傾き)を変化させることができる。ガイド部材31Aとガイド部材32Aには、両ガイド部材のガイド面が外れるのを防止するための係合部31Bと係合部32Bが形成されている。
中板部32の上面とステージ10の下面には、YZ平面に描いた仮想円弧の一部をなし且つX方向に延びるガイド面を有する各4つのガイド部材32Cとガイド部材10Aがそれぞれ設けられている。ガイド部材32Cとガイド部材10Aのガイド面がYZ平面に描いた仮想円弧に沿ってガイドされることで、YZ平面内において、ステージ10及び該ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110(分割領域A1〜E7)の姿勢(傾き)を変化させることができる。ガイド部材32Cとガイド部材10Aには、両ガイド部材のガイド面が外れるのを防止するための係合部32Dと係合部10Bが形成されている。
描画装置1には、底板部31のガイド部材31Aと中板部32のガイド部材32Aをガイドするように駆動する駆動手段(図示せず)および中板部32のガイド部材32Cとステージ10のガイド部材10Aをガイドするように駆動する駆動手段(図示せず)が設けられている。
このように、底板部31と中板部32の間に設けたXZ平面内の姿勢調整機構および中板部32とステージ10の間に設けたYZ平面内の姿勢調整機構を組み合わせることにより、ステージ10を三次元的に移動させてステージ10及び該ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110(分割領域A1〜E7)の姿勢(傾き)を連続的、あるいはステップワイズに変化させることができる。
なお、姿勢調整装置(傾き調整装置)の具体的態様は、ここで説明したものに限定されず、例えば直動のリニアスライドを利用したものやクサビ構造を利用したもの等の周知の機構を採用することができる。
【0029】
描画装置1は、載置台1Y上に、ステージ10、ステージ移動機構20及び姿勢調整装置30をY方向(副走査方向)に跨ぐ門型の露光ユニットベース(描画ユニットベース)40を備えている。この露光ユニットベース40には、露光ユニット移動機構(描画ユニット移動機構)50によって、露光ユニット(描画ユニット)60がY方向(副走査方向)にステップワイズに移動可能に支持されている。
【0030】
露光ユニット60は、ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110に対してパターン光を照射することによりパターンを露光(描画)する。
より具体的に、露光ユニット60は、パターン光の照射位置を分割領域A1に合わせた初期状態から、ステージ移動機構20によってステージ10をX方向(走査方向)に連続的に移動させながら、基板Wの分割領域A1〜A7に対して連続的にパターン光を照射していく。その後、ステージ移動機構20と露光ユニット移動機構50によって、露光ユニット60によるパターン光の照射位置を分割領域B1に合わせる。そして、露光ユニット60は、ステージ移動機構20によってステージ10をX方向(走査方向)に連続的に移動させながら、基板Wの分割領域B1〜B7に対して連続的にパターン光を照射していく。以上の動作を繰り返すことで、露光ユニット60は、基板Wの分割領域A1〜E7に対して連続的にパターン光を照射する。
【0031】
露光ユニット60は光を照射する光源61を有している(
図3)。また図示は省略しているが、露光ユニット60は、光源61が照射した光の光量を均一化し、平行光束になるように調整する照明光学系、この照明光学系で調整された光をパターン光とするDMD、並びにこのDMDで反射されたパターン光を基板Wの傾斜描画領域110(分割領域A1〜E7)に導いて結像させる投影光学系及び焦点調整光学系を有している。DMDを用いて連続的にパターンを描画する方法は、例えば特開2003−057837号公報に詳しく説明されており、本実施形態においても同様の方法にて描画(露光)を行っている。
【0032】
露光ユニット60には、ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110(各分割領域A1〜E7)の傾きを測定し、この傾きに基づいた近似平面を算出する傾斜センサユニット(傾き測定手段、近似平面算出手段)70が設けられている。
傾斜センサユニット70は、露光ユニット60よりもX方向(走査方向)に先行するようにオフセットした位置に設けられている。このため、傾斜センサユニット70は、露光ユニット60が同一の走査ラインの分割領域に対して連続的にパターン光を照射している場合において、露光ユニット60による現在のパターン光の照射位置よりも後にパターン光の照射を予定している別の分割領域の近似平面を算出する。
本実施形態では、傾斜センサユニット70は、露光ユニット60が分割領域A1に対してパターン光を照射している場合、その直後にパターン光の照射を予定している分割領域A2の近似平面を算出する。一方、露光ユニット60が分割領域A7に対してパターン光を照射している場合、走査ライン上には、その後にパターン光の照射を予定している分割領域が存在しないので、傾斜センサユニット70は、いずれの分割領域の近似平面も算出しない(算出できない)。
【0033】
傾斜センサユニット70は基板Wの各分割領域A1〜E7の傾きを求める。具体的には、傾斜センサユニット70は基板Wの各分割領域A1〜E7の近似平面を算出する。
図6(A)、(B)に示すように、傾斜センサユニット70は、第1センサ71、第2センサ72、第3センサ73の3つをユニット化してなる。これら3つのセンサ71〜73は、例えば距離を測定するセンサであり、基板Wに非接触で測定できるセンサが望ましく、例えば、レーザ変位計、超音波変位計、空気マイクロメータ等を使用することができる。
3つのセンサ71〜73は、基板Wの走査に合わせて、基板Wの各分割領域A1〜E7についてそれぞれ複数の基準位置(分割領域に傾きが無く、露光ユニット60の焦点面に一致するときの位置)と被描画面上の測定位置との距離を求め、この複数の距離に基づいて、基板Wの各分割領域A1〜E7の近似平面を算出する。
このとき、この複数の距離は一度に取得せず、基板Wの走査に応じて少なくとも2回に分けて計測を行う。こうすることで、走査方向及び走査方向と直交する方向の2方向に適度に離間した位置における距離を測定することができる。
傾斜データの測地位置(所定位置)については、センサのうち少なくとも1つが傾斜描画領域内の走査によって描画光が連続的に照射される領域(被照射領域)における距離を測定し、他の傾斜センサについては被照射領域の境界近傍における距離を測定する。なお、被照射領域の近傍は、被照射領域内側と被照射領域外側の、どちら側であってもよい。
第1センサ71、第2センサ72、第3センサ73は、既知の技術によってなる市販の変位計を使用する。既知の技術については、例えば特開2001−159516号公報に詳しく説明されている。
なお、基板Wの傾斜方向が一方向のみである場合には、3つのセンサ71〜73による測定は、複数回ではなく1回のみでも良く、その際の3点の測定箇所は、直線上に配置される。
【0034】
図4に示すように、描画装置1は、傾斜センサユニット70が算出した基板Wの傾斜描画領域110(各分割領域A1〜E7)の近似平面が入力される演算装置80を有している。
演算装置80は、傾斜センサユニット70からの入力情報に基づいて、露光ユニット60が照射したパターン光が、基板Wの傾斜描画領域110(分割領域A1〜E7)に対して略垂直に入射するようなステージ10の姿勢(傾き)を演算する。
すなわち、演算装置80は、傾斜センサユニット70からの入力情報に基づいて、露光ユニット60が照射したパターン光が、傾斜センサユニット70が算出した基板Wの傾斜描画領域110の近似平面に対して略垂直に入射するようなステージ10の姿勢(傾き)を演算する。
より具体的に、演算装置80は、露光ユニット60が連続的に照射したパターン光が、傾斜センサユニット70が算出した基板Wの各分割領域A1〜E7の近似平面に対して略垂直に入力するようなステージ10の姿勢を演算する。
【0035】
図4に示すように、描画装置1は、制御装置(傾き制御手段、姿勢制御手段)90を有している。
制御装置90は、演算装置80の演算結果に基づいて、基板Wの傾斜描画領域110(各分割領域A1〜E7)への走査露光中に、姿勢調整装置30によって、ステージ10及び該ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110(分割領域A1〜E7)の姿勢(傾き)をリアルタイムで変化させる。
制御装置90は、露光ユニット60が照射したパターン光が、基板Wの傾斜描画領域110(分割領域A1〜E7)に対して略垂直に入射するように、姿勢調整装置30によって、ステージ10及び該ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110の姿勢(傾き)を変化させる。
すなわち、制御装置90は、露光ユニット60が照射したパターン光が、傾斜センサユニット70が算出した基板Wの傾斜描画領域110の近似平面に対して略垂直に入射するように、姿勢調整装置30によって、ステージ10及び該ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110の姿勢(傾き)を変化させる。
より具体的に、制御装置90は、露光ユニット60が連続的に照射したパターン光が、傾斜センサユニット70が算出した基板Wの各分割領域A1〜E7の近似平面に対して略垂直に入力するように、姿勢調整装置30によって、ステージ10及び該ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110の姿勢(傾き)をステップワイズに変化させる。
【0036】
<描画装置1による基板Wへの描画(露光)方法>
続いて、主に
図7、
図8を参照して、描画装置1による描画(露光)動作について説明する。
【0037】
図7は、描画装置1によるオンザフライ方式の計測処理を示すフローチャートである。オンザフライ方式では、傾斜センサユニット70が、露光ユニット60が基板Wの各分割領域A1〜E7に対して連続的にパターン光を照射するのと並行して、制御装置90と姿勢調整装置30によってステージ10の姿勢を分割領域(A1〜E7)毎にステップワイズに変化させる際に、ステージ10の姿勢毎に、基板Wの各分割領域毎の傾き及び近似平面を算出する。
【0038】
ステップS1において、傾斜センサユニット70が、基板Wの分割領域A1の傾きを測定し、この傾きに基づいた近似平面を算出する。このとき露光ユニット60はパターン光の照射を行わない。
ステップS2において、ステージ移動機構20によってステージ10をX方向(走査方向)に1ステップ分だけ移動させたタイミングで、傾斜センサユニット70が、基板Wの分割領域A2の傾き及び近似平面を算出し、同時に、露光ユニット60が、分割領域A1に対してパターン光を照射する。このとき、姿勢調整装置30が、制御装置90による制御の下、露光ユニット60が照射したパターン光が、傾斜センサユニット70が算出した基板Wの分割領域A1の近似平面に対して略垂直に入射するように、ステージ10及び該ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110の姿勢(傾き)を変化させる。
ステップS3において、ステップS1〜S2と同様の手法により、ステージ移動機構20によってステージ10をX方向(走査方向)に連続的に移動させながら、傾斜センサユニット70が、基板Wの分割領域A3〜A7の傾き及び近似平面をステップワイズに算出し、露光ユニット60が、分割領域A2〜A7に対して連続的にパターン光を照射する。このとき、姿勢調整装置30が、制御装置90による制御の下、露光ユニット60が照射したパターン光が、傾斜センサユニット70が算出した基板Wの分割領域A2〜A7の近似平面に対して略垂直に入射するように、ステージ10及び該ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110の姿勢(傾き)をステップワイズに変化させる。
ステップS4において、ステップS1〜S3と同様の手法により、傾斜センサユニット70が、基板Wの分割領域B1〜E7の傾き及び近似平面をステップワイズに算出し、露光ユニット60が、分割領域B1〜E7に対して連続的にパターン光を照射する。このとき、姿勢調整装置30が、制御装置90による制御の下、露光ユニット60が照射したパターン光が、傾斜センサユニット70が算出した基板Wの分割領域B1〜E7の近似平面に対して略垂直に入射するように、ステージ10及び該ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110の姿勢(傾き)を連続的に変化させる。
【0039】
図8(A)は、
図1(A)の基板Wの描画領域の平面(水平面)に対してパターン光を照射(ショット)している状態を示しており、
図8(B)は、
図1(B)の基板Wの傾斜描画領域110に対してパターン光を照射(ショット)している状態を示している。
図8(B)において、姿勢調整装置30は、基板Wの傾斜描画領域110を水平面と略一致させて、これらの近似平面に対してパターン光が略垂直に入射するように調整している。
【0040】
なお、前述の実施形態では姿勢制御装置30がステップワイズに動作を行ったが、2つ先の分割領域の近似平面と1つ先の分割領域の近似平面とを測定し、2つの近似平面のための姿勢変更を補完動作にて行うことで、ステージ10の姿勢(傾き)を連続的に変化させることも可能である。その場合には、2つ先の分割領域の傾斜データを測定できる様に、傾斜センサユニット70と露光ユニット60の間隔を定めることになる。
【0041】
また、前述の実施形態では傾斜データの計測と描画処理を同時に行ったが、全ての分割領域に対する傾斜データの測定を先行して一括計測し、その後に描画処理を行うマッピング方式の計測処理を採用することも可能である。マッピング方式では、描画処理に先んじて全ての傾斜データを得ることで、姿勢制御装置30が分割領域間で補間動作を行い、ステージ10の姿勢を連続的に変化させることが可能である。また、1列の分割領域の近似平面を平均化し、ステージ10の姿勢を一定に維持したままで描画処理を行うことも可能である。
【0042】
このように、本実施形態の描画装置1は、傾斜センサユニット70が、ステージ10に保持された基板Wの傾斜描画領域110(各分割領域A1〜E7)の近似平面を算出し、制御装置(傾き制御手段、姿勢制御手段)90が、露光ユニット60が照射したパターン光が、傾斜センサユニット70が算出した基板Wの傾斜描画領域110(各分割領域A1〜E7)の近似平面に対して略垂直に入射するように、ステージ10の姿勢(傾き)を変化させる。
【0043】
これにより、基板Wの傾斜描画領域110(各分割領域A1〜E7)に対して描画(露光)する際に、パターン光の焦点を合わせてパターンの解像度を高め、パターンの変形を防止し、傾斜描画領域のレジスト膜にパターン光を垂直に入射させてパターンの解像度を高めることができる。
【0044】
以上の実施形態では、傾斜センサユニット70が、第1センサ71、第2センサ72、第3センサ73の3つをユニット化してなる場合を例示して説明した。しかし、算出する近似平面の高精度化を狙う観点からは、センサの数は多ければ多いほど好ましく、配置スペースやコストとの兼ね合いを考慮して、4つ以上のセンサをユニット化する態様も可能である。
【0045】
以上の実施形態では、傾斜センサユニット70を露光ユニット60に設けて両者を一体化している場合を例示して説明したが、傾斜センサユニット70は、必ずしも露光ユニット60に設ける必要はなく、露光ユニット60と別体とする態様も可能である。但し、傾斜センサユニット70を露光ユニット60に設けて両者を一体化した方が、傾斜センサユニット70と露光ユニット60が照射するパターン光との位置関係を明確に規定できる点で有利である。
【0046】
また、以上の実施形態では、ステージ10上に基板Wが1枚保持される場合を例示したが、ステージ10上に小型の基板Wが複数配列され保持されるようにしてもよい。その場合、基板Wの枚数に応じた複数の傾斜描画領域110に対して、それぞれ露光光が垂直になる様に、ステージ10の姿勢を都度、制御する。