(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前壁、前記前壁に対向する後壁、および前記前壁と前記後壁との間の空間において前記前壁と前記後壁とを連結することで前記空間を複数の区画領域に区画する複数の区画壁を有したパネル部材と、
前記前壁における前記後壁とは反対側の面に設けられており、複数の貫通孔を有したシート部材と、を備え、
前記前壁は、各々が前記区画領域に連通する複数の連通溝を有しており、
前記複数の連通溝は、平面視で、各々が前記区画壁と交差する方向に延び、前記区画壁に沿う方向に互いに間隔を空けて並設されており、
前記シート部材における前記複数の貫通孔は、前記複数の連通溝が延びる方向に沿って複数の貫通孔が配置された孔列が、前記複数の連通溝の並設方向に沿って、互いに間隔を空けた状態で複数配列されており、
隣接する前記孔列同士の間隔は、隣接する前記連通溝同士の間隔よりも狭く、
前記シート部材は、前記複数の連通溝の各々に対して、前記複数の孔列の何れかに属する複数の貫通孔が連通する状態で、前記パネル部材における前記複数の連通溝を覆うように配されている、
吸音パネル。
第1方向に沿った押出成形により、前壁と、前記前壁に対向する後壁と、前記前壁と前記後壁との間の空間において前記前壁と前記後壁とを連結することで前記空間を複数の区画領域に区画しており且つ前記第1方向に沿って延びる区画壁と、を有するパネル素材を形成する工程と、
前記前壁に対して、各々が前記区画領域に連通する複数の連通溝を形成する工程と、
複数の貫通孔が形成されたシート部材を、前記パネル素材の前記複数の連通溝を覆うように、前記前壁における前記後壁とは反対側の面に貼り付ける工程と、
を備え、
前記複数の連通溝を形成する工程では、平面視で、各々が前記第1方向に交差する第2方向に沿って延び、前記第1方向において互いに間隔を空けて並設されるように、前記複数の連通溝を形成し、
前記シート部材における複数の貫通孔は、前記第2方向に沿って複数の貫通孔が配置された孔列が、前記第1方向に沿って、互いに間隔を空けた状態で複数配列されてなり、
隣接する前記孔列同士の間隔は、隣接する前記連通溝同士の間隔よりも狭く、
前記シート部材を貼り付ける工程では、前記シート部材を、前記複数の連通溝の各々に対して、前記複数の孔列の何れかに属する複数の貫通孔が連通する状態で、前記パネル素材の前記前壁における前記後壁とは反対側の面に貼り付ける、
吸音パネルの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の吸音パネルにおいて、比較的周波数の低い低音を吸音するためには、複数の区画領域のそれぞれの体積を大きくする必要があった。しかしながら、区画壁によって取り囲まれる区画領域の体積を大きくするために、当該区画壁同士の離間距離を大きくすると、区画領域上に位置するシート部材の剛性が低下してしまう。すなわち、区画領域上に位置するシート部材に対して当該区画領域側に応力が加わった場合に、シート部材が容易に撓み変形してしまう可能性がある。このようなシート部材の変形は、吸音性能の低下あるいは意匠性の劣化を引き起こすため、好ましくない。このため、低音領域の吸音率を高めつつ、変形を抑止することができる吸音パネルの提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る吸音パネルは、前壁、前記前壁に対向する後壁、および前記前壁と前記後壁との間の空間において前記前壁と前記後壁とを連結することで前記空間を複数の区画領域に区画する複数の区画壁を有したパネル部材と、前記前壁における前記後壁とは反対側の面に設けられており、複数の貫通孔を有したシート部材と、を備え、前記前壁は、
各々が前記区画領域に連通する複数の連通溝を有しており、前記複数の連通溝は、平面視
で、各々が前記区画壁と交差する方向に
延び、前記区画壁に沿う方向に互いに間隔を空けて並設されており、前記シート部材における前記複数の貫通孔は、前記複数の連通溝が延びる方向に沿って複数の貫通孔が配置された孔列が、前記複数の連通溝の並設方向に沿って、互いに間隔を空けた状態で複数配列されており、隣接する前記孔列同士の間隔は、隣接する前記連通溝同士の間隔よりも狭く、前記シート部材は、前記複数の連通溝の各々に対して、前記複数の孔列の何れかに属する複数の貫通孔が連通する状態で、前記パネル部材における前記複数の連通溝を覆うように配されている。
【0006】
上記の吸音パネルによれば、区画領域とシート部材の貫通孔とを連通させる連通溝が平面視して区画壁と交差する方向に沿って延びているため、区画領域上に位置する前壁およびシート部材の剛性が低下する可能性を低減することができる。具体的には、上記の吸音パネルでは、連通溝の延伸方向における断面において、区画領域および当該区画領域を規定する区画壁上に位置する前壁は、連続しており且つ一方側の区画壁と他方側の区画壁との2つの支点で支えられることになる。このため、区画領域上に位置する前壁およびシート部材に対して当該区画領域が位置する方向に応力が加わったとしても、2つの前記支点によって当該前壁および当該シート部材が大きく撓み変形することが抑止される。すなわち、上記の吸音パネルでは、貫通孔と区画領域とを連通溝を介して連通させることにより吸音効果を発揮させつつ、当該区画領域上に位置する前壁およびシート部材の剛性の低下を抑止することができる。
【0007】
さらに、前壁の剛性が高い上記の吸音パネルによれば、区画領域同士の離間距離を大きくすることで当該区画領域の体積を大きくすることができる。これにより、周波数の低い低音に対する吸音効果を高めることができる。すなわち、上記の吸音パネルでは、区画領域の体積を大きくすることで低音領域の吸音率を高めつつ、前壁が有する連通溝の形状によって当該前壁およびその上に配置されたシート部材の剛性の低下を抑止することで、変形を抑止することができる。
【0008】
また、複数の前記連通溝は、例えば
、前記前壁の一端から他端にかけて直線状に形成されていてもよい。このような構成を有する吸音パネルであれば、連続した1回の加工によって前壁の一端から他端に亘る連通溝を形成することができるため、製造工程を簡略化することができる。
【0009】
なお、前記連通溝の幅は、例えば、3〜6mmであることが好ましい。連通溝の幅を3〜6mmに設定することにより、当該連通孔上に配置されたシート部材が大きく撓み変形してしまうことを抑止することができる。
【0010】
また、複数の前記連通溝は、例えば、平面視して前記区画領域と重なる領域にのみ設けられていてもよい。換言すれば、複数の前記連通溝の全部は、平面視して複数の区画壁と重ならないように設けられていてもよい。具体的には、前壁のうち平面視して複数の区画壁と重なる部位に連通溝を形成した場合、当該連通溝の直下には区画壁が存在するため、当該連通溝を介して区画領域と貫通孔とを連通させることができない。ここで、前壁のうち平面視して複数の区画壁と重なる部位に連通溝を形成しない場合、当該部位に連通孔を形成する場合に比して、シート部材と前壁との接触面積を広くすることができる。すなわち、複数の連通溝が平面視して区画領域と重なる領域にのみ設けられていれば、当該区画領域と貫通孔との連通を確保しつつ、シート部材と前壁との接触面積を広くすることができる。このため、シート部材が前壁上から剥離してしまう可能性を低減することができる。
【0011】
また、
本発明の一態様に係る吸音パネルの製造方法は、第1方向に沿った押出成形により、前壁と、前記前壁に対向する後壁と、前記前壁と前記後壁との間の空間において前記前壁と前記後壁とを連結することで前記空間を複数の区画領域に区画しており且つ前記第1方向に沿って延びる区画壁と、を有するパネル素材を形成する工程と、前記前壁に対して、
各々が前記区画領域に連通する複数の連通溝を形成する工程と、複数の貫通孔が形成されたシート部材を
、前記パネル素材の前記複数の連通溝を覆うように、前記前壁における前記後壁とは反対側の面に貼り付ける工程と、
を備え、前記複数の連通溝を形成する工程では、平面視で、各々が前記第1方向に交差する第2方向に沿って延び、前記第1方向において互いに間隔を空けて並設されるように、前記複数の連通溝を形成し、前記シート部材における複数の貫通孔は、前記第2方向に沿って複数の貫通孔が配置された孔列が、前記第1方向に沿って、互いに間隔を空けた状態で複数配列されてなり、隣接する前記孔列同士の間隔は、隣接する前記連通溝同士の間隔よりも狭く、前記シート部材を貼り付ける工程では、前記シート部材を、前記複数の連通溝の各々に対して、前記複数の孔列の何れかに属する複数の貫通孔が連通する状態で、前記パネル素材の前記前壁における前記後壁とは反対側の面に貼り付ける。
【0012】
上記の吸音パネルの製造方法によれば、第1方向に沿った押出成形により前壁、後壁、および区画壁を有するパネル素材を形成する工程と、第2方向に沿って延びるように連通溝を形成する工程と、を経ることによって、容易に本発明に係る吸音パネルのパネル部材を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、低音領域の吸音率を高めつつ、変形を抑止することができる吸音パネル及び当該吸音パネルを容易に製造することが可能な製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本発明の一実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材を簡略化して示したものである。したがって、本発明に係る吸音パネルは、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。
【0017】
図1および
図2に示すように、吸音パネルPは、音を吸音するためのパネルであって、パネル部材2およびシート部材4を備える。なお、本実施形態では、吸音パネルPは、
図2に示すように平面視して矩形状であるが、本発明に係る吸音パネルの平面視形状は任意であり、当該吸音パネルを設置する場所に応じて適宜設計変更することができる。
【0018】
まず、
図3および
図4を参照しながら、パネル部材2について詳細に説明する。
【0019】
パネル部材2は、前壁21、後壁22、および複数の区画壁23を有する。前壁21と後壁22とは、互いの面同士が対向するように配置されている。区画壁23は、前壁21と後壁22との間の空間において、前壁21と後壁22とを連結している。これにより、前壁21と後壁22との間の空間は、複数の区画領域24に区画される。本実施形態では、
図4に示すように、前壁21が平面視して矩形状であり、前壁21の短手方向に沿って延びる4個の区画壁23が、前壁21の長手方向に並んで位置している。また、本実施形態では、
図3に示すように、前壁21、後壁22、および4個の区画壁23によって取り囲まれた3つの領域のそれぞれが区画領域24となる。なお、区画壁23の個数については、特に限定されず、吸音パネルPの使用態様に応じて適宜変更することができる。また、前壁21、後壁22、および区画壁23は、一体であってもよいし、別体であって互いに接着されていてもよい。
【0020】
ここで、パネル部材2の特徴として、前壁21は、平面視して区画壁23と交差する方向に延びるとともに、複数の区画領域24と後述するシート部材4が有する複数の貫通孔41とを連通させる複数の連通溝25を有する。具体的には、連通溝25は、前壁21の一部の箇所に形成されており、区画領域24に連通している。本実施形態では、
図4に示すように、前壁21の長手方向に沿って当該前壁21に形成された11個の連通溝25が、前壁21の短手方向に並んで位置している。また、当該11個の連通溝25は、前壁21の一端21aから他端21bにかけて直線状に形成されている。このため、平面視して連通溝25と区画壁23とは、互いに直交しており、連通溝25から区画壁23の一部が露出している。なお、連通溝25の個数については、特に限定されず、吸音パネルPの使用態様に応じて適宜変更することができる。
【0021】
上記のパネル部材2の前壁21上には、複数の貫通孔41を有するシート部材4が設けられている。具体的には、シート部材4は、複数の貫通孔41を有しており、当該貫通孔41を介して区画領域24へと音を伝達することによって吸音に寄与する部材である。本実施形態では、シート部材4には、略同一の径を有する複数の貫通孔41が、前壁21の長手方向および短手方向のそれぞれに等間隔に並ぶよう形成されており、このシート部材4が前壁21の表面(後壁22とは反対側の面)に設けられている。ここで、
図2に示すように、複数の貫通孔41のうち一部の貫通孔41は、平面視して複数の連通溝25と重なる領域に位置している。すなわち、複数の貫通孔41は、複数の連通溝25を介して複数の区画領域24のそれぞれに連通する。このため、シート部材4側において発生した音は、複数の貫通孔41を介して複数の区画領域24のそれぞれへと伝達され、当該区画領域24内において熱エネルギーに変換される。吸音パネルPでは、このような機構によって吸音を達成することができる。なお、吸音パネルPにおける吸音効果は、上記の機構のみによって達成されるものではなく、例えば、複数の貫通孔41を通過する際の摩擦によるエネルギー損失等も吸音に寄与するものである。
【0022】
このように、吸音パネルPでは、連通溝25が平面視して区画壁23と交差する方向に沿って延びているため、区画領域24上に位置する前壁21およびシート部材4の剛性が低下する可能性を低減することができる。具体的には、本実施形態に係る吸音パネルPでは、平面視して区画壁23が前壁21の短手方向に沿って延びており、連通溝25が前壁21の長手方向に沿って延びている。このため、区画壁23と連通溝25とは、平面視して直交するように位置している。そのため、1個の区画領域24および当該区画領域24を規定する区画壁23上に位置する前壁21は、前記長手方向に沿って連続しており、一方側の区画壁23と他方側の区画壁23との2つの支点で支えられることになる。すなわち、吸音パネルPでは、2つの前記支点によって、区画領域24上に位置する前壁21およびシート部材4が区画領域24の位置する方向に大きく撓み変形することを抑止することができる。
【0023】
さらに、吸音パネルPでは、上記のとおり前壁21およびシート部材4の剛性の低下を抑止することができるため、複数の区画領域24のそれぞれの体積を大きくすることができる。具体的には、本実施形態に係る吸音パネルPでは、連通溝25自体の形状によって前壁21およびシート部材4の剛性の低下が抑止されるため、前壁21の長手方向における区画壁23同士の離間距離を大きくすることができる。前記離間距離を大きくすると、複数の区画領域24のそれぞれの体積を大きくすることができ、これにより周波数の低い低音に対する吸音効果を高めることができる。
【0024】
このように、吸音パネルPでは、複数の区画領域24のそれぞれの体積を大きくすることで低音領域の吸音率を高めつつ、前壁21が有する連通溝25の形状によって当該前壁21およびその上に配置されたシート部材4の剛性の低下を抑止することができる。
【0025】
なお、本実施形態のように、複数の連通溝25が前壁21の一端21aから他端21bにかけて直線状に形成されていると、後述する「パネル部材の第2形成工程」を1回行うことで、すべての連通溝25を形成することができるため、製造工程を簡略化することができる。
【0026】
また、連通溝25の幅(前壁21の短手方向における連通溝25の幅)は、3〜6mmであることが好ましい。具体的には、シート部材4は、例えば、前壁21に比して厚みが小さく設定されており、剛性が低い可能性がある。このような場合に、連通溝25上に位置するシート部材4に対して当該連通溝25が位置する方向に応力が加わると、当該シート部材4が容易に撓み変形してしまう可能性がある。そこで、連通溝25の幅を3〜6mmに設定すると、区画領域24と貫通孔41との連通を確保しつつ、当該連通溝25上に位置するシート部材4が大きく撓み変形してしまうことを抑止することができる。
【0027】
以上説明した吸音パネルPは、例えば以下の工程を含む方法により、合理的かつ容易に製造されることが可能である。
【0028】
1)パネル部材2の第1形成工程
この工程では、パネル部材2の素材となるパネル素材200が形成される。パネル素材200の材料としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、または塩化ビニル等の樹脂材料等を用いることができる。この工程では、前記の材料を押出成形することによって、前壁21、後壁22、および複数の区画壁23を有するパネル素材200が形成される。具体的には、
図5(a)に示すように、パネル素材200は、第1方向に沿った押出成形によって、当該第1方向に沿って延びる複数の中空部が当該第1方向に直交する第2方向に並ぶように形成された箱状体に成形される。ここで、前記箱状体の前面が前壁21となり、後面が後壁22となる。また、前記中空部は、区画領域24に対応しており、隣り合う前記中空部の間に位置する部位が区画壁23となる。
【0029】
2)パネル部材2の第2形成工程
この工程では、上記の第1形成工程においてパネル素材200に形成された前壁21に対して、区画領域24に連通する連通溝25がさらに形成される。具体的には、
図5(b)に示すように、前壁21には、前記第2方向に沿って延びるとともに前記第1方向に並ぶように複数の連通溝25が形成される。連通溝25を形成する方法としては、例えば、前記第2方向に沿って前壁21の一部を切削する方法が挙げられる。このようにして、パネル部材2が形成される。
【0030】
3)シート部材4の貼り付け工程
この工程では、まず、複数の貫通孔41を形成したシート部材4が準備される。シート部材4としては、例えば、樹脂製のシート等を用いることができ、その厚みは、100〜1000μmとすることができる。また、複数の貫通孔41の孔径は、例えば、0.1〜0.5mmとすることができる。複数の貫通孔41は、例えば、レーザーあるいは針等によって所定の形状および配置で形成される。次に、上記の第2形成工程において前壁21に連通溝25が形成された状態で、当該前壁21の表面(後壁22とは反対側の面)にシート部材4が貼り付けられる。この際、複数の貫通孔41が複数の連通溝25と連通するように位置合わせがなされる。これにより、
図5(c)に示すような吸音パネルPが製造される。
【0031】
以上の吸音パネルPの製造方法によれば、パネル部材2の第1形成工程において、1回の加工で前壁21、後壁22、および複数の区画壁23を形成することができる。さらに、パネル部材2の第2形成工程において、複数の連通溝25のそれぞれを1回の加工で形成することができる。このため、吸音パネルPを容易に製造することができる。
【0032】
また、シート部材4の貼り付け工程において、予め複数の貫通孔41を形成したシート部材4を準備することから、例えば、一定の間隔で並ぶように複数の貫通孔41を形成することでシート部材4に対して意匠性を付与した状態で、当該シート部材4を前壁21に貼り付けることができる。
【0033】
なお、上記のシート部材4の貼り付け工程に代えて、シート素材400を前壁21に貼り付けた後に当該シート素材400に対して複数の貫通孔41を形成する工程を採用してもよい。具体的には、シート素材400は、シート部材4の素材であって、複数の貫通孔41が形成されていない部材である。シート素材400は、
図6(a)に示すように、上記のパネル部材2の第2形成工程において前壁21に連通溝25が形成された後、当該前壁21に貼り付けられる。その後、
図6(b)に示すように、連通溝25上に位置するシート素材400に対して複数の貫通孔41を形成することによって、吸音パネルPが製造される。このような工程によれば、連通溝25と貫通孔41とを確実に連通させることができ、製造歩留まりが向上する。
【0034】
以上、本実施形態に係る吸音パネルPおよび当該吸音パネルPの製造方法について詳細に説明したが、この吸音パネルPは種々の変形が可能である。以下、本実施形態に係る吸音パネルPのうちパネル部材2の変形例を示す。なお、以下に示す変形例に係るパネル部材2は、上記の製造方法におけるパネル部材2の第2形成工程において、連通溝25を所望の形状で形成することによって製造することができる。
【0035】
上記の実施形態においては、パネル部材2の連通溝25は、前壁21の一端21aから他端212bにかけて直線状に形成されていたが、これに限らず、
図7および
図8に示すように、平面視して区画領域24と重なる領域にのみ設けられていてもよい。具体的には、前壁21のうち平面視して区画壁23と重なる部位に連通溝25を形成したとしても、その直下に区画壁23が存在するため、当該連通溝25と区画領域24とは連通されない。そこで、
図7および
図8に示すパネル部材2では、連通溝25は、前壁21のうち平面視して区画壁23と重なる部位には設けられていない。このため、上記の本実施形態に係る吸音パネルPに比して、シート部材4に接触する前壁21の面積を大きくすることができる。これにより、区画領域24と貫通孔41との連通を確保しつつ、前壁21からシート部材4が剥離してしまう可能性を低減することができる。
【0036】
また、上記の実施形態においては、パネル部材の連通溝25は、平面視して区画壁23と直交するように形成されているが、これに限らず、
図9および
図10に示すように、平面視して区画壁23と45度の角度で交差するように形成されていてもよい。このように、連通溝25は、平面視して区画壁23と交差する方向に延びてさえいればよく、連通溝25と区画壁23とがなす角度は任意に設定することができる。
【0037】
また、上記の実施形態においては、
図1に示されるように、シート部材4は、パネル部材2の前壁21の表面(後壁22とは反対側の面)上にのみ位置しているが、これに限らず、パネル部材4の側面(パネル部材2の長手方向における両端に位置する区画壁23の表面)上に延在していてもよいし、当該パネル部材4の側面を覆うように後壁22の表面(前壁21とは反対側の面)上に延在していてもよい。
【実施例】
【0038】
本発明に係る吸音パネルについて、その吸音率をJIS A 1409で規格化される残響室法吸音率試験によって測定した。具体的には、まず、
図1に示した本実施形態に係る吸音パネルPに対して、区画壁23が延びる方向の両側から区画領域24を塞ぐように前壁21から後壁22に亘ってテープ部材を貼り付けた試験体1を準備した。当該試験体1は、塩化ビニルを基材材質とした厚み35mmのパネル部材2の前壁21に、シート部材4として3М
TMダイノック
TM吸音フィルムG(住友スリーエム)を貼り付けることによって作製され、当該試験体1の平面積を5.05m
2とした。また、
図11に示すように、試験体1と同様の構成を有するとともに当該試験体1の前記テープ部材に代えて当該テープ部材よりも剛性の高い樹脂製のキャップ部材X1を採用した試験体2を準備した。また、
図12に示すように、試験体2と同様の構成を有するとともに後壁22の裏面(前壁21とは反対側の面)に石膏ボードX2を貼り付けた試験体3を準備した。この石膏ボードX2は、厚みを12.5mmとした。次いで、試験体1〜3を38.9m
3の残響室に設置することで、残響室法吸音率測定を行った。
【0039】
図13は、上記試験結果を示したグラフであって、縦軸に残響室法吸音率、横軸に周波数を示している。ここで、
図13では、前記試験体1〜3による測定結果のグラフに加えて、試験体1からシート部材4を除外した比較例の測定結果のグラフも示している。
図13に示すように、シート部材4を備えた試験体1〜3は、シート部材4を除外した比較例に比して、広い周波数帯域において吸音率が高くなっている。具体的には、低音領域に対応する比較的周波数の低い周波数帯域(400〜1600Hz)において、比較例の吸音率が0.3以下であるのに対して、試験体1の吸音率が0.4以上の高い数値を示している。また、樹脂製のキャップ部材X1を貼り付けた試験体2は、上記の周波数帯域(400〜1600Hz)において試験体1よりも高い吸音率を示している。さらに、石膏ボードX2を貼り付けた試験体3は、上記の周波数帯域(400〜1600Hz)において試験体2よりもさらに高い吸音率を示している。このように、本実施例に係る試験体1〜3は、低音に対して十分な吸音効果を発揮するものである。