特許第6306367号(P6306367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306367
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】薬剤収納ケース
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
   A61J3/00 310K
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-31680(P2014-31680)
(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公開番号】特開2015-154897(P2015-154897A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2017年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社岡村製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】土田 孝義
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−158587(JP,A)
【文献】 特開2012−029982(JP,A)
【文献】 特開2001−080676(JP,A)
【文献】 実開昭60−041376(JP,U)
【文献】 特開2001−335031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
B65D 6/00−13/02
B65D 23/00−25/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と左右1対の側板と後面板とを備え、前記底板と前記左右1対の側板と前記後面板とにより囲まれた内部を、上面と前面が開口する薬剤収納部とした薬剤収納ケースにおいて、
前記底板の前部に、後方から前上方に向かって傾斜する薬剤取出し用のスライド案内部を設け、前記スライド案内部の上方と前記左右の側板の前端部の対向面間に形成される前面開口部に、前記前面開口部を閉塞する前面板を、前記側板と前記前面板との対向部に設けた保持手段をもって、前後方向へ移動不能かつ上方より着脱可能として装着し
前記保持手段を、前記左右の側板と前記前面板との対向面のいずれか一方に設けられた縦溝と、同じく他方に設けられ、前記縦溝に着脱可能に嵌合される上下方向の突条とからなるものとしたことを特徴とする薬剤収納ケース。
【請求項2】
前記前面板に前記突条を、前記側板に前記縦溝を設けた場合には、前記突条と前記縦溝との前後寸法を上方から下方に向かって漸次小としてなる請求項に記載の薬剤収納ケース。
【請求項3】
前記前面板に前記縦溝を、前記側板に前記突条を設けた場合には、前記縦溝と前記突条との前後寸法を、上方から下方に向かって漸次大としてなる請求項に記載の薬剤収納ケース。
【請求項4】
前記スライド案内部の上面に、上方に開口する左右方向の横溝を、両側端が前記左右の側板に設けた前記縦溝の下端部と連続するように設け、前記横溝に、前記前面板の下部を着脱可能に嵌合してなる請求項のいずれかに記載の薬剤収納ケース。
【請求項5】
前記横溝と前記横溝に嵌合される前記前面板の下部の前後寸法を、上方から下方に向かって漸次小としてなる請求項に記載の薬剤収納ケース。
【請求項6】
前記横溝の内壁と前記内壁に対向する前記前面板の下端部とのいずれか一方に弾性係合片を、同じく他方に、前記弾性係合片が弾性係合しうる係合凹部を設けてなる請求項またはに記載の薬剤収納ケース。
【請求項7】
前記弾性係合片における前記係合凹部と弾性係合する上縁を、前記係合凹部に向かって斜め下向きに傾斜する傾斜面としてなる請求項に記載の薬剤収納ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤を包装した錠剤ブリスターパックやアンプル剤、外用薬等の薬剤を収納して、病院の薬局や調剤薬局等において使用される薬剤収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
このような薬剤収納ケースは、多種の薬剤を調剤什器における多段状の棚に収容して使用されるもので、この薬剤収納ケースには、大別して、上面のみが開口され、薬剤を取り出す際に棚より引き出して使用される前面クローズ型のもの(例えば特許文献1参照)と、上面と前面が大きく開口し、棚に収容した状態で、薬剤を取り出しうるようになっている前面オープン型のもの(例えば特許文献2参照)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3164759号公報
【特許文献2】特開2006−158587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に記載されている薬剤収納ケースは、いずれも、前面クローズ型から前面オープン型へ、または前面オープン型から前面クローズ型へ変換して使用することはできないため、各型の薬剤収納ケースを、薬剤の種類や用途等に応じて、使い分けていた。そのため、使い勝手が悪いだけでなく、複数種類の薬剤収納ケースを用意する必要があり、経費が嵩むこととなっている。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、1種類の薬剤収納ケースを、前面クローズ型から前面オープン型へ、またその逆へ、簡単かつ容易に変更しうるようにした、低コストの薬剤収納ケースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次の各項のようにして解決される。
(1)底板と左右1対の側板と後面板とを備え、前記底板と前記左右1対の側板と前記後面板とにより囲まれた内部を、上面と前面が開口する薬剤収納部とした薬剤収納ケースにおいて、
前記底板の前部に、後方から前上方に向かって傾斜する薬剤取出し用のスライド案内部を設け、前記スライド案内部の上方と前記左右の側板の前端部の対向面間に形成される前面開口部に、前記前面開口部を閉塞する前面板を、前記側板と前記前面板との対向部に設けた保持手段をもって、前後方向へ移動不能かつ上方より着脱可能として装着し
前記保持手段を、前記左右の側板と前記前面板との対向面のいずれか一方に設けられた縦溝と、同じく他方に設けられ、前記縦溝に着脱可能に嵌合される上下方向の突条とからなるものとする
【0007】
このような構成によると、薬剤収納部の上面と前面が開口された前面オープン型の薬剤収納ケースの前面開口部に、前面板を、前後方向へ移動不能かつ着脱可能として装着し、その部分を閉塞することにより、前面開口部が閉塞された前面クローズ型の薬剤収納ケースに容易に変更することができる。また、前面板を取り外せば、再度前面オープン型の薬剤収納ケースに変更して使用することができる。すなわち、1種類の薬剤収納ケースを、前面オープン型から前面クローズ型へ、またその逆へ、容易に変更することができるので、従来のように、前面オープン型と前面クローズ型との2種類の薬剤収納ケースを製作しておき、それらを、収納する薬剤の種類や用途等に応じて使い分ける必要がなく、使い勝手がよくなるとともに、コスト的に有利となる。
また、縦溝に突条を、または突条に凹溝を上方より嵌合するだけで、前面板を、前面開口部に、前後方向へ移動不能に位置決めして、かつ上方より着脱可能として容易に装着することができる。
【0010】
)上記()項において、前記前面板に前記突条を、前記側板に前記縦溝を設けた場合には、前記突条と前記縦溝との前後寸法を上方から下方に向かって漸次小とする。
【0011】
このような構成によると、側板に設けた縦溝に、前面板に設けた突条を、上方から容易に嵌合しうるので、左右の側板への前面板の装着も容易となる。
【0012】
)上記()項において、前記前面板に前記縦溝を、前記側板に前記突条を設けた場合には、前記縦溝と前記突条との前後寸法を、上方から下方に向かって漸次大とする。
【0013】
このような構成によると、側板に設けた突条に、前面板に設けた縦溝を、上方から容易に嵌合しうるので、左右の側板への前面板の装着も容易となる。
【0014】
)上記()〜()項のいずれかにおいて、前記スライド案内部の上面に、上方に開口する左右方向の横溝を、両側端が前記左右の側板に設けた前記縦溝の下端部と連続するように設け、前記横溝に、前記前面板の下部を着脱可能に嵌合する。
【0015】
このような構成によると、左右の側板の縦溝により前面板の両側部が、スライド案内部の横溝により前面板の下部が、それぞれ前後方向へ移動不能に保持されるので、薬剤収納ケースの前面開口部に、前面板を安定よく装着することができる。しかも、横溝は、上向きに突出するスライド案内部に設けてあるので、横溝の深さを深くして、前面板の下部の嵌合代を大とすることができ、それによって、前面板が安定よく保持される。その結果、前面板を掴んで薬剤収納ケースを薬剤什器等に出し入れしても、前面板が大きく撓んで破損したり、外れたりするおそれがなくなる。
【0016】
)上記()項において、前記横溝と前記横溝に嵌合される前記前面板の下部の前後寸法を、上方から下方に向かって漸次小とする。
【0017】
このような構成とすると、横溝が上方に拡開するので、横溝に、前面板の下部を、上方から容易に嵌合することができる。
【0018】
)上記()または()項において、前記横溝の内壁と前記内壁に対向する前記前面板の下端部とのいずれか一方に弾性係合片を、同じく他方に、前記弾性係合片が弾性係合しうる係合凹部を設ける。
【0019】
このような構成によると、前面板を掴んで薬剤収納ケースを薬剤什器等に出し入れしても、前面板が横溝より上方へ抜け外れるのが防止される。
【0020】
)上記()項において、前記弾性係合片における前記係合凹部と弾性係合する上縁を、前記係合凹部に向かって斜め下向きに傾斜する傾斜面とする。
【0021】
このような構成によると、前面板を強く引き上げると、弾性係合片が係合凹部から離間する方向に弾性変形し、それらの係合が解除されるので、前面板を横溝より抜き外すことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、簡単な手段で、前面クローズ型から前面オープン型へ、またその逆へ容易に変更しうるようになっている低コストの薬剤収納ケースが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の薬剤収納ケースを多数収容した薬剤什器の斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る薬剤収納ケースにおける前面板装着前の斜視図である。
図3】同じく、前面板装着後の薬剤収納ケースの斜視図である。
図4】同じく、前面板装着前の薬剤収納ケースの拡大平面図である。
図5図4のV−V線縦断側面図である。
図6図4のVI−VI線縦断側面図である。
図7図4のVII−VII線縦断正面図である。
図8図3のVIII−VIII線拡大縦断側面図である。
図9図8のIX−IX線横断平面図である。
図10】側板と前面板とに設けた保持手段の変形例を示す要部の横断平面図である。
図11】同じく、他の変形例を示す要部の横断平面図である。
図12】同じく、他の変形例を示す要部の横断平面図である。
図13】第2の実施形態に係る薬剤収納ケースにおける仕切板装着前の斜視図である。
図14】同じく、仕切板装着後の薬剤収納ケースの斜視図である。
図15図14のXV−XV線拡大縦断側面図である。
図16図15のXVI−XVI線縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、薬剤什器1を斜め前方より見た斜視図で、上下複数段の棚板2上には、本発明の第1の実施形態に係る多数の薬剤収納ケース3が、前方に引き出し可能として載置されている
【0025】
図2図9に示すように、薬剤収納ケース3は、底板4と左右1対の側板5、5と後面板6とを備えているが、前面板を備えていない前面オープン型のもので、合成樹脂等により一体成形されている。底板4、左右の側板5、5及び後面板6により囲まれている内部空間は、上面及び前面が開口する薬剤収納部7となっている。この前面オープン型の薬剤収納ケース3は、これを薬剤什器1に収容した状態のままでも、薬剤収納部7に収納された錠剤ブリスターパックやアンプル剤、外用薬等の各種薬剤を、後述するスライド案内部8の薬剤取出し面8aに沿って、前方から取り出すことができるようになっている。なお、左右の側板5と後面板6は、下方から上方に向かって若干外方に拡開するように傾斜させてある。そのため、複数の薬剤収納ケース3を、積み重ねて持ち運ぶことができる。
【0026】
底板4の前部には、後半部の上面を、後方から前上方に向かって漸次円弧状に傾斜する薬剤取出し面8aとし、かつ前半部の上面を平坦な受止面8bとした上向きのスライド案内部8が、左右の側板5の前端よりも前方に突出するように、かつ両側面と前面が両側板5の前下部と連続するようにして、底板4と一体的に形成されている。なお、スライド案内部8の下面は、下方に開口している(図6参照)。
【0027】
図4図6に示すように、スライド案内部8の前端部には、薬剤名等を記したネームプレート等(図示略)を差し込むことができる側面視凵状断面の左右方向のプレート差込溝9が形成されている。また、左右の側板5の前端よりもやや後方で、かつ薬剤取出し面8aの前端と近接する部分において、薬剤収納ケース3の平坦をなす上面には、後述する前面板17の下部を上方より着脱可能に嵌合しうる、側面視凹状の左右方向の横溝10が形成されている。さらに、プレート差込溝9と横溝10間において、スライド案内部8の下面には、薬剤収納ケース3を薬剤什器1より引き出す際の上向き凹状断面の手掛け部11が形成されている。プレート差込溝9と横溝10は、スライド案内部8の前端部と中間部とを、側面視凹状断面をなすように下向きに折曲成形することにより形成されている。なお、横溝10の前後幅は、後述する前面板17の下部が上方より容易に嵌合しうるように、上方から下方に向かって漸次小としてある。
【0028】
底板4の両側端部と中央部の上面には、上方に開口する前後方向の仕切板差込溝12が、前部が薬剤取出し面8aの前端部まで達するようにして、底板4の後端まで設けられている。各仕切板差込溝12は、溝の深さを大として仕切板の下端部を安定よく保持するために、底板4の左右両側部と中央部とを、後端から薬剤取出し面8aの前端付近まで、正面視凹状断面をなすように下向きに折曲成形することにより形成されている(図5図7参照)。
【0029】
後面板6の前面の中央部には、後面板6よりも低寸の上下方向を向く左右1対のガイド突条13、13が一体的に内向きに突設され、両ガイド突条13の対向面間には、前方及び上方に開口する仕切用縦溝14が、下端が底板4の中央部の仕切板差込溝12と連続するようにして形成されている。この仕切板差込溝12と仕切用縦溝14に、図示を省略した仕切板の下端部と後端部を上方より嵌合することにより、薬剤収納部7を左右に仕切ることができようになっている。
【0030】
左右の側板5、5の内面には、上記ガイド突条13と同形をなす前後1対の複数のガイド突条13、13が、前後方向に等間隔をもって、かつ左右に対向するようにして突設され、近接するガイド突条13、13の対向面間には、内方及び上方に開口する仕切用縦溝14が左右対向状に形成されている。左右に対向する各仕切用縦溝14に、図示を省略した仕切板の両側端部を上方より嵌合することにより、薬剤収納部7を前後複数に仕切ることができる。なお、各仕切用縦溝14の前後幅は、上方に拡開するように、上方から下方に向かって漸次小として、仕切板を仕切用縦溝14に上方から容易に嵌合しうるようにしてある。
【0031】
左右の側板5、5の前端部の内面には、スライド案内部8の上端から側板5の上端付近まで達する長さの前後1対のガイド突条15、15が、左右対向して内向きに突設され、左右のガイド突条15、15の対向面間には、内方及び上方に開口し、かつ下端が上記横溝10に連続する縦溝16、16が、左右対向状に形成されている。縦溝16の前後幅は、上方に拡開するように、上方から下方に向かって漸次小とされ、後述する前面板17の両側端部を上方から容易に嵌合しうるようにしてある。なお、側板5の前端内側面にガイド突条15、15を内向きに突設し、両ガイド突条15の対向面間に縦溝16を形成してあるため、厚さの薄い側板5を加工して縦溝16を形成する場合に比して、その深さを大とすることができ、後述するようにして縦溝16に嵌合される前面板17の側端部が、安定よく保持される。
【0032】
図2図3図8及び図9に示すように、左右の側板5、5の前端部に設けた縦溝16、16、及びスライド案内部8に設けた横溝10には、薬剤収納部7の前面開口部を閉塞する合成樹脂等よりなる前面板17の両側端部と下部が、前後方向に位置決めされて、かつ上方から着脱しうるようにして嵌合されている。前面板17の高さは、側板5の高さとほぼ等しく、かつその厚さは、上方から下方に向かって漸次小とされ、全体がほぼ楔状断面をなしている。
【0033】
前面板17の形状及び厚さは、縦溝16及びそれに連続する横溝10に適正に嵌合しうるように定めてあり、縦溝16と横溝10に嵌合された前面板17が、前後方向にがたつかないようにしてある。なお、左右の側板5に設けた縦溝16と、それに嵌合される前面板17の側端部とにより、本発明の保持手段が構成されている。この実施形態では、前面板17の側端部が、縦溝16に嵌合される突条に相当する。
【0034】
前面板17の中央下部に設けた方形孔18内には、下端から前上方に向かって起立する、後方に弾性変形可能な弾性係合片19が、前面板17と一体的に形成されている。
【0035】
前面板17の両側縁部を左右の縦溝16、16に、また同じく下縁部をスライド案内部8における横溝10に、それぞれ上方より嵌合すると、弾性係合片19の上縁19aが、横溝10内において、その前壁10aの中央部に形成された係合孔20の上縁20aに弾性係合する。これにより、前面板17は、上方へ抜け止めされる。なお、係合孔20の代わりに、後面が前方に向かって凹入する係合凹部を設け、この係合凹部の上縁に弾性係合片19の上縁19aが弾性係合するようにしてもよい。
【0036】
図8に示すように、弾性係合片19の上縁19aは、係合孔20に向かって斜め前下方に傾斜する傾斜面としてある。これにより、前面板17を強く引き上げたとき、弾性係合片19の上縁19aが係合孔20の上縁20aに沿って斜め後上方に摺動し、それに伴って、弾性係合片19が後向きに弾性変形することにより、弾性係合片19と係合孔20との係合が解除され、前面板17を縦溝16及び横溝10より抜き外すことができる。なお、スライド案内部8の下方の手掛け部11の下方より係合孔20内に手を差し入れ、弾性係合片19を後方へ弾性変形させることによっても、弾性係合片19と係合孔20との係合を解除することができる。なお、この例とは反対に、弾性係合片19を前壁10a側に、後下方を向くように設けるとともに、係合孔20を前面板17の下部に設け、横溝10に前面板17を嵌合したとき、弾性係合片19の下縁が係合孔20の下縁に弾性係合するようにしてもよい。
【0037】
以上説明したように、上記第1の実施形態においては、薬剤収納部7の上面と前面が開口する前面オープン型の薬剤収納ケース3の前面開口部、すなわち、スライド案内部8の上方と、左右の側板5の前端部の対向面間に形成される前面開口部に、前面板17を装着してその部分を閉塞することにより、図3に示すように、薬剤収納部7の前面が閉塞され、上面のみが開口する薬剤収納ケース、すなわち、薬剤を取り出す際に、薬剤什器1より前方に引き出して使用する前面クローズ型薬剤収納ケース21に容易に変更することができる。また、前面板17を取り外せば、再度前面オープン型の薬剤収納ケース3に変更して使用することができる。すなわち、1種類の薬剤収納ケースを、前面オープン型から前面クローズ型へ、またその逆へ、容易に変更することができる。従って、従来のように、前面オープン型と前面クローズ型との2種類の薬剤収納ケースを製作しておき、それらを、収納する薬剤の種類や用途の変更等に応じて使い分ける必要がなく、使い勝手がよくなるとともに、コスト的に有利となる。
【0038】
薬剤収納ケース3の前面開口部に前面板17を装着した状態では、前面板17の両側端部と下部が、それぞれ左右の側板5の縦溝16とスライド案内部8の横溝10とにより、前後方向へ移動不能に位置決めされて保持され、かつ弾性係合片19により、上方へも抜け止めされるので、前面開口部が前面板17により閉塞された強固な前面クローズ型の薬剤収納ケース21とすることができる。しかも、前面板17の下部が嵌合される横溝10は、底板6の前端部の上向きに突出するスライド案内部8に設けてあるので、横溝10の深さを実施例のように深くして、前面板17の下部の嵌合代を大とすることができ、それによって、前面板17は安定よく保持される。そのため、前面板17を掴んで薬剤収納ケース21を薬剤什器1に出し入れしたとしても、前面板17が大きく撓んで破損したり、外れたりすることがない。
なお、前面板17に設けた弾性係合片19、及び縦溝16に設けた係合孔20を省略して実施することもある。
【0039】
図10図12は、前面板17の保持手段の変形例を示す拡大断面図である。なお、左右対称であるため、左側のみについて図示する。
図10は、上記のようなガイド突条15を省略して、側板5の内面に、前面板17の側端部を嵌合しうる縦溝16を設けたものである。
【0040】
図11は、側板5の内面に、前後幅の小さな縦溝16を設けるとともに、前面板17の側端面に、縦溝16に上方から嵌合しうる上下方向の突条22を設け、これら縦溝16と突条22とにより、前面板17の保持手段を構成したものである。
【0041】
図12は、側板5の内面に突条22を、前面板17の側端面に、突条22に上方から嵌合しうる縦溝16を設けたものである。
なお、図10及び図11に示す例においても、上記と同様に、縦溝16とそれに嵌合される前面板17の側端部、及び突条22の前後寸法を、上方から下方に向かって漸次小とするのがよい。また、図12に示す変形例においては、縦溝16とそれに嵌合される突条22の前後寸法を、上方から下方に向かって漸次大とするのがよい。このようにすることにより、前面板17を凹溝16及び突条22に、上方より容易に嵌合することができる。
【0042】
図13図16は、第2の実施形態に係る薬剤収納ケース23を示すもので、この薬剤収納ケース23は、上記第1の実施形態と同形をなす前面オープン型の薬剤収納ケース3における薬剤収納部7内に、例えば薬剤の効能や注意事項、服用方法等の薬剤情報が記載された添付書等の紙箋類24を収容して保管しておく紙箋類収納部25を設けたものである。なお、上記第1の実施形態と同様の部材には、同じ符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0043】
薬剤収納ケース3の底板4に設けた、左側の側板5の内面と近接する仕切板差込溝12の前半部に、上下寸法と前後寸法が側板5のそれの概ね半分の長さとした仕切板26の下端部を嵌合することにより、側板5と仕切板26の対向面間に形成される狭小空間を、前後両方向と上方に開口する紙箋類収納部25としてある。
【0044】
図16に示すように、仕切板26の下端部は、底板4を正面視凹状断面をなすように下向きに折曲して形成された仕切板差込溝12に深めに嵌合され、しかも、仕切板差込溝12は、図15に示すように、上方を向くスライド案内部8の薬剤取出し面8aまで形成され、その部分において仕切板差込溝12は深くなっているので、仕切板26の前下部が、仕切板差込溝12に深く嵌合される。そのため、仕切板26の下端部が、仕切板差込溝12により安定よく保持されるので、左右方向にぐらついたり、外れたりするおそれは小さい。
【0045】
このように、上面と前面が開口された前面オープン型の薬剤収納ケース3における薬剤収納部7内の側端部を、仕切板26により左右に仕切り、この仕切板26と側板5との対向面間に、紙箋類収納部25を設けたことにより、紙箋類収納部25への紙箋類24の出し入れが容易となる。すなわち、紙箋類24を手に取って見たいときには、薬剤什器1に薬剤収納ケース23を収納した状態で、前方から、または薬剤収納ケース23を若干引き出して、上方から速やかに取り出すことができるので、使い勝手がよい。
【0046】
また、紙箋類収納部25は、薬剤収納部7内の側端部、すなわち、側板5の内面に寄せて設けてあるので、薬剤収納部7内の薬剤収納領域を大きく狭めたり、薬剤取り出し時の妨げになったりすることはない。
【0047】
さらに、薬剤収納部7の前面開口部が開口されているので、薬剤収納部7内の薬剤の残量等を、前方から容易に確認することができる。
【0048】
紙箋類収納部25の下部前面は、上向きのスライド案内部8により塞がれているので、紙箋類収納部25内に収容した紙箋類24が前方に突出したり、落下したりするおそれはなく、かつ前上方に傾斜する薬剤取出し面8aに沿って、紙箋類24をスムーズに取り出すことができる。
【0049】
なお、第2の実施形態に係る薬剤収納ケース23において、仕切板26を、右側の側板5と近接する仕切板差込溝12に嵌合してもよく、また、仕切板26を、左右両側部の仕切板差込溝12、12にそれぞれ嵌合し、薬剤収納部7内の両側に紙箋類収納部25を形成するようにしてもよい。
【0050】
また、第2の実施形態では、仕切板差込溝12を、後面板6まで達する長さとしたが、仕切板26の前後寸法とほぼ等しい長さとしてもよい。
【0051】
さらに、第2の実施形態では、仕切板26の前後寸法を、仕切板差込溝12よりも短寸としたが、その前後寸法を、仕切板差込溝12と等しい長さ、すなわち後面板6に達する長さとして、側板5との間に、前後方向に長い紙箋類収納部25を形成するようにしてもよい。この際には、後面板6の側端部の前面に、中央部に設けたものと同様の左右1対のガイド突条13、13を、仕切用縦溝14の下端が仕切板差込溝12と連続するように設け、ガイド突条13の仕切板差込溝12に、長寸とした仕切板26の後端部を嵌合すれば、前後寸法の長い仕切板26であっても、これを安定よく保持することができる。
【0052】
なお、図14の2点鎖線で示すように、左右の側板5の縦溝16とスライド案内部8の横溝10に、第1の実施形態と同様の前面板17を嵌合して、上面のみが開口する前面クローズ型の薬剤収納ケースとし、その薬剤収納部7の側端部に仕切板26を装着して、紙箋類収納部25を形成するようにしてもよい。この際にも、紙箋類収納部25への紙箋類24の出し入れは、薬剤什器1より薬剤収納ケースを引き出して、上方から容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
1 薬剤什器
2 棚板
3 薬剤収納ケース
4 底板
5 側板
6 後面板
7 薬剤収納部
8 スライド案内部
8a 薬剤取出し面
8b 受止面
9 プレート差込溝
10 横溝
10a 前壁
11 手掛け部
12 仕切板差込溝
13 ガイド突条
14 仕切用縦溝
15 ガイド突条
16 縦溝
17 前面板
18 方形孔
19 弾性係合片
19a 上縁
20 係合孔
20a 上縁
21 前面クローズ型薬剤収納ケース
22 突条
23 薬剤収納ケース
24 紙箋類
25 紙箋類収納部
26 仕切板
図1
図2
図3
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