(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306402
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】有機EL表示装置及び有機EL表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/10 20060101AFI20180326BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20180326BHJP
H05B 33/06 20060101ALI20180326BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20180326BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20180326BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20180326BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/14 A
H05B33/06
H05B33/04
H05B33/26 Z
H01L27/32
G09F9/30 365
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-79181(P2014-79181)
(22)【出願日】2014年4月8日
(65)【公開番号】特開2015-201325(P2015-201325A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 優子
【審査官】
川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−109398(JP,A)
【文献】
特開2005−38833(JP,A)
【文献】
特開2005−93398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00−33/28
H01L 51/50−51/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域内にマトリクス状に配置された複数の画素と、
前記複数の画素の各々に配置され、導電材料からなる下部電極と、
前記表示領域の全体を覆うように配置され、導電材料からなる上部電極と、
前記下部電極及び前記上部電極の間に配置され、有機材料からなる発光層を含む複数の層からなる有機層と、
前記表示領域の外側に形成された導電体からなる配線と、
前記配線上に形成され、前記配線に対して非接触の側面部が配線に覆い被さるように延びるテーパ部を有するテーパ構造層と、を備え、
前記有機層のうちの少なくとも一つの層は、前記テーパ構造層上に形成され、
前記テーパ構造層は、前記側面部に囲まれたコンタクトホールを形成し、前記上部電極は前記コンタクトホールを介して前記配線と接している、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL表示装置において、
向かい合う前記テーパ部の間の前記配線上に配置され、前記有機層のうちの少なくとも一つの層の層構成であり、周囲を上部電極に覆われた島状部を更に備える、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の有機EL表示装置において、
前記テーパ構造層は、前記下部電極の層構成を有している、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の有機EL表示装置において、
前記コンタクトホールは、複数形成されている、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の有機EL表示装置において、
前記コンタクトホールは一方向に延びる帯状であり、複数並列して配置されている、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項6】
請求項4に記載の有機EL表示装置において、
前記複数のコンタクトホールは、マトリクス状に配置されている、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項7】
表示領域の外側に導電材料からなる配線を形成する配線形成工程と、
前記配線上に被エッチング層を成膜する被エッチング層形成工程と、
前記被エッチング層に対し、選択的にオーバーエッチングすることにより、前記配線を露出させる穴部を形成すると共に、前記穴部を形成する側面部が前記配線に覆い被さるように延びるテーパ部を形成するテーパ構造層形成工程と、
前記テーパ構造層形成工程の後、有機材料からなる有機層を前記テーパ構造層に対して成膜する有機層成膜工程と、
前記有機層成膜工程の後、導電材料からなる上部電極を成膜する上部電極形成工程と、を備え、
前記有機層成膜工程において成膜される有機層は、前記穴部において切断されて成膜され、
前記上部電極形成工程において成膜される上部電極は、前記穴部において前記配線と接続する、ことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の有機EL表示装置の製造方法において、
前記上部電極形成工程の後、無機材料により表示領域及び表示領域の外側を覆うように封止膜を形成する封止膜形成工程と、
エッチングにより部分的に少なくとも封止膜、上部電極及び有機層を除去し、外部との信号入出力をおこなう外部端子を露出させる外部端子形成工程と、を更に備える、ことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の有機EL表示装置の製造方法において、
前記テーパ構造層形成工程は、前記上部電極と対となって、有機材料からなる発光層を発光させる下部電極を形成する工程である、ことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置及び有機EL表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)と呼ばれる自発光体を用いた画像表示装置(以下、「有機EL表示装置」という。)が実用化されている。この有機EL表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、自発光体を用いているため、視認性、応答速度の点で優れているだけでなく、バックライトのような補助照明装置を要しないため、更なる薄型化が可能となっている。
【0003】
特許文献1は、有機材料からなる平坦化膜の外周部を、表示領域外においてアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうちいずれか一つを含む電荷輸送層が覆うことにより、水分やガスが有機層に侵入することを抑制することについて開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−295911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機EL表示装置では、発光層を有する有機層を挟む2つの電極である上部電極及び下部電極のうち、上部電極は、有機層が形成された表示領域全面を覆う電極であり、透明の導電性材料により形成される。この上部電極は表示領域外において配線に接続されることとなるが、製造工程では、この表示領域外における接続を行うために、上部電極よりも先に成膜される有機層が表示領域外に蒸着されないように、蒸着マスクを用いた蒸着工程等を行っていた。しかしながら、蒸着マスクは、高精度の加工を必要とし高価であると共に、定期的に洗浄及び交換を必要とすることから、蒸着マスクを用いた蒸着工程は、作業工数を増加させ、製造コストの増加に繋がるものであった。
【0006】
本発明は、上述の事情を鑑みてしたものであり、製造コストがより低減された有機EL表示装置、及び製造コストがより低減された有機EL表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の有機EL表示装置は、表示領域内にマトリクス状に配置された複数の画素と、前記複数の画素の各々に配置され、導電材料からなる下部電極と、前記表示領域の全体を覆うように配置され、導電材料からなる上部電極と、前記下部電極及び前記上部電極の間に配置され、有機材料からなる発光層を含む複数の層からなる有機層と、前記表示領域の外側に形成された導電体からなる配線と、前記配線上に形成され、前記配線に対して非接触の側面部が配線に覆い被さるように延びるテーパ部を有するテーパ構造層と、を備え、前記有機層のうちの少なくとも一つの層は、前記テーパ構造層上に形成され、前記テーパ構造層は、前記側面部に囲まれたコンタクトホールを形成し、前記上部電極は前記コンタクトホールを介して前記配線と接している、ことを特徴とする有機EL表示装置である。
【0008】
また、本発明の有機EL表示装置において、向かい合う前記テーパ部の間の前記配線上に配置され、前記有機層のうちの少なくとも一つの層の層構成であり、周囲を上部電極に覆われた島状部を更に備えることとしてもよい。
【0009】
また、本発明の有機EL表示装置において、前記テーパ構造層は、前記下部電極の層構成を有していてもよい。
【0010】
また、本発明の有機EL表示装置において、前記コンタクトホールは、複数形成されていてもよく、この場合には、前記コンタクトホールは一方向に延びる帯状であり、複数並列して配置されていてもよい。また、前記複数のコンタクトホールは、マトリクス状に配置されていてもよい。
【0011】
本発明の有機EL表示装置の製造方法によれば、表示領域の外側に導電材料からなる配線を形成する配線形成工程と、前記配線上に被エッチング層を成膜する被エッチング層形成工程と、前記被エッチング層に対し、選択的にオーバーエッチングすることにより、前記配線を露出させる穴部を形成すると共に、前記穴部を形成する側面部が前記配線に覆い被さるように延びるテーパ部を形成するテーパ構造層形成工程と、前記テーパ構造層形成工程の後、有機材料からなる有機層を前記テーパ構造層に対して成膜する有機層成膜工程と、前記有機層成膜工程の後、導電材料からなる上部電極を成膜する上部電極形成工程と、を備え、前記有機層成膜工程において成膜される有機層は、前記穴部において切断されて成膜され、前記上部電極形成工程において成膜される上部電極は、前記穴部において前記配線と接続する、ことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法である。
【0012】
また、本発明の有機EL表示装置の製造方法において、前記上部電極形成工程の後、無機材料により表示領域及び表示領域の外側を覆うように封止膜を形成する封止膜形成工程と、エッチングにより部分的に少なくとも封止膜、上部電極及び有機層を除去し、外部との信号入出力をおこなう外部端子を露出させる外部端子形成工程と、を更に備えていてもよい。
【0013】
また、本発明の有機EL表示装置の製造方法において、前記テーパ構造層形成工程は、前記上部電極と対となって、有機材料からなる発光層を発光させる下部電極を形成する工程であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る有機EL表示装置を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の有機ELパネルの構成を示す図である。
【
図3】
図2のIII−III線におけるTFT基板の断面を概略的に示す図である。
【
図4】
図3の外側領域FにおけるAの領域を拡大して示す概略図である。
【
図5】コンタクトホールの配置の一例について示す部分平面図である。
【
図6】コンタクトホールの配置の別の例について示す部分平面図である。
【
図7】有機EL表示装置の製造工程の概略について示すフローチャートである。
【
図8】
図7のTFT基板成膜工程について、より詳細に示すフローチャートである。
【
図9】
図8のテーパ構造層形成工程について説明するための図である。
【
図10】
図8の有機層成膜工程について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0016】
図1には、本実施形態に係る有機EL表示装置100が概略的に示されている。この図に示されるように、有機EL表示装置100は、上フレーム110及び下フレーム120に挟まれるように固定された有機ELパネル200から構成されている。なお、有機EL表示装置100は、例えば下フレーム120のみに固定される形態等その他の形態であってもよい。
【0017】
図2には、
図1の有機ELパネル200の構成が示されている。有機ELパネル200は、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)基板220と対向基板230との2枚の基板を有し、これらの基板の間には透明樹脂が充填されている。TFT基板220は、表示領域Dにマトリクス状に配置された画素280を有している。ここで表示領域の外側の領域を外側領域(額縁領域)Fとする。また、TFT基板220には、画素280のそれぞれに配置されたTFTからなる画素トランジスタの走査信号線に対してソース・ドレイン間を導通させるための電位を印加すると共に、各画素トランジスタのデータ信号線に対して画素の階調値に対応する電圧を印加する駆動回路である駆動IC(Integrated Circuit)260が載置されている。なお、TFTには、LTPS半導体、アモルファス半導体、酸化物半導体その他の半導体を用いることができる。また、
図2では、対向基板230を有する構成としたが、対向基板230を有しない有機ELパネル200とすることもでき、また、基板間の透明樹脂を用いない構成とすることもできる。また、基板にはガラスの他、柔軟性・可撓性のあるプラスチック等の材料を用いることができる。なお、駆動回路は、一部又は全部がTFT基板220上に形成された薄膜トランジスタにより形成された回路であってもよい。
【0018】
また、本実施形態に係る有機ELパネル200において、TFT基板220の表示領域Dに配置された各画素280の発光素子は白色を発光し、対向基板230においてR(赤)G(緑)B(青)W(白)の4色の光として透過させることにより、カラー表示を行うものとすることができる。しかしながら、RGBの3色その他の色の組合せを用いてもよいし、TFT基板220における発光素子が白色の一色でなく、複数の色を発光することによりカラー表示を行うものであってもよい。この場合おいては、対向基板230にカラーフィルタを用いない構成とすることもできる。
【0019】
図3は、
図2のIII−III線におけるTFT基板220の断面を概略的に示す図である。この図に示されるように、
図3は、表示領域Dから表示領域の外側の領域である外側領域Fに渡る断面について示しており、表示領域Dにおいては、ガラス等の絶縁性のある材料で形成される基材221上に、不図示のTFT回路が形成され、TFT回路上に有機EL素子を形成するための有機材料からなる平坦化膜222が形成されている。更に、平坦化膜222上には有機EL素子の発光層において発光した光を反射する反射膜224と、反射膜224上に配置され、各画素280毎にTFT回路により制御された電位が印加される下部電極225と、下部電極225の端部を覆い隣接する下部電極225との間を絶縁する画素分離膜223とが形成されている。下部電極225及び画素分離膜223上には、有機材料からなる発光層を有する複数の層からなる有機層226が表示領域Dの全面に成膜され、その上には例えば酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide)その他の光透過性のある導電材料からなる上部電極227と、例えばSiNやSiO等の無機絶縁材料からなり、水分の侵入を遮断する封止膜228とが成膜されている。
【0020】
なお、
図3では、下部電極225及び反射膜224を別にしているが、下部電極225が反射膜224を兼ねるものとして、反射膜224を形成しない構成であってもよい。また、有機層226に含まれる複数の層には無機材料からなる層が含まれるものであってもよい。また、TFT回路としては、周知の回路を含め、有機EL表示装置100の発光制御に適したものを適宜用いることができる。外側領域Fにおいては、上部電極227に定電位を印加するための配線229が形成されており、複数箇所において上部電極227と接続される。
【0021】
図4は、
図3の外側領域FにおけるAの領域を拡大して示す概略図である。この図に示されるように、配線229上には、端部の側面部244が配線に覆い被さるように延びるテーパ部243を有するテーパ構造層241が形成され、そのテーパ構造層241上に有機層226が形成されている。テーパ部243は、向かい合わせられるように配置されており、その間は配線229へのコンタクトホール245となっている。有機層226上には上部電極227が配置されると共に、コンタクトホール245内に上部電極227が成膜され、上部電極227は電気的に配線229に接続される。上部電極227上には封止膜228が形成される。ここで、向かい合うテーパ部243の間の配線229上において、有機層226の層構成であり、周囲を上部電極227に覆われた島状部246が形成されていてもよい。ここで、テーパ構造層241は、下部電極225の層構成とすることもできる。テーパ構造層241を下部電極225の層構成とすることにより、下部電極225と同時に成膜することができるため、製造工程を削減し、製造コストをより抑えることができる。しかしながら、テーパ構造層241は、下部電極225と同じ層構成であるものに限られず、無機材料、有機材料、導電材料及び非導電材料のいずれであってもよい。また、外側領域Fの有機層226は、表示領域Dの有機層226が有する複数の層のうち、一部の層で構成されるものであってもよい。また、下部電極225及び/又はテーパ構造層241は、例えば、ITO/Ag/ITO、Ti/Al/Ti及びMo/W/Tiその他の積層構造とすることができる。
【0022】
図5は、コンタクトホール245の配置の一例について示す部分平面図である。この図の例では、コンタクトホール245は、外側領域Fにおいて帯状に延び、複数並列して配置されている。なお、
図5では帯状に延びるコンタクトホール245について示しているが、TFT基板220の角部において異なる方向に延びるコンタクトホール245がそれぞれ接続され、コンタクトホール245のそれぞれが表示領域Dの3辺又は4辺を囲うように形成されることとしてもよい。
【0023】
図6は、コンタクトホール245の配置の別の例について示す部分平面図である。この図の例では、矩形のコンタクトホール245が、外側領域Fにおいてマトリクス状に配置されている。ここで各コンタクトホール245は矩形に限らず円形等その他の形状であってもよい。なお、
図5及び6の例に限られず、コンタクトホール245は、外側領域Fの大きさ、コンタクトホールに必要な面積等に応じて適宜配置することができる。
図5及び6の例に示されるように、コンタクトホール245を複数箇所において形成することにより、より確実に上部電極227と配線229との接続を確保することができると共に、表示領域Dにおける上部電極227の電位を均一化することができる。また、形状や数を適切に定めることにより、上部電極227と配線229との接触面積を広げ、消費電力を抑えると共に、上部電極の電位を更に均一化することができる。
【0024】
図7は、有機EL表示装置100の製造工程の概略について示すフローチャートである。このフローチャートに示されるように、有機EL表示装置100の製造工程では、基材となる絶縁性のある基板にTFT回路の各層を形成すると共に、有機EL素子の各層を形成するTFT基板成膜工程S100と、例えばTFT基板220に対向基板230を貼り合わせ、切断の後、駆動IC260等を載置して有機ELパネル200とする等、有機ELパネルを組立てるパネル組立切断工程S200と、下フレーム120等のフレームを組合せ有機EL表示装置100とする装置組立工程S300とを有している。なお、有機EL表示装置100の構成が、例えば柔軟性のある基材により形成される等で異なる場合には、製造工程のこれらの内容及び組合せは異なるものとすることができる。
【0025】
図8は、
図7のTFT基板成膜工程S100について、より詳細に示すフローチャートである。なお、このフローチャートは、外側領域Fにおける成膜に着目して示されており、このフローチャートに含まれていない表示領域D内の工程等は適宜組み合わせられる。TFT基板成膜工程S100では、まず配線形成工程S101において、配線229を形成する。なお、配線229の形成においては、表示領域D内の配線、例えばTFT回路の配線と同時に成膜し、フォトリソグラフィ工程等により形成することができる。次に被エッチング層成膜工程S102において、エッチング後にテーパ構造層241となる被エッチング層251(後述)を成膜する。ここで被エッチング層251は、下部電極225と同じ材料で同時に成膜することができる。下部電極225と同時に成膜されることにより製造工程を削減し、製造コストを抑えることができる。しかしながら、被エッチング層251は、下部電極225とは異なる層構成で、下部電極225と異なるタイミングで成膜されるものであってもよい。
【0026】
図9は、
図8のテーパ構造層形成工程S103について説明するための図である。テーパ構造層形成工程S103では、エッチングマスク252をフォトリソグラフィ工程等を用いて形成し(S1031)、ウェットエッチングにより被エッチング層251に穴を開ける。ここで被エッチング層251がオーバーエッチングされることにより、側面部244が配線に覆い被さるように延びるテーパ部243が形成され、テーパ構造層241となる。テーパ部243は、互いに向かい合わせられるように形成され、コンタクトホール245となる(S1032)。被エッチング層251が積層構造を有する場合には、例えば積層構造の最上位の層をそれより下位の層よりエッチングレートの低い層として形成することにより、最上位の層をエッチングマスク252として用いることができる。
【0027】
図8に戻り、有機層成膜工程S104において、表示領域D及び外側領域Fに渡って、蒸着マスクなしで有機層226を蒸着により成膜する。ここで、表示領域Dの有機層226は複数の層から構成され、このうち少なくとも一部の層が、蒸着マスクなしで外側領域Fにおいても成膜されることとしてもよい。外側領域Fのコンタクトホール245では、有機層226は、
図10に示されるように、テーパ部243の下には蒸着されないため、段切れし、配線229へのコンタクトホール245を保ったまま成膜される。ここで、向かい合うテーパ部243の間の配線229上に島状部246が形成されてもよく、また、向かい合うテーパ部243の幅その他の成膜条件により形成されなくてもよい。このように有機層226が段切れになっているため、表示領域Dに外部からの水分の侵入経路がなくなり、ダークスポット等の水分に起因する表示不良を防止することができる。
【0028】
次に、上部電極形成工程S105において、表示領域D及び外側領域Fに渡って、透明な導電膜からなる上部電極227がスパッタリングにより成膜される。上部電極227は、スパッタリングの特性により、回り込んでコンタクトホール245を埋め、配線229に接触する。島状部246が形成されている場合には、上部電極227は、島状部246の周囲も覆うこととなる。続いて、封止膜形成工程S106において、表示領域D及び外側領域Fに渡って、無機絶縁膜等からなる封止膜228が形成される(
図4)。
【0029】
また、外部端子形成工程S107では、駆動IC260又はFPC(Flexible Printed Circuit)を接続させる端子をTFT基板220の表面に露出させる。この際、ウェットエッチング又はドライエッチングにより、封止膜228、上部電極227及び有機層226を剥がすこととなるが、外側領域Fに形成された有機層226は剥離層の役割を果たすため、封止膜228及び上部電極227を剥がしやすく、外部端子となる配線等を露出させやすい。外部端子形成工程S107では、ドライエッチング又はウェットエッチングを用いることとしたが、この工程を有せずに別の工程で外部端子を形成することとしてもよく、また、外部端子形成工程S107は、TFT基板成膜工程S100において実施されなくてもよい。
【0030】
以上説明したように、上述の実施形態によれば、有機層226の少なくとも一部の層において蒸着マスクなしで、表示領域D及び外側領域Fに渡って成膜することができるため、高価であり、定期的に洗浄及び交換を必要とする蒸着マスクの使用を削減し、製造工程を簡略化すると共に、製造コストを低減することができる。また、上述の実施形態に係る有機EL表示装置100は、コストを抑えて製造されることができる。
【0031】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
100 有機EL表示装置、110 上フレーム、120 下フレーム、200 有機ELパネル、220 TFT基板、221 基材、222 平坦化膜、223 画素分離膜、224 反射膜、225 下部電極、226 有機層、227 上部電極、228 封止膜、229 配線、230 対向基板、241 テーパ構造層、243 テーパ部、244 側面部、245 コンタクトホール、246 島状部、251 被エッチング層、252 エッチングマスク、260 駆動IC、280 画素。