(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配線層と、この配線層を両側から覆うと共に熱可塑性樹脂を材質とする絶縁層とを有するフレキシブルプリント基板であって、複数個所に曲成部を有するフレキシブルプリント基板を基板製造用治具を用いて形成するフレキシブルプリント基板の製造方法であって、
前記基板製造用治具のうち前記フレキシブルプリント基板の一方側を保持する第1保持手段に当該フレキシブルプリント基板の一方側を保持させる第1保持工程と、
前記第1保持工程の後に、前記基板製造用治具のうち前記フレキシブルプリント基板を湾曲させて前記曲成部を形成するための複数の支持部材に当該フレキシブルプリント基板を掛け回す状態で支持させる掛け回し工程と、
前記掛け回し工程の後に、前記基板製造用治具のうち前記フレキシブルプリント基板の他方側を保持する第2保持手段に当該フレキシブルプリント基板の他方側を保持させて前記フレキシブルプリント基板にテンションを付与した状態を維持する第2保持工程と、
前記基板製造用治具の少なくとも一部に前記フレキシブルプリント基板の保持状態が維持された状態で、前記フレキシブルプリント基板を加熱成形する加熱成形工程と、
を備えることを特徴とするフレキシブルプリント基板の製造方法。
配線層と、この配線層を両側から覆うと共に熱可塑性樹脂を材質とする絶縁層とを有すると共に、複数個所に曲成部を有するフレキシブルプリント基板を形成するための基板製造用治具であって、
前記フレキシブルプリント基板の一方側を保持する第1保持手段と、
前記フレキシブルプリント基板を掛け回す状態で湾曲させて前記曲成部を形成するための複数の支持部材と、
前記フレキシブルプリント基板の他方側を保持して前記フレキシブルプリント基板にテンションを付与した状態を維持する第2保持手段と、
を備えることを特徴とする基板製造用治具。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態に係るフレキシブルプリント基板FBの製造方法、基板製造装置100および基板製造用治具10について、以下に説明する。なお、以下の説明においては、フレキシブルプリント基板FBの製造方法を実施するための基板製造用治具10と基板製造装置100について最初に説明し、その後にフレキシブルプリント基板FBの製造方法について説明する。また、以下の説明においては、XYZ直交座標系を用いて説明することがある。そのうち、X方向は基板製造用治具10の長手方向とし、X1側は
図3等の右側、X2側は左側とする。また、Z方向は基板製造用治具10の高さ方向とし、Z1側は上側、Z2側は下側とする。また、Y方向はXZ方向に直交する方向であると共に基板製造用治具10の幅方向とし、Y1側は手前側、Y2側は奥側とする。
【0027】
<フレキシブルプリント基板について>
図1は、成形前のフレキシブルプリント基板FA(または成形後のフレキシブルプリント基板FB)の構成の一例を示す正面断面図である。
図1に示すように、本実施の形態のフレキシブルプリント基板FA,FBは、絶縁層F1と導電パターンF2と接着層F3を有している。絶縁層F1はLCP(Liquid Crystal Polymer:LCP)等の熱可塑性樹脂を用いている。具体的には、フレキシブルプリント基板FA,FBの表面側および裏面側をLCPの絶縁層F1が覆い、それらの絶縁層F1のうちのいずれかに導電パターンF2が形成され、さらに導電パターンF2を覆うように接着層F3が存在している。そして接着層F3を介して、他の絶縁層F1が接着されている。すなわち、一対の絶縁層F1の間に導電パターンF2(導電層)が挟まれた構成となっている。しかしながら、導電パターンF2(導電層)は1層に限られるものではなく、2層以上設けられていても良いが、その場合には、導電パターンF2(導電層)同士を離間させるための絶縁層が必要となる。
【0028】
上記の成形前のフレキシブルプリント基板FAを成形する場合、絶縁層F1を構成する樹脂の軟化温度よりも数十℃〜100℃程度低い温度で30分から60分程度加熱することで、成形型と略同形状に成形される。
【0029】
図2は、フレキシブルプリント基板FA,FBの側面形状を示す図であり、(A)は成形前のフレキシブルプリント基板FAを示し、(B)は成形後のフレキシブルプリント基板FBを示す図である。
図2(A)に示すように、成形前のフレキシブルプリント基板FAは、曲成部FB1が形成されていない状態となっている。
【0030】
これに対して、成形後のフレキシブルプリント基板FBは、複数の曲成部FB1を有している。この曲成部FB1は、後述する固定ピン24や可動ピン25の外周に倣うようにして形成されている。そのため、その曲成部FB1の曲率も、固定ピン24や可動ピン25に対応するものとなっている。以下、成形前のフレキシブルプリント基板FAから、成形後のフレキシブルプリント基板FBを製造するための基板製造用治具10、基板製造装置100およびフレキシブルプリント基板FBの製造方法について、以下に説明する。
【0031】
<基板製造用治具10の構成について>
図3から
図5は、フレキシブルプリント基板FAをセットする前の基板製造用治具10の構成を示す図であり、
図3は側面図、
図4は平面図、
図5は正面図である。なお、理解を容易とするために、差込孔211およびスリーブ33に挿通される可動ピン25はハッチング付きで透過的に示されている。
図6は、フレキシブルプリント基板FAの先端側の形状を示す平面図である。また、
図7は、可動ピン25の形状を示す側面図である。
【0032】
図4および
図5に示すように、基板製造用治具10は、第1治具20と、第2治具30とを有している。第1治具20は、たとえば直方体形状の本体部21を有している。本体部21には、位置決め凹部22が設けられている。位置決め凹部22は、第2治具30の位置決め凸部32(後述)が嵌め込まれる部分であり、それらの嵌合によって第2治具30に対して第2治具30の位置決めがなされる。本実施の形態では、位置決め凹部22は、本体部21の長手方向(X方向)の一端側(X2側)と他端側(X1側)にそれぞれ設けられている。しかしながら、第2治具30に対する第1治具20の位置決めが確実に行われるものであれば、位置決め凹部22を設ける位置および個数は、適宜変更可能である。また、かかる位置決めを行うものであれば、本体部21には位置決め凹部22に代えて位置決め凸部を設け、第2治具30の本体部31に位置決め凹部を設ける構成等、他の構成を採用しても良い。
【0033】
なお、第1治具20と第2治具30の間の固定を、マグネットを用いて行う構成とすることも可能である。この場合、位置決め凹部22に対して位置決め凸部32を嵌合させると、第2治具30に対して第1治具20が固定される。しかしながら、マグネットによる固定ではなく、機械的なクランプやねじ止め等、その他の固定手段を用いて、第2治具30に対して第1治具20を固定しても良い。
【0034】
この本体部21の長手方向(X方向)の一端側(X2側)には、先端固定部材23が設けられている。先端固定部材23は、第1保持手段に対応している。また、先端固定部材23は、先端受部23aと、掛止ピン23bとを有している。先端受部23aは、平板状に設けられていて、フレキシブルプリント基板FAの先端側の裏面に接触する。また、掛止ピン23bは、たとえば円柱状のピン形状に設けられている。
【0035】
ここで、
図6に示すように、フレキシブルプリント基板FAの先端側には、後に切り落とす切り落とし部F4が設けられていて(
図6では、後に切り落とすラインである切断ラインF6も示されている)、その切り落とし部F4には、孔部F5が設けられている。そのため、この孔部F5に掛止ピン23bを差し込むことで、フレキシブルプリント基板FAの先端側の位置決めがなされる構成となっている。
【0036】
なお、先端固定部材23の構成は、
図3から
図5に示す構成に限られるものではない。たとえば、掛止ピン23bは、四角柱状を始めとする角柱形状、楕円柱状を始めとする円柱状であっても良く、その他の突起形状であっても良い。また、先端固定部材23は、フレキシブルプリント基板FAの先端側の位置決めを行えるものであれば、フレキシブルプリント基板FAの切り落とし部F4をクランプしたり、切り落とし部F4を吸引保持する構成等、その他の構成であっても良い。
【0037】
また、
図3から
図5に示すように、本体部21の一端側(X2側)であって先端固定部材23よりも他端寄り(X1寄り)の部位には、支持部材に対応する固定ピン24が設けられている。固定ピン24は、本体部21に固定されているピン部材であり、後述する可動ピン25とは異なり、本体部21に対して着脱不能に設けられている。ただし、固定ピン24は、本体部21に対して着脱可能としても良い。また、固定ピン24は、本体部21に対して着脱自在とするものの、可動ピン25よりも抜け難い(簡単には可動しない)構成としても良い。
【0038】
また、固定ピン24の湾曲した外周面の曲率は、成形するフレキシブルプリント基板FBの湾曲部分の曲率に対応した曲率となっている。また、固定ピン24の上面は、先端固定部材23の先端受部23aと略面一に設けられている。すなわち、先端受部23aの上面を通ると共に長手方向(X方向)に平行な搬送ラインLは、先端受部23aの上面側に接触する。また、固定ピン24は、本体部21の側面に対して垂直方向に延伸していて、しかも固定ピン24の長さは、フレキシブルプリント基板FAの幅方向(Y方向)の長さよりも長くなるように設けられている。
【0039】
また、本体部21には、複数本の可動ピン25(支持部材に対応)が配置可能となっている。本実施の形態では、可動ピン25は、本体部21に対して着脱自在に設けられている。そのような着脱を可能とするために、本体部21には、差込孔211が設けられている。差込孔211は、本体部21の幅方向(Y方向)を貫通するように設けられている。また、差込孔211は、可動ピン25を差し込むことができるものの、その可動ピン25の差込孔211への差込後に、可動ピン25がガタ付かない程度の公差を有して形成されている。
【0040】
この差込孔211に差し込まれる可動ピン25は、
図7に示すように、ピン部251と鍔部252を有している。ピン部251は、同一径のピン形状部分であり、鍔部252はピン部251よりも大径に設けられている部分である。そのため、差込孔211にピン部251の先端側から差し込む場合、鍔部252は差込孔211を通過できず、可動ピン25が第1治具20に係止される。なお、鍔部252が本体部21に接触する場合、ピン部251はフレキシブルプリント基板FAの幅よりも長く本体部21からY1方向に突出する。
【0041】
また、
図3から
図5に示す構成では、差込孔211は、幅方向(Y方向)の全体に亘って孔径が同一となるように設けられている。しかしながら、差込孔211の少なくとも一部がテーパ孔等、孔径が同一ではない構成としても良い。たとえば、
図8に示すように、差込孔211のうち可動ピン25の差し込みの先端側(Y2側)から後端側(Y1側;第2治具30側)の途中部位までは同一径のストレート孔212とし、その途中部位から後端側(Y2側)に向かうにつれて徐々に孔径が大きくなるテーパ孔213としても良い。また、差込孔211の全体をテーパ孔としても良い。
【0042】
以上のような差込孔211は、
図3および
図4に示す構成では、合計9個設けられている。しかしながら、この差込孔211の個数は、幾つであっても良い。なお、差込孔211は、搬送ラインLを挟んで下方側(Z2側)に位置するものと、上方側(Z1側)に位置するものとが交互に存在している。以下の説明では、必要に応じて、長手方向(X方向)に沿って、最も一端側(X2側)の差込孔211を差込孔211aとし、以後、他端側(X1側)に向かうにつれて順番に差込孔211b〜211iとする。なお、固定ピン24の上面側にフレキシブルプリント基板FAが接触する場合、長手方向(X方向)の最も一端側(X2側)の差込孔211(差込孔211a)は、搬送ラインLよりも下方側(Z2側)に位置している。
【0043】
また、以下の説明では、必要に応じて、差込孔211a〜211iにそれぞれ差し込まれる可動ピン25を、可動ピン25a〜25iと称呼する。
【0044】
また、
図3から
図5に示すように、差込孔211iよりも長手方向(X方向)の他端側(X1側)の部位には、第2保持手段に対応する終端固定部材26が設けられている。終端固定部材26は、後述する後端保持部材200との間でフレキシブルプリント基板FAを挟み込み、そのフレキシブルプリント基板FAの終端側(X1側の端部)を固定する部分である。この終端固定部材26は、先端受部23aと同様な平板状に設けられていて、フレキシブルプリント基板FAの終端側の裏面に接触する。なお、終端固定部材26と共に後端保持部材200も第2保持手段に対応するものとしても良い。
【0045】
なお、図示は省略するが、フレキシブルプリント基板FAの後端側にも、上述の切り落とし部F4と同様の切り落とし部(ただし孔部F5がないものとしても良い)が存在している。また、終端固定部材26の構成は、先端固定部材23と同様に、
図3から
図5に示す構成に限られるものではなく、その他の構成を採用しても良い。
【0046】
次に、第2治具30について説明する。第2治具30は、基板製造装置100に取り付けられる部材であると共に、第1治具20が取り付けられる部材である(
図4および
図5参照)。すなわち、第2治具30を介して、第1治具20が基板製造装置100に取り付けられる。そのため、第2治具30は、側面視したときの形状が本体部21と同等の大きさとなる直方体形状の本体部31を有している。
【0047】
図4および
図5に示すように、本体部31には、位置決め凸部32が設けられている。位置決め凸部32は、上述した位置決め凹部22に差し込まれることで、第2治具30に対する第1治具20の位置決めを行うための部分である。そのため、位置決め凸部32は、位置決め凹部22に対応する位置に設けられている。
【0048】
また、本体部31には、貫通孔であるスリーブ33が設けられている。スリーブ33は、第2治具30に対して第1治具20が固定された場合に、差込孔211と同軸となる位置に設けられている。そのため、スリーブ33は、差込孔211と同数設けられている。ここで、スリーブ33は、差込孔211よりも孔径が大きく設けられている。具体的には、スリーブ33は、鍔部252が挿通可能な程度の孔径に設けられている。そのため、可動ピン25をスリーブ33を差し込むと、その可動ピン25のピン部251がスリーブ33を通過する。そして、可動ピン25の鍔部252がスリーブ33に位置する状態で、ピン部251を差込孔211に位置させることが可能となる。そのため、スリーブ33は、可動ピン25をガイドするガイドとしての機能を有している。
【0049】
<基板製造装置100の構成について>
続いて、基板製造装置100の構成について以下に説明する。
図9は、基板製造装置100の概略構成を示すブロック図である。この
図9に示すように、基板製造装置100は、制御部110、治具挟持機構120、治具スライダ130、ピン押し出し機構140、トルクローラ接離機構150、フリーローラ接離機構160、ローラ駆動機構170、先端保持機構180、側面押当機構190を備えている。
【0050】
これらのうち、制御部110は、各駆動部位の制御を司る部分であり、たとえばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ等のメモリを備え、メモリには各種制御のためのデータやプログラムが記憶されている。
【0051】
また、治具挟持機構120は、たとえば一対の挟持部材121を有していて、この一対の挟持部材121によって第2治具30を挟持する。かかる治具挟持機構120での第2治具30の挟持により、第2治具30が基板製造装置100に固定される。なお、治具挟持機構120は、手動により挟持する構成としても良く、モータ等の駆動源を用いて自動的に挟持する構成としても良い。
【0052】
また、治具スライダ130は、第2駆動手段に対応するスライドモータ131を備え、そのスライドモータ131の駆動によって基板製造用治具10をスライドさせる部分である。かかる治具スライダ130で基板製造用治具10をスライドさせる場合、後述するトルクローラ151やフリーローラ161等に対して、基板製造用治具10をスライドさせることができる。
【0053】
図9では、治具スライダ130の一例として、ベルト132を用いる場合が例示されており、そのベルト132の一部に挟持部材121等の部位が固定されている。
図9は模式図であるためベルト132が短い状態で図示されているが、ベルト132は基板製造用治具10を十分にスライド可能な長さに設けられている。なお、治具スライダ130を構成する要素として、送りねじ等、ベルト132以外の構成を用いても良い。
【0054】
また、ピン押し出し機構140は、エアシリンダ141を備え、このエアシリンダ141の作動によってスリーブ33を介して可動ピン25を差込孔211に向けて押し出す機構である。なお、ピン押し出し機構140には、エアシリンダ141を移動させる移動機構(図示省略)も設けられており、その移動機構の作動により、それぞれの差込孔211に可動ピン25を順次差し込むことを可能としている。
【0055】
また、トルクローラ接離機構150は、トルクローラ151と、エアシリンダ152と、不図示の付勢手段を備えている。トルクローラ151には、駆動ローラ151aと従動ローラ151bとが設けられていて、それらが上下方向に沿って配置されている。そして、エアシリンダ152が作動していない状態では、付勢手段の作用によって駆動ローラ151aと従動ローラ151bとが上下方向で離れているが、エアシリンダ152が作動すると駆動ローラ151aと従動ローラ151bとが互いに接近した閉じ状態となり、フレキシブルプリント基板FAを所定の押圧力で挟むことが可能となる。
【0056】
また、フリーローラ接離機構160は、フリーローラ161と、エアシリンダ162と、不図示の付勢手段を備えている。フリーローラ161は、一対の従動ローラ161a,161bを有していて、それらが上下方向に沿って配置されている。そして、エアシリンダ162が作動していない状態では、付勢手段の作用によって従動ローラ161a,161bが上下方向で互いに離れているが、エアシリンダ162が作動すると従動ローラ161a,161bが互いに接近した閉じ状態となり、フレキシブルプリント基板FAを所定の押圧力で挟むことが可能となる。なお、フリーローラ161は、トルクローラ151よりも長手方向(X方向)の一端側(X2側)に位置している。
【0057】
ローラ駆動機構170は、駆動モータ171を備えている。そして、駆動モータ171の作動により、駆動ローラ151aを駆動させることができる。そのため、駆動ローラ151aと従動ローラ151bとでフレキシブルプリント基板FAを挟み込んだ状態で駆動ローラ151aを駆動させることで、フレキシブルプリント基板FAを送ることができ、他端側(X1側;
図9の右側)に送る場合には、フレキシブルプリント基板FAにテンションを付与することができる。
【0058】
また、先端保持機構180は、先端挟持部材181と、エアシリンダ182を有している。先端挟持部材181は、
図9に示すように側面視した形状が略L字形状に設けられていて、先端固定部材23の先端側に当接する。そのような当接を可能とするため、先端側当接部181aは、上面当接部181bよりも上下方向(Z方向)に長く設けられている。また、先端挟持部材181の上面当接部181bは、切り落とし部F4の上面側に当接して、先端受部23aとの間で切り落とし部F4を挟み込む。かかる動作を実現するために、先端挟持部材181は、エアシリンダ182(第1駆動手段に対応)の作動によって上下方向(Z方向)に移動可能としている。それにより、フレキシブルプリント基板FAの先端側が確実に固定される。なお、上面当接部181bには、図示を省略する凹部が設けられていて、掛止ピン23bを入り込ませることを可能としている。
【0059】
また、側面押当機構190は、側面押当部材191と、エアシリンダ192を有している。側面押当部材191は、本体部21の側面に当接する側面当接部191aを有している。かかる側面当接部191aがフレキシブルプリント基板FAのY2側の側面に当接すると、フレキシブルプリント基板FAのスキュー方向(角度方向)の調整を行うことができる。そのような動作を実現するために、側面押当部材191は、エアシリンダ192の作動によって、幅方向(Y方向)に移動可能としている。
【0060】
なお、基板製造装置100は、後端保持部材200を備える構成としても良いが、後端保持部材200は基板製造装置100とは別の構成としても良い。この後端保持部材200は、たとえば板状の部材であり、後端側の切り落とし部F4の上面側に当接する。それにより、終端固定部材26との間で切り落とし部F4を挟み込み、フレキシブルプリント基板FAの後端側を確実に固定する。このようなフレキシブルプリント基板FAの固定を実現するために、後端保持部材200は、磁力によって終端固定部材26に取り付けられる構成としても良いが、たとえばクランプその他の手段によって終端固定部材26に取り付けられる構成としても良い。
【0061】
<フレキシブルプリント基板FBの製造方法について>
続いて、フレキシブルプリント基板FBの製造方法について、以下に説明する。なお、以下の説明においては、第1工程から第10工程について順次記載するが、各実施の形態におけるフレキシブルプリント基板FBの製造方法では、これ以外の種々の工程が存在していても良いのは勿論である。
【0062】
(1)第1工程:フレキシブルプリント基板FAのセット前(準備)
まず最初に、
図10および
図11に示すように、フレキシブルプリント基板FAをセットする前の準備を行う。そのために、治具挟持機構120を用いて第2治具30を基板製造装置100に固定する。その固定を容易に行えるようにするため、治具スライダ130は基板製造用治具10をスライドさせて、基板製造装置100の各部位と干渉しない位置(
図10および
図11では、基板製造装置100に対して相対的に左側)に配置している。なお、この基板製造用治具10のスライドでは、先端保持機構180もスライドするが、ピン押し出し機構140、トルクローラ接離機構150、フリーローラ接離機構160、側面押当機構190はスライドしない。
【0063】
また、そのスライド後、
図11に示すように位置決め凸部32を位置決め凹部22に嵌め込むことで、第2治具30に対して第1治具20を取り付ける。かかる取り付け後、治具スライダ130は基板製造用治具10を、先ほどとは逆側(
図10および
図11では、基板製造装置100に対して相対的に右側)にスライドさせ、基板製造用治具10を、フレキシブルプリント基板FAの取り付けを行うためのポジションに移動させる。
【0064】
なお、この基板製造用治具10の
図10および
図11における右側へのスライドに前後して、それぞれのスリーブ33に可動ピン25を差し込む。この差し込みは、本体部31の手前側(Y1側)の側面から、ピン部251が突出しない位置まで差し込むようにする。
【0065】
また、フレキシブルプリント基板FAを第1治具20に取り付ける際に、基板製造装置100の各部位とフレキシブルプリント基板FAとが干渉しないようにしている。そのため、先端保持機構180の先端挟持部材181は、上方側(Z1側)に退避した状態となっている。同様に、側面押当機構190の側面押当部材191も手前側(Y1側)に退避すると共に、後端保持部材200も上方側(Z1側)に退避している。また、トルクローラ151の駆動ローラ151aと従動ローラ151bとは上下方向で互いに離間した状態となっている。また、フリーローラ161の従動ローラ161a,161bも上下方向で互いに離間した状態となっている。
【0066】
なお、フレキシブルプリント基板FAを次々に成形するために、フレキシブルプリント基板FAのセット終了後は、第2治具30から第1治具20を取り外し、別の第1治具20を第2治具30に取り付ける。すなわち、1つの第2治具30に対して、多数の第1治具20が存在し、フレキシブルプリント基板FAの第1治具20への取り付けを、第1治具20毎に順次行う構成としている。
【0067】
(2)第2工程:フレキシブルプリント基板FAの先端側の取り付け
次に、
図12および
図13に示すように、フレキシブルプリント基板FAを第1治具20に取り付ける。このとき、先端固定部材23の掛止ピン23bに、フレキシブルプリント基板FAの孔部F5を差し込む(第1保持工程に対応)。それにより、フレキシブルプリント基板FAの先端側の位置が定まる。この先端側の取り付け状態では、固定ピン24の上面側にフレキシブルプリント基板FAの下面が接触する状態とする。
【0068】
(3)第3工程:フレキシブルプリント基板FAの引っ張り開始
次に、
図14および
図15に示すように、フレキシブルプリント基板FAの後端側の側面を、側面押当機構190の側面押当部材191に押し当てる(スキュー調整工程に対応)。それにより、フレキシブルプリント基板FAの回転方向の位置が定まる。そして、フレキシブルプリント基板FAの回転方向の位置が定まるのに前後して、エアシリンダ182を作動させて先端挟持部材181を下方側に移動させて、先端受部23aと上面当接部181bとの間でフレキシブルプリント基板FAを挟持する。
【0069】
この挟持の後に、エアシリンダ152を作動させてトルクローラ151の駆動ローラ151aと従動ローラ151bとを上下方向で互いに接近させ、フレキシブルプリント基板FAを挟み込む。そして、この挟み込み後に、フレキシブルプリント基板FAに対して送り方向(
図14における右方向)にテンションをかけるべく、ローラ駆動機構170の駆動モータ171を作動させて、駆動ローラ151aをフレキシブルプリント基板FAの送り方向に駆動する。
【0070】
また、この後に、エアシリンダ162を作動させてフリーローラ161の従動ローラ161a,161bを互いに上下方向で接近させて、フレキシブルプリント基板FAを挟み込む。このように、フリーローラ161が閉じるよりも前に駆動モータ171を作動させることにより、先端固定部材23とトルクローラ151の間でフレキシブルプリント基板FAの弛みが一層良好に防止される。ただし、フリーローラ161によるフレキシブルプリント基板FAの挟み込みは、駆動モータ171の作動よりも前としても良く、トルクローラ151によるフレキシブルプリント基板FAの挟み込みよりも前としても良い。
【0071】
なお、フリーローラ161によるフレキシブルプリント基板FAの挟み込みの後に、ピン押し出し機構140を差込孔211aとY方向で同軸となる位置まで移動させる。しかしながら、ピン押し出し機構140の移動は、フリーローラ161によるフレキシブルプリント基板FAの挟み込みの前であっても良く、次の第4工程において行うようにしても良い。
【0072】
(4)第4工程:差込孔211aへの可動ピン25aの差し込み(掛け回し工程の一部に対応)
続いて、
図16および
図17に示すように、ローラ駆動機構170の駆動モータ171を作動させて、駆動ローラ151aをフレキシブルプリント基板FAの送出方向とは逆方向(
図16における左方向)に駆動する。それにより、フレキシブルプリント基板FAがたるむことが可能となり、フリーローラ161が下降可能な状態となる。ただし、駆動ローラ151aをフレキシブルプリント基板FAの送出方向に駆動するように、駆動モータ171を作動させても良いが、この場合には、駆動トルクを上述の第3工程等に示す場合よりも弱くすることが好ましい。
【0073】
かかる駆動ローラ151aの駆動状態において、フリーローラ接離機構160のエアシリンダ162を作動させて、フリーローラ161を下降させる。この下降は、差込孔211aに可動ピン25aを差し込んだときに、可動ピン25aがフレキシブルプリント基板FAよりも搬送ラインL側(上方側)に位置させるものであり、そのような位置となるようにフリーローラ161を下降させる。なお、このとき、治具スライダ130のスライドモータ131を作動させて、基板製造用治具10を長手方向の他方側(X1側;
図16の右側)に移動させるようにしても良い。
【0074】
その下降の後に、ピン押し出し機構140のエアシリンダ141を作動させて、鍔部252が本体部21に当接するまで可動ピン25aを差込孔211aに差し込む。それにより、可動ピン25aのピン部251が手前側(Y1側)に突出し、そのピン部251にフレキシブルプリント基板FAの上面側が接触可能な状態となる。なお、かかるエアシリンダ141の作動後には、エアシリンダ141が戻り、スリーブ33へエアシリンダ141が入り込まないようにする。
【0075】
(5)第5工程:差込孔211bへの可動ピン25bの差し込み(掛け回し工程の一部に対応)
次に、
図18および
図19に示すように、差込孔211bへの可動ピン25bの差し込みを行う。そのために、ローラ駆動機構170の駆動モータ171を作動させて、駆動ローラ151aを送出方向(
図18における右方向)に駆動させつつ、フリーローラ161が上昇する。その後に、治具スライダ130のスライドモータ131を作動させて、基板製造用治具10を長手方向の一方側(X2側;
図18の左側)に移動させ、差込孔211bに可動ピン25bを差し込んだときに、可動ピン25bがフレキシブルプリント基板FAよりも搬送ラインL側(下方側)に位置させるようにする。
【0076】
その後に、ピン押し出し機構140を差込孔211bとY方向で同軸となる位置まで移動させる。その移動後に、ピン押し出し機構140のエアシリンダ141を作動させて、鍔部252が本体部21に当接するまで可動ピン25bを差込孔211bに差し込む。それにより、可動ピン25bのピン部251が手前側(Y1側)に突出し、そのピン部251にフレキシブルプリント基板FAの下面側が接触可能な状態となる。なお、かかるエアシリンダ141の作動後には、エアシリンダ141が戻り、スリーブ33へエアシリンダ141が入り込まないようにする。
【0077】
(6)第6工程:第4工程と第5工程と同様の動作の繰り返し(掛け回し工程の一部に対応)
上述の第5工程の後は、第4工程と第5工程と同様の動作を順次繰り返し、差込孔211c〜211iまで可動ピン25c〜25iを差し込みつつ、それぞれの可動ピン25c〜25iにフレキシブルプリント基板FAが掛け回される状態とする。
【0078】
(7)第7工程:フリーローラ161の開放
可動ピン25iにフレキシブルプリント基板FAが掛け回された状態とした後に、
図20および
図21に示すように、駆動モータ171を作動させて駆動ローラ151aを送り方向に駆動させつつ、エアシリンダ162の作動を停止させて、付勢手段の付勢力によってフリーローラ161を開放する。
【0079】
(8)第8工程:トルクローラ151の開放
続いて、
図22および
図23に示すように、後端保持部材200と終端固定部材26とでフレキシブルプリント基板FAを挟み込む(第2保持工程に対応)。その後に、エアシリンダ152の作動を停止させて、付勢手段の付勢力によってトルクローラ151を開放する。このようにして、フレキシブルプリント基板FAの基板製造用治具10への取り付けが終了する。
【0080】
(9)第9工程:フレキシブルプリント基板FAの加熱成形
次に、
図24および
図25に示すように、フレキシブルプリント基板FAが取り付けられた第1治具20を第2治具30から取り外す。そして、フレキシブルプリント基板FAにテンションが掛かった状態で、第1治具20と共にフレキシブルプリント基板FAをオーブン等で加熱する(加熱成形工程に対応)。それにより、フレキシブルプリント基板FBが成形される。かかる加熱温度としては、200℃程度で30分程度加熱するものがある。このように、フレキシブルプリント基板FAの先端側の位置が定まった状態で、かつフレキシブルプリント基板FAにテンションが掛かった状態で加熱成形されるため、成形後のフレキシブルプリント基板FBの製品形状を安定させることができる。
【0081】
なお、加熱成形によって成形後のフレキシブルプリント基板FBを得た後には、フレキシブルプリント基板FBを第1治具20から取り外す。この場合、
図26に示すように、第1治具20のうち奥側(Y2側)に凹部27を設け、この凹部27に抜き板28が嵌め込まれる構成としても良い。かかる抜き板28には、差込孔211と同軸かつ同等の孔径の孔部28aが設けられている。それにより、それぞれの可動ピン25の鍔部252は抜き板28を通過できず、当該抜き板28の側面に係止される状態となる。そのため、抜き板28を凹部27から外すことで、可動ピン25を差込孔211から引き抜くことができ、フレキシブルプリント基板FBを第1治具20から容易に取り外すことができる。
【0082】
また、
図27に示すように、第1治具20が分割可能な構成としても良い。たとえば、第1治具20は、その上下方向(Z方向)の中途にある分割部位29から、手前側(Y1側)の側面またはその近傍を支点として、第1分割部位20Aと第2分割部位20Bの2つの部位に分かれるように開閉する構成としても良い。ここで、分割部位29は、下方側(Z2側)に位置する可動ピン25とも上方側(Z1側)に位置する可動ピン25の間の位置に設ける構成とするのが好ましい。
【0083】
かかる
図27に示す構成とする場合、分割部位29を支点として第1治具20を開くようにすると、第1治具20とフレキシブルプリント基板FBとの間のテンションが緩み、フレキシブルプリント基板FBを第1治具20から容易に取り外すことができる。
【0084】
(10)第10工程:切り落とし部F4のカット
続いて、
図28および
図29に示すように、プリーツ状に成形されたフレキシブルプリント基板FBを出荷できる状態とするために、成形されたフレキシブルプリント基板FBの不要部分である切り落とし部F4のカットを行う。それにより、最終製品が完成する。かかる立体的に成形されたフレキシブルプリント基板FBの成形形状を保持したままカットするために、
図28および
図29に示すような刃付治具300と固定治具400を用いる。
【0085】
刃付治具300は、ピナクルや金型等のような刃付の治具であり、フレキシブルプリント基板FBの両端側の切り落とし部F4をカット可能なように刃部301が一対設けられている。また、固定治具400は、窪んだ形状の治具筐体401を備えている。その治具筐体401の窪みの周囲には、孔部F5を差し込み可能なガイドピン402が設けられており、フレキシブルプリント基板FBの先端側を保持可能としている。さらに、固定治具400は、フレキシブルプリント基板FBの後端側を位置決めしつつ保持可能な後端保持部403を備えている。そのため、刃付治具300を下方に移動させることで、フレキシブルプリント基板FBの両端側の切り落とし部F4をカットすることが可能となっている。
【0086】
なお、
図29に示す構成では、固定治具400は、複数のフレキシブルプリント基板FBを取り付け可能としており、刃付治具300を用いて複数のフレキシブルプリント基板FBを一度に切断することが可能である。ただし、フレキシブルプリント基板FBを一つずつ切断するようにしても良い。
【0087】
以上のような刃付治具300および固定治具400を用いて、両端側の切り落とし部F4のカットを行うことにより、最終製品が完成する。
【0088】
なお、フレキシブルプリント基板FBの後端側には、孔部F5と同様の孔部を予め設けておき、その後端側においても、ガイドピン401と同様のガイドピンに孔部を差し込むことで、位置決めを行うようにしても良い。また、切り落とし部F4のカットは、上述した手法以外の手法を用いても良い。そのような手法としては、たとえばレーザを用いたレーザカットや、ルータビットを用いたルータカット等が挙げられる。
【0089】
[比較例について]
続いて、本実施の形態に対する比較例について説明する。
図30は、比較例に係る基板製造用治具10Dの構成を示す側面図であり、上述した特許文献3に関するものである。
図30に示すように、比較例に係る基板製造用治具10Dは、本体部11を備え、その本体部11には、複数の固定ピン24Dが設けられている。
【0090】
この場合、一定テンションを加えながら、フレキシブルプリント基板FAを固定ピン24Dの間に通していく。そして、フレキシブルプリント基板FAを固定ピン24Dの間に通した後に、加熱成形を行っている。この場合、固定ピン24Dの間にフレキシブルプリント基板FAを通す作業性は悪く、しかもフレキシブルプリント基板FAの始点側の位置(先端側の位置)が安定しない。また、フレキシブルプリント基板FAと固定ピン24Dとの間での摩擦により、一定テンションでの引っ張りは困難である。したがって、成形形状の安定化が難しい。特に、固定ピン24Dの本数が多くなると摩擦が大きくなり、一定テンションで引っ張ることが困難となる。また、摩擦の増大に伴い、一定のテンションを加えても、フレキシブルプリント基板FAの途中が緩んでしまう、という問題もある。
【0091】
図31は、フレキシブルプリント基板FBの成形形状が安定しない例を示す側面図である。
図31(A)は、狙いとするフレキシブルプリント基板FBの形状を示している。しかし、
図31(B)では、その狙いとするフレキシブルプリント基板FBに対し、曲成部FB1の曲率(R)がばらついている状態を示している。すなわち、曲成部FB1の曲率(R)が大きい部分FB1aと小さい部分FB1bとが形成されており、成形形状が安定しない一態様となっている。
【0092】
また、
図31(C)では、基板製造用治具10Dにセットしたフレキシブルプリント基板FAの始点側(先端側)の位置がMだけずれた例を示している。このような始点側(先端側)の位置ずれも、成形形状が安定しない一態様となっている。
【0093】
<効果について>
以上のようなフレキシブルプリント基板FBの製造方法、基板製造用治具10および基板製造装置100によると、次のような効果が生じる。
【0094】
すなわち、先端固定部材23(掛止ピン23b)により、フレキシブルプリント基板FAの一端側(X2側;始点側)の位置を定めることができるので、フレキシブルプリント基板FBの始点側で位置ずれが生じるのを防止可能となる。それにより、フレキシブルプリント基板FBの成形形状を安定化させることができる。
【0095】
また、固定ピン24および可動ピン25にフレキシブルプリント基板FAを掛け回す状態で支持させることができるので、フレキシブルプリント基板FAに曲成部FB1を確実に形成することができる。さらに、終端固定部材26では、フレキシブルプリント基板FAの他端側(X1側;終端側)を支持させることができる。それにより、フレキシブルプリント基板FAを加熱成形する際でも、フレキシブルプリント基板FAにテンションを与えた状態を維持することができる。
【0096】
また、本実施の形態では、基板製造用治具10は、第1治具20と第2治具30とを有し、第2治具30に対して第1治具20が着脱可能に設けられている。そのため、フレキシブルプリント基板FAを加熱成形する際には、第2治具30から第1治具20を取り外すことができるので、基板製造用治具10の全体を加熱せずに済み、オーブン等での加熱成形に際して熱容量を小さくすることができる。
【0097】
しかも、第1治具20には、先端固定部材23と、固定ピン24および可動ピン25と、終端固定部材26とが設けられていて、フレキシブルプリント基板FAの一端側(X2側)を先端固定部材23側で支持させつつ、フレキシブルプリント基板FAの他端側(X1側)を終端固定部材26側で支持させることができる。それにより、フレキシブルプリント基板FAを固定ピン24および可動ピン25で湾曲させつつ良好な加熱成形を行わせることができる。
【0098】
また、可動ピン25は、第1治具20に対して着脱自在に設けられている。そのため、可動ピン25にフレキシブルプリント基板FAを掛け回す際には、必要とする可動ピン25を差込孔211に差し込むようにすることで、可動ピン25の間にフレキシブルプリント基板FAを通す等のような手間のかかる作業を行わずに済む。そのため、フレキシブルプリント基板FAを基板製造用治具10にセットする作業が容易に行える。
【0099】
なお、第2治具30には、可動ピン25を入り込ませると共に差込孔211と同軸となる位置にスリーブ33が設けられている。そのため、差込孔211への可動ピン25の差し込みを容易に行える。また、フレキシブルプリント基板FAを第1治具20にセットする前の状態ではスリーブ33に可動ピン25を入り込ませておくことで、可動ピン25の差込孔211への差し込みを効率良く行わせることができる。
【0100】
さらに、本実施の形態では、先端固定部材23には、先端受部23aと掛止ピン23bとが設けられている。そのため、フレキシブルプリント基板FAの一端側(X2側;始点側)の位置を容易かつ確実に定めることが可能となる。それにより、フレキシブルプリント基板FAの始点側で位置ずれが生じるのを一層確実に防止可能となり、フレキシブルプリント基板FAの成形形状を一層安定化させることができる。
【0101】
また、本実施の形態では、基板製造装置100には、先端挟持部材181とエアシリンダ182とを有する先端保持機構180が設けられている。このため、先端固定部材23に対してエアシリンダ182で先端挟持部材181を駆動することにより、フレキシブルプリント基板FAの一端側(X2側)を確実に挟持させることができる。それにより、一端側(X2側;始点側)の位置を一層確実に定めることが可能となる。したがって、フレキシブルプリント基板FAの始点側で位置ずれが生じるのを一層確実に防止可能となり、フレキシブルプリント基板FAの成形形状を一層安定化させることができる。
【0102】
また、本実施の形態では、基板製造用治具10には、治具スライダ130のスライドモータ131によってスライドのための駆動力が与えられる。そのため、フレキシブルプリント基板FAを固定ピン24または可動ピン25に掛け回す際には、所望する位置に基板製造用治具10を移動させることが可能となり、フレキシブルプリント基板FAの基板製造用治具10(第1治具20)へのセットを容易に実施可能となる。
【0103】
さらに、本実施の形態では、基板製造装置100には、トルクローラ接離機構150、フリーローラ接離機構160およびローラ駆動機構170が設けられている。そのため、フレキシブルプリント基板FAにローラ駆動機構170によってトルクローラ151を駆動させてテンションを与えつつ、エアシリンダ162でフリーローラ161を上昇または下降させることができる。それにより、フレキシブルプリント基板FAを固定ピン24または可動ピン25に掛け回す作業を自動的に実施することが可能となる。この際に、治具スライダ130によって基板製造用治具10を移動させることにより、可動ピン25を曲成部FB1に対応する位置に容易に差し込ませることが可能となる。
【0104】
また、本実施の形態では、基板製造装置100には、側面押当部材191を有する側面押当機構190が設けられている。そして、エアシリンダ192を作動させてフレキシブルプリント基板FAの側面に側面押当部材191を押し当てることで、フレキシブルプリント基板FAのスキュー方向の調整を容易かつ確実に実施することが可能となる。
【0105】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0106】
上述の実施の形態においては、ある特定の直径の固定ピン24および可動ピン25を用いてフレキシブルプリント基板FAの加熱成形を行う場合について説明している。しかしながら、フレキシブルプリント基板FAの加熱成形は、異なる直径の固定ピン24および可動ピン25を組み合わせて行うようにしても良い。また、フレキシブルプリント基板FAの湾曲部分のピッチ(曲成部FB1となる部分のピッチ)を変更するようにしても良い。
図32は、かかる様子を示す図である。
【0107】
図32では、小径の固定ピン24および可動ピン25を用いる部分と、大径の固定ピン24と可動ピン25を用いる構成とが組み合わされている。また、
図32では、小径の固定ピン24および可動ピン25が用いられる部分では、フレキシブルプリント基板FAの湾曲部分のピッチ(曲成部FB1となる部分のピッチ)が狭く、大径の固定ピン24および可動ピン25が用いられる部分では、フレキシブルプリント基板FAの湾曲部分のピッチ(曲成部FB1となる部分のピッチ)が広い。
【0108】
このように構成することで、曲成部FB1の曲率や曲成部FB1の間の部分のピッチを自由に組み合わせてフレキシブルプリント基板FBを製作することが可能となる。たとえば、フレキシブルプリント基板FBのうち小径でピッチが狭い成形部分は、配置スペースの狭い個所で伸縮が必要な個所に好適である。また、大径でピッチが広い成形部分は、設置スペースが広く、伸縮量が大きい個所に好適である。
【0109】
また、
図32に示す構成では、ピッチが狭い部分とピッチが広い部分との間に、成形がされない領域も存在しており、かかる成形されない領域の存在によって加熱成形する部位を最小限とすることも可能となり、成形前のフレキシブルプリント基板FAの長さを短くすることも可能となる。それにより、製品コストを低減することも可能となる。
【0110】
このように、種々のピッチを有するフレキシブルプリント基板FBを、加熱成形する部位がない領域も含めて一体的に扱えるため、異なるピッチのフレキシブルプリント基板FB同士を接続する接続部等も不要となる。
【0111】
また、上述の実施の形態においては、基板製造用治具10に1つのフレキシブルプリント基板FAをセットする場合について説明している。しかしながら、複数のフレキシブルプリント基板FAを1つの基板製造用治具10に取り付ける構成を採用しても良い。
図33は、このような基板製造用治具10Bを示す。
【0112】
図33では、複数(
図33では3つ)のフレキシブルプリント基板FAの一端側および他端側に位置する切り落とし部が互いに連結されて、長さの長い1つの切り落とし部F4Bとなっている。このような一体的な切り落とし部F4Bを設ける場合には、位置決め等がより正確に行える。ただし、フレキシブルプリント基板FA同士が連結されずに、互いに独立した構成としても良い。
【0113】
また、一端側(X2側)の切り落とし部F4Bには、複数(
図33では3つ)の孔部F5が設けられている。そして、先端固定部材23には、複数(
図33では3つ)の掛止ピン23bが設けられている。この場合、固定ピン24および可動ピン25の長さを長くする必要があり、またエアシリンダ141のストロークや、トルクローラ151およびフリーローラ161のローラの幅も長くする必要がある。
【0114】
このように構成する場合には、一度に複数のフレキシブルプリント基板FAの加熱成形を行うことが可能となり、生産効率を向上させることが可能となる。
【0115】
なお、基板製造用治具10は、たとえば第1治具20のみから構成されるものとしても良い。また、第1治具20においては、先端固定部材23が存在すると共に支持部材として、複数の固定ピン24のみが存在しても良く、またそれとは逆に複数の固定ピン24のみが存在しても良い。