特許第6306446号(P6306446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306446
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】バッテリーカバーの保持構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20180326BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   B60R16/04 J
   H01M2/10 S
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-124266(P2014-124266)
(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公開番号】特開2016-2864(P2016-2864A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岸野 誠
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−037003(JP,U)
【文献】 特開平09−213292(JP,A)
【文献】 実開昭63−102169(JP,U)
【文献】 特開2011−126451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/04
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーを支持する支持台が鉛直面である車体の取り付け面に取り付けられ、前記取り付け面に平行な方向であって鉛直方向と直交する方向を第1方向とし、前記第1方向と前記鉛直方向とに直交する方向を第2方向とするとき、前記支持台に固定されて前記バッテリーにおいて前記第1方向に沿って延びる角部を押さえるクランプに、バッテリーカバーの保持状態を解除可能に保持する保持部が取り付けられたバッテリーカバーの保持構造であって、
前記クランプは、前記第1方向に沿って延びて前記角部を押さえるクランプ板部であって、前記保持部が取り付けられた前記クランプ板部と、前記クランプ板部から前記第2方向に沿って突出する突起部とを備え、
前記保持部は、前記第2方向に沿って延びる軸部と、前記軸部に対して前記クランプ板部と反対側に連結された拡幅部であって、前記軸部の径方向における幅が前記軸部の幅よりも大きく、前記バッテリーカバーを保持する保持位置と前記バッテリーカバーの保持を解除する解除位置とに変位する前記拡幅部と、を備え、
前記バッテリーカバーには、前記突起部が通される突起挿入孔と、前記軸部が通される軸挿入孔とが形成され、
前記保持部によって前記バッテリーカバーが保持されているとき、前記拡幅部が前記保持位置に配置されて、前記軸挿入孔に通された前記軸部の周囲で、前記バッテリーカバーは前記クランプ板部と前記拡幅部との間に挟まれ、
前記突起挿入孔に通された前記突起部は、前記鉛直方向および前記第1方向において、前記バッテリーカバーの位置の移動を規制する
バッテリーカバーの保持構造。
【請求項2】
前記鉛直方向において、前記軸部と、前記軸挿入孔を区画する前記バッテリーカバーとの間の距離は、前記突起部と、前記突起挿入孔を区画する前記バッテリーカバーとの間の距離よりも大きく、
前記第1方向において、前記軸部と、前記軸挿入孔を区画する前記バッテリーカバーとの間の距離は、前記突起部と、前記突起挿入孔を区画する前記バッテリーカバーとの間の距離よりも大きい
請求項1に記載のバッテリーカバーの保持構造。
【請求項3】
前記拡幅部は、前記第2方向を軸方向として回転可能に構成され、
前記軸挿入孔は、前記解除位置での前記拡幅部の挿通を許容し、かつ、前記保持位置での前記拡幅部の挿通を禁止し、
前記拡幅部の回転によって、前記拡幅部は前記保持位置と前記解除位置とに変位する
請求項1または2に記載のバッテリーカバーの保持構造。
【請求項4】
前記突起部は、第1の突起部であって、
前記クランプは、前記クランプ板部から前記第2方向に沿って突出する第2の突起部をさらに備え、
前記突起挿入孔は、第1の突起挿入孔であって、
前記バッテリーカバーには、前記第2の突起部が通される第2の突起挿入孔がさらに形成され、
前記第1の突起挿入孔と前記第2の突起挿入孔とは、前記第1方向に、前記軸挿入孔を挟む位置に形成されている
請求項1〜3のいずれか一項に記載のバッテリーカバーの保持構造。
【請求項5】
前記突起部は、前記第1方向と前記第2方向とに沿って広がる平板状を有する
請求項1〜4のいずれか一項に記載のバッテリーカバーの保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたバッテリーに被せられるバッテリーカバーの保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたバッテリーには、バッテリーの上面と側面の一部とを覆うバッテリーカバーが被せられる。従来から、取り付けられたバッテリーカバーを保持するための様々な構造が提案されている。例えば、特許文献1に記載のバッテリーカバーの取付け構造では、バッテリーカバーは弾性変形可能な挟持部を有し、挟持部にバッテリーの端部が挟み込まれることによってバッテリーカバーの位置が固定される。また例えば、特許文献2に記載のバッテリーカバーの押え構造では、バッテリーが載置されるキャリアに弾性部材からなる止め具が取り付けられ、止め具がバッテリーカバーに引っ掛けられることによって、バッテリーカバーの位置が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−196461号公報
【特許文献2】特開2005−132272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したバッテリーカバーを備える車両が走行するときに、バッテリーカバーを支持する支持部材やバッテリーなどに対してバッテリーカバーは振動する。それゆえに、上述したバッテリーカバーの保持構造には、バッテリーカバーを保持する機能がバッテリーカバーの振動に起因して低下することを抑えて、バッテリーカバーの取り付けに対する信頼性を高めることのできる構造が求められている。
【0005】
本発明は、バッテリーカバーの取り付けに対する信頼性を高めることのできるバッテリーカバーの保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するバッテリーカバーの保持構造は、バッテリーを支持する支持台が鉛直面である車体の取り付け面に取り付けられ、前記取り付け面に平行な方向であって鉛直方向と直交する方向を第1方向とし、前記第1方向と前記鉛直方向とに直交する方向を第2方向とするとき、前記支持台に固定されて前記バッテリーにおいて前記第1方向に沿って延びる角部を押さえるクランプに、バッテリーカバーの保持状態を解除可能に保持する保持部が取り付けられたバッテリーカバーの保持構造であって、前記クランプは、前記第1方向に沿って延びて前記角部を押さえるクランプ板部であって、前記保持部が取り付けられた前記クランプ板部と、前記クランプ板部から前記第2方向に沿って突出する突起部とを備え、前記保持部は、前記第2方向に沿って延びる軸部と、前記軸部に対して前記クランプ板部と反対側に連結された拡幅部であって、前記軸部の径方向における幅が前記軸部の幅よりも大きく、前記バッテリーカバーを保持する保持位置と前記バッテリーカバーの保持を解除する解除位置とに変位する前記拡幅部と、を備え、前記バッテリーカバーには、前記突起部が通される突起挿入孔と、前記軸部が通される軸挿入孔とが形成され、前記保持部によって前記バッテリーカバーが保持されているとき、前記拡幅部が前記保持位置に配置されて、前記軸挿入孔に通された前記軸部の周囲で、前記バッテリーカバーは前記クランプ板部と前記拡幅部との間に挟まれ、前記突起挿入孔に通された前記突起部は、前記鉛直方向および前記第1方向において、前記バッテリーカバーの位置の移動を規制する。
【0007】
上記構成によれば、バッテリーカバーの保持状態を制御する保持部とは別に、鉛直方向および第1方向において、バッテリーカバーの位置の移動を規制する突起部が設けられているため、すべての方向についての車体の振動に起因した荷重が保持部にかかる構成と比較して、こうした荷重が保持部にかかることが抑えられる。その結果、保持部によるバッテリーカバーの保持機能が車体の振動に起因して低下することが抑えられるため、バッテリーカバーの取り付けに対する信頼性を高めることができる。
【0008】
上記構成では、前記鉛直方向において、前記軸部と、前記軸挿入孔を区画する前記バッテリーカバーとの間の距離は、前記突起部と、前記突起挿入孔を区画する前記バッテリーカバーとの間の距離よりも大きく、前記第1方向において、前記軸部と、前記軸挿入孔を区画する前記バッテリーカバーとの間の距離は、前記突起部と、前記突起挿入孔を区画する前記バッテリーカバーとの間の距離よりも大きいことが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、鉛直方向および第1方向において、軸部とバッテリーカバーとの間の距離は、突起部とバッテリーカバーとの間の距離よりも大きい。したがって、鉛直方向および第1方向の振動に起因した荷重は突起部にかかるため、こうした荷重が保持部にかかることが的確に抑えられる。
【0010】
上記構成において、前記拡幅部は、前記第2方向を軸方向として回転可能に構成され、前記軸挿入孔は、前記解除位置での前記拡幅部の挿通を許容し、かつ、前記保持位置での前記拡幅部の挿通を禁止し、前記拡幅部の回転によって、前記拡幅部は前記保持位置と前記解除位置とに変位することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、保持部によるバッテリーカバーの保持とその解除との切り替えを容易に行うことができる。
上記構成において、前記突起部は、第1の突起部であって、前記クランプは、前記クランプ板部から前記第2方向に沿って突出する第2の突起部をさらに備え、前記突起挿入孔は、第1の突起挿入孔であって、前記バッテリーカバーには、前記第2の突起部が通される第2の突起挿入孔がさらに形成され、前記第1の突起挿入孔と前記第2の突起挿入孔とは、前記第1方向に、前記軸挿入孔を挟む位置に形成されていることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、第1の突起部と第2の突起部とは、第1方向に保持部を挟む位置に設けられている。これによれば、車体の振動に起因した荷重が、保持部を挟んだ第1の突起部と第2の突起部とに分散してかかるため、保持部に荷重がかかることが的確に抑えられるとともに、突起部への負荷が偏ることが抑えられる。
【0013】
上記構成において、前記突起部は、前記第1方向と前記第2方向とに沿って広がる平板状を有することが好ましい。
車両の走行時には、鉛直方向に大きな振動が生じやすい。上記構成によれば、突起部は、平面にて鉛直方向の振動を受けるため、突起部にかかる負荷が軽減される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バッテリーカバーの取り付けに対する信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態のバッテリーカバーの保持構造が有する斜視構造を示す分解斜視図である。
図2】一実施形態のバッテリーカバーの保持構造が有する断面構造の一部を示す部分断面図であって、主に保持部の構造を示す図である。
図3】一実施形態のバッテリーカバーの保持構造が有する側面構造の一部を示す側面図であって、主に保持部の構造を示す側面図である。
図4】一実施形態のバッテリーカバーの保持構造が有する側面構造の一部を示す側面図であって、バッテリーカバーとクランプとの位置の関係を示す図である。
図5】変形例のバッテリーカバーの保持構造が有する斜視構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図4を参照して、バッテリーカバーの保持構造の一実施形態について説明する。なお、本実施形態において、バッテリーカバーは、トラック等の大型車に搭載されるバッテリーに被せられるが、バッテリーの搭載される車両はこれに限られない。
【0017】
図1の二点鎖線によって示されるように、箱体形状を有するバッテリー10は、車両のサイドフレーム60に取り付けられた支持台20に載置され、バッテリー10の角部は、支持台20に固定されたクランプ30によって押さえられている。バッテリー10の上面には、バッテリーカバー40が被せられ、バッテリーカバー40の位置は、クランプ30に取り付けられた保持部50によって保持されている。サイドフレーム60において支持台20の取り付けられた面が、取り付け面である。
【0018】
サイドフレーム60の延びる方向は、バッテリーカバーの保持構造を有した車体の長さ方向であって、水平面上にてサイドフレーム60の延びる方向に直交する方向は、車体の幅方向である。本実施形態において、車体の長さ方向は第1方向の一例であり、車体の幅方向は第2方向の一例である。車体の長さ方向と車体の幅方向とに直交する方向は、車体の高さ方向であって、車体の高さ方向は鉛直方向と一致する。
【0019】
支持台20は、バッテリー10の底面を支える底板部21を備えている。底板部21における車体の長さ方向の両端部には、車体の高さ方向の上側に向かって底板部21から延びる2つの側板部が底板部21と一体に形成されている。一方の側板部である前側板部22aがバッテリー10の前側面の一部を覆い、他方の側板部である後側板部22bがバッテリー10の後側面の一部を覆っている。
【0020】
前側板部22aは、前側固定部23aと前側対向部24aとを有し、後側板部22bは、後側固定部23bと後側対向部24bとを有している。前側固定部23a、および、後側固定部23bの各々は、サイドフレーム60に対向する平板形状を有し、固定部材61によってサイドフレーム60に固定されている。
【0021】
前側対向部24a、および、後側対向部24bは、車体の幅方向に沿って広がる板形状を有し、前側対向部24aと後側対向部24bとは、車体の長さ方向において互いに対向している。前側板部22aは、バッテリー10よりもサイドフレーム60に近い位置に前側支持部25aを備え、後側板部22bは、バッテリー10よりもサイドフレーム60に近い位置に後側支持部25bを備えている。これら前側支持部25aと後側支持部25bとは、車体の長さ方向において互いに対向している。
【0022】
クランプ30は、車体の長さ方向に沿って延びるクランプ板部31を備えている。クランプ板部31において車体の長さ方向における前側端部には、前側連結部34aが連結され、クランプ板部31において車体の長さ方向における後側端部には、後側連結部34bが連結されている。前側連結部34aは、クランプ板部31の前側端部と支持台20の前側板部22aとを連結し、後側連結部34bは、クランプ板部31の後側端部と支持台20の後側板部22bとを連結している。
【0023】
クランプ板部31は、長さ方向と直交する断面がL字形状を有する折り曲げ板形状を有し、支持台20の底板部21に対向する板形状を有した上方規制部35と、サイドフレーム60に対向する板形状を有した外側規制部36とを備えている。バッテリー10は、バッテリー10の上面と、バッテリー10の側面の中でサイドフレーム60から最も離れている側面とから構成される角部、すなわち、車体の長さ方向に沿って延びる角部を有し、バッテリー10の角部のほぼ全体をクランプ板部31が覆うように、クランプ板部31は配置されている。そして、クランプ板部31の備える上方規制部35は、車体の高さ方向における上側へバッテリー10が移動することを規制し、クランプ板部31の備える外側規制部36は、車体の幅方向における外側、すなわち、サイドフレーム60から遠ざかる方向へバッテリー10が移動することを規制する。
【0024】
外側規制部36における車体の長さ方向の中央部には、車体の幅方向に沿ってクランプ板部31を貫通する1つの嵌合孔32が形成されている。また、クランプ30は、外側規制部36から車体の幅方向の外側に向けて突出する2つの突起部を備えている。一方の突起部である前側突起部33aと、他方の突起部である後側突起部33bの各々は、車体の長さ方向、および、車体の幅方向に沿って拡がる平板形状を有している。前側突起部33aと後側突起部33bとは、嵌合孔32が形成されている部分を挟んで、車体の長さ方向に沿って並んでいる。
【0025】
嵌合孔32には、保持部50が嵌められている。保持部50は、嵌合孔32に嵌められる基部51と、基部51に回転可能に支持される回転部52とを備えている。回転部52は、車体の幅方向に沿って延びる軸部と、軸部から張り出したレバーと備え、レバーは、軸部を回転軸として回転する。
【0026】
バッテリーカバー40は、支持台20の底板部21に対向する上カバー41と、上カバー41から下方に延設されてサイドフレーム60と対向する板形状を有した外カバー42とを備えている。
【0027】
外カバー42における車体の長さ方向の中央部には、回転部52が通される貫通孔である軸挿入孔43が形成されている。軸挿入孔43の有する大きさ、および、形状は、回転部52のレバーが、レバーによってバッテリーカバー40が保持される保持位置に位置するときに、レバーが軸挿入孔43を通ることを禁止し、かつ、レバーが、レバーによるバッテリーカバー40の保持が解除される解除位置に位置するときに、レバーが軸挿入孔43を通ることを許容する。
【0028】
また、外カバー42には、クランプ30の前側突起部33aが通される貫通孔である前側突起挿入孔44aと、クランプ30の後側突起部33bが通される貫通孔である後側突起挿入孔44bとが形成されている。前側突起挿入孔44aと後側突起挿入孔44bとは、軸挿入孔43が形成されている部分を挟んで、車体の長さ方向に沿って並んでいる。
【0029】
前側突起挿入孔44aは、車体の長さ方向に沿って延びる長孔であって、こうした前側突起挿入孔44aの有する大きさ、および、形状は、前側突起挿入孔44aに通された前側突起部33aが、車体の高さ方向に沿って移動すること、および、車体の長さ方向に沿って移動することを規制する。後側突起挿入孔44bもまた、車体の長さ方向に沿って延びる長孔であって、こうした後側突起挿入孔44bの有する大きさ、および、形状は、後側突起挿入孔44bに通された後側突起部33bが、車体の高さ方向に沿って移動すること、および、車体の長さ方向に沿って移動することを規制する。
【0030】
そして、バッテリーカバー40が支持台20、および、クランプ30に取り付けられるとき、レバーが解除位置にある状態で回転部52が軸挿入孔43に通され、前側突起部33aが前側突起挿入孔44aに通され、後側突起部33bが後側突起挿入孔44bに通される。この状態から、回転部52のレバーが回転されて、レバーが解除位置から保持位置に変位し、これによって、バッテリーカバー40の位置が保持される。
【0031】
バッテリーカバー40が取り付けられた状態において、上カバー41は、バッテリーの上面を覆い、外カバー42は、バッテリー10の側面の中でサイドフレーム60から最も離れている側面の一部を覆う。上カバー41の中でサイドフレーム60に近い部分は、支持台20の側板部22a,22bが有する支持部25a,25bによって支えられる。
【0032】
なお、支持台20とクランプ30とは金属製であることが好ましく、バッテリーカバー40と保持部50とは樹脂製であることが好ましい。
図2および図3を参照して、保持部50の詳細な構成について説明する。
【0033】
図2に示されるように、基部51は、爪部53を備えており、爪部53が外側規制部36の嵌合孔32に引っ掛けられることによって、保持部50はクランプ30に固定される。また、基部51は、回転部52を回転可能に支持する軸受部54を備えている。
【0034】
回転部52は、上記軸部55と、拡幅部の一例である上記レバー56とを備えている。レバー56は、軸部55に対してクランプ板部31とは反対側に連結され、軸部55の径方向において、レバー56の少なくとも一部の幅は、軸部55の幅よりも大きい。軸部55は、軸受部54に支持されて90度の範囲で回転し、レバー56は、軸部55とともに回転する。バッテリーカバー40が取り付けられるとき、軸部55とレバー56とが軸挿入孔43に挿入される。レバー56は、軸挿入孔43の外側に出され、軸部55は、軸挿入孔43を区画するバッテリーカバー40の外カバー42によって囲まれる。
【0035】
図3に示されるように、車体の幅方向の外側から見て、レバー56は、一方向に延びる略矩形状を有している。レバー56は、軸部55の回転に伴って、レバー56が解除位置に位置する角度から、レバー56が保持位置に位置する角度の間の90度の範囲内で回転する。レバー56の延びる方向が車体の長さ方向に一致するときのレバー56の位置が、解除位置であり、レバー56の延びる方向が車体の高さ方向に一致するときのレバー56の位置が、保持位置である。なお、図3では、保持位置にあるときのレバー56を二点鎖線で示している。
【0036】
レバー56が解除位置にあるとき、車体の幅方向の外側から見て、レバー56は、軸挿入孔43が形成されている領域内に収まる。この状態で、レバー56は、軸挿入孔43から出し入れされる。一方、レバー56が保持位置にあるとき、車体の幅方向から見て、レバー56の一部は、軸挿入孔43が形成されている領域からはみ出す。このとき、軸挿入孔43を区画するバッテリーカバー40の外カバー42にレバー56が引っ掛かるため、レバー56は軸挿入孔43から抜けなくなる。すなわち、保持部50は、軸挿入孔43に通された軸部55の周囲で、クランプ板部31とレバー56との間にバッテリーカバー40の外カバー42を挟むことによって、バッテリーカバー40を保持する。
【0037】
なお、レバー56は、解除位置と保持位置とのいずれか一方の位置で係止され、これらの位置からレバー56を回転させるためには所定の力を要するように、軸部55が軸受部54に支持されていることが好ましい。これによれば、バッテリーカバー40の取り付け時や車両の走行時に、レバー56が解除位置と保持位置との間に位置することが抑えられるため、保持部50によるバッテリーカバー40の保持機能の低下が抑えられる。
【0038】
図4を参照して、本実施形態のバッテリーカバーの保持構造がもたらす作用について説明する。なお、図4は、クランプ30とバッテリーカバー40と保持部50とが組み付けられ、保持部50が保持位置にある状態において、保持部50および2つの突起部33a,33bの周囲を車体の幅方向から見た図であって、保持部50のレバー56を二点鎖線で示している。
【0039】
図4に示されるように、車体の高さ方向において、軸挿入孔43に通された保持部50の軸部55と、外カバー42の上端部との間の距離を距離d1Aとする。また、軸部55と外カバー42の下端部との間の距離を距離d2Aとする。さらに、車体の長さ方向において、軸部55と外カバー42の前側端部との間の距離を距離d3Aとし、軸部55と外カバー42の後側端部との間の距離を距離d4Aとする。
【0040】
また、前側突起挿入孔44aに前側突起部33aが通された状態において、前側突起部33aと外カバー42との間には間隙が形成される。このとき、車体の高さ方向において、前側突起部33aの上面と外カバー42の上端部との間の距離を距離d1Bとし、前側突起部33aの下面と外カバー42の下端部との間の距離を距離d2Bとする。また、車体の長さ方向において、前側突起部33aの前端面と外カバー42の前側端部との間の距離を距離d3Bとし、前側突起部33aの後端面と外カバー42の後側端部との間の距離を距離d4Bとする。
【0041】
同様に、後側突起挿入孔44bに後側突起部33bが通された状態において、後側突起部33bと外カバー42との間には間隙が形成される。このとき、車体の高さ方向において、後側突起部33bの上面と外カバー42の上端部との間の距離を距離d1Cとし、後側突起部33bの下面と外カバー42の下端部との間の距離を距離d2Cとする。また、車体の長さ方向において、後側突起部33bの前端面と外カバー42の前側端部との間の距離を距離d3Cとし、後側突起部33bの後端面と外カバー42の後側端部との間の距離を距離d4Cとする。
【0042】
軸部55と外カバー42との間の距離d1Aは、2つの突起部33a,33bの各々と外カバー42との間の距離d1B,d1Cよりも大きい。同様に、軸部55と外カバー42との間の距離d2Aは、2つの突起部33a,33bの各々と外カバー42との間の距離d2B,d2Cよりも大きく、軸部55と外カバー42との間の距離d3Aは、2つの突起部33a,33bの各々と外カバー42との間の距離d3B,d3Cよりも大きい。そして、軸部55と外カバー42との間の距離d4Aは、2つの突起部33a,33bの各々と外カバー42との間の距離d4B,d4Cよりも大きい。
【0043】
このように、車体の高さ方向において、軸部55と外カバー42との間の距離は、2つの突起部33a,33bの各々と外カバー42との間の距離よりも大きい。それゆえ、車両が走行する際に、車体の高さ方向の振動が生じたとき、外カバー42は2つの突起部33a,33bに接触し、外カバー42が軸部55と接触することは抑えられる。
【0044】
また、車体の長さ方向において、軸部55と外カバー42との間の距離は、2つの突起部33a,33bの各々と外カバー42との間の距離よりも大きい。それゆえ、車両が走行する際に、車体の長さ方向の振動が生じたとき、外カバー42は2つの突起部33a,33bに接触し、外カバー42が軸部55と接触することは抑えられる。
【0045】
結果として、車体の高さ方向および長さ方向の振動に起因した荷重は、2つの突起部33a,33bにかかり、こうした荷重が保持部50にかかることが抑えられる。なお、保持部50は、車体の幅方向の振動を受けるものの、車体の幅方向の振動は、車体の高さ方向や長さ方向の振動と比較して小さいため、保持部50が車体の高さ方向や長さ方向の振動を受ける場合と比較して、保持部50にかかる負荷は小さい。
【0046】
このように、本実施形態では、車体の振動に起因した荷重を主に受ける構成と、バッテリーカバー40の保持状態を制御する構成とが、2つの突起部33a,33bと保持部50とに分けられているため、保持部50に車体の振動に起因した荷重がかかることが抑えられる。その結果、保持部50によるバッテリーカバー40の保持機能が振動に起因して低下することが抑えられるため、バッテリーカバー40の取り付けに対する信頼性を高めることができる。また、荷重を受ける2つの突起部33a,33bが金属製であり、荷重を受け難い保持部50が樹脂製であるため、荷重に対する強度を高めつつ、製造に要するコストを低減することができる。
【0047】
従来のように、バッテリーカバー40の保持状態を制御する構成に、車体の振動に起因した荷重が大きくかかる場合には、上記保持状態を制御する構成を車体の振動に耐えうる構造にする必要があった。この場合、バッテリーカバー40の保持構造が複雑になり、また、バッテリーカバー40を取り付ける際に、上記保持状態を制御する構成を操作するために必要な力が増大することが多い。これに対し、本実施形態によれば、保持部50の操作に必要な力の大きさを抑えつつ、バッテリーカバー40の取り付けに対する信頼性を高めることができる。
【0048】
また、本実施形態では、クランプ30とバッテリーカバー40とが重なる部分に、バッテリーカバー40の保持構造が設けられているため、この保持構造は、バッテリーカバー40の端部の形状に関わらず、適用することができる。例えば、図5に示されるように、外カバー42が、バッテリー10の側面の中でサイドフレーム60から最も離れている側面の全体を覆う形状に形成されている場合であっても、本実施形態のバッテリーカバー40の保持構造が適用できる。したがって、バッテリーカバー40の形状に複数の種類がある場合であっても、バッテリーカバー40の形状ごとに保持構造の構成を変える必要がないため、バッテリーカバー40を容易に形状の異なるカバーに交換することができる。また、サイドフレーム60から最も離れた位置に保持構造が設けられているため、保持構造の操作も容易となる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のバッテリーカバーの保持構造によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)バッテリーカバー40の保持状態を制御する保持部50とは別に、車体の長さ方向および高さ方向において、バッテリーカバー40の位置の移動を規制する突起部33a,33bが設けられているため、保持部50に車体の振動に起因した荷重がかかることが抑えられる。その結果、車体の振動に起因して、保持部50によるバッテリーカバー40の保持機能が低下し、バッテリーカバー40の保持が解除されることが抑えられるため、バッテリーカバー40の取り付けに対する信頼性を高めることができる。
【0050】
(2)車体の高さ方向、および、車体の長さ方向において、軸部55とバッテリーカバー40との間の距離は、2つの突起部33a,33bの各々とバッテリーカバー40との間の距離よりも大きい。したがって、車体の高さ方向および長さ方向の振動に起因した荷重は、2つの突起部33a,33bにかかるため、こうした荷重が保持部50にかかることが的確に抑えられる。
【0051】
(3)軸挿入孔43は、解除位置でのレバー56の挿通を許容し、かつ、保持位置でのレバー56の挿通を禁止する。そして、レバー56の回転によって、レバー56が保持位置と解除位置とに変位するため、バッテリーカバー40の保持とその解除との切り替えを容易に行うことができる。その結果、こうした切り替えの確実性が高められるため、バッテリーカバー40の取り付けに対する信頼性をより高めることができる。
【0052】
(4)2つの突起挿入孔44a,44bは、車体の長さ方向に軸挿入孔43を挟む位置に形成され、2つの突起部33a,33bは、車体の長さ方向に保持部50を挟む位置に設けられている。こうした構成によれば、車体の振動に起因した荷重が、保持部50を挟んだ2つの突起部33a,33bに分散してかかるため、保持部50に荷重がかかることが的確に抑えられるとともに、2つの突起部33a,33bへの負荷が偏ることが抑えられる。
【0053】
(5)2つの突起部33a,33bは、車体の幅方向と長さ方向とに沿って広がる平板状を有する。車両の走行時には、車体の高さ方向に大きな振動が生じやすい。上記構成によれば、2つの突起部33a,33bは、平面にて車体の高さ方向の振動を受けるため、2つの突起部33a,33bにかかる負荷が軽減される。また、2つの突起部33a,33bが平板状であれば、2つの突起部33a,33bを別途接合せずともクランプ板部31と一体に形成することができるため、クランプ30の製造も容易となる。
【0054】
(変形例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・クランプ30の有する突起部の数や位置は上記実施形態の態様に限られない。突起部の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、突起部は、例えば、車体の高さ方向に、保持部50を挟む位置に設けられていてもよい。
【0055】
・クランプ30の突起部の形状は、上記実施形態の形状に限られない。例えば、突起部は、円柱状に形成されていてもよい。
・保持部50の構成は、バッテリーカバー40の保持状態を解除可能に保持する構成であれば、上記実施形態の構成に限られない。保持部50は、軸挿入孔43に通された軸部55の周囲で、クランプ板部31とレバー56との間にバッテリーカバー40を挟むことによって、バッテリーカバー40を保持し、レバー56の変位によって、バッテリーカバー40の保持を解除する構成であればよい。例えば、レバー56は、軸部55よりも径方向の幅が大きい円盤状に形成され、軸部55と基部51とが螺合されることによって、クランプ板部31とレバー56との間にバッテリーカバー40が挟まれてもよい。この場合、軸部55と基部51とが螺合されているときのレバー56の位置が保持位置であり、螺合が解除されて基部51から軸部55およびレバー56が取り外されたとき、レバー56は解除位置に位置する。
【0056】
・支持台20は、サイドフレーム60に限らず、クロスメンバーに取り付けられてもよいし、車両がこうしたフレームを有さない乗用車等の車両である場合には、ボディに取り付けられてもよい。要は、支持台20が取り付けられる取り付け面は、鉛直面であれば、車体のどの部分に設定されてもよい。このとき、取り付け面に平行な方向であって鉛直方向と直交する方向が第1方向として設定され、第1方向と鉛直方向とに直交する方向が第2方向として設定される。そして、クランプ板部31は第1方向に沿って延び、突起部33a,33bは第2方向に沿って突出する。突起部33a,33bは、鉛直方向および第1方向において、バッテリーカバー40の位置の移動を規制する。こうした構成によれば、車体の振動に起因した荷重は、突起部33a,33bと保持部50とに分散してかかるため、すべての方向についての振動に起因した荷重を保持部50が受ける構成と比較して、保持部50に車体の振動に起因した荷重がかかることが抑えられる。したがって、バッテリーカバー40の取り付けに対する信頼性が高められる。
【符号の説明】
【0057】
10…バッテリー、20…支持台、30…クランプ、31…クランプ板部、33a,33b…突起部、40…バッテリーカバー、43…軸挿入孔、44a,44b…突起挿入孔、50…保持部、55…軸部、56…レバー、60…サイドフレーム。
図1
図2
図3
図4
図5