(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306501
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】テンプレートおよびテンプレートを基板と位置合わせするための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20180326BHJP
B29C 39/04 20060101ALI20180326BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
H01L21/30 502M
B29C39/04
B29C33/38
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-508519(P2014-508519)
(86)(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公表番号】特表2014-522100(P2014-522100A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】US2012035012
(87)【国際公開番号】WO2012149029
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年3月26日
(31)【優先権主張番号】61/478,728
(32)【優先日】2011年4月25日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503193362
【氏名又は名称】キヤノン ナノテクノロジーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】クスナトディノヴ,ニヤズ
(72)【発明者】
【氏名】セリニディス,コスタ
(72)【発明者】
【氏名】イムホフ,ジョセフ・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ラブレイク,ドウェイン・エル
【審査官】
赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0092599(US,A1)
【文献】
特開2009−298041(JP,A)
【文献】
特開2007−103915(JP,A)
【文献】
特開2012−064810(JP,A)
【文献】
特表2007−506281(JP,A)
【文献】
特開2008−221822(JP,A)
【文献】
特開2008−230232(JP,A)
【文献】
特開2004−288802(JP,A)
【文献】
特開2010−287625(JP,A)
【文献】
特開2011−249567(JP,A)
【文献】
特表2013−519236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20;9/00−9/02
B29C 33/00−33/76;43/00−43/58;
57/00−59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された成形可能材料をパターニングするためのインプリントテンプレートであって、
第1の側及び第2の側を有する本体と、
パターニングされた表面を有するモールドであって、前記モールドが前記本体の前記第1の側に配置されており、前記パターニングされた表面が第1のパターンを画定するフィーチャ領域を有する、モールドと、
前記フィーチャ領域の外側の前記パターニングされた表面に形成されたテンプレート位置合わせマークであって、入射光の波長600nmにおいて2.8よりも大きいk値を有する高吸収材を含む複数のフィーチャを有する、テンプレート位置合わせマークと、
を含み、
前記テンプレート位置合わせマークのフィーチャが複数の凹みを含み、前記高吸収材が前記凹み内にのみ配置される、
テンプレート。
【請求項2】
前記高吸収材が入射光の少なくとも60%を吸収する、請求項1に記載のテンプレート。
【請求項3】
前記入射光の波長が500〜800nmである、請求項1または2に記載のテンプレート。
【請求項4】
前記高吸収材が紫外線(UV)放射を透過する、請求項1〜3の何れか一項に記載のテンプレート。
【請求項5】
前記高吸収材が、入射光の波長600nmにおいて3.3よりも大きいk値を有する、請求項1〜4の何れか一項に記載のテンプレート。
【請求項6】
前記高吸収材が、アルミニウム(Al)、AlxSiy、AlxSiyTiz、AlxCuy、AlxCryを含むアルミ合金、ロジウム(Rh)、クロム(Cr)、イリジウム(Ir)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)または鉄(Fe)の何れかを更に含む、請求項1〜5の何れか一項に記載のテンプレート。
【請求項7】
前記高吸収材が、アルミニウム(Al)、ロジウム(Rh)、クロム(Cr)またはニオブ(Nb)の何れかを更に含む、請求項1〜5の何れか一項に記載のテンプレート。
【請求項8】
前記高吸収材がアルミニウム(Al)を更に含む、請求項1〜5の何れか一項に記載のテンプレート。
【請求項9】
アルミニウム(Al)の厚さが少なくとも3.9nm、ロジウム(Rh)の厚さが少なくとも8.4nm、クロム(Cr)の厚さが少なくとも10.7nm、ニオブ(Nb)の厚さが少なくとも15nmである、
請求項7記載のテンプレート。
【請求項10】
インプリントリソグラフィプロセスにおいてテンプレートを基板と位置合わせするための方法であって、
基板位置合わせマークを有する基板を設けるステップと、
前記基板上に重合可能材料を堆積するステップと、
請求項1〜9の何れか一項に記載のテンプレートを前記基板から離間した位置に配置するステップと、
前記重合可能材料が前記テンプレート位置合わせマークフィーチャを充填するように前記テンプレートと前記基板との間の距離を調節するステップと、
前記テンプレート位置合わせマークと前記基板位置合わせマークとの間のオーバレイ誤差を決定するステップと、
前記テンプレート位置合わせマークと前記基板位置合わせマークとが位置合わせされるように前記基板に対する前記テンプレートの前記位置を変えるステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
オーバレイ誤差を決定する前記ステップと、前記基板に対する前記テンプレートの前記位置を変える前記ステップが、前記重合可能材料が前記テンプレート位置合わせマークフィーチャに充填される際に実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
オーバレイ誤差を決定する前記ステップが、モアレベースパターンを発生させるため前記位置合わせマークに照光するステップと、前記オーバレイ誤差を決定するため、前記発生したモアレベースパターンを分析するステップと、を更に含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記発生したモアレベースパターンが少なくとも0.3のコントラスト値を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記テンプレート位置合わせマークの凹み内における前記高吸収材の厚さが5nm未満である、請求項10〜13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
インプリントリソグラフィプロセスにおいてパターニングされた層を基板上に形成する方法であって、
請求項10〜14の何れか一項に記載の方法による、前記テンプレートと前記基板を位置合わせするステップと、
前記パターニングされた層を形成するために前記重合可能材料を硬化させるステップと、
前記形成されたパターニングされた層から前記テンプレートを剥離するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年4月25日に出願された米国特許仮出願第61/478,728号明細書の優先権を主張するものであり、その全体が本明細書の内容となる。
【背景技術】
【0002】
ナノファブリケーションは、約100ナノメートルまたはそれ以下のフィーチャを有する非常に小さな構造の製作を含む。ナノファブリケーションがかなりの影響を与えてきた1つの用途は集積回路の処理におけるものである。半導体処理産業がより高い生産収率を追求し続ける一方で、基板上に形成される単位面積当たりの回路は増加しているため、ナノファブリケーションはますます重要になっている。ナノファブリケーションは、より優れたプロセス制御を可能にする一方で、形成される構造の最小フィーチャ寸法の継続的な低減を可能にする。ナノファブリケーションが利用されてきた他の開発分野には、バイオテクノロジー、光学技術、機械系などを含む。
【0003】
今日使用されている例示的なナノファブリケーション技術は、一般に、インプリントリソグラフィと呼ばれる。例示的なインプリントリソグラフィプロセスは米国特許出願公開第2004/0065976号明細書、米国特許出願公開第2004/0065252号明細書及び米国特許第6,936,194号明細書などの多数の出版物に詳細に記載されており、これらの事項は本明細書中に記載してある。
【0004】
前述の米国特許出願公開及び米国特許の各々に開示されているインプリントリソグラフィ技術は、成形可能な(重合可能な)層に内レリーフパターンを形成すること、及びこのレリーフパターンに対応するパターンを下の基板に転写することを含む。基板は、パターニングプロセスを容易にするために所望の配置を得るため移動ステージに結合してもよい。パターニングプロセスでは、基板から間隔をおいて配置されたテンプレートと、テンプレートと基板との間に塗布される成形可能な液体とを使用する。成形可能な液体を硬化し、成形可能な液体に接触しているテンプレートの表面の形状に一致するパターンを有する剛体層を形成する。硬化後、テンプレートと基板とが間隔をおいて配置されるように、テンプレートは剛体層から剥離される。基板及び硬化層は、その後、硬化層のパターンに一致するレリーフ像を基板に転写するための追加プロセスに供される。
【0005】
本発明の特徴及び利点を詳細に理解するため、添付の図面に示される実施形態の参照によって本発明の実施形態の更に特定の説明を行う。しかしながら、添付の図面は典型的な本発明の実施形態を示しているにすぎず、従って、その範囲を限定するものとみなさないため、本発明は、他の同様の効果的な実施形態も許容できるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】パターニングされた層を有する、
図1に示される基板の簡略側面図を示す。
【
図3A】パターンフィーチャ及び位置合わせマークを有する、テンプレートの簡略底面図を示す。
【
図4A】成形可能材料が部分的に充填された対応する位置合わせマークを有するテンプレート及び基板の簡略側面図を示す。
【
図5】本発明の一実施形態による、成形可能材料が部分的に充填された対応する位置合わせマークを有するテンプレート及び基板の簡略側面図を示す。
【
図6A-6B】簡略化した位置合わせマーク格子の回折条件及び電界を示す。
【
図7A-7B】本発明の一実施形態による、簡略化した位置合わせマーク格子の回折条件及び電界を示す。
【
図8】本発明の実施形態による、位置合わせマークから発生したコントラストレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図面、特に
図1を参照して、基板12上にレリーフパターンを形成するために使用されるリソグラフィシステム10を示す。基板12を基板チャック14に結合してもよい。図示のように、基板チャック14は真空チャックである。しかしながら、基板チャック14は、真空式、ピン型、溝型、静電式、電磁式及び/または同様のものを含むが、これらに限定されない任意のチャックであってもよい。米国特許第6,873,087号明細書に例示的に示されるチャックもこの種のものである。
【0008】
基板12及び基板チャック14をステージ16によって更に支持してもよい。ステージ16は、x軸、y軸及びz軸に沿った並進移動及び/または回転移動を提供してもよい。ステージ16、基板12及び基板チャック14を、また、基台(図示せず)上に配置してもよい。
【0009】
基板12から間隔をおいて配置されているのはテンプレート18である。テンプレート18は第1の側及び第2の側を有する本体を含んでもよく、一方の側には、そこから基板12に向かって延びるメサ20を有する。メサ20はその上にパターニング表面22を有する。更に、メサ20をモールド20と呼んでもよい。あるいは、テンプレート18をメサ20なしで形成してもよい。
【0010】
テンプレート18及び/またはモールド20は、石英ガラス、石英、シリコン、有機ポリマー、シロキサン重合体、ホウケイ酸ガラス、フルオロカーボン重合体、金属、硬化サファイア及び/または同様のものを含むが、これらに限定されないような材料から形成してもよい。図示のように、パターニング表面22は、複数の間隔をおいて配置された凹部24及び/または凸部26によって画定されるフィーチャを含むが、本発明の実施形態はそのような構成(例えば、平面)に限定されるものではない。パターニング表面22は基板12上に形成されるパターンの基礎を形成する任意の原パターンを画定してもよい。
【0011】
テンプレート18をチャック28に結合してもよい。チャック28は、真空式、ピン型、溝型、静電式、電磁式及び/またはその他の類似のチャック型として構成してもよいが、それらに限定されるものではない。例示的なチャックについては米国特許第6,873,087号明細書に更に記載されている。また、チャック28及び/またはインプリントヘッド30を、テンプレート18の動きを容易にするよう構成することができるようにチャック28をインプリントヘッド30に結合してもよい。
【0012】
システム10は流体分注システム32を更に含んでもよい。流体分注システム32を、成形可能材料34(例えば、重合可能材料)を基板12上に堆積させるために使用してもよい。液滴分注、スピンコーティング、浸漬コーティング、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、薄膜堆積、厚膜堆積及び/または同様のものなどの技術を使用して成形可能材料34を基板12上に配置してもよい。設計指針に応じて、モールド22と基板12との間に所望の体積を画定する前及び/または後に成形可能材料34を基板12上に配置してもよい。成形可能材料34は、バイオ分野、太陽電池産業、電池産業及び/または機能性ナノ粒子を必要とする他の産業内における使用を有する機能性ナノ粒子であってもよい。例えば、米国特許第7,157,036号明細書及び米国特許出願公開第2005/0187339号明細書に記載されているように、成形可能材料34は単量体混合物を含んでもよい。これら明細書の両方は本願に対する先行技術として考えてよい。また、成形可能材料34は、生体材料(例えば、PEG)、太陽電池材料(例えば、N型材料、P型材料)及び/または同様のものを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。
【0013】
図1及び
図2を参照すると、システム10は、エネルギー40を経路42に沿って案内するように結合されたエネルギー源38を更に含んでもよい。インプリントヘッド30及びステージ16はテンプレート18及び基板12を経路42と重ねて配置するように構成してもよい。システム10は、ステージ16、インプリントヘッド30、流体分注システム32及び/または源38と通信するプロセッサ54によって調整してもよく、かつメモリ56に記憶されたコンピュータ可読プログラムにおいて動作してもよい。
【0014】
インプリントヘッド30、ステージ16の何れかまたは両方はモールド20と基板12との間の距離を変化させて、それらの間に成形可能材料34により充填された所望の体積を画定する。例えば、インプリントヘッド30は、モールド20が成形可能材料34に接触するようにテンプレート18に力を印加してもよい。所望の体積が成形可能材料34で充填された後、源38は、紫外線放射などのエネルギー40を生成し、成形可能材料34を硬化及び/または架橋して基板12の表面44及びパターニング表面22の形状に一致させ、パターニングされた層46を基板12上に画定する。パターニングされた層46は、残留層48ならびに凸部50及び凹部52として示される複数のフィーチャを含んでもよく、凸部50は厚さt
1を有し、残留層は厚さt
2を有する。
【0015】
上述のシステム及びプロセスは、米国特許第6,932,934号明細書、米国特許第7,077,992号明細書、米国特許第7,179,396号明細書及び米国特許第7,396,475号明細書に記載されるインプリントリソグラフィプロセス及びシステムにおいて更に使用してもよい。これら明細書の全ては本明細書に記載された本発明を理解する上で参考になる。
【0016】
位置合わせマークは、基板上の正確な位置へのパターン転写を容易にし、テンプレートと基板との間のあらゆるオーバレイ誤差を修正するため、成形可能材料34にインプリントする前にテンプレート18と基板12の位置合わせを補助してもよい。複数のリソグラフィ工程におけるフィーチャの位置合わせ及び整合が全体的なプロセスの成功及びデバイス製作には重要である。フィーチャのサイズがこれまで以上に小さな寸法に達しているため、リソグラフィ配置の精度に対する要求は多大なものになっている。特にインプリントリソグラフィ法に関しては、テンプレート、基板及び成形可能材料の機械的相互作用によって位置合わせが更に複雑化する。パターン転写の簡易化において役立ちうる例示的な位置合わせシステム及びプロセスについては、米国特許出願第12/175,258号明細書、米国特許出願第11/695,850号明細書、米国特許出願第11/347,198号明細書、米国特許出願第11/373,533号明細書、米国特許出願第10/670,980号明細書、米国特許出願第10/210,894号明細書及び米国特許出願第10/210,780号明細書に更に記載されている。これら明細書の全てはその全体が本明細書中の内容となる。一般に、このような位置合わせマークは、例えば、成形可能材料34と実質的に同様の屈折率を有する媒体である石英または石英ガラスにエッチングしてもよい。従って、位置合わせフィーチャが(硬化前または後のいずれに関わらず)成形可能材料34で完全に充填された場合、位置合わせフィーチャを可視スペクトル内において分解する必要がある光学的コントラストはもはや存在しない。つまり、インプリント中、テンプレート位置合わせフィーチャが成形可能材料で完全に充填されると、一方では、石英または石英ガラステンプレート、他方では、成形可能材料(例えば、有機レジスト材料)の厳密に整合させた屈折率の値により、可視コントラストの欠如が生じる。
【0017】
パターニングされたフィーチャ領域及び成形可能材料から位置合わせマークを分離する手法は、モートと呼ばれることもある深くエッチングされたフィーチャを使用して実施されてきた。このような手法を使用すると、一般的な可視照明方法により可視化するため位置合わせマークは成形可能材料34から分離されたままとなる傾向がある。その内容は米国特許第7,309,225号明細書に更に記載されているように、例えば、位置合わせマークを成形可能材料34から分離するためにトレンチを使用してもよい。しかしながら、トレンチに必要なスペースの最小量は、一般に、典型的な半導体スクライブ領域、即ち、ウェーハ加工において計量及び位置合わせマークに従来配分されるスペースよりも大きい。例えば、トレンチの幅に加え、流体マークの干渉の除去に必要とされる位置合わせマークとエッジとの間の最小距離は、一般に、そのような領域に分配されるものよりも多くのスペースを必要とする。更に、そのようなトレンチを設けると、均一性及び一定のフィーチャ密度が重要な特性となりうる化学機械的平坦化(CMP)プロセス、研磨プロセス及び/またはエッチングプロセスなどのいくつかのプロセスにおいては不利益となり得る大きな開口スペースを、基板12上に生じさせることになる。そのようなトレンチ領域は、また、欠陥の主要位置である。例えば、成形可能材料の蒸気が経時的にこれら領域内に堆積し蓄積するおそれがあるため、このような開口領域はより汚損の影響を受けやすい。
【0018】
このようなトレンチまたは大きな開口スペースの必要を軽減するため、位置合わせマークは高コントラスト材料で形成されうる。位置合わせマークを形成するために使用される高コントラスト材料(HCM)は成形可能材料34と異なる屈折率を有してもよい。従って、これら位置合わせマークは位置合わせプロセスのため成形可能材料34が存在する場合であっても可視のままであってよい。このような高コントラストの位置合わせマークはテンプレート18の一次パターニングフィーチャと同じ工程内でパターニングしてもよく、同じ工程内でパターニングすることによってパターン配置エラーを最小にしてもよい。これら位置合わせマークは、一般に、基板12に形成された一次フィーチャとほぼ同じ深さまでエッチングしてもよい。米国特許出願公開第2010/0092599号明細書は、主要パターンとほぼ同じ工程中にパターニングされる単一層または複数層を利用した高コントラストマークの加工技術について記載している。同様に米国特許出願公開第2011/0192302号明細書は、位置合わせマークと一次フィーチャの単一工程パターニングに続いて高コントラスト材料を別個の層として塗布することを含む更なる加工技術について記載している。しかしながら、本明細書中に更に記載するように、高屈折率を有するこのような高コントラスト位置合わせマークの使用は、インプリントリソグラフィプロセスのスループットを制限する可能性がある。
【0019】
図3A及び
図3Bは、パターニングされたフィーチャ領域36及びパターニングされたフィーチャ領域36の角の周辺部にある位置合わせマーク60を備えた、パターニングされたモールド20を有するテンプレート18を示す。
図4Aに示すように、位置合わせマーク60は凹部64及び凸部66を含み、高屈折率を有する高コントラスト材料62が凹部64内に配置されている。基板12は位置合わせマーク60と重なる対応する位置合わせマーク80を含む。
図4Aに更に示すように、成形可能材料34は位置合わせマーク60の凹部64に延展及び充填されている工程の最中である。
図4Bは、
図4Aの部分的に充填された状態の位置合わせマークによって生じた像及びそのコントラストを図示するものである。
【0020】
本明細書中において、光学的コントラストまたはコントラストとは、モアレパターンの最大強度と最小強度との間の正規化された差を意味する。具体的には、コントラストは、以下のように定義される。
コントラスト=(I
max−I
min)/I
max
モアレパターンに沿う強度変化は、
図1に暗領域及び明領域として示されるアラインマークの凸状部分及び凹状部分などのテンプレート上のアラインマークの異なる領域と基板上の対応するパターンの突出部分及び低下部分は散乱光に異なる影響を及ぼすという事実に起因する。これら全ての散乱領域からの光の重なりによりモアレパターンに沿った強度変化が認められることになる。このような重なりには光振幅及び光位相差の両方が重要である。
【0021】
示されるように、成形可能材料34による位置合わせマーク60パターンの充填の移行中、信号は歪む。
図4Cは、更に、
図4Bから再生された上部モアレストリップの強度分布(破線S
1)を概略的に示す、そのような信号歪みの概略図を提供する。この強度は
図4Cのモアレパターンの像に重なる白色の破線Dに沿って得たものである。位置合わせに有用な良好なモアレパターンは
図4Cの実線S
2に類似する、また更には最大強度及び最小強度内の信号を発生させる。位置合わせマークを、重合可能または成形可能材料(同様に、本明細書中において、「液体レジスト」または「レジスト」と呼ばれる)で充填すると、最大強度及び最小強度の両方(破線S
1)、及び結果的にコントラストが変化する。マークが完全に充填され、一様かつ均一なモアレ信号が得られる(実線S
2)まで位置合わせプロセスを待たなければならない。この移行充填時間中の位置合わせ情報を認識するために信号処理を使用する試みがいくつかなされてきたが、その信頼性は高くない。従って、テンプレート18を基板12と正確に位置合わせするプロセスでは、実際の位置合わせが実施されうる前に位置合わせマーク60が成形可能材料34により完全に充填されるまで待つ必要があり、これが更にインプリントリソグラフィプロセスのスループットに影響を及ぼす。更に、このようなマークは一部のみ充填される場合があるため、像が歪んだままとなり、従って、位置合わせ全体に悪影響を及ぼす。
【0022】
本明細書中に記載されるのは、位置合わせコントラスト信号に対する位置合わせマーク内への成形可能材料の延展及び充填の移行による影響を大幅に低減する十分な厚さの高光吸収材(即ち高消衰係数を有する材料)を使用するテンプレート位置合わせマーク及び関連のプロセスである。これにより、パターニングされたフィーチャ及び/または位置合わせマーク自体に成形可能材料が延展され、かつ充填される間にテンプレートの位置合わせが可能になり、これにより更にはより高速のスループットが可能になる。
図5は、このようなテンプレート位置合わせマークの一実施形態を示す。位置合わせマーク160を有するテンプレート118が基板12から間隔をおいて配置される。位置合わせマークは凹部164及び凸部166を含み、高吸収材162が凹部164内に配置されている。同様に、基板12は、位置合わせマーク160に重なる対応する位置合わせマーク80を含み、位置合わせマーク160及び位置合わせマーク180に成形可能材料34が部分的に充填されている。更に示されるように、高吸収材162に当たる可視光線Lは吸収されるが、非常に狭い充填ギャップにより、材料162間を通過して戻る(即ち、凸部166を通る)光の光路はレジストの存在により僅かしか変化しない。従って、充填は位置合わせ信号に大きな影響を及ぼさない。
【0023】
いくつかの実施形態では、高吸収材を位置合わせマークフィーチャの上部または表面に堆積させることができる。しかしながら、上部表面堆積法は残留層厚さの大きなばらつきを招く可能性がある。つまり、上部または表面の高吸収材層がアラインマーク領域のみに堆積され、逆にパターンフィーチャの高さが不変である場合、結果として形成されるインプリントされたパターンの残留層厚さにムラが生じ、これは望ましくない。
【0024】
高吸収材の凹式堆積は上部または表面堆積法に比べて利点を有する。なぜなら、フィーチャの高さが変わらず、残留層厚さを変わらない状態に維持するからである。他方では、凹式堆積の欠点はアラインマーク周囲のレプリカフィーチャ高さが低下することであろう。この欠点を最小にするための全体的な傾向は、信号コントラストを高く維持しつつ堆積される高吸収材の厚さを低減することである。
【0025】
図6A〜6Bは、位置合わせマークフィーチャ内に延展及び充填される成形可能材料(即ち液体レジスト)がいかに光強度を変え、位置合わせシステムに影響しうるかを示している。
図6Aは、強度I
2(x)に寄与する第2の重畳格子の存在下における単一格子の最大強度I
1(x)の単純回折条件を示す。合成光強度I
sum(x)は、強度を単に合計したものI
1(x)+I
2(x)ではなく、むしろ、各個々のビームの電界の重畳E
1(x)及びE
2(x)に依存する。E
1(x)及びE
2(x)の振幅及びそれら位相は合成光強度の合計I
sum(x)において重要な役割を果たす。光強度は、インプリントマスク位置合わせ格子と基板位置合わせ格子との間の周期不整合によりxに沿って変化する。この不整合はモアレパターンを作成するため意図的に形成される。
【0026】
図6Bは、異なる位相を有する2つの電界ベクトルE
1及びE
2の加算ルールを示す。液体レジストがアラインマークに充填されると、2つのベクトルの相対的な位相が変化する(実線から点線によって示される)。これはレジストが空気と異なる屈折率を有するためである。合成電界E
sum(pre)は位相をE
sum(post)に変化し、より重要なことには、振幅を変化する。光強度は電界振幅の2乗に比例する。従って、
図4に示されるアラインマークに液体レジスト(または任意の他の液体)を充填すると、光強度がかなり大幅に局所的に変化する(レジストは光を吸収せず、光強度は電界位相の内部再分配のみによって変化するものと想定する)。従って、液体レジストが位置合わせマーク構造内に沿ってフィーチャに延展及び充填される一方で、光強度はその経路に沿って変化する。モアレパターンの最小強度及び最大強度は変化する。これは信号コントラストの変化にもつながる。このような強度及びコントラストの変化は、前に記載した及び
図4Cに示したような、レジスト延展時における位置合わせシステムの不安定性につながる。
【0027】
図7A及び
図7Bは、高吸収材を格子凹部に施した効果を比較によって示す。
図7Aは、単一格子の最大強度I
1(x)の単純回折条件を示すものであるが、第2の重畳格子による強度I
2(x)の寄与は全くない。これは、凹状の格子内に配置された吸収材Mの効果によるものである。即ち、吸収材の存在によりE
2は完全に吸収される。
図7Bは、E
2=0及びE
sum=E
1である場合の相関ベクトルを示す。液体レジストが位置合わせマーク構造に充填されると、電界E
1は何らかの位相を得ることができる。しかし、その絶対値は同じままである。その結果、光強度I
sumはレジストの有無によって変化しない。換言すると、ここで、I
sumは液体レジストによるアラインマークの充填の影響を受けない。従って、液体レジストがアラインマークに充填された場合に生じるモアレパターンコントラストは変化しない。この液体充填物に対する非感受性が位置合わせシステムに必要な安定性を付与する。
【0028】
要するに、位置合わせマークへのレジストの充填時に位置合わせマークのコントラスト信号の独立を得るため、電界成分の1つを大幅に低減するまたは完全に排除する高吸収材が提供される。凹状の高吸収マーク(
図6Aとの比較において
図7Aに概略的に示す)の場合、電界E
2は大幅に低減される、または排除される。
【0029】
材料の高吸光度は高消衰係数に関連する。従って、液体充填物の影響を受けないモアレパターンコントラストを形成するため高消衰係数の材料を使用する。本発明の実施形態では、位置合わせマークは、特定の波長範囲内、好ましくは、500〜800nmの光の60%以上を吸収できる高吸収材を含む。更なる実施形態では、この吸収は、70%以上、80%以上、または90%以上とされうる。白色光が使用される場合、吸収は関連の波長範囲の所望の割合(例えば、60%以上)を満たすべきである。多くのナノインプリントリソグラフィプロセスでは液体レジストを硬化するために紫外線が慣例的に使用されるため、選択される材料の別の態様は、材料の下に配置されたレジストを完全に硬化させるために好ましくは紫外線領域(400nm未満)内において十分に透明とすべきである。
【0030】
特定の波長λにおいて選択される材料の吸光度の簡略化した形態は、
吸収=1−exp(−αx)=1−exp(−4πnkx/λ)
式中、xは材料の厚さ、kはその消衰係数、nは屈折率、及びαは吸収係数である。多くの実際的な適用においては、選択される吸収材の厚さはテンプレートフィーチャの高さ(即ち、テンプレートのフィーチャ領域内にパターニングされたフィーチャのエッチング深さ)によって制限される。テンプレートフィーチャの高さが調整できる場合、その吸収をある程度変化させるため材料厚さの変更を行うことができる。しかしながら、特に、フィーチャ高さが小さい(例えば50nm未満)場合、厚さよりも、材料選択、特に、消衰係数が吸収性能を推進する。加えて、また、紫外線硬化光の透過においてはより薄い層の材料が好まれる。
【0031】
従って、より効果的に吸光度を増加するため消衰係数と屈折率の積がより大きい材料を選択することができ、前述のように、このような材料を、液体充填物の影響を受けないモアレパターンコントラストを形成するために使用できる。他方では、屈折率を増加するのみでは逆効果となるおそれがあり、これは、入射光がそのような高い率の界面からより多く反射する(散乱する)からである。これにより散乱光及びモアレパターンの最小強度が増加し、信号コントラストの減少につながる。従って、消衰係数kは高吸収材のより重要なパラメータである。つまり、最適な高吸収材は高消衰係数kを有する。
【0032】
しかるに、特定の実施形態においては、高吸収材層を達成しつつ、同様に、光の散乱を最小限に維持するための方法とは、2.8超、または特定の場合においては、3.3超またはそれよりも高い消衰係数kを有する材料の選択である。500nm〜800nmの光学範囲におけるそのような高消衰係数を有する、本発明において有用な高吸収材の例には、アルミニウムAl、Al
xSi
y、Al
xSi
yTi
z、Al
xCu
y、Al
xCr
yのようなアルミ合金、ロジウムRh、クロムCr、イリジウムIr、ニオブNb、チタンTi、ニッケルNi、パラジウムPd、白金Pt、銀Ag、金Au、銅Cu、鉄Feを含むが、これらに限定されるものではない。
【0033】
表1は、本発明において有用な、選択した材料のn値、k値及びα値を示す。図示のように、アルミニウムは約600nmにおいて最大消衰係数(k=7.26)を有し、位置合わせマークの高吸収材としての使用に特に適している。ロジウム(k=5.34)、クロム(k=3.3),及びニオブ(k=2.87)もまた適している。
【0035】
図8は、波長範囲500nm〜800nmにおける、表1の材料から作成した様々な厚さの高吸収位置合わせマークのコントラストレベルを示すグラフを示す。これらの結果は、位置合わせマークの実際の構造形状、波長依存性、特定のLED光源の典型的なコヒーレンス長、典型的な入射角及び観測角、及び典型的に実験的に観測される散乱光の存在を説明するものである。アルミニウムは、選択した波長範囲における最小厚さにおいて最大コントラストを示す(即ち、厚さ5nm未満におけるコントラストは少なくとも0.3)。ロジウム及びアルミニウムもまた最小厚さにおいて高コントラストを示す(例えば、厚さ20nm未満(例えばCr)または15nm未満(例えばRh)における少なくとも0.45のコントラスト)。
【0036】
以下、表2は、
図8のグラフにプロットした特定のデータの参照用テーブルを提供する。特に、表2は、特定のコントラストレベルを達成するために必要とされるAl、Rh及びCrの厚さを提供する。
【0038】
最大消衰係数を有する材料であるアルミニウムは所与の厚さにおける最大コントラストレベルを示す。クロムは、アルミニウムn
Al=1.2及びロジウムn
Rh=2.073よりも高い屈折率n
Cr=3.194を有するが、所与の厚さにおいてより低いコントラストを示す。これは、信号コントラストの提供においては消衰係数kが屈折率nよりも重要であることを裏付けるものである。
【0039】
当業者には、本説明に照らして様々な態様の更なる修正及び代替の実施形態が明らかであろう。従って、本説明は例示にすぎないと解釈すべきである。本明細書で図示し説明した形態は、実施形態例として捉えるべきであると理解されたい。本明細書で図示し説明した要素及び材料は、代わりの要素及び材料と置き換えることができ、部品及びプロセスは逆にすることができ、いくつかの特徴部分は独立して利用することができ、これらは全て本説明の恩恵を得た後で当業者に明らかになるであろう。本明細書で説明した要素には、添付の特許請求の範囲に示す思想及び範囲から逸脱することなく変更を施すことができる。