(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306510
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】改善された熱管理を有する高温又は燃料電池の電気化学系
(51)【国際特許分類】
C25B 9/20 20060101AFI20180326BHJP
H01M 8/24 20160101ALI20180326BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20180326BHJP
H01M 8/0202 20160101ALI20180326BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20180326BHJP
【FI】
C25B9/20
H01M8/24
H01M8/02
H01M8/0202
!H01M8/12
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-537641(P2014-537641)
(86)(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公表番号】特表2015-501386(P2015-501386A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】EP2012071298
(87)【国際公開番号】WO2013060869
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年10月16日
(31)【優先権主張番号】1159843
(32)【優先日】2011年10月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ローランサン
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール・ドゥレット
(72)【発明者】
【氏名】マガリ・レイティエ
【審査官】
宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−132933(JP,A)
【文献】
特開2003−346866(JP,A)
【文献】
特開2004−193027(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02151840(GB,A)
【文献】
特開2010−277877(JP,A)
【文献】
特開2004−273140(JP,A)
【文献】
特開2009−283150(JP,A)
【文献】
特開平07−233491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00 − 9/20
C25B 13/00 − 15/08
H01M 8/00 − 8/02
H01M 8/08 − 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互のセラミックユニット(2)及び相互接続部材(4)を有する長手方向の軸(X)のスタック、並びに前記スタックに含まれる熱管理手段を含む、高温において動作する、スタック構造の電解槽又は燃料電池である電気化学系であって、
前記熱管理手段が、前記スタックの外側との間で放射によって熱交換が行われる表面を有する少なくとも1つの側方端部を有する、“放射プレート”と称される、前記スタックに位置するプレート(6、106、206、306)を含み、前記表面が少なくとも部分的に構造化され、前記放射プレートが、前記相互接続部材のいくつかに取って代わり、前記他の相互接続部材が、前記放射プレートから分離されることを特徴とする電気化学系。
【請求項2】
前記放射プレート(6、106、206、306)が前記相互接続部材より厚く、前記相互接続部材(4)が0.1mmから15mmの厚さであり、少なくとも1つの放射プレート(6、106、206、306)が5mmから50mmの厚さである、請求項1に記載の電気化学系。
【請求項3】
前記放射プレート(106)が、前記セル(2)の横断面及び前記相互接続部材(4)の横断面より大きな横断面を有し、それが、前記スタックから突出する周辺頭部(11)を有するようになる、請求項1又は2に記載の電気化学系。
【請求項4】
前記周辺頭部(11)が、その表面が少なくとも部分的に構造化される側方端部、及び、少なくとも1つのその長手方向の面が部分的に構造化される2つの長手方向の面(10)を含む、請求項3に記載の電気化学系。
【請求項5】
前記側方端部の表面及び/又は少なくとも1つの長手方向の面が、Pr2NiO4+δで被覆される、請求項4に記載の電気化学系。
【請求項6】
前記放射プレート(6、106、206、306)が、前記スタックに周期的に分布され、基本ユニットが、セラミックセル(2)及び2つの相互接続部材(4)に形成される、請求項1から5の何れか一項に記載の電気化学系。
【請求項7】
前記側方端部が起伏を有する、請求項1から6の何れか一項に記載の電気化学系。
【請求項8】
前記周辺頭部が、前記スタック内に位置する前記放射プレートの一部より厚い、請求項3に記載の電気化学系。
【請求項9】
前記放射プレート(206)が、前記放射プレート(206)内に形成され、その平面にほぼ延長する流路によって形成される対流による熱伝達手段を含み、流体が前記流路に流れる、請求項1から8の何れか一項に記載の電気化学系。
【請求項10】
前記流体が、前記電気化学系の電気分解反応に使用される流体と異なる流体である、請求項9に記載の電気化学系。
【請求項11】
前記流体が、少なくとも前記電気化学系の前記電気分解反応に使用される電解ガスであり、前記系が、電解ガス供給回路に前記流路(216)を接続する手段を含む、請求項9に記載の電気化学系。
【請求項12】
前記放射プレート(406)が、前記系の所望の動作温度で相変化する材料(438)を含む少なくとも1つのキャビティ(416)を含む、請求項1から11の何れか一項に記載の電気化学系。
【請求項13】
前記相変化材料(438)が、780℃から835℃の固相線温度及び814℃から853℃の液相温度を有する共晶材料である、請求項12に記載の電気化学系。
【請求項14】
前記相変化材料が、溶融塩である、請求項12に記載の電気化学系。
【請求項15】
少なくとも2つの放射プレートが、前記2つの放射プレート間に位置するセルを電気的に絶縁することができるような電気接続部を含む、請求項1から14の何れか一項に記載の電気化学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された熱管理を有する高温において動作する電解槽及び燃料電池スタックに関連する。
【背景技術】
【0002】
高温電解槽は、通常SOEC(固体酸化物電解セル)と称される。それらは、電気的及び熱的出力から化学的エネルギーへの電気化学的転換を達成する。“共電解”という用語は、蒸気及び二酸化炭素の混合物H
2O/CO
2が電解槽に供給される動作を意味する。蒸気は、水素に変態し、二酸化炭素は、一酸化炭素に変態し、エネルギー担体として作用する。要求に応じて、その後、これらのH
2/COの可燃性ガスは、例えばSOFC(固体酸化物燃料電池)のスタックを用いて熱及び電気に転換され得る。
【0003】
SOEC電解槽及びSOFC燃料電池スタックは、同一の電気化学系の逆動作を表す。
これらの系が非常に電気的に効率的であることに留意すべきである。さらに、燃料の性質に関する大きな柔軟性は、SOFCモードにおいて可能である。スタックは、例えば、中性ガスが直接供給され得る。この場合、水素へのメタンの改質は、系のセル内で直接起こる。
【0004】
対象となるSOEC電解槽及びSOFC燃料電池のスタックは、電気化学反応が起こる多数の平坦なセラミックセルのスタック、及び、一般的には各対のセラミックセルの間に介在される相互接続プレートによって形成される。セルは、その面の各々に、電極(アノード及びカソード)を構成するセラミック層を有し、そこで、所定のセルの2つの電極が、電解質として作用するセラミック膜によって絶縁され分離される。
【0005】
相互接続プレートは、セルの2つの電極の各々にガスを分配し、集電する。スタックにおいて、相互接続プレートは、互いに面して位置する2つの連続したセルの対向する電極に対して集電及び分配機能を行うために両側において構造化される。
【0006】
1つのセル及びそれを囲う2つの相互接続プレートの間のアセンブリは、画定された基本ユニットを形成する。特に、基本ユニットは、カソード部分(化学種が還元される位置)及びアノード部分(酸化反応の位置)を含み、それらは、密閉され、電気的に絶縁された2つのボリュームである。
【0007】
熱伝達は、ガスによって、並びにスタックの端部及びその絶縁被覆の間の熱交換によって部分的に行われる。最も熱い考えられる基本ユニットが、交換表面が増加されることを可能にし、その系の熱管理を容易にするということが理解される。しかしながら、相互接続プレートは、電気化学コンバーターの小型化を向上させ、コストを低減するために、できるだけ薄く作られた、プレスされたプレートで通常作られる。従って、小容積を与える小型化のこの制約と大きな面積を要求する熱交換との間に妥協点を見出すことが重要であると思われる。
【0008】
定常動作に関して、SOFCスタックの熱管理は、カソードに送られる空気の流速を調整することによって部分的に存在する。さらに、メタンを水素に変態する化学的な反応の吸熱が、水素の電気化学的酸化によって引き起こされる熱放出を平衡させる傾向があるので、内部改質は、スタックの熱管理を容易にする。しかしながら、系がスイッチオン/オフする際に過渡負荷中に又は相内に、温度勾配が現れ、スタックに機械的な損傷をもたらし得る。
【0009】
SOECの熱管理に関して、動作電圧に依存して、動作する逆バッテリ保護によって放出される熱は、蒸気の電解によって吸収される熱未満であったり、等しかったり、それを超えるものであり得ることが示されている。高い蒸気変化速度の場合、電解槽の温度は、系の長期間動作を受け入れ不能なレベルまで非常に急速に変化する。実際、発熱モードで動作する際に、生成される水素は、ほとんど熱を含まない。従って、電解槽によって放出される水素の流れは、大きな熱量を排出することができない。吸熱動作の場合、最適な動作のためにスタックに熱を提供することが難しいことが証明され得ることを言及しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
結果的に、本発明の一目的は、定常制御又は過渡運転であるかを問わず、系の熱管理に関して高い柔軟性を与える、改善された熱管理を有する高温電解槽又は燃料電池などの電気化学系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、セラミックセル及び相互接続部材によって形成される基本ユニットのスタックにおいて、スタック及び例えば熱運動化される被覆の間に放射表面を提供する、相互接続部材の表面よりかなり大きい、放射による熱伝達のための表面を有するプレートの挿入によって達成される。
【0012】
このかなり大きな放射表面は、1つ又は複数の放射プレートの側方表面の構造化によって得られる。これらのプレートは、好ましくは周期的にスタックに分布される。それらは、特定の相互接続部材がセルのガス供給部を提供するように製造される場合、特定の相互接続部材の置換物として位置し得、又は相互接続部材に隣接して位置し得る。
【0013】
“構造化”という用語は、プレートの熱交換表面を増加するようにプレートの表面に起伏を生成することを意味するものと理解され、その起伏は、例えばフィンを形成するリブの形態である。さらに、本願における“熱伝達”という用語は、スタックからの熱の外部への伝達を意味すると理解されるが、吸熱動作モードにおいて、スタックに外部から熱を伝達することをも意味する。
【0014】
本発明によると、放射された流れがT
4に比例するので、放射された流れによる放射熱交換は、その温度より非常に高い。従って、この熱伝達モードは、周囲温度で低く、SOECタイプ又はSOFCタイプの電解槽の動作温度において支配的になってくる。特に、それは、SOECタイプの電解槽及びSOFCスタックに非常に相応しい。
【0015】
特に、有利な実施形態においては、放射プレートは、スタックから突出する側方頭部を含む;次いで、側方表面に加えて、スタックの軸に垂直な頭部の表面は構造化され得る。
【0016】
これらのプレートは、好ましくは相互接続部材より厚く、より大きな放射側方交換表面さえ提供する。
【0017】
スタックは、放射による伝達を効率的に引き起こすプレートによって囲われて分離されるセルのサブユニットに分割される。これらのプレートは、放射機能による伝達の原因となる。従来技術の電解槽及びセルスタックにおいて、放射による伝達は、相互接続部材の端部で起こり、これらは非常に薄い。
【0018】
これらのプレートは、スタックの熱管理において特に効率的であり、放射による熱移動が、熱伝達の支配的な方法であり、燃料電池及び電解槽のセルのスタックにおける最も効率的な方法である。
【0019】
さらに、それらは、例えば可逆性、過渡運転、注入ガスの多様性などの点で、より大きな柔軟性が要求される系の特に相応しい熱管理を可能にする。
【0020】
本発明の主目的は、交互のセラミックセル及び相互接続部材を有する長手方向の軸のスタック、並びに前記スタックに含まれる熱管理手段を含む電気化学系であって、前記熱管理手段が、前記スタックの外側との間で放射によって熱交換が行われる表面を有する少なくとも1つの側方端部を有する、“放射プレート”と称される、前記スタックに位置する少なくとも1つのプレートを含み、前記表面が少なくとも部分的に構造化されることを特徴とする電気化学系である。
【0021】
前記放射プレートは、前記相互接続部材より厚く、前記相互接続部材は、0.1mmから15mmの厚さであり得、少なくとも1つの放射プレートは、5mmから50mmの厚さである。
【0022】
特に有利な実施形態において、前記放射プレートは、前記セルの横断面及び前記相互接続部材の横断面より大きな横断面を有し、それは、前記スタックから突出する周辺頭部を有するようになり、前記頭部は、その表面が少なくとも部分的に構造化される側方端部を有する。
【0023】
前記頭部は、2つの長手方向の面を有し、その少なくとも1つが部分的に構造化される。
【0024】
前記側方端部の表面及び/又は少なくとも1つの長手方向の面は、有利には、1に近い放射率を有する材料、例えばPr
2NiO
4+δで被覆される。
【0025】
前記電気化学系は、前記スタック全体にわたって分布される幾つかの放射プレートを含み得る。前記放射プレートは、前記スタックに周期的に分布され、例えば4から12の基本ユニット毎に分布され、基本ユニットが、セラミックセル及び2つの相互接続部材に形成される。有利な特徴によれば、前記スタックに周期的に分布される前記1つの又は複数の放射プレートは、それらが分離する基本ユニットのアセンブリの端部に位置する相互接続部材に取って代わる。
【0026】
前記電気化学系は、前記セラミックセルに電解ガスを供給する回路を含むことができる。
【0027】
前記放射プレートはまた、対流による熱伝達のための手段を含むことができる。前記対流による熱伝達のための手段は、前記放射プレートに形成され、流体が流れる前記プレートの平面にほぼ延長する流路によって形成され得る。前記流体は、前記電気化学系の電気分解反応で使用される流体と異なる流体であるか、前記電気化学系の電気分解反応の少なくとも1つで使用される電解ガスであり得、前記系は、前記流路を電解ガス供給回路に接続する手段を含む。
【0028】
本発明による電気化学系は、流路が水蒸気改質触媒で被覆され、流体が中性ガスである、中性ガス中で改質することによって動作する燃料電池であり得る。
【0029】
前記放射プレートは、対流による熱伝達のための手段を含み得る。
【0030】
前記放射プレートは、系の所望の動作温度で相変化する材料を含み得る。前記相変化愛量は、例えばキャビティに配置される。
【0031】
前記相変化座試料は、800℃に近い固相線温度及び850℃に近い液相温度を有する共晶材料であり得る。
【0032】
あるいは、前記相変化材料は、溶融塩、例えばNaClであり得る。
【0033】
有利な例において、少なくとも2つの放射プレートは、前記2つの放射プレート間に位置するセルを電気的に絶縁することができる電気接続部を有する。
【0034】
本発明による電気化学系は、例えば水素を生成するための高温電解槽であり得る。
【0035】
本発明による電気化学系は、消費される水素が中性ガスの素蒸気改質によって生成され得る燃料電池であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】
図1Aは、熱管理プレートの第1の実施形態の上面斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、熱管理プレートの第1の実施形態の変形実施形態の側面斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、導電タイプの伝達を含む第2の実施形態による2つの熱管理プレートの上面斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、第2の実施形態の変形例による2つの熱管理プレートの上面斜視図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態の他の変形例による熱管理プレートを含む本発明による高温電解槽のスタックの一部の上面斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、第2の実施形態の他の変形例による熱管理プレートの上面斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、相変化材料を用いた第3の実施形態による熱管理プレートの上面斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、変形実施形態による熱管理プレートを含むスタックの斜視図である。
【
図9A】
図9Aは、変形実施形態による熱管理プレートを含むスタックの斜視図である。
【
図9B】
図9Bは、変形実施形態による熱管理プレートを含むスタックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、以下に続く詳細な説明及び添付図面を用いて詳細に理解される。
【0038】
図1Cにおいて、高温電解槽又は燃料電池などの電気化学系に対する本発明によるスタックの実施形態が見られる。
【0039】
スタックは、長軸Xに沿って延び、相互接続プレート4又は相互接続部材によって分離されるセラミックセル2を含む。アセンブリAは、1つのセル2とそれを囲う2つの相互接続プレート4とで形成され、基本ユニットを形成する。これらのセルは、電解質(典型的には、イットリアがドープされたジルコニア、又は、2つの電極で囲われたイットリア安定化ジルコニア(YSZ)で製造され、電極の一方は、ペロブスカイト構造材料(ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)で作られ、電極の他方は、セラミック−金属複合材(YSZ及びニッケルの混合物(Ni−YSZ))で作られる)を含み、例えば多層型のセラミック構造体であり得る。相互接続部材は、典型的にはCrofer(登録商標)22APU合金で作られ、それは、Haynes230(登録商標)であるフェライト鋼であり、又はニッケルベースの合金である。
【0040】
一例として、Crofer(登録商標)22APU及びHaynes230(登録商標)の組成を以下の表に記載する。
【0042】
スタックはまた、追加のプレートを通常含む。プレート6は、導電材料、好ましくは金属で作られ、例えばCrofer22APU(登録商標)フェライト鋼、又はF18TNbなどで作られる。これらのプレート6は、電気化学系が動作した際に発生する熱の放射による熱移動によって電気化学系の熱管理を与える。プレート6は、以下では“放射プレート”と称する。
【0043】
プレート6は、好ましくは周期的にスタックに分布される。例えば、2つの放射プレートは、4から12の基本ユニットによって分けられる。2つの放射プレート6を分離する基本ユニットの数は、積層方向、すなわち電流方向における温度勾配を制限するように選択される。
【0044】
本発明によるスタックは、セラミックセル及び相互接続部材からなる基本要素並びに放射プレートを含む:以下に示すように、放射プレートはまた、相互接続部材として機能し得る;しかし、それらは、それらの一部にとって代わる。
【0045】
例示的なプレート6が
図1Aに示され、その詳細図が
図1Bに示される。
【0046】
示された例において、放射プレート6は正方形の形状であり、そのため交換及び熱移動表面をなす4つの側方端部8を有する。
【0047】
プレート6は、相互接続部材の表面より大きい、放射による熱移動のための表面を有する。プレート6は、放射表面を増加させるように少なくとも部分的に構成された側方端部8を有する。
図2Aにおいて、このような構造を有するこのようなプレート6の例が見られ得る。
図1Bにおいて、
図1Aのプレートの側方端部8の拡大図が見られ得る。この例において、端部8は、放射プレートの長手方向の面に平行なリブ9を有し、そのリブは、V形状の断面を有する。リブの位置合わせは、制限的ではない。特に、プレートの長手方向の面に垂直に又は斜めに延びるリブの場合が、本発明の範囲の範囲を逸脱するものではない。さらに、構造ユニットは、如何なる種類のものでもあり得、端部によって異なり得る。
【0048】
プレートの側方端部は、スタックの側方端部と同一垂直平面にあり得、リブの頂部は、これらの垂直平面に位置する。変形例として、側方端部の構造は突出しており、リブの頂部は、スタックの端部の垂直平面から突出している。
【0049】
放射プレートは、好ましくは、相互接続部材の寸法以上の厚さ、すなわち長手方向軸Xに沿う寸法を有する。それらは、相互接続部材の側方表面より大きいその側方表面の構造に対して熱交換表面を有する。
【0050】
以下に相互接続プレート及び放射プレートの有利な厚さの値を与える。
【0051】
“薄い”相互接続プレート、例えばプレスされたプレートで製造されるものの場合、このプレートは、0.1mmから1mmの厚さであり得、放射プレートは、有利には10mmから50mmの厚さであり、好ましくは40mmの厚さである。
【0052】
“厚い相互接続プレート”の場合、それは、5mmから10mmの厚さであり得、放射プレートは、有利には5mmから20mmの厚さであり、好ましくは10mmの厚さである。
【0053】
図1Aのプレート6は、相互接続部材4及びセル2と略等しい表面を有し、すなわちその端部は、相互接続部材及びセルの表面におおよそ位置合わせされる。
【0054】
示された例において、放射プレート6は、基本ユニットの連続するスタックの端部に位置する相互接続部材にとって代わることができる;放射プレートの長手方向の面10の1つは、燃焼ガス及び酸化ガスをセルに供給するための流路を有する。この配置は、スタックを単純化することができ、また電気抵抗及びシーリングの問題を低減することができる。
【0055】
あるいは、プレート6は、セル2及び相互接続部材の間に位置することができ、穴あけは、スタックを通して流体接続を形成するために行われ得る。
【0056】
図2A及び
図2Bにおいて、プレート6がその側方端部8及びその長手方向の面10の外周に構造化を有する、本発明による放射プレート106の特に有利な変形実施形態が見られ得る。
【0057】
プレート106は、セル及び相互接続部材の横断面より大きな横断面を有し、それは、スタックの中央の側方表面から突出する外周の頭部111を有するようになっている。
図2Cにおいて、プレート106を含むスタックが見られ得る;放射プレート106の突出する頭部111は、熱交換フィンをなす。
【0058】
頭部111の長手方向の面は、プレート6と同様の方式でその側方端部108の構造を有し、有利にはその長手方向の外側端部112の構造113を有する。
図2Bに見られるように、断面において見られるこの構造113は、鋸の歯の形状を有する。歯の最大面113.1は、有利にはスタックの外側に面し、側方表面は外側に面し、熱は、主に外側に放出する。
【0059】
あるいは、長手方向の面のみが構造を有し、側方端部が平滑であるか、逆に、側方端部のみが構造化され、長手方向の面が平滑であることが決定され得る。側方端部及び/又は長手方向の面の部分的な構造化がまた考えられ得る。
【0060】
さらに、プレート、より一般的にはスタックの要素の正方形状は、限定的ではなく、例えば円板形状が、本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0061】
一例として、プレートの寸法を記載する。
【0062】
77.44cm
2の活性表面、5つのセル毎に位置する放射プレート、1mmの厚さの相互接続部材、ガス注入温度、及び800℃においてスタックを囲う被覆の熱化を有するセルに1.5ボルトの印加電圧を加える仮定で、構造化された放熱プレート6は、44mmの厚さを有する。10mmの厚さである相互接続部材の場合、構造化された放射プレートは、11mmの厚さである。
【0063】
放射プレートの厚さは、それらの側方端部の構造化の程度に依存し、場合によっては長手方向の面の構造化の程度に依存する。
【0064】
放射プレートの側方端部及び/又は外側端部は、1に近い放射率を有する材料で有利にコーティングされ得る。例えば、コーティングは、パイロゾル法によって得られるPr
2NiO
4+δであり得る。
【0065】
スタックの外側の環境、例えばスタックを囲う被覆の温度を制御することによってスタックを冷却するためのこの手段によって、放射損失を増加することも考えられる。これらの状況において、電解槽又は燃料電池の温度の直接的な制御を得ることができる。同様に、吸熱モードにおいて、放射形態の熱の移動は、外部被覆の温度を製造することによって容易にされる。
【0066】
例において、中央の平面側方端部は、スタックの長手方向の軸Xに略平行である;しかしながら、これらの平面は、長手方向の軸に対して傾斜し得る。
【0067】
変形例として、放射プレートの中央部より厚い外部側方頭部を形成することを決めることができ、この手段によって放射損失を増加する;この厚くされた頭部はまた、構造化され得る。
【0068】
図8A及び
図8Bに放射プレート506の変形実施形態が見られる。この変形例において、放射プレートは、突出した周囲の頭部511を含む、その側方端部508は、起伏509を有している。示された例において、これらの起伏509は、スタックの軸に平行な軸を有する。放射表面は、この手段によって増加される。
【0069】
図9A及び
図9Bに放射プレート606の他の変形実施形態が見られ、それらは、周囲の頭部611が、スタック内に位置する放射プレートの部分の横断面より厚いという点が
図8A及び
図8Bの放射プレートと異なる。
図9Bに見られるように、放射プレートの周囲の頭部611は、おおよそT型の形状を有する。側方端部608はまた、起伏609を有する。放射表面はさらに増加される。増加した放射表面を生成する他の形状が考えられ、例えば、L型の形状である。
【0070】
図3A及び
図3Bにおいて、本発明による放射プレートの第2の実施形態が見られ、それは、放射伝達による冷却に加えて、対流による冷却を含む。逆に、吸熱モードにおいて、対流によるこれらの変化は、熱がスタックに移動することを可能にする。
【0071】
図3A及び
図3Bにおいて示されるプレート206はまた、相互接続部材を形成するためのものである。
図3Aにおいて、セル及び相互接続部材は省略されている。
【0072】
図3Bにおいて、プレート206の断面C−Cによる断面図が見られ得る。プレート6及び106のような放射プレート206は、放射伝達による冷却を提供するために、その側方端部208の少なくとも一部の構造、及び熱伝達流体がその中に流れることをもたらす手段を有し、対流による熱排出を引き起こす。示された例において、流動誘導手段は、互いに平行である、2つの平行なプレート206の端部208の間に延びる流路216によって形成される。流路216は、第1の端部において、供給コネクタ218に接続され、第2の端部において排出コネクタ220に接続される。この実施形態において、流路216は、平行に提供され、全てのプレート206は、全てのプレート206を供給するコネクタ218に接続されるチューブ222によって平行に供給され、全てのプレート206を退避させるためのコネクタ220に接続されるチューブ224を介して平行に退避される。熱伝達流路は、如何なる様式で配置することもできる。
【0073】
この例において、熱伝達流体は、セルスタック又は電解槽が動作中に電解で使用されるものと異なるガスである。このガスは、例えば、生成されたあらゆる過剰な熱を回収する放射プレート206に流れる中性ガスである。
【0074】
放射プレート206の間には電気絶縁体がある。例えば、電気絶縁体は、例えばマイカシールを用いてチューブ222及び供給コネクタ218の接合部に形成される。
【0075】
図4A及び
図4Bにおいて、熱伝達流路216が直列に接続される
図3A及び
図3Bの系の変形例が見られ得る。熱伝達流体供給パイプ222は、スタックの第1のプレート206.1の供給コネクタ218.1を供給し、第1のプレート206.1の排出コネクタ(見えない)は、続くプレート206.2の供給コネクタ218.2などに接続され、熱伝達流体が全てのプレートを通って流れる。
【0076】
示された例において、プレート206は、相互接続部材に取って代わるためのものである;それらはまた、それらの中央部に酸化ガス及び燃料ガスを供給するための流路226を有する。流路226はそれ自体、プレートの端部に位置するブランチコネクタ230及びプレート206内部に形成される流路を介して供給される。
【0077】
1.5ボルト/セルの印加電圧、77.44cm
2の活性面積を有するセル、5つのセル毎に位置する放射プレート206、840℃を超えないスタック温度、2l/minの流速において800℃で導入される流れ、及び1mmの相互接続部材の厚さを有する系において、放射プレート206の厚さが約42mmであると決定された。スタックにおいて放散する熱の分配は、以下のようなものである:熱の約70.5%が放射損失によって排出され、熱の27%がカソード及びアノード流体によって排出され、2.5%が熱伝達流体によって排出される。従って、対流冷却は、放射伝達による追加的な冷却によってスタックの熱管理が改善されることを可能にする。例えば流体の流速を増加し、又はより効率的な熱伝達流体を選択することによって、対流によって排出された熱の量は増加し得る。
【0078】
対流冷却手段がアノード及びカソードの電解ガスを使用する、
図3Aから
図4Bのプレートの変形実施形態が
図5に見られる。
【0079】
図5において、放射プレート206.1’、206.2’、206.3’及びセル2のスタックが示される。放射プレート206.1’、206.2’、206.3’は、
図3Aから
図4Bの放射プレート206と同様であり、パイプ222は、例において直列に示される放射プレート206.1’、206.2’、206.3’に電解ガスを供給する。プレート206.3’の排出口において、集められた電解ガスは、第1のプレート206.1の側方ブランチ接続を介してパイプ234によってセル2に注入される。矢印は、ガスの流れを示す。電解ガスは、例えば蒸気である。2つの放射プレートを接続する流体接続は、例えばマイカシールを用いて実現される電気絶縁体を有する。
【0080】
この配置のために、スタックは、対流によって冷却され、セルに近接して生じた熱を直接的に使用して同時に電解ガスが予熱される。
【0081】
他の変形例によれば、対流交換を容易にするために、ガスがその被覆に位置するスタックの周囲にも流れるようにすることが考えられる。
【0082】
図6A及び
図6Bに示される他の変形例において、メタンの改質モードで動作するセルスタックSOFCの場合、放射プレート306の流路316は、例えばRu−、Rh−(又は他の)ドーピングされたセリアタイプの水蒸気改質触媒336で覆われる。この手段を用いて、中性ガスは、それが燃料電池のセルに導入される前に予備改質される。この反応は吸熱であるので、それは、対流によってスタックを冷却する。
【0083】
動作中に、電気化学系は、電圧及び熱サイクルに晒され得る。これらの転移は、セルの機械的な完全性にとって有害な温度勾配を引き起こす。さらに、一時的には850℃を超える非常に高い温度は、スタックの金属材料を損傷し得る。
【0084】
図7A及び
図7Bに示される例の放射プレートの実施形態は、有利には、850℃を超える温度である、スタック内の温度の急激な変化が制限されることを可能にする。
【0085】
第2の実施形態のように、放射プレート406は、互いに平行な、プレート406の2つの平行な端部の間に延びる流路416を含む流路416を含む。しかしながら、これらの流路は、電解及び高温燃料電池スタックの動作温度範囲内である800℃から850℃の間で相が変化する相変化材料438を含む。相変化材料438を変態するために必要な潜熱は、電解によって生成された熱によって供給される;従って、この熱は、相変化材料438によって吸収され、スタックに危険な閾値を超える温度上昇を制限する。
【0086】
相変化材料438は、一定の温度で溶解し、スタックがこの相変化中に一定温度に維持されることを可能にするような共晶混合物であり得る。例えば、800℃に近い固相線温度及び850℃に近い液相温度を有する合金であり得る。この共晶混合物材料は、例えば、835℃の融点を有するAg(96.9%)−Si合金であり得、又は、それは、802℃の融点を有するCu−Si(85%)、又は、848℃の融点を有するLiFであり得、より低い温度の用途においては、780℃の融点を有するAg−Cu(28%)であり得る。Ag58−Cu32−Pd10(853℃〜824℃)、Au60−Cu20−Ag20(845℃〜835℃)、又はより低温においてはAg95−Al5(830℃〜780℃)又はAg68−Cu27−Pd5(814℃〜794℃)などの他の合金が予想される。固相線温度又は液相温度はそれぞれ、ブラケット間に与えられる。
【0087】
相変化材料438はまた、よりコストが掛からない溶融塩であり得る。溶融塩が使用される場合、放射プレートは、例えば窒化ホウ素による腐食から保護されなければならない。例えば、溶融塩として、800℃の融点を有するNaCl又は850℃の融点を有するNa
2Co
3が使用され得る。本発明の5つ毎のモジュールによる放射プレートの相変化材料としてNaClを用いることによって、800℃の温度は、直径10mmで長さが200mmの10の流路を充填することによって、30分間、1.5Vで保証され得る。計算のために、排出される100Wの出力、472kJ/kgのNaClの潜熱、及び2160kg/m
3の密度が考えられる。
【0088】
相変化材料の使用のために、上限閾値及び下限閾値は、過渡変化と呼ばれる大きな一時的な温度変化を制限するために、スタック温度に導入され得る。
【0089】
電気の費用に従った水素発生の最適化を求めて、電気代が低い場合に高電位(1.5V)において動作し、この合金を溶融するために放出される熱を使用するために、このシステムに関して決定することができる。次いで、電気代が高い場合、電解槽は、吸熱モードにおいて1.3Vのより低い電圧で動作する。相変化材料によって蓄えられる熱は、次いでそれが固化するとスタックに戻り、電界の効率を増加する利用可能な熱源をなす。
【0090】
図3Aから
図7Bにおいて示された例において、流路は、線形であって互いに平行であるが、この形状は、限定的なものではなく、数層に分布され及び/又はプレートに不均一な方式で分布される屈曲した流路及び/又はあらゆる他の形状の流路は、本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0091】
流路を有する放射プレートは、熱間等静圧圧縮成形(HIP)工程を用いて粉末冶金によって製造され得る。
【0092】
この場合、分配流路を形成するアセンブリは、パウダー形態で予め導入されるプレートを形成する材料によって囲われる湾曲した金属チューブによって得られる。このアセンブリは、密度が高い部分を得るために高温で加圧され、その外面は、最終的な寸法を得るために機械加工によって良好に形成され得る。変形例として、平行な第1の一連の穴あけを行い、続いて第1の一連の穴あけに垂直な第2の一連の2つの穴あけを行うことによって流路を形成することが決定され、第1の一連の穴あけが互いに連通するようなものである。次いで、例えば穴あけの寸法を有する円筒形状のプラグを溶接することによって排出領域が閉じられる。この変形例は、HIP法より費用面で有利である。
【0093】
示されていない他の実施形態によれば、対流による冷却は、放射伝達による冷却と組み合わされる。例えば、スタックは、熱導電性被覆にハウジングされ、放射プレートは、セル及び相互接続部材の横断面より大きな横断面を有し、それらは被覆に接触するようなものである;それらは、被覆に熱的に接続される。スタックに発生する一部の熱は、放射プレート及び被覆を介して対流によって排出され、その温度が制御され得る。この実施形態において、電気絶縁体は、放射プレート間の短絡を防止するために放射プレート及び被覆の間に提供される。
【0094】
以上に記載された変形実施形態の組合せは、本発明の範囲を逸脱するものではない。例えば、対流による追加の冷却を提供する中性ガスが流れる流路であって、対流による追加的な冷却を提供する電解ガスが加熱され、相変化材料を含む流路を含む放射プレートは、本発明の範囲から逸脱するものではない。あらゆる他の組合せが考えられる。
【0095】
スタックの単純化された熱管理を可能にすることに加えて、放射プレートはまた、この部分のセルが故障した場合にスタックの残りの部分が隔離されることを可能にすることができる。これを達成するために、放射プレートは、個々の電気接続部材に適合され得る。この部分の各端部に位置する2つのプレートを接続することによってブリッジを設けることがいつでも可能になる。この単純な動作は、セルの1つが損傷されるスタックのこの領域が、電気的に隔離されることを可能にする。それで、このスタックは、電流が損傷したセルを横切ることを避けながら動作し続けることができる。
【0096】
最後に、相変化材料がない場合でさえ、放射プレートは、スタックに特定の熱慣性を引き起こし、これによって高い過度の温度勾配の出現を制限する。
【0097】
高温電解槽の場合、本発明は、電解槽が、大きな熱に晒されることから回避することを可能にし、それが高い蒸気変換速度で動作することを可能にする。
【0098】
本発明を用いて、高温電解槽及び燃料電池スタックの熱特性は、効率的に且つ相対的に単純に管理され得る。使用される手段、すなわち放射プレートはまた、高い動作安全性を有し、実施され得る冷却モードに関して大きな柔軟性を有する。同様に、これらのプレートは、吸熱動作モードで要求される熱を提供するために使用され得る。
【符号の説明】
【0099】
2 セル
4 相互接続部材
6 放射プレート
10 長手方向の面
11 周辺頭部
106 放射プレート
206 放射プレート
216 流路
306 放射プレート
406 放射プレート
416 キャビティ
438 相変化材料