(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両幅方向内側に開口したアウタパネルと、当該アウタパネルよりも車両幅方向内側に配置され当該アウタパネルとで閉断面を形成するインナパネルと、前壁、側壁、後壁を有し車両幅方向内側に開口した本体部と、前記前壁と前記側壁とで形成される前側稜線と前記側壁と前記後壁とで形成される後側稜線との間に形成され車両幅方向外側に開口した凹部と、を備え、前記閉断面内に設けられて前記アウタパネルを補強する補強部材と、を含んで構成されたセンタピラーと、
前記本体部の前記前側稜線の周囲及び前記後側稜線の周囲を除いて、前記凹部と、前記凹部と対向する対向面との間に充填された充填材と、
を有する車両側部構造。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、
図1〜
図3を参照して、本発明に係る車両側部構造の第1実施形態の一例について説明する。なお、各図に適宜示す矢印FRは車両前方(進行方向)を示しており、矢印UPは車両上方を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、進行方向を向いた場合の車両幅方向の左右を示すものとする。また、図中の×印は、スポット溶接された箇所を意味している。
【0022】
図1には、車両10の一部が示されている。車両10は、車体12を有している。車体12は、ロッカ14と、ルーフサイドレール16と、ガセット18と、ドアパネル19と、車両側部構造20とを含んで構成されている。
【0023】
ロッカ14は、車体12の車両下部において、車両前後方向に延在されている。ルーフサイドレール16は、車体12の車両上部において、車両前後方向に延在されている。ガセット18は、後述するインナパネル34の車両上下方向下側に設けられており、ロッカ14及びインナパネル34に溶接で接合されている。
【0024】
ドアパネル19は、図示しないサイドドアを構成している。
図1では、車両前後方向の前側のドアパネル19の一部が示されており、後側のドアパネルの図示は省略されている。なお、車両10及び車両側部構造20は、基本的に左右対称に構成されているため、車両10の右側の車両側部構造20について説明し、左側の車両側部構造20についての説明を省略する。
【0025】
〔車両側部構造〕
図2に示すように、車両側部構造20は、センタピラー22と充填材26とを有している。
【0026】
<センタピラー>
図1に示すように、センタピラー22は、ロッカ14からルーフサイドレール16まで車両上下方向に延在されている。また、センタピラー22は、車両上下方向の下端部がロッカ14の車両前後方向中央部に溶接で接合され、上端部がルーフサイドレール16の車両前後方向中央部に溶接で結合されている。なお、ガセット18は、センタピラー22に含まれる。
【0027】
図2に示すように、センタピラー22は、車両幅方向外側に配置されたアウタパネル32と、アウタパネル32よりも車両幅方向内側に配置されたインナパネル34と、補強部材の一例としての補強パネル24とを含んで構成されている。また、センタピラー22は、後述するベルトラインBL(
図1参照)よりも車両上下方向の上側の部位が下側の部位に比べて閉断面の面積が小さくなっている。
【0028】
(アウタパネル)
アウタパネル32は、車両幅方向内側に開口した第1本体部36と、第1本体部36の車両幅方向内側端部から車両前後方向に互いに離間する方向へ張り出されたフランジ部37、38とを備えている。また、アウタパネル32は、一例として、普通鋼板で構成されている。さらに、アウタパネル32の車両上下方向上端部は、既述のように、ルーフサイドレール16(
図1参照)に溶接で接合されており、アウタパネル32の下端部は、ロッカ14(
図1参照)に溶接で接合されている。アウタパネル32は、対向面の一例である。
【0029】
第1本体部36は、車両前後方向に沿った板状の基部36Aと、基部36Aの車両前後方向両端部から車両幅方向に沿って内側へ延在された一対の板状の縦壁部36B、36Cとを有している。即ち、第1本体部36は、車両上下方向に見た断面形状が車両幅方向内側に開口したハット状に形成されている。言い換えると、基部36Aは、第1本体部36の外側壁を構成している。また、縦壁部36Bは、第1本体部36の前側壁を構成し、縦壁部36Cは、第1本体部36の後側壁を構成している。
【0030】
フランジ部37は、縦壁部36Bの車両幅方向内側端部から車両前後方向前側に板状に張り出された部位である。フランジ部38は、縦壁部36Cの車両幅方向内側端部から車両前後方向後側に板状に張り出された部位である。
【0031】
(インナパネル)
インナパネル34は、車両幅方向外側に開口した第2本体部42と、第2本体部42の車両幅方向外側端部から車両前後方向に互いに離間する方向へ張り出されたフランジ部43、44とを備えている。また、インナパネル34は、一例として、普通鋼板で構成されている。さらに、インナパネル34の車両上下方向上端部は、既述のように、ルーフサイドレール16(
図1参照)に溶接で接合されており、インナパネル34の下端部は、ガセット18(
図1参照)に溶接で接合されている。
【0032】
第2本体部42は、車両前後方向に沿った板状の基部42Aと、基部42Aに形成された凸部42Bと、基部42Aの車両前後方向両端部から車両幅方向に沿って外側へ延在された一対の板状の縦壁部42C、42Dとを有している。即ち、第2本体部42は、車両上下方向に見た断面形状が車両幅方向外側に開口したハット状に形成されている。言い換えると、基部42Aは、第2本体部42の内側壁を構成している。また、縦壁部42Cは、第2本体部42の前側壁を構成し、縦壁部42Dは、第2本体部42の後側壁を構成している。凸部42Bは、基部42Aの車両前後方向中央部が車両幅方向外側へ突出された部位である。言い換えると、凸部42Bは、車両幅方向内側へ開口した部位である。
【0033】
フランジ部43は、縦壁部42Cの車両幅方向外側端部から車両前後方向前側に板状に張り出された部位である。フランジ部44は、縦壁部42Dの車両幅方向外側端部から車両前後方向後側に板状に張り出された部位である。
【0034】
また、インナパネル34の車両前後方向の前端から後端までの長さは、アウタパネル32の車両前後方向の前端から後端までの長さとほぼ同じ長さとされている。そして、インナパネル34のフランジ部43、44は、車両幅方向内側から補強パネル24の後述するフランジ部53、54を介して、アウタパネル32のフランジ部37、38に間接的にスポット溶接で接合されている。これにより、車両上下方向に見て、アウタパネル32とインナパネル34とで閉断面46が形成されている。
【0035】
(補強パネル)
補強パネル24は、車両幅方向内側に開口した本体部の一例としての第3本体部52と、後述する凹部52Bと、第3本体部52の車両幅方向内側端部から車両前後方向に張り出されたフランジ部53、54とを備えている。また、補強パネル24は、一例として、普通鋼板よりも高強度の鋼板で構成されている。さらに、補強パネル24の厚さは、アウタパネル32の厚さ又はインナパネル34の厚さよりも厚くなっている(厚肉とされている)。加えて、補強パネル24の車両上下方向上端部は、ルーフサイドレール16(
図1参照)に溶接で接合されており、補強パネル24の下端部は、ロッカ14(
図1参照)に溶接で接合されている。また、補強パネル24は、閉断面46内に設けられてアウタパネル32を補強している。
【0036】
第3本体部52は、車両前後方向に沿った板状の基部52Aと、基部52Aに形成された凹部52Bと、基部52Aの車両前後方向両端部から車両幅方向に沿って内側へ延在された一対の板状の縦壁部52C、52Dとを有している。即ち、第3本体部52は、車両上下方向に見た断面形状が車両幅方向内側に開口したハット状に形成されている。基部52Aは、側壁の一例である。また、縦壁部52Cは、前壁の一例であり、縦壁部52Dは、後壁の一例である。
【0037】
補強パネル24を車両上下方向に見て、基部52Aと縦壁部52Cとの境界部分を前側稜線Aと称し、基部52Aと縦壁部52Dとの境界部分を後側稜線Bと称する。言い換えると、縦壁部52Cと基部52Aとで前側稜線Aが形成され、基部52Aと縦壁部52Dとで後側稜線Bが形成されている。即ち、第3本体部52は、前側稜線A及び後側稜線Bを有している。前側稜線A及び後側稜線Bは、それぞれ車両上下方向に延びている。また、前側稜線Aと後側稜線Bは、車両前後方向に間隔をあけて並んでいる。
【0038】
凹部52Bは、基部52Aの車両前後方向中央部が車両幅方向内側へ窪んだ部位である。言い換えると、凹部52Bは、車両幅方向外側に開口した部位である。また、凹部52Bは、車両前後方向で基部52Aの前側稜線Aと後側稜線Bとの間に形成されている。さらに、
図1に示すように、凹部52Bは、車両10のベルトラインBLからルーフサイドレール16まで車両上下方向に延在されている。なお、ドアパネル19の車両上下方向の上端を通る線(
図1に二点鎖線で示す)を「ベルトラインBL」と称する。
【0039】
ルーフサイドレール16(
図1参照)は、車両幅方向で対向する図示しないルーフサイドレールアウタとルーフサイドレールインナとで閉断面を形成している。ここで、凹部52Bが形成された第3本体部52は、一例として、図示しないルーフサイドレールアウタの外側面に車両幅方向の外側から接合されている。ただし、第3本体部52は、図示しないルーフサイドレールアウタとルーフサイドレールインナとの間に挿入されこれらに挟持された状態で接合されてもよい。
【0040】
図2に示すように、フランジ部53は、縦壁部52Cの車両幅方向内側端部から車両前後方向前側に板状に張り出された部位である。フランジ部54は、縦壁部52Dの車両幅方向内側端部から車両前後方向後側に板状に張り出された部位である。
【0041】
また、補強パネル24の車両前後方向の前端から後端までの長さは、アウタパネル32の車両前後方向の前端から後端までの長さとほぼ同じ長さとされている。そして、補強パネル24のフランジ部53、54は、車両幅方向内側からアウタパネル32のフランジ部37、38に直接、スポット溶接で接合されている。さらに、フランジ部53、54には、車両幅方向内側からインナパネル34のフランジ部43、44が直接、スポット溶接で接合されている。これにより、既述の閉断面46は、アウタパネル32と補強パネル24とで形成された閉断面46Aと、補強パネル24とインナパネル34とで形成された閉断面46Bとに区画されている。
【0042】
ここで、第3本体部52の前側稜線Aを形成する部位を「形成部56」と称し、後側稜線Bを形成する部位を「形成部57」と称する。形成部56は、一例として、基部52Aと基部36Aとの車両幅方向の距離を半径として、車両上下方向に見て前側稜線Aを中心とする円を描いたときに、該円の内側に位置する部位である。形成部57は、一例として、基部52Aと基部36Aとの車両幅方向の距離を半径として、車両上下方向に見て後側稜線Bを中心とする円を描いたときに、該円の内側に位置する部位である。
【0043】
また、形成部56、57を車両幅方向に沿って第1本体部36に投影したときの第1本体部36の投影部位(投影範囲)を対向部58、59と称する。即ち、車両幅方向において、形成部56と対向部58とが対向しており、形成部57と対向部59とが対向している。形成部56と対向部58との間は、「前側稜線Aの周囲」に含まれる。形成部57と対向部59との間は、「後側稜線Bの周囲」に含まれる。
【0044】
<充填材>
図2に示す充填材26は、熱硬化性の発泡材で構成されており、一例として、発泡ウレタンフォームを含んで構成されている。また、充填材26は、閉断面46A内において、前側稜線Aの周囲及び後側稜線Bの周囲を除いて、凹部52Bと、凹部52Bと車両幅方向で対向するアウタパネル32(基部36A)との間に充填されている。言い換えると、充填材26は、形成部56と対向部58との間、形成部57と対向部59との間を除いて、閉断面46A内に充填されている。
【0045】
具体的には、充填材26は、加熱により発泡(膨張)することで、凹部52Bと第1本体部36との間に凹部52B及び第1本体部36と接触して充填されている。なお、充填材26は、発泡させる前の時点において、凹部52B及び第1本体部36に接触していなくてもよい。さらに、
図1に示すように、充填材26は、一例として、凹部52BにベルトラインBLからルーフサイドレール16まで充填されている。ここで、本実施形態において、「凹部に充填材を充填すること」とは、「凹部全体を充填材で埋めること」に限らない。つまり、充填材を凹部に流し込んだ後で凹部の一部が露出した場合も「凹部に充填材を充填すること」に含まれる。
【0046】
図2に示す車両側部構造20では、既述のように、充填材26が、形成部56と対向部58との間(前側稜線Aの周囲)、形成部57と対向部59との間(後側稜線Bの周囲)に存在していない。これにより、車両側部構造20では、側突時にアウタパネル32に作用した衝突荷重(以後、単に「荷重」と称する)が、充填材26を介して直接、前側稜線A及び後側稜線Bに伝達されないようになっている。
【0047】
〔対比例〕
図7(A)には、本実施形態に対する第1対比例の車両側部構造200が示されている。車両側部構造200は、アウタパネル202と、インナパネル204と、補強パネル206と、充填材208とを有している。また、アウタパネル202、インナパネル204及び補強パネル206によりセンタピラー201が形成されている。
【0048】
アウタパネル202は、車両幅方向内側に開口した断面ハット状の本体部202Aと、本体部202Aの車両幅方向内側端部から車両前後方向前側、後側に張り出されたフランジ部202B、202Cとを有している。インナパネル204は、車両幅方向外側に開口した断面ハット状の本体部204Aと、本体部204Aの車両幅方向外側端部から車両前後方向前側、後側に張り出されたフランジ部204B、204Cとを有している。
【0049】
補強パネル206は、車両幅方向内側に開口した断面ハット状の本体部206Aと、本体部206Aの車両幅方向内側端部から車両前後方向前側、後側に張り出されたフランジ部206B、206Cとを有している。本体部206Aの車両前後方向中央には、車両幅方向外側へ突出した突出部206Dが形成されている。本体部206Aの突出部206Dに対する車両前後方向前側、後側には、前側稜線C、後側稜線Dが設定されている。フランジ部206B、206Cは、フランジ部202B、202Cに車両幅方向内側からスポット溶接で接合されている。フランジ部204B、204Cは、フランジ部206B、206Cに車両幅方向内側からスポット溶接で接合されている。
【0050】
充填材208は、補強パネル206の前側稜線C、後側稜線Dを車両幅方向外側から覆ってアウタパネル202と補強パネル206との間に充填されている。なお、アウタパネル202と補強パネル206との間の空間のうち、前側稜線Cと後側稜線Dとの間の空間の一部には、充填材208は充填されていない。
【0051】
ここで、車両側部構造200では、前側稜線C、後側稜線Dを車両幅方向外側から覆って充填材208が充填されているため、充填材208の車両幅方向の長さ分だけ補強パネル206を車両幅方向内側に配置しなくてはならない。このため、インナパネル204と補強パネル206とで形成される閉断面の車両幅方向の断面高さが、充填材208が無い構成に比べて小さくなるので、強度が低下することになる。
【0052】
また、車両側部構造200では、バリア209との側突時に衝突による荷重FAがセンタピラー201に作用した場合、断面高さが小さいため、前側稜線C、後側稜線Dが座屈する際の発生(抵抗)モーメントが小さくなり、強度が低下する可能性がある。さらに、車両側部構造200では、バリア209からセンタピラー201へ荷重FAが入力される際に、充填材208を通じて、補強パネル206の車両前後方向中央部よりも先に前側稜線C、後側稜線Dの部位に荷重FAが伝達されてしまう。このため、側突初期の車体変形量が大きくなる可能性がある。
【0053】
車両側部構造200の反力と変位の関係をCAE(Computer Aided Engineering)解析によりグラフに表したところ、
図6に示すグラフG3が得られた。グラフG3では、変位S3において反力F2となっている。
【0054】
図7(B)には、第2対比例の車両側部構造210が示されている。車両側部構造210は、車両側部構造200(
図7(A)参照)において、充填材208が前側稜線Cから後側稜線Dまでの本体部206Aを車両幅方向外側から覆って充填された構成となっている。車両側部構造210においても、車両側部構造200(
図7(A)参照)と同様に、前側稜線C、後側稜線Dを覆って充填材208が充填されているため、閉断面の車両幅方向の断面高さが小さくなり、強度が低下する可能性がある。さらに、側突初期の車体変形量が大きくなる可能性がある。
【0055】
車両側部構造210の反力と変位の関係をCAE解析によりグラフに表したところ、
図6に示すグラフG2が得られた。グラフG2では、変位S4(>S3)において反力F3(>F2)となっている。つまり、車両側部構造210では、車両側部構造200(
図7(A)参照)よりも高い反力が得られる。
【0056】
図7(C)には、第3対比例の車両側部構造220が示されている。車両側部構造220は、車両側部構造200(
図7(A)参照)において、充填材208が充填されていない構成となっている。車両側部構造220の反力と変位の関係をCAE解析によりグラフに表したところ、
図6に示すグラフG4が得られた。グラフG4では、変位S1(<S3)において反力F1(<F2)となっている。つまり、車両側部構造220では、車両側部構造200(
図7(A)参照)よりも反力が低くなる。これは、充填材208が無いためと考えられる。
【0057】
<作用並びに効果>
次に、第1実施形態の車両側部構造20の作用並びに効果について説明する。
【0058】
図3に示す車両側部構造20では、補強パネル24の第3本体部52(基部52A)に凹部52Bが形成されている。このため、基部52Aが直線状の構成に比べて、補強パネル24の強度が高められている。さらに、凹部52Bは、基部52Aに対して車両幅方向内側に向けて窪んだ形状となっているため、凹部が車両幅方向外側に向けて窪んだ構成に比べて、車両幅方向で第1本体部36と凹部52Bとの間に充填される充填材26の充填量を増やすことができる。
【0059】
ここで、車両側部構造20では、バリア209との側突時において、センタピラー22に車両幅方向内側へ向かう荷重(衝突荷重)FAが作用するため、アウタパネル32が圧縮状態となり、インナパネル34が引っ張り状態となる。つまり、アウタパネル32が圧縮力により座屈するが、アウタパネル32の第1本体部36が充填材26により車両幅方向内側から支持されているため、充填材26が無い構成に比べて、アウタパネル32の座屈が抑制される。そして、アウタパネル32の座屈が抑制されることで、アウタパネル32に接合された補強パネル24の座屈を抑制することができる。
【0060】
さらに、充填材26が、第3本体部52の前側稜線Aの周囲及び後側稜線Bの周囲を除いて、凹部52Bと第1本体部36との間に充填されている。このため、前側稜線Aの周囲及び後側稜線Bの周辺に充填材26を充填した構成に比べて、補強パネル24の前側稜線A及び後側稜線Bを車両幅方向外側に配置することができる。これにより、インナパネル34と補強パネル24とで形成される閉断面46Bの断面高さを大きくできるので、補強パネル24の前側稜線A、後側稜線B部分が座屈する際の発生(抵抗)モーメントが大きくなり、車両側部構造20の強度を向上させることができる。即ち、センタピラー22に充填材26が用いられた構成において、センタピラー22の強度を向上させることができる。
【0061】
加えて、荷重FAが作用したときに、充填材26が前側稜線Aの周囲及び後側稜線Bの周囲に無いので、前側稜線A、後側稜線Bに充填材26による荷重伝達が直接行われない。このため、バリア209がアウタパネル32を変形させて補強パネル24の前側稜線A及び後側稜線Bに接触するまで、補強パネル24への荷重伝達が遅れ、補強パネル24の変形が遅れるので、側突初期の車体12(
図1参照)の変形量を抑制することができる。
【0062】
また、車両側部構造20では、側突時にアウタパネル32に作用した荷重FAが、アウタパネル32に接触した充填材26を介して補強パネル24に伝達され、補強パネル24で負担される。これにより、充填材26を有していない構成に比べて、アウタパネル32で負担される荷重FAが低減されるので、アウタパネル32の変形を抑制することができる。
【0063】
さらに、車両側部構造20では、側突時にアウタパネル32に作用した荷重FAの一部が、車両10のベルトラインBL(
図1参照)において、充填材26を介して補強パネル24に伝達され、補強パネル24で負担される。一方、側突時にアウタパネル32に作用した荷重FAの残りが、ベルトラインBLから充填材26を介してルーフサイドレール16(
図1参照)まで伝達される。このように、側突時にアウタパネル32に作用した荷重FAが補強パネル24とルーフサイドレール16とに分散されて負担され、補強パネル24の一部に局所集中することが抑制されるので、補強パネル24の変形を抑制することができる。
【0064】
加えて、車両側部構造20では、センタピラー22の閉断面の面積が小さい部位に充填材26が充填されることで補強されているので、補強パネル24及びセンタピラー22の変形を抑制することができる。
【0065】
車両側部構造20の反力と変位の関係をCAE解析によりグラフに表したところ、
図6に示すグラフG1が得られた。グラフG1では、変位S2(変位S1より大きく変位S3よりも小さい)において反力F4(>F3)となっている。つまり、車両側部構造20では、対比例の車両側部構造200、210、220(
図7(A)、(B)、(C)参照)よりも高い反力が得られることが確認された。
【0066】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る車両側部構造70について説明する。
【0067】
第2実施形態に係る車両側部構造70は、
図1に示す第1実施形態に係る車両10において、車両側部構造20に換えて設けられている。なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。同様の構成とは、一部の長さや形状が異なるものの、基本的な機能が同様である構成を含む概念である。
【0068】
図4には、車両側部構造70が示されている。車両側部構造70は、センタピラー72と充填材26とを有している。
【0069】
<センタピラー>
センタピラー72は、ロッカ14(
図1参照)からルーフサイドレール16(
図1参照)まで車両上下方向に延在されている。また、センタピラー72は、車両上下方向の下端部がロッカ14の車両前後方向中央部に溶接で接合され、上端部がルーフサイドレール16の車両前後方向中央部に溶接で結合されている。さらに、センタピラー72は、車両幅方向外側に配置されたアウタパネル32と、内側に配置されたインナパネル34と、補強パネル24と、補助補強部材及び対向面の一例としての補助補強パネル74とを含んで構成されている。加えて、センタピラー72は、ベルトラインBL(
図1参照)よりも上側の部位が下側の部位に比べて閉断面の面積が小さくなっている。
【0070】
補強パネル24のフランジ部53、54には、車両幅方向外側からアウタパネル32のフランジ部37、38が重ねられて接合されている。そして、アウタパネル32と補強パネル24とで、閉断面46Aが形成されている。
【0071】
(補助補強パネル)
補助補強パネル74は、車両幅方向内側に開口した第4本体部82と、後述する凹部82Bと、第4本体部82の車両幅方向内側端部に形成された段差部83、84から車両幅方向内側へ延びる被接合部85、86とを備えている。また、補助補強パネル74は、一例として、普通鋼板よりも高強度の鋼板で構成されている。さらに、補助補強パネル74の厚さは、アウタパネル32の厚さ又はインナパネル34の厚さよりも厚くなっている(厚肉とされている)。加えて、補助補強パネル74の車両上下方向上端部は、ルーフサイドレール16(
図1参照)に溶接で接合されており、補助補強パネル74の下端部は、ロッカ14(
図1参照)に溶接で接合されている。補助補強パネル74は、一例として、補強パネル24を車両幅方向の内側から補強している。
【0072】
第4本体部82は、車両前後方向に沿った板状の基部82Aと、基部82Aに形成された凹部82Bと、基部82Aの車両前後方向両端部から車両幅方向に沿って内側へ延在された一対の板状の縦壁部82C、82Dとを有している。即ち、第4本体部82は、車両上下方向に見た断面形状が車両幅方向内側に開口したハット状に形成されている。言い換えると、基部82Aは、第4本体部82の外側壁を構成している。また、縦壁部82Cは、第4本体部82の前側壁を構成し、縦壁部82Dは、第4本体部82の後側壁を構成している。
【0073】
補助補強パネル74を車両上下方向に見て、基部82Aと縦壁部82Cとの境界部分を前側稜線Eと称し、基部82Aと縦壁部82Dとの境界部分を後側稜線Fと称する。即ち、第4本体部82は、前側稜線E及び後側稜線Fを有している。前側稜線E及び後側稜線Fは、それぞれ車両上下方向に延びている。また、前側稜線Eと後側稜線Fは、車両前後方向に間隔をあけて並んでいる。
【0074】
凹部82Bは、基部82Aの車両前後方向中央部が車両幅方向内側へ窪んだ部位である。言い換えると、凹部82Bは、前側稜線Eと後側稜線Fとの間で車両幅方向外側へ開口した部位である。また、凹部82Bは、
図1に示す車両10のベルトラインBLからルーフサイドレール16まで車両上下方向に延在されている。
【0075】
図4に示すように、段差部83は、車両上下方向に見て縦壁部82Cの車両幅方向内側端部にクランク状に形成された部位であり、車両幅方向内側が外側よりも車両前後方向前側に位置する形状となっている。段差部84は、車両上下方向に見て縦壁部82Dの車両幅方向内側端部にクランク状に形成された部位であり、車両幅方向内側が外側よりも車両前後方向後側に位置する形状となっている。
【0076】
被接合部85は、段差部83の車両幅方向内側端部から車両幅方向内側へ延びた板状部である。また、被接合部85は、車両前後方向の後側から補強パネル24の縦壁部52Cに重ねられスポット溶接で接合されている。被接合部86は、段差部84の車両幅方向内側端部から車両幅方向内側へ延びた板状部である。また、被接合部86は、車両前後方向の前側から補強パネル24の縦壁部52Dに重ねられスポット溶接で接合されている。
【0077】
既述のように、補強パネル24とインナパネル34とで閉断面46Bが形成されている。閉断面46Bは、補強パネル24と補助補強パネル74とで形成された閉断面46Cと、補助補強パネル74とインナパネル34とで形成された閉断面46Dとに区画されている。
【0078】
第2実施形態では、基部52Aと基部82Aとの車両幅方向の距離を半径として前側稜線Aを中心とする円を描いたときに、該円の内側に位置する範囲が、「前側稜線Aの周囲」に含まれる。また、基部52Aと基部82Aとの車両幅方向の距離を半径として後側稜線Bを中心とする円を描いたときに、該円の内側に位置する範囲が、「後側稜線Bの周囲」に含まれる。
【0079】
また、形成部56、57を車両幅方向に沿って第4本体部82に投影したときの第4本体部82の投影部位(投影範囲)を対向部92、93と称する。即ち、車両幅方向において、形成部56と対向部92とが対向しており、形成部57と対向部93とが対向している。
【0080】
<充填材>
第2実施形態の充填材26は、形成部56と対向部92との間、形成部57と対向部93との間を除いて、閉断面46C内に充填されている。具体的には、充填材26は、加熱により発泡(膨張)することで、凹部52B(補強パネル24)と凹部82Bとの間に凹部52B及び凹部82Bと接触して充填されている。なお、充填材26は、発泡させる前の時点において、凹部52B及び凹部82Bと接触していなくてもよい。さらに、充填材26は、一例として、凹部82BにベルトラインBL(
図1参照)からルーフサイドレール16(
図1参照)まで充填されている。
【0081】
このように、充填材26は、形成部56と対向部92との間、形成部57と対向部93との間に存在していない。これにより、車両側部構造70では、側突時に補強パネル24に作用した荷重が、充填材26を介して直接、補助補強パネル74の前側稜線E及び後側稜線Fに伝達されないようになっている。
【0082】
<作用並びに効果>
次に、第2実施形態の車両側部構造70の作用並びに効果について説明する。
【0083】
図5に示す車両側部構造70では、補助補強パネル74の第4本体部82(基部82A)に凹部82Bが形成されている。このため、基部82Aが直線状の構成に比べて、補助補強パネル74の強度が高められている。さらに、凹部82Bは、基部82Aに対して車両幅方向内側に向けて窪んだ形状となっているため、凹部が車両幅方向外側に向けて窪んだ構成に比べて、第3本体部52と凹部82Bとの間に充填される充填材26の充填量を増やすことができる。
【0084】
ここで、車両側部構造70では、バリア209との側突時において、センタピラー72に車両幅方向内側へ向かう荷重(衝突荷重)FAが作用するため、アウタパネル32が圧縮状態となり、インナパネル34が引っ張り状態となる。これにより、アウタパネル32が圧縮力により座屈する。さらに、座屈したアウタパネル32が補強パネル24に接触するが、補強パネル24の第3本体部52が充填材26により車両幅方向内側から支持されているため、充填材26が無い構成に比べて、補強パネル24の座屈が抑制される。そして、補強パネル24の座屈が抑制されることで、補強パネル24に接合された補助補強パネル74の座屈を抑制することができる。
【0085】
さらに、充填材26が、第3本体部52の前側稜線Aの周囲及び後側稜線Bの周囲を除いて、凹部52Bと凹部82Bとの間に充填されている。このため、前側稜線A、後側稜線Bの周辺に充填材26を充填した構成に比べて、補助補強パネル74の前側稜線E、後側稜線Fを車両幅方向外側に配置することができる。これにより、インナパネル34と補助補強パネル74とで形成される閉断面46Bの断面高さを大きくできるので、前側稜線E、後側稜線F部分が座屈する際の発生(抵抗)モーメントが大きくなり、車両側部構造70の強度を向上させることができる。即ち、センタピラー72に充填材26が用いられた構成において、センタピラー72の強度を向上させることができる。
【0086】
加えて、荷重FAが作用したときに、充填材26が前側稜線Aと前側稜線Eとの間及び後側稜線Bと後側稜線Fとの間に無いので、前側稜線Aから前側稜線Eへ、後側稜線Bから後側稜線Fへ充填材26による荷重伝達が行われない。このため、バリア209がアウタパネル32及び補強パネル24を変形させて補助補強パネル74の前側稜線E、後側稜線Fに接触するまで、補助補強パネル74への荷重伝達が遅れ、補助補強パネル74の変形が遅れる。これにより、側突初期の車体12(
図1参照)の変形量を抑制することができる。
【0087】
また、車両側部構造70では、側突時にアウタパネル32と補強パネル24とが接触することで、荷重FAがアウタパネル32から補強パネル24に伝達される。そして、補強パネル24に伝達された荷重FAは、補強パネル24で負担されると共に補強パネル24に接触した充填材26を介して補助補強パネル74に伝達され、補助補強パネル74で負担される。これにより、アウタパネル32よりも厚肉の補強パネル24及び補助補強パネル74で荷重FAが負担されるので、センタピラー72の変形を抑制することができる。
【0088】
さらに、車両側部構造70では、既述のように、側突時に補強パネル24に作用した荷重FAの一部が、車両10のベルトラインBL(
図1参照)において、充填材26を介して補助補強パネル74に伝達され、補助補強パネル74で負担される。一方、側突時に補強パネル24に作用した荷重FAの残りが、ベルトラインBLから充填材26を介してルーフサイドレール16(
図1参照)まで伝達される。このように、側突時に補強パネル24に作用した荷重FAが補助補強パネル74とルーフサイドレール16とに分散されて負担され、補助補強パネル74の一部に局所集中することが抑制されるので、補助補強パネル74の変形を抑制することができる。
【0089】
加えて、車両側部構造70では、センタピラー72の閉断面の面積が小さい部位に充填材26が充填されているので、補助補強パネル74及びセンタピラー72の変形を抑制することができる。
【0090】
(変形例)
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0091】
補助補強パネル74にフランジ部を形成して、該フランジ部を補強パネル24のフランジ部53、54に直接的に接合してもよい。また、補強パネル24、補助補強パネル74に加えて他の補強パネルを用いてもよい。つまり、補強パネルは3枚以上あってもよい。
【0092】
補強パネル24、補助補強パネル74は、ロッカ14又はルーフサイドレール16に対して直接、接合されたものに限らず、ガセットやブラケットを介して間接的に接合されたものであってもよい。
【0093】
アウタパネル32、インナパネル34、補強パネル24、補助補強パネル74は、鋼板以外の材料で構成されていてもよい。例えば、アルミニウム又は樹脂で構成されていてもよい。さらに、アウタパネル32、インナパネル34、補強パネル24、補助補強パネル74は、押出成形等の手段を用いて、一体化されていてもよい。
【0094】
充填材26は、発泡材に限らず、接着剤のように発泡していないものであってもよい。また、充填材26は、凹部52B又は凹部82Bのみに充填されたものに限らない。第1実施形態の充填材26は、形成部56、57と対向部58、59との間を除いて充填されればよいので、これらの間を除いた空間であれば、車両上下方向に見て凹部52Bの外側にも充填材26が充填されていてもよい。第2実施形態の充填材26は、形成部56、57と対向部92、93との間を除いて充填されればよいので、これらの間を除いた空間であれば、車両上下方向に見て凹部82Bの外側にも充填材26が充填されていてもよい。
【0095】
凹部52B、凹部82Bは、ベルトラインBLよりも車両上下方向の下側に形成されていてもよい。そして、充填材26が、ベルトラインBLよりも車両上下方向の下側において、凹部52B、凹部82Bに充填されていてもよい。
【0096】
補助補強パネル74は、アウタパネル32と補強パネル24との間に配置され、車両幅方向外側から補強パネル24に重ねられて接合されていてもよい。
【0097】
以上、本発明の実施形態及び変形例に係る車両側部構造について説明したが、これらの実施形態及び変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。