(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図17(a)や
図18(a)には、樹脂筐体をねじ止めする場合に利用される部品の一例が表されている。
図17(a)に表される部品100はインサートナットと呼ばれ、
図18(a)における部品101はヘリカルコイルと呼ばれる。これら部品100,101の内壁面には、ねじに螺合するねじ溝が切ってある。部品100,101は、
図17(b)や
図18(b)のように樹脂筐体102に取り付けられる。樹脂筐体102への部品100の取り付けは、例えば、成形用金型に組み込まれることにより樹脂筐体102の成形時に取り付けられる場合と、樹脂筐体102の成形後に圧入されることにより取り付けられる場合とがある。樹脂筐体102への部品101の取り付けは、例えば、樹脂筐体102の成形後に工具を利用して行われる。
【0003】
また、樹脂筐体102をねじ止めする場合に、
図19(a)に表されるような板状ナット103を利用する場合がある。この板状ナット103は、樹脂筐体102に形成されたスリット104内に圧入されることにより、
図19(b)のように樹脂筐体102に取り付けられる。
【0004】
上述したような部品100,102,103以外にも、ねじ止めを補助する部品として、
図20(a)に表されるような板状の部品105がある。この部品105は、ねじ108a,108bによって、取り付け対象の部材110に取り付けられる。また、部品105には、ねじ穴111が形成されている。このねじ穴111には、ねじ113が螺合可能である。締結対象の部材114に形成されているねじ挿通用穴と、部材110に形成されているねじ挿通用穴とに順に挿通されたねじ113が部品105のねじ穴111に螺合することにより、
図20(b)のように部材110,114をねじ113により締結することができる。
【0005】
なお、特許文献1や特許文献2には、板状ナットを取り付け対象の部材に固定(保持)させる構造が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態の締結補助部品を模式的に表す図である。また、
図2は、第1実施形態の締結補助部品を装着(取り付け)対象の部材に装着する構造を模式的に表す図である。
【0018】
第1実施形態の締結補助部品1は、例えば金属により形成され、
図2に表されるような装着対象の部材(例えば樹脂材料により形成される部材)7に装着される。この装着対象の部材7には、ねじ12を挿通するねじ挿通用穴8が形成されている。また、装着対象の部材7における締結補助部品1が装着される側の面(
図2では、裏面)7bには、位置決め穴10が形成されている。なお、位置決め穴10は、
図2の例では、装着対象の部材7における裏面7bから表面7aに貫通する貫通孔の態様であるが、裏面7bに形成された凹部(つまり、表面7aに貫通していない穴)の態様であってもよい。
【0019】
締結補助部品1は、基体2を有する。この基体2は、装着対象の部材7に形成されているねじ挿通用穴8の形成領域に向き合う基準面3を備える。また、基体2には、ねじ穴4が形成されている。このねじ穴4の内壁面には、ねじ溝が切ってあり、ねじ穴4には、装着対象の部材7におけるねじ挿通用穴8に挿通されるねじ12が螺合する。
【0020】
さらに、基体2には、基準面3よりも突出する突出部5が形成されている。突出部5は、装着対象の部材7における位置決め穴10に嵌るように形成されている。この突出部5を位置決め穴10に挿入することにより、装着対象の部材7における締結補助部品1(基体2)の位置決めを行うことができる。
【0021】
この第1実施形態では、突出部5は位置決め穴10に隙間無く嵌るのではなく、突出部5のサイズは、位置決め穴10よりも小さく設計されており、突出部5は、位置決め穴10に遊嵌する。換言すれば、突出部5は位置決め穴10に遊びがある状態で嵌合する。
【0022】
なお、
図1および
図2の例では、突出部5と位置決め穴10は、2個ずつ形成されているが、突出部5と位置決め穴10は、1個ずつであってもよいし、それぞれ3個以上形成されてもよく、数が限定されるものではない。
【0023】
この第1実施形態の締結補助部品1は、
図17〜
図19に表されるような部品100,101,103に比べると、樹脂筐体に圧入する等の手間が掛かる作業を行わずに装着対象の部材に装着できるので、締結補助部品1の装着作業の手間を軽減できる。
【0024】
その上、この第1実施形態では、突出部5が位置決め穴10に遊嵌する構成であるので、突出部5が位置決め穴10に嵌められた状態においても、締結補助部品1は装着対象の部材7に対して変位することができる。このため、例えば装着対象の部材7のねじ穴8の形成位置が設計位置からずれてしまっても、その位置ずれしたねじ穴8と締結補助部品1のねじ穴4との位置が合うように締結補助部品1を簡単に変位できる。これにより、締結補助部品1を利用して、締結対象の部材を締結する場合に、ねじ穴8の位置ずれ等の悪影響が小さくなり、締結作業の円滑さを図ることができる。
【0025】
<第2実施形態>
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。
【0026】
図3は、第2実施形態の締結補助部品である板状ナットを表す斜視図であり、
図4は、その板状ナットを表す三面図である。この第2実施形態の板状ナット15は、
図5(a),(b)に表されるような筐体17のケース18とカバー19をねじ止めする部分に装着される。すなわち、ケース18は、樹脂材料により形成される。このケース18には、例えば通信機器や電子機器が収容される。カバー19は、ケース18の開口部を覆うことにより、ケース18に収容されている通信機器や電子機器の例えば回路を保護する機能を有する。カバー19は、例えば樹脂材料により形成される。このカバー19は、ケース18に連結部を中心にして回転可能な状態で連結されており、ケース18の開口部を開閉することができる。
図5(a)は、ケース18の開口部が開いている状態を表し、
図5(b)は、ケース18の開口部がカバー19により閉じている状態を表している。このようなケース18とカバー19は、通信機器や電子機器を構成する。
【0027】
これらケース18とカバー19には、ケース18の内部を封止すべく、ケース18とカバー19をねじにより締結する構成が備えられている。すなわち、カバー19には、ねじ挿通用穴20が形成されている。ケース18には、カバー19が開口部を閉じた場合にカバー19のねじ挿通用穴20の形成領域に向き合う部分に突出片21が突き出し形成されている。この突出片21には、ねじ挿通用穴22が形成されている。ねじ挿通用穴22には、カバー19のねじ挿通用穴20と共通のねじが挿通される。
【0028】
この第2実施形態の板状ナット15は、例えば、ケース18における突出片21に装着され、ケース18とカバー19のねじ挿通用穴20,22に挿通されるねじによるケース18とカバー19の締結を補助する部材である。
【0029】
図6(a)は、板状ナット15と、その装着対象の部材である突出片21とを模式的に表す図である。
図6(b)は、板状ナット15が突出片21に装着された態様(つまり、板状ナット15の装着構造)を模式的に表す図である。
図7(a)は、
図6(a)に表されている板状ナット15および突出片21をケース18の底面側から見た状態で表す図である。
図7(b)は、板状ナット15が突出片21に装着された態様(板状ナット15の装着構造)をケース18の底面側から見た状態で表す図である。さらに、
図8は、
図6(a)に表されている板状ナット15および突出片21を
図6(a)における上方側から見た平面図である。
図9は、板状ナット15が突出片21に装着された状態を、
図8に表されているA−A部分の断面図により表す図である。
【0030】
突出片21には、前述したように、ねじ挿通用穴22が形成されている。また、
図6(a),(b)や
図8等に表されているように、突出片21には、位置決め穴23a,23bが裏面(底面)側から表面側に貫通する態様でもって形成されている。さらに、突出片21の両側の側端縁には、ガイド壁24a,24bが設けられている。これらガイド壁24a,24bは、
図6(a)における底面側に向けて伸長形成されており、この伸長先端部には、互いに向き合う方向に伸びる伸長部25a,25bが形成されている。突出片21とガイド壁24a,24bと伸長部25a,25bは、弾性を有する樹脂材料やゴム材により形成されている。これら突出片21とガイド壁24a,24bと伸長部25a,25bは、板状ナット15を収容する収容空間26を構成する。この収容空間26には、板状ナット15が挿入される挿入口が設けられている。
【0031】
第2実施形態では、板状ナット15は、金属材料により形成される。この板状ナット15は、平板状の基体27を有する。この基体27の一つの基板面28は、装着対象の突出片21におけるねじ挿通用穴22の形成領域と向き合う基準面に設定されている。なお、第2実施形態の説明においては、基体27の基準面28は表面とも記され、また、基体27における基準面28の反対側の基板面29は裏面とも記される。
【0032】
基体27における両側端縁には、裏面29に対し起立する方向に伸びる脚部30a,30bが設けられている。
図6(a)や
図8等に表されるように、基体27が突出片21における設定の装着位置に配置された場合に、脚部30a,30bは、ガイド壁24a,24bに沿うような態様となる。これら脚部30a,30bを含む基体27の幅W1(
図4を参照)は、装着対象の突出片21に設けられているガイド壁24a,24b間の間隔W2(
図9を参照)よりも僅かに小さい寸法となっている。これにより、ガイド壁24a,24b間において基体27は僅かに動くことができる。また、脚部30a,30bの先端から基準面28までの高さH1(
図4を参照)は、突出片21と伸長部25a,25bとの間隔D(
図9を参照)よりもやや小さい寸法となっている。
【0033】
さらに、基体27には、基準面28から突き出る突出部31a,31bが形成されている。これら突出部31a,31bは、基体27が突出片21における設定の装着位置に配置された場合に、突出片21における位置決め穴23a,23bに嵌るように、その形成位置が定められている。突出部31a,31bにおける基体27の側端縁に沿う方向の長さL1(
図4を参照)は、位置決め穴23a,23bにおける同方向の長さL2(
図8を参照)よりも短くなっている。また、突出部31a,31bの幅は、位置決め穴23a,23bの幅よりも僅かに狭くなっている。突出部31a,31bと位置決め穴23a,23bは上述したような寸法関係を持っていることにより、位置決め穴23a,23bに突出部31a,31bが挿入された状態において、突出部31a,31bは、位置決め穴23a,23bの内部で動くことができる。換言すれば、突出部31a,31bは位置決め穴23a,23bに遊嵌する。
【0034】
さらに、突出部31a,31bにおける基板面28からの突出高さH2(
図4を参照)は、脚部30a,30bの先端から基準面28までの高さH1に加算した高さH3(H3=H1+H2)が突出片21と伸長部25a,25bとの間隔Dよりもやや大きい寸法となっている。
【0035】
上述したように、収容空間26を構成する突出片21とガイド壁24a,24bと伸長部25a,25bに関わる形状および寸法と、板状ナット15の形状および寸法とは、互いに関連付けられて設計される。
【0036】
第2実施形態における板状ナット15は次のようにして収容空間26(突出片21)に装着される。すなわち、板状ナット15がガイド壁24a,24b間における挿入口から収容空間26に差し込まれる。このとき、板状ナット15における脚部30a,30bの側面はガイド壁24a,24bに沿い、脚部30a,30bの先端部は伸長部25a,25bに沿い、さらに、基準面28は突出片21に向き合う状態にする。
【0037】
その後、板状ナット15の突出部31a,31bが収容空間26に挿入してから当該突出部31a,31bが位置決め穴23a,23bに嵌るまでは、高さH3が収容空間26の間隔Dよりも大きいことから、ガイド壁24a,24bと伸長部25a,25bが次のように変形する。つまり、樹脂材料から成る伸長部25a,25bが板状ナット15の脚部30a,30bからの押圧力を受けて押し下げられる方向に変形し、これに伴いガイド壁24a,24bはその先端側が外側に広がる方向に変形する。
【0038】
板状ナット15の突出部31a,31bが位置決め穴23a,23bに嵌ることにより、脚部30a,30bから伸長部25a,25bへの押圧力が軽減し、伸長部25a,25bおよびガイド壁24a,24bは樹脂材料の弾性力(復元力)により、元の状態に戻る。
【0039】
このようにして、板状ナット15を収容空間26に装着することができる。この第2実施形態では、板状ナット15が収容空間26における設定の装着位置に配設されている状態では、板状ナット15の突出部31a,31bが突出片21の位置決め穴23a,23bに嵌って抜け止めされている状態となる。ただ、この第2実施形態では、前述したように、そのような状態において、板状ナット15は、基準面28に垂直な方向と、収容空間26の挿入口側から奥側に向かう方向と、この方向に直交する方向とに変位可能である。
【0040】
基体27には、さらに、ねじ穴32が形成されている。このねじ穴32は、板状ナット15が突出片21における設定の装着位置に装着されている場合に、突出片21のねじ挿通用穴22の開口部に、開口部の位置が合うように形成されている。このねじ穴32の内壁面には、仕様等により定められたサイズのねじと螺合するねじ溝が形成されている。
【0041】
第2実施形態における板状ナット15は上述したように構成されている。この板状ナット15が突出片21(収容空間26)に装着されている状態で、
図5(a)に表されるようにケース18の開口部を閉じたカバー19のねじ挿通用穴20と、ケース18の突出片21のねじ挿通用穴22とに順に、ねじが挿通される。そして、そのねじが板状ナット15のねじ穴32に螺合することにより、ケース18とカバー19がねじにより締結される。
【0042】
この第2実施形態では、前述したように、板状ナット15は、収容空間26内で動くことが可能な状態で収容空間26に収容(保持)される。このため、仮に、突出片21のねじ挿通用穴22の形成位置が設計位置からずれてしまっても、そのずれ量が板状ナット15の変位可能なずれ量であれば、ねじ挿通用穴22にねじ穴32の位置が合うように板状ナット15が変位(追従)できる。このような場合には、ねじ挿通用穴22の位置ずれの悪影響を受けずに、ねじ穴32とねじ挿通用穴22との位置合わせができる。このため、第2実施形態における板状ナット15およびその装着構造は、ねじ挿通用穴22の位置ずれに起因した問題、つまり、その位置ずれに因りねじ挿通用穴22を通したねじをねじ穴32に螺合できないという問題の発生を抑制できる。
【0043】
さらに、この第2実施形態では、板状ナット15は、抜け止めされた状態で収容空間26に保持される構成を備えている。このため、板状ナット15のねじ穴32にねじが螺合されていない状態でも、板状ナット15が収容空間26から簡単に抜け出てしまう問題が防止される。
【0044】
ところで、例えば樹脂により形成される部材間をねじにより締結する際に、そのねじ締結を補助する部品として、
図21(a)に表されるようなクリップ状の部品106がある。このクリップ状の部品106には、ねじ穴116が形成されている。
図21(b)のように、部品106でもって締結対象の部材118,119を挟持し、これら部材118,119とクリップ状の部品106をねじ120によってねじ止めすることにより、部材118,119が締結される。このような部品106には、次のような問題がある。つまり、例えば、部材118,119の締結を何らかの事情により解消するために、ねじ120を外した際に、クリップ状の部品106が部材118,119から外れ、例えば落ちてしまい、探すのに手間取るという面倒が発生する。
【0045】
これに対し、第2実施形態では、板状ナット15は、収容空間26に抜け止めされている状態で保持されることから、ねじがねじ穴32に螺合していなくとも、板状ナット15が収容空間26から簡単に抜け落ちる事態を防止できる。このため、収容空間26から落ちた板状ナット15を探すという手間を軽減することができる。
【0046】
さらに、この第2実施形態では、突出片21の位置決め穴23a,23bが貫通孔の態様であることから、次のように板状ナット15を突出片21から簡単に外すことができる。例えば、作業者は、板状ナット15が突出片21(収容空間26)に装着されている状態で、外側から指や工具により位置決め穴23a,23bを通して突出部31a,31bを押すことにより、位置決め穴23a,23bと突出部31a,31bの嵌合状態を解消する。そして、そのように嵌合状態が解消されている状態を維持しながら、作業者が、板状ナット15を収容空間26から外に押し出す力を加えることにより、板状ナット15を収容空間26から出して外すことができる。これにより、板状ナット15の交換が容易となり、次のような効果を得ることができる。すなわち、装着対象の部材に埋め込み装着される部品(例えば
図17におけるインサートナット100等)は当該部品だけを交換することができない。このために、ねじ山が潰れた等の理由によってその部品が使用できなくなった場合には、取り付けられている部材全体(具体例を挙げると、例えば、ケース18)を交換しなければならない事態が生じる。これに対し、第2実施形態の板状ナット15は上述したように単品で交換が可能であることから、板状ナット15が使用できなくなった場合には、板状ナット15を交換すればよく、ケース18を交換する事態を回避できる。
【0047】
<第3実施形態>
以下に、本発明に係る第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態の説明において、第2実施形態の板状ナットおよびその装着構造を構成する構成部分と同一名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0048】
図10は、第3実施形態の締結補助部品である板状ナット15を表す三面図である。この第3実施形態における板状ナット15は、第2実施形態の板状ナット15と同様の構成に加えて、さらに、もう一つの別のねじ穴33が設けられている。
【0049】
すなわち、この第3実施形態における板状ナット15では、基体27は、
図10に表される中心線OLを中心にした線対称な形状を備えている。かつ、基体27には、2つのねじ穴32,33が形成されている。これらねじ穴32,33の中心位置は、中心線OLの線上であり、かつ、互いに、基体27の
図10に表される中心線OWを中心にした線対称な位置である。ねじ穴32,33の大きさや種類は、それぞれ、例えば仕様等により設定されるものである。具体的には、例えば、ねじ穴32は、メートルねじと、三角ねじと、台形ねじと、ユニファイねじというような複数種のねじのうちの予め設定された一種のねじに対応するように構成される。また、別のねじ穴33は、ねじ穴32と同じ種類のねじに対応するように構成されてもよいし、ねじ穴32と異なる種類のねじに対応するように構成されてもよい。また、ねじ穴32,33は、同径であっても異なる径であってもよい。
【0050】
板状ナット15における上述した以外の構成は、第2実施形態における板状ナット15の構成と同様である。また、この第3実施形態の板状ナット15は、第2実施形態と同様に、装着対象の突出片21(収容空間26)に装着される。
【0051】
この第3実施形態における板状ナット15は、上述したような構成を備えているので、
図11(a)に表されるように突出片21に装着されることにより、ねじ穴32が利用可能な状態となる。また、板状ナット15を
図11(a)の状態から
図11(b)の状態となるように回転し、この状態の板状ナット15が収容空間26に挿入されることにより、板状ナット15は、ねじ穴33が利用可能な状態となる。すなわち、第3実施形態における板状ナット15は、例えば、ねじ穴32,33が同種同径である場合には、スペアの機能を備えたナットとなる。また、板状ナット15は、例えばねじ穴32,33が異なる径、あるいは、異なる種類のねじに対応するねじ穴である場合には、二種類兼用のナットとして機能することができる。
【0052】
<第4実施形態>
以下に、本発明に係る第4実施形態を説明する。なお、この第4実施形態の説明において、第2や第3の実施形態における板状ナットおよびその装着構造を構成する構成部分と同一名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0053】
図12は、第4実施形態の締結補助部品である板状ナットを模式的な平面図により表す図である。第4実施形態の板状ナット15は、第2実施形態の構成に加えて、基体27には、オプション用の貫通孔(スリット)40が形成されている。
【0054】
この第4実施形態における板状ナット15は、例えば、
図5(a)、(b)に表されるようなカバー19にオプション部材を装着する場合に、カバー19にオプション部材を取り付ける取り付け部材として利用可能である。
図13(a)は、第4実施形態における板状ナット15を利用して、カバー19にオプション部材(オプションカバー)42が取り付けられている態様を説明する斜視図である。
図13(b)は、
図13(a)に表されている態様の正面図である。
図14(a)は、
図13(a)に表されているカバー19とオプション部材42と板状ナット15とを分解状態で表す図である。
図14(b)は、それらカバー19とオプション部材42と板状ナット15の取り付け作業を説明する図である。
【0055】
すなわち、
図13(a)等に表される例では、カバー19の側縁部には、板状ナット15が嵌合かつ固定されるナット取り付け部(図示せず)が形成される。このナット取り付け部は、板状ナット15が、貫通孔40を外部に突出させた状態で嵌合し、かつ、固定(保持)される大きさおよび形状を備えている。また、オプション部材42には、板状ナット15の貫通孔40に嵌る引っ掛け凸部43(
図13(b)を参照)が形成されている。
【0056】
カバー19とオプション部材42と板状ナット15が上述したような構成を備えている場合においては、オプション部材42はカバー19に板状ナット15を利用して次のように固定される。すなわち、
図14(b)のように、オプション部材42に形成されている取付け用爪部44が、カバー19に設けられているオプション用係止部45に係止することにより、カバー19にオプション部材42が簡易的に取り付けられる。その後、板状ナット15がカバー19のナット取り付け部に挿入固定されると共に、板状ナット15の貫通孔40にオプション部材42の引っ掛け凸部43が嵌め込まれる。このような作業により、簡単にオプション部材42をカバー19に固定することができる。
【0057】
この第4実施形態における板状ナット15は、オプション用の貫通孔40が形成されているので、ねじ締結に利用される部品としての機能に加えて、さらに、ねじ締結以外の手法による取り付け部品としての機能をも備えることができる。
【0058】
さらに、カバー19にオプション部材(オプションカバー)42を取り付ける場合には、カバー19と、ケース18の突出片21とをねじ締結しない場合がある。このような場合に、ケース18の突出片21に板状ナット15を装着した状態で使用すると、板状ナット15のねじ穴32が埃等に因り目詰まりすることが考えられ、使用したいときに板状ナット15を使用できないという事態が想定される。これに対し、オプションカバー42の取り付けに板状ナット15を利用することにより、ねじ穴32の目詰まりを防止しながら、板状ナット15をカバー19に保持させておくことができる。これにより、オプション部材42を外してカバー19とケース18のねじ締結が必要になった場合に、オプション部材42の取り付け用に使用していた板状ナット15を突出片21に付け直し、目詰まりの問題無く、板状ナット15をねじ締結に使用することができる。
【0059】
<その他の実施形態>
なお、この発明は、第1〜第4の実施形態に限定されず、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第2〜第4の実施形態では、板状ナット15が収容される収容空間26を形成しているガイド壁24a,24bおよび伸長部25a,25bは弾性を持つ樹脂材料により形成されている。これにより、板状ナット15は、収容空間26に挿入される際に、ガイド壁24a,24bおよび伸長部25a,25bを変形させながら収容空間26に進入していくことができる。これに代えて、突出片21とガイド壁24a,24bと伸長部25a,25bは金属により形成されていてもよい。この場合には、ガイド壁24a,24bや伸長部25a,25bは変形し難いので、例えば、
図15(a)に表されるような弾性体46が伸長部25a,25bに配設される。
図15(a)は、弾性体46を、突出片21等と共に表す斜視図である。
図15(b)は、弾性体46が配設された収容空間26から板状ナット15が外された状態を表す図である。
図16(a)は、弾性体46が配設された収容空間26に板状ナット15が収容されている状態を表す正面図である。
図16(b)は、
図16(a)の態様を模式的な斜視図により表す図である。
【0060】
弾性体46は、板状ナット15が収容空間26に挿入された際には脚部30a,30bからの押圧力でもって圧縮方向に変形し、突出片21との間隔を広げ、板状ナット15を収容空間26に進行させることができる構成を備えている。かつ、弾性体46は、板状ナット15の突出部31a,31bが突出片21の位置決め穴23a,23bに嵌った場合に、弾性力によって突出部31a,31bが位置決め穴23a,23bに抜け止め状態で嵌っている状態を維持する構成を備えている。
【0061】
このような弾性体46を利用することにより、ガイド壁24a,24bおよび伸長部25a,25bが金属により形成される場合にも、板状ナット15を第2〜第4の実施形態と同様の装着構造でもって装着対象の部材に装着することができる。
【0062】
また、第2〜第4の実施形態では、板状ナット15を取り付ける締結部分は、1か所である例を示している。これに対し、ねじ締結部分が複数有る装置の場合には、それら締結部分の全てあるいは選択された複数個所が、第2〜第4の実施形態と同様の板状ナット15およびその装着構造を利用した締結構成であってもよい。
【0063】
さらに、第4実施形態では、板状ナット15には、オプション用として、貫通孔(スリット)40が形成されている。この貫通孔40に代えて、板状ナット15には、凹部や、切り欠きが形成されていてもよい。板状ナット15に形成されるオプション用の貫通孔あるいは凹部あるいは切り欠きの形状は、当該貫通孔あるいは凹部あるいは切り欠きを利用する部材の形状に応じて設定される。