(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記試薬層は、媒介物質と酵素とを含み、前記試薬層は、検体の存在下で、前記酵素の反応により、還元された媒介物質を生成するように構成される請求項1に記載の方法。
前記電気容量値が予め定められた閾値を超える場合には、前記試験片が前記サンプルで十分に充填されていると判定し、前記電気容量値が予め定められた閾値未満の場合には、前記試験片が前記サンプルで十分に充填されていないと判定するステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、以下の詳細な説明と併用される添付の図面からより完全に理解される。
【0010】
本明細書に開示された構造、機能、製造、並びに装置、システム及び方法の使用法の原理につき総合的な理解を与えるために確かな実施形態を記載する。これらの実施形態の一つ又は複数の例を添付の図面に示す。当業者は、特にここ記載されまた添付図面に示された装置及び方法は、代表的な実施形態であって本発明を限定するものではなく、かつ本開示の範囲は唯一請求項によって確定されることを理解するであろう。代表的な一実施形態に関連して示されるか又は記載された特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような変更や変形は本開示の範囲に含まれることを意図している。
【0011】
本システム及び方法は、多種多様なサンプル中の多種多様な検体の判定に用いるのに適しており、かつ、特に全血、血漿、血清、間質液、又はそれらの派生物中の検体の判定の使用に適している。代表的な実施形態の一つとして、対電極を有する薄膜セルデザインと高速(例えば、試験時間5秒)の3−パルス電気化学的検出に基づくグルコース試験システムは、小サンプル(例えば、約0.4μL)を必要とし、血中グルコース測定の信頼性と精度の向上を齎すことができる。反応セル内では、サンプル中のグルコースは、グルコース脱水素酵素を用いてグルコノラクトンへと酸化され、また、電気化学的に活性な媒介物質は酵素からパラジウム作用電極へ電子を往復させるために用いることができる。ポテンショスタットは3−パルス電位波形を作動電極と対電極とに印加するために用いられ、その結果、グルコース濃度を算出するために用いられる過渡試験電流が生じる。その上、過渡試験電流から得られるさらなる情報は、サンプル充填剤を識別し、ヘマトクリット、温度変化、電気化学的活性成分による血液サンプルにおける変動を補正し、かつ可能性のあるシステムエラーを特定するために用いることができる。
【0012】
本方法は、原理的に空間的に分離された第1及び第2電極及び試薬層を有する任意の種類の電気化学的セルに用いることができる。例えば、電気化学的セルは、試験片の形状を持つことも可能である。一態様において、試験片は、サンプル反応チャンバを規定するための薄いスペーサ又は試薬層が配置された区間により分離された二組の対電極を含むことができることである。当業者は、例えば、共面電極を有する試験片をも含め他の種類の試験片もまた本明細書に記載の方法に用いることができることを正しく理解しえよう。
【0013】
図1Aから4Bは、本明細書に記載の方法及びシステムでの使用に適した代表的な試験片62の様々な図を示している。
図1Aに示すように、代表的な一実施形態においては、遠端部80から近端部82へ延在し、側縁部56,58を有する伸長体の試験片62が提供される。
図1Bに示されているように、試験片62は第1の電極66、第2の電極64及び2組の電極層64と66の間に挟まれたスペーサ60をも含んでいる。
図1B及び4Bに示すように、第1の電極層66は、第1の電極166、第一の接続トラック76、及び第1のコンタクトパッド67を含み、第1の接続トラック76は、第1の電極166を第1のコンタクトパッド67に電気的に接続する。ここで留意すべきは、
図1B及び4Bに示されているように、第1の電極166は、試薬層72の直下の第1の電極層66の一部分であることである。同様に、
図1B、
図2、及び
図4Bに示されているように、第2の電極層64は、第2の電極164、第2の接続トラック78及び第2のコンタクトパッド63を含み、第2の接続トラック78は第2の電極164を第2のコンタクトパッド63に電気的に接続する。ここで留意すべきは、
図4Bで示されているように、第2の電極164は、試薬層72の上方の第2の電極層64の一部分であることである。
【0014】
図1B及び
図4Bに示されているように、サンプル反応チャンバ61は、第1の電極166、第2の電極164及び試験片62の遠端部80に近接したスペーサで定められる。
図4Bに示されているように、第1の電極166及び第2の電極164は、それぞれサンプル反応チャンバ61の底面及び上面を定めるものである。
図4Bに示されているように、スペーサ60の切り欠き領域68はサンプル反応チャンバ61の側壁を定めるものである。
図1Aから
図1Cに示されているように、一態様においては、サンプル反応チャンバ61は、サンプル注入口及び/又は排出口となるポート70を有している。例えば、ポートの一つは、流体サンプルが侵入することを許し、別のポートは空気が排出することを許すものである。
【0015】
代表的な実施形態において、サンプル反応チャンバ61は、小さな容積を有することができる。例えば、チャンバ61は、約0.1マイクロリッターから5マイクロリッター、約0.2マイクロリッターから3マイクロリッター、又は、好ましくは約0.3マイクロリッターから約1マイクロリッターの範囲の容積を有することができる。小さな容積を備えるために、カットアウト68は約0.01cm
2から約0.2cm
2、約0.02cm
2から約0.15cm
2、又は、好ましくは約0.03cm
2から約0.08cm
2の範囲の面積を持つことができる。さらに、第1の電極166及び第2の電極164は、約1ミクロンから約500ミクロン、好ましくは約10ミクロンから約400ミクロンの間、さらに好ましくは約40ミクロンから約200ミクロンの間の範囲で間隔を保つことができる。相対的に近接した電極間隔は酸化還元サイクルが生じることをも許し、第1の電極166で生成された酸化された媒介物質は第2の電極164へ拡散して還元され、次いで第1の電極166へ拡散して戻されて再び酸化される。当業者は、様々なこのような容積、領域及び/又は電極の間隔は、本開示の精神と範囲に含まれることを正しく理解しえよう。
【0016】
一実施形態において、第1の電極層66及び第2の電極層64は、金、パラジウム、カーボン、銀、プラチナ、酸化スズ、イリジウム、インジウム又はそれらの混合物(例えばインジウムがドープされた酸化スズ)から作られた導電物質で構成される。さらに、電極は、絶縁シート(表示されてはいない)上に導電物質をスパッタリング、無電解めっき、又はスクリーン印刷法で処理して形成することができる。一代表的な実施形態では、第1の電極層66と第2の電極層64はそれぞれパラジウム及び金をスパッタして作ることができる。スペーサ60として採用できる好適な材料は、例えば、プラスチック(例えば、PET、PETG、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン)、シリコン、セラミック、ガラス、接着剤及びそれらの組み合わせなどの種々の絶縁材料である。一実施形態として、スペーサ60は、ポリエステルシートのそれぞれ反対面上に感圧性又は加熱活性性の接着剤が塗布されたものであってよい。当業者は、第1の電極層66、第2の電極層64、及び/又はスペーサ60に用いられるその他の種々の物質も、本開示の精神並びに範囲内にあることを正しく理解しうるであろう。
【0017】
サンプル反応チャンバ61内の試薬層72の処理を行なうために、様々なメカニズム及び/又はプロセスを利用することができる。例えば、試薬層72には、サンプル反応チャンバ61内でスロットコーティング、チューブ末端からの塗付、インクジェット処理、およびスクリーン印刷処理などのプロセスを用いて処理を施すことができる。一実施形態では、試薬層72は、少なくとも媒介物質と酵素とを含むことができ、第1の電極166上へ堆積される。好適な媒介物質の例としては、フェリシアニド、フェロセン、フェロセン誘導物、オスミウムビピリジル錯体、及びキノン誘導物が挙げられる。好適な酵素の例としては、グルコースオキシターゼ、ピロロキノリンキノン(PQQ)補助因子を用いたグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)補助因子を用いたGDH、及びフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)補助因子を用いたGDHが挙げられる[E.C.1.1.99.10]。試薬層72は、33mMカリウム・シトラコネート、pH6.8,0.033%プルロニックP103、0.017%プルロニックF87,0.85mMCaCl
2,30mMスクロース、286μMPQQ,15mg/mLアポーGDH、及び0.6Mフェリシアニドを含む処方で作ることができる。又は、PQQを処方から外し、かつアポ−GDHをFAD−GDHで置き換えることができる。プルロニックスはエチレンオキシド及び酸化プロピレンに基づくブロック共重合体であり、消泡剤及び/又は湿潤剤として機能することができる。
【0018】
この処方は、網目状パラジウムの上方約150μmに支持され約10m/分で移動する13号標準規格注射針を用いて、570μL/分の割合で適用することができる。又は、一定の試薬塗布密度を維持するために、試薬中の固体濃度を50%増量し、流速を380μL/minに減速することができる。網目状パラジウムには、酵素処方を施す前に2−メルカプトエタンスルホン酸(MESA)を塗布することができる。1.2mm幅のチャネルが切られた厚さ95μmのスペーサは、70℃で試薬層及び網目状パラジウムまで積層することができる。次に、MESA−塗布織布状金は、スペーサの反対側まで積層することができる。このスペーサは、相対的に高分子量を持つ線形飽和共重合ポリエステル樹脂であるバイテルのような熱可塑性プラスチックが両面に塗布されたPETで作ることができる。この結果生成される積層は、サンプル反応チャンバの充填経路の長さが約3.5mmとなるようにカットされ、全容積は約0.4μLとなる。
【0019】
一実施形態として、試薬層72は第1の電極166の面積よりも大きな面積を有することができる。この結果、スペーサ60の一部は試薬層72と重なり接する可能性がある。このスペーサ60は、試薬層72の一部がスペーサ60と第1の電極166との間にあるにも関わらず、流体が第1電極166へ不透性を持つように構成されうる。スペーサ60は、試薬層72の一部分を部分的に混合又は溶解して、少なくとも全試験時間の間電極面積を明確に保つに十分な、第1の電極166に対する流体不透性結合を形成する。試薬層72が十分に乾燥していないある種の環境では、スペーサ60は、流体不透性シールを形成することができず、その結果、流体はスペーサ60と第1の電極166との間に浸潤する可能性がある。このような漏洩事象は、グルコースの測定結果を不正確なものとする可能性がある。
【0020】
第1の電極166又は第2の電極164の何れかは、印加電圧の強度及び/又は極性に従い、作用電極として機能することができる。作用電極は、還元された媒介物質濃度に比例する制限試験電流を測定することができる。例えば、もし電流制限体が還元された媒介物質(例えば、フェロシアニド)であれば、試験電圧が第2の電極164に対して酸化還元媒介物質の電位より十分に大きい限り、それは第1の電極166で酸化される。このような状況では、第1の電極166は作用電極として機能し第2の電極164は対電極/参照電極として機能する。当業者は、対電極/参照電極は単に参照電極又は対電極として参照してよいことに留意すべきである。制限酸化は、測定された酸化電流は、バルク溶液から作用電極面へ拡散する還元された媒介物質の流量に比例して全ての還元された媒介物質が作用電極面で消耗され枯渇した時に生じる。バルク溶液とは、枯渇領域内に還元された媒介物質が存在しない、作用電極から十分に離れた溶液の一部を指す。試験片62に対して特に明記しない限り、以下、試験用計器100により印加された電位は、全て第2の電極164に関して記述されるものであることに留意するべきである。
【0021】
同様に、試験電流が酸化還元媒介物質の電位より十分に低ければ、その還元された媒介物質は、制限電流として第2の電極で酸化される。このような状況では、第2の電極164は、作用電極として機能し、第1の電極166は、対電極/参照電極として機能する。
【0022】
分析を実行するに当り、最初に、サンプル反応チャンバ61へある量の流体サンプルをポート70経由で注入するなどの手順が行なわれる。一実施態様において、ポート70及び/又はサンプル反応チャンバ61は、毛細管現象により流体サンプルがサンプル反応チャンバ61に充填されるように構成される。第1の電極166及び/又は第2の電極164は、サンプル反応チャンバ61の毛細管現象を促進するために親水性試薬を塗布してよい。例えば、2−メルカプトエタンスルホン酸のような親水性部分を有するチオール誘導体試薬を、第1の電極及び/又は第2の電極に塗布してよい。
【0023】
図5は、第1の導体パッド67a、67b及び第2の導体パッド63に接続する試験用計器100を示す簡単な概略図である。
図2に示されているように、第3の導体パッド63は、U字ノッチ65経由での試験用計器への電気的接続を確立するために用いられる。
図5に示されているように、一実施形態では、試験用計器100は、第2の電極コネクター101、第1の電極コネクター(102a、102b)、試験電圧ユニット106、電流測定ユニット107、プロセッサー212、メモリーユニット210、及び画像表示装置202を有することができる。第1の導体パッド67は、67a及び67bの2組の突起を有することができる。代表的な一実施形態では、第1の電極コネクター102a及び102bは、それぞれ独立に、突起67a及び67bへ接続することができる。第2の電極コネクター101は、第2の導体パッド63に接続することができる。試験用計器100は、突起67aと67bとの間の抵抗、即ち電気的導通を測定して、試験片62が試験用計器100と電気的に導通しているか否かを判定することができる。当業者は、試験用計器100は、試験片62が試験用計器100に対して適切に配置されているときを判定するために、多種多様なセンサー及び回路を用いることができることを正しく理解しえよう。
【0024】
一実施形態において、試験用計器100は、第1の導体パッド67と第2の導体パッド63との間に試験用の電圧及び/又は電流を加えることができる。試験用計器100は、試験片が挿入されていることを一度認識すると作動し始め、流体検出モードを開始する。一実施形態において、流体検出モードでは、試験用計器100は、約1マイクロアンペアの一定電流を第1の電極166と第2の電極164との間に加える。試験片62は当初は乾燥しているため、試験用計器100は相対的に大きな電圧を測定するものであり、この電圧は試験用計器100の内部のアナログーデジタル(A/D)変換器で制限することができる。投与過程で流体サンプルが第1の電極166と第2の電極164との間の空隙を架橋すると、試験用計器100は測定電圧が予め定められた閾値より低い値に減少したことを検出して自動的にグルコースの試験を開始する。
【0025】
一実施形態として、
図6に示すように、試験用計器100は規定された時間、複数の電圧を印加してグルコースの試験を行なう。複数の試験電圧の印加には、第1の時間区分t
1の第1の試験電圧V
1、第2の時間区分t
2の試験電圧V
2、及び第3の時間区分t
3の第3の試験電圧V
3が含まれる。グルコースの試験時間区分t
Gはグルコース試験を行なうための総時間を示す(しかし、必ずしも全ての時間がグルコースの試験に関係する訳ではない)。グルコース試験時間区分tGは、約1秒から5秒の範囲にある。さらに、
図6に示すように、第2の試験電圧V2は直流(DC)試験電圧成分とこれに重畳した交流(AC)、即ち振動する試験電圧成分を含むことができる。この重畳された交流試験電圧成分は、t
capで表された時間区分の間印加されるものである。
図6の差込図は高周波AC成分を拡大したものである。
【0026】
任意の時間区分で測定される多値試験電流は、ナノ秒当り約1回から100ミリ秒当り1回の範囲の頻度で発生されてよい。直列に3試験電圧を用いた一実施形態が記述されているが、当業者は、グルコース試験には異なる数の開回路及び試験電圧を用いることができることを正しく理解しえよう。例えば、代替実施形態の一つとして、グルコース試験は、第1の時間区分の間は開回路、第2の時間区分の間は第2の試験電圧、また第3の時間区分の間は第3の試験電圧を含むことができる。当業者は、名称「第1の」、「第2の」及び「第3の」は、便宜上選択されるものであり、必ずしも試験電圧が印加される順序を反映するものではないことを正確に理解しえよう。例えば、一実施形態では、第3の試験電圧が第1及び第2試験電圧の印加に先行して印加される電位波形を用いることができる。
【0027】
一度グルコース試験が始まると、試験用計器100は第1の試験電圧V
1(例えば
図6で−20mV)を第1の時間区分t
1(例えば
図6で1秒)の間印加することができる。第1の時間区分t
1は、約0.1秒から約3秒の範囲であり、好ましくは0.2秒から2秒の範囲であり、かつ最も好ましくは約0.3秒から約1秒の範囲である。
【0028】
この第1の時間区分t
1は、サンプル反応チャンバ61がサンプルで十分に満たされ、また試薬層72が少なくとも部分的に溶解又は溶媒和するに十分な長さである。一態様では、第1の試験電圧V
1は、相対的に少量の還元又は酸化電流が測定されるように、媒介物質の酸化還元電位に相対的に近い値である。
図7は、第1の時間区分t
1の間に、第2の時間区分t
2及び第3の時間区分t
3に比べて相対的に少量の電流が観察されることを表している。例えば、フェリシアニドおよび/またはフェロシアニドを媒介物質に用いた場合、第1の試験電圧V
1は、約−100mVから約−1mVの範囲、好ましくは約−50mVから約−5mV、最も好ましくは約−30mVから約−10mVの範囲に設定できる。
【0029】
第1の試験電圧V
1を印加後、試験用計器100は、第1の電極166と第2の電極164との間に試験電圧V
2(例えば、
図6で−0.3V)を第2の時間区分t
2の間印加する。この第2の試験電圧V
2は、制限酸化電流が第2の電極164で測定されるように、媒介物質酸化還元電位に対して十分大きな負の値を持つ。例えば、媒介物質にフェリシアニド及び/又はフェロシアニドを用いた場合、第2の試験電圧V
2は、約−600mVから約ゼロmVの範囲、好ましくは約−600mVから約−100mVの範囲、更に好ましくは約−300mVとなる。
【0030】
第2の時間区分t
2は、還元された媒介物質(例えばフェロシアニド)の生成速度を制限酸化電流強度に基づいてモニターすることができるように、十分に長くあるべきである。還元された媒介物質は、試薬層72による酵素反応により生成される。第2の時間区分t
2の間において、還元された媒介物質の制限量は、第2の電極164で酸化され、また酸化された媒介物質の非制限量は第1の電極166で還元されて、第1の電極166と第2の電極164との間に濃度勾配が生じる。
【0031】
代表的な実施形態において、第2の時間区分t
2もまた十分な量のフェリシアニドが第2の電極164で生成されることができるように十分に長くあるべきである。第3の試験電圧V
3の間に第1の電極166でフェロシアニドを酸化させるための制限電流が測定されるように、第2の電極164において十分な量のフェリシアニドが要求される。第2の時間区分t
2は60秒より短ければよく、好ましくは約1秒から約10秒の範囲であり、さらに好ましくは約2秒から約5秒の範囲である。同様に、
図6でt
capと指示された時間区分は、また時間の範囲を超えて持続してもよいが、一代表的な実施形態では約20ミリ秒の長さである。一代表的な実施形態として、重畳された交流試験電圧成分は、第2の試験電圧V2を印加後、約0.3秒から0.4秒後に印加されて、周波数約109Hz、振幅約+/−50mVの正弦波を誘発する。
【0032】
図7は、第2の時間区分t
2の初めの相対的に小さなピークi
pbと、ピークに続く第2の時間区分t
2の間絶対値が漸増する酸化電流を表している。この小さなピークi
pbは、約1秒時点での還元された媒介物質の枯渇開始により現れる。この小さなピークi
pbの後の酸化電流の絶対値の漸増は、試薬層72によるフェロシアニドの発生により引き起こされるものであり、このフェロシアニドは次いで第2の電極164へと拡散する。
【0033】
第2の試験電圧V
2を印加後、第3の時間区分t
3の間(例えば
図6で1秒)、試験用計器100は、第1の電極166と第2の電極164との間に第3の試験電圧V
3(例えば、
図6の約+0.3V)を印加する。第3の試験電圧V
3は、第1の電極166で制限酸化電流が測定されるように、媒介物質の酸化還元電位に対して十分大きな正値であってよい。例えば、媒介物質としてフェリシアニド及び/又はフェロシアニドを用いる場合、第3の試験電圧V
3は、約ゼロmVから約600mVの範囲にあり、好ましくは100mVから600mVの範囲にあり、更に好ましくは300mVである。
【0034】
第3の時間区分t
3は、第1の電極166の近傍で還元された媒介物質(例えばフェロシアニド)の拡散を酸化電流強度に基づいてモニターするために十分な長さであってよい。第3の時間区分t
3の間、還元された媒介物質の制限量が第1の電極166で酸化され、また非制限量の酸化された媒介物質が第2の電極164で還元される。第3の時間区分t
3は、約0.1秒から約5秒の範囲にあり、好ましくは約0.3秒から3秒の範囲にあり、更に好ましくは0.5秒から2秒の範囲にある。
【0035】
図7は、第3の時間区分t
3の始まりにある相対的に大きなピークi
pcとこれに続く定常電流値i
ssへと減少する電流を表している。一実施形態において、第2の試験電圧V
2は第1の極性を有することができ、また第3の試験電圧V3は、第1の極性と逆極性である第2の極性を有してよい。他の実施形態では、第2の試験電圧V
2は、酸化還元性媒介物質の電位に対して十分に負であり、また第3の試験電圧V3は、酸化還元媒介物質電位に対して十分に正である。第3の試験電圧V3は、第2の試験電圧V2の直後に印加してよい。しかしながら、当業者は、第2及び第3の試験電圧の大きさ及び極性は、検体濃度を判定する方法に従って選択することができることを正確に理解しえよう。
【0036】
図8は、フローダイアグラムによるグルコース濃度の一判定法を示すものである。ユーザーは、試験片を試験用計器に挿入し、その試験片にサンプルを注ぐ。ステップ1802に示されているように、試験用計器は、サンプルの存在を検出して試験電圧を印加する。ステップ1804に示されているように、試験電圧に応答して、試験用計器は試験電流を測定する。次いで、試験用計器のマイクロプロセッサーは、正確なグルコース測定が行なわれ、またシステムエラーが無いことを保証するように、結果として得られた試験電流値を処理する。
【0037】
この方法における他のステップでは、ステップ1806に示されているように、対照溶液(CS)/血液識別試験を行なうことができる。ステップ1808に示されているように、CS/血液識別試験でサンプルが血液であると判定された場合には、方法1800は、以下のステップを含む一連のステップへ移行する:血中グルコースアルゴリズムの適用1810、ヘマトクリット補正1812、血液温度補正1814、及びエラーチェック1000;また、CS/血液識別試験がサンプルがCSである(即ち、血液ではない)と判定された場合には、方法1800は、以下の一連のステップへと移行する:CSグルコースアルゴリズム1824の適用、CS温度補正1826及びエラーチェック1000。エラーチェック1000を実行後、何らかのエラーがあるか否かを判定するためにステップ1818が実行される。ステップ1820に示されているように、エラーが無ければ、試験用計器はグルコース濃度を出力するが、エラーがあれば、ステップ1822に示されているように試験用計器はエラーメッセージを出力する。
【0038】
対照溶液(CS)/血液識別試験
CS/血液識別試験1806には、第1の参照値及び第2の参照値を用いることができる。第1の参照値は、第1の時間区分t
1の間の電流値に基づくものであり、第2の参照値は、第2の時間区分t2と第3の時間区分t3の両区分の間の電流値に基づくものである。一実施形態では、
図6の試験電圧波形を用いる場合、第1の参照値は第1の過渡電流時間に得られた電流値の総和を取ることにより得ることができる。非制限例では、第1の参照値i
sumは、数式1により表される。
【数1】
ここで、項i
sumは、電流値の総和であり、tは時間である。第2の参照値は、残留反応指数と呼ばれるものであり、数式2に示されているように、第2の時間区分の間の電流値と第3の時間区分の間の電流値との第7番目の比R
7により取得される。
【数2】
ここで、absは絶対値関数、及び3.8と4.15は、この特定の例におけるそれぞれ第2及び第3の時間区分の秒で表された時間である。サンプルが参照溶液であるか又は血液であるかを数式1の第1の参照値及び数式2の第2の参照値に基づいて判定するために、識別基準を用いることができる。例えば、数式1の第1の参照値は予め定められた閾値と比較することができ、また数式2の第2の参照値は予め定められた閾値関数と比較することができる。この予め定められた閾値は、約12マイクロアンペアである。この予め定められた閾値関数は、数式1の第1の参照値を用いた関数に基づくものである。さらに厳密に言えば、この予め定められた閾値関数は数式3のようになる。
【数3】
ここで、Z1は、例えば約0.2のような定数である。かくして、CS/血液識別試験1806は、もし数式4のようであればサンプルを血液であると特定することができる。
【数4】
その他の場合には、サンプルは、参照溶液である。
【0039】
血液グルコースアルゴリズム
サンプルが血液であると同定されれば、試験電流値に対してステップ1810の血液グルコースアルゴリズムが実行される。数式4に示されるグルコースアルゴリズムを用いて、第1のグルコース濃度G
1が算出される。
【数5】
【0040】
ここで、i
1は第1の試験電流、i
2は第2の試験電流、i
3は第3の試験電流であり、またa、p及びzは、実験的に得ることができる校正定数である。数式4の全ての試験電流値(例えばi
1、i
2、及びi
3)には、電流の絶対値を用いる。第1の試験電流値i
1と第2の試験電流値i
2とは、第3の時間区分t
3の間に現れる予め定められた試験電流の一つ以上の平均値又は総和として定義されるものである。第3の試験電流値i
3は、第2の時間区分t2の間に現れる予め定められた試験電流の一つ以上の平均値又は総和として定義されるものである。当業者は、名称「第1」、「第2」、及び「第3」は便宜上選択されたものであり、必ずしも電流値が算出される順序を反映するものではないことを正しく理解しえよう。
【0041】
数式4は、さらに正確なグルコース濃度を与えるように変更することができる。数式5に示されているように、i
1項は、試験電流値の単純な総和の平均を用いる代わりに、ピーク電流値i
pbとi
pcと定常状態電流i
ssを含むように定義することができる。
【数6】
ここで、定常電流i
ssの算出は、数学モデル、外挿、事前に定められた時間区分の間の平均、それらの組み合わせ、又は定常電流を算出するための任意の数のその他の方法に基づいて行なうことができる。i
ssを算出するための方法のいくつかの例が米国特許第5,942,102及び6,413,410に見出され、この各々の全ての内容を本明細書の一部として援用する。
【0042】
又は、i
ssは5秒の時点の試験電流値に定数K
8(例えば0.678)を乗ずることにより推定することができる。かくして、i
ss〜 i(5) x K
8となる。K
8項は数式6を用いて推定することができる。
【数7】
ここで、数0.975は、第3の試験電圧V
3が印加されてからの秒数であってi(5)に相当し、約0.95秒から1秒にわたる線形変化を仮定しての、0.95から1秒の間の平均電流であり、D項は、血中における拡散係数であって典型的には約5 x 10
−6 cm
2/secであり、また項Lは、スペーサ60の高さを表し、約0.0095cmであると仮定する。
【0043】
再び数式5に戻り、
図6及び
図7における試験電圧と試験電流波形に基づけば、i
pcは、4.1秒時点における電流値であり、i
pbは、1.1秒時点における試験電流値である。
【0044】
数式4に戻り、i
2は次式で定義される。
【数8】
また、i
3は次式で定義される。
【数9】
【0045】
数式7に示されるように、数式5は数式4と結合されて、血液サンプル中の内因性及び/又は外因性の干渉物の存在を補正してさらに正確なグルコース濃度を判定するための式を生成することができる。
【数10】
第1のグルコース濃度G
1は、血液グルコースアルゴリズムの出力であり、項a、p及びzは実験的に導出できる定数である。
【0046】
CSグルコースアルゴリズム
サンプルがCSと識別されれば、ステップ1824のCSグルコースアルゴリズムは、試験電流値を用いて実行することができる。CSに対するa、p及びzの値は、血液に対する値とは異なるが、CSに対する第1のグルコース濃度G
1は上記数式7を用いて算出することができる。
【0047】
異常ヘマトクリットレベルにおける検体検出
内因性の干渉物に加えて、ある環境下での異常ヘマトクリットレベルは、グルコース測定の精度に影響を与える。それゆえに、サンプルが異常ヘマトクリットレベル(例えば約20%又は約60%)を有する場合でも正確である第2のグルコース濃度G
2を与えるようにG
1を修正して、ヘマトクリット補正1812を行なうことができる。
【0048】
ここに、異常ヘマトクリットサンプル中のグルコース濃度を正確に測定する方法及びシステムが提供される。例えば、
図9は、異常ヘマトクリットレベルを有する血液サンプルを説明する正確なグルコース濃度を算出するための方法2000を示すフローダイアグラムである。ステップ2001に示されるように、ユーザーは、サンプルを試験片に加えることにより試験を開始する。ステップ2002に示されるように、第1の試験電圧V
1は第1の時間区分t
1の間印加される。ステップ2004に示されるように、その結果生じる試験電流は、第1の時間区分t
1の間測定される。ステップ2006に示めされるように、第1の時間区分t
1の後に、第2の試験電圧V
2が第2の時間区分t
2の間印加される。ステップ2008に示されるように、結果として生じる試験電流は、第2の時間区分t
2の間測定される。第2の時間区分t
2の後に、第3の試験電圧V
3が第3の時間区分t
3の間印加される。ステップ2012に示されるように、次いで、結果として生じる試験電流が第3の時間区分t
3の間測定される。
【0049】
ステップ2014に示されるように、試験電流値は、試験用計器により集められているので、第1のグルコース濃度G
1を算出することが可能である。第1のグルコース濃度G
1は、数式4又は7を用いて算出することができる。次いで、ステップ2016に示されているように、ヘマトクリットレベルHを算出することができる。
【0050】
ヘマトクリットレベルは、グルコース試験時間区分t
Gの間に取得された試験電流値を用いて推定することができる。又は、ヘマトクリットレベルHは、第2の時間区分t
2と第3の時間区分t
3の間で取得された試験電流値を用いて推定してもよい。一実施形態では、ヘマトクリットレベルHは、第1のグルコース濃度G
1及びi
2に基づいたヘマトクリット算出式を用いて推定することができる。代表的なヘマトクリット算出式を数式8に示す。
【数11】
ここで、Hは、ヘマトクリットレベル、i
2は、第2の時間区分における少なくとも一電流値、K
5は、第5の定数、K
6は、第6の定数、及びK
7は、第7の定数である。GDH−PQQが酵素の場合、K
5、K
6及びK
7は、それぞれ約―76、56及び250である。FAD−GDHが酵素の場合、K5,K6及びK7は、それぞれ約―73.5、58.8及び213である。
図10は、数式8を用いて推定されたヘマトクリットレベルが、標準法を用いて測定された実際のヘマトクリットレベルと略線形な相関を持つことを示している。
【0051】
ステップ2018に示されるように、ステップ2016でヘマトクリットレベルHが算出されると、その算出値は予め定められたより下位のヘマトクリットレベルH
Lと比較される。この、下位の予め定められたヘマトクリットレベルH
Lは、約30%とすることができる。ステップ2020に示されるように、もしヘマトクリットレベルHが下位の予め定められたヘマトクリットレベルH
Lよりも低ければ、第1のグルコース濃度G
1は、上位の予め定められたグルコース濃度G
Uと比較される。上位の予め定められたグルコース濃度G
Uは、約300mg/dLであってよい。ステップ2022に示されるように、ヘマトクリットレベルHが下位のヘマトクリットレベルH
Lより低くなければ、そのヘマトクリットレベルHは、上位の予め定められたヘマトクリットレベルH
Lと比較される。この上位の予め定められたヘマトクリットレベルH
Uは、約50%である。ステップ2028に示されるように、ヘマトクリットレベルHがH
Uよりも大きい場合には、第1のグルコース濃度G
1は、下位の予め定められたグルコース濃度G
Lと比較される。この下位の予め定められたグルコース濃度G
Lは、約100mg/dLとしてもよい。ステップ2018及び2022は、ヘマトクリットレベルHがH
L以上であり、かつH
U以下であれば、ステップ2034に示されているように、方法2000は、第1のグルコース濃度G
1を出力することを示している。
【0052】
第1のグルコース濃度G
1が上位の予め定められたグルコース濃度G
Uより低い場合には、ステップ2024に示されているように、補正値Corrを算出するために第1の関数を用いることができる。この第1の関数は、数式9の形式を持つ。
【数12】
ここで、K
1は、第1の定数であり、H
Lは、下位の予め定められたヘマトクリットレベルである。一実施形態として、K
1及びH
Lは、それぞれ約−0.004及び30%である。
【0053】
しかしながら、第1のグルコース濃度G
1が上位の予め定められたグルコースレベルG
U以上であれば、ステップ2026に示されているように、補正値Corrを算出するために第2の関数を用いることができる。第2の関数は、数式10の形式をとることができる。
【数13】
ここで、K
2は、第2の定数であり、またG
maxは予め定められた最大グルコース濃度である。一実施形態として、K
2及びG
maxは、それぞれ約−0.004及び約600mg/dLとしてよい。数式9及び10に対する補正値Corrは、約−5から約ゼロの範囲に制限することができる。このため、Corrが−5より小さければ、Corrは−5に設定され、またCorrがゼロより大きければ、Corrはゼロに設定される。
【0054】
もし第1のグルコース濃度G1が下位の予め定められたグルコース濃度GL未満であれば、ステップ2030に示されているように、補正値Corrを算出するために第3の関数を用いることができる。この第3の関数は、数式11の形式をとることができる。
【数14】
しかしながら、第1のグルコース濃度G
1が下位の予め定められたグルコース濃度G
L以上であれば、ステップ2032に示されているように、補正値Corrを算出するために第4の関数を用いることができる。この第4の関数は、数式12の形式をとることができる。
【数15】
ここで、K
4は、第4の定数であって約0.011としてよい。数式12に対する補正値Corrは、約ゼロから約6の範囲に制限してよい。このため、Corrは、ゼロより小さければゼロに設定され、6より大きければ6に設定される。
【0055】
ステップ2024において、第1の関数を用いてCorrを算出した後、ステップ2036において、第1のグルコース濃度が100mg/dLと比較される。第1のグルコース濃度が100mg/dL未満であれば、ステップ2038に示されるように、第1の補正式を用いて第2のグルコース濃度が算出される。100mg/dLは、グルコース閾値を表し、かつ制限数と解釈されるべきではないことに注意すべきである。一実施形態として、グルコース閾値は、約70mg/dLから約100mg/dLの範囲である。第1の補正式は、数式13の形式をとることができる。
【数16】
第1のグルコース濃度G
1がステップ2036に基づき100mg/dL以上であれば、第2のグルコース濃度G
2は、ステップ2040に示されているように、第2の補正式を用いて算出される。第2の補正式は、数式14の形式をとることができる。
【数17】
第2のグルコース濃度G2は、ステップ2038又は2040の何れかで算出された後、ステップ2042でグルコース測定値として出力される。
【0056】
ステップ2026、2030又は2032でCorrを算出後、ステップ2040に示されているように、第2のグルコース濃度G
2は、数式14を用いて算出することができる。Corrが(第3の関数に対して)ゼロに等しい場合、第2のグルコースG
2は、第1のグルコース濃度G
1と等しくなり、ステップ2042においてグルコース測定値として出力される。
【0057】
異常ヘマトクリットレベルを有する血液サンプル中の正確なグルコース濃度を算出するための方法2000は、数人のドナーからの血液を用いて実証された。
図11は、広範囲のヘマトクリットレベル及びグルコース濃度を有する血液にバイアスを与えて複数の試験片で試験したバイアスプロットを表している。更に具体的にいえば、
図11は、広範囲のヘマトクリットを有する全血サンプルが新しい試験システムの正確さ及び精度に及ぼす影響を表している。図に示されているように、YSI2700(Yellow Springs Instruments社、オハイオ州イエロースプリング)に関するセンサー応答の偏りが、血漿グルコース濃度に対して描画されている。このデータは、3バッチのセンサーと4人の血液ドナーとを用いて得られたものである。ヘマトクリットは、サンプルにグルコースを注入する前に20%(四角形)、37−45%(円)又は60%(三角形)に調整された。これらのデータは、電気化学的測定に対する薄層セル及び3―パルス解決法が、血中グルコース試験システムの試験性能を改善する機会を提供することを示唆している。このため、ヘマトクリットレベルH及び第1のグルコース濃度G
1に依存する補正値Corrを用いることにより、血液サンプルが異常ヘマトクリットレベルを有する場合においてさえも、さらに正確に第2のグルコース濃度G
2を測定することができる。
【0058】
血液温度補正
図8へ戻り、温度の低減効果でグルコース濃度の正確さの改善を図るために、血液温度補正1814を試験電流値に適用することができる。温度補正されたグルコース濃度を算出するための方法は、温度の値の測定と第2の補正値Corr
2の算出とを含む。この第2の補正値Corr2は、温度の値と第1のグルコース濃度G
1又は第2のグルコース濃度G
2の何れかに基づくものであるが、G
1及びG
2は前述したように温度補正を含まない。従って、第2の補正値Corr2は、グルコース濃度G
1又はG
2を温度補正するために用いられる。
【0059】
図12は、血液温度補正を適用するための方法1814の一実施形態を示すフローダイアグラムである。はじめに、例えばステップ1810による第1のグルコース濃度G
1又はステップ1812による第2のグルコース濃度G
2などの温度補正がなされていないグルコース濃度が取得される。血液温度補正は、G
1又はG
2の何れかで実施されるが、簡単のため、G2を用いて血液の温度補正につき記述する。
【0060】
方法1814におけるステップ1910に示されるように、ある温度値が測定される。この温度は、サーミスタ又はその他の試験用計器に組み込まれた温度表示装置、又はその他の数多の方法又は手段を用いて測定することができる。続いて、その温度の値Tが第1の温度閾値T
1より大きいか否かを判定するための判定が行なわれる。
図12に示されるように、この温度閾値T
1は約15℃である。温度の値Tが15℃より大きければ、ステップ1914に示されるように、第2の補正値Corr
2を決定するために第1の温度関数が適用される。温度の値Tが15℃以下であれば、ステップ1916に示されるように、第2の補正値Corrを決定するために第2の温度関数が適用される。
【0061】
第2の補正値Corr
2を算出するための第1の温度関数は、数式15の形式に表される。
【数18】
ここで、Corr
2は補正値、K
9は第9番目の定数(例えばGDH−PQQに対して0.57及びFAD−GDHに対して0.89)、Tは温度の値、T
RTは室温の値(例えば22℃)、K
10は第10番目の定数(例えばGDH−PQQに対しては0.00023及びFAD−GDHに対しては0.00077)及びG
2は第2のグルコース濃度である。TがT
RTに略等しい場合には、Corr
2は、約ゼロである。ある例では、第1の温度関数は、所定の周囲条件では変動が縮小するような室温での補正を原則的に行なわないように構成できる。第2の補正値Corr
2を算出するための第2の温度関数は、数式16の形式にできる。
【数19】
ここで、Corr
2は補正値、K
11は第11番目の定数(例えば、GDH−PQQに対して0.57及びFAD−GDHに対して0.89)、Tは温度の値、T
RTは室温の値、K
12は第12番目の定数(例えば、GDH−PQQに対して0.00023及びFAD−GDHに対して0.00077)、G
1は第1のグルコース濃度、K
13は第13番目の定数(例えば、GDH−PQQに対して0.63及びFAD−GDHに対して1.65)、T
1は第1の温度閾値及びK
14は第14番目の定数(例えば、GDH−PQQに対して0.0038及びFAD−GDHに対して0.0029)である。
【0062】
ステップ1914又は1916を用いてCorr
2が算出された後、Corr
2が予め定められた範囲に収まるよう保証するために、2〜3の打ち切り処理が行なわれ、これにより異常値の危険性が軽減される。ある実施形態では、ステップ1918及び/又はステップ1922を用いてCorr
2の範囲を−10から+10の範囲に制限することができる。ステップ1918では、Corr
2が10より大きいか否かの判定が行なわれる。Corr
2が10より大きければ、ステップ1920に示されているように、Corr
2は10に設定される。Corr
2が10以下であれば、次いで、ステップ1922に示されるように、Corr
2が−10未満であるか否かの判定が行なわれる。ステップ1924に示されるように、Corr
2が−10未満であれば、Corr
2は−10に設定される。Corr
2の値が既に−10と+10の範囲にあれば、一般的に打ち切り処理は不要である。
【0063】
Corr
2が決定されると、ステップ1928又はステップ1930の何れかを用いて、温度補正されたグルコース濃度を算出することができる。ステップ1926において、温度補正されていないグルコース濃度(例えばG
2)が100mg/dLであるか否かの判定が行なわれる。G
2が100mg/dL未満であれば、温度補正されたグルコース濃度G
3は、補正値Corr
2を第2のグルコース濃度G
2に加えることにより、数式17を用いて算出することができる。
【数20】
G
2が100mg/dL以上であれば、温度補正されたグルコース濃度G
3は、Corr
2を100で割って1を加え、これに第2のグルコース濃度G
2を乗ずることにより、数式18を用いて算出することができる。
【数21】
【0064】
温度の影響が補正された第3のグルコース濃度が決定されると、ステップ1932に示されるように、第3のグルコース濃度は、出力される。
【0065】
血液温度補正に対するこの方法1814は、グローブボックス中の血液を用いて約5℃から45℃の温度範囲にわたり実証された。この血液サンプルは、約20から50%の範囲のヘマトクリット、及び約20から600mg/dL範囲相当の血漿グルコース濃度を有するものであった。グローブボックスは、予め定められた温度を保持することができる密閉室であった。グローブボックスのグローブ部は、外部の試験者がグローブボックスの内部でグルコース試験を実施できるようになっていた。試験者は、試験用計器に試験片を挿入し、試験資料は制御された温度及び相対湿度(RH)の環境で採取された。RHは、試験期間中、サンプル液滴の蒸発を相対的に低いレベルに維持するために、約60%に維持された。一般的に、RHは、試験用計器上での凝結を防ぐために、高くしすぎるべきではない。血液は、グローブボックスの外部で37℃の温度平衡下におかれ、パラフィルム上へピペットで移され、迅速にグローブボックス内へ移され、試験片へ注がれた。この細かいところまで配慮された方法は、指から採血された毛細血管の血の投与シミュレーションを可能にするものであった。
図13は、試験用計器に温度補償機能が備えられていない場合の血液試験の結果には、実質上、温度バイアスがかかっていることを示している。バイアスの約83.4%のみが参照グルコース濃度の15%、即ち15mg/dL内にあったためである。対照的に、
図14に見られるように、試験用計器に温度補償がある場合には、血液試験の結果のバイアスは、はるかに少ない。
図13の結果と比較した場合、参照グルコース値の15%、即ち15mg/dL範囲外のバイアス率は、はるかに僅少であったためである。
【0066】
対照溶液温度補償
図15は、CS温度補正を適用する方法1826の一実施形態を描写するフローダイアグラムである。このCS温度補正は、Corr
2を算出するための温度関数が異なる点を除き、血液温度補正に類似している。
【0067】
はじめに、例えばステップ1824から得られた第1のグルコース濃度のように、温度補正を施されていないグルコース濃度が得られる。次いで、ステップ1910に示されるように、温度の値が測定される。ステップ1934に示されるように、CSに対する第2の補正値Corr
2を測定するために第3の温度関数が適用される。第2の補正値Corr
2を算出するための第3の温度関数は、数式19の形式となる。
【数22】
ここで、K
15は第15番目の定数(例えば、GDH−PQQに対して0.27及びFAD−GDHに対して0.275)、Tは温度の値、T
RTは室温(例えば22℃)、K
16は第16番目の定数(例えばGDH−PQQに対して0.0011、及びFAD−GDHに対して0.00014)及びG
2は第2のグルコース濃度である。
【0068】
ステップ1934を用いてCorr
2が算出された後、Corr
2が予め定められた範囲に収まるよう保証するために、2〜3の打ち切り処理が行なわれる。一実施形態として、
図20に示されるように、ステップ1918及び/又は1922を用いてCorr
2を−10から+10の範囲となるように制限することができる。ステップ1918において、Corr
2が10より大きいか否かが決定される。Corr
2が10より大きければ、ステップ1920に示されているように、Corr
2を10に設定することができる。Corr
2が10以下ならば、ステップ1922に示されるように、Corr
2が−10未満であるか否かの判定がなされる。ステップ1924に示されるように、Corr
2は−10未満であれば−10に設定される。
【0069】
Corr
2が決定されると、ステップ1928又は1930を用いてCSに対して温度補正されたグルコース濃度を算出することができる。ステップ1926において、温度補償がされていないグルコース濃度(例えばG
1)が100mg/dL未満であるか否かの決定が行なわれる。G
1が100mg/dL未満であれば、ステップ1928に示されるように、G
1+Corr
2によって第3のグルコース濃度G
3が算出される。G
1が100mg/dL以上であれば、ステップ1930に示されるように、温度補正濃度を得るためにCorr2を100で割り、1を加算し、第2のグルコース濃度を乗じることにより第3のグルコース濃度G
3を算出することができる。温度の影響が補正されたCSに対する第3のグルコース濃度が算出されると、ステップ1932に示されているように、方法1800の次のステップ又はエラーチェック1000に対して、この値が出力される。
【0070】
CS温度補正のための方法1826は、約5℃から45℃の温度範囲のグローブボックス中で実証された。相対湿度(RH)は、約60%に維持された。
図16は、計器に温度補正機能がない場合、CSの結果には実質的な温度バイアスがかかっていることを示している。結果のかなりの部分が参照グルコース値の15%即ち15mg/dLの範囲外となるためである。対照的に、
図17に見られるように、試験用計器に温度補正がある場合には、血液試験の結果におけるバイアスははるかに僅少である。グルコース値の15%、即ち15mg/dLの範囲外には測定結果は無かったためである。
【0071】
システムエラーの同定
試験を実行する場合のユーザーエラー、試験用計器エラー、及び試験片不良を含む多様なシステムエラーを同定するための様々な実施形態もまた提供される。システムは、部分充填又は二重充填されたサンプルチャンバを用いた試験を識別できるように構成される。また、このシステムは、試験の完全性を危うくするサンプルチャンバからの漏洩状態、及び/又はシステムのある部分(例えば、試験片)の損傷状態を同定可能に構成される。
【0072】
例えば、
図18は、検体測定の実施時のシステムエラーを同定する方法1000の典型的な実施形態を示すフローダイアグラムである。ステップ1002に示されるように、ユーザーは、サンプルを試験片に加えることにより試験を開始する。サンプルが加えられた後、ステップ1004aに示されているように、試験用計器は、第1の時間区分t
1の間、第1の試験電圧V
1を印加する。次いで、ステップ1005aに示されるように、結果として生じた試験電流が第1の時間区分t
1の間測定される。第1の時間区分t
1の間、試験用計器は、二重投与チェック1006a及び最大電流チェック1012aを実行する。二重投与チェック1006a又は最大電流チェック1012aが失敗した場合、試験用計器は、ステップ1028に示すようにエラーメッセージを表示する。二重投与チェック1006a及び最大電流チェック1012aの両方がパスすれば、ステップ1004bに示されるように、試験用計器は、第2の時間区分の間、第2の試験電圧を印加することができる。
【0073】
結果として生じる試験電流は、ステップ1005bに示されるように、第2の時間区分t
2の間測定される。第2の試験電圧V
2の印加の間、試験用計器は十分量チェック1030、二重投与チェック1006b、最大電流チェック1012b及び最小電流チェック1014bを実行する。ステップ1030、1006b、1012b又は1014bの一つを失敗すれば、ステップ1028に示すように、試験用計器は、エラーメッセージを表示する。ステップ1030、1006b、1012b及び1014bのチェック全てをパスすれば、ステップ1004cに示されるように、試験用計器は、第3の電圧V
3を印加する。
【0074】
結果として生じた試験電流は、ステップ1005cに示されるように、第3の時間区分に対して測定される。第3の電圧V
3の印加している間、試験用計器は、二重投与チェック1006c、最大電流チェック1012c、最小電流チェック1014c、高抵抗チェック1022c及びサンプル漏洩チェック1024cを実行することができる。ステップ1006c、1012c、1014c、1022c及び1024cの全てのチェックをパスすれば、ステップ1026に示されているように、試験用計器は、グルコース濃度を表示する。ステップ1006c、1012c、1014c、1022c及び1024cのチェックの一つに失敗すれば、ステップ1028に示されているように、試験用計器は、エラーメッセージを表示する。以下にシステムチェック及びそのようなシステムチェックを用いてどのようにエラーが同定されるかを記述する。
【0075】
十分量チェック
十分量チェックを行なうための実施形態の一つとして、容量測定が用いられる。容量測定は、原理的に電極―溶液界面にイオン層が形成された結果生じるイオン二重層容量を測定するものである。この容量の大きさは、サンプルで覆われた電極の面積に比例する。一旦、容量の大きさが測定されると、その値が閾値よりも大きければ、その試験片は、正確な測定を行なうために十分な溶液容積を有するものであり、グルコース濃度が出力される。しかし、その値が閾値以下であれば、その試験片は、正確な測定を行なうために十分な溶液容積を有するものではなく、エラーメッセージが出力される。
【0076】
非制限実施例として、試験片上の容量検査を行なうための方法および装置が米国特許第7,195,704号及び第7,199,594号に記載されており、それぞれの全ての開示内容を本明細書の一部として援用する。容量を測定するための一方法では、その試験片に直流成分並びに振動成分が印加される。このような事例では、容量値を決定するために、以下に詳述するように、結果として生じる試験電流を数学的に処理して算出する。
【0077】
一般的に、制限試験電流が明確な境界面を有する(即ち、容量測定中に面積が変化しない)作用電極に現れる場合には、電気化学試験片により最も正確で精密な容量測定を行なうことができる。時不変で明確な電極境界面は、前記の電極とスペーサ間がしっかり密封されている場合に現れる。試験電流は、グルコースの酸化または電気化学的腐食の何れかの原因で電流が急激に変化しているときでなければ、比較的一定である。または、グルコースの酸化に起因して見られることがある、信号の増加が電気化学的崩壊に伴う信号の減少と実質的に平衡している時間もまた容量を測定するために適した時間区分である。
【0078】
サンプルのスペーサ60と第1の電極66との間で漏洩がある場合には、第1の電極166の表面電位はサンプルを投与後に時間と共に変化する可能性がある。 試験片の一実施形態では、試薬層72は、スペーサ60と第1の電極層66との間の試薬層72の一部を齎すカットアウト領域68よりも大きな面積を有することができる。 ある環境下では、試薬層72の一部をスペーサ60と第1の電極66との間に置くことは、試験時の湿潤電極領域を増加させる。この結果、試験中に、第1の電極の面積を時間と共に増大させる漏洩が生じ、これが順次容量測定を歪める可能性がある。
【0079】
これと対照的に、第2の電極164とスペーサとの間には試薬層が無いため、第1の電極166に比べて第2の電極164の面積は時間的に一層安定している。このため、サンプルはスペーサ60と第2の電極164との間で漏洩が少ない傾向がある。第2の電極164における制限試験電流を用いる容量測定は、このように、試験中に面積が変化しないためさらに精密である。
【0080】
図6に戻り、試験片中で液体が検出されると、その液体の充填具合をモニターし、また、対照溶液と血液とを識別するために約1秒間、第1の試験電圧V
1(例えば、−20mV)を電極間に印加する。数式1において、試験電流は約0.05から1秒まで用いられる。この第1の試験電圧は、第1の電極と第2の電極で起きる電気化学的反応によりセル中のフェロシアニドの分布が可能な限り乱されないように、相対的に低く設定される(即ち、試験電圧は、媒介物質の酸化還元電位の大きさと同程度である)。
【0081】
第2の試験電圧V
2(例えば、−300mV)は、更に大きな絶対振幅を有するものであって、第2の電極164で制限電流が測定されるように第1の試験電圧V
1の後に印加される。第2の試験電圧V
2は、AC電圧成分とDC電圧成分とを含むことができる。AC電圧成分は、第2の試験電圧V
2印加後の予め定められた時間に印加され、かつ、周波数が約109Hz、振幅が約+/−50mVの正弦波とすることができる。好適な実施形態では、この予め定められた時間は、第2の試験電圧V
2の印加後の約0.3秒から約0.4秒の範囲の時間である。または、予め定められた時間は、時間の関数としての試験過渡電流のスロープが約ゼロの時間である。他の実施形態では、予め定められた時間は、ピーク電流値(例えばi
pb)が約50%減少するために必要な時間である。DC電圧に関しては、この成分は第1の試験電圧の開始時に印加することができる。このDC電圧成分は、第2の電極で制限試験電流を生じさせるに十分な大きさ、例えば、この第2の電極に対して約−0.3Vである。
【0082】
図4Bによる場合、試薬層72は、絶対ピーク電流I
pbの大きさを絶対ピーク電流i
pcの大きさに比べて相対的に低くさせる第2の電極164上へは塗布されない。試薬層72は、検体の存在下で還元された媒介物質を生成するように構成され、第1の電極に近接した還元された媒介物質の総量が相対的に大きな絶対ピーク電流i
pcに関与する。一実施形態では、少なくとも試薬層72の酵素部分は、サンプルが試験片に投与される場合、第1の電極から第2の電極へ実質的に拡散しないように構成することができる。
【0083】
i
pb後の試験電流は、約1.3秒の平坦領域へ落ち着く傾向があり、次いで、この電流は、試薬層72が塗布された第1の電極166で生成された還元された媒介物質が、試薬層72の塗布がされていない第2の電極164へ拡散するに従い再び増加する。一般的に、グルコースアルゴリズムは、約1.3から1.4秒の試験時間区分の前後の試験電流値を必要とする。例えば、数式7では、i
pbは1.1秒で測定され、試験電流は、次式に用いるためにその1.4秒後に測定される。
【数23】
【0084】
一実施形態として、容量測定は、約1.3秒から約1.4秒の比較的平坦な電流値領域で行なわれる。一般的に、容量が1秒前で測定されると、この容量測定は、CS/血液識別試験1806に用いる相対的に低い第1の試験電圧V
1に干渉することとなる。例えば、−20mVの直流電圧成分に重畳した+/−50mVオーダーの交流電圧成分は、測定された試験電流に著しい摂動を引き起こす。交流電圧成分は、第1の試験電圧に干渉するのみならず1.4秒後に測定される試験電流をも著しく摂動させ、同様に血中グルコースアルゴリズム1810にも悪影響を与えることとなる。数多の試験並びに実験により、驚くべきことに、約1.3秒から約1.4秒の間の時間で容量測定を行えば、CS/血液識別試験あるいはグルコースアルゴリズムに妨害されることの無い、正確かつ高精度の測定ができることが最終的に確認できた。
【0085】
第2の試験電圧V
2の後に、第3の試験電流V3(例えば+300mV)が印加され、試薬層72が塗布された第1の電極166で測定されるべき試験電流が生じる。第1の電極上に試薬層を設けることによりスペーサ層と電極層との間における液体の浸透が可能となり、これにより電極面積が増大する。
【0086】
図6に示すように、代表的な実施形態の一つとして、109Hz AC試験電圧(±50mV peak−to−peak)が時間区分t
capの間に2周期分印加される。その第1の周期は、状態調節パルスとして用いられ、第2の周期は容量を測定するために用いられる。容量の推定値は、交流(AC)電流波形の一部分にわたる試験電流を加算し、直流(DC)電流オフセットを減算し、AC試験電圧の振幅およびAC周波数でその結果を正規化することにより得られる。この算出は、サンプルで充填された場合の試験片サンプルチャンバに左右される試験片の容量の基準を規定する。
【0087】
一実施形態として、この容量は、入力AC電圧がDCオフセットと交差する点、即ち、入力電圧のAC成分がゼロとなる時点(ゼロ交差点)のどちらかの側でAC波長の四分の一の時間にわたり試験電流を加算することにより測定される。以下に、これが容量の測度に如何にして変換されるかを詳述する。数式20は、試験電流強度を時間区分t
capの間の時間関数として表している。
【数24】
ここに、項
【数25】
は、一定の試験電圧成分により誘起させられた試験電流を表す。一般に、DC電流成分は(フェロシアニドを生成する進行性グルコース反応のために)時間に対して線形に変化すると考えられ、このために、時間ゼロ(ゼロ交差点)におけるDC電流であるi
0およびDC電流の時間変化のスロープsにより表される。AC電流成分は次式により表される。
【数26】
ここで、Iは電流波形の振幅、ωはその角周波数、およびφは入力電圧波形に対する位相シフトである。項ωはまた次式により表される。
【数27】
ここで、fはヘルツで表されたAC波形の周波数である。項Iは、また数式21のように示される。
【数28】
ここで、Vは印加電圧信号の振幅であり、|Z|は、複素インピーダンスの大きさである。項|Z|はまた数式22のように表すことができる。
【数29】
ここで、Rはインピーダンスの実数部、およびCは、容量である。
【0088】
数式20は、ゼロ交差点前の四分の一波長からゼロ交差点後の四分の一波長まで積分されて数式23が求まる。
【数30】
この式は簡略化されて数式24となる。
【数31】
数式21を数式20へ代入し、次いで数式23へ代入して整理することにより、数式25が得られる。
【数32】
数式25の積分項は、数式26に表された電流の総和を用いて近似することができる。
【数33】
ここに、試験電流i
kは、ゼロ交差点前の四分の一波長からゼロ交差点後の四分の一波長まで加算される。数式26を数式25へ代入することにより数式27が得られる。
【数34】
この式で、DCオフセット電流i
0は、ゼロ交差点前後の正弦の一周期にわたる試験電流を平均化することにより得られる。
【0089】
他の実施形態においては、容量測定は、電圧ゼロ交差点前後の電流ではなく、電流の最大AC成分を加算して行われる。このため、数式26において、電圧ゼロ交差点前後の四分の一波長の加算ではなく、試験電流は、電流最大値前後の四分の一波長の区間で積分される。これは、AC励起に応答する回路素子が純容量性であることと同じであり、このためφはπ/2である。従って、数式24は、数式28にまとめられる。
【数35】
非塗布電極は、電流の流れの直流成分、即ち実数成分がAC励起で用いられる電圧の範囲にわたり電圧と独立であるように分極されるため、これはこの場合において妥当な仮定である。従って、AC励起に応答するインピーダンスの実数部は無限大となり、純容量性素子であることを意味する。次いで、数式28は、数式25と用いられて、積分近似を必要としない簡略な容量式となる。最終的な結果、電流を電圧ゼロ交差点の前後で加算するのではなく、AC電流成分の最大値の前後で加算するとき、容量測定は一層高精度となる。
【0090】
代表的な一実施形態として、試験用計器のマイクロプロセッサは、グルコース濃度の算出に際し重い負荷を負うこととなる。このような場合、容量データ収集は、試験の開始時点ではなく、終始途上で行われる必要があるため、グルコース濃度の測定が完了するまで容量測定データの処理を延期する必要がある。このため、グルコース測定部分の測定が完了すると容量を算出することができ、また、容量が予め定められた閾値より小さければ、部分充填エラーフラグを立てることとなる。
【0091】
ある環境下では、容量の測定は、周囲の温度に左右される。電極充填量を測定するために正確かつ精密な方法で容量を測定するために、数式29に示されているように、血液の温度補正を用いて温度の影響を除去することができる。
【数36】
ここに、Cap
corrは、温度補正容量値、Capは、容量およびTは、温度である。
【0092】
温度の影響は、数式30に示されるように、CSに対する温度補正を用いて除去することができる。
【数37】
数式29および30から得られた温度補正容量値は、部分的に充填された試験片の同定に用いることができる。
【0093】
下記の表1に例証されているように、血液と対照溶液に対しては、異なる温度補正容量閾値が必要である。閾値は、一般的に、平均より低い4標準偏差単位に設定するとよい。統計的には、これは、完全充填が部分充填と同定されない確度が99.994%に等しいことである。血液に対する温度補正容量閾値は、450nFであり、対照溶液に対する相当値は約560nFである。これらの値は、試験用計器のメモリ部にプログラムされる。これに代わる実施形態では、閾値を操作者の使用目的に従って調節することができる。
【0095】
図19のグラフは、容量と参照グルコース測定結果(YSI,Yellow Springs Instrument)に対するバイアスとの相関を表している。測定されたグルコース濃度は、基準測定装置を用いて行われたグルコース測定結果とバイアスとを比較することにより、バイアスに変換された。数片の試験片が多様な血液量で充填され、また、容量およびグルコース濃度が
図6の試験電圧波形を用いて測定された。さらに詳しくは、この容量は、試験電流が相対的に大きくかつ時間に対して迅速に減少する第3の試験電圧区分で測定された。さらに、容量測定は、試薬層被膜が施された第1の電極上に制限試験電流が現れる区分で行われた。
【0096】
YSIに対するバイアスの主因が液体による電極の部分被覆率ならば、YSIバイアスとの相関がとられた場合、容量の値は、相対的に散乱の少ない直線となるべきである。例えば、YSIに対する50%の負バイアスは、容量が完全充填試験片と比較して50%減少することに相当する。このため、試験片―試験片バイアス変動が相対的に小さければ、
図19におけるデータ点の相対的に大きな散乱は、容量測定の相対的に大きな変動に起因するものとみなされる。容量変動は、一般に試験電流値が相対的に一定でない第3の試験電圧区分で容量測定を行うことにより生じる。
【0097】
容量測定における相対的に大きな散乱は、非常に多くの完全充填試験片を不合格とすることになる。さらに、大きな容量変動は、容量測定のいくつかをバイアスが低いものとし、そのため、十分充填閾値より低いものとし、部分充填であると誤って同定することとなる。
【0098】
図20のグラフは、(約1.3秒時点で測定された)容量と基準グルコース測定値(YSI,Yellow Springs Instrument)に対するバイアスとの相関を表している。数片の試験片がさまざまな量の血液で充填され、また容量およびグルコース濃度は、
図6の試験電圧波形を用いて測定された。さらに詳しくは、この容量は、試験電圧が相対的に一定な第2の試験電圧V2の時間区分で測定された。さらに、容量測定は、試薬層被膜のない第2の電極上に制限試験電流が生じる時間区分で行われた。
図19に比べて、
図20のデータは容量値の散乱が少ないことを表している。
【0099】
図21のグラフは、(約1.3秒で測定された)容量と基準グルコース測定値(YSI,Yellow Springs Instrument)との相関を表している。数片の試験片が色々な量のCSで充填され、また、
図6の試験電圧波形を用いて容量およびグルコース濃度が測定された。
図20と同様に、
図21のデータは、この時間区分の間で実行された場合、容量は相対的に変動量が少ないことを表している。
【0100】
二重投与
二重投与は、ユーザーが不十分な血液量をサンプル反応チャンバに注ぎ、続いて、更にこのサンプル反応チャンバを満たすために血液を追加投与する場合に起こる。ユーザーの指先または不安定な指から搾り出された血液量は、二重投与事故を起こすことがある。今までに開示されたシステム及び方法は、このような二重投与事故を識別するように構成することができる。例えば、
図22は、試験過渡電流を表し、この過渡期間には、第2の検査時間区分t
2の間にユーザーが二重投与を行いスパイクが観測される(実線を参照)。二重投与事故が無い場合には、試験過渡電流はピークを持たない(
図22の破線を参照)。
【0101】
二重投与は、グルコース試験の測定値を不正確なものとする。このため、二重投与を識別し、計器が潜在的に不正確な測定値を出力する代わりにエラーメッセージを出力するようにすることが好適である。電極の一部分のみがサンプルで湿潤する場合には、電極面積が実質的に減少するため、二重投与では、まず、観測される試験電流量の減少が生じる。一度ユーザーが第2番目の投与を行うと、有効電極面積の急激な増大および乱れのために、より多くの還元された媒介物質が作用電極近傍に運ばれるため、電流スパイクが発生する。さらに、試薬層の一部は、全試験時間に渡りサンプルによって湿潤されないため、フェロシアニドの生成は、より少ない。このため、グルコースアルゴリズムで用いられる試験電流が二重投与により抑制されたり強調されれば、グルコース測定の結果は、不正確となる。
【0102】
二重投与の同定方法(1006a、1006bまたは1006c)には、第2の試験電流および第3の試験電流の測定が含まれ、この第2の試験電流は第3の試験電流の前に現れる。第3の試験電流の絶対値と第2の試験電流の絶対値との差に基づいて二重投与を同定する数式を用いることができる。この差が予め定められた閾値より大きければ、試験用計器は、二重投与を示すエラーメッセージを出力する。二重投与を同定するための方法は、試験電流が試験用計器によって収集されるにつれて直列に複数回実行される。この数式は、二重投与が生じたか否かを決定するための差Z2を算出する数式31の形式を有する。
【数38】
ここに、i(t)は第2の試験電流、i(t+x)は第3の試験電流、tは第2の試験電流の時間、およびxは電流測定間の時間の増分である。値Z2が予め定められた約3マイクロアンペアの閾値より大きければ、試験用計器は、二重投与によるエラーメッセージを出力する。ここに開示された予め定められた閾値は、試験片100および
図6の試験電圧波形の使用法を説明するものである。
図6において、作用電極および参照電極共に面積約0.042cm
2を有し、2電極間の距離は、約90ミクロンから約100ミクロンの範囲にある。当業者には明らかなように、この様な予め定められた閾値は試験片のデザイン、試験電圧波形およびそのほかの要因により変わる。
【0103】
二重投与を特定するための他の実施形態(例えば、1006a、1006bまたは1006c)において、一方法には、第1の試験電流、第2の試験電流および第3の試験電流の測定が含まれ、第1の試験電流は第2の試験電流の前に生じ、また第3の試験電流は第2の試験電流の後に生じる。二重投与を特定するために、第2の試験電流の絶対値から第1の試験電流を減算し、かつ第3の試験電流の絶対値を減算して2倍する数式が用いられる。この数式は、二重投与が生じたか否かを決定するために総和Yを算出するための数式32の形式となる。
【数39】
ここに、i(t)は第2の試験電流、i(t−x)は第1の試験電流、i(t+x)は第3男試験電流、tは第2の試験電流の時間、およびxは測定値間の時間の増分、およびabsは絶対値関数を表す。もし加算値Yが予め定められた閾値より大きければ、試験用計器は、二重投与によるエラーメッセージを出力してよい。この予め定められた閾値は、第1の時間区分t
1、第2の時間区分t
2および第3の時間区分t
3に対して異なる値に設定してよい。
【0104】
一実施形態では、この予め定められた閾値は、第1の時間区分t
1に対して約2マイクロアンペア、第2の時間区分t
2に対して約2マイクロアンペア、および第3の時間区分t
3に対して約3マイクロアンペアである。この予め定められた閾値は、試験用計器中のノイズ、試験電流測定の周波数、電極の面積、電極間の距離、二重投与の偽陽性検出率、および二重投与の偽陰性検出率などの要因の結果により調節される。数式32を用いた二重投与特定法は、試験過渡電流の複数の部分で実施される。なお、第1の試験電流と第3の試験電流は、基線補正をもたらすため、二重投与特定に対して数式32は数式31より正確である。
図6の試験電圧波形を用いる場合、ピークは典型的には時間区間の始に現れるため、二重投与チェックは第1、第2および第3の時間区分の開始時点の直後に実施される。例えば、ゼロ秒から約0.3秒、1.05秒および4.05秒は二重投与チェックから除外される。
【0105】
最大電流チェック
図12のステップ1012a、1012bおよび1012cに述べられているように、最大電流チェックは、試験用計器エラーあるいは試験片欠陥を特定するために用いることができる。試験用計器エラーの例は、血液が、投与されてから遅い時点で検出される場合に見られる。欠陥試験片の例は、第1と第2の電極とがショートした場合に見られる。
図23は、試験過渡電流を表し、試験用計器は試験片中への血液投与の直後を検出していない(実線参照)。このようなシナリオにおいて、遅延開始は、第2の試験電圧V2が印加される前に相当量のフェロシアニドを生成し相対的に大きな試験電流が観測される。対照的に、血液が注がれたときに試験用計器が試験電圧波形を適切に開始させると、
図23に破線で示されているように、第2の時間区分に対する試験電流値はより少なくなる。
【0106】
遅延開始により、不正確なグルコース測定結果が生じる。このため、遅延開始を特定し、計器に不正確な測定結果を出力させる代わりにエラーメッセージを出力させることが好適であろう。遅延開始では、試薬層がフェロシアニドを生成するより多くの時間があるため、測定された試験電流値はさらに大きくなる。このため、増加した試験電流値は、グルコース濃度の確度を歪めやすい。
【0107】
試験用計器のエラーに加えて、第1と第2の電極間のショートは、試験電流を増加させることとなる。この増加の大きさは、第1の電極と第2の電極間の分流抵抗の大きさに左右される。分流抵抗が相対的に小さければ、相対的に大きな正バイアスが試験電流にかかり、潜在的に不正確なグルコース応答を引き起こす。
【0108】
最大電流チェック(1012a、1012bおよび1012c)は、全ての測定された試験電流値の絶対値を予め定められた閾値と比較し、測定された試験電流の値の絶対値の一つが予め定められた閾値より大きい場合には、エラーメッセージを出力する。この予め定められた閾値は、第1、第2、および第3の検査時間区分(t
1、t
2、およびt
3)に対して異なった値に設定することができる。一実施形態において、この予め定められた閾値は、第1の時間区分t
1に対して約50マイクロアンペア、第2の時間区分t
2に対して約300マイクロアンペアおよび第3の時間区分t
3に対して約3000マイクロアンペアである。
【0109】
最小電流チェック
図18のステップ1014bおよび1014cで述べられているように、最小電流チェックは、グルコース試験の誤スタート、試験用計器による不適切な時間シフトおよび早期試験片除去を特定するために用いることができる。誤スタートは、試験片にサンプルが未注入の状態で試験用計器がグルコース試験を開始する場合に起きる。試験用計器に何らかの事情で検査を開始させる状況の例は、静電気放電(ESD)または第1と第2の電極間の一時的なショートである。このような状況では、試験片に液体サンプルが注がれていなくても試験を開始させる相対的に大きな電流が、少なくともショートの瞬間に合わせて観測される。
【0110】
手順によらずグルコース検査が開始された場合、試験片にサンプルが注がれていなくても試験用計器は低グルコースとの観測結果を出力する。それゆえ、試験用計器が誤った低グルコース検査結果を出力しないように、手順によらないグルコース試験の開始を特定することが好適であろう。その代わりに、試験用計器は、試験を再開するためユーザーに同じ試験片を再挿入する、または新しい試験片を挿入することを指示するエラーメッセージを与えるべきである。
【0111】
試験用計器による時間シフトエラーは、第3の試験電圧V
3が早期または遅延して印加された場合に生じる。第3の試験電圧V
3の早期印加は、第2の時間区分t
2の終点で、負の極性で相対的に小さな電流値に代えて、正の極性を持つ相対的に大きな試験電流を生じさせるであろう。第3の試験電流V
3の印加の遅延は、第3の時間区分の始に、正の極性で相対的に大きな電流値に代えて、負の極性の相対的に小さな電流値を生じさせるであろう。第3の電圧V
3の両早期および遅延印加に対して、不正確なグルコース測定結果が生じる可能性がある。それ故、不正確なグルコース測定結果が現れないように、最小電流チェックを用いて、試験用計器により時間シフトエラーを特定することが好ましい。
【0112】
グルコース試験の終了前に、意図せず試験片を試験用計器から取り外すことも、不正確なグルコースの測定結果を生じさせる。試験片の除去は、試験電流をゼロに近くに変化させ、潜在的に不正確なグルコース測定結果を生じさせる。従って、不正確なグルコース測定結果を表示する代わりにエラーメッセージが与えられるように、最小電流チェックを用いて意図しない試験片の除去を特定することが好適である。
【0113】
この最小電流チェックは、第2及び第3の時間区分(t
2とt
3)の間に測定された全ての試験電流値の絶対値を、予め定められた閾値と比較し、測定された試験電流値の絶対値の一つが予め定められた閾値より小さければ、エラーメッセージを出力する。この予め定められた閾値は、第2及び第3の試験時間区分で異なる値に設定してもよい。しかしながら、一実施形態においては、この予め定められた閾値は、第1の時間区分t
1および第2の時間区分t
2に対して約1マイクロアンペアである。最小電流チェックは、第1の試験電圧V
1は大きさが媒介物質の酸化還元電位に近いため試験電流値が相対的に小さいので、第1の時間区分に対しては実行しないことに注意されたい。
【0114】
高抵抗トラック
図18のステップ1022cに記述されているように、不正確なグルコース測定値を齎す高抵抗トラックが試験片上に検出されることがある。高抵抗トラックは、絶縁性スクラッチを持つ試験片上または汚染された電極面に現れる。スパッタ金膜またはスパッタパラジウム膜で電極層が作成された場所では、スクラッチは、試験片の取り扱い中および製造中に容易に生じうる。例えば、第1の電極層66上の一方の外側縁56から他の外側縁58にわたるスクラッチは、第1のコンタクトパッド67と第1の電極166との間の抵抗を増大させる。スパッタ金属膜は、普通非常に薄く(例えば10から50nm)、試験片の取り扱い中および製造中に傷つきやすい。更に、スパッタ金属膜は、例えば炭化水素のような揮発性化合物に晒されて汚染される。この露出により、電極面上に抵抗を増大させる絶縁物膜が形成される。高抵抗トラックを形成する他の考えうる状況は、スパッタ金属膜が薄すぎる場合(例えば<<10nm)である。高抵抗トラックを生じさせるさらに別の状況は、試験用計器のコネクターが試験片コンタクトパッドと十分な導電性接続を形成しない場合である。例えば、試験用計器のコネクター上に存在する乾燥血液は、試験片接続パッドへの十分な導電性接続を妨げる。
【0115】
図24は、第3時間区分t
3における、高抵抗トラック(四角形)および低抵抗トラック(三角形)を持つ試験片に対応する2組の試験過渡電流を表している。電極と電極接続パッド間の十分大きな高トラック抵抗Rは、有効に印加された試験電圧V
effの強度を大幅に減衰させ、これは、順次、結果として生じる試験電流強度を減衰させる。有効試験電圧V
effは、数式33で記述される。
【数40】
一般に、試験電流が普通最大強度を示す第3の時間区分t
3の始めでV
effは最大の減衰を伴う。第3の時間区分t
3の始めの相対的に大きなRと相対的に大きな試験電流の組み合わせは、印加された試験電圧中に著しい減衰を生じさせる。
図24、t=4.05秒に示されているように、これは、第3の時間区分t
3の始めにおいて結果として生じる電流の減衰を引き起こす。約4.05秒におけるピーク電流のこのような減衰が生じると、グルコース濃度の算出値は不正確なものとなる。印加電圧の著しい減衰を回避するために、Rは、相対的に小さな値でなくてはならない(即ち、低トラック抵抗)。一実施形態においては、低抵抗トラックは一平方当り約12オーム未満の抵抗率を持つ電極層で表すことができ、また、高抵抗トラックは一平方当り約40オームより大きい抵抗率を持つ電極層で表すことができる。
【0116】
試験片が高トラック抵抗を有するか否かを決定するには、いずれも第3の時間区分t
3の間に現れる第1の試験電流i
1と第2の試験電流i
2に基づく数式を用いることができる。第1の試験電流i
1は、強度が最大または最大に近い第3の時間区分t
3のほぼ始まり(即ち、4.05秒)で測定される。第2の試験電流i
2は、強度が最小または最小に近い第3の時間区分t
3のほぼ終点(例えば5秒)で測定してよい。
【0117】
高トラック抵抗を特定するための数式は、数式34の形式を持つことができる。
【数41】
第1の比R1が予め定められた閾値より大きければ、試験用計器は試験片が高抵抗トラックを有することによるエラーメッセージを出力してよい。予め定められた閾値は、約1.2としてよい。第1の試験電流i
1が概ね最大電流値であるということは重要である、というのは、数式33に従えば、それが抵抗変化に対して最も感度が高いからである。第1の試験電流i
1が、最小電流値にさらに近いある時間に測定されれば、数式34は高抵抗トラックが存在するか否かを決定するに当り感度がより低くなるであろう。低抵抗試験片を試験する場合に、第1の比R
1の変化が相対的に低ければ利点がある。この相対的に低い変化は、誤って高抵抗トラック試験片を特定する可能性を減少させる。本明細書に確定され記述されているように、低抵抗トラックを持つ試験片に対する第1の比R
1の変動は、第1の試験電流値i
1が第3の試験電圧V
3の印加直後の電流値で定義される場合、第3の時間区分t
3での電流値の総和とは対照的に、約4倍低い、低抵抗試験電流片に対する第1の比R
1に大きな変動がある場合、高抵抗トラックを誤って特定する確率は増加する。
【0118】
図25は、高抵抗トラックを持つ試験片のロットと低抵抗トラックを有する試験片のロットの2組の試験片ロットに対し数式34を用いて算出された複数のR
1の値を表すグラフである。試験片の一組のロットは、炭化水素を含むガスに数週間晒して意図的に汚染したパラジウム電極を用いて故意に高抵抗を持つように作成された。第2の試験片ロットは、故意に電極面を汚染することなく製造された。汚染を防ぐために、試薬層で覆う前に一巻のスパッタで覆われたパラジウムをMESAで覆った。全ての低抵抗試験片は汚染されたのもではなく、それらのR
1の値は1.1未満であり、数式34は低トラック抵抗試験片を特定できることが示された。同様に、故意に汚染された、本質的に高抵抗の試験片は全て1.1より大きなR
1の値を持ち、数式34が高トラック抵抗試験片を特定できることが示された。
【0119】
漏洩
図18のステップ1024cに既に述べられているように、スペーサ60が第1の電極層66と十分な強度の液体不浸透性シールを形成することができない場合、試験片上に漏洩が検出される。漏洩は、液体がスペーサ60と第1の電極166との間、および/または第2の電極164との間に漏れた場合に現れる。
図4Bは、スペーサ60の壁に直接に隣接している試薬層72を表していることに注意されたい。しかしながら、漏洩がさらに生じやすい他の実施形態(示されていない)においては、試薬層72は、試薬層72の一部をスペーサ60と第1の電極層66との間に生じさせるカットアウト層68よりも大きな面積を有する。ある環境下では、試薬層72の一部をスペーサ60と第1の電極層66との間に配置することは、液体不浸透性シールの形成を阻害する。その結果、第1の電極166上の何れかに実質的にさらに大きな面積を作る漏洩が生じ、順次、これが不正確なグルコースの測定結果を引き起こす。第1の電極166と第2の電極164の間の面積の非対称性は、
図26に図解するように試験過渡電流を歪め、そこでは第3の時間区分t
3の間に余分な盛り上がりが現れる。
【0120】
図16は、3組の異なるタイプの試験片ロットに対する第3の時間区分t
3の間の試験過渡電流を表し、試験片ロット1(四角形)にはスペーサと第1の電極の間に液体の漏洩がある。試験片ロット1は、ドライヤー設定を用いて作成されたが試薬層は、十分には乾燥させなかった。また、試験片ロット1は加圧設定でラミネートされたが、電極への不浸透性シールは十分には形成されなかった。本来は、試薬層はスペーサ60の粘性部分が試薬層と混ざり合い、さらに第1の電極層166への液体不浸透性シールを形成するように、試薬層は十分に乾燥しているものである。さらに、スペーサ60の粘性部分が第1の電極層166に対して液体不浸透性シールを形成するように、十分な圧力が加えられるものである。試験片ロット2は、約2週間、37℃で保管されたということを除き、試験片ロット1と同様にして下処理された。試験片ロット2の保管により、スペーサは、電極への液体不浸透性シールを作りながら再形成した。試験片ロット3は、試薬層を乾燥させるに十分なドライヤー設定を用いて作られ、また、液体不浸透性シールを形成するに十分な加圧設定を用いてラミネートされた。両試験片ロット2および3(それぞれ三角形および円)は、
図26に示されているように、試験片1(四角形)に比べて試験電流強度が急速に減少することを表している。
【0121】
試験片漏洩があるか否かの判定は、第1の試験電流、第2の試験電流、第3の試験電流、及び第3の試験時間区分に生じる第4の試験電流に基づいて行なわれる。第2の比の第1の対数は、第1の試験電流i
1および第2の試験電流i
2に基づいて算出される。第3の比の第2の対数は、第3の試験電流i
3と第4の試験電流i
4とに基づいて算出できる。第4の比R4を第1の対数と第2の対数とに基づいて算出するために、ある数式を用いることができる。第4の比が予め定められた比未満であれば、試験用計器は、漏洩によるエラーメッセージを出力する。この予め定められた閾値は、0.95から1の範囲の値である。漏洩を判定するための数式は、数式35の形式を取ることができる。
【数42】
一実施形態において、第1の試験電流i
1および第2の試験電流i
2は、第3の時間区分t
3に現れる2組の概ね最大の電流値であり、第4の試験電流i
4は、第3の時間区分に現れる最小の電流値であり、また、第3の試験電流i
3は、第4の試験時間と第3の試験時間との差が第2の試験時間と第1の試験時間との差より大きくなるように選ばれる。一具体例では、第1の試験電流、第2の試験電流、第3の試験電流、および第4の試験電流は、それぞれ約4.1秒、4.2秒、4.5秒および5秒に測定される。
【0122】
図27は、
図26に対して記述された3組の試験片ロットに対して数式35を用いて算出された複数のR4の値を表すグラフである。これにより、試験片ロット1は、1未満の第4の比を有し、また、試験片ロット2と3は両方とも1より大きな第4の比を有し、数式35が試験片漏洩を成功裏に特定できることを示している。
【0123】
これに代わる実施形態では、試験片が漏洩を有するか否かの決定は、数式35に示されているように、4つの試験電流値を用いる代わりに3つの試験電流のみに基づく数式を用いて実行される。これらの3つの試験電流値は、第1の試験電流i
1、第3の試験電流i
3、および第3の検査時間区分t
3に現れる第4の試験電流i
4を含む。第5の比の第3の対数は、第1の試験電流i
1と第3の試験電流i
3に基づいて算出されてよい。第3の比の第2の対数は、第3の試験電流i
3と第4の試験電流i
4とに基づいて算出してよい。第6の比R
6を第3の対数と第2の対数とに基づいて算出するために、一つの数式が用いられる。R
6が予め定められた比未満であれば、試験用計器は、漏洩によるエラーメッセージを出力する。漏洩を識別するための数式は、数式36の形式を取ることができる。
【数43】
【0124】
当業者は、上述した実施形態に基づく本開示の特徴並びに利点を更に正確に理解するであろう。従って、本開示は、添付の請求項による指示を除き、特別に図示され記述された内容に限定されるべきものではない。本明細書に引用された全ての出版物および参照文献は、その全ての開示内容を本明細書の一部として明示的に援用する。