(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一押出方向伸長部の前記押出方向に垂直な断面の径に対する、前記第二押出方向伸長部の前記押出方向に垂直な断面の径の比の値が0.1〜0.3である請求項1に記載の押出成形装置。
前記第二押出方向伸長部の前記押出方向に平行な中心軸と、前記第一押出方向伸長部の前記押出方向に平行な中心軸とが同一直線上に位置する請求項1〜3のいずれか一項に記載の押出成形装置。
前記第一流出口から流出された前記坏土を、前記第一押出方向伸長部の前記押出方向に垂直な断面の径に対する、前記押出方向に垂直な断面の径の比の値が0.1〜0.3である前記第二押出方向伸長部の内部へ流通させる請求項14に記載の押出成形方法。
前記成形工程において、前記押出成形方向に平行な中心軸と、前記第二流通工程における前記下方向に流通させる坏土流の前記下方向に平行な中心軸とが同一直線上に位置するように押出成形する請求項14または15に記載の押出成形方法。
前記第二流通工程において、前記第二流通工程における前記押出方向に平行な中心軸と、前記第一流通工程における前記押出方向に平行な中心軸とが同一直線上に位置するように流通させる請求項14〜16のいずれか一項に記載の押出成形方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2では、土練機を用いて原料を所定の形状(円柱状)の坏土とし、その坏土を成形機に投入して、ハニカム成形体を押出成形している。所定の形状の坏土を間欠的に成形機に投入し、所定の形状の坏土1本からいくつかのハニカム成形体を押出成形すると、円柱状の坏土1本と他の1本のつなぎ目(切り替わり)部分では、ハニカム成形体の表面状態が荒れてしまい良好なハニカム成形体を得ることができないという課題があった。
【0007】
特許文献3の成形装置では、プランジャーの間欠運転による停止時間があり、効率がよくない。また、この成形装置は、プランジャーの停止後の再押出成形時には、成形体の品質(特に、外周部の状態)が悪いという問題があった。特許文献4の成形装置は、3段スクリュー構成となっており、装置構成が複雑でコスト高になる問題があった。
【0008】
そこで、上記課題を解決するべく、押出方向に伸びる第一空間部と、第一空間部の下流側から下方向に伸びる第二空間部とを有するチャンバードラムを備える連続押出成形装置が考えられる。このような連続押出成形装置により、連続的に、表面状態が良好であり、曲がりが無い品質のよいハニカム成形体が得ることが可能となる(特許文献5参照)。
【0009】
しかしながら、この連続押出成形装置を使用した場合であっても、異なる材料からなる坏土へとバッチを切り替える際、前のバッチから新しいバッチへの切り替わり時間が長く、新しいバッチからなる成形体を得るまでに時間を要する。バッチの切り替わり時には、成形体の、坏土の流通路の外周側に、表面荒れが発生し、その間の成形体は製品として用いることはできない。そのため、バッチの切り替わり時間が長いために作業効率が低下するという問題があった。
【0010】
本発明の課題は、大型のセラミックス成形体の連続押出成形において、バッチ切替時間を短縮して、材料や成形時間の無駄をさらに低減し、品質の良好なセラミックス成形体を成形する押出成形装置及び押出成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、坏土のバッチ切替時に流通路の外周側に生じる表面荒れが、流出される坏土の偏心に起因するという知見に基づき、押出成形装置に、坏土を混練して押し出す押出部と、セラミックス成形体を押出成形するための成形部との間に、第一空間部と、特定形状の第二空間部とを含むチャンバードラムを備えることにより、上記課題を解決しうることを見出した。本発明によれば、以下の押出成形装置及び押出成形方法が提供される。
【0012】
[1] セラミックス原料を含む坏土を混練して、前記坏土を押出口から押し出す押出部と、前記押出口に接続され、前記押出口から押出方向へ伸びる第一押出方向伸長部、及び前記押出方向の下流側の端部に開口した第一流出口を有しており、前記坏土を前記押出口から前記押出方向へ流通させ、前記第一流出口から流出させる第一空間部、並びに、前記第一流出口に接続され、前記第一流出口から前記押出方向へ伸びる第二押出方向伸長部、前記押出方向から下方向へ曲がる方向転換部、及び下流側の端部に開口した第二流出口を有しており、前記坏土を前記押出方向から方向転換させて前記下方向へと流通させ、前記第二流出口から前記下方向へ流出させる第二空間部、を含み、且つ、前記第二空間部が、前記第一空間部における前記坏土の流通方向に垂直な断面の断面積を等方的に減少させた断面積を有するチャンバードラムと、前記チャンバードラムの前記第二流出口に接続され、前記チャンバードラムの前記第二流出口から流出された前記坏土を内部から通過させることにより、セラミックス成形体を押出成形するための口金を有する成形部と、を備え
、前記押出部からの前記押出方向が水平方向と平行であり、前記チャンバードラムが前記坏土を流出させる前記下方向が鉛直方向と平行である押出成形装置。
【0013】
[2] 前記第一押出方向伸長部の前記押出方向に垂直な断面の径に対する、前記第二押出方向伸長部の前記押出方向に垂直な断面の径の比の値が0.1〜0.3である前記[1]に記載の押出成形装置。
【0014】
[3] 前記第二空間部は、前記方向転換部の下流側の端部から前記下方向へ伸び、前記第二流出口に達する下方向伸長部を有し、前記下方向伸長部の前記下方向に平行な中心軸と、前記成形部の前記下方向に平行な中心軸とが同一直線上に位置する前記[1]または[2]に記載の押出成形装置。
【0015】
[4] 前記第二押出方向伸長部の前記押出方向に平行な中心軸と、前記第一押出方向伸長部の前記押出方向に平行な中心軸とが同一直線上に位置する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の押出成形装置。
【0017】
[
5] 前記第二空間部が、前記押出方向に伸びる円筒部と、前記下方向に伸びる円筒部と、それらをつなぎ合わせるL字状の屈曲部と、を有する前記[1]〜[
4]のいずれかに記載の押出成形装置。
【0018】
[
6] 前記第二空間部が、前記押出方向に伸びる円筒部と、前記下方向に伸びる円筒部と、それらをつなぎ合わせる湾曲円筒部と、を有する前記[1]〜[
4]のいずれかに記載の押出成形装置。
【0019】
[
7] 前記チャンバードラムが、前記第二空間部から分岐する排出部をさらに有し、前記排出部は、前記チャンバードラムの外壁を貫通し、前記坏土を前記押出成形装置の外部へ排出する排出口を有するものである前記[1]〜[
6]のいずれかに記載の押出成形装置。
【0020】
[
8] 前記排出部が、前記第二押出方向伸長部と同方向に伸びるように分岐している前記[
7]に記載の押出成形装置。
【0021】
[
9] 前記排出口に配設された圧力抜き装置をさらに有する前記[
7]または[
8]に記載の押出成形装置。
【0022】
[
10] 前記第一空間部は、前記第一押出方向伸長部の前記押出方向の上流側に接続し、前記押出部の前記押出口から前記押出方向の下流側へ向かって断面積が減少し、当該断面積が前記第一押出方向伸長部の断面積と等しいテーパー形状に形成されたテーパー部を有する前記[1]〜[
9]のいずれかに記載の押出成形装置。
【0023】
[
11] 前記テーパー部は、その入口の高さをD1、出口の径をD2、前記押出方向の長さをL1としたとき、下記式(1)で表される角度θが、5〜30°である前記[
10]に記載の押出成形装置。
θ=tan
−1(D1−D2)/2L1・・・(1)
【0024】
[
12] 前記押出部は、セラミックス成形原料を含む坏土が内部に流入される供給口と、前記坏土が吐出される押出口と、を有するドラムと、前記ドラム内に、回転軸と前記回転軸に沿った螺旋状の回転羽根とを有し、前記坏土を前記回転羽根の回転により混練しつつ前記回転軸に平行な押出方向に搬送するスクリューと、を含む前記[1]〜[
11]のいずれかに記載の押出成形装置。
【0025】
[
13] 前記押出部は、前記スクリューが前記ドラム内に2軸平行に設けられている前記[
12]に記載の押出成形装置。
【0026】
[
14] セラミックス原料を含む坏土を混練して、前記坏土を押出口から押し出す押出工程と、前記押出口から押し出された前記坏土を、前記押出口に接続され、前記押出口から押出方向へ伸びる第一押出方向伸長部の内部を前記押出口から前記押出方向へ流通させ、前記押出方向の下流側の端部に開口した第一流出口から流出させる第一流通工程と、前記第一流出口から流出された前記坏土を、前記第一流出口に接続され、前記第一流出口から前記押出方向へ伸びるとともに、前記第一押出方向伸長部の前記押出方向に垂直な断面の断面積を等方的に減少させた断面積を有する第二押出方向伸長部、及び前記押出方向から下方向へ曲がる方向転換部の内部を流通させて、前記第一流通工程における前記坏土の流通路を等方的に絞った状態で前記押出方向から前記下方向へと方向転換させ、下流側の端部に開口した第二流出口から前記下方向へ流出させる第二流通工程と、前記第二流出口から流出された前記坏土を、口金を通してセラミックス成形体を押出成形する成形工程と、を備え
、前記押出工程、前記第一流通工程、及び前記第二流通工程において、前記押出方向に流通させる坏土は、水平方向と平行に流通させ、前記第二流通工程、及び前記成形工程において、前記下方向に流通させる坏土は、鉛直方向と平行に流通させる押出成形方法。
【0027】
[
15] 前記第一流出口から流出された前記坏土を、前記第一押出方向伸長部の前記押出方向に垂直な断面の径に対する、前記押出方向に垂直な断面の径の比の値が0.1〜0.3である前記第二押出方向伸長部の内部へ流通させる前記[
14]に記載の押出成形方法。
【0028】
[
16] 前記成形工程において、前記押出成形方向に平行な中心軸と、前記第二流通工程における前記下方向に流通させる坏土流の前記下方向に平行な中心軸とが同一直線上に位置するように押出成形する前記[
14]または[
15]に記載の押出成形方法。
【0029】
[
17] 前記第二流通工程において、前記第二流通工程における前記押出方向に平行な中心軸と、前記第一流通工程における前記押出方向に平行な中心軸とが同一直線上に位置するように流通させる前記[
14]〜[
16]のいずれかに記載の押出成形方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明の押出成形装置は、坏土を混練して押し出す押出部と、セラミックス成形体を押出成形するための成形部との間に、第一空間部と第二空間部とを含むチャンバードラムを備える。このような構成により、バッチ切替時間が短縮され、連続的に、品質のよいセラミックス成形体を効率良く作製することができる。チャンバードラムは、押出部の押出方向と異なる下方向に坏土を流出させるため、大型のセラミックス成形体であっても、変形等の不良が発生しにくい。第二空間部は、第一空間部の断面積を等方的に減少させた断面積を有するため、坏土の偏心を抑制し、バッチ切替時間を短縮することができる。
【0032】
本発明の押出成形方法は、坏土を混練して押し出す押出工程と、セラミックス成形体を押出成形する成形工程との間に、第一流通工程と第二流通工程とを備える。この第一流通工程及び第二流通工程を経ることにより、バッチ切替時間が短縮され、連続的に、品質のよいセラミックス成形体を効率良く作製することができる。第二流通工程において、押出方向と異なる下方向に坏土を流出させるため、大型のセラミックス成形体であっても、変形等の不良が発生しにくい。第二流通工程における流通路は、第一流通工程における流通路を等方的に絞っているため、坏土の偏心を抑制し、バッチ切替時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0035】
1.押出成形装置
図1に、本発明の押出成形装置の一実施形態を示す。本実施形態の押出成形装置1は、押出部10と、チャンバードラム20と、成形部30と、を備える。
【0036】
押出部10は、供給口11から供給されるセラミックス原料を含む坏土を混練して押出口12から押し出す。チャンバードラム20は、その流入口21が押出部10の押出口12に接続されており、坏土は、第一空間部23、第二空間部24を順に流通して、流出口22から流出する。
【0037】
第一空間部23は、第一流入口23a(流入口21)が押出部10の押出口12に接続され、押出部10の押出口12側から押出方向へ伸びる第一押出方向伸長部23c、及び押出方向の下流側の端部に開口した第一流出口23bを有している。坏土は第一流入口23aから押出方向へ流通し、第一流出口23bから流出する。
【0038】
第二空間部24は、第二流入口24aが第一空間部23の第一流出口23bに接続され、第一流出口23bから押出方向へ伸びる第二押出方向伸長部24c、押出方向から下方向へ曲がる方向転換部24d、及び下流側の端部に開口した第二流出口24bを有している。坏土は押出方向から方向転換して下方向へと流通し、第二流出口24b(流出口22)から下方向へ流出する。
【0039】
第二空間部24は、第一空間部23における坏土の流通方向に垂直な断面の断面積を等方的に減少させた断面積を有する。即ち、第二空間部24が形成する流通路の断面は、いずれも、第一空間部23の流通路の断面が、当該断面上の全ての径方向において均等に小さくなった断面を有する。言い換えると、第二空間部24の断面は、第一空間部23の断面と幾何学的に相似の関係にあり、第二空間部24の断面の方が小さくなっている。ここで、第二押出方向伸長部24cの押出方向に平行な中心軸と、第一押出方向伸長部23cの押出方向に平行な中心軸とが同一直線上に位置することが好ましい。なお、本明細書中、単に断面、または断面積という場合には、坏土の流通方向に垂直な断面、またはその断面積を意味するものとする。
【0040】
成形部30は、チャンバードラム20の流出口22に接続されている。そして、成形部30は、チャンバードラム20の流出口22から流出された坏土を内部から通過させることにより、セラミックス成形体を押出成形するための口金36を有する。なお、以下、セラミックス成形体として、ハニカム成形体40を例に説明するが、セラミックス成形体としては、ハニカム成形体40に限定されるものではない。
【0041】
押出部10、チャンバードラム20、成形部30が連続的に接続されているため、坏土を混練し、ハニカム成形体40を連続的に押出成形することができる。したがって、材料や成形時間の無駄を低減することができる。また、下方向にハニカム成形体40を押出成形するため、大型のハニカム成形体40であっても変形しにくく、品質も良好である。
【0042】
以下、さらに詳しく押出成形装置1について説明する。
【0043】
(チャンバードラム)
図2は、チャンバードラム20の一実施形態を示す模式図である。
図2に示すように、チャンバードラム20は、第一空間部23と、第二空間部24と、を含み、流入口21、及び流出口22が形成されている。
【0044】
第一押出方向伸長部23cの下流側の端面の径D2(
図2参照)に対する、第二押出方向伸長部24cの押出方向に垂直な断面の径D3(
図2参照)の比の値(D3/D2、以下、「絞り率」ともいう)は0.1〜0.3であることが好ましく、0.15〜0.3であることがさらに好ましく、0.15〜0.25であることが特に好ましい。上記比の値をこのような範囲とすることにより、坏土の偏心、及びそれに伴う表面荒れを抑制し、バッチ切替時間を短縮することができる。上記比の値(D3/D2)が、0.1未満であると、第二押出方向伸長部24cの径が相対的に小さくなり過ぎ、押出部10からの押出圧力が過度に増大することがある。上記比の値(D3/D2)が0.3超であると、偏心を抑制する効果が充分に得られないことがある。
図2は、本実施形態のチャンバードラムの一実施形態を示す模式図である。なお、本明細書中、第一空間部及び第二空間部の断面形状が真円以外である場合、その径は、断面上で描くことができる最長の線分とする。
【0045】
第一空間部23は、押出部10の押出口12側から、すなわち、流入口21から押出方向に伸びて押出方向に坏土を流通させる空間を有する。そして、第一空間部23は、第一押出方向伸長部23cの押出方向の上流側に接続し、押出部10の押出口12側から、すなわち、流入口21から押出方向の下流側へ向かって断面積が減少し、当該断面積が第一押出方向伸長部23cの断面積と等しいテーパー形状に形成されたテーパー部25を有することが好ましい。テーパー部25の下流側の端部に接続される第一押出方向伸長部23cの断面形状は、特に制限されないが、坏土の滞留や、偏心を抑制するという観点から、楕円や真円が好ましく、真円が特に好ましい。
【0046】
さらに、テーパー部25は、その入口(上流端25a)の高さ、言い換えると、流入口21の高さをD1、出口(下流端25b)の径をD2、押出方向の長さ(上流端25aと下流端25bとの距離)をL1としたとき、下記式(1)で表される角度θが、5〜30°であることが好ましい。
θ=tan
−1(D1−D2)/2L1・・・(1)
【0047】
なお、流入口21の高さD1は、押出部10のスクリュー14の径と同じであることが好ましい。
【0048】
押出部10に、スクリュー14が2軸平行に設けられている場合(
図3参照)には、
図2に示すように、チャンバードラム20のA−A断面は、2つの円を重ねた形状に形成することが好ましい。それぞれの円は、押出部10のスクリュー14の外形
の位置に対応する。テーパー部25の下流端25bのB−B断面は、1つの円であることが好ましい。そして、A−A断面からB−B断面にかけて、テーパー状にスムーズに形状を変換することが好ましい。また、B−B断面の下流側(円筒部26の上流端26aから下流端26b)は、B−B断面における円の直径D2で円筒部26が形成されていることが好ましい。なお、D2は、A−A断面の直径D1の2つの円の交わった部分の長さと等しい。
【0049】
式(1)においてθ≧5°とすることにより、チャンバードラム20が長くなって容積が大きくなり過ぎることを防止することができる。また、押出トルクの増加や装置の製造コストの増加を抑えることができる。θ≦30°とすることにより、ハニカム成形体40の曲がりの発生を防止することができる。また、5°≦θ≦30°であると、スクリュー14による坏土の流れの圧力状態を静水圧状態にすることができ、坏土の流れの下方向へのスムーズな方向変換をすることができる。これにより、曲がりのない良好なハニカム成形体40を得ることができる。
【0050】
図7に押出成形装置1のチャンバードラム20の他の実施形態を示す。本実施形態では、第一空間部23内において坏土が滞留し易い空間部分に、その空間部分を充填する滞留防止金型28を備える。なお、第一空間部23内に滞留防止金型28が配設されている場合、第
二押出方向伸長部24cの径は、押出方向に垂直な断面に滞留防止金型28が存在しない部分の断面の径である。
【0051】
図7に示されている滞留防止金型28は、第一押出方向伸長部23cの下流側の端部において、第二空間部24の第二流入口24aが開口していない部分に配設されている。この部分において、坏土は押出方向に流通することができないため、滞留する傾向にある。滞留防止金型28を配設することにより、上述の滞留部分が滞留防止金型28により充填され、坏土の滞留を抑制することが可能となる。滞留防止金型28の材質は、特に限定されないが、チャンバードラム20と同材料とすることができる。また、滞留防止金型28は、チャンバードラム20と一体成形されたものであっても良い。
【0052】
滞留防止金型28の形状は、坏土の滞留を抑制できる限り、特に限定されないが、
図7に示されているように、坏土と接触する面が滑らかに湾曲していることが好ましい。ここで、湾曲は、滞留防止金型28が凹むように湾曲していることが好ましい。即ち、滞留防止金型28が形成するテーパー形状が、線形テーパー面よりも外側に凹んでいる形状であることが好ましい。例えば、凹みの形状を、楕円放物面や放物線状二次曲面(パラボリック形状)等とすることができる。滞留防止金型28が滑らかに湾曲していることにより、坏土の滞留を抑制することができると同時に、坏土の流通を滑らかにすることが可能である。
【0053】
第二空間部24の断面形状は、特に制限されないが、坏土の滞留や、偏心を抑制するという観点から、楕円や真円が好ましく、真円が特に好ましい。
【0054】
第二空間部24は、方向転換部24dの下流側の端部から下方向へ伸び、第二流出口24bに達する下方向伸長部24eを有することが好ましい。そして、下方向伸長部24eの下方向に平行な中心軸と、成形部30の下方向に平行な中心軸とが同一直線上に位置することが好ましい。さらに、第二押出方向伸長部24cの押出方向に平行な中心軸と、第一押出方向伸長部23cの押出方向に平行な中心軸とが同一直線上に位置することが好ましい。このように構成することにより、第一空間部23や、第二空間部24への坏土の滞留を減少させ、坏土の流通状態を整えることにより、偏心を抑制することが可能となる。
【0055】
なお、本明細書中、坏土の「偏心」とは、流出された坏土の分布状態が、当該流出方向に垂直な断面において等方性が損なわれ、偏っていることをいう。例えば、
図12Bや
図13Bに示されているように、成形体の押出成形方向に垂直な断面における坏土の分布の中心が、成形体の押出成形方向に平行な中心軸上に位置しておらず、偏っている状態である。
図12B及び
図13Bは、それぞれ、比較例1、比較例2の結果を示す模式図であり、いずれも、坏土が偏心している状態を表すものである。
【0056】
坏土が偏心している度合いは、成形体の押出成形方向に垂直な断面において、断面の半径Aに対する、断面の中心から坏土の分布の中心までの距離Bの百分率(以下、「偏心量(E)」ともいう。E=B/A×100)を用いて表現することができる。押出成形装置1は、偏心量が5%以下となるように構成されていることが好ましく、3%以下となるように構成されていることがさらに好ましい。
【0057】
第二空間部24において、第一空間部23の第一流出口23bに接続された第二流入口24aは方向転換部24dの上流側端部よりも押出方向上流側に位置している。第二押出方向伸長部24cの長さL3(
図2参照)、即ち、第二空間部24の第二流入口24aから押出方向に伸びる部分の長さは、第二空間部24の径D3の1〜3倍であることが好ましく、2倍であることが特に好ましい。
【0058】
押出成形装置1は、押出部10からの押出方向が水平方向と平行であり、チャンバードラム20が坏土を流出させる下方向が鉛直方向と平行であることが好ましい。即ち、押出部10からの押出方向と鉛直方向が直交するように構成することが好ましい。このように構成すると、下方向が重力方向であることにより、大型のハニカム成形体40であっても、形くずれを起こすことなく、良好に押出成形することができる。また、押出部10からの押出方向が水平方向であることにより、押出成形装置1の設置に広い上下空間が必要ない。
【0059】
第二空間部24は、
図2に示すように、押出方向に伸びる円筒部24cと、下方向に伸びる円筒部24eと、それらをつなぎ合わせるL字状の屈曲部24dと、を有していることが好ましい。或いは、
図4に示すように、押出方向に伸びる円筒部24cと、下方向に伸びる円筒部24eと、それらをつなぎ合わせる湾曲円筒部24d’と、を有する構成であっても良い。この場合、湾曲形状の曲率半径は、制限されないが、例えば、20〜100mmとすることができる。
図4は、第二空間部の一例を示す模式図である。
【0060】
第二空間部24には、方向転換部24dから分岐した排出部27が設けられていても良い。排出部27は、チャンバードラム20の外壁を貫通し、押出成形装置1の外部へ坏土を排出する排出口27bを設けても良い。このような排出部27を設け、排出口27bを開放した状態で坏土を排出させることにより、坏土のバッチ切替評価を効率化することができる。即ち、排出口27bから排出される円柱状坏土の色、水分、硬度、化学成分等を検査することで、第二空間部24中の切替前の坏土が切替後の坏土に完全に置き換わったことを確認することができる。更に、第二空間部24は第一空間部23や、成形部30等と比較して、坏土の流通方向の径が小さい。よって、成形部30において口金から押し出される大型の成形体よりも、排出口27bから排出される坏土は、例えば断面直径が1/3程度と小さいため、バッチ切替評価作業の効率が良い。また、押出成形時の坏土の流通経路から分岐させて坏土を排出させても、押出成形時の坏土の流通状態が乱れるのを抑制することができる。即ち、第二空間部24と排出部27との接続部分の径が小さいため、第二空間部24中の坏土の量が少なく、押出成形時の坏土の流通状態の乱れを抑制することができる。従って、坏土のバッチ切替後の成形体であっても、分岐流通路による影響は非常に軽微であり、成形体の偏心が抑制されるため、安定した成形体を得ることが可能となる。
【0061】
排出部27は、第二押出方向伸長部24cを延長するように構成することが好ましい。即ち、排出部27は、第二押出方向伸長部24cと同方向に伸びるように分岐していることが好ましい。特に、
図5及び
図6Aに示すように、排出口27bの中心軸が、第二押出方向伸長部24cの中心軸と同一直線上に位置することが好ましい。また、排出口27bの断面の径が、第二押出方向伸長部24cの断面の径と等しいことが好ましい。排出部27が第二押出方向伸長部24cを延長するように構成することにより、坏土のバッチの切替をより効率的に行うことが可能となる。具体的には、排出口27bと第二押出方向伸長部24cが同一直線上に位置し、断面の径が等しいため、第二押出方向伸長部24cから押出方向に流通する坏土が、その流通状態の乱れを抑制しながら、排出口27bへと流通することが可能となる。即ち、押出成形時の坏土の流通状態への分岐流通路による影響が抑制されることにより、坏土のバッチ切替後、押出成形を再開させた場合に、成形体の偏心が抑制され、安定した成形体を得ることができるため、短時間でのバッチの切り替えが可能となる。
【0062】
排出口27bには、圧力抜き装置27aを設けることが好ましい。押出成形装置1に圧力抜き装置27aを設けることにより、口金交換作業を容易にすることができる。例えば断面直径が140mm以上であるような大型のハニカム構造体を製造する場合、押出成形時における口金部の圧力は、10MPa以上と高圧であるため、口金交換作業は、口金内の圧力を低下させてから行うことが必要となる。このような高圧の低下には、安全上の観点から慎重に作業を行う必要があり、口金交換作業におおよそ1〜2時間程度の時間を要する。そのため、口金内部圧力の低下手段として、排出口27bからの坏土の排出を制御することで口金内の圧力を制御することができる圧力抜き装置27aを設置することが好ましい。なお、圧力抜き装置27aは、成形中の圧力が異物混入などの成形トラブルにより20MPa以上の圧力に異常上昇した場合に、安全弁として機能させることも可能である。
【0063】
圧力抜き装置27aとしては、特に制限されず、圧力バルブ等を使用することができる。中でも、第二空間部24内の高圧に耐え、且つ、バルブ開閉時に坏土が噛み込まれない構成を有しているものが好ましい。そのような圧力抜き装置27aとして、例えば、
図6A及び
図6Bに示すような、スライドプレートゲート27cが好ましい。更に、バルブ開閉時に坏土が噛み込まれないよう、瞬時に開閉が可能な構成を有していることが好ましい。スライドプレートゲート27cの開閉は、例えば、電磁式、油圧式等で制御することができる(図示せず)。
【0064】
図6Aは、第二空間部24の他の例を示す模式図であり、排出口27bに圧力抜き装置27aとして、スライドプレートゲート27cを備えたチャンバードラム20の押出方向及び鉛直方向に平行な断面を示している。
図6Bは、
図6Aのチャンバードラム20を押出方向の下流側から観察した側面の模式図である。スライドプレートゲート27cは、スライドプレート27dがレール27fに沿って平行に摺動可能に構成されている。スライドプレート27dには、排出口27bに対応する孔27eが設けられている。スライドプレート27dを平行移動させて排出口27bと孔27eの位置を合わせることにより、排出口27bから坏土を排出させることが可能である。
【0065】
チャンバードラム20の内部構造として、第二空間部24を形成する構造体部分の一部または全部(以下、「第二空間部構造体」ともいう)を交換可能に構成しても良い。即ち、第二空間部構造体が、いわゆる中子構造となっていても良い。このような構成とすることにより、第二空間部構造体のみを容易に交換することが可能である。第二空間部構造体は、第二空間部24の径が狭められているため、第二空間部構造体の第二空間部24側の表面は、他の構造体部分よりも、坏土の流通に伴い摩耗しやすい。また、坏土の種類等に応じて、第二空間部24の径(絞り率)や流通路形状(絞り形状)を変更する場合がある。そのため、第二空間部構造体が中子構造となっていると、第二空間部構造体の交換に有利である。
【0066】
(押出部)
図3に押出部10の一実施形態を示す。押出部10は、供給口11と押出口12とを有するドラム17、及びドラム17内にスクリュー14を含む。供給口11から押出部10の内部に、セラミックス成形原料を含む坏土が流入される。スクリュー14は、回転軸16と回転軸16に沿った螺旋状の回転羽根15とを有し、坏土を回転羽根15の回転により混練しつつ回転軸16に平行な押出方向に搬送する。
【0067】
押出部10は、スクリュー14がドラム17内に2軸平行に設けられていることが好ましい。このように2軸平行に設けられていることにより、十分な圧力で坏土を搬送することができる。しかしながら、本発明の押出成形装置1は、2軸のスクリュー14に限定されるものではない。
【0068】
押出部10の押出圧力としては、坏土を連続的に押し出し、成形部30を通じて、成形体を押出成形できる限り特に限定されないが、押出圧力の上限は、工業的生産規模の押出装置の技術上の限界から、20MPa程度である。
【0069】
(成形部)
成形部30は、チャンバードラム20の流出口22に接続され、チャンバードラム20の流出口22から流出された坏土を内部から押出成形することにより、ハニカム成形体40を成形する。
【0070】
成形部30は、第二空間部24に接続する第一拡径部32と、ハニカム成形体40を押出成形する第二拡径部33とを含む。第一拡径部32は、テーパー形状で徐々にその径が拡大する。続く第二拡径部33は、下流側の方に向けて径が拡大するほぼ円筒形状か、径が一定の円筒形状である。第一拡径部32と第二拡径部33との間には、異物を除去するためのスクリーン34が備えられている。スクリーン34は、坏土中の粗粒や異物を除去するためのものであり、例えば、目開きが65〜420μm程度のSUS304製の網などが好適に使用できる。また、第二拡径部33の下流端には、口金36が備えられている。
【0071】
ガソリンエンジンの排ガス浄化用触媒担体として用いるためのハニカム成形体40を作製するための口金36は、ハニカム成形体40を押出成形するスリットのスリット幅が70〜170μmであることが好ましく、70〜125μmであることが特に好ましい。また、この口金36は、スリットと内部で連通し、口金36の内部への坏土の導入孔とされる複数の坏土導入孔(裏穴)の直径が0.08〜0.20cmであることが好ましい。一方、ディーゼルエンジンのPMを除去するためのフィルタ(Diesel Particulate Filter、DPF)として用いるためのハニカム成形体40を作製するための口金36は、ハニカム成形体40を押出成形するスリットのスリット幅が100〜600μmであることが好ましく、300〜450μmであることが特に好ましい。また、この口金36は、複数の坏土導入孔(裏穴)の直径が0.1〜0.3cmであることが好ましい。
【0072】
図8に押出成形装置1の他の実施形態を示す。本実施形態では、押出部10と、チャンバードラム20との間に、異物を除去するためのスクリーン34が備えられている。本実施形態では、押出部10で混練された坏土は、押出部10からチャンバードラム20に押し出される。このとき、スクリーン34を通過することにより、坏土に含まれる異物が除去される。この位置にスクリーン34を備えることにより、装置全体のレイアウトによっては、本実施形態の方が、スクリーン34を交換しやすい場合もある。
【0073】
2.押出成形方法
本発明の押出成形方法は、上述の押出成形装置1を用いることにより実施することが可能である。以下、本発明の押出成形方法の一実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0074】
本実施形態の押出成形方法は、押出工程と、第一流通工程と、第二流通工程と、成形工程と、を順に備える方法である。
【0075】
押出工程は、セラミックス原料を含む坏土を混練して、前記坏土を押出口12から押し出す工程である。押出工程は、例えば、
図3に示すような押出部10を使用して実施することが可能である。
【0076】
第一流通工程は、押出工程において押出口12から押し出された坏土を、第一押出方向伸長部23cの内部を押出方向へ流通させ、第一流出口23bから流出させる工程である。第二流通工程は、第一流通工程において第一流出口23bから流出された坏土を第一押出方向伸長部23cの押出方向に垂直な断面の断面積を等方的に減少させた断面積を有する第二押出方向伸長部24c、次いで、方向転換部24dの内部を流通させることにより、第一流通工程における坏土の流通路を等方的に絞った状態で押出方向から下方向へと方向転換させる工程である。坏土を下方向へと方向転換後、下流側の端部に開口した第二流出口24bから下方向へ流出させる。即ち、第二流通工程においては、第一流通工程における流通路よりも細い流通路である第二押出方向伸長部24c、方向転換部24d、下方向伸長部24e等の内部に坏土を流通させる。上記第一流通工程及び第二流通工程は、例えば、
図2、及び
図4〜
図7に示すようなチャンバードラム20によって実施することが可能である。
【0077】
ここで、第一押出方向伸長部の径に対する前記押出方向に垂直な断面の径の比の値(以下、「絞り率」ともいう)は、0.1〜0.3であることが好ましく、0.15〜0.3であることがさらに好ましく、0.15〜0.25であることが特に好ましい。上記絞り率をこのような範囲とすることにより、坏土の偏心、及びそれに伴う表面荒れを抑制し、バッチ切替時間を短縮することができる。上記絞り率(D3/D2)が、0.1未満であると、第二押出方向伸長部24cの径が相対的に小さくなり過ぎ、押出部10からの押出圧力が過度に増大することがある。上記絞り率(D3/D2)が0.3超であると、偏心を抑制する効果が充分に得られないことがある。
【0078】
成形工程は、第二流通工程において第二流出口24bから流出された坏土を、口金36を通してハニカム成形体40を押出成形する工程である。
【0079】
本実施形態の押出成形方法に用いる坏土は特に限定されず、例えば、セラミックス原料、水、メチルセルロース、添加剤等を含む坏土を用いることができる。セラミックス原料としては、コージェライト化原料、炭化珪素、金属珪素、サイアロン、ムライト、窒化珪素、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ、シリカ、コージェライト、これらの混合物等を用いることができる。コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライトとなる原料を意味する。坏土には、さらに発
泡樹脂や吸水性ポリマーを加えてもよい。発泡樹脂としては、アクリル系マイクロカプセル等が挙げられる。発泡樹脂は、造孔剤として機能する。吸水性ポリマーは、セラミックス原料や有機バインダとともに水と混合、混練されると、吸水して、そのポリマー中に水分を保持した構造となり、機械的強度が高く潰れ難い特性を有するものである。吸水性ポリマーとしては、吸水性樹脂を挙げることができ、さらに具体的には、アクリル系樹脂を挙げることができる。
【0080】
坏土のバッチが切り替わるまでの時間は、作業効率の観点から、20分以下であることが好ましく、10分以下であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
図1に示すような押出成形装置1を用いて、ハニカム成形体40の押出成形を行った。まず、セラミックス原料、水、メチルセルロース、添加剤等を含む坏土を押出部10に供給し、成形部30からハニカム成形体40を押出成形した。次いで、上記坏土に連続して、着色した上記坏土を押出部10に供給し、ハニカム成形体40の押出成形方向に垂直な断面の全体が着色されるまで、押出成形した。
【0083】
実施例1において、押出部10のスクリュー径は、50mmであり、押出圧力は13.5MPaであった。第二空間部24は、円筒状の第二押出方向伸長部24cと、円筒状の下方向伸長部24eと、それらをつなぎ合わせるL字状に屈曲した方向転換部24dとを有するものであった。第一押出方向伸長部23cの押出方向に平行な中心軸と、第二押出方向伸長部24cの押出方向に平行な中心軸とは共通であり、第二空間部24は、第一空間部23の断面積を等方的に減少させた断面積を有するものであった。第一押出方向伸長部23cの径に対する、第二押出方向伸長部24cの径の比の値(絞り率)は0.17であった。口金36のスリット幅は、150μmであり、裏穴の直径は、0.14cmであった。ハニカム成形体40のサイズは、直径140mmであった。
【0084】
実施例1の偏心量(%)及び切替時間(分)の結果を表1に示す。ハニカム成形体40の偏心量は、3%であり、切替時間は10分であった。バッチの切替前、及び切替完了後のハニカム成形体40は、曲がりが無く、表面状態は良好であった。
【0085】
偏心量(%)は、ハニカム成形体40の押出成形方向に垂直な断面において、断面の半径Aに対する、断面の中心から坏土の分布の中心までの距離Bの百分率(偏心量E=B/A×100)として求めた。
【0086】
切替時間(分)は、着色した坏土が初めて口金36に到達し、ハニカム成形体40の一部として押出成形された時点から、ハニカム成形体40において、切替前の坏土から着色した切替後の坏土へと完全に置換された時点までの時間(分)を測定した。
【0087】
(比較例1)
図1に示すチャンバードラム20の代わりに、
図9に示すような曲がりドラムを備えた押出成形装置を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏心量(%)及び切替時間(分)を測定した。結果を表1に示す。なお、得られたハニカム成形体には、曲がりが生じていた。
【0088】
(比較例2)
図1に示す押出成形装置1の代わりに、
図10に示すような、絞り形状が単純絞りである押出成形装置を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏心量(%)及び切替時間(分)を測定した。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
表1の結果は、L字状に絞った第二空間部24を備えることにより、偏心量を抑制し、切替時間を短縮することが可能であることを示している。
【0091】
また、実施例1、比較例1、及び比較例2については、流通路の状況について、さらに調査した。即ち、模擬試験として、チャンバードラム20、及び拡径部を備える装置を用いて、チャンバードラム20内の第一空間部23及び第二空間部24を流通させるように、着色坏土62と未着色坏土61を押し出すことにより調査した。具体的には、チャンバードラム20内に着色坏土62と、未着色坏土61とを、押出方向に交互に複数並べ、それらを押出方向へ押し出し、チャンバードラム20の流出口22から流出して拡径部に流入し、拡散した押出体を作製した。上記装置は、押出方向及び鉛直方向を含む面において、分割可能となっているため、装置内部の坏土の断面を得ることにより、着色坏土62によって可視化された坏土の流動状態を調査することができる。
【0092】
上述の方法により、実施例1、比較例1、及び比較例2の各流通路について、押出方向及び鉛直方向を含む面における断面を撮影した写真が、それぞれ、
図11A、
図12A、
図13Aである。また、
図11B、
図12B、
図13Bは、それぞれ、実施例1、比較例1、及び比較例2の各流通路を通じて形成された押出体の押出方向に垂直な断面を撮影した写真である。これらの結果から、比較例1のような曲がりドラム(
図9参照)では、ドラムの入口と出口とで、流通する坏土の対称性が維持されておらず、押出体において、大きく偏心していた。比較例2のような単純絞り形状(
図10参照)では、第二空間部の流入口付近で流動状態が乱れており、結果として、比較例1よりは改善されているものの、依然として、偏心が確認された。一方、実施例1のようなL字絞り(
図1、
図2参照)では、第二空間部24の第二流入口24aと第二流出口24bとで、流通する坏土の対称性が維持されており、偏心が極めて少ない押出体が得られた。比較例1、2では、坏土の流通路の方向転換部における内側と外側とで、通過速度に差が生じることにより、上記対称性が損なわれると考えられる。実施例1では、第二空間部24の径が小さくなっているため、この方向転換部における内外通過速度差を低減させることが可能である。
【0093】
次に、絞り率、及び第二空間部24の形状について、調べた。
【0094】
(実施例2〜5)
図1に示す押出成形装置1において、絞り率を表2に示した値としたこと以外は、実施例1と同様にして、偏心量(%)及び切替時間(分)を測定した。結果を表2に示す。
【0095】
(実施例6)
図1に示すL字状の屈曲部24dを有するチャンバードラム20の代わりに、
図4に示すような曲率Rを有する円筒湾曲部を有するチャンバードラム20を備えた押出成形装置を用いたこと、絞り率を0.25としたこと以外は、実施例1と同様にして、偏心量(%)及び切替時間(分)を測定した。結果を表2に示す。
【0096】
(実施例7)
図1に示すL字状の屈曲部24dを有するチャンバードラム20の代わりに、
図5に示すような排出部27を有するチャンバードラム20を備えた押出成形装置を用いたこと、絞り率を0.25としたこと以外は、実施例1と同様にして、偏心量(%)及び切替時間(分)を測定した。結果を表2に示す。
【0097】
(実施例8)
図7に示す滞留防止金型28が配設されたチャンバードラム20を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏心量(%)及び切替時間(分)を測定した。結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
表2の実施例1〜5、比較例1の結果は、第二空間部が、第一空間部における坏土の流通方向に垂直な断面の断面積を等方的に減少させた断面積を有する場合に、偏心量及び切替時間が有意に向上していることを示している。特に、絞り率が0.1〜0.3である場合に、偏心量及び切替時間が顕著に向上していることを示している。また、表2の実施例6、7の結果は、第二空間部24の方向転換部24dが、円筒湾曲形状であっても、排出部27を有していても、偏心量及び切替時間が顕著に向上していることを示している。また、表2の実施例8の結果は、滞留防止金型28を配設した場合であっても、偏心量及び切替時間が顕著に向上していることを示している。
【0100】
さらに、押出成形装置1の規模を拡張した場合、及び、主原料、ハニカム形状を変更した場合についても調べた。
【0101】
(実施例9〜13、比較例3、4)
表3に示す主原料、口金のサイズ、押出部サイズ、絞り形状等としたこと以外は、実施例1と同様にして、偏心量(%)及び切替時間(分)を測定した。結果を表3に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
表3の結果は、押出成形装置1の規模を拡張した場合であっても、主原料や、各種用途に合わせたハニカム形状を変更した場合であっても、偏心量及び切替時間が顕著に向上していることを示している。
【0104】
さらに、押出成形装置に、排出部27及び圧力抜き装置27aを配設した場合の口金交換時間について調べた。比較として、排出部27及び圧力抜き装置27aを有さない押出成形装置(実施例10、11)について調べた。
【0105】
(実施例14)
実施例10の押出成形装置において、
図6A及び
図6Bに示すような、排出部27及び圧力抜き装置27a(スライドプレートゲート27c)を配設したチャンバードラム20を使用したこと以外は、実施例10と同様にして、偏心量(%)及び切替時間(分)を測定した。また、実施例10及び本実施例14の押出成形装置を使用して、口金交換時間(分)を測定した。結果を表4に示す。
【0106】
(実施例15)
実施例11の押出成形装置において、
図6A及び
図6Bに示すような、排出部27及び圧力抜き装置27a(スライドプレートゲート27c)を配設したチャンバードラム20を使用したこと以外は、実施例11と同様にして、偏心量(%)及び切替時間(分)を測定した。また、実施例11及び本実施例15の押出成形装置を使用して、口金交換時間(分)を測定した。結果を表4に示す。
【0107】
口金交換時間(分)は、坏土の流通を停止後、圧抜きし、口金を交換し、再び坏土の流通が可能となるまでの時間である。実施例14及び15の押出成形装置では、排出部27から、圧力抜き装置27aを開いて圧抜きを行った場合の口金交換時間を計測した。一方、比較として、排出部27及び圧力抜き装置27aを有さない押出成形装置(実施例10、11)については、従来のように、ハニカム成形体が押し出される押出出口から、圧抜きを行った場合の口金交換時間を計測した。
【0108】
【表4】
【0109】
表4の結果は、排出部27及び圧力抜き装置27aを配設した押出成形装置では、偏心量の抑制、坏土のバッチ切替時間の短縮に加え、口金交換時間を大幅に短縮できることを示している。