【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、ポテト形状の黒鉛(potato shaped graphite:PSG)が繊維強化複合体、特に、炭素繊維強化複合体の導電率の向上に特に有用であることを見出した。
【0015】
「ポテト形状の黒鉛」という用語は、本明細書では、黒鉛の気孔率又は球形度を高めるように処理された黒鉛を説明するために使用する。その方法は、天然黒鉛(例えば鉱脈黒鉛)又は人工黒鉛(例えば高結晶性合成黒鉛)で実施することができる。黒鉛は、処理の前、一般に、鱗片状(例えば平板状)であるか、比較的結晶化度が高い片状黒鉛である。黒鉛は、ミル加工、圧延加工、粉砕、圧縮、変形加工などにより処理され、その黒鉛を曲げ、折り重ね、形状化し、成型するなどして片状物をほぼ球状にする。この方法は、黒鉛の異方性片状物形態よりも黒鉛の等方性特性を高めることができる。このポテト形状の黒鉛粒子は被覆されていてもよいし、被覆されていなくてもよい。ポテト形状の黒鉛粒子は、通常、炭素の高導電性層を積層する、蒸着によって被覆することができる。PSG粒子は平面の結晶構造を示し得るが、CVD炭素層を非晶質炭素被覆としてこの上に積層させる。炭素被覆は、PSGの特定の電気抵抗率を低下させることができる。またPSG粒子は、当該分野で公知の別のコーティング工程、例えばメタライゼーション又はスパッタリングによって被覆されていてもよい。これら粒子は、いずれかの形態の炭素によって被覆されていてもよく、又は金属若しくはポリマーで被覆されていてもよい。「ポテト形状の黒鉛」という用語は、以下の例で確認することができるように、当該分野で一般的である:「高性能の高純度黒鉛粉末(High−Purity Graphite Powders for High Performance)」、Giovanni Juri, Henri−Albert Wilhelm and Jean L’Heureux, Timcal Ltd. Switzerland, 2007、及び「黒鉛:先端技術提供による研磨仕上げ(Graphite: High−tech Supply Sharpens Up)、Penny Crossley, industrial Minerals, 2000。
【0016】
「ポテト形状の黒鉛」という用語は、本明細書では、通常、(このような方法により生産されるものであろうと、別の方法(単数又は複数)により生産されるものであろうと、天然で産生されるものであろうとなかろうと)上述の方法によって生産される形状を有する黒鉛を説明するためにも使用される。「ポテト形状の黒鉛」は、一般に、ポテトの形状からほぼ球形までの形状に及ぶ。「ポテト形状の黒鉛」は、通常、細長く、楕円形などであり、楕円形状、卵形状、矩形形状、偏球形状などを有する黒鉛を挙げることができる。「ポテト形状の黒鉛」全体と「ポテト形状の黒鉛」の個々の粒子は両方とも、必ずしも一定の形状を有しておらず、必ずしも対称的形状を有してはいない。本明細書では、「ポテト形状の黒鉛」という用語は、上述の方法によって生産される黒鉛、及びこのパラグラフで説明したような形状を有する黒鉛を包含するものとする。
【0017】
一般的に、PSGは、次の2つの特性の少なくとも1つを有する:1つは、Logan Instrument Corp. Model Tap−2の名称で販売されている装置に関する方法に従って測定した場合、0.3と1.5g/ccの間、好ましくは0.5と1.4g/ccの間、最も好ましくは1と1.3g/ccの間のタップ密度である。また、Microtac Model X100 Particle Analyzerの名称で販売されている粒子アナライザーに関する方法に従って粒度分析分散(granulometric dispersion)を測定した結果、D90/D10分布比が2と5の間で変動し、粒径が1μmと50μmの間であり、好ましくは、D90/D10分布比が2.2と4.2の間で変動し、粒径が2μmと30μmの間であり、且つ/又は前述の範囲の組み合わせである。
【0018】
本発明者らは、平均粒径が10から20ミクロン、好ましくは15ミクロンである、日本の日本パワーグラファイト株式会社提供の被覆PSG粒子が、プリプレグの導電率の向上に特に適していることを見出した。通常、被覆PSGは、未被覆PSGよりも硬質の表面と低い比電気抵抗率を有しており、その電気抵抗率は未被覆PSGよりも少なくとも50%低くなり得る。さらに、ドイツのNGS Naturgraphit社から提供されているPSG粒子も本発明で使用するに適している。さらに、上述のものと同様の特性を有する他の供給元の回転楕円状又はそれに近い球状の黒鉛も、本発明で使用するに適している。
【0019】
したがって、本発明は、繊維強化硬化性樹脂を含むプリプレグであって、プリプレグがポテト形状の黒鉛を含有する、上記プリプレグを提供する。
【0020】
さらなる実施形態において、本発明は、繊維強化樹脂を含む複合体であって、複合体がポテト形状の黒鉛を含有する、上記複合体を提供する。
【0021】
さらなる実施形態において、本発明は、ポテト形状の黒鉛を含有する硬化性樹脂を含むこのようなプリプレグ又は複合体の生産に有用な樹脂組成物を提供する。
【0022】
本発明は、中間層によって分離されている樹脂含浸繊維層を含む組成物に特に有用である。したがって、本発明は、炭素繊維強化エポキシ樹脂の少なくとも2つの層と、それらの間のインターリーフ樹脂層とを含む複合材料であって、前記インターリーフ樹脂層又は中間層が導電性粒子を含む、上記複合材料を提供する。導電性粒子は、ポテト形状の黒鉛を含んでいてもよい。好ましくは、複合材料は、前記導電性粒子を樹脂に対して0.5から10重量%まで、好ましくは1から8重量%まで、さらに好ましくは0.5から5重量%まで、特に1.5から5重量%まで、最も好ましくは2から4重量%まで含有する。
【0023】
通常、複合材料において、樹脂マトリックスは、繊維材料又は繊維強化材の周囲にそれが存在することにより繊維材料を強化する。本発明の構成において、複合材料の構造の結果、繊維強化材が存在する樹脂の独立層は、繊維強化樹脂層として区別することができ、このような積層構造によって、これらの層は、その間に中間層又はインターリーブを形成する。
【0024】
本発明の別の実施形態において、導電性粒子の存在は任意選択である。この実施形態において、炭素繊維強化材の少なくとも1つの層は、10から200g/m
2まで、好ましくは15から150g/m
2までの範囲の重量を有する。有利には、炭素繊維強化材は、国際公開第98/46817号に開示されている織物など、延展織物又は平面状繊維性トウ織物の形態であってもよい。
【0025】
好ましい実施形態において、樹脂又は樹脂組成物及び/又は中間層は、通常、熱可塑性材料である強化剤(toughener)をさらに含有する。熱可塑性材料は、粒子の形態をしていてもよい。熱可塑性粒子は、樹脂に対して5から20重量%まで、好ましくは樹脂に対して9から15重量%まで、さらに好ましくは、樹脂に対して9から14重量%までの範囲で存在し得る。さらなる好ましい実施形態において、熱可塑性材料はポリアミドである。熱可塑性粒子の適切な例としては、一例として、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリウレタンが挙げられる。ポリアミドは、好ましいタイプの熱可塑性粒子である。ポリアミド粒子は、ポリアミド6(カプロラクタム−PA6)、ポリアミド12(ラウロラクタム−PA12)、ポリアミド11、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、架橋ポリメチルメタクリレート、高密度化ポリエチレンスルホン、又はその任意の組み合わせを挙げることができる。好ましい熱可塑性粒子は、約140℃と240℃の間の融点を有するポリアミド粒子である。粒子は、100ミクロン未満の粒径を有するのが望ましい。粒径は、5から60ミクロンまで、さらに好ましくは10から30ミクロンまでの範囲であるのが好ましい。平均粒径は約20ミクロンであるのが好ましい。
【0026】
使用することができる適切なポリアミド粒子は次のとおりである:Orgasol 1002 D NAT1(PA6)、Rilsan PA11 P C20HT(PA11)、Ultramid 4350(PA6T)。
【0027】
本発明において使用される樹脂又は樹脂配合物は、好ましくは、硬化性エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を含む。硬化促進剤は、通常、熱活性化され得るが、しかも、通常、硬化サイクル期間を短縮するように樹脂に含まれている。一般的に、配合物は、特定の時間、特定の温度まで加熱することにより硬化される。配合物は、目的の用途に関する所望の硬化温度及び硬化時間を有するように開発されている。配合物の反応性は、特定の温度で保持した場合に特定の硬化度を得るのに必要な時間として測定される。またこの樹脂系は、樹脂の靭性を改善するためのエポキシ樹脂、例えばポリエーテルスルホンに可溶性の熱可塑性材料を含有していてもよい。
【0028】
複合体を含む完成品の生産において、プリプレグは硬化され、積層体におけるように互いに積層され得るか、或いは、別の材料に積層されてもよい。通常、硬化は、プリプレグを鋳型、オートクレーブ、圧縮又は真空バッグ内で加熱し、エポキシ樹脂を硬化することにより行われる。プリプレグ及びプリプレグ積層体の硬化に使用される硬化サイクルは、温度と時間の均衡であり、樹脂の反応性、及び使用される樹脂と繊維の量を考慮に入れる。経済的な視点から、多くの用途において、サイクル時間はできるだけ短くし、硬化剤と促進剤は、通常、これを達成するよう選択されるのが望ましい。
【0029】
樹脂の硬化開始に熱が必要であるだけでなく、硬化反応それ自体が非常に発熱性であり得る。樹脂硬化反応の熱放出により積層体内に高温が生じ得る、工業用途用の積層体を生産するケースが増加するにつれて、特にプリプレグの大きく厚い積層体の硬化に関する時間/温度の硬化サイクルを考慮に入れる必要がある。過度の高温は、金型を損傷し、又は樹脂の一部分解の原因となり得るので、回避すべきである。また過度の高温は、樹脂の硬化に対する制御を不能とし、硬化が暴走する可能性がある。
【0030】
これらの問題に加えて、高温での暴露に対するそれらの抵抗性、及び/又はTgの望ましくない低下の原因となり得る長期間の高湿度を改善することにより、硬化樹脂が高いガラス転移温度(Tg)を有するプレプレグから積層体構造を生産し、構造の有用性を拡大することが望まれている。好ましくは、Tgは150℃から200℃まで、さらに好ましくは160℃から200℃までである。
【0031】
ポテト形状の黒鉛(PSG)粒子は、米国特許出願公報第2010/0092808号に記載されており、次の特性の少なくとも1つを有する:0.3から1.5g/ccの間のタップ密度、ポテトの形状、D90/D10比が2と5の間で変動するような粒度分析分散、及びMicrotac Model X100粒子アナライザーを使用して測定した場合に1と50μmの間のサイズを有する粒子。破壊繊維が樹脂中間層にもある実施形態においては、繊維と粒子の両方が導電性の向上に寄与するので、炭素粒子のサイズ及び形状はそれほど重要ではない。
【0032】
さらに、本発明者らは、破壊繊維(disrupted fibers)を使用することにより、所定の導電率の達成に必要とされる導電性粒子がより少量であることを見出した。ポテト形状の黒鉛は、比較的軟質の材料であり、樹脂含浸中に材料を部分的に崩壊させるとともに、さらにその形状と軟性によって、ポテト形状の黒鉛粒子を使用した場合には、樹脂組成物がプリプレグ製造で使用されているローラー表面に損傷を与えるという傾向を低減する。球状又は球状に近い形状であるPSG粒子は、樹脂に対して最低濃度であるPSGで導電性を向上させることができることから好ましい。プリプレグは、0.05から4.5重量%まで、さらに好ましくは0.1から3.0重量%まで、最も好ましくは0.25重量%から1.5重量%までのポテト形状の黒鉛を含有するのが好ましい。
【0033】
適切なある1つのポテト形状の黒鉛(PSG)は、10から30ミクロンまでの平均粒径を有するSG25/99.95 SCと呼ばれる、ドイツのNGS Naturgraphit社提供の製品である。或いは、10から30ミクロンまでの平均粒径を有するGHDR−15−4と呼ばれる、日本の日本パワーグラファイト株式会社提供のPSGを好ましくは使用することができる。GHDR−15−4は、その外表面上への炭素蒸着によって積層された炭素被覆を含んでいる。さらには、Timrexなどの別の提供元から入手することができる球状又は回転楕円状黒鉛もまた適切である。
【0034】
一実施形態において、本発明の複合体は、樹脂を含浸させた繊維強化材の2つ以上の個別の層を、それらの間に存在する層であるポテト形状の黒鉛粒子を含む樹脂のインターリーフ層と共に硬化することにより形成させることができる。これらの層は、好ましくは一方向性トウを含み、各層のトウは実質的に平行である。2つの層は、一方向性トウが同一平面にあるように、圧縮により連結されていてもよい。一又は複数のさらなる繊維層もまた、連結層と組み合わせることができる。
【0035】
本発明のプリプレグは、国際公開第2010/150022号に記載及び例示されている方法によって製造することができる。この方法は、定義した幅を有する一方向性導電性繊維層を供給し、繊維の第1の面とポテト形状の黒鉛を含有する熱硬化性樹脂を含む樹脂の第1の層を接触させ、一又は複数の含浸ローラーを通過させることにより樹脂と繊維を一緒に圧縮させることを含む。導電性繊維及び樹脂上にかける圧力は、好ましくは、導電性繊維の幅1センチメートル当たり40kgを超えない。樹脂は、好ましくは、樹脂が繊維の隙間に入り、かつ、一方向性導電性繊維を実質的に含まない樹脂の第1の外層をそのままにしておくのに十分な量で提供される。この外層は中間層になる。特に一方向性導電性繊維のトウを連続供給し、繊維の面と熱硬化性樹脂を含む樹脂の第1の層を接触させ、少なくとも1つのS−ラップ段階を通過させて樹脂と繊維を一緒に圧縮しながら、繊維の隙間に入りかつ樹脂の第1の外層をそのままにしておくのに十分な樹脂を提供する。
【0036】
この方法によって生産されるプリプレグは、破壊繊維層を有するように処理することができ、その結果、多数のこのようなプリプレグが一緒に積層される場合、破壊された導電性繊維を含みかつ導電性粒子を含む樹脂のインターリーフ層によって分離されている多数の構造層を含むプリプレグ積層体が生じ、次いで硬化して硬化複合積層体が形成され、優れた強靭特性を維持しつつ、「Z」方向に極めて大きな導電性が得られる。
【0037】
或いは、インターリーフ・プリプレグは、2段階法で生産することができる。第1段階は、繊維の表面を破壊して破壊繊維を形成させ、隙間に入る樹脂を繊維と接触させ、その後、導電性粒子を含み、任意選択で強化剤粒子を含む別の樹脂と接触させる。この第2段階は、それらの粒状材料を含む樹脂を横たえ、そうすることで、多数のこのようなプリプレグが一緒に積層される場合に、インターリーフ層になる導電性繊維を含まない樹脂の均一な厚みの層を生成することのみを目的とする。
【0038】
したがって、本発明のプリプレグを製造する好ましい方法は、ローラーによって通常ガイドされる、一連の段階を通して何千もの繊維を通過させることを含む連続法である。通常シート形態の本発明の樹脂又は樹脂組成物に繊維が接触する時点は、含浸の開始段階である。繊維が樹脂と接触し、含浸領域に達する前に、繊維は、通常、多数のトウに配置され、各トウは何千ものフィラメント、例えば12,000本のフィラメントを含む。これらのトウはボビンに装着され、まず梳毛装置に供給され、繊維が均一に確実に離れるようにする。ボビン供給位置直後の繊維張力を通常よりも低くすることにより、最終プリプレグの繊維の破壊にさらなる改良を加えられることがわかった。したがって、この位置でのフィラメント当たりの張力は、好ましくは0.0007から0.025gまでであり、好ましくは0.01から0.015gまでである。
【0039】
破壊性繊維(disruptive fibers)又は破壊繊維(disrupted fibers)が必要とされる場合には、繊維を研磨ローラーなどの粗面上に通し、インターリーフ層の一部になる破壊性繊維又は破壊繊維を生産することもできる。繊維処理速度及び張力は、所望する破壊の程度が得られるように制御することができる。
【0040】
本方法において、熱硬化性樹脂を含む樹脂の第2の層は、通常、繊維の別の面と、第1層と同時に接触させ、樹脂が繊維の隙間に入るように、樹脂の第1の層と第2の層を圧縮することができる。こうした方法は、一段階法であると考えられる。その理由は、繊維のそれぞれの面を1つの樹脂層と接触させるものの、最終プリプレグ内の樹脂はすべて一段階で含浸させるからである。
【0041】
樹脂の含浸は、通常、樹脂及び繊維をローラーに通すことを含むが、ローラーは様々な方法で配置することができる。主要な2つの配置は、単純「ニップ」配置と「S−ラップ」配置である。
【0042】
S−ラップ段階は、ともにシート形態である樹脂と繊維を、S−ラップローラーとして知られている、「S」字形状の2つの独立した回転ローラーの周りを通過させる。代替のローラー配置は広く使用されている「ニップ」を含み、この場合、繊維と樹脂は、2つの隣接する又は向かい合う回転ローラーの間のピンチポイントをそれらが通過する際に、一緒に締め付けられるか、挟まれる。樹脂及び繊維に誘導される圧力は、所望する繊維の破壊程度が得られるように制御することができる。パラメーター、例えば、ローラー間の離隔距離、速度、ローラーと樹脂及び繊維の間の相対速度、並びにローラーの接触面積などは、所望する(繊維)破壊及び樹脂含浸の程度が達成されるよう変えることができる。
【0043】
S−ラップは、信頼性があり再現可能な繊維隙間への樹脂の含浸に対して理想的な状態を提供し、一方、十分な破壊も提供すると考えられる。
【0044】
しかし、例えば、隣接するローラー間のギャップを制御することによって圧力を低く保つことができれば、ニップ段階も可能である。
【0045】
S−ラップローラー又はニップローラーの複合装置は、各装置で樹脂に加えられる圧力を徐々に高めることによって使用することができる。代表的な方法は、同一生産ラインにおいてS−ラップローラーとニップローラーの装置を組み合わせることもできる。
【0046】
導電性繊維と樹脂に加えられる圧力は、好ましくは、導電性繊維層の幅1センチメートル当たり35kgを超えず、さらに好ましくは1センチメートル当たり30kgを超えない。
【0047】
直径が200から400mmまでのローラー、さらに好ましくは220から350mm、最も好ましくは240から300mmまでのローラーが、所望する破壊繊維構造を得るための適切な状態を提供するということがわかった。
【0048】
例えば、S−ラップ配置における場合、2つのローラーは、それらの中心間のギャップが250から600mmまで、好ましくは280から360mmまで、最も好ましくは300から340mmまで、例えば320mmとなるように間隔をあけるのが好ましい。
【0049】
隣接する2対のS−ラップローラーは、それぞれのローラーの中心の間が200から1200mmまで、好ましくは300から900mmまで、最も好ましくは700から900mmまで、例えば800mmとなるように離れているのが好ましい。
【0050】
含浸ローラーは様々な方法で回転させることができる。含浸ローラーは自由回転していてもよいし、又は駆動されていてもよい。駆動の場合、回転速度と、ローラー上を樹脂及び繊維が通過する速度との間に差がないように、含浸ローラーは従来通りに駆動する。時には、含浸又は繊維導電性を促進するために、樹脂及び繊維の通過に対して40%まで、好ましくは30%まで、さらに好ましくは20%まで、よりさらに好ましくは30%まで、最も好ましくは5%までの速度の増加又は低下を適用することが望ましい場合もある。こうした差は、当技術分野では「トリム(trim)」と呼ばれている。
【0051】
繊維内へ樹脂を含浸させた後、多くの場合、冷却段階と、さらなる処理段階、例えば、積層、切断(slitting)、分離が存在する。
【0052】
さらなる実施形態において、本発明は、こうした成形材料又は構造体の積層体を提供する。
【0053】
本発明のプリプレグは、その樹脂含量、並びに/或いはその繊維容量及び樹脂容量、並びに/或いは水分吸収試験により測定したその含浸の程度によって特性決定することができる。
【0054】
未硬化のプリプレグ又は複合体の樹脂及び繊維の含量は、一方向性炭素を含まない繊維材料を含有する成形材料又は構造体について、ISO 11667(方法A)に従って決定される。一方向性炭素繊維材料を含有する未硬化のプリプレグ又は複合体の樹脂及び繊維の含量は、DIN EN 2559A(コードA)に従って決定される。炭素繊維材料を含有する硬化複合体の樹脂及び繊維の含量は、DIN EN 2564Aに従って決定される。
【0055】
プリプレグ又は複合体の繊維及び樹脂の容量%は、繊維と樹脂の重量%から、樹脂及び炭素繊維のそれぞれの密度でその重量%を割ることによって決定することができる。
【0056】
樹脂を含浸させたトウ又は繊維材料の含浸率(%)は、水分吸収試験によって測定される。
【0057】
水分吸収試験は、以下のようにして行われる。プリプレグの6つの細片を100(+/−2)mm×100(+/−2)mmのサイズにカットする。すべての裏材シート材料を除く。試料をほぼ0.001gに秤量する(W1)。15mmのプリプレグ細片がPTFE裏当てプレートアセンブリの一端から突き出て、それによりプリプレグの繊維配向がその突出部分に沿って伸びるように、細片をPTFE裏当てアルミニウムプレートの間に配置する。クランプを反対の末端に置き、5mmの突出部分を、相対湿度50%+/−35%、及び周囲温度23℃で、温度23℃の水に浸漬する。5分間浸漬した後、試料を水から取り出し、外側のすべての水を吸い取り紙で除去する。次いで、試料を再び秤量する(W2)。次いで、水分吸収率WPU(%)を、次式のように6つの試料について測定した重量を平均することによって計算する:WPU(%)=[(<W2>−<W1>)/<W1>)×100。WPU(%)は、樹脂の含浸の程度(DRI)を示す。
【0058】
通常、本発明の未硬化プリプレグに関する樹脂の重量含量の値は、プリプレグの15から70重量%まで、プリプレグの18から68重量%まで、プリプレグの20から65重量%まで、プリプレグの25から60重量%まで、プリプレグの25から55重量%まで、プリプレグの25から50重量%まで、プリプレグの25から45重量%まで、プリプレグの25から40重量%まで、プリプレグの25から35重量%まで、プリプレグの25から30重量%まで、プリプレグの30から55重量%まで、プリプレグの32から35重量%まで、プリプレグの35から50重量%までの範囲、及び/又は前述の範囲の組み合わせである。
【0059】
通常、本発明の未硬化プリプレグに関する樹脂の容量含量の値は、プリプレグの15から70容量%まで、プリプレグの18から68容量%まで、プリプレグの20から65容量%まで、プリプレグの25から60容量%まで、プリプレグの25から55容量%まで、プリプレグの25から50容量%まで、プリプレグの25から45容量%まで、プリプレグの25から40容量%まで、プリプレグの25から35容量%まで、プリプレグの25から30容量%まで、プリプレグの30から55容量%まで、プリプレグの35から50容量%までの範囲、及び/又は前述の範囲の組み合わせである。
【0060】
本発明の未硬化プリプレグ成形材料及びトウに関する水分吸収値は、1から90%まで、5から85%まで、10から80%まで、15から75%まで、15か70%まで、15から60%まで、15から50%まで、15から40%まで、15から35%まで、15から30%まで、20から30%まで、25から30%までの範囲、及び/又は前述の範囲の組み合わせであってもよい。さらなる実施形態において、本発明は、未含浸トウ間の空間に樹脂が浸透するが、少なくとも部分的未含浸のトウ内のフィラメント間の空間はそのままであるように、液状樹脂を完全に含浸させた一方向性繊維トウの層が、乾燥未含浸の一方向性繊維トウの層上及び硬化された構造体上に積層される方法を提供する。支持織布又は支持スクリムは、好ましくは硬化前に、構造の一側面又は両面上に供給することができる。
【0061】
好ましい実施形態において、トウの内部は、少なくとも部分的に樹脂を含まず、空気を排出する経路又は構造を提供し、その結果、最初からトウ中に存在し得る空気又は液状樹脂による含浸中に導入され得る空気は、樹脂により構造内部に閉じ込められず、プリプレグの製造及び硬化中に排出することができる。樹脂による含浸で、繊維層の第2の側面の一部又は全部の表面に樹脂が担持されていないような場合、空気は、トウの長さに沿って、また繊維層の第2の側面から排出することができる。特には、プリプレグの一面が樹脂で完全に被覆されていない場合に、積層体の形成中にプリプレグの間に閉じ込められた空気が、トウのフィラメント間に空間を提供することによって排出されうる。
【0062】
本発明のプリプレグは、通常、利用可能なエポキシ樹脂から生産することができ、これは、硬化剤(hardener又はcuring agent)を含有し、任意選択で促進剤を含有していていてもよい。好ましい実施形態において、エポキシ樹脂は、従来の硬化剤、例えば、ジシアンジアミドなどは含まず、また特に、本発明者らは、望ましいプリプレグが、無水物、特にポリカルボン酸無水物;アミン、特に芳香族アミン、例えば1,3−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、特にスルホン及びメチレンビスアニリン、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’DDS)及び3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’DDS)、4,4’−メチレンビス(2−メチル−6−イソプロピルアニリン)(M−MIPA)、4,4’−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチレンアニリン)(M−CDEA)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチレンアニリン)(M−DEA)、及びフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、並びに/或いは前述の硬化剤の組み合わせなどの硬化剤の使用によって得ることができることを見出した。好ましい硬化剤は、メチレンビスアニリン及びアミノスルホン、特に4,4’DDS及び3,3’DDSである。使用されるべき硬化剤及びエポキシ樹脂の相対量は、樹脂の反応性、所望する保存期間、所望する処理特性、並びにプリプレグ中の繊維強化材の性質及び量に依存する。
【0063】
実質的に一定な機械的特性を有する複合体を生産ためには、構造繊維及びエポキシ樹脂を混合し、実質的に均質なプリプレグを提供することが重要である。本発明の好ましいプリプレグは、トウの間に低レベルの空隙を含有する。したがって、プリプレグ及びプリプレグ積層体はそれぞれ、6%未満又は2%未満、さらに好ましくは1%未満、最も好ましくは0.5%未満の水分吸収値を有するのが好ましい。水分吸収試験は、本発明のプリプレグの一方向性トウ間の防水処理又は含浸の程度を決定する。この試験において、プリプレグ材の試験片は、まず秤量され、幅5mmの細片が突出するような方法で2つのプレート間に留める。この配置物を、5分間室温(21℃)で、ウォーターバス中、繊維方向につるす。次いで、試験片をプレートから取り除き、再び秤量し、その重量差が試験片内の含浸の程度に関する値となる。水分吸収量が小さくなるほど、防水処理又は含浸の程度は高くなる。
【0064】
本発明のプリプレグは、別の複合材料(例えば、本発明によるものであってもよい別のプリプレグ、又はそれ以外のプリプレグであってもよい)とレイアップし、硬化性積層体又はプリプレグ積層体を生産することを意図している。プリプレグは、通常、プリプレグのロールとして生産され、こうした材料のべとつきの性質を考慮して、裏材シートが一般に供給され、ロールが使用場所で広げられるようにする。したがって、好ましくは、本発明によるプリプレグは、外部面上に裏材シートを含み、材料の取り扱い及び/又は材料の巻き上げを容易にすることができる。裏材シートは、ポリオレフィン系材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及び/又はそのコポリマーなどを含むことができる。裏材シートはエンボス加工を含んでいてもよい。この加工は、空気排出表面構造を有するプリプレグを提供するという利点がある。空気排出表面構造は、処理中に空気を排出させるエンボス加工された通路(channels)を含んでいる。これは、内部層の空気閉じ込めを予防し、空気排出表面通路を介して内部層の空気が効果的に除去されるため、特に有用である。
【0065】
本発明のプリプレグの好ましい使用は、テープとしての使用である;このプリプレグは、特に自動テープレイアップ装置について調製された材料のロールとして製造することができる。このプリプレグは、金型中でレイアップされる際に除去される裏材シートを備える。したがって、通常、裏材シートを備えるプリプレグは、直径が20cm未満、好ましくは10cm未満のロールを形成することができるように十分可撓性であるのが好ましい。公知の自動レイアップ装置には、ロールが特定の寸法を満たすことが要求される。例えば、ロールは、±0.5mmの許容範囲内で254mm又は295mmの内径コアに巻かれる。このように、複合材料は、巻き取りが容易でないほどに厚くはないのが好ましい。したがって、通常、複合材料の厚みは0.5から5.0mmまで、好ましくは0.5から4.0mmまで、最も好ましくは1.0から3.0mmまでである。ロールは、標準のプリプレグのテープのサイズにカットすることができるが、そのサイズは、600mm(24インチ)、300mm(12インチ)、150mm(6インチ)、75mm(3インチ)、50mm(2インチ)、25mm(1インチ)、6.34mm(1/4インチ)及び3.18mm(1/8インチ)の幅が挙げられ、±0.050mmの許容範囲内でカットし、次いで、複数の層のテープとしてレイアップされ、硬化される。テープは、航空機部品の生産において、このようにして頻繁に使用される。
【0066】
本発明のプリプレグは、前述の本発明のエポキシ樹脂成分を繊維材料に含浸させることにより生産される。含浸に使用される樹脂組成物の粘性と条件は、所望する含浸の程度が得られるように選択される。含浸中、導電性粒子を含有し、任意選択で熱可塑性強化粒子を含有する樹脂は、0.1Pa.sから100Pa.sまで、好ましくは6から100Pa.sまで、さらに好ましくは18から80Pa.sまで、さらにより好ましくは20から50Pa.sまでの粘度を有するのが好ましい。含浸率を高めるために、本方法は、樹脂の粘性が低下するような高温で実施することができる。しかし、樹脂の早期硬化が生じるほど十分な長さの時間にわたって、過度に加熱してはならない。したがって、含浸プロセスは、40℃から110℃まで、さらに好ましくは60℃から80℃までの範囲の温度で行うのが好ましい。プリプレグの樹脂含量は、硬化後に構造体が30から40重量%まで、好ましくは31から37重量%まで、さらに好ましくは32から35重量%までの樹脂を含有しているようであるのが好ましい。樹脂及びマルチフィラメント・トウの相対量、含浸のライン速度、樹脂の粘性及びマルチフィラメント・トウの密度は、トウ間の所望する含浸の程度を達成し、繊維を本質的に含まない樹脂のインターリーフ層を提供して強化が得られるように相関させなければならない。
【0067】
本発明の樹脂組成物及び/又はプリプレグの調製で使用されるエポキシ樹脂は、好ましくは10から1500までの範囲のエポキシ当量重量(EEW)を有し、さらに好ましくは50から500までの範囲のEEWを有する。好ましくは、樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び促進剤又は硬化剤を含む。適切なエポキシ樹脂は、単官能性、二官能性、三官能性及び/又は四官能性のエポキシ樹脂から選択される、2種以上のエポキシ樹脂の混合物を含むことができる。
【0068】
適切な二官能性エポキシ樹脂としては、例として、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(任意選択により臭素化されたもの)のジグリシジルエーテル、フェノール及びクレゾールのエポキシノボラック、フェノール−アルデヒド付加物のグリシジルエーテル、脂肪族ジオールのグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族ポリグリシジルエーテル、エポキシ化オレフィン、臭素化樹脂、芳香族グリシジルアミン、複素環グリシジルイミジン及び複素環グリシジルアミド、グリシジルエーテル、フッ素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル、又はそれらの任意の組み合わせをベースとしたものが挙げられる。
【0069】
二官能性エポキシ樹脂は、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジグリシジルジヒドロキシナフタレン、又はそれらの任意の組み合わせから選択することができる。
【0070】
適切な三官能性エポキシ樹脂は、例として、フェノール及びクレゾールのエポキシノボラック、フェノール−アルデヒド付加物のグリシジルエーテル、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族トリグリシジルエーテル、ジ脂肪族トリグリシジルエーテル、脂肪族ポリグリシジルアミン、複素環グリシジルイミジン及び複素環グリシジルアミド、グリシジルエーテル、フッ素化エポキシ樹脂、又はそれらの任意の組み合わせをベースとしたものが挙げられる。適切な三官能性エポキシ樹脂は、商品名MY0500及びMY0510(トリグリシジルパラ−アミノフェノール)として、またMY0600及びMY0610(トリグリシジルメタ−アミノフェノール)として、Huntsman Advanced Materials社(モンテー、スイス)から入手することができる。さらに、トリグリシジルメタ−アミノフェノールは、商品名ELM−120として、住友化学株式会社(大阪、日本)から入手することができる。
【0071】
適切な四官能性エポキシ樹脂としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名Tetrad−Xとして三菱ガス化学株式会社から、またErisys GA−240としてCVC Chemicals社から入手することができる)、及びN,N,N’,N’−テトラグリシジルメチレンジアニリン(例えば、Huntsman Advanced Materials社のMY0720及びMY0721)が挙げられる。他の適切な多官能性エポキシ樹脂としては、DEN438(Dow Chemicals社、ミッドランド、ミシガン州)、DEN439(Dow Chemicals社)、Araldite ECN1273(Huntsman Advanced Materials社)、MY722(Huntsman Advanced Materials社)及びAraldite ECN1299(Huntsman Advanced Materials社)が挙げられる。
【0072】
前述の硬化剤は、樹脂が、樹脂に対して10から25重量%まで、好ましくは10から20重量%まで、さらに好ましくは樹脂に対して15から20重量%までの範囲で硬化剤を含有するように、樹脂系に対して存在し得る。
【0073】
好ましい実施形態において、樹脂は、一又は複数の下記の成分の組み合わせを含むことができる:樹脂の8から34重量%までの範囲のトリグリシジルアミノフェノール形態のベース樹脂成分、樹脂の20から28重量%までの範囲のビスフェノールエポキシ形態のさらなるベース樹脂成分、樹脂の25から35重量%までの範囲のテトラグリシジルアミン形態のさらなるベース樹脂成分、樹脂の10から25重量%までの範囲のポリエーテルスルホン形態の強化剤、樹脂の2から28重量%の範囲のメチル無水物(NMA)又はジアミノジフェニルスルホン形態の硬化剤。樹脂は、樹脂の10から15重量%までの範囲で本明細書に記載のポリアミドをさらに含むことができる。
【0074】
破壊性繊維又は破壊繊維が本発明で使用される場合、これらの繊維は強化繊維、特に炭素フィラメント・トウから誘導することができ、またこれらの繊維は、炭素繊維層の表面に配置されている導電性フィラメントを提供する。これらのフィラメントは樹脂中間層へ広がり、高温下で硬化した場合に、充填された導電性繊維の硬化構造層と硬化樹脂の中間層とを含む硬化複合材料が生産され、硬化樹脂の中間層は、その中に分散される破壊性繊維を電気導電性粒子と共に含む。
【0075】
破壊性繊維は、それら自体の間に導電性粒子との電気接点を形成し、それにより、中間層を横断して導電性を提供し、硬化複合材料の「Z」方向の導電性を向上させると考えられる。こうした2つのプリプレグが一緒に積層される場合、1つのプリプレグの樹脂の第1の外層が、別のプリプレグの樹脂の外層が存在するとき、導電性繊維の二層間の樹脂インターリーフ層を形成する。
【0076】
導電性破壊フィラメントは、導電性繊維の構造層の外層を処理し、一部の強化繊維を破壊して繊維を生成することにより製造することができる。
【0077】
したがって、第2の態様において、本発明は、導電性繊維のシートを繊維破壊手段へ通すことを含む、プリプレグを生産する方法に関する。これによって、シートの外部面上の一部の繊維又は小繊維が破壊フィラメントとなる。続いて、繊維は本発明の熱硬化性樹脂により含浸され、それによって、構造繊維を含みかつ破壊フィラメントをも含む、シートの外部面に接する樹脂の外層が形成され、この場合、熱硬化性樹脂は導電性粒子をさらに含有する。
【0078】
導電性粒子は、好ましくは、樹脂中に存在する少なくとも50%の粒子が、20μm以内または10μm以内または5μm以内の樹脂インターリーフ層の厚みのサイズを有するような粒径である。言いかえれば、樹脂インターリーフ層の厚みと導電性粒子のサイズの差は10μm未満である。好ましくは、導電性粒子は、樹脂中に存在する少なくとも50%の粒子が、5μm以内の樹脂層の厚みのサイズを有するような粒径である。樹脂インターリーフ層は鏡検法解析(microscopy analysis)によって測定することができ、当技術分野では周知である。
【0079】
したがって、少なくとも50%の導電性粒子のサイズは、それらの粒子がインターリーフの厚みを横切って橋渡すような状態であり、粒子は、樹脂層の周りに配置されている上部の繊維強化材層と下部の繊維強化材層に接している。
【0080】
破壊手段は、外部面で繊維を処理しフィラメントにするが、これは遊離フィラメントであってもよいし、ベースの炭素繊維に付着したままのものであってもよい。「遊離フィラメント」(“free filaments”)という用語は、物理的又は化学的に別の実体に結合されておらず、本質的に可動性のフィラメントを意味する。こうして形成された遊離フィラメントは、別の繊維にも接着されておらず、自由に動くことができる。
【0081】
例えば、通常、遊離繊維は、平均の長さが2.0cm未満、好ましくは1.0cm未満、さらに好ましくは0.5cm未満の長さの分布を有する。
【0082】
破壊手段は、構造繊維がどのように配置されているかに応じて、多様な方法で、例えば、構造繊維間の付着点を破壊し、より短い長さまで構造繊維を破壊することによって、或いはループ形成、又はフィラメントの遊離末端を中間層へ移動させることができる個別の破壊によって、破壊フィラメントを形成することができる。
【0083】
したがって、本発明は、毛羽立ち繊維または破壊繊維を積極的に生成することを含み得る。参照によって援用される国際公開第2011/114140号に開示されているように、好ましい実施形態において、導電性繊維は一方向性繊維であり、破壊手段は繊維を摩耗面に通し、それにより、摩耗面に接して通過する外部面上の一部の繊維には破壊を発生させながら、摩耗面に接していない繊維は未破壊のままにする。
【0084】
少なくとも一つの位置にある繊維の0.5から5.0重量%までを破壊すると、良好な結果が得られることがわかった。
【0085】
上述のように、一方向性繊維シートは、通常、多数の繊維のトウから形成され、これは樹脂による含浸の前に、広げられ相互に一体化される。これを達成する通常の方法は、複数の連続する延展機バー又はローラーに繊維を通過させるものである。
【0086】
したがって、摩耗面を既存の延展機バー配置に組み込むと都合がよい。このため、好ましい実施形態において、摩耗面は延展機バーの表面である。
【0087】
さらに、摩耗面延展機バーが延展機バーの並びの後方に配置される場合、導電性がさらに改良され得ることがわかった。したがって、好ましくは、摩耗面延展機バーは、延展機バーの並びの最後の3つに、好ましくは最後の2つに存在し、最も好ましくは、最後の延展機バーである。
【0088】
摩耗面は、任意の適切な材料、例えば、金属又はセラミックなどから製造することができるが、好ましくは炭化タングステンである。
【0089】
好ましい実施形態において、本方法は、導電性繊維のシートを第2の繊維破壊手段へ通させ、シートの別の外部面上の繊維の一部を遊離繊維とすることを含む。
【0090】
したがって、少なくとも2つの延展機バーは摩耗面を含んでいてもよく、それぞれが導電性繊維のシートのそれぞれの外部面と接触する。
【0091】
しかし、摩耗面の粗度は重要なパラメーターであり、したがって、摩耗面が少なくとも1.5マイクロメートル、さらに好ましくは少なくとも2.5マイクロメートルのRa粗度を有するのが好ましいことが分かった。
【0092】
別の重要な要因は、表面上の繊維の相対移動速度である。好ましくは、相対移動速度は2から20m/分までである。
【0093】
外部面の一面又は両面上に遊離繊維を含む導電性繊維のシートが作製されたら、次の段階は、前述のような樹脂含浸である。
【0094】
良好な機械的特性は、一般に、構造繊維を含まず、且つ樹脂に不溶性である熱可塑性粒子などの強化材料を含有する中間層の存在によるものである。しかし、これらの従来の中間層は「Z」方向導電率が低いという一因となっている。その理由は、従来の中間層が導電性繊維の隣接層の間に空間を生じるからである。本発明は、破壊性繊維を提供し、且つ樹脂に導電性粒子を供給することによって、中間層により得られる良好な機械的性能に影響を及ぼすことなく、この問題を解消する。したがって、本発明は、含浸工程が一段階法又は二段階法であるならば、同様に適用可能である。
【0095】
追加の粒状強化材料が本発明の樹脂組成物に含まれる好ましい実施形態において、その追加の強化材料は様々な材料であってよい。
【0096】
追加の強化材料がポリマーである場合、その材料は、マトリックス樹脂、通常、室温で、及び樹脂を硬化させる高温でのエポキシ樹脂に不溶性であることが望ましい。熱可塑性ポリマーの融点に応じて、それは高温における樹脂の硬化中に様々な程度に溶解又は軟化され、硬化積層体が冷却されるにつれて、再度固化してよい。適切な熱可塑性物質は樹脂に溶解しないことが望ましく、ポリアミド(PAS)及びポリエーテルイミド(PEI)などの熱可塑性物質が挙げられる。ナイロン6(PA6)及びナイロン12(PA12)及びナイロン11(PA11)などのポリアミド並びに/或いはその混合物が好ましい。
【0097】
強化繊維は、合成若しくは天然の繊維、又は本発明の樹脂組成物と組み合わせて複合製品を形成する、いずれか別の形態の材料若しくは材料の組み合わせであってもよい。強化織物は、解かれた繊維のスプールによってか、又は織物のロールから提供することができる。具体的な繊維は、ガラス、炭素、黒鉛、ホウ素、セラミック及びアラミドが挙げられる。好ましい繊維は炭素及びガラス繊維であり、特に炭素繊維である。ハイブリッド又は混合繊維系も考えられる。亀裂の入った(すなわち、延伸破壊された)繊維若しくは選択的に非連続の繊維を利用すると、本発明による製品の積層が促進され、その成形能力を改善するのに有利であり得る。一方向性繊維配列が好ましいが、別の形態を使用することもできる。典型的な織物形態としては、単純な織物、ニット生地、ツイル生地及びサテン織が挙げられる。また、不織布の繊維層又は非捲縮繊維層を使用することも考えられる。繊維強化材内の繊維フィラメントの表面質量は、一般に80から4000g/m
2、好ましくは100から2500g/m
2、特に好ましくは150から2000g/m
2である。フィラメントはトウに配置される。トウ当たりの炭素フィラメントの数は、3000から320,000本まで、さらに好ましくは6,000から160,000本まで、最も好ましくは12,000から48,000本までで変わり得る。繊維ガラス強化材については、600から2400テックスの繊維が特に適している。プリプレグ及び複合体が航空宇宙の部品で使用される場合、炭素繊維が好ましい。
【0098】
トウは、延展して、通常、10から200g/m
2(gsm)まで、好ましくは15から150g/m
2まで、さらに好ましくは20から100g/m
2まで、若しくは30から80g/m
2までの範囲、及び/又は前記の範囲の組み合わせの重量を有する軽量強化材を形成させることができる。一又は複数の樹脂層は、この軽量織物を含有することにより強化され得る。軽量強化材は、炭素強化材を含んでいてもよい。別の樹脂層は、上記のようなより重い面積重量の炭素強化材を含有していてもよい。
【0099】
有利には、炭素繊維強化材は、国際公開第98/46817号に開示されている織物などのスプレッドファブリック又はフラットファイバートウ織物の形態をしていてもよい。こうしたスプレッド織物の例としては、東レ株式会社(Toray)によって提供されているT700炭素繊維から得られる268gsm、194gsm、134gsm及び75gsmがある。或いは、市販の織物、例えば、Chomarat社によって提供されている同じT700繊維から得られる、多軸型非捲縮織物(NCF) C−Ply 268gsm(2×134gsm、0+/−45)、C−Ply 150(2×75)0/20/0/25;又は、Oxeon SE社によって提供されている同じT700繊維から得られる、Textreme 160(2×80gsm plies 0/90)、若しくはTextreme 160(2×80gsm plies 0/90)である。
【0100】
スプレッドトウファブリック及びテープは、HS(高強度)、IM(中間弾性率)及びHM(高弾性率)の炭素繊維、並びに別のタイプの高性能繊維を使用して生産することもできる。スプレッドトウ炭素一方向性材料は、次の繊維のタイプ及び重量で利用することができる:中間弾性率炭素>21gsm、高強度炭素>40gsm、高弾性率炭素>65gsm、重質トウ(heavy tow)(>48kフィラメント)>100gsm。
【0101】
スプレッドトウ炭素繊維は、次の繊維のタイプ及び重量で利用することができる。高強度炭素繊維に関しては:(12kフィラメントから)80gsm、160gsm及び240gsm、(15kフィラメントから)100gsm、(24kフィラメントから)160gsm及び320gsm並びに重質トウに関しては、200gsm以上。中間弾性率炭素繊維に関しては:(12kフィラメントから)43gsm、(18kフィラメントから)76及び152gsm、(24kフィラメントから)82gsm及び164gsm。高弾性率炭素繊維に関しては:12kから130gsm。繊維角度は単方向から0/90及び45/45ファブリックの範囲であってもよい。代替角度は、+45/−45、+30/−60、+50/−25などを使用することができる。
【0102】
炭素強化材が軽量である炭素強化樹脂層を組み合わせて形成することができるインターリーブ又は中間層は、より重い炭素繊維強化材を含有する樹脂層のインターリーブとは異なり得る。
【0103】
インターリーブは10から45μmまで、好ましくは15から35μmまでの範囲の厚さを有してよい。
【0104】
インターリーブ中に存在し得る粒子は、15から30μmまで、好ましくは15から25μmまでの範囲の粒径であってもよい。粒子は、強化剤、導電性粒子及び/又は前記の粒子の組み合わせを含むことができる。
【0105】
一方向性繊維トウの具体的な層は、Hexcel社から入手できるHexTow(登録商標)炭素繊維から製造される。一方向性繊維トウの製造での使用に適切なHexTow(登録商標)炭素繊維は次のものが挙げられる:IM7炭素繊維、これは6,000本又は12,000本のフィラメントを含有し、それぞれ0.223g/m及び0.446g/mの重量を有するトウとして利用できる;IM8−IM10炭素繊維、これは12,000本のフィラメントと、0.446g/mから0.324g/mまでの重量を有するトウとして利用できる;及びAS7炭素繊維、これは12,000本のフィラメントと、0.800g/mの重量を有するトウとして利用でき、80,000本又は50,000本(50K)以下のフィラメントを含有するトウは、東レ株式会社から入手できる約25,000本のフィラメントを含有するものや、Zoltek社から入手できる約50,000本のフィラメントを含有するものなどを使用することができる。トウの幅は、通常3から7mmまでであり、含浸にあたって、トウを保持し、トウを平行且つ一方向性に保つために、コームを採用した設備に供給される。
【0106】
作製されたら、プリプレグは、一定期間保存できるように巻き上げられる。その後、プリプレグは広げられ、所望によりカットされ、任意選択で、別のプリプレグとレイアップして、金型又は真空バッグ中でプリプレグ積層体を形成することができ、これは次いで成形及び硬化される。
【0107】
作製されたら、プリプレグ又はプリプレグ積層体は高温に暴露し、任意選択で高い圧力に暴露することによって硬化され、硬化複合積層体が得られる。上述のように、本発明のプリプレグは、オートクレーブ法に伴う高圧を必要とすることなく、優れた機械的特性を提供することができる。
【0108】
したがって、さらなる態様において、本発明は、熱硬化性樹脂組成物の硬化を誘導するのに十分な温度にプリプレグ又はプリプレグ積層体を暴露し、好ましくは10絶対バール未満または7絶対バール未満または3.0絶対バール未満の圧力で実施することを含む、本明細書に記載のプリプレグ又はプリプレグの積層体内の熱硬化性樹脂を硬化する方法に関する。
【0109】
硬化方法は、10絶対バール未満または7絶対バール未満または3.0絶対バール未満または2.0絶対バール未満、好ましくは1絶対バール未満の圧力で行うことができる。特に好ましい実施形態において、圧力は大気圧未満である。硬化方法は、所望する程度へ熱硬化性樹脂組成物を硬化するのに十分な時間、150から260℃まで、好ましくは180から220℃まで、さらに好ましくは160から210℃までの範囲において、一又は複数の温度で実施することができる。
【0110】
大気圧付近の圧力での硬化は、いわゆる減圧バッグ技術によって行うことができる。これは、気密バッグにプリプレグ又はプリプレグ積層体を入れ、バッグ内部を真空にすることを含む。これは、使用される真空の程度に応じて、プリプレグ積層体が大気圧以下の圧密圧力を受ける効果がある。また減圧バッグ技術は、オートクレーブ内で使用することができる。
【0111】
硬化されると、プリプレグ又はプリプレグ積層体は、構造体用途、例えば、航空宇宙構造体での使用に好適な複合積層体になる。
【0112】
こうした複合積層体は、45容量%から75容量%(繊維体積分率)まで、好ましくは55容量%から70容量%まで、さらに好ましくは60容量%から68容量%までの構造繊維を含むことができる(DIN EN 2564A)。
【0113】
本発明のプリプレグから生産される積層体は、積層体の硬化試料の断面(5cm間隔)の30×40mmについて、一定間隔で配置された20個の断面の顕微鏡分析により測定した場合に、積層体の全容積に対して1容量%未満の空隙、又は0.7容量%未満の空隙、通常0.1容量%未満、特に0.05容量%未満の空隙を含有しているのが好ましい。
【0114】
本発明で使用される軽量層特有の特性により、脱オートクレーブ法(out−of−autoclave process)でこうした層を使用して、積層体を硬化させることが可能になる。比較的低圧且つ低コストのこの硬化方法を使用することができる。その理由は、硬化積層体の損傷許容性(例えば、衝撃後圧縮−CAI)は、実質的に、高圧力及び高コストのオートクレーブを使用した場合に生じる損傷許容性よりも小さくないからである。反対に、不溶性熱可塑性粒子で強化されたインターリーフゾーンを有する積層体の脱オートクレーブ法の硬化は、損傷許容性が有意に低減した硬化積層体をもたらす。
【0115】
本出願の範囲内では、「Z」方向の複合積層体の導電率は、下記の方法によって測定される。
【0116】
後続層の繊維配向が0/90であるように、パネルを複数の一方向プレプレグ層から作製する。このパネルを、0.7MPaの圧力下で2時間、180℃の温度でオートクレーブ硬化により硬化し、サイズが300mm×300mm×3mmの硬化パネルを形成させる。その後、サイズが40mm×40mm×3mmとなるように、試験用の試料(4個)をパネルからカットする。試料の正方形面は、リニッシャー(Linisher)装置で研磨され、炭素繊維を露出させる。過剰の研磨は、第1の層を超えて第1の積層体内層(intralaminar layer)へ入り込むので避ける。次いで、正方形面を金属、例えば金ではサーマルスパッタリング装置によって約30nm厚まで、スズ亜鉛ではアーク噴霧装置により少なくとも10マイクロメートル厚まで被覆する。試料の側面の金属はすべて、試験前に研磨して除去する。
【0117】
試料の各側面は銅ブレード又は銅線と接触させ、金属めっき面を対角線上に横切って延びている電極を形成する。電圧及び電流の両方を変化させることができる電源(TTz EL302Pプログラム可能30V/2A電源ユニット、Thurlby Thandar Instruments社、ケンブリッジ、英国)を使用し、抵抗を判定する。1サンプル当たり2個又は4個の電極を使用することが可能であるが、再現可能なことから後者が好ましい。電源を電極と接触させ、クランプを使用して適所に保持する。クランプには非電導性の被覆材又は層を施してあり、1つのブレードから別のブレードへの電気的な経路を遮断する。1アンペアの電流を使用し、電圧を記録する。次いで、オームの法則を使用し、抵抗を計算することができる(R=V/I)。試験は、カットしたそれぞれの試料で実施し、値の範囲を得る。試験に対する信頼性を確実にするため、各試料についてそれぞれ2回試験する。測定を確認するため、電気抵抗率もFlux Multimeterを使用し、一方の電極を一めっき面に配置し、別の電極を反対のめっき面に配置することによって測定する。
【0118】
計算された抵抗[Ohm]から、導電性[Siemens]は、導電性(σ)=試料の厚み(t)/抵抗(R)×試料の面積(A)として計算される。クロスプライ導電性(cross ply conductivity)は、導電性値を積層体の厚み(3mm)で割ることにより、したがって、厚み導電性=σ/厚みによって計算される。